以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
〔実施形態1〕
図1に、本発明に係る実施形態1におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。なお、図1では、ステータ巻線等の配線の図示を省略している。また、図1では、レゾルバ100が、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバである例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2に、図1のステータの分解斜視図を示す。図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
レゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、ロータ(回転子)300とを含む。レゾルバ100は、いわゆるインナーロータ型の角度検出装置である。即ち、ステータ200の内側にロータ300が設けられ、ステータ200がロータ300の外周側(外径側)の側面と対向した状態で、ロータ300の回転角度に応じて、ステータ200に設けられたステータ巻線を構成する検出巻線からの信号が変化するようになっている。
ステータ200は、磁性材料からなる環(リング)状の平板250を用いて構成され、この平板250に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図1では、ステータ200は、折り曲げ加工等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース(突極部)210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210hを有する。ステータティース210a〜210hは、プレス加工により予め平板250に形成された後に、折り曲げプレス加工(広義には折り曲げ加工)により、平板250の面に対して略垂直となるように起こされている。これらのステータティースは、環状の平板250の内側(内径側)の縁部に形成され、各ステータティースの面のうち少なくともロータ300と対向する面は平面ではなく、ロータ300の回転軸の方向に沿って見たときに、環状の平板250の内径側に位置する点を中心とする円弧の一部となるように形成されている。
また、ステータ200には、平板250に装着可能に構成された環状の絶縁キャップ400が装着される。絶縁キャップ400は、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせて設けられた複数のボビン410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410hが一体に形成されている。各ボビンは、挿入孔(ステータティース挿入孔)を有し、当該ボビンに対応するステータティースが該挿入孔に挿入されると共に、その外側にステータ巻線が巻回される。複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの挿入孔の向きは、ロータ300の回転軸の向きである。
図3に、ボビン410aに挿入されるステータティース210aの説明図を示す。図3において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図3は、挿入孔を通り、ロータ300の回転軸を中心とした所与の円周方向のボビン410a(ステータティース210a)の断面構造を模式的に表す。図3は、ボビン410a及びステータティース210aの断面図を表すが、ボビン410b〜410hやこれらに挿入されるステータティース210b〜210hも同様の構造を有している。
ボビン410aの挿入孔に、平板250に対して起こされたステータティース210aが挿入される。また、図1又は図2では図示を省略しているが、ボビン410aの外側にはステータ巻線420aが巻回される。
そして、実施形態1では、ロータ300と対向するステータティース210aの面の形状(外形輪郭線の形状)が、台形の形状を有している。
即ち、ロータ300(の外周側の側面)と対向するステータティース210aの面の形状が、平板面に近いほど、平板面と平行で、かつ、ロータ300の回転軸を中心とした円周方向D1の幅が広くなる形状を有している。ここで、方向D1は、ロータ300の回転方向ということができる。例えば、図3において、平板面におけるステータティース210aの方向D1の幅f1、ステータ巻線420aが巻回されるボビン410aの挿入孔の高さ位置における方向D1の幅f2、ステータティース210aの先端部の方向D1の幅f3について、f1>f2>f3の関係を有する。
なお、ステータティース210aの形状は、いわゆる対称台形であることが望ましく、f1=f3+e1+e2とすると、e1=e2であることが望ましい。
ステータティース210a〜210hがこのような形状を有することで、ステータティースの幅を広くできるため、検出信号のレベルが上がり変圧比を向上させることができる。また、ステータティースの幅が狭いほど検出信号から高調波成分を除去できることに着目し、ある程度の変圧比を保ちつつ、検出信号から高調波成分を除去でき、ロータの外径形状だけで除去できない高調波成分をステータの形状により除去することが可能となる。この結果、検出精度をより一層向上させることができるようになる。
