以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はスライドドアを備えたワンボックスタイプの車両の側面図であり、この車両11の車体12の側部には、後部座席への乗降用の開口部13を開閉するために、スライドドア14が設けられている。
図2は図1に示すスライドドアの車体への取付け構造を示す平面図である。スライドドア14の車両前方側(閉側)の下端部には支持アームとしてのロワーアーム15が設けられ、スライドドア14の車両後方側(開側)であって車両上下方向の略中間部にはセンターアーム16が設けられており、一方、車体12の開口部13の下縁部にはガイドレールとしてのロワーレール17が固定され、車体12の側部の開口部13の車両後方側であって車両上下方向の略中間部にはセンターレール18が固定されている。各アーム15,16の先端にはそれぞれローラアッシー21,22が設けられ、ロワーアーム15のローラアッシー21はロワーレール17に移動自在に組み込まれ、センターアーム16のローラアッシー22はセンターレール18に移動自在に組み込まれている。これにより、各アーム15,16は対応するレール17,18に移動自在に支持され、各アーム15,16が対応するレール17,18に沿って移動することにより、スライドドア14は車体12の側部に沿って車両前後方向にスライド式に開閉するようになっている。また、ロワーレール17とセンターレール18の車両前方側は車室内側に向けて曲げられており、これにより、スライドドア14は車体12の外側に引き出された位置から車室内側(車体12の内側)に引き込まれて車体側面と面一となって閉じられるようになっている。
なお、図示はしないが、スライドドア14の車両前方側の上端部にはアッパーアームが設けられ、車体12の開口部13の上縁部にはアッパーレール23が固定されており、アッパーアームの先端に設けられるローラアッシー(不図示)がアッパーレール23に移動自在に組み込まれることにより、スライドドア14は合計3点で車体12に支持されている。
スライドドア14の車体12と対向する部位には、スライドドア開口端の上下方向に沿ってドアシール材14aが設けられており、スライドドア14が全閉位置にまで閉じられた際には、このドアシール材14aが車体12に弾性的に当接して車室内側への雨水の浸入が防止されるようになっている。図示しないが、このドアシール材14aはスライドドア14の他の3辺にも設けられ、スライドドア14の全周からの雨水の浸入が防止されるようになっている。また、スライドドア14の外側面にはスライドドア14を開閉するためのドアハンドル14bが設けられている。
図3は本発明の一実施の形態である車両用開閉装置の詳細を示す斜視図であり、この車両11には、スライドドア14を駆動源の動力により開閉するために、車両用開閉装置24(以下、開閉装置24とする)が搭載されている。
この開閉装置24はいわゆるケーブル式となっており、それぞれロワーレール17に沿って配索される開側索条体としての開側ケーブル25aと閉側索条体としての閉側ケーブル25bとを備えている。車体12にはロワーレール17の車両後方側の端部に隣接して連結ユニット26aが設けられ、開側ケーブル25aの一端はこの連結ユニット26aに連結され、他端はロワーアーム15を介してスライドドア14の内部に導かれている。また、車体12にはロワーレール17の車両前方側の端部に隣接して連結ユニット26bが設けられ、閉側ケーブル25bの一端はこの連結ユニット26bに連結され、他端はロワーアーム15を介してスライドドア14の内部に導かれている。つまり、開側ケーブル25aの一端は連結ユニット26aを介してロワーレール17の開側端(車両後方側の端部)に連結され、閉側ケーブル25bの一端は連結ユニット26bを介してロワーレール17の閉側端(車両前方側の端部)に連結されている。
各連結ユニット26a,26bはそれぞれテンショナーとしての機能を有しており、各ケーブル25a,25bにはそれぞれ対応する連結ユニット26a,26bから所定の張力を付与されている。
開側ケーブル25aと閉側ケーブル25bとを駆動してスライドドア14を自動開閉動作させるために、開閉装置24には駆動ユニット31が設けられている。本実施の形態においては、駆動ユニット31はスライドドア14の内部に配置されている。
図4は図3に示す駆動ユニットの詳細を示す正面図であり、図5は図4に示す駆動ユニットの分解斜視図であり、図6は図4に示す駆動ユニットの内部構造を示す断面図であり、図7は図4に示す駆動ユニットの各ケーブル出入り部を示す斜視図である。
図4、図5に示すように、駆動ユニット31は駆動源としての減速機付きモータ32を有している。この減速機付きモータ32は電動モータ33に減速機34が取り付けられた構造となっており、電動モータ33の回転は減速機34により所定の回転数にまで減速して出力軸35から出力されるようになっている。電動モータ33としては例えばブラシ付きモータが用いられ、出力軸35は電動モータ33により駆動されて正逆両方向に回転できるようになっている。減速機34はケースの内部にウォームギヤ機構等の減速機構(不図示)を収容した構造となっており、また、そのケースの内部には電磁クラッチ(不図示)が収容され、この電磁クラッチにより電動モータ33と出力軸35との間の動力伝達経路を断続することができるようになっている。
なお、減速機付きモータ32には図示しない制御装置が接続され、ドアハンドル14bや運転席または携帯端末等に設けられる図示しない開閉スイッチの操作信号、スライドドア14の開閉速度、開閉位置等に基づいて、制御装置により電動モータ33と電磁クラッチの作動が制御されるようになっている。
減速機34にはドラムケース36が固定されており、図5、図6に示すように、このドラムケース36の内部には駆動回転体としてのドラム37が回転自在に収容されている。このドラム37は樹脂材料によりリング状(円筒状)に形成されており、その外周には螺旋溝37aが設けられている。また、減速機付きモータ32の出力軸35はドラムケース36の内部に突出しており、ドラム37はこの出力軸35と同軸に配置されて減速機付きモータ32により回転駆動されるようになっている。
ドラム37の内側には、出力軸35の回転をドラム37に伝達するために、減速機構としてのプラネタリギヤ機構41が設けられている。図5、図6に示すように、プラネタリギヤ機構41は、入力ギヤとしてのサンギヤ42、出力ギヤとしてのインターナルギヤ43および切替え用ギヤとしての5つのプラネタリギヤ44を有しており、サンギヤ42はセレーションが設けられた出力軸35に固定され、出力軸35とともに回転するようになっている。インターナルギヤ43はドラム37の内周面に当該ドラム37と一体に形成され、ドラム37とともに回転するようになっており、これによりサンギヤ42とインターナルギヤ43とは同軸に配置されている。ドラムケース36の内部にはドラム37に対して減速機34とは反対側に位置するようにキャリア45が軸方向に並べて設けられている。このキャリア45は円板状に形成され、軸受46により出力軸35に相対回転自在に支持されている。また、キャリア45には周方向に等間隔に並べて5つの支軸47が出力軸35と平行に設けられ、各プラネタリギヤ44はそれぞれ対応する支軸47に回転自在に支持されるとともに、サンギヤ42とインターナルギヤ43との間に配置されて当該ギヤ42,43に噛み合わされている。
