JP5230341B2 - 二次電池用非水電解液及び該電解液を用いた非水電解液二次電池 - Google Patents

二次電池用非水電解液及び該電解液を用いた非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、二次電池用非水電解液及び該電解液を用いた非水電解液二次電池に関する。
近年の携帯用パソコン、ハンディビデオカメラ、情報端末等の携帯電子機器の普及に伴い、高電圧、高エネルギー密度を有する非水電解液二次電池が電源として広く用いられるようになった。また、環境問題の観点から、電池自動車や電力を動力の一部に利用したハイブリッド車の実用化が行われている。
非水電解液二次電池に使用する非水電解液には、ヘキサフルオロリン酸リチウム塩やテトラフルオロホウ酸リチウム塩が使用されることが多い。これらの塩を含有する非水電解液を使用した非水電解液二次電池では、ヘキサフルオロリン酸アニオンやテトラフルオロホウ酸アニオンから熱平衡反応によって発生するペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素を原因物質とする高温劣化反応が起ることが避けられなかった。この高温劣化反応は、正極表面及び負極表面で主に起こり、それらの反応は、非水電解液中に添加される添加剤によってある程度は抑制することができたが、その抑制効果は十分なものではなかった。
例えば、負極の表面に被膜を形成させる添加剤として、リチウム負極を使用する二次電池において、特許文献1には、1,3−プロパンスルトンを含有する非水電解液が提案されており、特許文献2には、ビニルエチレンカーボネートを含有する非水電解液が提案されており、特許文献3には、ビニレンカーボネートを含有する非水電解液が提案されている。炭素負極を使用する二次電池において、特許文献4には、1,3−プロパンスルトン及びブタンスルトンを含有する非水電解液が提案されている。結晶度の高い黒鉛系負極を使用する二次電池において、特許文献5及び特許文献6には、ビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネート等を含有する非水電解液が提案されている。これらの添加剤は、負極の表面で重合又は還元分解することにより、該負極の表面に、非水電解液の還元分解を抑制する安定な被膜いわゆるSEI(Solid Electrolyte Interface:固体電解質膜)を形成する。この被膜が負極の表面を覆うことにより、負極の表面で起こるペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素を原因物質とする高温劣化反応はある程度抑制される。しかし、負極を覆う被膜自体がペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素によって徐々に崩壊するので、その抑制効果は十分なものではなかった。
正極の表面を保護する添加剤として、特許文献7には、ビニル基等不飽和基を含有するジシロキサンを含有する非水電解液が提案されており、特許文献8には、アルケニル基が結合したフルオロシランを含有する非水電解液が提案されており、特許文献9には、アルキレンビスフルオロシランを含有する非水電解液が提案されており、特許文献10には、エーテル基が結合したフルオロシラン等を含有する非水電解液が提案されている。これらの添加剤は、正極の表面を吸着保護することで、正極の表面で起る非水電解液の酸化分解を抑制する。この正極の表面の吸着保護は、高温においては吸着と脱離が繰り返されるために、高温保存においてはその保護効果が十分なものではなかった。
特開昭63−102173号公報 特開平04−87156号公報 特開平05−74486号公報 特開平10−50342号公報 特開平08−045545号公報 特開2001−6729号公報 特開2002−134169号公報 特開2004−39510号公報 特開2007−12595号公報 特開2007−287491号公報
従って、本発明の目的は、高温保存を経ても小さな内部抵抗と高い電気容量を維持することが出来る二次電池用非水電解液及び該非水電解液を用いた非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明は、電解質塩を有機溶媒に溶解させた電解液において、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを含有することを特徴とする二次電池用非水電解液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明は、非水電解液として、上記非水電解液を含む非水電解液二次電池を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明の二次電池用非水電解液は、非水電解液中に、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを添加したものである。この2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンが添加された非水電解液を非水電解液二次電池に使用することによって、該非水電解液二次電池に優れた耐久性と出力特性を付与することができる。
以下、本発明で提案する2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンの効果について詳述する。
本発明で提案する2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンは、高温劣化の原因物質、具体的にはヘキサフルオロリン酸アニオンやテトラフルオロホウ酸アニオンから熱平衡反応によって発生するペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素を安定化する効果があり、それによって、該非水電解液を用いた非水電解液二次電池の高温劣化の抑制が達成される。
これに対し、従来の添加剤である2−アルケニル基が結合していないジシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンや1,3−ジビニル1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンは、高温の非水電解液中でジシロキサンの結合が切れて、フルオロシランに分解する。このため、これらの2−アルケニル基が結合していないジシロキサンには、ペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素を長期にわたって安定化する効果はない。