また、図1又は図2において、絶縁キャップ400は、複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される端子ピンが設けられるコネクタ部450を含み、複数のボビン410a〜410hとコネクタ部450とが一体に形成される。このコネクタ部450には、端子ピン挿入孔461〜466が設けられており、端子ピン挿入孔461〜466には、ステータ巻線と電気的に接続される導電材からなる端子ピン471〜476がそれぞれ挿入される。ステータ巻線には、端子ピン471〜476のいずれかを介して外部から励磁信号が印加されると共に、端子ピン471〜476のいずれかを介して外部に検出信号を出力する。このように、ステータ巻線と電気的に接続される端子ピンが設けられるコネクタ部を、複数のボビンと共に一体に形成するようにしたので、ステータ巻線を確実に固定させて、信頼性を向上させることができるようになる。また、ステータ巻線に入力又は出力される信号を印加するための端子ピンを、容易に絶縁キャップに取り付けることができるようになる。
更に、絶縁キャップ400は、複数の渡りピン(突起部)480a、480b、480c、480d、480e、480f、480gを含み、複数のボビン410a〜410h、コネクタ部450及び複数の渡りピン480a〜480gが一体に形成されている。複数の渡りピン480a〜480gを構成する各渡りピンは、2つのボビンの間において、環状の絶縁キャップ400の所与の円周上に形成されている。なお、ボビン410a、410hの間には、渡りピンが形成されていない。各渡りピンは、2つのボビンの間に設けられた円柱状の形状を有し、一方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される導線が、渡りピンにおいて張力を持たせた状態で掛けられて、他方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される。これにより、2つのボビンの距離が長くなっても共振し難くなる上に、ステータ巻線の巻き数を半ターン単位で調整できるようになる。ここで、導線に張力を持たせ易くし、且つその状態をできるだけ長く維持させるために、渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの部分を有することが望ましい。
即ち、絶縁キャップ400は、複数のボビンを構成する第1のボビン及び第2のボビンの間に設けられた渡りピンを含むことができる。更に、この渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの巻線経由部を含み、第1のボビンの外側に巻回される第1のステータ巻線と第2のボビンの外側に巻回される第2のステータ巻線とを電気的に接続する導線が、巻線経由部において張力を持たせた状態で掛けられる。なお、巻線経由部は、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きであるものに限定されない。
このように、実施形態1において、絶縁キャップ400は、複数のボビン410a〜410hが有する挿入孔の向きが、ロータ300の回転軸の向きと一致している。そのため、ステータ200に絶縁キャップ400を装着する際に、平板250の上方から装着することができる上に、ステータ200の内側の狭い空間で各ボビンにステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。従って、実施形態1によれば、絶縁キャップ400の取り付け工程が簡素化される上に、別工程において、予め絶縁キャップ400を形成しておくことが可能となる。これにより、レゾルバ100の生産効率の向上やコストダウンを図ることが可能となる。
また、絶縁キャップ400をステータ200の平板250に装着することにより、ステータ200とステータ巻線とが電気的に絶縁される。これにより、ステータ巻線により構成されるコイルの絶縁破壊を防止できる。このような絶縁キャップ400は、PBT(Poly-butylene-terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)又はPPT(Polypropylene terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂(絶縁材)を用いた射出成型により形成される。
ロータ300は、磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ300の軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線を3周期で変化する形状を有している。そして、平板250に対して起こされたステータティースの内側(内径側、内周側)の面と対向するロータ300の外周側の面が、ロータ300の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。
次に、ロータ300の回転によって検出巻線から出力される検出信号を取り出すためのステータ巻線について説明する。ステータ巻線は、励磁巻線と検出巻線とから構成され、励磁巻線により励磁した状態で、ステータ200に対するロータ300の回転により、検出巻線の信号が変化する。
図4(A)、図4(B)に、ステータ200のステータティースに設けられるステータ巻線の説明図を示す。図4(A)は、ステータ巻線を構成する励磁巻線の説明図を表す。図4(B)は、ステータ巻線を構成する検出巻線の説明図を表す。図4(A)、図4(B)は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図4(A)では、励磁巻線の巻き方向を模式的に示し、図4(B)では、検出巻線の巻き方向を模式的に示す。実際には、各ボビンのステータ巻線を電気的に接続する場合、各ステータ巻線間を接続する導線は、その間に形成された渡りピンを経由させる。
励磁巻線は、図4(A)に示すように、隣接するステータティースの巻線方向が互いに反対方向となるように設けられる。各ステータティースに設けられる励磁巻線は、例えばコイル巻線とすることができる。このような励磁巻線と電気的に接続される端子ピンR1、R2間に、励磁信号が与えられる。端子ピンR1、R2は、図1又は図2の端子ピン471〜476のいずれかに割り当てられる。