図7に示すように、ドラムケース36には3つのケーブル出入り部48a,48b,48cが設けられており、ロワーアーム15を介してスライドドア14の内部に導かれた各ケーブル25a,25bは、それぞれ対応するケーブル出入り部48a,48bからドラムケース36の内部に引き込まれている。ドラムケース36の内部に引き込まれた各ケーブル25a,25bは、図5、図6に示すように、それぞれドラム37の螺旋溝37aに互いに逆向きに巻き掛けられ、その先端においてドラム37に固定されている。
ロワーアーム15とドラムケース36の各ケーブル出入り部48a,48bとの間には、平角鋼線を螺旋状に巻回したスプリング層の外周に樹脂材の被覆層が設けられ、可撓性をもって湾曲自在に形成されたアウターチューブ49a,49bが設けられ、各ケーブル25a,25bはそれぞれ対応するアウターチューブ49a,49bに軸方向に移動自在に収容されて、当該アウターチューブ49a,49bに沿って移動するようになっている。なお、これらのアウターチューブ49a,49bのスプリング層の内周側には図示しないライナー部材が配設され、各ケーブル25a,25bとの摺動が円滑に行われるようになっている。
図8(a)、(b)はそれぞれ駆動ユニットによる各ケーブルの駆動状態を示す説明図である。
図示しない開閉スイッチの開側が操作され、図8(a)に示すように、減速機付きモータ32の出力軸35が開方向(図8中反時計回り方向)に回転すると、出力軸35の回転がプラネタリギヤ機構41を介してドラム37に伝達されてドラム37が開方向(図8中時計回り方向)に回転する。これにより、開側ケーブル25aがドラム37に巻き取られるとともに閉側ケーブル25bがドラム37から繰り出され、ロワーアーム15が開側ケーブル25aに牽引されてスライドドア14は自動的に開動作する。反対に、図示しない開閉スイッチの閉側が操作され、図8(b)に示すように、減速機付きモータ32の出力軸35が逆転して閉方向(図8中時計回り方向)に回転すると、出力軸35の回転がプラネタリギヤ機構41を介してドラム37に伝達されてドラム37が閉方向(図8中反時計回り方向)に回転する。これにより、閉側ケーブル25bがドラム37に巻き取られるとともに開側ケーブル25aがドラム37から繰り出され、ロワーアーム15が閉側ケーブル25bに牽引されてスライドドア14は自動的に閉動作する。このように、この開閉装置24は、スライドドア14の内部に配置された減速機付きモータ32によりロワーレール17の両端に連結された各ケーブル25a,25bを駆動してスライドドア14を自動開閉動作させる自走式となっている。
なお、出力軸35の回転をプラネタリギヤ機構41によりドラム37に伝達するためには、当該プラネタリギヤ機構41のキャリア45を拘束つまり回転できないようにしておく必要があるが、その構造については後述する。
図3に示すように、この開閉装置24には、全閉位置にまで閉じられたスライドドア14を当該位置に保持するために、ドアロック機構51が設けられている。
図9は図3に示すドアロック機構の詳細を示す正面図であり、このドアロック機構51は鋼板等により形成されるベースブラケット52を有し、このベースブラケット52においてスライドドア14の車両後方側の端部に固定されている。
ベースブラケット52は表裏2枚の板材の間に空間を設けた構造となっており、その空間にはラッチ53が収容されている。ラッチ53は鋼板等により外周にラッチ溝53aとハーフラッチ溝53bとを備えた略円板状に形成されており、その軸心においてラッチ軸54によりベースブラケット52に支持されて、アンラッチ位置とハーフラッチ位置を経たフルラッチ位置との間で回動自在となっている。
ラッチ53の外側には、ラッチ53をハーフラッチ位置とフルラッチ位置とに保持するために、ラチェット56が設けられている。ラチェット56はラチェット軸57によりベースブラケット52に支持され、ラッチ53に接近離反する方向に回動自在となっている。また、ラチェット軸57にはリターンスプリング(不図示)が装着され、ラチェット56はこのリターンスプリングにより常時ラッチ53の外周に押し付けられる方向(図9中時計回り方向)に付勢されている。
図2、図3に示すように、車体12の開口部13の車両後方側の端部には、ラッチ53に対応してストライカ58が固定されている。ストライカ58は鋼材等により棒状に形成されており、その軸方向を車両前方側(スライドドア14が全閉位置にまで閉じられたときにラッチ軸54と平行となる方向)に向けて配置されている。なお、このストライカ58としては棒状のものに限らず、コの字形状のものを用いるようにしてもよい。
スライドドア14が全閉位置に向けて閉じられ、ストライカ58がベースブラケット52の内部に侵入してラッチ53のラッチ溝53aに係合すると、ラッチ53はストライカ58に押されてフルラッチ方向に向けて回転する。スライドドア14が半ドア位置付近にまで閉じられると、ラッチ53はハーフラッチ位置にまで回転し、当該ラッチ53のハーフラッチ溝53bにラチェット56が係合する。これにより、ラッチ53はラチェット56によりアンラッチ方向への回転が規制されてハーフラッチ位置に保持された状態となり、スライドドアはラッチ53とストライカ58との係合により半ドア状態に保持される。なお、スライドドア14が半ドア位置にまで閉じられると、ドアシール材14aが車体12に当接し、その弾性力によって駆動ユニット31によるスライドドア14の閉動作が一時的に停止または減速した状態となる。さらにスライドドア14が閉方向に移動して全閉位置まで閉じられると、ラッチ53はフルラッチ位置に達し、ラッチ53のラッチ溝53aにラチェット56が係合する。これにより、ラッチ53はラチェット56によりアンラッチ方向への回転が規制されてフルラッチ位置に保持された状態となり、スライドドア14はラッチ53とストライカ58との係合により全閉位置に保持される。
一方、図2、図3に示すように、スライドドア14には、当該スライドドア14を所定の開位置つまり全開位置に保持するために、開状態保持機構としての全開フック機構61が設けられている。
図10は図3に示す全開フック機構の詳細を示す平面図である。この全開フック機構61はフックアーム62を有しており、フックアーム62は支軸63によりその一端においてスライドドア14に配置されるベースケース64に支持され、車両前後方向に対してその軸方向が略直交するロック位置と当該ロック位置に対して傾斜するアンロック位置との間で揺動自在となっている。
