図1は、本発明の第1の実施形態であるカプセルトナーの製造方法の一例を示す工程図である。本実施形態のカプセルトナーの製造方法は、トナー母粒子作製工程S1と、樹脂微粒子調製工程S2と、被覆工程S3とを含む。
1、トナー母粒子作製工程
ステップS1のトナー母粒子作製工程では、樹脂被覆層によって被覆されるべきトナー母粒子を作製する。トナー母粒子は、結着樹脂と着色剤とを含む粒子であり、その作製方法は特に限定されることなく、公知の方法によって得ることができる。トナー母粒子の作製方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、ならびに懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法および溶融乳化法などの湿式法が挙げられる。以下、粉砕法によってトナー母粒子を作製する方法を説明する。
<粉砕法によるトナー母粒子作製方法>
粉砕法を用いるトナー母粒子の作製方法では、結着樹脂、着色剤およびその他の添加剤を含む前述のトナー母粒子原料を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、冷却固化した固化物を粉砕機によって粉砕する。その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
混練機としては公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。
粉砕機としては、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、および高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
分級には、遠心力による分級および風力による分級によって過粉砕トナー母粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
(結着樹脂)
前述のように、トナー母粒子は結着樹脂と着色剤とを含む。結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー用の公知の結着樹脂またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができ、たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
これらの結着樹脂の中でも、ポリエステルは、透明性に優れ、カプセルトナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与できるので、カラートナー用の結着樹脂に好適である。また、トナー母粒子にポリエステル樹脂が含まれ、トナー母粒子に含まれるポリエステル樹脂と、樹脂被覆層を形成するポリエステル樹脂微粒子に含まれるポリエステル樹脂とが、互いに架橋剤によって架橋されていると、樹脂被覆層を形成する複数のポリエステル樹脂微粒子がトナー母粒子表面により強く固定されるので、樹脂被覆層を形成するポリエステル樹脂微粒子が脱離することによって生じる感光体のフィルミングを抑える効果がより高まる。
ポリエステルとしては公知のものを使用でき、たとえば多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。
多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、ピロメリト酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多価アルコールとしても、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化温度などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。なお、場合によっては有機溶媒は用いなくてよい。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変えることができる。また多塩基酸として無水トリメリト酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができ、変性ポリエステルを得ることができる。
ポリエステル樹脂としては、ポリエステルの主鎖および/または側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させることによって、水中で自己分散性を発揮する自己分散性ポリエステルも使用することができる。またポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化した樹脂も使用することができる。
結着樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上80℃以下であることが好ましい。結着樹脂のガラス転移温度が30℃未満であると、画像形成装置内部においてトナーが熱凝集するブロッキングを発生しやすくなり、保存安定性が低下するおそれがある。結着樹脂のガラス転移温度が80℃を超えると、記録媒体へのトナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
(着色剤)
着色剤としては、黒色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色および白色の着色剤が挙げられ、電子写真分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などが挙げられる。
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
着色剤は1種を単独で使用でき、または2種以上の異なる色のものを併用できる。また同色であっても、2種以上を併用できる。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上10重量部以下である。
着色剤は、結着樹脂中に均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。また2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、たとえば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際にトナー母粒子原料に混入される。
(帯電制御剤)
トナー母粒子には、結着樹脂および着色剤の他に帯電制御剤が含まれてもよい。帯電制御剤としてはこの分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。
正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。
(離型剤)
また、トナー母粒子には、結着樹脂および着色剤の他に離型剤が含まれてもよい。離型剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)およびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上10重量部以下、特に好ましくは1.0重量部以上8.0重量部以下である。
(トナー母粒子)
トナー母粒子作製工程S1において得られるトナー母粒子は、体積平均粒子径が4μm以上8μm以下であることが好ましい。トナー母粒子の体積平均粒子径が4μm以上8μm以下であると、高精細な画像を長期にわたって安定して形成することができる。またこの範囲まで小粒径化することによって、少ない付着量でも高い画像濃度が得られ、トナー消費量を削減できる効果も生じる。トナー母粒子の体積平均粒子径が4μm未満であると、トナー母粒子の粒径が小さくなり過ぎ、高帯電化および低流動化が起こるおそれがある。この高帯電化および低流動化が発生すると、感光体にカプセルトナーを安定して供給することができなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。トナー母粒子の体積平均粒子径が8μmを超えると、トナー母粒子の粒径が大きく、形成画像の層厚が高くなり著しく粒状性を感じる画像となり、高精細な画像を得ることができないので望ましくない。またトナー母粒子の粒径が大きくなることによって比表面積が減少し、カプセルトナーの帯電量が小さくなる。カプセルトナーの帯電量が小さくなると、カプセルトナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
2、樹脂微粒子調製工程
ステップS2の樹脂微粒子調製工程では、乾燥されたポリエステル樹脂微粒子を調製する。ポリエステル樹脂微粒子は、後の被覆工程S3において、トナー母粒子表面を被覆する被覆材料として用いられる。トナー母粒子表面をポリエステル樹脂微粒子で被覆することによって、たとえば現像剤の保存中にトナー母粒子に含まれる離型剤などの低融点成分の溶融によるカプセルトナー凝集の発生を防止することができる。また、トナー母粒子を被覆するときの膜状態を調整することによって、得られるカプセルトナーにポリエステル樹脂微粒子の形状を残し、ポリエステル樹脂微粒子の凹凸形状をトナー母粒子表面に残したまま膜化することができるので、平滑な表面を有するトナーに比べて、クリーニング性に優れるカプセルトナーを得ることができる。
ポリエステル樹脂微粒子は、たとえば、ポリエステル樹脂微粒子の原料であるポリエステル樹脂をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができる。またポリエステル樹脂のモノマー成分の重合によって得ることもできる。このような方法で得られたポリエステル樹脂微粒子を乾燥させる方法としては、どのような方法を用いてもよく、たとえば熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などの方法が挙げられる。
