以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の課題を解決するために必須の構成要件であるとは限らない。
〔実施形態1〕
図1に、本発明に係る実施形態1における角度検出器としてのレゾルバ100の構成例の分解斜視図を示す。なお、図1では、ステータ巻線等の配線の図示を省略すると共に、ステータとロータとを分解して示している。また、図1では、レゾルバ100が、8個のステータティースを有し、1相励磁2相出力型のレゾルバを例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2に、図1のステータの分解斜視図を示す。図2において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
レゾルバ100は、ステータ(固定子)200と、ロータ(回転子)300とを含む。レゾルバ100は、いわゆるインナーロータ型の角度検出装置である。即ち、ステータ200の内側にロータ300が設けられ、ステータ200がロータ300の外周側(外径側)の側面と対向した状態で、ロータ300の回転角度に応じて、ステータ200に設けられたステータ巻線を構成する検出巻線からの信号が変化するようになっている。実施形態1では、このロータ300が、磁性材料からなる1枚の平板を用いて構成され、この平板の縁部を曲げて側面が形成される。
ステータ200は、磁性材料からなる環(リング)状の平板250を用いて構成され、この平板250に複数のステータティースが設けられている。これらのステータティースは、平板250の平板面に対して交差するように設けられている。図1では、ステータ200は、折り曲げ加工(広義には曲げ加工)等により平板面に対して同一面側に略垂直に起こされた8個のステータティース(突極部)210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210hを有する。ステータティース210a〜210hは、プレス加工により予め平板250に形成された後に、折り曲げプレス加工(広義には曲げ加工)により、平板250の面に対して略垂直となるように起こされている。これらのステータティースは、環状の平板250の内側(内径側)の縁部に形成され、各ステータティースの面のうち少なくともロータ300の側面と対向する面は平面ではなく、ロータ300の回転軸の方向に沿って見たときに、環状の平板250の内径側に位置する点を中心とする円弧の一部となるように形成されている。
このような磁性材料からなるステータ200の平板250及びロータ300の平板の材質は、積層電磁鋼板よりも、1枚の電磁鋼板、普通鋼であるSPCC(1枚の鋼板)又は機械構造用炭素鋼であるS45CやS10C(1枚の鋼板)であることが望ましい。SPCC(Steel Plate Cold Commercial)は、JIS G3141に規定される冷間圧延鋼板及び鋼帯である。S45Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.45%程度の炭素を含有している。S10Cは、JIS G 4051で規定される機械構造用炭素鋼鋼材で、0.10%程度の炭素を含有している。
図3に、図2のA−A線に沿った断面構造を模式的に示す。図3において、図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図2のA−A線は、環状の平板250の中心側から外側に向かう方向で、ステータティース210b及び平板250を通る。図3では、ステータティース210bとこれに接続される平板250の断面構造の一部を模式的に示すが、複数のステータティース210a、210c〜210hとこれらに接続される平板250の断面構造も同様である。
ここで、図2のA−A線に沿った断面形状が、曲げ加工による曲げ内側の各ステータティース及び平板250の断面形状であり、この断面形状が、R形状である。より具体的には、実施形態1では、曲げ加工による曲げ内側における磁性材料の実効透磁率が変化しないように、平板250に形成された複数のステータティース210a〜210hは、平板面に対して起こされている。そのため、図3に示すように、断面視において、複数のステータティース210a〜210hは、所与の曲げ半径の曲げ加工により平板250の平板面に対して起こされ、複数のステータティース210a〜210hは、平板250と接続される根元部分においてR形状を有している。ここで、曲げ半径rs1は、平板250の厚さts以上である(rs1≧ts)ことが望ましい。
これにより、ステータ200を構成する平板250の厚さに応じた曲げ半径による曲げ加工により、磁性材料の粒状破壊を確実に防止し、回転角度の検出精度の向上を確実に実現できるようになる。
また、曲げ半径rs1の中心から曲げ外側の面までの距離rs2は、次式の関係を有することが望ましい。
これによっても、ステータ200を構成する平板250の厚さに応じた曲げ半径による曲げ加工により、磁性材料の粒状破壊を確実に防止し、回転角度の検出精度の向上を確実に実現できるようになる。