一方、車体12にはフックアーム62に対応して係合部材としてのストライカ65が固定されており、フックアーム62がアンロック位置の状態でスライドドア14が全開位置にまで開かれると、当該フックアーム62の先端に設けられた係合溝62aにストライカ65が係合して、フックアーム62はロック位置にまで揺動するようになっている。
ベースケース64の内部には、ロック機構66(詳細は不図示)が設けられており、ストライカ65に係合してロック位置となったフックアーム62は、このロック機構66によりロック位置に保持されてアンロック方向への揺動が規制されるようになっている。これにより、全開位置にまで開かれたスライドドア14は、フックアーム62とストライカ65との係合により全開位置に保持される。
図9に示すように、ドアロック機構51には、当該ドアロック機構51によるスライドドア14の全閉位置への保持(ロック)つまりラチェット56によるラッチ53のフルラッチ位置への保持を自動的に解除するために、開作動用リリーサ機構71が設けられている。この開作動用リリーサ機構71はリリーサレバー72を有しており、このリリーサレバー72はその中間部分においてリリーサ軸73によりベースブラケット52に揺動自在に支持されている。また、リリーサレバー72の一方の先端部はラッチ53に係合した状態のラチェット56の一端に当接するようになっており、他方の先端部には開作動用リリーサケーブル74が連結されている。なお、このリリーサレバー72はドアハンドル14bにも機械的に連結されており、ドアロック機構51によるスライドドア14の全閉位置への保持(ロック)状態において、操作者がドアハンドル14bを操作すると、リリーサレバー72が作動してラチェット56によるラッチ53のフルラッチ位置への保持を解除可能とされている。
図11(a)〜(c)は開作動用リリーサ機構によるラチェットの解除動作を示す説明図である。図11(a)に示すように、フルラッチ位置にあるラッチ53にラチェット56が係合してスライドドア14が全閉位置に保持された状態のもとで開作動用リリーサケーブル74が図中上方に向けて引かれると、図11(b)に示すように、リリーサレバー72が図11中時計回り方向に回動する。これにより、ラチェット56はリリーサレバー72に押されて図11中反時計回り方向つまりラッチ53から離れる方向に回転し、ラチェット56のラッチ53との係合が解除される。ラチェット56のラッチ53への係合が解除されると、図11(c)に示すように、ラッチ53はアンラッチ位置にまで回転し、これにより、スライドドア14のドアロック機構51による保持が解除される。
一方、図10に示すように、全開フック機構61には、当該全開フック機構61によるスライドドア14の全開位置への保持(ロック)つまりロック機構66によるフックアーム62の保持を自動的に解除するために、閉作動用リリーサ機構75が設けられている。この閉作動用リリーサ機構75はロック機構66に隣接してベースケース64の内部に収容されており、これに接続される閉作動用リリーサケーブル76により操作されるようになっている。なお、この閉作動用リリーサ機構75には、閉作動用リリーサケーブル76を常時引く方向に付勢する付勢手段(不図示)が設けられている。
図12(a)〜(c)は閉作動用リリーサ機構による全開フック機構の解除動作を示す説明図である。図12(a)に示すように、ストライカ65に係合したフックアーム62がロック機構66によりロック位置に保持されてスライドドア14が全開位置に保持された状態のもとで閉作動用リリーサケーブル76が図中右側に向けて引かれると、閉作動用リリーサ機構75によりロック機構66がロック状態からアンロック状態に解除動作される。これにより、図12(b)に示すように、フックアーム62のアンロック側への揺動が可能となり、図12(c)に示すように、全開フック機構61によるスライドドア14の保持が解除される。
図4に示すように、開作動用リリーサケーブル74と閉作動用リリーサケーブル76とを駆動して、各リリーサ機構71,75を自動的に作動させるために、駆動ユニット31にはリリーサ駆動機構81が設けられている。
図13は図4に示すリリーサ駆動機構の詳細を示す正面図であり、このリリーサ駆動機構81は開作動用リリーサ部材としての開作動用駆動アーム82と閉作動用リリーサ部材としての閉作動用駆動アーム83とを有している。これらの駆動アーム82,83は、それぞれ所定の長さの板状であるとともに、その軸線が互いに逆方向に曲がるJ字状に形成されている。
開作動用リリーサケーブル74の他端には円柱状のケーブルエンド74aが固定され、対応するケーブル出入り部48bからドラムケース36の内部に引き込まれた開作動用リリーサケーブル74はこのケーブルエンド74aにおいて開作動用駆動アーム82の基端部に連結されている。同様に、閉作動用リリーサケーブル76の他端には円柱状のケーブルエンド76aが固定され、対応するケーブル出入り部48aからドラムケース36の内部に引き込まれた閉作動用リリーサケーブル76はこのケーブルエンド76aにおいて閉作動用駆動アーム83の基端部に連結されている。つまり、開作動用駆動アーム82は開作動用リリーサケーブル74とリリーサレバー72とを介してラチェット56に連結され、閉作動用駆動アーム83は閉作動用リリーサケーブル76と閉作動用リリーサ機構75とを介してロック機構66に連結されている。
なお、ドアロック機構51と駆動ユニット31、全開フック機構61と駆動ユニット31との間には、それぞれ可撓性を有する樹脂材料により形成されて湾曲自在のアウターチューブ84,85が設けられ、開作動用リリーサケーブル74と閉作動用リリーサケーブル76はこれらのアウターチューブ84,85に挿通されて当該アウターチューブ84,85に沿って移動するようになっている。
図13中に一点鎖線で示すように、ドラムケース36のカバー86には、それぞれキャリア45の接線方向に向けて延びるとともに互いに平行となる一対の案内溝87a,87bが設けられている。開作動用駆動アーム82の基端部に連結される開作動用リリーサケーブル74のケーブルエンド74aは案内溝87aに移動自在に係合しており、ケーブルエンド74aが当該案内溝87aに沿って案内されることにより、開作動用駆動アーム82の基端部は当該案内溝87aに沿って移動自在となっている。同様に、閉作動用駆動アーム83の基端部に連結される閉作動用リリーサケーブル76のケーブルエンド76aは案内溝87bに移動自在に係合しており、ケーブルエンド76aが当該案内溝87bに沿って案内されることにより、閉作動用駆動アーム83の基端部は当該案内溝87bに沿って移動自在となっている。また、図13中に一点鎖線で示すように、カバー86には、それぞれ出力軸35を中心とした円弧状に形成されるとともに図13中において左右対称となる一対の案内溝88a,88bが設けられている。開作動用駆動アーム82の先端部には当該アーム82の表裏両方に突出するように円柱状の係合突起82aが設けられ、この係合突起82aの一方側の突出部分が案内溝88aに移動自在に係合することにより、開作動用駆動アーム82の先端部は案内溝88aに沿って移動自在となっている。同様に、閉作動用駆動アーム83の先端部には当該アーム83の表裏両方に突出するように円柱状の係合突起83aが設けられ、この係合突起83aの一方側の突出部分が案内溝88bに移動自在に係合することにより、閉作動用駆動アーム83の先端部は案内溝88bに沿って移動自在となっている。このような構成により、開作動用駆動アーム82を図13中に示す初期位置から案内溝87a,88aに沿って移動させることにより、開作動用リリーサケーブル74を駆動して開作動用リリーサ機構71を解除動作させることができるようになっている。また、閉作動用駆動アーム83を図13中に示す初期位置から案内溝87b,88bに沿って移動させることにより、閉作動用リリーサケーブル76を駆動して閉作動用リリーサ機構75を解除動作させることができるようになっている。