ポリエステル樹脂微粒子は、ポリエステル樹脂だけではなく、ポリエステル樹脂以外の樹脂および後述する噴霧液体に含まれる帯電制御剤を含んでいてもよい。ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と同じ種類の樹脂であってもよく、違う種類の樹脂であってもよい。
ポリエステル樹脂微粒子の原料であるポリエステル樹脂は、トナー母粒子に含ませるポリエステル樹脂と同じ種類のポリエステル樹脂であってもよく、異なる種類のポリエステル樹脂であってもよい。
ポリエステル樹脂微粒子に帯電制御剤を含むことで、表面だけではなく、内部にも帯電制御剤を含む樹脂被覆層を形成することができる。これによって、もし樹脂被覆層が摩耗しても、カプセルトナーの帯電安定性を維持することができる。
ポリエステル樹脂微粒子の原料として用いられる樹脂の軟化温度は、トナー母粒子に含まれる結着樹脂の軟化温度よりも高いことが好ましい。これによって、本実施形態の製造方法で製造されたカプセルトナーは、保存中にカプセルトナー同士が融着することを防止でき、保存安定性を向上させることができる。
また、ポリエステル樹脂微粒子の原料として用いられる樹脂の軟化温度は、カプセルトナーが使用される画像形成装置の種類にもよるけれども、80℃以上140℃以下であることが好ましい。このような温度範囲の樹脂を用いることによって、保存安定性と定着性とを兼ね備えたカプセルトナーが得られる。
ポリエステル樹脂微粒子は、その体積平均粒子径がトナー母粒子の体積平均粒子径よりも充分に小さいことが必要であり、0.05μm以上1μm以下であることが好ましい。またポリエステル樹脂微粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂微粒子の体積平均粒子径が0.05μm以上1μm以下であることによって、トナー母粒子表面に付着しやすく、軟化、膜化および架橋構造を形成しやすいポリエステル樹脂微粒子とすることができる。
3、被覆工程
<回転撹拌装置>
ステップS3の被覆工程では、図2,3に示す回転撹拌装置201を用いる。図2は、回転撹拌装置201の構成を示す正面図である。図3は、図2に示す回転撹拌装置201を切断面線A200−A200からみた概略断面図である。ステップS3の被覆工程では、たとえば図2に示すような回転撹拌装置201を用い、ステップS1のトナー母粒子作製工程で作製したトナー母粒子に、ステップS2の樹脂微粒子調製工程で調製したポリエステル樹脂微粒子を付着させて、前記装置内での循環手段による循環と、撹拌による衝撃力と、温度調整手段による温度調整との相乗効果で、トナー母粒子表面に付着させたポリエステル樹脂微粒子を膜化させ、トナー母粒子表面に樹脂被覆層を形成する。
回転撹拌装置201は、粉体流路202と、噴霧手段203と、回転撹拌手段204と、図示しない温度調整用ジャケットと、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成される。回転撹拌手段204と粉体流路202とは、循環手段を構成する。
(粉体流路)
粉体流路202は、撹拌部208と、粉体流過部209とから構成される。撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材である。回転撹拌室である撹拌部208には、開口部210、211が形成される。開口部210は、撹拌部208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、撹拌部208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、撹拌部208の前記軸線方向一方側の面208aに垂直な側面208bにおいて、撹拌部208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。循環管である粉体流過部209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続される。これによって撹拌部208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通され、粉体流路202が形成される。この粉体流路202を、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子および気体が流過する。粉体流路202は、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が流動する方向である粉体流動方向が一定の方向となるように設けられる。
(回転撹拌手段)
回転撹拌手段204は、回転軸部材218と、円盤状の回転盤219と、複数の撹拌羽根220とを含む。回転軸部材218は、撹拌部208の軸線に一致する軸線を有しかつ撹拌部208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しないモータによって軸線回りに回転する円柱棒状部材である。回転盤219は、その軸線が回転軸部材218の軸線に一致するように回転軸部材218に支持され、回転軸部材218の回転に伴って回転する円盤状部材である。複数の撹拌羽根220は、回転盤219の周縁部分によって支持され、回転盤219の回転に伴って回転する。
回転軸部材218は、最外周における周速度を50m/sec以上にして回転可能である。最外周とは、回転撹拌手段204の回転軸部材218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材218の軸線との距離がもっとも長い回転撹拌手段204の部分204aである。
(噴霧手段)
噴霧手段203は、粉体流路202の粉体流過部209において、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の流動方向における開口部211に最も近い側の粉体流過部209に設けられる。噴霧手段203は、トナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子との付着、およびポリエステル樹脂微粒子同士の付着を補助する噴霧液体を貯留する図示しない液体貯留部と、キャリアガスを供給する図示しないキャリアガス供給部と、噴霧液体およびキャリアガスを粉体流路202内に存在するトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子に向けて噴射し、噴霧液体の液滴をトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子に噴霧する二流体ノズル230とを備える。
図4は、二流体ノズル230の構造を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、二流体ノズル230は、液管231と空気管232とを含み、液管231および空気管232の軸が一致するよう空気管232の内部に液管231が挿入される。空気管232内には、空気管232および液管231同士を固定する固定部材233が設けられ、このように、液管231および空気管232の少なくとも一部が固定されることで、それらの管の中心がずれない構造となっている。液管231および空気管232の少なくとも一部を固定する固定部材としては、キャリアガスの流れを妨げず、液管231および空気管232の中心がずれないようにできるものであれば特に限定されないが、本実施形態ではメッシュ材料を用いる。また、空気管内壁と液管外壁とが固定部材で固定されている構造に限定されず、空気管232および液管231をそれぞれ別々に固定してもよい。噴霧液体およびキャリアガスは、矢符238の方向に噴霧される。
二流体ノズル230の液管231の内径は、0.5mm以上2.0mm以下が好ましい。空気管232の内径は、1.0mm以上5.0mm以下が好ましい。液管231の内径に対する空気管232の内径の比率は、1:3が好ましい。液管231の内径に対する空気管232の内径の比率が前記範囲から外れるほど、噴霧液体の噴霧状態が悪くなり凝集物を発生させやすくなる。空気管232内に取り付けられた固定部材は、空気管232先端に近い位置に設置するのが好ましい。二流体ノズル230の材質としては、ノズルとしての成形加工または切削加工が可能な材質であれば特に制限なく使用できる。たとえば、鉄、炭素鋼およびステンレス鋼等の各種鉄鋼類、銅、アルミニウム、チタンおよびニッケル等の非鉄金属類、セラミックス、プラスティックス、ガラス繊維、炭素繊維、ならびに金属繊維等で強化した強化(複合)プラスティックス材料などを挙げることができる。このなかでもステンレス鋼が特に好ましい。
空気管232の先端部には、空気管232の外周面の半径方向外方に所定の厚みを有する付着防止部材234が設けられることが好ましい。図5は、付着防止部材234が設けられた二流体ノズル230の構造を模式的に示す斜視図である。図6は、付着防止部材234が設けられた二流体ノズル230の構造を模式的に示す断面図である。付着防止部材234が設けられることによって、噴霧液体が噴霧される液管231先端およびキャリアガスが噴霧される空気管232先端にトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が回り込み、付着することを低減できる。したがって、噴霧液体の噴霧方向が変化せず、空気管232先端の断面において噴霧される単位面積当たりのキャリアガスの量が一定で、さらに安定な噴霧状態を維持することが可能になるので、膜状態や粒度分布が均一なカプセルトナーを長時間にわたってより一層安定して製造することができる。
図6に示すように、付着防止部材234の空気管232の軸線方向における断面形状は、台形であり、台形の互いに平行な2辺のうち、長い方の辺235が空気管232の外周に接していることが好ましい。このような断面形状の付着防止部材234を設けることによって、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が付着防止部材234に衝突しても、それらの粒子が付着防止部材234によってせき止められることがない。したがって、膜状態や粒度分布が均一なカプセルトナーの収率を向上させることができる。