本発明で提案する2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンは、高温の電解液中でフルオロシランに分解することはないので、長期にわたってペンタフルオロリンやトリフルオロホウ素を安定化する効果が発現する。
即ち、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを添加した本発明の二次電池用非水電解液を非水電解液二次電池に使用することによって、高温保存を経ても高い電気容量と低い内部抵抗を維持する非水電解液二次電池を提供することができる。これは、従来の添加剤では得ることができなかったものである。
以下に本発明の二次電池用非水電解液及び該非水電解液を用いた非水電解液二次電池について好ましい実施形態に基づき詳述する。
本発明の二次電池用非水電解液は、電解質塩を有機溶媒に溶解させた電解液において、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを含有する。この2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)や下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0005230341
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
Figure 0005230341
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
上記一般式(1)又は(2)において、R1及びR2で表わされる炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記一般式(1)又は(2)で表される化合物としては、例えば、下記の化合物No.1〜No.13等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0005230341
本発明の二次電池用非水電解液において、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンの含有量は、非水電解液中、0.01〜5質量%であり、0.03〜4質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。0.01質量%未満ではその効果が認められ難く、また、5質量%を超えて含有させても、効果はそれ以上発現しなくなるので無駄であるばかりでなく、却って非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。尚、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の二次電池用非水電解液には、ビニレンカーボネート(VC)又は下記一般式(3)〜(6)の何れかで表される非芳香族鎖状炭酸エステル化合物を添加することが、負極表面での非水電解液の分解反応を抑制し、また非水電解液二次電池の容量劣化を低減し、非水電解液二次電池を長寿命化するという観点から好ましい。
Figure 0005230341
(式中、nは1〜6の整数を示し、mは整数を示す。但し、n及びmは、2n+1≧mの関係を満たす。R9は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は水素原子を示す。)
上記一般式(3)又は(4)において、R9、R10及びR11で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
上記一般式(3)〜(6)で表される非芳香族鎖状炭酸エステル化合物としては、例えば、下記の化合物No.14〜No.33等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0005230341
Figure 0005230341
Figure 0005230341
Figure 0005230341
本発明の二次電池用非水電解液において、ビニレンカーボネート(VC)又は上記一般式(3)〜(6)で表される非芳香族系鎖状炭酸エステルの含有量は、非水電解液中、0.01〜5質量%であり、0.03〜4質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。0.01質量%未満ではその効果が認められ難く、また、5質量%を超えて含有させても、効果はそれ以上発現しなくなるので無駄であるばかりでなく、却って非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。ビニレンカーボネート又は上記一般式(3)〜(6)で表される非芳香族系鎖状炭酸エステルは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の二次電池用非水電解液には、さらに必要に応じて、フルオロシラン化合物、ビニレンカーボネート(VC)以外の不飽和基を有する環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、不飽和ジエステル化合物、ハロゲン化環状カーボネート化合物、環状亜硫酸エステル、又は環状硫酸エステルを添加してもよい。
