JP5224334B2 - トリプレニルフェノール化合物及び血栓溶解促進剤 - Google Patents
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Description
また、上記トリプレニルフェノール化合物とは立体構造が異なる他のトリプレニルフェノール化合物として、特許文献4には、育毛活性を有するトリプレニルフェノール化合物が開示されている。また、非特許文献1には、抗菌活性及び抗真菌活性を有するトリプレニルフェノール化合物が開示されている。
このように、トリプレニルフェノール骨格を有する化合物は、その立体構造や置換基によって多様な活性を発揮するため、その利用価値が高い。
その一方で非特許文献3及び特許文献5には、クロマンラクタム中のラクタム窒素原子に結合する側鎖を有しないトリプレニルフェノール化合物類縁体を開示している。この類縁体は、血栓溶解促進作用を示さず、抗菌活性を有するものであり、クロマンラクタム窒素原子に側鎖を有する化合物を合成する際に中間体として利用可能であると示されている。
本発明のトリプレニルフェノール化合物は、好ましくは、下記式(I−A)又は(I−B)で表されるものである。
また一般式(I)中、L1で表される連結基におけるアルキレン基の炭素数は、トリプレニルフェノール化合物の活性の観点から、2以上であることが好ましく、4であることがより好ましい。またL1中のカルボキシル基は、少なくとも1つ存在していればよく、2つ以上が存在していてもよく、またアルキレン基のどの部位に存在していてもよいが、トリプレニルフェノール化合物の活性の観点から、カルボキシル基を1つ有するものであることが好ましく、トリプレニルフェノール骨格のクロマンラクタム窒素原子から遠い部位にあることが更に好ましい。
一般式(I)中、L2で表される連結基は、トリプレニルフェノール化合物の活性の観点から、−NH−C(=S)−NH−である。
化学合成で本発明のトリプレニルフェノール化合物を製造する場合には、製造効率の観点から、トリプレニルフェノール骨格におけるクロマンラクタム窒素原子に側鎖を有しない中間体を利用することが好ましい。このような中間体としては、例えばWO2007/111203号に開示されているものを挙げることができる。
この製造方法を簡単に説明すれば、後述する特定の添加アミン化合物を含む培養液中で糸状菌を培養する培養工程と、培養工程後の培養物から、上記トリプレニルフェノール化合物を分離する分離工程とを含むものである。
この添加アミン化合物は、糸状菌の培養工程中に存在していればよく、培養初期から存在させてもいが、生産効率の観点から、培養中期に添加されることが好ましい。
第1の培養工程で使用する培地として、アミン化合物の含有量が0.5質量%に制限された制限培地を用いた場合、第2の培養工程に移る培養中期以降に、従来よりも大量の中間体化合物を得ることができる。またこのように中間体化合物を大量に生成してから、アミノ安息香酸又はそれら誘導体を含む生産用培地による第2の培養工程を実行することにより、効率よく且つ選択性よく目的とするトリプレニルフェノール化合物を得ることができる。なお、本明細書において「アミン化合物」とは、特に断らないかぎり、添加アミン化合物も包含する。
この場合、アミン化合物は、制限培地の全容量に対して0.5質量%以下、菌の生育、生産量及び生産の選択性の観点から好ましくは、0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.3質量%とすることができる。0.5質量%を超える場合には、目的とする化合物以外のものが同時に生成されて選択性に劣り、生産効率も下がる場合があり、好ましくない。一方、0.01質量%未満では、糸状菌の活性に劣る場合があり好ましくない。また、精製化合物をアミン化合物として添加する場合は、生産に用いる糸状菌の成育とトリプレニルフェノール化合物前駆体の生産が良好に起こる範囲の量と種類が用いられる。
第2の培養工程での生産用培地に含有可能な添加アミン化合物は、目的とするトリプレニルフェノール化合物を得るために必要な量で培地中に存在していればよく、培地の全容量の5質量%以下、生産量の観点から好ましくは0.01質量%〜1質量%、更に好ましくは0.1質量%〜0.5質量%で用いられる。
これらの金属イオンの添加量は、生成物の生産量や菌の生育の観点からそれぞれ培地の全容量に対して、マグネシウムイオンの場合には硫酸マグネシウム7水和物として0.001質量%〜0.5質量%(より好ましくは0.01質量%〜0.1質量%)、コバルトイオンの場合には塩化コバルト6水和物として0.00001質量%〜0.01質量%(より好ましくは0.0001質量%〜0.005質量%)、鉄イオンの場合には硫酸鉄(II)7水和物として0.0001質量%〜0.1質量%(より好ましくは0.0005質量%〜0.05質量%)、カルシウムイオンの場合には塩化カルシウム2水和物として0.00001質量%〜0.1質量%(より好ましくは0.0001質量%〜0.05質量%)、カリウムイオンの場合にはリン酸二カリウムあるいは硝酸カリウムとして0.002質量%〜2質量%(より好ましくは0.05質量%〜0.5質量%)、ナトウムイオンの場合にはリン酸二ナトウムあるいは硝酸ナトウムとして0.002質量%〜2質量%(より好ましくは0.05質量%〜0.5質量%)、とすることができる。