図6において、互いに並行な2辺235,236以外の2辺と、互いに平行な2辺のうち長い方の辺235との角度θ1,θ2の角度は、それぞれ10°以上60°以下が好ましい。角度θ1,θ2の角度が小さすぎると、液管231先端および空気管232先端にトナー母粒子および樹脂微粒子が回り込み、付着することを低減できる効果が充分に発揮されない。角度θ1,θ2の角度が大きすぎると、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が付着防止部材234によってせき止められやすくなる。
付着防止部材234の断面形状における台形の辺235,236の長さおよび高さ237は、回転撹拌装置201のスケールによって用いる二流体ノズル230の大きさ、すなわち液管231および空気管232の長さ、ならびに内径が変わるので、用いる二流体ノズル230の大きさに合わせて適宜調整することが好ましい。
(温度調整用ジャケット)
図2および図3に戻って、温度調整手段である図示しない温度調整用ジャケットは、粉体流路202の外側の少なくとも一部に設けられ、前記ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通して粉体流路202内および回転撹拌手段204の温度を所定の温度に調整する。これによって、後述の温度調整工程S3aにおいて、粉体流路202内および回転撹拌手段204の外側の温度を樹脂微粒子付着工程S3bにおいて投入されるトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御することができる。後述の噴霧工程S3cおよび膜化工程S3dにおいては、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子および噴霧液体にかかる温度にばらつきが少なくなり、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の安定な流動状態を保つことが可能となる。
また合成樹脂などからなるトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子は通常粉体流路内の内壁に何度も衝突し、衝突の際に、衝突エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子に蓄積される。衝突回数が増加するとともに、それらの粒子に蓄積される熱エネルギーが多くなり、やがてトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子は軟化して粉体流路の内壁に付着するが、前述のように前記ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通して温度調整することによって、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の粉体流路内壁への付着力が低減するので、装置内温度の急上昇による粉体流路202内壁に対するトナー母粒子の付着を確実に防止でき、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子によって粉体流路内が狭くなることを抑えることができる。したがって、トナー母粒子にポリエステル樹脂微粒子が均一に被覆し、樹脂被覆層で被覆されたカプセルトナーを高い収率で製造することができる。
噴霧手段203より下流の粉体流過部209内部では、噴霧された噴霧液体が乾燥せずに残存している状態にあり、温度が適正でないと乾燥速度が遅くなり噴霧液体が滞留しやすく、これにトナー母粒子が接触すると、粉体流路202内壁にトナー母粒子が付着しやすくなる。これがトナー母粒子の凝集発生源になりうる。開口部210付近の内壁では、粉体流過部209を流過して開口部210から撹拌部208に流入するトナー母粒子と、回転撹拌手段204による撹拌で撹拌部208内を流動するトナー母粒子とが衝突しやすい。これによって、衝突したトナー母粒子が開口部210付近に付着しやすい。したがってこのようなトナー母粒子が付着しやすい部分に温度調整用ジャケットを設けることによって、粉体流路内壁に対するトナー母粒子の付着を一層確実に防止することができる。
(粉体投入部および粉体回収部)
粉体流路202の粉体流過部209には、粉体投入部206と、粉体回収部207とが接続される。図7は、粉体投入部206および粉体回収部207まわりの構成を示す正面図である。粉体投入部206は、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子を供給する図示しないホッパと、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備える。ホッパから供給されるトナー母粒子および樹脂微粒子は、電磁弁213によって供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して粉体流路202に供給される。粉体流路202に供給されるトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子は、回転撹拌手段204による撹拌によって、一定の粉体流動方向に流過する。また電磁弁213によって供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が粉体流路202に供給されない。
粉体回収部207には、回収タンク215と、回収タンク215と粉体流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備える。電磁弁217によって回収管216内の流路が開放されている状態において、粉体流路202を流過するトナー粒子は回収管216を介して回収タンク215に回収される。また電磁弁217によって回収管216内の流路が閉鎖されている状態において、粉体流路202を流過するトナー粒子は回収されない。
上述のような回転撹拌装置201を用いる被覆工程S3は、温度調整工程S3aと、樹脂微粒子付着工程S3bと、噴霧工程S3cと、膜化工程S3dと、回収工程S3eとを含む。噴霧工程S3cおよび膜化工程S3dは、成膜化工程に相当する。
(1)温度調整工程S3a
ステップS3aの温度調整工程では、回転撹拌手段204を回転させながら、粉体流路202内および回転撹拌手段204の温度をこれらの外側に配設した温度調整用ジャケットに媒体を通じることによって所定の温度に調整する。これによって、粉体流路202内の温度を後述する樹脂微粒子付着工程S3bにおいて投入されるトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が軟化変形しない温度以下に制御することができる。
本工程では、粉体流路202内の一部だけでなく、粉体流路202内全体および回転撹拌手段204が温度調整されることが好ましい。これによって、粉体流路の一部だけが温度調整される場合より、トナー母粒子へのポリエステル樹脂微粒子の付着および膜化が円滑に進み、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の粉体流路内壁面への付着を一層抑制できるので、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が付着して粉体流路202内が狭くなることを抑制できる。したがって、トナー母粒子にポリエステル樹脂微粒子が均一に被覆し、膜状態や粒度分布が均一なカプセルトナーを長時間にわたってより安定して製造することができる。
(2)樹脂微粒子付着工程S3b
ステップS3bの樹脂微粒子付着工程では、回転撹拌手段204の回転軸部材218が回転する状態で、粉体投入部206からトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子を粉体流路202に供給する。粉体流路202に供給されたトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子は、回転撹拌手段204によって撹拌され、粉体流路202の粉体流過部209を矢符214方向に流動する。これによって、ポリエステル樹脂微粒子がトナー母粒子表面に付着し、カプセル粒子が形成される。
(3)噴霧工程S3c
ステップS3cの噴霧工程では、流動状態にあるトナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子とに対する付着を補助し、それらの粒子を溶解せず、可塑化させる効果のある液体であって、帯電制御剤と、ポリエステル樹脂微粒子にそれぞれ含まれるポリエステル樹脂同士を互いに架橋させる架橋剤とを含む噴霧液体を噴霧手段203からカプセル粒子に向けてキャリアガスによって噴霧する。噴霧液体は、送液ポンプによって一定流量で噴霧手段203に送液され、噴霧手段203によって噴霧されることによってガス化して、トナー母粒子および樹脂微粒子表面に展延する。これによってカプセル粒子表面に帯電制御剤と架橋剤とが付着し、カプセル粒子が可塑化する。
(噴霧液体)
帯電制御剤および架橋剤とともに噴霧液体中に含有される液体であって、トナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子との付着を補助し、それらの粒子を溶解せずに可塑化させる効果があり、帯電制御剤および架橋剤と反応不活性な液体としては特に限定されないけれども、噴霧液体の噴霧後にカプセル粒子から除去される必要があるので、蒸発し易い液体であることが好ましい。このような液体としては、たとえば、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびペンタノールなどのアルコール、ならびにオクタン、ノナン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンなどの炭化水素が挙げられる。またこれらの液体は、被覆材料であるポリエステル樹脂微粒子のトナー母粒子に対する濡れ性を高めることができ、トナー母粒子の表面全面または大部分にポリエステル樹脂微粒子を付着させ、変形および膜化させることが容易となる。さらにこれらの液体は蒸気圧が大きいので、除去するときの乾燥時間を一層短縮することができ、トナー母粒子同士の凝集を抑制することができる。