上記フルオロシラン化合物としては、1,2−ビス(フルオロジメチルシリル)エタン(DSiFE)、1,3−ビス(フルオロジメチルシリル)プロパン、1,4−ビス(フルオロジメチルシリル)ブタン、1,6−ビス(フルオロジメチルシリル)ヘキサン、1,4−ビス(フルオロジメチルシリル)−2−メチルブタン(DSiFMB)、フルオロ(3−メトキシプロピル)ジメチルシラン(FMDMSi)、3−エトキシプロピルフルオロジメチルシラン、フルオロ(3−プロポキシプロピル)ジメチルシラン等が挙げられる。上記不飽和基を有する環状カーボネート化合物としては、ビニルエチレンカーボネート、プロピリデンカーボネート、エチレンエチリデンカーボネート、エチレンイソプロピリデンカーボンート等が挙げられ、これらの中では、ビニルエチレンカーボネートが好ましい。上記鎖状カーボネート化合物としては、ジプロパルギルカーボネート、プロパルギルメチルカーボネート、エチルプロパルギルカーボネート等が挙げられる。上記不飽和ジエステル化合物としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジヘプチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジペンチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジヘプチル、フマル酸ジオクチル、アセチレンジカルボン酸ジメチル、アセチレンジカルボン酸ジエチル、アセチレンジカルボン酸ジプロピル、アセチレンジカルボン酸ジブチル、アセチレンジカルボン酸ジペンチル、アセチレンジカルボン酸ジヘキシル、アセチレンジカルボン酸ジヘプチル、アセチレンジカルボン酸ジオクチル等が挙げられる。上記ハロゲン化環状カーボネート化合物としては、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。上記亜硫酸エステルとしては、エチレンサルファイト等が挙げられる。上記環状硫酸エステルとしては、プロパンスルトン、ブタンスルトン等が挙げられる。
フルオロシラン化合物、不飽和基を有する環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、不飽和ジエステル化合物、ハロゲン化環状カーボネート化合物、環状亜硫酸エステル、又は環状硫酸エステルの含有量は、非水電解液中、0.005〜10質量%、0.02〜5質量%が好ましく、特に0.05〜3質量%が好ましい。0.005質量%未満ではその効果が認められ難く、また、10質量%を超えて含有させても、効果はそれ以上発現しなくなるので無駄であるばかりでなく、却って非水電解液の特性に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。フルオロシラン化合物、不飽和基を有する環状カーボネート化合物、鎖状カーボネート化合物、不飽和ジエステル化合物、ハロゲン化環状カーボネート化合物、環状亜硫酸エステル、又は環状硫酸エステルは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の二次電池用非水電解液に用いられる有機溶媒としては、非水電解液に通常用いられているものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。具体的には、環状カーボネート化合物、環状エステル化合物、スルホン又はスルホキシド化合物、アマイド化合物、鎖状カーボネート化合物、鎖状又は環状エーテル化合物、及び鎖状エステル化合物からなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。特に、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物をそれぞれ1種以上含有することが好ましく、この組み合わせを用いることで、サイクル特性に優れるばかりでなく、非水電解液の粘度、得られる電池の電気容量・出力等のバランスのとれた非水電解液が提供できる。
本発明の二次電池用非水電解液に用いられる有機溶媒を、さらに具体的に以下に列挙する。しかしながら、本発明に用いられる有機溶媒は、以下の例示によって限定されるものではない。
環状カーボネート化合物、環状エステル化合物、スルホン又はスルホキシド化合物及びアマイド化合物は、比誘電率が高いため、電解液の誘電率を上げる役割を果たす。具体的には、環状カーボネート化合物としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、1,2−ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等が挙げられる。環状エステル化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。スルホン又はスルホキシド化合物としては、スルホラン、スルホレン、テトラメチルスルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中でもスルホラン類が好ましい。アマイド化合物としては、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
鎖状カーボネート化合物、鎖状又は環状エーテル化合物及び鎖状エステル化合物は、非水電解液の粘度を低くすることができる。そのため、電解質イオンの移動性を高くすることができる等、出力密度等の電池特性を優れたものにすることができる。また、低粘度であるため、低温での非水電解液の性能を高くすることができる。具体的には、鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネート等が挙げられる。鎖状又は環状エーテル化合物としては、ジメトキシエタン(DME)、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)プロパン、エチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル、i−プロピレングリコール(トリフルオロエチル)エーテル、エチレングリコールビス(トリフルオロメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(トリフルオロエチル)エーテル等が挙げられ、これらの中でもジオキソラン類が好ましい。鎖状エステル化合物としては、下記一般式(7)で表されるカルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
Figure 0005230341
上記一般式(7)において、nは1〜4の整数を示し、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル)を示す。具体的には、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸第二ブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。上記一般式(7)で表されるカルボン酸エステル化合物は、凝固点が低く、有機溶媒、特に環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物をそれぞれ少なくとも1種以上含有する有機溶媒にさらに添加すると、低温においても電池特性を向上させることができるため好ましい。上記一般式(7)で表されるカルボン酸エステル化合物の添加量は、有機溶媒中において1〜50体積%好ましい。