開作動用駆動アーム82を案内溝87a,88aに沿って駆動するためにキャリア45には開作動用駆動部89aが設けられ、閉作動用駆動アーム83を案内溝87b,88bに沿って駆動するためにキャリア45には閉作動用駆動部89bが設けられている。開作動用駆動部89aと閉作動用駆動部89bは、それぞれキャリア45の外径が変化する段差部分に当該キャリア45の径方向に平行な面状となって形成されており、これらの駆動部89a,89bは互いに出力軸35の中心を基準として図13中において左右対称となるように配置されている。図13に示す初期状態においては、開作動用駆動部89aは案内溝88aのケーブル出入り部48bに近い側のストローク端に位置し、閉作動用駆動部89bは案内溝88bのケーブル出入り部48aに近い側のストローク端に位置しており、キャリア45が図13中反時計回り方向に回転すると開作動用駆動部89aは案内溝88aに沿って移動し、キャリア45が図13中時計回り方向に回転すると閉作動用駆動部89bは案内溝88bに沿って移動するようになっている。また、図13に示す初期状態においては、開作動用駆動部89aは開作動用駆動アーム82の係合突起82aの他方の突出部分に当接可能に位置し、閉作動用駆動部89bは閉作動用駆動アーム83の係合突起83aの他方の突起部分に当接可能に位置している。そして、各駆動部89a,89bは各係合突起82a,83aと当接するまでの間で僅かに移動可能とされ、つまり、この初期状態において、キャリア45は各係合突起82a,83aを作動させることなく僅かに回転可能に構成されており、これにより、キャリア45の予期しない微回転によって各駆動アーム82,83が誤作動しないようになっている。
図14(a)〜(c)はそれぞれリリーサ駆動機構による開作動用リリーサケーブルの駆動手順を示す説明図であり、図15(a)、(b)はそれぞれリリーサ駆動機構による閉作動用リリーサケーブルの駆動手順を示す説明図である。
スライドドア14がドアロック機構51により全閉位置に保持された状態では、ドラム37は開側ケーブル25aとスライドドア14とを介して車体12に拘束された状態となっている。そのため、スライドドア14がドアロック機構51により全閉位置に保持された状態のもとで、図示しない開閉スイッチの開側が操作されて減速機付きモータ32の出力軸35が開方向に回転すると、その回転力はキャリア45に伝達され、図14(a)に示すように、当該キャリア45が反時計回り方向に回転する。キャリア45が図14中反時計回り方向に回転すると、図14(b)に示すように、開作動用駆動部89aにより係合突起82aが押されて開作動用駆動アーム82が案内溝87a,88aに沿って移動し、開作動用リリーサケーブル74が作動する。開作動用リリーサケーブル74が作動すると、図11に示すように、開作動用リリーサ機構71によりラチェット56が解除動作され、ドアロック機構51によるスライドドア14の全閉位置への保持が解除される。
ドアロック機構51によるスライドドア14の全閉位置への保持が解除されると、開側ケーブル25aによるドラム37の拘束が解除され、これにより、出力軸35の回転力はドラム37に伝達され、図8(a)に示すように、当該ドラム37が開方向に回転してスライドドア14は全開位置に向けて自動開動作する。
スライドドア14が全開位置にまで達し、全開フック機構61により全開位置に保持されると、制御装置により減速機付きモータ32が停止され、次いで、電磁クラッチが動力遮断状態に切り替えられる。これにより、開作動用駆動アーム82が開作動用リリーサケーブル74を介してリリーサレバー72を付勢するリターンスプリングのばね力により引かれることにより、図14(c)に示すように、キャリア45は開作動用駆動アーム82により駆動されて初期位置にまで戻り動作する。
次に、スライドドア14が全開フック機構61により全開位置に保持された状態では、ドラム37は閉側ケーブル25bとスライドドア14とを介して車体12に拘束された状態となっている。そのため、スライドドア14が全開フック機構61により全開位置に保持された状態のもとで、図示しない開閉スイッチの閉側が操作されて減速機付きモータ32の出力軸35が閉方向に回転すると、その回転力はキャリア45に伝達され、図15(a)に示すように、当該キャリア45が時計回り方向に回転する。キャリア45が図15中時計回り方向に回転すると、図15(b)に示すように、閉作動用駆動部89bにより係合突起83aが押されて閉作動用駆動アーム83が案内溝87b,88bに沿って移動し、閉作動用リリーサケーブル76が作動する。閉作動用リリーサケーブル76が作動すると、図12に示すように、閉作動用リリーサ機構75によりロック機構66が解除動作され、全開フック機構61によるスライドドア14の全開位置への保持が解除される。
全開フック機構61によるスライドドア14の全開位置への保持が解除されると、閉側ケーブル25bによるドラム37の拘束が解除され、これにより、出力軸35の回転力がドラム37に伝達されて、図8(b)に示すように、当該ドラム37が閉方向に回転してスライドドア14は全閉位置に向けて自動閉動作する。
そして、前述したように、ドアロック機構51の作動によってスライドドア14が全閉位置に保持されると、制御装置により減速機付きモータ32が停止され、次いで、電磁クラッチが動力遮断状態に切り替えられる。これにより、閉作動用駆動アーム83が閉作動用リリーサケーブル76を介して閉作動用リリーサ機構75に設けられた付勢手段のばね力により引かれることにより、図13に示す初期状態となるように、キャリア45は閉作動用駆動アーム83により駆動されて初期位置にまで戻り動作する。