噴霧液体中に含まれ、トナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子とを可塑化させる効果のある前記液体の粘度は、5cP以下であることが好ましい。粘度が5cP以下の液体で好ましいものとしてアルコールが挙げられる。前記アルコールのうち、粘度が5cP以下のアルコールとしては、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。これらのアルコールは粘度が小さく、また蒸発しやすいので、噴霧液体が前記アルコールを含むことによって、噴霧手段203から噴霧される噴霧液体の噴霧液滴径が粗大化することなく、微細な液滴径の噴霧液体の噴霧が可能となる。また均一な液滴径の噴霧液体の噴霧が可能となる。カプセル粒子と液滴との衝突時には、さらに液滴の微細化を促進することができる。これによって、カプセル粒子表面を均一にぬらし、馴染ませて、衝突エネルギーとの相乗効果でポリエステル樹脂微粒子を軟化し、均一性に優れたカプセルトナーを得ることができる。
噴霧液体中に含まれ、トナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子とを可塑化させる効果のある前記液体の粘度は、25℃において測定され、たとえば、コーンプレート型回転式粘度計によって測定することができる。
噴霧液体は、ガス排出部222において濃度センサによって測定されるガス化された噴霧液体の濃度が3%以下となるように噴霧されることが好ましい。このような濃度になるように、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の物性および量、ならびに回転撹拌装置201のスケールに応じて噴霧液体の噴霧速度を適宜変更する。
本実施形態において、噴霧液体には帯電制御剤が含まれている。帯電制御剤としては、トナー母粒子原料として記載した前述の帯電制御剤を用いることができるが、有機ホウ素錯体化合物が好ましい。有機ホウ素錯体化合物は噴霧液体への分散性が良好なので、帯電制御剤が有機ホウ素錯体化合物であることによって、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子に帯電制御剤を一層均一に付着させることができる。そのため、表面に帯電制御剤が一層均一に分散された樹脂被覆層を形成することができ、得られるカプセルトナーの帯電安定性を一層向上させることができる。
有機ホウ素錯体化合物としては、たとえば下記化学式(1)で示される有機ホウ素錯体化合物を使用できる。有機ホウ素錯体化合物は1種類のみで用いても良く、数種類の有機ホウ素錯体化合物を組合わせて用いても良い。
〔式中、Xは、−R、−COR、−CONHRまたはSO2Rを示し、Mは、カチオンを示す。Rは、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、または少なくとも1つの置換もしくは非置換のフェニル基を有する置換メチル基を示す。〕
帯電制御剤を含む噴霧液体をカプセル粒子に噴霧し、カプセル粒子表面に帯電制御剤を付着させることによって、後の膜化工程S3dで、表面に帯電制御剤を含む樹脂被覆層を形成することができる。このような樹脂被覆層を有するカプセルトナーは、帯電安定性が良好となる。また、カプセル粒子に、帯電制御剤を含む噴霧液体を前述のような噴霧手段203から噴霧することによって、帯電制御剤をポリエステル樹脂微粒子表面に均一に分散させて付着させることができ、帯電制御剤が表面に均一に分散された樹脂被覆層を形成することができる。そのため、帯電安定性の一層良好なカプセルトナーを得ることができる。
帯電制御剤は、噴霧液体全量に対して1重量%以上30重量%以下の割合で含有されることが好ましい。噴霧液体全量に対する帯電制御剤の含有量が1重量%未満であると、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子に帯電制御剤を均一に付着させることができない。また、樹脂被覆層に含まれる帯電制御剤の量が少なくなりすぎるので、カプセルトナーの帯電安定性が不充分となるおそれがある。噴霧液体全量に対する帯電制御剤の含有量が1重量%未満であると、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子に帯電制御剤を均一に付着させることができない。また、噴霧液体全量に対する帯電制御剤の含有量が1重量%未満、または30重量%を超えると、樹脂被覆層に含まれる帯電制御剤の量が比較的少なくなる、または比較的多くなるので、現像時に帯電量が上昇しすぎる、または帯電量が低下しすぎるカプセルトナーとなるおそれがある。帯電量が上昇しすぎると、画像にかすれが発生する。帯電量が低下しすぎると、かぶりやトナーの飛散が発生する。なお、現像時にカプセルトナーの帯電量が上昇しすぎるかまたは低下しすぎるかは、樹脂被覆層を構成する樹脂や帯電制御剤の種類によって変わる。たとえば、樹脂被覆層を構成する樹脂としてポリエステル樹脂を用い、帯電制御剤としてホウ素系の帯電制御剤を用いた場合、噴霧液体全量に対する帯電制御剤の含有量が1重量%未満のときは帯電量が上昇しすぎ、帯電制御剤の含有量が30重量%を超えるときは帯電量が低下しすぎる。帯電制御剤が、噴霧液体全量に対して1重量%以上30重量%以下の割合で含有されることによって、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子に、適量の帯電制御剤を一層均一に分散させて付着させることができるので、適量の帯電制御剤が表面に一層均一に分散された樹脂被覆層を形成することができ、得られるカプセルトナーの帯電安定性を向上させることができる。
仮に、帯電制御剤を含まない噴霧液体を用い、帯電制御剤を含むポリエステル樹脂微粒子を膜化させて樹脂被覆層を形成することで、本実施形態で得られるカプセルトナー表面と同じ量の帯電制御剤を表面に含むカプセルトナーを得ようとすると、ポリエステル樹脂微粒子に多量の帯電制御剤を含ませる必要がある。このように多量の帯電制御剤を含む樹脂被覆層を有するカプセルトナーは、現像時に帯電量が上昇しすぎる、または帯電量が低下しすぎるおそれがある。帯電量が上昇しすぎると、画像にかすれが発生する。帯電量が低下しすぎると、かぶりやトナー飛散が発生する。上記のような含有量の帯電制御剤を含む噴霧液体を噴霧手段203から噴霧してカプセルトナーを製造することで、適量の帯電制御剤を表面に含む樹脂被覆層を確実に形成することができ、初期の帯電性に優れるカプセルトナーを得ることができる。
本実施形態において、噴霧液体には、ポリエステル樹脂微粒子に含まれるポリエステル樹脂同士を架橋する架橋剤が含まれている。架橋剤としては、イソシアネート化合物が好ましい。ポリエステル樹脂は、多くの末端水酸基を有しており、ポリエステル樹脂微粒子表面に含まれるポリエステル樹脂の末端水酸基とイソシアネート化合物とは反応性が高く、架橋構造を形成しやすい。また、架橋反応が適度な反応速度で進行するので、架橋時間を長くする必要がなく、膜化工程S3dにおいてカプセルトナー同士の凝集を防止できる。
イソシアネート化合物としては、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2置換のイソシアネート化合物を好ましく使用できる。ポリエステル樹脂の末端水酸基とウレタン結合して架橋構造を形成するためには1分子中にイソシアネート基が2つ以上必要であるが、1分子中にイソシアネート基が3つ以上存在してもイソシアネート基とポリエステル樹脂の末端水酸基との反応性が高くなるということはなく、イソシアネート基が多いほど未反応のままのイソシアネート基が残存しやすくなる。未反応のイソシアネート基が空気中の水分と反応することでカプセルトナーが吸湿すると、保存性の低下が起こる可能性がある。
2置換のイソシアネート化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタンおよび1,12−ジイソシアナトドデカンなどが挙げられる。また、イソシアネート化合物は1種類のみを用いても良く、数種類組み合わせて用いても良い。
イソシアネート化合物の濃度は噴霧液体全量に対して20重量%以下が好ましく、1重量%以上20重量%以下がより好ましい。これによって、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子表面に、イソシアネート化合物を均一に付着させることが可能となり、膜化工程S3dにおいてカプセルトナー同士の凝集を防止できる。イソシアネート化合物の濃度が噴霧液体全量に対して1重量%未満の場合は、ポリエステル樹脂微粒子同士の架橋に時間が掛かるので、膜化工程S3dの時間を長くする必要があり、カプセルトナー同士の凝集が発生しやすくなる。イソシアネート化合物の濃度が噴霧液体全量に対して20重量%を超える場合は、保存性が低下する。また、20重量%以下の場合より架橋が早く進むので膜化工程S3dの時間を短くできるが、膜化の時間を短くしすぎると、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子が充分に膜化されないおそれがある。
イソシアネート化合物は、炭素数が5以上8以下の炭化水素、または炭素数が2以上4以下のアルコールと混合して噴霧することが好ましい。炭素数が5未満の炭化水素は室温での揮発性が極めて高く、取り扱いが困難である。また、炭素数が8を超える炭化水素は、噴霧液体の噴霧を停止してカプセルトナーを乾燥させる際の処理温度を高くするか、処理時間を長くとる必要があるので、凹凸が無くなってカプセルトナー表面が滑らかになり、球形化され、感光体や転写ベルトでのクリーニング不良が発生するおそれがある。