上記有機溶媒としては、その他、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタンやこれらの誘導体を用いることもできる。
本発明の二次電池用非水電解液には、難燃性を付与するために、ハロゲン系、リン系、その他の難燃剤を適宜添加することができる。リン系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート等のリン酸エステル類が挙げられる。
上記難燃剤の添加量は、本発明の二次電池用非水電解液を構成する有機溶媒に対して5〜100質量%が好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。5質量%未満では十分な難燃化効果が得られない。
本発明の二次電池用非水電解液において用いられる電解質塩としては、従来公知の電解質塩が用いられ、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiB(CF3SO34、LiB(C242、LiSbF6、LiSiF5、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlF4、LiAlCl4、NaClO4、NaBF4、NaI、これらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22及びLiC(CF3SO23並びにLiCF3SO3の誘導体、LiN(CF3SO22の誘導体及びLiC(CF3SO23の誘導体からなる群から選ばれる1種以上を用いるのが、電気特性に優れるので好ましい。
上記電解質塩は、本発明の二次電池用非水電解液中の含有量が、0.1〜3.0モル/リットル、特に0.5〜2.0モル/リットルとなるように、上記有機溶媒に溶解させることが好ましい。該電解質塩の含有量が0.1モル/リットルより小さいと、充分な電流密度を得られないことがあり、3.0モル/リットルより大きいと、非水電解液の安定性を損なう恐れがある。尚、質量%でいうと、上記電解質塩の含有量は、本発明の二次電池用非水電解液中、0.1〜25質量%、特に5〜18質量%となるように上記有機溶媒に溶解させる。
本発明の二次電池用非水電解液は、一次又は二次電池、特に後述する非水電解液二次電池を構成する非水電解液として好適に使用できる。
本発明の二次電池用非水電解液二次電池は、非水電解液として、上記の二次電池用非水電解液を用いる以外、従来の非水電解液二次電池と同様に構成される。
本発明の二次電池用非水電解液二次電池を構成する電極材料としては、正極及び負極があり、正極としては、正極活物質と結着剤と導電材とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。
上記正極活物質としては、リチウムイオン電池を例に取れば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵及び放出することが可能な公知の正極活物質を用いることができる。リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極活物質としては、具体的にはTiO2、V25及びMnO2等の金属酸化物、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2等の金属硫化物、FeF3等の金属ハロゲン化物、金属層間化合物、及び金属リン酸化合物等の金属化合物が挙げられる。これらの正極活物質は、各々Li、Mg、AlやCo、Ti、Nb、Cr等の遷移金属を添加又は置換した材料等であってもよい。これらの中でも、リチウムと遷移金属元素を含む複合酸化物が好ましく、特に遷移金属元素として、Ni、Co、Mn、Ti、及びFeの少なくとも1つを含有するものが好ましい。
かかるリチウムと遷移金属元素を含む複合酸化物は、代表的には、次の一般式(8)
Lix12 (8)
(式(8)中のM1は1種類以上の遷移金属元素を示し、xの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常0.05≦x≦1.10である)で表され、(8)式の化合物は、一般に層状構造を有する。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、又はリチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-zCoz2(z<1))や、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LixNi1-v-wCovMnw2(v+w<1))等に代表されるニッケル酸リチウム構造ベースの異種添加元素を含有する複合酸化物、更には層状構造又はスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)やリチウムマンガン複合酸化物構造ベースの異種添加元素を含有する複合酸化物等が挙げられる。また、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化物として、例えば、オリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合部(LiFePO4)や、リチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-uMnuPO4(u<1))等に代表されるリチウム鉄リン酸構造ベースの異種添加元素を含有する化合物が挙げられる。
上記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム、ポリアクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されない。上記結着剤の使用量は、正極活物質に対して、通常0.1〜20質量%程度、好ましくは0.5〜10質量%である。
上記導電材としては、例えば、黒鉛の微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー等が使用されるが、これらに限定されない。上記導電材の使用量は、正極活物質に対して、通常5〜60質量%程度、好ましくは10〜50質量%である。