上記無機塩類及び金属イオンは、これらを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第2の培養工程は、生成されたトリプレニルフェノール化合物の量が最大のときに培養を停止することによって終了する。第2の培養工程の期間は、微生物の状態及び培養系の大きさによって異なるが、一般に1日〜5日、生産量の観点から好ましくは1〜3日間である。
また第1及び第2の培養工程における培養温度は、種々の温度における真菌の生育条件に応じて適宜設定することができるが、一般に4〜50℃、好ましくは15〜37℃、より好ましくは20〜30℃、最も好ましくは室温(25℃)である。この範囲外では、効率よくトリプレニルフェノール化合物を生成することができない。またそれぞれ用いられる培地のpHは、一般に3〜9、好ましくは5〜6とすることができる。
これらの回収・精製方法においては、トリプレニルフェノール化合物が脂溶性であることを利用して、溶媒等を選択することが好ましい。
トリプレニルフェノール化合物を培養物から回収・精製する際には、予め培養物から菌体を除去することが好ましい。その際には、培養物にメタノールなどの溶媒を加えて菌体内のトリプレニルフェノール化合物を抽出し、その後の菌体の除去には、濾過等を用いればよい。
本発明の血栓溶解促進剤は、上記トリプレニルフェノール化合物を有効成分として含むことを特徴とするものである。ここで上記トリプレニルフェノール化合物は、上述したものを単独で又は組み合わせて用いてもよい。
上記トリプレニルフェノール化合物は、本血栓溶解剤中では、遊離形態、薬学的に許容可能な塩又はエステルなど、医薬として通常適用可能な形態で本血栓溶解剤に含有されることができる。
これらの形態を維持するために、これらの用途に使用可能な周知の溶媒、賦形剤等の添加剤を含むことができる。
このような標識化合物として使用する場合には、当業者であれば使用濃度や使用形態を適宜選択することができるが、一般に、本発明のトリプレニルフェノール化合物を0.01μM〜1mMの使用濃度とすることができる。
化合物SMTP−48の合成
添加するアミンは以下の方法により合成した。Nδ−FITC−L−ornithine及びNα−FITC−L−ornithineは、FITCの10当量にあたるL−ornithineを0.4M ホウ酸カリウム緩衝液(pH11)4mlに溶解し、そこに同緩衝液に溶解した50mg/ml FITCを12ml滴下することで作製した。30分攪拌し、十分反応させた。反応産物は逆相HPLCを用いて次の条件で精製した。カラム;Inertsil PREP−ODS(直径30×250mm)(ジーエルサイエンス株式会社,東京,日本)、温度;40℃、流速;25ml/min、検出波長;260nm、展開溶媒;0.1%(v/v)ギ酸とメタノールで行い、メタノール濃度を40分で0−60%までlinear gradient、保持時間27.7分と31.7分のピークを分取した。保持時間27.7分の画分を濃縮乾固後、490mgのNα−FITC−L−ornithineを得た。また、保持時間31.7分の画分をピークを濃縮乾固後120mgのNδ−FITC−L−ornithineを得た。
本培養用培地(制限培地)は、スクロース(5%),粉末酵母エキス(0.1%),NaNO3(0.3%)、K2HPO4(0.1%)、MgSO4・7H2O(0.05%)、KC1(0.05%)、CoCl2・6H2O(0.00025%)、FeSO4・7H2O(0.0015%)、CaCl2・2H2O(0.00065%)を水に溶かし、HClを用いてpH5.8に調製し、消泡剤CB442(0.01%)(0.1g/mlアセトン溶液を1ml/L添加)(日本油脂化学,日本)を加え培養器に100mlずつ分注後、オートクレーブ(121℃,15min)を行ったものを使用した。
MALDI−TOF−MSは、Voyager-DE STR(Applied Biosystem社)を用い、positive ion modeでα−シアノ−4−ヒドロキシケイヒ酸をマトリックスとして測定した。
UVは、メタノール中で320 spectrophotometer(Hitachi)を用いて測定した。
FT−IRは、JIR−WINSPEC50(JEOL)を用いた。アセトンに溶解した試料を岩塩に塗布して測定した。NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz,13C 150MHzで測定した。サンプルは約10mg/mlのacetone−d6溶液とした。
Molecular formula C49H51N3O11S