図4(A)、図4(B)に、実施形態1におけるステータティースの根元部分の断面形状の説明図を示す。図4(A)は、平板面に対して曲げ加工により起こされるステータティース210bの曲げ内側及び曲げ外側の説明図を表す。図4(B)は、ステータを構成する磁性材料の実効透磁率の説明図を表す。図4(B)において、横軸に力の方向を示し、縦軸に実効透磁率μeを示す。
図4(A)に示すように、例えば平板250に形成されたステータティースを曲げ加工により平板面に対して起こす場合、曲げ内側部260には、圧縮方向(図4(B)ではプラス(+)方向)F1の力が加わる。そのため、曲げ内側部260では、磁性材料の単結晶の粒径破壊が発生する。これに対して、曲げ加工による曲げ外側部では、引っ張り方向(図4(B)ではマイナス(−)方向)F2が加わる。
ところで、一般的な磁性材料(例えば電磁鋼板)では、曲げ加工等によって引っ張り方向に力が加わっても実効透磁率μeがほとんど変化しないのに対し、圧縮方向に力が加わると実効透磁率μeが低下するという特性を有する(C1)。そこで、実施形態1では、実効透磁率μeが低下しない程度に曲げ加工を行うことで、圧縮方向に力が加わっても引っ張り方向に力が加わったときと同程度の実効透磁率μeを維持させる(C2)。この実効透磁率μeが低下しない程度の曲げ加工は、上記のように曲げ半径rs1を、平板250の厚さts以上とする(rs1≧ts)ことで実現する。
これにより、磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
しかも、実施形態1のような曲げ工程を行うことで、磁性材料のアニール工程を行うことなく磁気特性を維持させることが可能となるので、製造工程も大幅に簡素化される。例えば、一般的な電磁鋼板についてのアニール工程では、700℃を超える温度で数時間の熱処理を行った後に数時間の徐冷を行う必要があるため、このようなアニール工程を省略できることは、製造工程の大幅な簡素化とレゾルバの低コスト化が可能となる。
また、ステータ200には、平板250に装着可能に構成された環状の絶縁キャップ400が装着される。絶縁キャップ400には、ステータ200のステータティース210a〜210hの位置に合わせて設けられた複数のボビン410a、410b、410c、410d、410e、410f、410g、410hが一体に形成されている。各ボビンは、挿入孔(ステータティース挿入孔)を有し、当該ボビンに対応するステータティースが該挿入孔に挿入されると共に、その外側にステータ巻線が巻回される。複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンの挿入孔の向きは、ロータ300の回転軸の向きである。
図5に、実施形態1における絶縁キャップ400の斜視図を示す。図5において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
絶縁キャップ400では、複数のボビン410a〜410hが有する挿入孔の向きが、ロータ300の回転軸の向きと一致している。そのため、ステータ200に絶縁キャップ400を装着する際に、平板250の上方から装着することができる上に、ステータ200の内側の狭い空間で各ボビンにステータ巻線を巻回させる必要がなくなる。従って、実施形態1によれば、絶縁キャップ400の取り付け工程が簡素化される上に、別工程において、予め絶縁キャップ400を形成しておくことが可能となる。これにより、レゾルバ100の生産効率の向上やコストダウンを図ることが可能となる。
また絶縁キャップ400に設けられる複数のボビン410a〜410hを構成する各ボビンには、ステータ巻線の位置ずれを防止する位置ずれ防止手段として、つば部(例えば、図5に示すつば部412a)が設けられており、つば部によってボビンに凹部が形成されるようにし、この凹部においてステータ巻線の位置がずれないようになっている。つば部は、ボビン410a〜410hのそれぞれに設けられてもよいし、ボビン410a〜410hの一部にのみ設けられていてもよい。このような位置ずれ防止手段を設けることにより、磁束の均一化を図ることができるようになり、信頼性を向上させることができるようになる。
更に、絶縁キャップ400は、外部から励磁信号を入力したり検出信号を出力したりするための端子ピンが設けられるコネクタ部450を含み、複数のボビン410a〜410hとコネクタ部450とが一体に形成される。このコネクタ部450には、端子ピン挿入孔461〜466が設けられており、端子ピン挿入孔461〜466のそれぞれには、励磁信号の入力や検出信号の出力を行うために導電材からなる端子ピン471〜476がそれぞれ挿入される。
また、ステータ巻線と電気的に接続される端子ピンが設けられるコネクタ部を、複数のボビンと共に一体に形成するようにしたので、ステータ巻線を確実に固定させて、信頼性を向上させることができるようになる。