このように、この開閉装置24では、スライドドア14を駆動ユニット31により駆動して全閉位置から自動的に開くときには、スライドドア14を自動開閉動作させるための減速機付きモータ32の出力により開作動用駆動アーム82を駆動して、ラッチ53に係合するラチェット56を自動的に解除動作させることができる。また、この開閉装置24では、スライドドア14を駆動ユニット31により駆動して全開位置から自動的に閉じるときには、スライドドア14を自動開閉動作させるための減速機付きモータ32の出力により閉作動用駆動アーム83を駆動して、全開フック機構61のロック機構66を解除動作させることができる。したがって、リリーサ機構用として、つまりラチェット56やロック機構66を解除動作させるために別の減速機付きモータを設けることなく、単一の減速機付きモータ32でスライドドア14を自動開閉動作させるとともにドアロック機構51や全開フック機構61を解除動作させることができる。これにより、この開閉装置24を小型化して、その車体12への搭載性を高めることができる。
なお、出力軸35の回転をドラム37に伝達させるためには、各ケーブル25a,25bによるドラム37の拘束を解除するだけではなく、キャリア45を回転できないように拘束する必要があるが、その構造については後述する。
図9に示すように、この開閉装置24には、半ドア位置にまで閉じられたスライドドア14をドアシール材14aの弾性力に抗して全閉位置にまで引き込むために、クローザ機構91が設けられている。
なお、本実施の形態においては、ローラアッシー22がセンターレール18の曲部に達したときにスライドドア14が半ドア位置となるように設定され、ローラアッシー22が曲部を移動することにより駆動ロスを生じる範囲でスライドドア14をクローザ機構91により引き込むようになっている。
図9に示すように、クローザ機構91はラッチ53をフルラッチ方向へ駆動するための駆動レバー92を有している。この駆動レバー92はその基端部において支軸93によりドアロック機構51のベースブラケット52に回動自在に支持され、その先端側に設けられる連結部92aには閉鎖用連結部材としてのクローザケーブル94の先端が連結されている。駆動レバー92の中間部分にはピン部材95により連結リンク96の一端が回転自在に連結され、この連結リンク96の他端はピン部材97によりラッチ53に回転自在に連結されている。つまり、駆動レバー92は連結リンク96によりラッチ53と連結されて当該ラッチ53と連動するようになっている。
支軸93にはスプリング98が装着され、このスプリング98により駆動レバー92と連結リンク96は初期位置に向けて(図9中時計回り方向に)付勢されている。これにより、ラッチ53に対するラチェット56の係合が解除されると、ラッチ53はスプリング98のばね力によりアンラッチ位置にまで回転し、スライドドア14はラッチ53による保持から開放される。また、ベースブラケット52にはストッパブロック99が設けられ、ラッチ53がアンラッチ位置にあるときには、連結リンク96がストッパブロック99に当接してラッチ53のそれ以上のアンラッチ方向(図9中反時計回り方向)への回転が規制されるようになっている。
クローザケーブル94の牽引力により駆動レバー92が支軸93を中心として図9に示す初期位置(ラッチ53がアンラッチ位置となる位置)から図9中反時計回り方向に回動すると、ラッチ53は駆動レバー92に駆動されてアンラッチ位置からフルラッチ位置に向けて回動する。このとき、ピン部材97はベースブラケット52に形成された円弧状の逃げ溝52aに沿って円弧状に移動する。
ドアロック機構51のベースブラケット52と駆動ユニット31のケーブル出入り部48cとの間には可撓性を有する樹脂材料により湾曲自在に形成されたアウターチューブ101が設けられ、一端が駆動レバー92に連結されたクローザケーブル94はアウターチューブ101に挿通されてドラムケース36の内部にまで導かれている。
図13に示すように、駆動ユニット31には、クローザケーブル94を駆動するために、閉鎖用回転体としてのクローザドラム102が設けられている。このクローザドラム102は円筒状に形成され、図6に示すように、キャリア45のボス部45aの外側に当該キャリア45と同軸且つ相対回転自在に支持されている。
ケーブル出入り部48cからドラムケース36の内部に引き込まれたクローザケーブル94は、クローザドラム102の外周に掛け渡され、図13に示すように、その端部に設けられる円柱状のケーブルエンド94aにおいてクローザドラム102に固定されている。これにより、クローザドラム102が図13中で時計回り方向に回転すると、クローザケーブル94はクローザドラム102に巻き取られて作動するようになっている。
図13に示すように、クローザドラム102の外周には、それぞれ径方向外側に突出するとともに軸心を中心として互いに180度対称に配置される一対の被駆動用凸部103a,103bが設けられ、一方、ドラムケース36のカバー86には、それぞれの被駆動用凸部103a,103bに対応した一対のストッパ部104a,104b(便宜上、図13中にハッチングを付して示す)が設けられている。クローザドラム102が初期位置(図13に示す位置)にあるときには、スプリング98によってそれぞれの被駆動用凸部103a,103bは対応するストッパ部104a,104bに図13中反時計回り方向に付勢されて当接しており、これにより、クローザドラム102の図13中における反時計回り方向への回転が規制されるようになっている。また、キャリア45には、それぞれの被駆動用凸部103a,103bに対応して一対の駆動用凸部105a,105bが設けられており、減速機付きモータ32の閉方向への回転によりキャリア45が初期位置(基準位置)から図13中時計回り方向に向けて所定角度回転したときには、当該駆動用凸部105a,105bがクローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bに当接して、クローザドラム102はキャリア45により駆動されて当該キャリア45とともに回転するようになっている。つまり、クローザケーブル94は、その一端において駆動レバー92と連結リンク96とを介してラッチ53に連結されるとともに、その他端においてクローザドラム102を介してキャリア45に連結されており、これにより、クローザケーブル94はキャリア45の回転をラッチ53に伝達することができるようになっている。
なお、クローザドラム102はスプリング98によりクローザケーブル94を初期位置に向けて引く方向つまりラッチ53をアンラッチ方向に回転させる方向に付勢されており、これにより、クローザ機構91を作動しないときにおけるクローザケーブル94の弛みを防止してその作動の安定性が高められるようになっている。
図9に示すように、この開閉装置24では、ラッチ53と駆動レバー92とを連結する連結リンク96をトグル機構として構成し、これにより、スライドドア14が半ドア位置にまで閉じられたときに、当該スライドドア14の動作を自動閉動作からクローザ機構91による引き込み動作に切り替えるための切替え機構として機能させるようにしている。
図16(a)、(b)は、それぞれスライドドアの動作を自動閉動作からクローザ機構による引き込み動作に切り替える切替え動作を示す説明図である。