また、図4(B)に示すように、2相の検出信号を得るために、検出巻線は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号の第1相(例えばSIN相)の検出信号を得るための検出巻線は、例えばステータティース210aから反時計回りにステータティース210gまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。一方、2相の検出信号の第2相(例えばCOS相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えばステータティース210bから反時計回りにステータティース210hまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。第1相の検出信号は、端子ピンS1、S3間の信号として検出され、第2相の検出信号は、端子ピンS2、S4間の信号として検出される。各ステータティースに設けられる検出巻線は、例えばコイル巻線とすることができる。端子ピンS1〜S4は、図1又は図2の端子ピン471〜476のいずれかに割り当てられる。
このように、ステータティース210a、210c、210e、210gが挿入孔に挿入されるボビン410a、410c、410e、410gのそれぞれの外側には、励磁巻線及び第1相(SIN相)の検出巻線が巻回される。ステータティース210b、210d、210f、210hが挿入孔に挿入されるボビン410b、410d、410f、410hのそれぞれの外側には、励磁巻線及び第2相(COS相)の検出巻線が巻回される。
なお、実施形態1では、励磁巻線の巻き方向は、図4(A)に示す方向に限定されるものではない。また、実施形態1では、検出巻線の巻き方向は、図4(B)に示す方向に限定されるものではない。
なお、実施形態1では、端子ピン471〜746のいずれかとステータ巻線のいずれかとを電気的に接続する配線が、アルミニウム材料(広義にはアルミニウムを主成分とする導電材料)で形成される。ここで、ステータ巻線もまた、アルミニウム材料で形成されることが望ましい。即ち、ステータ巻線及び配線の材質が、アルミニウムを主成分とする材質であることが望ましい。これにより、レゾルバ100の軽量化及び低コスト化を図ることができるようになる。
以上のような構成を有するレゾルバ100では、ステータ200に対するロータ300の回転によって、次のような磁気回路が形成される。
図5に、図1のレゾルバ100の上面図を示す。図5は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図5では、説明の便宜上、絶縁キャップ400の図示を省略すると共に、ステータ200に対してロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示している。また、図5において、巻線磁芯としての各ステータティースを通る磁束の向きを模式的に示している。
絶縁キャップ400を介してステータ200のステータティースにステータ巻線が設けられており、ロータ300が回転すると、ロータ300を介して隣接するステータティース間で磁気回路が形成される。実施形態1では、図5に示すように、隣接するステータティースを通る磁束の向きが反対方向となるようにステータ巻線が設けられているため、ロータ300の回転によって、各ステータティースとの間のギャップパーミアンスの変化に応じて、各ステータティースに巻回されるステータ巻線に発生する電流もまた変化し、例えば検出巻線に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
以上のような構成を有するレゾルバ100において、磁性材料からなるステータ200の平板250の材質は、積層電磁鋼板よりも、普通鋼であるSPCC(1枚の鋼板)又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10C(1枚の鋼板)であることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
これにより、材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、SPCCやS45CやS10Cを採用することで、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。
次に、実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。
図6に、実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法の一例のフロー図を示す。
図7に、折り曲げプレス加工前の実施形態1におけるステータ200を構成する平板250の斜視図を示す。図7において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態1におけるレゾルバ100を製造するために、まず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(折り曲げ工程)において、平板状のステータ200のステータティースを折り曲げて、複数のステータティースが平板面に対して起こされる(ステップS12)。その結果、図2に示すように、平板250に対してステータティース210a〜210hが起こされる。
即ち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図7に示すように、プレス加工により、普通鋼であるSPCC、機械構造用炭素鋼であるS45C又はS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側の縁部にステータティースが形成されて、ステータ200の形状が形成される。このとき、図3で説明したように、ステータティース210a〜210hの各ステータティースが折り曲げ加工後にロータ300(の外周側の側面)と対向する面の形状が、平板250の内径側の縁部から先端部に向かうほど、ロータ300の回転軸回りの円周方向の幅が小さくなるように形成される。