更に、絶縁キャップ400は、複数の渡りピン(突起部)480a、480b、480c、480d、480e、480f、480gを含み、複数のボビン410a〜410h、コネクタ部450及び複数の渡りピン480a〜480gが一体に形成されている。複数の渡りピン480a〜480gを構成する各渡りピンは、2つのボビンの間において、環状の絶縁キャップ400の所与の円周上に形成されている。なお、ボビン410a、410hの間には、渡りピンが形成されていない。各渡りピンは、2つのボビンの間に設けられた円柱状の形状を有し、一方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される導線が、渡りピンにおいて張力を持たせた状態で掛けられて、他方のボビンの外側に巻回されるステータ巻線と電気的に接続される。これにより、2つのボビンの距離が長くなっても共振し難くなる上に、ステータ巻線の巻き数を半ターン単位で調整できるようになる。ここで、導線に張力を持たせ易くし、且つその状態をできるだけ長く維持させるために、渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの部分を有することが望ましい。
即ち、絶縁キャップ400は、複数のボビンを構成する第1のボビン及び第2のボビンの間に設けられた渡りピンを含むことができる。更に、この渡りピンは、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きの巻線経由部を含み、第1のボビンの外側に巻回される第1のステータ巻線と第2のボビンの外側に巻回される第2のステータ巻線とを電気的に接続する導線が、巻線経由部において張力を持たせた状態で掛けられる。なお、巻線経由部は、ロータ300の回転軸の向きと同じ向きであるものに限定されない。
更にまた、絶縁キャップ400は、ステータ200(ステータ200の平板250)の縁部に係止する1又は複数の係止部を含み、これらの係止部によりステータ200に装着可能に構成されている。
図6に、図5の絶縁キャップ400を裏面から見た斜視図を示す。図6において、図5と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
絶縁キャップ400は、コネクタ部450を平板250に固定するための係止部452、454と、複数のボビンが形成される固定部を平板250の内径側の縁部に固定するための係止部470a、470b、470c、470d、470e、470f、470gを含む。これらの係止部は、絶縁キャップ400が平板250に取り付けられた際に、突起した部分が平板250の縁部に係止するようになっており、いわゆる爪構造によって係止部の機能が実現されている。
図7に、実施形態1における係止部の説明図を示す。図7は、平板250の縁部に係止する係止部452の断面構造の一例を表すが、他の係止部も同様である。
絶縁キャップ400のコネクタ部450が、平板250の第1の面PL1側から装着されて係止部452が平板250の第2の面PL2側に突出した際、係止部452が平板250の縁部の第2の面PL2側で係止するようになっている。絶縁キャップ400が有するすべての係止部は、図7と同様に、平板250に係止するようになっている。その結果、実施形態1では、ステータ200の平板250の内径側の縁部に、絶縁キャップ400の係止部470a〜470gが係止することで、ステータ200の平板250に絶縁キャップ400が装着される。
このような絶縁キャップ400をステータ200の平板250に装着することにより、ステータ200とステータ巻線とが電気的に絶縁される。これにより、ステータ巻線により構成されるコイルの絶縁破壊を防止できる。このような絶縁キャップ400は、PBT(Poly-butylene-terephtalate:ポリブチレンテレフタレート)又はPPT(Polypropylene terephtalate:ポリプロピレンテレフタレート)等の絶縁性の樹脂(絶縁材)を用いた射出成型により形成される。
ロータ300は、ステータ200と同じ材質の磁性材料からなり、ステータ200に対して回転自在に設けられている。より具体的には、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。例えば、ロータ300の軸倍角が「3」であり、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線を3周期で変化する形状を有している。そして、平板250に対して起こされたステータティースの内側(内径側、内周側)の面と対向するロータ300の外周側の側面が、ロータ300の1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化するようになっている。
このようなロータ300は、1枚の環状の電磁鋼板(広義には磁性材料からなる平板)の少なくとも外径側(外周側)の縁部を回転軸方向に曲げて形成された側面を有し、この側面が、平板250に対して起こされた各ステータティースの面と対向する。実施形態1におけるレゾルバ100がインナーロータ型であるため、電磁鋼板の外径側の縁部を曲げて側面を形成するが、レゾルバがアウターロータ型の場合には、ロータを構成する電磁鋼板の内径側の縁部を曲げて側面を形成し、この側面を、平板250に対して起こされた各ステータティースの面と対向させる。