スラリー化する溶媒としては、結着剤を溶解する有機溶媒若しくは水が使用される。該有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これに限定されない。上記溶媒の使用量は、正極活物質に対して、通常25〜400質量%程度、好ましくは50〜200質量%である。
正極の集電体には、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
負極としては、通常、負極活物質と結着剤とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。
負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ・ケイ素化合物等の無機化合物、チタン酸化物、炭素質材料、導電性ポリマー等が挙げられる。特に、安全性の高いリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料が好ましい。この炭素質材料としては、特に限定されないが、天然黒鉛、人造、フラーレン、黒鉛繊維チョップ、カーボンナノチューブ、黒鉛ウイスカー、高配向性熱分解黒鉛、キッシュ黒鉛等の結晶性炭素、及び石油系コークス、石炭系コークス、石油系ピッチの炭化物、石炭系ピッチの炭化物、フェノール樹脂・結晶セルロース等樹脂の炭化物等、及びこれらを一部炭化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維等が挙げられる。
上記結着剤及びスラリー化する溶媒としては、正極と同様のものが挙げられる。上記結着剤の使用量は、負極活物質に対して、通常0.1〜20質量%程度、好ましくは0.5〜10質量%程度である。
上記溶媒の使用量は、負極活物質に対して、通常50〜200質量%程度、好ましくは60〜150質量%である。
負極の集電体には、通常、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルモニウム等が使用される。
本発明の二次電池用非水電解液二次電池では、正極と負極との間にセパレータを用いるが、該セパレータとしては、通常用いられる高分子の微多孔フィルムを特に限定なく使用できる。該フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の種々のセルロース類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその種々のエステル類等を主体とする高分子化合物やその誘導体、これらの共重合体や混合物からなるフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、単独で用いてもよいし、これらのフィルムを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。さらに、これらのフィルムには、種々の添加剤を用いてもよく、その種類や含有量は特に制限されない。これらのフィルムの中でも、本発明の二次電池用非水電解液二次電池には、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンからなるフィルムが好ましく用いられる。
これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化がなされている。この微多孔化の方法としては、高分子化合物と溶剤の溶液をミクロ相分離させながら製膜し、溶剤を抽出除去して多孔化する「相分離法」と、溶融した高分子化合物を高ドラフトで押し出し製膜した後に熱処理し、結晶を一方向に配列させ、さらに延伸によって結晶間に間隙を形成して多孔化をはかる「延伸法」等が挙げられ、用いられるフィルムによって適宜選択される。
本発明の二次電池用非水電解液二次電池において、電極材料、非水電解液及びセパレータには、より安全性を向上する目的で、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物等を添加してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3−第三ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられ、電極材料に添加する場合は、電極材料100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に0.05〜5質量部が用いるのが好ましい。
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
上記構成からなる本発明の二次電池用非水電解液二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型等、種々の形状とすることができる。図1は、本発明の二次電池用非水電解液二次電池のコイン型電池の一例を、図2及び図3は、円筒型電池の一例をそれぞれ示したものである。
図1に示すコイン型の非水電解液二次電池10において、1はリチウムイオンを放出できる正極、1aは正極集電体、2は正極から放出されたリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料よりなる負極、2aは負極集電体、3は本発明の二次電池用非水電解液、4はステンレス製の正極ケース、5はステンレス製の負極ケース、6はポリプロピレン製のガスケット、7はポリエチレン製のセパレータである。
また、図2及び図3に示す円筒型の非水電解液二次電池10’において、11は負極、12は負極集合体、13は正極、14は正極集電体、15は本発明の二次電池用非水電解液、16はセパレータ、17は正極端子、18は負極端子、19は負極板、20は負極リード、21は正極板、22は正極リード、23はケース、24は絶縁板、25はガスケット、26は安全弁、27はPTC素子である。
以下に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例等により本発明はなんら制限されるものではない。
実施例及び比較例において、非水電解液の調製、及び該電解液の高温保存試験、並びに該電解液を用いた非水電解液二次電池(リチウム二次電池)の作製及びその性能評価は、以下の手順に従って実施した。
〔実施例1〜8及び比較例1〜8〕
<非水電解液二次電池の作製手順>