そして、ステップS12では、図2に示すように、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数のステータティースを起こすように加工される。この結果、ステータティース210a〜210hは、ステータ200の平板面に対してほぼ垂直となるように起こされる。
続いて、絶縁キャップ取り付け工程として、各ボビンに設けられた挿入孔に、ステップS12で起こされたステータティースを挿入して、図2に示す絶縁キャップ400を平板250に取り付ける(ステップS14)。このとき、絶縁キャップ400に設けられた1又は複数の係止部(図示せず)により、平板250に係止することで取り付けられることが望ましい。
その後、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされたステータティース210a〜210hの各ステータティースを巻線磁芯として、各ステータティースの外側にステータ巻線が設けられる(ステップS16)。こうして起こされたステータティースのそれぞれの周囲に、励磁用の励磁巻線及び検出用の検出巻線が設けられる。なお、ボビンにステータ巻線を取り付けた絶縁キャップ400を、平板250に装着するようにしてもよい。
次に、別工程で、ロータ300がプレス加工により形成される。実施形態1では、ロータ300は、環状の平板であるが、平面視において外径側の外形輪郭線が3周期で変化する形状を有している。そして、ロータ取り付け工程として、ロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、ステータ200の内径側に設けられる(ステップS18)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側の側面とステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。以上のように、実施形態1におけるレゾルバ100が製造される。
以上説明したように、実施形態1によれば、ステータ200に絶縁キャップ400を装着する際に、平板250の上方から装着することができる上に、ステータ200の内側の狭い空間で各ボビンにステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。そのため、レゾルバ100の製造工程を簡素化できる上に、検出精度をより向上させることができるようになる。また、ステータ巻線が巻回される部分には、ステータティースにある程度の幅を持たせると共に、その先端部においてロータ300の回転軸回りの円周方向の幅を狭くするようにしたので、変圧比を向上させることができる一方、高調波成分を減少させることができコギングを減少させる効果が得られるようになる。その結果、より一層の検出精度の向上を図ることが可能となる。
〔実施形態2〕
実施形態1では、図3に示すように、ロータ300と対向するステータティース210aの面の形状(外形輪郭線の形状)が、平板面に近いほど、平板面と平行で、かつ、ロータ300の回転軸を中心とした円周方向D1の幅が広くなる形状を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図8に、本発明に係る実施形態2におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。なお、図8では、ステータ巻線等の配線の図示を省略している。また、図8では、レゾルバが、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバである例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図8において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態2におけるレゾルバ500は、実施形態1と同様に、ステータ600と、ロータ300とを含む。
ステータ600は、磁性材料からなる環状の平板650を用いて構成され、この平板650に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図8では、ステータ600は、折り曲げ加工等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース610a、610b、610c、610d、610e、610f、610g、610hを有する。ステータティース610a〜610hは、プレス加工により予め平板650に形成された後に、折り曲げプレス加工(広義には折り曲げ加工)により、平板650の面に対して略垂直となるように起こされている。このようなステータ600が図1のステータ200と異なる点は、ステータ600に形成されるステータティース610a〜610hの形状である。
図9に、実施形態2におけるステータ600を構成する折り曲げプレス加工後の平板650の斜視図の一例を示す。図9において、図8と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図10に、図8においてボビン410aに挿入されるステータティース610aの説明図を示す。図10において、図3、図8又は図9と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図10は、挿入孔を通り、ロータ300の回転軸を中心とした所与の円周方向のボビン410a(ステータティース610a)の断面構造を模式的に表す。図10は、ボビン410a及びステータティース610aの断面図を表すが、ボビン410b〜410hやこれらに挿入されるステータティース610b〜610hも同様の構造を有している。