図8に、実施形態1におけるロータ300の構造の説明図を示す。図8は、ロータ300の斜視図を表すと共に、このロータ300のB−B線に沿った断面構造を模式的に表す。
実施形態1では、環状の電磁鋼板の外径側の縁部及び内径側の縁部を曲げ加工(又は絞り加工)によって側面が形成されている。外径側の側面を形成することで、ステータティースの面と対向する面積を増加させ、電磁鋼板を積層させたときの厚さを確保できる。また、内径側の側面を形成することで、ロータ300の取り付けが簡単になると共に、ロータ300の体積を増加させて磁束のやり取りに寄与させることができる。
このロータ300の側面を加工する際も、ステータティースの曲げ加工と同様に、断面形状がR形状となるように電磁鋼板の縁部を曲げることが望ましい。
図9に、図8の側面部310の断面構造の説明図を示す。なお、図9は、ロータ300の外径側の側面の断面形状を示すが、ロータ300の内径側の側面の断面形状も同様である。
図8のB−B線に沿った側面の断面形状は、R形状である。より具体的には、実施形態1では、側面を形成する際の曲げ内側における磁性材料の実効透磁率が変化しないように、電磁鋼板の縁部が、該電磁鋼板に対して起こされている。そのため、図9に示すように、断面視において、側面は、所与の曲げ半径の曲げ加工又は絞り加工により電磁鋼板に対して起こされる。ここで、曲げ半径rr1は、電磁鋼板の厚さtr以上である(rr1≧tr)ことが望ましい。
これにより、ロータ300を構成する電磁鋼板の厚さに応じた曲げ半径による加工により、電磁鋼板の粒状破壊を確実に防止し、回転角度の検出精度の向上を確実に実現できるようになる。
また、曲げ半径rr1の中心から曲げ外側の面までの距離rr2は、次式の関係を有することが望ましい。
これによっても、ロータ300を構成する電磁鋼板の厚さに応じた曲げ半径による加工により、磁性材料の粒状破壊を確実に防止し、回転角度の検出精度の向上を確実に実現できるようになる。
更に、実施形態1では、電磁鋼板を積層させたときと同様の厚さを確保するために、側面の高さHについて、5×tr≦H≦9×trの関係を有することが望ましい。ロータ300の側面を9×trより高くしても、これ以上、検出信号のレベルを改善させることが期待できずに、却ってロータ300の大型化を招く。一方、ロータ300の側面を5×trより低くすると、検出信号のレベルが低くなる。
次に、ロータ300の回転によって検出巻線から出力される検出信号を取り出すためのステータ巻線について説明する。ステータ巻線は、励磁巻線と検出巻線とから構成され、励磁巻線により励磁した状態で、ステータ200に対するロータ300の回転により、検出巻線の信号が変化する。
図10(A)、図10(B)に、ステータ200のステータティースに設けられるステータ巻線の説明図を示す。図10(A)は、ステータ巻線を構成する励磁巻線の説明図を表す。図10(B)は、ステータ巻線を構成する検出巻線の説明図を表す。図10(A)、図10(B)は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図10(A)では、励磁巻線の巻き方向を模式的に示し、図10(B)では、検出巻線の巻き方向を模式的に示す。実際には、各ボビンのステータ巻線を電気的に接続する場合、各ステータ巻線間を接続する導線は、その間に形成された渡りピンを経由させる。
励磁巻線は、図10(A)に示すように、隣接するステータティースの巻線方向が互いに反対方向となるように設けられる。各ステータティースに設けられる励磁巻線は、例えばコイル巻線とすることができる。このような励磁巻線と電気的に接続される端子R1、R2間に、励磁信号が与えられる。
また、図10(B)に示すように、2相の検出信号を得るために、検出巻線は2組の巻線部材からなる。2相の検出信号の第1相(例えばSIN相)の検出信号を得るための検出巻線は、例えばステータティース210aから反時計回りにステータティース210gまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。一方、2相の検出信号の第2相(例えばCOS相)の検出信号を得るための検出用の巻線部材は、例えばステータティース210bから反時計回りにステータティース210hまで、1つおきに各ステータティースに巻回される。第1相の検出信号は、端子S1、S3間の信号として検出され、第2相の検出信号は、端子S2、S4間の信号として検出される。各ステータティースに設けられる検出巻線は、例えばコイル巻線とすることができる。
このように、ステータティース210a、210c、210e、210gが挿入孔に挿入されるボビン410a、410c、410e、410gのそれぞれの外側には、励磁巻線及び第1相(SIN相)の検出巻線が巻回される。ステータティース210b、210d、210f、210hが挿入孔に挿入されるボビン410b、410d、410f、410hのそれぞれの外側には、励磁巻線及び第2相(COS相)の検出巻線が巻回される。
なお、実施形態1では、励磁巻線の巻き方向は、図10(A)に示す方向に限定されるものではない。また、実施形態1では、検出巻線の巻き方向は、図10(B)に示す方向に限定されるものではない。