スライドドア14が半ドア位置よりも開かれた状態となってラッチ53がアンラッチ位置にあるときには、図16(a)に示すように、ラッチ53と連結リンク96とを連結するピン部材97の軸心は、ラッチ53の回転中心つまりラッチ軸54の軸心と駆動レバー92と連結リンク96とを連結するピン部材95の軸心とを結ぶ直線L(仮想線)よりもアンラッチ側(ラッチ53がフルラッチ位置からアンラッチ位置に向けて回転する方向側)に位置するようになっている。これにより、クローザケーブル94の牽引力が駆動レバー92に付与されても、その力は連結リンク96を介してラッチ53をさらにアンラッチ方向に回動させようとする方向に加わり、ストッパブロック99によりラッチ53の回動が規制される。つまり、スライドドア14が半ドア位置よりも開かれた状態であってラッチ53がアンラッチ位置にあるときには、クローザケーブル94の牽引力つまりキャリア45(クローザドラム102)の回転によるラッチ53のフルラッチ方向への回転が規制されるようになっている。
一方、開状態のスライドドア14が全閉位置に向けて閉じられると、ストライカ58がベースブラケット52の内部に侵入してラッチ53のラッチ溝53aに係合して、ラッチ53がストライカ58に押されてスプリング98のばね力に抗してアンラッチ位置からフルラッチ位置方向に向けて回動を開始する。そして、図16(b)に示すように、ラッチ53と連結リンク96とを連結するピン部材97の軸心は、ラッチ軸54の軸心とピン部材95の軸心とを結ぶ直線Lよりもフルラッチ側(ラッチ53がアンラッチ位置からフルラッチ位置に向けて回転する方向側)にまで移動する。これにより、トグル機構つまり切替え機構によるラッチ53の回動規制が解除され、クローザケーブル94の牽引力が駆動レバー92に付与されると、その力が連結リンク96を介してラッチ53に伝達されてラッチ53はフルラッチ位置に向けて回転することになる。なお、本実施の形態においては、切替え機構によるラッチ53の回動規制の解除位置は、ラッチ53がハーフラッチ位置に到達する位置、つまり、ラチェット56がラッチ53のハーフラッチ溝53bと係合する位置に設定されている。
開作動用リリーサ機構71によりスライドドア14の全閉位置への保持が解除された後、スライドドア14が全閉位置から自動開動作する際には、図14(b)に示すように、キャリア45の駆動用凸部105a,105bがクローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bを介してカバー86のストッパ部104a,104bに当接する。これによりキャリア45の図14中の反時計回り方向への回転が拘束され、出力軸35の開方向への回転は図8(a)に示すようにドラム37に伝達され、スライドドア14は自動開動作することになる。一方、閉作動用リリーサ機構75によりスライドドア14の全開位置への保持が解除された後、スライドドア14が全開位置から自動閉動作する際には、図15(b)に示すように、クローザケーブル94により回転が規制された状態のクローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bにキャリア45の駆動用凸部105a,105bが当接する。これによりキャリア45の図15中時計回り方向の回転が拘束され、出力軸35の閉方向への回転は図8(b)に示すようにドラム37に伝達されて、スライドドア14が自動閉動作することになる。
図17(a)、(b)は、それぞれクローザドラムの作動を示す説明図であり、図18(a)〜(c)は、それぞれクローザ機構によるラッチの駆動状態を示す説明図である。
キャリア45が拘束されて出力軸35の回転がドラム37に伝達され、スライドドア14が自動閉動作されて当該スライドドアが半ドア位置にまで閉じられると、図16(b)に示すように連結リンク96による駆動レバー92の作動規制が解除される。また、スライドドア14が半ドア位置に達するとドアシール材14aの反力により、ドラム37の駆動負荷が増加する。これにより、減速機付きモータ32の出力軸35の回転は、図17(a)に示すように、キャリア45に伝達され、当該キャリア45が図17中時計回り方向に回転を開始する。キャリア45が回転すると、その駆動用凸部105a,105bによりクローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bが押され、キャリア45とともにクローザドラム102が図17中時計回り方向に回転する。
ここで、カバー86には案内溝88bに連なるとともに当該案内溝88bの軸線に対して外側にずれる逃げ溝106が設けられており、キャリア45の回転によってクローザドラム102が回転すると、閉作動用駆動アーム83の係合突起83aはこの逃げ溝106に案内されてキャリア45の閉作動用駆動部89bとの係合が解除される。これにより、クローザドラム102の回転作動時に、キャリア45の閉作動用駆動部89bによって係合突起83aが必要以上に引き回されることがないように構成されている。
キャリア45と係合突起83aとの係合が解除されると、クローザドラム102とキャリア45は、図17(b)に示すように、クローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bがカバー86のストッパ部104a,104bに当接する所定の範囲内で回転可能となる。そして、キャリア45の回転によりクローザドラム102が回転し、クローザケーブル94が駆動されると、クローザケーブル94の牽引力が駆動レバー92を介してラッチ53に伝達され、図18(a)に示すように、ハーフラッチ位置においてストライカ58に係合したラッチ53は、図18(b)に示す位置を経て、図18(c)に示すフルラッチ位置にまで駆動され、スライドドア14は全閉位置にまで引き込まれることになる。つまり、スライドドア14が半ドア位置にまで閉じられると、ラッチ53はキャリア45により駆動されてフルラッチ方向に回転し、スライドドア14が全閉位置にまで引き込まれることになる。なお、クローザドラム102の回転によるラッチ53のフルラッチ位置までの駆動は、クローザドラム102の被駆動用凸部103a,103bがカバー86のストッパ部104a,104bに当接するまでの間に完了するよう設定されている。
このように、この開閉装置24では、スライドドア14が半ドア位置にまで閉じられたときには、スライドドア14を自動開閉動作させるための減速機付きモータ32によりラッチ53をフルラッチ位置にまで駆動して、半ドア位置にまで閉じられたスライドドア14を全閉位置にまで引き込むことができる。したがって、クローザ機構用つまりラッチ53をフルラッチ位置にまで駆動するために別の減速機付きモータを設けることなく、単一の減速機付きモータ32でスライドドア14を自動開閉動作させるとともに全閉位置へ引き込み動作させることができる。これにより、この開閉装置24を小型化して、その車体12への搭載性を高めることができる。
図19は図2に示す開閉装置の変形例を示す説明図である。なお、図19においては前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