炭素数が2未満のアルコールはイソシアネート化合物との反応性が高く、噴霧液体をカプセル粒子に噴霧する前に、炭素数が2未満のアルコールとイソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応してしまう。また、炭素数が4を超えるアルコールは、樹脂の溶解性が高く、得られるカプセルトナーの表面が滑らかになり、球形化されるので、感光体や転写ベルトでのクリーニング不良が発生するおそれがある。
噴霧液体において、帯電制御剤と架橋剤とは、3:1〜1:3の割合で添加されることが好ましい。これによって、表面に帯電制御剤を含む強固な樹脂被覆層を安定して形成することができる。帯電制御剤の添加量に対して架橋剤の添加量が少なすぎると、膜化工程S3dで帯電制御剤が表面に付着したポリエステル樹脂微粒子同士を充分に融着することができない。帯電制御剤の添加量に対して架橋剤の添加量が多すぎると、未反応の架橋剤成分が空気中の水分と反応して、保存性が低下するおそれがある。
本実施形態では、帯電制御剤および架橋剤を含む噴霧液体をカプセル粒子に噴霧するが、架橋剤を含まず帯電制御剤を含む噴霧液体、および帯電制御剤を含まず架橋剤を含む噴霧液体をそれぞれ調製し、それらの噴霧液体を順次カプセル粒子に噴霧してもよい。その場合は、架橋剤を含まず帯電制御剤を含む噴霧液体を噴霧した後、帯電制御剤を含まず架橋剤を含む噴霧液体を噴霧することが好ましい。帯電制御剤を含まず架橋剤を含む噴霧液体を噴霧した後に、架橋剤を含まず帯電制御剤を含む噴霧液体を噴霧すると、帯電制御剤がカプセル粒子表面に付着する前に架橋剤によってポリエステル樹脂微粒子同士が架橋し、ポリエステル樹脂微粒子表面に帯電制御剤が埋め込まれにくくなるので、樹脂被覆層から帯電制御剤が脱離しやすくなる。
(キャリアガス)
キャリアガスとしては、圧縮エアなどを用いることができる。キャリアガスの好ましい流量は、回転撹拌装置201のスケールとトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の量とによって異なる噴霧液体の噴霧速度に依存し、噴霧液体の噴霧速度に合わせて適宜調整する。
本工程では、粉体流路202においてカプセル粒子の流動速度が安定してから、噴霧手段203から噴霧液体の噴霧を開始することが好ましい。これによって、カプセル粒子に液体を均一に噴霧することができるので、膜状態や粒度分布が均一なカプセルトナーの収率を向上させることができる。
二流体ノズルの軸線の方向である噴霧液体噴霧方向と、粉体流路202においてカプセル粒子が流動する方向である粉体流動方向との成す角度θは、0°以上45°以下であることが好ましい。θがこのような範囲内であると、噴霧液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳することが防止され、カプセルトナーの収率を一層向上することができる。噴霧手段203からの噴霧液体噴霧方向と、粉体流動方向との成す角度θが45°を超えると、噴霧液体の液滴が粉体流路202内壁で反跳しやすくなり、噴霧液体が滞留しやすくなりカプセルトナー粒子の凝集が発生して収率が悪化する。二流体ノズルは、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられる。
また二流体ノズルによって噴霧した噴霧液体の拡がり角度φは、20°以上90°以下であることが好ましい。拡がり角度φがこの範囲から外れると、カプセル粒子に対する噴霧液体の均一な噴霧が困難となるおそれがある。
(4)膜化工程S3d
ステップS3dの膜化工程では、噴霧液体を噴霧しながら、トナー母粒子表面に樹脂被覆層が形成されるまで所定温度で回転撹拌手段204の撹拌を続け、カプセル粒子を流動させる。
本工程では、回転撹拌装置201による温度調整と循環と撹拌による衝撃力との相乗効果、さらに撹拌による熱的エネルギーによって、トナー母粒子表面のポリエステル樹脂微粒子が軟化して連続した膜となる。それと同時に、ポリエステル樹脂微粒子間において、ポリエステル樹脂の末端水酸基とイソシアネート化合物とが架橋反応することによってウレタン結合が形成され、トナー母粒子表面に付着したポリエステル樹脂微粒子を架橋剤で互いに架橋させながら膜化させて、樹脂被覆層を形成することができる。
トナー母粒子表面に付着したポリエステル樹脂微粒子を架橋剤で互いに架橋させながら膜化させて、樹脂被覆層を形成することによって、帯電制御剤が表面に付着したポリエステル樹脂微粒子同士を強固に融着させることができる。そのため、表面に帯電制御剤を含み、かつ樹脂被覆層を形成するポリエステル樹脂微粒子がトナー母粒子表面から脱離しにくい樹脂被覆層を形成することができるので、長期間に渡って、帯電安定性が良好で、かつ感光体のフィルミングを抑制することができるカプセルトナーを得ることができる。
(5)回収工程S3e
ステップS3eの回収工程では、噴霧手段203からの噴霧液体の噴霧を終了し、回転撹拌手段204の回転を停止させて、粉体回収部207からカプセルトナーを装置外に排出し、カプセルトナーを回収する。
以上のようにしてカプセルトナーが製造されるが、ステップS3a〜S3eを含む被覆工程S3において、回転撹拌手段204の最外周の周速度は、30m/sec以上に設定されるのが好ましく、50m/sec以上に設定されるのがさらに好ましい。回転時の回転撹拌手段204の最外周における周速が30m/sec以上であることによって、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子およびカプセル粒子を孤立流動させることができる。最外周における周速度が30m/sec未満であると、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子およびカプセル粒子を孤立流動させることができないためトナー母粒子に樹脂被覆層を均一に被覆することができなくなる。
被覆工程S3において、粉体流路202内の温度は、トナー母粒子のガラス転移温度以下に設定されるが、30℃以上トナー母粒子のガラス転移温度以下であることが好ましい。粉体流路202内の温度は、トナー母粒子の流動によって、粉体流路202内のどの部分においてもほぼ均一となる。粉体流路202内の温度がトナー母粒子のガラス転移温度を超えると、粉体流路202内でトナー母粒子が軟化し過ぎ、トナー母粒子の凝集が発生するおそれがある。また粉体流路202内の温度が30℃未満であると、分散液の乾燥速度が遅くなり生産性が低下し、さらにポリエステル樹脂微粒子に含まれるポリエステル樹脂の末端水酸基と架橋剤との反応が進行しにくくなるおそれがある。したがってトナー母粒子の凝集を防止し、また充分に架橋させるために、粉体流路202および回転撹拌手段の温度をトナー母粒子のガラス転移温度以下に維持すべく、内径が粉体流路管の外径よりも大きい温度調整用ジャケットを粉体流路管および回転撹拌手段204の外側の少なくとも一部に配設してその空間に冷却媒または加温媒を通じて温度調整する機能を備えた装置を設けることが必要である。
前述のように、回転撹拌手段204は、回転軸部材218の回転に伴って回転する回転盤219を含み、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子およびカプセル粒子は、回転盤219に対して垂直に回転盤219と衝突することが好ましく、回転盤219に対して垂直に回転軸部材218と衝突することがより好ましい。これによって、トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子およびカプセル粒子が回転盤219に対して平行に衝突するよりトナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子およびカプセル粒子を充分に撹拌することができるので、トナー母粒子にポリエステル樹脂微粒子からなる膜をより均一に被覆することができ、樹脂被覆層が均一に被覆したカプセルトナーの収率をより一層向上させることができる。
噴霧された噴霧液体は、粉体流路202内が一定のガス濃度になるようにガス化されることが好ましい。これによって、粉体流路内のガス化した噴霧液体の濃度を一定に保ち、ガス化した噴霧液体の濃度を一定に保っていない場合より、噴霧液体の乾燥速度を速めることができるので、未乾燥の噴霧液体が残存しているトナー粒子が他のトナー粒子に付着することを防止することができ、カプセルトナー粒子の凝集を一層抑制することができる。したがって、樹脂被覆層が均一に被覆したカプセルトナーの収率をより一層向上させることができる。
ガス排出部222において濃度センサによって測定されるガス化された噴霧液体の濃度は、3%以下程度であることが好ましい。ガス化された噴霧液体の濃度が3%以下程度であることによって、噴霧液体の乾燥速度を充分に大きくすることができるので、可塑化液体が残存している未乾燥のカプセルトナー粒子が他のカプセルトナー粒子に付着することを防止することができ、カプセルトナー粒子の凝集を防止することができる。またガス排出部222において、ガス化された噴霧液体の濃度は、濃度センサで0.1%以上3.0%以下であることがさらに好ましい。噴霧速度がこのような範囲であると、生産性を低下させることなく、カプセルトナー粒子の凝集を防止することができる。
ガス化した噴霧液体は、粉体流路内でのガス濃度が一定になるように貫通孔221を通って粉体流路外へ排出されることが好ましい。これによって、粉体流路内のガス化した噴霧液体の濃度を一定に保ち、ガス化した噴霧液体の濃度を一定に保っていない場合より、噴霧液体の乾燥速度を速めることができるので、未乾燥の噴霧液体が残存しているカプセルトナー粒子が他のカプセルトナー粒子に付着することを防止することができ、カプセルトナー粒子の凝集を一層抑制することができる。したがって、樹脂被覆層が均一に被覆したカプセルトナーの収率をより一層向上させることができる。