以上のような構成を有するレゾルバ100では、ステータ200に対するロータ300の回転によって、次のような磁気回路が形成される。
図11に、図1のレゾルバ100の上面図を表す。図11は、図1のロータ300の回転軸方向にレゾルバ100を見た平面図であり、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図11では、説明の便宜上、絶縁キャップ400の図示を省略すると共に、ステータ200に対してロータ300が回転状態のときのある時刻における磁束の向きを模式的に示している。また、図11において、巻線磁芯としての各ステータティースを通る磁束の向きを模式的に示している。
絶縁キャップ400を介してステータ200のステータティースにステータ巻線が設けられており、ロータ300が回転すると、ロータ300を介して隣接するステータティース間で磁気回路が形成される。実施形態1では、図11に示すように、隣接するステータティースを通る磁束の向きが反対方向となるようにステータ巻線が設けられているため、ロータ300の回転によって、各ステータティースとの間のギャップパーミアンスの変化に応じて、各ステータティースに巻回されるステータ巻線に発生する電流もまた変化し、例えば検出巻線に発生する電流波形を正弦波状にすることができる。
以上のような構成を有するステータ200は、磁性材料として1枚の電磁鋼板により構成されるため、材料費として高価である上に折り曲げプレス加工による曲げに弱く、曲げによる加工精度や信頼性を維持できにくい積層電磁鋼板を採用する場合に比べて、低コストで、曲げによる加工精度や信頼性を維持できるようになる。しかも、曲げ加工による磁性材料の粒状破壊を防止し、曲げ加工前の磁気特性を確保することにより高精度な角度検出を可能とする。
次に、実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法について説明する。
図12に、実施形態1におけるレゾルバ100の製造方法の一例のフロー図を表す。
図13に、折り曲げプレス加工前の実施形態1におけるステータ200を構成する平板250の斜視図を示す。図13において、図1又は図2と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態1におけるレゾルバ100を製造するために、まず、ステータ形状加工工程においてステータ200の形状を加工した(ステップS10)後に、折り曲げプレス加工工程(曲げ工程)において、平板状のステータ200のステータティースを折り曲げて、複数のステータティースが平板面に対して起こされる(ステップS12)。その結果、図2に示すように、平板250に対してステータティース210a〜210hが起こされる。
即ち、ステップS10のステータ形状加工工程では、ステップS12の折り曲げプレス加工を行うために、図13に示すように、プレス加工により、1枚の電磁鋼板、普通鋼であるSPCC、機械構造用炭素鋼であるS45C又はS10Cを材質とする環状の磁性材料からなる平板の内径側の縁部にステータティースが形成されて、ステータ200の形状が形成される。
そして、ステップS12では、図3に示すように、折り曲げプレス加工により、ステップS10において形成された複数のステータティースを、断面視において、その根元部分がR形状となるように加工される。この結果、ステータティース210a〜210hは、ステータ200の平板面に対して略垂直となるように起こされる。
続いて、絶縁キャップ取り付け工程として、図5に示す絶縁キャップ400を、そのボビンに設けられた挿入孔に、ステップS12で起こされたステータティースを挿入して、平板250に取り付ける(ステップS14)。このとき、絶縁キャップ400に設けられた1又は複数の係止部により、平板250に係止することで取り付けられる。
その後、巻線部材取り付け工程として、ステップS12で起こされたステータティース210a〜210hの各ステータティースを巻線磁芯として、各ステータティースの外側にステータ巻線が設けられる(ステップS16)。こうして起こされたステータティースのそれぞれの周囲に、励磁用の励磁巻線及び検出用の検出巻線が設けられる。なお、ボビンにステータ巻線を取り付けた絶縁キャップ400を、平板250に装着するようにしてもよい。
次に、ロータ加工工程として、ロータ300の平面形状がプレス加工により環状に形成された後に、その平面の外径側の縁部及び内径側の縁部が曲げ工程又は絞り工程によって側面が形成され、図8に示す構造のロータ300が形成される(ステップS18)。実施形態1では、ロータ300は、平面視において外径側の外形輪郭線が3周期で変化する形状を有している。このとき、ロータ300の側面の断面形状がR形状となるように加工される。
そして、ロータ取り付け工程として、ロータ300が、ステータ200に対して回転自在となるように、ステータ200の内径側に設けられる(ステップS20)。より具体的には、ロータ取り付け工程において、ロータ300は、ロータ300の回転軸回りの回転によりロータ300の外側の側面とステータ200の各ステータティースとの間のギャップパーミアンスが変化するようにステータ200に対して回転可能に設けられる。なお、図12では、ロータ加工工程が、巻線部材取り付け工程の後に行われるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、少なくともロータ取り付け工程に先立って行われていればよい。以上のように、実施形態1におけるレゾルバ100が製造される。