図2に示す開閉装置24では、ガイドレールとしてのロワーレール17を車体12に固定し、支持アームとしてのロワーアーム15をスライドドア14に設けるとともに、駆動ユニット31、ドアロック機構51および全開フック機構61をスライドドア14の内部に配置するようにしている。これに対して、図19に示す変形例では、駆動ユニット31、ドアロック機構51および全開フック機構61をロワーレール17と同一側である車体12に配置するようにしている。
この場合、ロワーレール17の長手方向の両端部にはそれぞれ反転プーリ107a,107bが設けられ、駆動ユニット31から引き出された開側ケーブル25aは反転プーリ107aによりその移動方向を反転されてその先端がロワーレール17に沿った開側(車両後方側)からロワーアーム15に連結され、閉側ケーブル25bは反転プーリ107bによりその移動方向を反転されてその先端がロワーレール17に沿った閉側(車両前方側)からロワーアーム15に連結されている。また、この場合、ドアロック機構51のラッチ53と係合するストライカ58はスライドドア14に固定されている。
図20は図9に示すクローザ機構の変形例を示す正面図である。
図9に示すクローザ機構91では、連結リンク96の一端をピン部材95により駆動レバー92に回転自在に連結し、これにより、駆動レバー92の駆動力を連結リンク96に伝達するようにしている。これに対して、図20に示す変形例では、駆動レバー92に支軸93を中心とした円弧状の長孔110を設け、連結リンク96の一端に装着されるピン部材95をこの長孔110に挿通して連結し、当該長孔110に沿って移動自在に駆動レバー92に支持させるようにしている。これにより、駆動レバー92が初期位置(図20に示す位置)にあっても、ピン部材95が長孔110を移動することにより、ラッチ53は駆動レバー92と連動せずにアンラッチ位置とフルラッチ位置との間で回動することができるようになっている。
支軸93にはスプリング111が装着され、このスプリング111により駆動レバー92は初期位置に向けて(図9中時計回り方向に)付勢されている。また、ラッチ53はラッチ軸54に設けられた図示しないリターンスプリングにより常時アンラッチ位置に向けて付勢されており、ラッチ53に連結された連結リンク96のピン部材95も長孔110のアンラッチ端110a(一方のストローク端)に向けて付勢され、これにより、初期状態(図20に示す状態)では、ピン部材95は長孔110のアンラッチ端110aに配置されるようになっている。
図21(a)〜(d)は、それぞれ図20に示すクローザ機構の作動を示す説明図である。
スライドドア14が半ドア位置よりも開かれた状態となってラッチ53がアンラッチ位置にあるときには、図21(a)に示すように、ラッチ53と連結リンク96とを連結するピン部材97の軸心は直線Lよりもアンラッチ側にあり、図16(a)に示す場合と同様に、クローザケーブル94の牽引力によるラッチ53のフルラッチ方向への回動が規制されている。
この状態からスライドドア14が全閉位置に向けて閉じられると、ラッチ53がストライカ58に押されてアンラッチ位置からフルラッチ位置方向に向けて回動し、図21(b)に示すように、ピン部材97の軸心が直線Lよりもフルラッチ側に移動し、図16(b)に示す場合と同様に、トグル機構つまり切替え機構によるラッチ53の回動規制が解除される。
このとき、駆動レバー92は長孔110においてピン部材95に連結されているので、スライドドア14を閉じる速度つまりラッチ53に対するストライカ58の侵入速度が速く、クローザケーブル94の牽引力による駆動レバー92の回転よりも先に連結リンク96のピン部材95が移動を開始した場合であっても、ピン部材95が長孔110に沿って当該長孔110のフルラッチ端110bに向けて移動し、クローザケーブル94に弛みが生じることがない。したがって、クローザ機構91を確実に作動させることができる。
トグル機構によるラッチ53の回動規制が解除されると、クローザケーブル94の牽引力により駆動レバー92が回動し、ピン部材95は長孔110のアンラッチ端において駆動レバー92により駆動される。これにより、図21(c)に示すように、ラッチ53はフルラッチ位置にまで回転する。
ラッチ53がフルラッチ位置にまで回転し、駆動ユニット31の図示しない電磁クラッチが動力遮断状態に切り替えられると、クローザドラム102の回転がフリーとなり、図21(d)に示すように、駆動レバー92はスプリング111のばね力により付勢されてクローザケーブル94を引きながら初期位置に戻り動作する。このとき、ラッチ53と連結リンク96はフルラッチ状態に維持されるが、ピン部材95は長孔110において駆動レバー92に連結されているので、連結リンク96やピン部材95を引きずることなく、駆動レバー92を滑らかに戻り動作させることができる。なお、駆動レバー92が戻り動作した後には、ピン部材95は長孔110のフルラッチ端110bに配置される。
一方、スライドドア14がドアロック機構51により全閉位置に保持された状態のもとで、図示しない開閉スイッチの開側が操作され、開作動用リリーサ機構71によりラチェット56のラッチ53に対する係合が自動的に解除されると、ピン部材95が図示しないリターンスプリングにより付勢されて初期位置にある駆動レバー92の長孔110に沿って当該長孔110のアンラッチ端110aにまで移動し、これにより、ラッチ53はフルラッチ位置からアンラッチ位置にまで回転して、図20に示す初期位置に復帰する。
なお、図20、図21においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
図22は図5、図6に示すプラネタリギヤ機構に替えて減速機構として差動ギヤ機構を用いるようにした変形例を示す断面図であり、図23は図22に示す差動ギヤ機構の分解斜視図である。
図5、図6に示す場合では、出力軸35の回転をドラム37に伝達するための減速機構としてプラネタリギヤ機構41を用いている。これに対して、図22、図23に示す変形例では、減速機構として差動ギヤ機構121(デファレンシャルギヤ機構)を用いるようにしている。
この差動ギヤ機構121は入力ギヤとしてのドライブ側ベベルギヤ122を備えており、このドライブ側ベベルギヤ122はセレーションが設けられた出力軸35に係合固定され、当該出力軸35とともに一体的に回転するようになっている。
ドラム37の軸方向端面の裏側には出力ギヤとしてのドリブン側ベベルギヤ123が設けられている。このドリブン側ベベルギヤ123はその基部においてドラム37の内周部に嵌合固定されて当該ドラム37とともに回転するようになっている。また、ドリブン側ベベルギヤ123は出力軸35と同軸に配置され、互いに歯の部分を向き合わせるようにドライブ側ベベルギヤ122に対して軸方向に対向している。