1.正極の作製
正極活物質としてLiNi0.8Co0.17Al0.03285質量部と、導電材としてアセチレンブラック12質量部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)1質量部と、ポリエチレンオキシド(PEO)1質量部とを、水80質量部に分散させ、さらに結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)1質量部を追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体両面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、正極板とした。その後、この正極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合剤を掻き取ることでシート状正極を作製した。
2.負極の作製
負極活物質として黒鉛炭素材料粉末98質量部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)1質量部とを、水98質量部に分散させ、さらに結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)1質量部を追加し分散させ、スラリーとした。このスラリーを銅製の負極集電体両面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、負極板とした。その後、この負極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合材を掻き取ることでシート状負極を作製した。
3.非水電解液の調製
エチレンカーボネート25体積%、エチルメチルカーボネート40体積%、ジメチルカーボネート30体積%、及びジエチルカーボネート5体積%からなる混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルの濃度で溶解し、試験化合物Aとして、本発明で提案する2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサン、若しくは下記〔化10〕に示す化合物、又は試料化合物B若しくは試料化合物Cを〔表1〕又は〔表2〕記載の配合で添加して非水電解液を調製した。
Figure 0005230341
4.電池の組み立て
得られたシート状正極及びシート状負極を、厚さ25μmのポリエチレン製の微多孔フィルムを介した状態で巻回させて、巻回型電極体を形成した。得られた巻回型電極体をケースの内部に挿入し、ケース内に保持した。このとき、シート状正極あるいはシート状負極のリードタブ溶接部に一端が溶接された集電リードを、ケースの正極端子あるいは負極端子にそれぞれ接合した。その後、非水電解液を巻回型電極体が保持されたケース内に注入し、ケースを密閉、封止して、φ18mm、軸方向の長さ65mmの円筒型リチウム二次電池を作製した。
実施例1〜8又は比較例1〜8で作製したリチウム二次電池について、初期特性試験及び80℃における高温保存試験を行った。初期特性試験では、放電容量比(%)及び内部抵抗比(%)を求めた。80℃における高温保存試験では、放電容量回復率(%)及び内部抵抗増加率(%)を求めた。これらの試験結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。尚、初期特性試験及び80℃における高温保存試験の試験方法は、それぞれ以下の通りである。
<初期特性試験>
1.放電容量比の測定方法
リチウム二次電池を、雰囲気温度20℃の恒温槽内に入れ、充電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で4.2Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で3.0Vまで定電流放電する操作を5回行った。その後、充電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で4.2Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で3.0Vまで定電流放電し、この6サイクル目の放電容量を初期放電容量とした。この初期放電容量から、下記式に従い、放電容量比(%)を求めた。尚、測定は20℃の雰囲気で行った。
放電容量比(%)=[(初期放電容量)/(実施例1における初期放電容量)]×100
2.内部抵抗比の測定方法
上記初期放電容量を測定した各リチウム二次電池について、先ず、充電電流1.5mA/cm2(1C相当の電流値)で3.75Vまで定電流定電圧充電し、交流インピーダンス測定装置(モバイル計測ステーションCompactStat)を用いて、周波数100kHz〜0.02Hzまで走査し、縦軸に虚数部、横軸に実数部を示すコール−コールプロットを作成した。続いて、このコール−コールプロットにおいて、円弧部分を円でフィッティングして、この円の実数部分と交差する二点のうち、大きい方の値を初期内部抵抗とした。この初期内部抵抗から、下記式に従い、内部抵抗比(%)を求めた。
内部抵抗比(%)=「(初期内部抵抗/(実施例1における初期内部抵抗)]×100
<高温保存試験>
1.放電容量回復率の測定方法
20℃において4.2Vまで充電したリチウム二次電池を、雰囲気温度80℃の恒温槽内に入れて30日間保存した(高温保存試験)。高温保存試験を終えたリチウム二次電池を、雰囲気温度20℃の恒温槽内に入れ、充電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で4.2Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.3mA/cm2(0.2C相当の電流値)で3.0Vまで定電流放電し、このときの放電容量を高温保存試験後の放電容量とした。この高温保存試験後の放電容量と、上記初期放電容量とから、下記式に従い、放電容量回復率(%)を求めた。
放電容量回復率(%)=[(高温保存試験後の放電容量)/(初期放電容量)]×100
2.上記の高温保存試験の後の各リチウム二次電池について、20℃における内部抵抗を、上記内部抵抗比の測定方法と同様にして測定し、この内部抵抗を高温保存試験後の内部抵抗とした。この高温保存試験後の内部抵抗と、上記初期内部抵抗とから、下記式に従い、内部抵抗増加率(%)を求めた。