以上説明したように、実施形態1によれば、検出精度をより向上させ、低コストで、部品点数が少ないレゾルバ100を製造できるようになる。しかも、ロータ300を1枚の電磁鋼板で構成することで、レゾルバ100(ロータ300)の構成及び製造工程が簡素化され、且つ、レゾルバ100(ロータ300)の軽量化を実現できるようになる。
〔実施形態2〕
実施形態1では、環状のロータの外径側の縁部のみならず、内径側の縁部も曲げて側面を形成するようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図14に、本発明に係る実施形態2におけるレゾルバの構成例の分解斜視図を示す。図14において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態2におけるレゾルバ600が実施形態1におけるレゾルバ100と異なる点は、ロータの構造である。レゾルバ600は、ステータ200と、ロータ610とを含み、ロータ610は、環状の電磁鋼板の外径側の縁部のみを曲げ加工によって側面が形成され、該側面を、平板250に対して起こされた各ステータティースの面と対向させる。
図15に、実施形態2におけるロータ610の構造の説明図を示す。図15は、ロータ610の斜視図を表すと共に、このロータ610のC−C線に沿った断面構造を模式的に表す。
実施形態2では、環状の電磁鋼板の外径側の縁部を曲げ加工によって側面が形成されている。外径側の側面を形成することで、ステータティースの面と対向する面積を増加させ、電磁鋼板を積層させたときの厚さを確保できる。このロータ610の側面を加工する際も、ステータティースの曲げ加工と同様に、断面形状がR形状となるように電磁鋼板の縁部を曲げることが望ましい。
実施形態2におけるレゾルバ600について、その他の構成は実施形態1と同様であるため、詳細な説明及び図示を省略する。
このような実施形態2によれば、実施形態1と同様に、検出精度をより向上させ、低コストで、部品点数が少ないレゾルバ600を製造できるようになる。しかも、ロータ610を1枚の電磁鋼板で構成することで、レゾルバ600(ロータ610)の構成及び製造工程が簡素化され、且つ、レゾルバ600(ロータ610)の軽量化を実現できるようになる。
〔実施形態3〕
実施形態1では、ロータを構成する電磁鋼板の同一面側に、ロータの外径側の縁部及び内径側の縁部を曲げて側面を形成するようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図16に、本発明に係る実施形態3におけるレゾルバの構成例の分解斜視図を示す。図16において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
実施形態3におけるレゾルバ700が実施形態1におけるレゾルバ100と異なる点は、ロータの構造である。レゾルバ700は、ステータ200と、ロータ710とを含み、ロータ710は、環状の電磁鋼板の外径側の縁部を曲げ加工によって側面が形成され、該側面を、平板250に対して起こされた各ステータティースの面と対向させる。また、該電磁鋼板の内径側の縁部を、ロータ710を構成する電磁鋼板の外径側の縁部とは逆の面側に曲げて側面が形成される。
図17に、実施形態3におけるロータ710の構造の説明図を示す。図75は、ロータ710の斜視図を表すと共に、このロータ710のD−D線に沿った断面構造を模式的に表す。
実施形態3では、環状の電磁鋼板の外径側の縁部を曲げ加工によって側面が形成され、該電磁鋼板の内径側の縁部が逆の面側に曲げ加工によって側面が形成されている。外径側の側面を形成することで、ステータティースの面と対向する面積を増加させ、電磁鋼板を積層させたときの厚さを確保できる。また、内径側の側面を形成することで、ロータ710の取り付けが簡単になると共に、ロータ710の体積を増加させて磁束のやり取りに寄与させることができる。このロータ710の側面を加工する際も、ステータティースの曲げ加工と同様に、断面形状がR形状となるように電磁鋼板の縁部を曲げることが望ましい。
実施形態3におけるレゾルバ700について、その他の構成は実施形態1と同様であるため、詳細な説明及び図示を省略する。
このような実施形態3によれば、実施形態1と同様に、検出精度をより向上させ、低コストで、部品点数が少ないレゾルバ700を製造できるようになる。しかも、ロータ710を1枚の電磁鋼板で構成することで、レゾルバ700(ロータ710)の構成及び製造工程が簡素化され、且つ、レゾルバ700(ロータ710)の軽量化を実現できるようになる。
以上説明した上記のいずれかに実施形態におけるレゾルバは、次のような角度検出システムに適用される。