これまでに述べてきたように、本実施形態のカプセルトナーの製造方法は、回転撹拌装置201を用いる。この回転撹拌装置201は少なくとも循環手段と温度調整手段と噴霧手段203とを備える。噴霧手段203は、トナー母粒子とポリエステル樹脂微粒子との付着を補助するための噴霧液体を液管から噴霧し、空気管からキャリアガスを噴霧する二流体ノズルを含む。二流体ノズルは、液管と空気管とを含み、液管および空気管の軸が一致するよう空気管の内部に液管が挿入されており、液管および空気管の中心がずれないようにそれらの管の少なくとも一部が固定されている。
回転撹拌装置201内では、温度調整を行い、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子を粉体流路内で繰り返し循環させながら、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子の付着を補助する噴霧液体を二流体ノズルから一定速度で噴霧する。この際、循環手段と温度調整手段との相乗効果でポリエステル樹脂微粒子を可塑化しトナー母粒子表面を膜化することができる。このようなカプセルトナーの製造方法において、液管および空気管の中心がずれない構造の二流体ノズルを用いることで、循環風、ならびに循環しているトナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子が二流体ノズルに衝突しても液管および空気管の中心がずれることを防止できる。そのため、空気管先端の断面において、噴霧される単位面積当たりのキャリアガスの量が一定になり安定するので、噴霧される噴霧液体の方向および噴霧量が変化することを抑制でき、安定な噴霧状態を維持することができる。したがって、粉体流路内の噴霧液体濃度を一定に保つことができ、膜状態や粒度分布が均一なカプセルトナーを長時間にわたって安定して製造することができる。
回転撹拌装置201としては、上記の構成に限定されることなく、種々の変更が可能である。たとえば、温度調整用ジャケットは粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に設けられてもよく、粉体流過部209または撹拌部208の外側の一部に設けられてもよい。粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に温度調整用ジャケットが設けられると、トナー母粒子の粉体流路202内壁への付着を一層確実に防止することができる。
回転撹拌装置201のようなカプセルトナーを製造する装置は、市販品の撹拌装置と噴霧手段とを組合せて得ることもできる。粉体流路および回転撹拌手段を備える市販の撹拌装置としては、たとえば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、カプセルトナーを製造する装置とすることができる。
(カプセルトナー)
上記のような本発明の第1の実施形態であるカプセルトナーの製造方法で製造されたカプセルトナーは、ポリエステル樹脂微粒子の被覆量が均一であり、個々のカプセルトナー粒子間における帯電特性などのカプセルトナー特性が均一である。また、カプセルトナー表面の樹脂被覆層による内包成分保護効果が発揮されるので耐久性に優れる。このようなカプセルトナー用いて画像を形成すると、高精細であり、濃度むらのない良好な画質の画像を安定して形成することができる。
前記カプセルトナーには、外添剤が添加されてもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ、酸化チタンなどが挙げられる。またこれらは、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤の使用量は、カプセルトナー100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
(2成分現像剤)
2成分現像剤は、前記カプセルトナーとキャリアとを含む。このような2成分現像剤は、感光体フィルミングが発生しにくく、クリーニング性が良好で、高画質な画像形成を行うことが可能である。
2成分現像剤は、ナウターミキサーなどの混合機でカプセルトナーとキャリアとを混合することによって作製できる。カプセルトナーは、キャリア100重量部に対してたとえば3〜15重量部の割合で混合される。
2成分現像剤において、キャリアのカプセルトナー被覆率は40〜70%であることが好ましい。キャリアのカプセルトナー被覆率が40%未満であると充分な画像濃度を得ることができない場合がある。キャリアのカプセルトナー被覆率が70%を超えると、撹拌ローラによる補給されたカプセルトナーの混ざり込みが不充分となり、帯電不良によって画像上にかぶりが発生する場合がある。
キャリアとしては、たとえばキャリア芯材表面が樹脂層で被覆された樹脂被覆キャリアを用いることができる。
キャリアは、スプレー法、流動床法、およびニーダーコーター法など公知の方法においてキャリア芯材であるフェライトやマグネタイトを樹脂で被覆することによって作製できる。具体的には、トルエンやキシレンなどに樹脂を溶解した有機溶媒溶液中にキャリア芯材を浸漬させる浸漬法、有機溶媒溶液をキャリア芯材に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアにより浮遊させた状態で有機溶媒溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と有機溶媒溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法などが挙げられる。
有機溶媒溶液には、必要に応じて、樹脂とともに抵抗値制御用の導電剤が添加されてもよい。キャリア芯材表面に被覆された樹脂は、固定式加熱装置またはオーブンで180〜280℃に加熱して熱硬化させる。
キャリア芯材としては、公知のフェライト粒子が使用できる。具体的には、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライトなどが挙げられる。
これらのフェライト粒子は、公知の方法で作製できる。たとえば、Fe2O3およびMg(OH)2などのフェライト原料を混合し、この混合粉を加熱炉で加熱して仮焼する。得られた仮焼品を冷却後、振動ミルで平均粒径が約2μm以下の粒子となるように粉砕し、粉砕粉に分散剤と水とを加えてスラリーを作製する。このスラリーを湿式ボールミルで湿式粉砕し、得られる懸濁液をスプレードライヤーで造粒乾燥することによってフェライト粒子を作製することができる。
樹脂層は、キャリア芯材表面に形成される。樹脂層に含まれる樹脂としては、公知の樹脂材料が使用できる。具体的には、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などを挙げることができるが、表面エネルギーが低く、外添剤や離型剤が付着し難い熱硬化性ストレートシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
樹脂層には、キャリアの体積抵抗率値を制御するために、導電剤を含ませてもよい。導電剤としては、たとえば、酸化ケイ素、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの導電剤の中でも、作製安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が90〜170ml/100gの範囲にあるものが、作製安定性に優れる点で好ましい。また、一次粒径(走査型電子顕微鏡を用いてたとえば約200個を測定した個数平均値)として50nm以下のものが分散性に優れるため特に好ましい。導電剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。導電剤の添加量としては、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。
キャリアの体積平均粒径としては、30μm以上50μm以下であることが好ましい。30μmより小さいと、現像時に現像ローラから感光体にキャリアが移動することにより、得られる画像に白抜けが発生し、50μmを超えると、ドット再現性が悪くなり、画像が粗くなる。
キャリアの体積平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定される。レーザ回折散乱法による体積平均粒径の測定は、たとえば、粒度分布測定装置MT3300(日機装株式会社製)を用いて行うことができる。
<物性測定方法>
[結着樹脂およびトナー母粒子のガラス転移温度]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じ、試料1gを昇温速度毎分10℃で加熱してDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線のガラス転移に相当する吸熱ピークの高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)として求めた。
[結着樹脂の軟化温度]
流動特性評価装置(商品名:フローテスターCFT−100C、株式会社島津製作所製)において、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与えて試料1gがダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から押出されるように設定し、昇温速度毎分6℃で加熱し、ダイから試料の半分量が流出したときの温度を求め、軟化温度(Tm)とした。
[離型剤の融点]
示差走査熱量計(商品名:DSC220、セイコー電子工業株式会社製)を用い、試料1gを温度20℃から昇温速度毎分10℃で200℃まで昇温させ、次いで200℃から20℃に急冷させる操作を2回繰返し、DSC曲線を測定した。2回目の操作で測定されるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの頂点の温度を離型剤の融点として求めた。