図10では、ボビン410aの挿入孔に、平板650に対して起こされたステータティース610aが挿入される。また、図8では図示を省略しているが、ボビン410aの外側にはステータ巻線420aが巻回される。
そして、実施形態2では、ロータ300(の外周側の側面)と対向するステータティース610aの面の形状(外形輪郭線の形状)が、平板面から挿入孔の高さまで、平板面と平行で、かつ、ロータ300の回転軸を中心とした円周方向D1の幅が一定であり、前記挿入孔の高さから先端部に向かうほど、方向D1の幅が狭くなる形状を有している。例えば、図10において、平板面におけるステータティース610aの方向D1の幅g1、ステータ巻線420aが巻回されるボビン410aの挿入孔の高さ位置における方向D1の幅g2、ステータティース610aの先端部の方向D1の幅g3について、g1=g2>g3の関係を有する。
なお、図10において、ステータティース610aの形状は、g1=g2=g3+h1+h2とすると、h1=h2であることが望ましい。
このような形状を有することで、実施形態1のように変圧比を向上させることができる一方、高調波成分を減少させることができコギングを現象さえる効果が得られるようになる。しかも、巻線磁芯として通る磁束を増やすことができるので、実施形態1と比較して変圧比を向上させることができるようになる。
〔実施形態3〕
実施形態1又は実施形態2では、絶縁キャップ400を設け、この絶縁キャップ400を介してステータティースの外側にステータ巻線を巻回するようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図11に、本発明に係る実施形態3におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。なお、図11では、レゾルバが、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバである例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図11において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態3におけるレゾルバ700は、実施形態1と同様に、ステータ200と、ロータ300とを含む。実施形態3におけるレゾルバ700が図1のレゾルバ100と異なる点は、絶縁キャップ400に代えてプリント基板800がステータ200に設けられている点である。
プリント基板800には、各ステータティースを巻線磁芯としてその外側に巻回するように設けられるシート状のコイルと、各コイルを電気的に接続する導電層である配線とが形成される。そして、このプリント基板800をステータ200に搭載することで、励磁用のコイルで励磁した状態で、ロータ300の回転角度に対応した検出信号を取得する。
図12に、図11のプリント基板800の斜視図の一例を示す。図12において、図11と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
プリント基板800には、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせてステータティースの挿入孔が設けられ、これらの挿入孔のそれぞれの外側に巻回するようにコイル820a〜820hが形成されている。コイル820a〜820hの各コイルは、渦巻き状の導電層が挿入孔の周囲に形成されたものであり、プリント基板800をステータ200に搭載したとき、挿入孔に挿入されたステータティースが巻線磁芯として機能するようになっている。
またプリント基板800は、コネクタ部850を有し、コネクタ部850には、実施形態1と同様に、端子ピン挿入孔461〜466が設けられており、端子ピン挿入孔461〜466には、ステータ巻線と電気的に接続される導電材からなる端子ピン471〜476がそれぞれ挿入される。ステータ巻線には、端子ピン471〜476のいずれかを介して外部から励磁信号が印加されると共に、端子ピン471〜476のいずれかを介して外部に検出信号を出力する。
そして、プリント基板800には、端子ピン471〜746のいずれかとコイル820a〜820hのいずれかとを電気的に接続する配線が、アルミニウム材料(広義にはアルミニウムを主成分とする導電材料)で形成される。ここで、コイル820a〜820hもまた、アルミニウム材料で形成されることが望ましい。即ち、ステータ巻線及び配線の材質が、アルミニウムを主成分とする材質であることが望ましい。
これにより、銅材料(広義には銅を主成分とする導電材料)でコイル(ステータ巻線)や配線を形成する場合に比べて、比重の軽いアルミニウム材料を採用することで、レゾルバの軽量化及び低コスト化を図ることができる。
このようなプリント基板800は、多層基板で構成されることが望ましい。
図13に、図12のプリント基板800の断面構造を模式的に示す。図13は、プリント基板800の複数の挿入孔を通る断面線における断面図を表す。
プリント基板800には、例えばステータティース210a〜210hが挿入される挿入孔が設けられる。図13では、挿入孔881、882、883が示されている。そして、プリント基板800は、励磁巻線用のコイルの形成層890、検出巻線用のコイルの形成層892、各コイル間を接続する配線の形成層894、896、コイルと端子ピン471〜476を接続する配線の形成層898からなる多層基板であり、各層は、スルーホールを介して電気的に接続可能に構成される。
励磁巻線用のコイルの形成層890には、例えば図4(A)に示すようにステータティース210a〜210hに対応してコイルが形成される。例えば図13では、導電層891が挿入孔881の周囲に形成されることで、励磁巻線用のコイルが実現される。