図18に、実施形態1におけるレゾルバ100が適用された角度検出システム10の構成例の機能ブロック図を示す。図18において、図1、図10(A)又は図10(B)と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。図18では、角度検出システム10にレゾルバ100が適用される例を示すが、角度検出システム10は、実施形態2におけるレゾルバ600又は実施形態3におけるレゾルバ700が適用されてもよい。
角度検出システム10は、レゾルバ100と、R/D変換器(広義には変換器、変換装置)500とを含む。レゾルバ100は、ステータと、該ステータに対して回転可能に設けられたロータとを含み、1相の励磁信号R1、R2により励磁された状態で、ステータに対するロータの回転角度に応じた2相の検出信号S1〜S4を出力する。R/D変換器500は、レゾルバ100に対する励磁信号R1、R2を生成すると共に、レゾルバ100からの2相の検出信号S1〜S4をデジタル変換したデジタル信号を生成し、シリアルクロックSCKに同期して該デジタル信号に対応したシリアルデータを出力する。このシリアルデータが、レゾルバ100によって検出された回転角度に対応した制御処理に供される。
なお、図18では、R/D変換器500がレゾルバ100の外部に設けられているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レゾルバ100が、R/D変換器500を内蔵するようにしてもよい。こうすることで、励磁信号及び検出信号にノイズが混入しにくくなり、より一層、角度の検出精度を向上させることができるようになる。
〔具体的なシステム構成例〕
上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは、例えば、車載用のモーター又は発電機の角度検出器として搭載されたり、産業機器用のモーター又は発電機の角度検出器として搭載されたりする。以下では、このような角度検出器として上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用される角度検出システムの具体的な構成例について説明する。
図19(A)、図19(B)に、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが適用されるシステムの具体的な構成例を示す。図19(A)は、ハイブリッド車両のモーター及び発電機の回転位置を検出するハイブリッドエンジンシステムの構成例を表す。図19(B)は、車両の操舵装置におけるステアリング操作を補助する電動式のパワーステアリングシステムの構成例を表す。
図19(A)に示すハイブリッドエンジンシステム1200は、エンジン1210、モーター1220、発電機1230、バッテリー1240、インバーター装置1250、動力分配装置1260、ディファレンシャルギヤ1270及び駆動輪1280、1290を有し、図示しない制御システムによって制御される。エンジン1210は、ガソリンエンジンであり、クランク軸1212を回転駆動する。モーター1220及び発電機1230には、インバーター装置1250を介してバッテリー1240が接続されており、バッテリー1240からの電力供給を受けて駆動軸1222を回転駆動する。一方、発電機1230は、回転軸1232の回転により発生させた起電力をインバーター装置1250を介してバッテリー1240に充電することができる。動力分配装置1260には、クランク軸1212、駆動軸1222及び回転軸1232が機械的に結合されている。動力分配装置1260は、これら3軸のうちの2軸の動力に応じて残りの1軸の回転数、トルクが決される特性を有し、例えばクランク軸1212の動力を、回転軸1232に出力する動力やモーター1220との間でやり取りされる動力に分配する。
動力分配装置1260からの動力が伝達され、駆動軸1222に結合される動力伝達ギヤ1272は、ディファレンシャルギヤ1270に結合されており、動力伝達ギヤ1272からの動力は、駆動軸1282を介して駆動輪1280、1290に伝達される。
このようなハイブリッドエンジンシステム1200において、モーター1220の駆動軸1222にロータが取り付けられるレゾルバ1202と、発電機1230の回転軸1232にロータが取り付けられるレゾルバ1204とが設けられる。レゾルバ1202は、モーター1220の駆動軸1222の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。レゾルバ1204は、発電機1230の回転軸1232の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。図示しない制御システムは、レゾルバ1202、1204からの検出結果に基づいて、例えばエンジン1210の回転角加速度を決定してエンジン1210を制御する。
レゾルバ1202、1204の少なくとも1つは、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが採用される。
