JP2006176438A - F−19848a及びその製造方法 - Google Patents

F−19848a及びその製造方法 Download PDF

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帆佐巳 原田
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睦男 中島
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Abstract

【課題】ヒアルロン酸−CD44結合阻害活性を有する新規な化合物を提供すること。
【解決手段】
下記一般式[1]
【化1】
Figure 2006176438

で表される化合物又はその塩。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒアルロン酸受容体であるCD44とヒアルロン酸の結合を阻害する新規化合物F−19848A、該化合物生産菌及び該化合物の製造方法、該化合物及び/又はその塩を用いた、変形性関節症の治療及び/または予防薬の提供等に関する。
変形性関節症は関節軟骨の老化と筋力の低下を基盤に機械的な刺激が加わり、関節にかかる負担に耐えられない軟骨の変性・破壊を生じる疾患である(例えば、非特許文献1参照。)。疼痛が主訴であることが多いため、主な治療には鎮痛薬として非ステロイド性抗炎症薬を投与する対症療法が広く行われている(例えば、非特許文献2参照。)。変形性関節症の根本的な原因である軟骨基質分解の抑制を目指したマトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、非特許文献3参照。)は臨床の場で有効性を発揮するには至っていない。
ヒアルロン酸製剤アルツ(和研製薬株式会社商標:ヒアルロン酸ナトリウム関節内注射液)は現在、変形性関節症に対して有効性を示す薬剤であり、滑液成分であるヒアルロン酸を関節内に直接投与し、補充することにより疼痛を抑制し、関節軟骨の保護作用をもたらす(例えば、非特許文献4及び5参照。)。しかしながらヒアルロン酸製剤には注射剤としての一般的な問題点である、投与の煩雑さ、患者の負担の大きさに加え、投与可能な部位が肩、膝などの比較的大きな関節に限定されるといった問題がある。
一方、生体内におけるヒアルロン酸の分解を阻害する薬剤は、滑液成分であるヒアルロン酸の生体内での減少を防ぐことによってヒアルロン酸を投与した場合と同様の効果を示し、更に、肩・膝関節のみならず、従来ヒアルロン酸製剤の投与が困難であった全身の関節炎への効果を持つことが期待される。

生体内におけるヒアルロン酸の分解は細胞表面に存在するリセプターであるCD44にヒアルロン酸が結合することによって開始されると考えられている(例えば、非特許文献6参照。)。すなわち、CD44とヒアルロン酸の結合を阻害する物質はヒアルロン酸の分解を阻害し、生体内でのヒアルロン酸量を保持、あるいは増加させることにより関節機能改善作用を持つと考えられる。