検出巻線用のコイルの形成層892には、例えば図4(B)に示すようにステータティース210a〜210hに対応してコイルが形成される。例えば図13では、導電層893が挿入孔881の周囲に形成されることで、検出巻線用のコイルが実現される。なお、検出巻線用のコイルの形成層は、例えば図4(B)に示すようにステータティース210a、210c、210e、210gに対応してコイルが形成される層と、ステータティース210b、210d、210f、210hに対応してコイルが形成される層とから構成されてもよい。
各コイル間を接続する配線の形成層894には、励磁巻線用のコイルの形成層890の導電層とスルーホールを介して電気的に接続された導電層が形成される。各コイル間を接続する配線の形成層896には、検出巻線用のコイルの形成層892の導電層とスルーホールを介して電気的に接続された導電層が形成される。そして、コイルと端子ピン471〜476を接続する配線の形成層898には、最上層において導電層899が形成され、形成層894、896とスルーホールを介して電気的に接続される。
このような多層基板を構成する各層は、互いに絶縁層885を介して電気的に遮断されて積層される。
なお、プリント基板800は、図13に示す構成に限定されるものではなく、コイル及び配線が形成されていればよい。
このように、巻線部材として、プリント基板800を採用することで、予め所定の導電体パターンを形成しておくことができ、巻線を規格通りに精度良く形成することが可能となり、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくすることができるようになる。また、ステータ巻線同士を接続する配線の蛇行部分を確実に排除でき、不要なノイズの混入を確実に防止できるようになる。これらの結果、検出精度を向上させることが可能となる。
なお、図11では、ステータティース210a〜210hの形状を実施形態1と同様のものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11において、ステータティース210a〜210hの形状を実施形態2と同様の形状にしてもよい。
上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用された角度検出システムでは、レゾルバからの2相の検出信号に基づいて、回転角度に対応したデジタルデータを出力することができる。
図14に、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用された角度検出システムの構成例の機能ブロック図を示す。なお、図14では、角度検出システムが実施形態1におけるレゾルバ100を含む例を示すが、実施形態2又は実施形態3におけるレゾルバを含んでもよい。また、図14では、レゾルバ100の外部にR/D変換器が設けられているが、レゾルバ100がR/D変換器を内蔵してもよい。
角度検出システム1000は、レゾルバ100と、R/D変換器(広義には変換器、変換装置)1100とを含む。レゾルバ100は、ステータ及び該ステータに対して回転可能に設けられたロータを含み、1相の励磁信号R1、R2により励磁された状態で、ステータに対するロータの回転角度に応じた2相の検出信号S1〜S4を出力する。R/D変換器1100は、レゾルバ100に対する励磁信号R1、R2を生成すると共に、レゾルバ100からの2相の検出信号S1〜S4に対応したデジタル信号を生成し、シリアルデータ又はパラレルデータとして出力する。
従って、後段の処理において、R/D変換器1100からのシリアルデータ又はパラレルデータに基づいて所与の処理を行うことで、レゾルバ100が検出した回転角度に対応した制御処理を実現することができる。
〔具体的なシステム構成例〕
上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは、例えば、車載用のモーター又は発電機の角度検出器として搭載されたり、産業機器用のモーター又は発電機の角度検出器として搭載されたりする。以下では、このような角度検出器として上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用される角度検出システムの具体的な構成例について説明する。
図15(A)、図15(B)に、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用されるシステムの具体的な構成例を示す。図15(A)は、ハイブリッド車両のモーター及び発電機の回転位置を検出するハイブリッドエンジンシステムの構成例を表す。図15(B)は、車両の操舵装置におけるステアリング操作を補助する電動式のパワーステアリングシステムの構成例を表す。
図15(A)に示すハイブリッドエンジンシステム1200は、エンジン1210、モーター1220、発電機1230、バッテリー1240、インバーター装置1250、動力分配装置1260、ディファレンシャルギヤ1270及び駆動輪1280、1290を有し、図示しない制御システムによって制御される。エンジン1210は、ガソリンエンジンであり、クランク軸1212を回転駆動する。モーター1220及び発電機1230には、インバーター装置1250を介してバッテリー1240が接続されており、バッテリー1240からの電力供給を受けて駆動軸1222を回転駆動する。一方、発電機1230は、回転軸1232の回転により発生させた起電力をインバーター装置1250を介してバッテリー1240に充電することができる。動力分配装置1260には、クランク軸1212、駆動軸1222及び回転軸1232が機械的に結合されている。動力分配装置1260は、これら3軸のうちの2軸の動力に応じて残りの1軸の回転数、トルクが決される特性を有し、例えばクランク軸1212の動力を、回転軸1232に出力する動力やモーター1220との間でやり取りされる動力に分配する。