[トナー母粒子、ポリエステル樹脂微粒子、カプセルトナーの体積平均粒径]
電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:卓上型2周波超音波洗浄器VS−D100、アズワン株式会社製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定を行い、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒径を求めた。
[キャリア芯材の体積平均粒径]
キャリアの体積平均粒径は、レーザ回折散乱法によって求めた。
[キャリア芯材の体積抵抗率]
キャリア芯材の体積抵抗率は、ブリッジ法によって求めた。
(実施例1)
〔トナー母粒子作製工程S1〕
トナー母粒子原料およびその添加量は以下のとおりとする。
・ポリエステル樹脂(商品名:ダイヤクロン、三菱レイヨン株式会社製、ガラス転移温度55℃、軟化温度100℃) 87.5%(100重量部)
・着色剤(C.I.Pigment Blue 15:3)
5.0%(5.7重量部)
・離型剤(カルナウバワックス、融点82℃) 6.0%(6.9重量部)
・帯電制御剤(商品名:ボントロンE84、オリエント化学工業株式会社)
1.5%(1.7重量部)
以上の各構成成分を、ヘンシェルミキサ(商品名:FM20C、三井鉱山株式会社製)にて前混合した後、二軸押出混練機(商品名:PCM65、株式会社池貝製)にて溶融混練した。この溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、オリエント株式会社製)で粗粉砕した後、ジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)にて微粉砕し、さらに風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製)で分級することによって、体積平均粒径が6.5μmであり、ガラス転移温度が56℃であるトナー母粒子を作製した。
〔樹脂微粒子調製工程S2〕
テレフタル酸とビスフェノールAとを重合したものを凍結乾燥して樹脂微粒子とすることによって、体積平均粒径が0.15μmであるポリエステル樹脂微粒子(ガラス転移温度65℃、軟化温度117℃)を得た。
〔被覆工程S3〕
図2,3に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(商品名:NHS−1型、株式会社奈良機械製作所製)に、噴霧手段を取付けた装置を用いた。噴霧液体としては、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物(帯電制御剤)と、ヘキサメチレンジイソシアネート(架橋剤)とを含むエタノール溶液を用いた。この噴霧液体において、帯電制御剤の濃度は20重量%であり、架橋剤の濃度は15重量%である。なお、前記「Ph」はフェニル基を示す。液体噴霧ユニットとしては、送液ポンプ(商品名:SP11−12、株式会社フロム製)を通して図5に示す二流体ノズルに噴霧液体を定量送液するように送液ポンプと二流体ノズルとを接続したものを使用した。二流体ノズルの液管の内径は、1.0mmであり、空気管の内径は、3.0mmであり、液管の内径に対する空気管の内径の比率は、1:3である。また、付着防止部材の角度θ1,θ2は、それぞれ30°である。噴霧液体の噴霧速度および噴霧液体がガス化した液体ガスの排出速度は、市販のガス検知器(商品名:XP−3110、新コスモス電機株式会社製)を使用して観察した。
温度調整用ジャケットは、粉体流過部および撹拌部壁面の全面に設け、粉体流過部および撹拌部の温度が50℃になるように調整した。粉体流路には温度センサを取り付けた。樹脂微粒子付着工程S3bで、前記ハイブリダイゼーションシステムの回転撹拌手段の最外周における周速度を100m/secとした。噴霧工程S3cおよび膜化工程S3dでも前記周速度を100m/secとした。また液体噴霧方向と、粉体流動方向とのなす角度が平行(0°)になるように、二流体ノズルの取付け角度を設定した。
このような装置によって、作製したトナー母粒子100重量部とポリエステル樹脂微粒子10重量部とを5分間撹拌混合した後、トナー母粒子およびポリエステル樹脂微粒子を撹拌、流動させた状態で噴霧液体を二流体ノズルから噴霧した。二流体ノズルからは、噴霧液体を噴霧速度毎分1.0gで噴霧し、エアの流量は毎分5Lとした。30分間噴霧してポリエステル樹脂微粒子をトナー母粒子表面で膜化させた。その後、噴霧液体の噴霧を停止して10分間撹拌し、実施例1のカプセルトナーを得た。このとき貫通孔およびガス排出部を通じて排出された噴霧液体の排出濃度は約2.8Vol%で安定していた。また粉体流路内へ流すエア流量は、回転軸部から粉体流路内に流すエア流量を毎分5Lに調節して、二流体ノズルからのエア流量と合計して毎分10Lを流した。
(実施例2)
被覆工程S3で用いる噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から30重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2のカプセルトナーを得た。
(実施例3)
被覆工程S3で用いる噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から28重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3のカプセルトナーを得た。
(実施例4)
被覆工程S3で用いる噴霧液体において、架橋剤の濃度を15重量%から20重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4のカプセルトナーを得た。
(実施例5)
被覆工程S3で用いる噴霧液体において、架橋剤の濃度を15重量%から22重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例5のカプセルトナーを得た。
(実施例6)
被覆工程S3で用いる帯電制御剤として、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物の代わりに、XがCOPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物を用い、また、噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から15重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例6のカプセルトナーを得た。なお、前記「Ph」はフェニル基を示す。
(実施例7)
被覆工程S3で用いる帯電制御剤として、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物の代わりに、XがCONHPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物を用い、また、噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から15重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例7のカプセルトナーを得た。なお、前記「Ph」はフェニル基を示す。
(実施例8)
被覆工程S3で用いる帯電制御剤として、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物の代わりに、XがSO2Phであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物を用い、また、噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から15重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例8のカプセルトナーを得た。なお、前記「Ph」はフェニル基を示す。
(実施例9)
被覆工程S3で用いる帯電制御剤として、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物の代わりに、XがPhであり、MがKである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物を用い、また、噴霧液体において、帯電制御剤の濃度を20重量%から15重量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例9のカプセルトナーを得た。なお、前記「Ph」はフェニル基を示す。
(実施例10)
被覆工程S3で用いる架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりに1,5−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチル−ペンタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例10のカプセルトナーを得た。
(実施例11)
被覆工程S3で用いる架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりに1,4−ジイソシアナトブタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例11のカプセルトナーを得た。
(実施例12)
被覆工程S3で用いる架橋剤として、ヘキサメチレンジイソシアネートの代わりに1,12−ジイソシアナトドデカンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例12のカプセルトナーを得た。
(実施例13)