これによって、例えばハイブリッド車両が低速時及び停止時には、エンジン1210を停止し、バッテリー1240、インバーター装置1250及びモーター1220により駆動輪1280、1290に動力を伝達させ、それ以外ではエンジン1210及びモーター1220の両方で駆動輪1280、1290に動力を伝達させることができる。そして、減速時や制御時には、駆動輪が1280、1290の駆動によって発電機1230の回転軸を回転させて制動エネルギーを電力に変換して、インバーター装置1250を介してバッテリー1240に充電させる。
なお、ハイブリッドエンジンシステム1200の構成は、図19(A)に示す構成に限定されるものではなく、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは種々の構成のハイブリッドエンジンシステムに適用できる。
図19(B)に示す電動式パワーステアリングシステム1300は、ステアリングホイール1310、ステアリング軸1320、ジョイント1330、ピニオン軸1340、操舵軸1350、モーター1360を有する。ステアリング軸1320の先端に固定されたステアリングホイール1310を回転させると、ジョイント1330を介してピニオン軸1340を回転させる。ピニオン軸1340の回転力は、操舵軸1350の軸線方向の往復動に変換され、図示しない操舵輪の転蛇角を変化させる。この操舵軸1350にはモーター1360が同軸状に結合されており、ステアリングホイール1310の回転による操舵軸1350の往復動を補助するようにモーター1360が駆動力を与えるようになっている。
このような電動式パワーステアリングシステム1300において、モーター1360の駆動軸にロータが取り付けられるレゾルバ1370が設けられる。レゾルバ1370は、モーター1360の駆動軸の回転位置(回転角度)を検出し、その検出結果を図示しない制御システムに出力する。図示しない制御システムは、レゾルバ1370からの検出結果に基づいて、例えばステアリングホイール1310の回転方向を検出し、その方向の回転力を補助するようにモーター1360を制御する。
レゾルバ1370は、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバが採用される。
なお、電動式パワーステアリングシステム1300の構成は、図19(B)に示す構成に限定されるものではなく、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは種々の構成の電動式パワーステアリングシステムに適用できる。
また、上記のいずれかの実施形態におけるレゾルバは、上記のシステムに適用されるものに限定されず、産業機器やその他の種々のシステムに適用できることは言うまでもない。
以上、本発明に係るレゾルバ及びレゾルバの製造方法を上記のいずれかの実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記の各実施形態では、レゾルバが、1相励磁2相出力型であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記の各実施形態におけるレゾルバが、励磁信号が1相以外の相を有する信号であったり、検出信号が2相以外の相を有する信号であったりしてもよい。
(2)上記の各実施形態では、磁性材料からなるステータの材質が1枚の電磁鋼板、普通鋼又は機械構造用炭素鋼鋼材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
(3)上記の各実施形態では、ステータが8個のステータティースを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ステータが有するステータティースが、10個、12個又は14個であってもよい。
(4)上記の各実施形態では、いわゆるインナーロータ型の角度検出装置としてのレゾルバを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係るレゾルバが、いわゆるアウターロータ型であってもよい。この場合、ステータティースの外側(外径側、外周側)の面と対向するロータの内周側の面が、ロータの1回転につき3周期でギャップパーミアンスが変化する。
(5)上記の各実施形態では、軸倍角「3」のロータを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば軸倍角「5」のロータであってもよい。この場合、環状の平板であるロータの形状が、所与の半径の円周線を基準に、該円周線の1周につき、平面視において外径側の外形輪郭線を5周期で変化する形状とするようにしてもよい。即ち、ロータは、平面視において、平板の内側輪郭線の径が周期的に変化する形状を有する。
(6)上記の各実施形態では、すべての係止部がステータの平板の縁部に係止するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つの係止部が、ステータの平板の縁部に係止するものであればよい。
(7)上記の各実施形態では、絶縁キャップ400を介してステータ巻線をステータティースの外側に設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、絶縁キャップ400が省略された構成であってもよい。