内部抵抗増加率(%)=「(高温保存試験後の内部抵抗−初期内部抵抗)/(初期内部抵抗)]×100
Figure 0005230341
Figure 0005230341
〔実施例9及び10並びに比較例9〜14〕
上記3の方法で調製した非水電解液のうち、〔表3〕記載の非水電解液について、高温保存試験を実施した。この試験結果について〔表3〕に示す。尚、高温保存試験の試験方法は、以下の通りである。
<非水電解液の高温保存試験>
〔表3〕記載の各非水電解液を、200mlのステンレスのボトルに密閉して、雰囲気温度60℃の恒温槽内に30日間保存した。30日間保存後、各非水電解液を室温に戻し、ジシロキサンの分解によって生成するフルオロシランを、0.1規定のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を使用した中和滴定により確認した。尚、フルオロシランの生成量は、HFの含有量に換算した中和滴定値により評価した。
Figure 0005230341
〔表1〕の結果から明らかなように、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを添加した本発明の二次電池用非水電解液を用いた非水電解液二次電池は、高温保存試験後の内部抵抗及び放電容量の面で優れていることが確認できた。これに対し、表〔表2〕の結果のように、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンとは異なる構造のジシロキサンを添加した非水電解液を用いた非水電解液二次電池では、高温保存試験後の内部抵抗及び放電容量の面で本発明の二次電池用非水電解液を用いた非水電解液二次電池に比べると劣っていた。
〔表3〕の結果から明らかなように、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを添加した本発明の二次電池用非水電解液では、高温保存を行ってもジシロキサンは分解しておらず、フルオロシランは生成していないことが確認できた。これに対し、2−アルケニル基が珪素原子に結合していないジシロキサンでは、ジシロキサンが分解し、フルオロシランが生成することによって、中和滴定値が上昇した。このことから、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合することにより、高温の非水電解液中でのジシロキサン構造が安定化され、それによって、非水電解液二次電池の高温保存時の劣化を抑制する機能が発現すると理解することができる。
図1は、本発明の二次電池用非水電解液二次電池のコイン型電池の構造の一例を概略的に示す縦断面図である。 図2は、本発明の二次電池用非水電解液二次電池の円筒型電池の基本構成を示す概略図である。 図3は、本発明の二次電池用非水電解液二次電池の円筒型電池の内部構造を断面として示す斜視図である。
符号の説明
1 正極
1a 正極集電体
2 負極
2a 負極集電体
3 電解液
4 正極ケース
5 負極ケース
6 ガスケット
7 セパレータ
10 コイン型の非水電解液二次電池
10’ 円筒型の非水電解液二次電池
11 負極
12 負極集合体
13 正極
14 正極集合体
15 電解液
16 セパレータ
17 正極端子
18 負極端子
19 負極板
20 負極リード
21 正極
22 正極リード
23 ケース
24 絶縁板
25 ガスケット
26 安全弁
27 PTC素子

Claims (8)

  1. 電解質塩を有機溶媒に溶解させた電解液において、2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンを含有することを特徴とする二次電池用非水電解液。
  2. 上記2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンが、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 0005230341
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。)
  3. 上記2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンが、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 0005230341
    (式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。)
  4. 上記2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンが、下記化合物No.1であることを特徴とする請求項1記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 0005230341
  5. 上記2−アルケニル基が珪素原子に直接結合したジシロキサンの含有量が、非水電解液中、0.01〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
  6. ビニレンカーボネート又は下記一般式(3)〜(6)の何れかで表される非芳香族鎖状炭酸エステル化合物を、非水電解液中、0.01〜5質量%添加したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
    Figure 0005230341
    (式中、nは1〜6の整数を示し、mは整数を示す。但し、n及びmは、2n+1≧mの関係を満たす。R9は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R10及びR11は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基又は水素原子を示す。)
  7. 電解質塩として、ヘキサフルオロリン酸リチウム又はテトラフルオロホウ酸リチウムを、非水電解液中、0.1〜25質量%含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の非水電解液。
  8. 非水電解液として、請求項1〜7の何れか1項に記載の非水電解液を含む非水電解液二次電池。
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