ドラム37の内側には当該ドラム37と同軸に支持部材124が収容されている。この支持部材124の軸心には出力軸35の側に向けて開口する連結孔124aが形成され、一方、出力軸35の先端には軸方向に沿って延びる円柱状のガイド部125が一体に形成されており、連結孔124aにガイド部125が挿通されることにより、支持部材124はガイド部125により支持された状態となって出力軸35と相対回転自在に連結されている。
支持部材124の外周には、出力軸35に直交つまり当該外周から径方向外側に突出する一対の支軸126が、互いに同軸、且つドラム37の軸方向の略中央部に位置するように一体に設けられている。各支軸126には、それぞれ切替え用ギヤとしてのサイド側ベベルギヤ127が装着されている。これらのサイド側ベベルギヤ127は、それぞれ対応する支軸126により回転自在に支持されるとともに、それぞれドライブ側ベベルギヤ122とドリブン側ベベルギヤ123との間に配置されて当該ベベルギヤ122,123に噛み合わされている。
支持部材124の連結孔124aが設けられる側とは反対側の先端はドリブン側ベベルギヤ123の軸心を貫通してドラム37の外側に突出しており、当該先端部にはセレーションが設けられるとともに、小径の固定ねじ部128が突設されており、セレーションにキャリア45を係合させて固定ねじ部128にナット129を螺合することによりキャリア45が固定されている。つまり、サイド側ベベルギヤ127は支持部材124を介してキャリア45に回転自在に支持され、キャリア45とともに出力軸35の軸心を中心として回転することができるようになっている。なお、ドリブン側ベベルギヤ123は支持部材124に対して相対回転自在となっている。
このような構造により、スライドドア14がドアロック機構51や全開フック機構61により全閉位置または全開位置に保持された状態では、各ケーブル25a,25bを介してスライドドア14に連結されるドラム37とともにドリブン側ベベルギヤ123はその回転が拘束された状態となり、減速機付きモータ32が作動すると、出力軸35つまりドライブ側ベベルギヤ122の回転はサイド側ベベルギヤ127とキャリア45つまり差動ギヤ機構121を介してリリーサ駆動機構81に伝達される。このとき、差動ギヤ機構121の機能により、出力軸35の回転は1/2に減速され出力トルクが2倍となってリリーサ駆動機構81に伝達される。また、スライドドア14の自動閉動作がクローザ機構91による引き込み動作に切り替えられたときにも同様に、出力軸35の回転は差動ギヤ機構121を介してクローザ機構91に伝達される。このとき、差動ギヤ機構121の機能により、出力軸35の回転は1/2に減速され出力トルクが2倍となってクローザ機構91に伝達されることになり、その分、減速機付きモータ32の出力を小さくすることができる。一方、スライドドア14が自動開閉動作する際には、キャリア45つまりサイド側ベベルギヤ127の出力軸35を中心とした回転が規制され、これにより、出力軸35つまりドライブ側ベベルギヤ122の回転はサイド側ベベルギヤ127を介してドリブン側ベベルギヤ123に伝達され、ドラム37が回転することになる。このときは、差動ギヤ機構121の機能により、出力軸35の回転は1:1でドラム37に伝達される。
なお、図22、図23においては、前述した部材に対応する部材には同一の符号が付されている。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施の形態においては、開閉装置24はロワーレール17に案内されるロワーアーム15を各ケーブル25a,25bにより駆動するロワー駆動タイプとなっているが、これに限らず、センターレール18に案内されるセンターアーム16を各ケーブル25a,25bにより駆動するセンター駆動タイプとしてもよい。
また、前記実施の形態においては、開側ケーブル25aと閉側ケーブル25bは別体に形成されるが、これに限らず、1本のケーブルの中間部位をドラム37に巻き付け、その一端側を開側ケーブル25a、他端側を閉側ケーブル25bとしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、開状態保持機構はスライドドア14を全開位置に保持するようになっているが、これに限らず、スライドドア14を全閉位置と全開位置との間の所定の開位置に保持するものとしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、ドアロック機構51と全開フック機構61はスライドドア14または車体12の同一側に設けられているが、これに限らず、これらをスライドドア14または車体12に別々に設けるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、切替え機構によるラッチ53の回動規制の解除位置を、ラッチ53がハーフラッチ位置に到達する位置、つまり、ラチェット56がラッチ53のハーフラッチ溝53bと係合する位置に設定したものを示したが、これに限らず、ストライカ58によってラッチ53がフルラッチ位置方向に押された直後の位置等、ラッチ53がハーフラッチ位置に到達する前の位置に設定するようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、切替え機構として連結リンク96をトグル機構として連結するようにしたものを用いているが、これに限らず、所定の場合にラッチ53の回転を規制できる機構であれば、他の構造のものを用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、キャリア45とラッチ53とはクローザケーブル94を用いて連結し、また、開作動用駆動アーム82とリリーサレバー72、閉作動用駆動アーム83と閉作動用リリーサ機構75とをリリーサケーブル74,75を用いて連結したものを示したが、これに限らず、互いの部品が同期して動作する機構であれば、例えばリンク機構等により連結するようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、各索条体はそれぞれケーブル25a,25bとされているが、これに限らず、索条体としてゴムベルトやワイヤ、チェーン等も用いてもよく、これに対応して反転プーリ107a,107bに替えてスプロケット等を用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、減速機構としてプラネタリギヤ機構41または作動ギヤ機構121を用いるようにしているが、これに限らず、入力ギヤと出力ギヤと切替え用ギヤとを備えたものであれば、他の減速機構を用いるようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、減速機構としてのプラネタリギヤ機構41または差動ギヤ機構121をドラム37の内部に設けるようにしているが、これに限らず、ドラム37の外部に構成するようにしてもよい。
さらに、前記実施の形態においては、減速機構における入力ギヤと出力ギヤとを同軸に配置したものを示したが、これに限らず、レイアウトに応じて入力ギヤと出力ギヤとを平行する2軸としたり、直交する2軸とするようにしてもよい。