被覆工程S3で用いる噴霧液体として、エタノールの代わりにt−ブタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例13のカプセルトナーを得た。
(実施例14)
被覆工程S3で用いる噴霧液体として、エタノールの代わりに3−ペンタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例14のカプセルトナーを得た。
(実施例15)
被覆工程S3で用いる噴霧液体として、エタノールの代わりにn−ペンタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例15のカプセルトナーを得た。
(実施例16)
被覆工程S3で用いる噴霧液体として、エタノールの代わりにn−オクタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例16のカプセルトナーを得た。
(実施例17)
被覆工程S3で用いる噴霧液体として、エタノールの代わりにn−ノナンを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例17のカプセルトナーを得た。
(実施例18)
被覆工程S3で、粉体流過部および撹拌部の温度が40℃になるように調整したこと以外は実施例1と同様にして実施例18のカプセルトナーを得た。
(実施例19)
被覆工程S3で、粉体流過部および撹拌部の温度が35℃になるように調整したこと以外は実施例1と同様にして実施例19のカプセルトナーを得た。
(実施例20)
被覆工程S3で、粉体流過部および撹拌部の温度が60℃になるように調整したこと以外は実施例1と同様にして実施例20のカプセルトナーを得た。
(実施例21)
被覆工程S3で、粉体流過部および撹拌部の温度が65℃になるように調整したこと以外は実施例1と同様にして実施例21のカプセルトナーを得た。
(比較例1)
被覆工程S3で、実施例1で用いた噴霧液体の代わりに、帯電制御剤および架橋剤を含まない噴霧液体を噴霧したこと以外は実施例1と同様にして比較例1のカプセルトナーを得た。噴霧液体は、エタノール溶液を用いた。
(比較例2)
被覆工程S3で、実施例1で用いた噴霧液体の代わりに、帯電制御剤を含まず、架橋剤を含む噴霧液体を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2のカプセルトナーを得た。架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートを用いた。
(比較例3)
被覆工程S3で、実施例1で用いた噴霧液体の代わりに、架橋剤を含まず、帯電制御剤を含む噴霧液体を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例3のカプセルトナーを得た。帯電制御剤は、XがPhであり、MがNaである前記化学式(1)で示す有機ホウ素錯体化合物を用いた。
上記実施例および比較例において用いられた、帯電制御剤の種類および噴霧液体全量に対する含有量、架橋剤の種類および噴霧液体全量に対する含有量、噴霧液体の種類、ならびに粉体流過部および撹拌部の温度を表1に示す。
(2成分現像剤の作製)
キャリアを以下に示す方法によって作製した。
フェライト原料として、MgO 3重量%、MnO 20重量%およびFe2O3 77重量%をボールミルにて混合した後、ロータリーキルンにて900℃で仮焼した。得られた仮焼粉を、粉砕媒体としてスチールボールを用いて湿式粉砕機により平均粒径2μm以下にまで微粉砕した。得られたフェライト微粉末をスプレードライ方式により造粒し、造粒物を1300℃で焼成した。焼成後、クラッシャを用いて解砕し、体積平均粒径が39μmであり、体積抵抗率が1×107〜1×108Ω・cmであるフェライト成分からなるキャリア芯材を得た。
次にキャリア芯材を被覆するための被覆用塗液を調製した。トルエン100重量部に対して熱硬化性ストレートシリコーン樹脂(数平均分子量:12000、商品名:KR271、信越化学工業株式会社製)20重量部と、カーボンブラック(一次粒径25nm、吸油量150ml/100g)1重量部とを溶解および分散し、被覆用塗液を調製した。
キャリアコア芯材100重量部と、調製した被覆用塗液40重量部とを、スプレー被覆装置(商品名:SPIRA COTA(登録商標)、岡田精工株式会社製)に投入し、60分間コーティング処理を行ってトルエンを完全に蒸発除去し、前記フェライト成分からなるキャリア芯材を樹脂で被覆した。その後、240℃に加熱して熱硬化性ストレートシリコーン樹脂を硬化させることによって、体積平均粒径が40μmであるキャリアを作製した。
実施例および比較例で得られたカプセルトナー7重量部と前記キャリア93重量部とをナウターミキサー(商品名:VL−0、ホソカワミクロン株式会社製)に投入し、40分間撹拌混合することによって、2成分現像剤を作製した。
<評価>
(保存性)
50mLポリ瓶(アイボーイ、株式会社アズワン社製)に、実施例および比較例で得られたカプセルトナー20gを充填し、温度50℃、湿度50%の環境下にて48時間放置した。その後、温度25℃、湿度50%の環境下においてトナーの流動性を目視で観察した。トナーの流動性が初期と同等のものを○とし、初期より若干劣るものの、トナー塊となっていないものを△とし、トナー塊が存在するものを×と評価した。
(耐フィルミング性、クリーニング性および帯電安定性)
上記2成分現像剤を用いて、耐フィルミング性、クリーニング性および帯電安定性を評価した。そのためにまず上記2成分現像剤を用いて連続プリントテストを以下のようにして行った。
連続プリントテストには、画像形成装置(商品名がMX−4500Nのデジタルフルカラー複合機(シャープ株式会社製)の改造機)を用いた。画像形成装置の4つの画像形成ユニットのうち1つの画像形成ユニットのみを用い、これに上記2成分現像剤を充填した。画像形成装置の現像条件として、感光体の周速を400mm/秒とし、現像ローラの周速560mm/秒とし、感光体と現像ローラとのギャップを0.45mmとし、現像ローラと規制ブレードとのギャップを0.4mmに設定し、ベタ画像(100%濃度)における紙上のトナー付着量が0.5mg/cm2、非画像部におけるトナー付着量が最も少なくなるように、感光体の表面電位および現像バイアスをそれぞれ調整した。試験紙として、A4サイズの電子写真用紙(マルチレシーバー、シャープドキュメントシステム社製)を使用した。このような条件でベタ画像を10000(10K)枚印字した。10K枚印字後の感光体および10K枚目の印字画像で耐フィルミング性を評価し、10K枚印字後の感光体および転写ベルト、ならびに10K枚目の印字画像でクリーニング性を評価し、10K枚印字前後のカプセルトナーの帯電量で帯電安定性を評価した。
耐フィルミング性については、デジタルマイクロスコープ(商品名:VHX−600、キーエンス株式会社社製)を用い、感光体表面を倍率200倍にて目視で観察した。感光体上にフィルミングが発生しておらず、かつ印字後の試験紙に画質不良が発生していないものを○とし、感光体上に若干フィルミングが発生しているものの、印字サンプルに画質不良が発生していないものを△とし、感光体上にフィルミングが発生しており、かつ画質不良が発生しているものを×と評価した。
クリーニング性については、感光体表面および転写ベルト表面を目視で観察した。感光体上および転写ベルト上の両方においてクリーニング不良が発生しておらず、かつ印字後の試験紙においてもクリーニング不良が発生していないものを○とし、感光体上ではクリーニング不良が発生しているものの、転写ベルト上においてはクリーニング不良が発生しておらず、印字後の試験紙においてクリーニング不良が発生しているものを△とし、感光体上および転写ベルト上の両方においてクリーニング不良が発生しており、かつ印字後の試験紙においてもクリーニング不良が発生しているものを×と評価した。なお、印字後の試験紙における非画像部の黒すじの画像濃度が0.3以上であれば、印字後の試験紙にクリーニング不良が発生していると判断した。
帯電安定性については、10K枚印字前のトナー1gあたりの帯電量と、10K枚印字後のトナー1gあたりの帯電量とを測定し、帯電量の変動割合が10%未満のものを○とし、10%以上20%未満のものを△とし、20%以上のものを×と評価した。トナーの帯電量は、吸引式小型帯電量測定装置(商品名:Model 210HS−3、トレック・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。
評価結果を表2に示す。
<評価結果>
表2に示すように、実施例1〜21のカプセルトナーは、保存性、耐フィルミング性、クリーニング性および帯電安定性が良好であった。しかしながら、実施例5は、噴霧液体全量に対する架橋剤の含有量が比較的多いにもかかわらず、噴霧液体の噴霧時間などの条件を実施例1と同じに設定したため、未反応のイソシアネート基が多くなり、その未反応のイソシアネート基が空気中の水分と反応し、保存性が少し低下した。実施例10は、架橋剤として1,5−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチル−ペンタンを用いたので、保存性が少し低下した。実施例14は、噴霧液体として3−ペンタノールを用いたので、ポリエステル樹脂微粒子が比較的溶解しやすく、樹脂被覆層表面の凹凸が減少し、クリーニング性が少し低下した。実施例17は、噴霧液体としてn−ノナンを用いたので、クリーニング性が比較的低下した。
比較例1のカプセルトナーは、噴霧液体に帯電制御剤が含まれないので、帯電安定性が低下し、また、噴霧液体に架橋剤が含まれないので、ポリエステル樹脂微粒子同士が充分に融着せず、耐フィルミング性が低下した。比較例2のカプセルトナーは、噴霧液体に帯電制御剤が含まれないので、帯電安定性が低下した。比較例3のカプセルトナーは、噴霧液体に帯電制御剤は含まれるが架橋剤は含まれないので、ポリエステル樹脂微粒子同士が充分に融着せず、耐フィルミング性が低下した。