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 890.332
Calculated: 890.3323 for C49H52N3O11S
UV λmax nm (ε) 217 (101,560), 252 (sh) (36,640), 275 (sh) (28,103), 309 (sh) (6,759)
IR νmax(NaCl) cm−1 3304, 2976, 2926, 2868, 1705, 1662, 1608, 1543, 1460, 1362, 1252, 1211, 1176, 1113, 1076, 999, 908, 850, 775, 680, 534
化合物SMTP−49の合成
添加するアミンは実施例1と同様に合成、精製した。
実施例1と同様に前培養を行った。
本培養4日目に添加した有機アミン化合物を、Nα−FITC−L−ornithineとした以外は、実施例1と同様に本培養を行った。
得られた培養抽出液300mlから、ブフナーロートを用いて菌体を除去し、培養上清を得た。水流ポンプによる減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行った得られた培養抽出液300mlから、ブフナーロートを用いて菌体を除去し、培養上清を得た。水流ポンプによる減圧下、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮を行った。これにMeOHを加え、溶解した画分をLichrolut RP−18(100mg)にて前処理を行った。逆相HPLCはカラム;Inertsil PREP-ODS(直径30×250mm)、温度40℃、流速;25ml/min、検出波長:260nm、展開溶媒;0.1%(vol/vol)ギ酸を含む65%メタノールで行い、保持時間9.4分のピークを分取した。ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、凍結乾燥した。乾燥物にn−ヘキサンを加えて撹拌後遠心し、不溶物を回収した。この操作を3回行い、不溶物をメタノールで溶解後ろ過し、これを濃縮、乾固して化合物SMTP−49の精製物19.6mgを得た。
MALDI−TOF−MS、UV、及びFT−IRは、実施例1と同様に測定した。NMRは、Alpha600(JEOL)を用い、1H 600MHz,13C 150MHzで測定した。サンプルは約10mg/mlのacetone−d6溶液とした。
化合物SMTP−49の物理化学的性質を以下に示す。
Molecular formula C49H51N3O11S
MALDI-TOF-MS (m/z)
Found (M + H)+: 890.3320
Calculated: 890.3323 for C49H52N3O11S
UV λmax nm (ε) 216 (111,165), 253 (sh) (36,462), 275 (sh) (28,103), 309 (sh) (6,759)
IR νmax(NaCl) cm−1 3288, 2970, 2926, 2862, 1705, 1612, 1458, 1367, 1333, 1244, 1180, 1113, 1076, 997, 904, 852, 773, 683, 540
実施例1及び実施例2で得られたトリプレニルフェノール化合物SMTP−48及びSMTP−49について、プラスミノーゲンのフィブリンに対する結合活性を以下のように行って性能を評価した。
なお、比較例としては、下記のSMTP−19(WO2007/11203号参照)を用いた。
結果を表3に示す。
実施例1及び実施例2で得られたトリプレニルフェノール化合物SMTP−48及びSMTP−49について、ウロキナーゼ触媒によるプラスミノーゲン活性化を促進する活性として、血栓溶解活性を、プラスミンへのプラスミノーゲンの変換率に基づいて以下のように評価した。
なお、比較例としてはSMTP−19(WO2007/11203号参照)を用いた。
変換率=(A鎖+B鎖)/(A鎖+B鎖+プラスミノーゲン)。
Claims (4)
- 下記式(I)(式中、Xは−CHY−C(CH3)2Zであり、Y及びZは、それぞれ−H又は−OHであるか、一緒になって単結合を形成し、L1はカルボキシル基を有する炭素数1〜4のアルキレン基である連結基を表し、L2は−NH−C(=S)−NH−で示される連結基を表し、Rは下記の式(II)で示される多複素環基を表す。)で表されるトリプレニルフェノール化合物。
- 前記式中L1の炭素数が4である請求項1記載のトリプレニルフェノール化合物。
- 下記式(I−A)又は(I−B)で表されるトリプレニルフェノール化合物である請求項1記載のトリプレニルフェノール化合物。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のトリプレニルフェノール化合物を有効成分として含む血栓溶解促進剤。
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