動力分配装置1260からの動力が伝達され、駆動軸1222に結合される動力伝達ギヤ1272は、ディファレンシャルギヤ1270に結合されており、動力伝達ギヤ1272からの動力は、駆動軸1282を介して駆動輪1280、1290に伝達される。
このようなハイブリッドエンジンシステム1200において、モーター1220の駆動軸1222にロータが取り付けられるレゾルバ1202と、発電機1230の回転軸1232にロータが取り付けられるレゾルバ1204とが設けられる。レゾルバ1202は、モーター1220の駆動軸1222の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。レゾルバ1204は、発電機1230の回転軸1232の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。図示しない制御システムは、レゾルバ1202、1204からの検出結果に基づいて、例えばエンジン1210の回転角加速度を決定してエンジン1210を制御する。
レゾルバ1202、1204の少なくとも1つは、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが採用される。
これによって、例えばハイブリッド車両が低速時及び停止時には、エンジン1210を停止し、バッテリー1240、インバーター装置1250及びモーター1220により駆動輪1280、1290に動力を伝達させ、それ以外ではエンジン1210及びモーター1220の両方で駆動輪1280、1290に動力を伝達させることができる。そして、減速時や制御時には、駆動輪が1280、1290の駆動によって発電機1230の回転軸を回転させて制動エネルギーを電力に変換して、インバーター装置1250を介してバッテリー1240に充電させる。
なお、ハイブリッドエンジンシステム1200の構成は、図15(A)に示す構成に限定されるものではなく、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは種々の構成のハイブリッドエンジンシステムに適用できる。
図15(B)に示す電動式パワーステアリングシステム1300は、ステアリングホイール1310、ステアリング軸1320、ジョイント1330、ピニオン軸1340、操舵軸1350、モーター1360を有する。ステアリング軸1320の先端に固定されたステアリングホイール1310を回転させると、ジョイント1330を介してピニオン軸1340を回転させる。ピニオン軸1340の回転力は、操舵軸1350の軸線方向の往復動に変換され、図示しない操舵輪の転蛇角を変化させる。この操舵軸1350にはモーター1360が同軸状に結合されており、ステアリングホイール1310の回転による操舵軸1350の往復動を補助するようにモーター1360が駆動力を与えるようになっている。
このような電動式パワーステアリングシステム1300において、モーター1360の駆動軸にロータが取り付けられるレゾルバ1370が設けられる。レゾルバ1370は、モーター1360の駆動軸の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。図示しない制御システムは、レゾルバ1370からの検出結果に基づいて、例えばステアリングホイール1310の回転方向を検出し、その方向の回転力を補助するようにモーター1360を制御する。
レゾルバ1370は、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが採用される。
なお、電動式パワーステアリングシステム1300の構成は、図15(B)に示す構成に限定されるものではなく、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは種々の構成の電動式パワーステアリングシステムに適用できる。
また、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは、上記のシステムに適用されるものに限定されず、産業機器やその他の種々のシステムに適用できることは言うまでもない。
以上、本発明に係るレゾルバ及びレゾルバの製造方法を本実施形態又はその変形例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記のいずれかの実施形態では、本発明に係るレゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であったりしてもよい。
(2)上記のいずれかの実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が普通鋼や機械構造用炭素鋼鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
(3)上記のいずれかの実施形態では、ステータが8個のステータティースを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ステータが有するステータティースが、10個、12個又は14個であってもよい。
(4)上記のいずれかの実施形態では、いわゆるインナーロータ型の角度検出装置としてのレゾルバを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係るレゾルバが、いわゆるアウターロータ型であってもよい。この場合、ステータティースの外側(外径側、外周側)の面と対向するロータの内周側の面が、ロータの1回転につき所与の周期でギャップパーミアンスが変化する。
(5)上記のいずれかの実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。この場合、環状の平板であるロータの形状が、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線を5周期で変化する形状とするようにしてもよい。