「ランセット(Lancet)」、1999年、第353巻、p.2177−2178 「アメリカン・ファミリー・フィジシャン(American Family. Physician)」、2002年、第65巻、p.841−848 「オステオアスリティス・アンド・カーティリッジ(Osteoarthritis and Cartilage)」、2002年、第10巻、p.785−791 「関節外科」、1996年、第15巻、p.1173−1179 「日本整形外科学会雑誌」、1995年、第69巻、p.735−743、 「ジャーナル・オブ・セル・サイエンス(Journal of Cell Science)」、1993年、第106巻、p.365−375
本発明の1つの目的は、ヒアルロン酸とそのリセプターであるCD44の結合を阻害する物質を取得することである。
本発明の2つ目の目的は、ヒアルロン酸とそのリセプターであるCD44の結合を阻害する物質の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、生体内でヒアルロン酸の分解を阻害し、疼痛抑制・軟骨保護作用を示す新しい変形性関節症治療薬を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行ったところ、土壌より分離した、ダクリマイセス エスピー(Dacrymyces sp.)SANK 20204株の培養液中に、ヒアルロン酸とCD44の結合を阻害する、下記式(I)で示される新規化合物F−19848Aが産生されることを見出して本発明を完成するに至った。
Figure 2006176438
本発明は、
(1)
下記一般式(I)
Figure 2006176438
で表される新規化合物F−19848A又はその塩、
(2)下記の1)乃至8)の物理化学的性質を示す化合物又はその塩:
1)性質:酸性、無色粉末;
2)溶解性:DMSO、メタノールに可溶;
3)分子式:C468220(ESI−TOFMSスペクトルにより決定);
4)分子量:954(ESI−MSスペクトルにより決定);
5)紫外線吸収スペクトル:λmax nm(ε)
メタノール溶液中で測定した紫外線吸収スペクトルは、末端吸収のみである;
6)赤外線吸収スペクトル(KBr):νmax cm−1
KBrディスク法で測定した赤外線吸収スペクトルは、次の通りである:
3409、2926、2854、1737、1369、1244、1081、1051;
7) 1H−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(500MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.00ppmとした。)
0.91 (3H, t, J=7.0 Hz), 1.20-1.38 (32H, m), 1.38-1.46 (4H, m), 1.46-1.55 (4H, m), 1.63 (1H, m), 1.74 (1H, m), 2.06 (3H, s), 2.11 (3H, s), 3.14-3.28 (4H, m), 3.30 (1H, m), 3.34 (1H, m), 3.42-3.55 (5H, m), 3.61 (1H, m), 3.80 (1H, m), 3.83 (1H, m), 3.97 (1H, dd, J=11.7, 5.5 Hz), 4.08 (1H, dd, J=7.7, 4.4 Hz), 4.22 (1H, dd, J=12.0, 5.5 Hz), 4.38 (1H, d, J=7.0 Hz), 4.46 (1H, dd, J=12.0, 1.8 Hz), 4.62 (1H, d, J=7.3 Hz), 4.67 (1H, d, J=7.7 Hz), 4.71 (1H, m)
8)13C−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(125MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.0ppmとした。)
14.6 (q), 20.8 (q), 21.1 (q), 22.4 (t), 23.8 (t), 26.2 (t), 26.8 (t), 30.5-30.9 (12シグナル, t), 33.2 (t), 35.0 (t), 35.5 (t), 35.8 (t), 38.4 (t), 63.5 (t), 64.5 (t), 66.6 (t), 70.6 (d), 71.2 (d), 71.6 (d), 72.5 (d), 72.9 (d), 74.4 (d), 75.7 (d), 75.8 (d), 77.2 (d), 77.6 (d), 80.2 (d), 83.5 (d), 84.6 (d), 102.5 (d), 104.3 (d), 105.6 (d), 172.2 (s), 173.0 (s), 178.3 (s)、
(3)
ダクリマイセス(Dacrymyces)属に属するF−19848A又は(2)に記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物よりF−19848A又は(2)に記載の化合物を回収することを特徴とする、F−19848A又は(2)に記載の化合物の製造方法、
(4) ダクリマイセス(Dacrymyces)属に属するF−19848A又は(2)に記載の化合物の生産菌がダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204(FERM BP−10124)であることを特徴とする、(3)に記載の製造方法、
(5) ダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204(FERM BP−10124)、
(6) F−19848A、その塩、(2)に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される、少なくともいずれか一つを含むことからなる医薬組成物、
(7) F−19848A、その塩、(2)に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される、少なくともいずれか一つを有効成分として含有する変形性関節症治療薬及び/または予防剤、
(8)
F−19848A、その塩、(2)に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含有してなるヒアルロン酸とCD44の結合阻害剤、
等に関する。
本明細書において、「F−19848A」とは、下記式(I)、
Figure 2006176438
で表される化合物をいう。
F−19848Aは下記の物理化学的性質を示す。
1)性質:酸性、無色粉末;
2)溶解性:DMSO、メタノールに可溶;
3)分子式:C468220(ESI−TOFMSスペクトルにより決定);
4)分子量:954(ESI−MSスペクトルにより決定);
5)紫外線吸収スペクトル:λmax nm(ε)
メタノール溶液中で測定した紫外線吸収スペクトルは、末端吸収のみである;
6)赤外線吸収スペクトル(KBr):νmax cm−1
KBrディスク法で測定した赤外線吸収スペクトルは、次の通りである:
3409、2926、2854、1737、1369、1244、1081、1051;
7) 1H−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(500MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.00ppmとした。)
0.91 (3H, t, J=7.0 Hz), 1.20-1.38 (32H, m), 1.38-1.46 (4H, m), 1.46-1.55 (4H, m), 1.63 (1H, m), 1.74 (1H, m), 2.06 (3H, s), 2.11 (3H, s), 3.14-3.28 (4H, m), 3.30 (1H, m), 3.34 (1H, m), 3.42-3.55 (5H, m), 3.61 (1H, m), 3.80 (1H, m), 3.83 (1H, m), 3.97 (1H, dd, J=11.7, 5.5 Hz), 4.08 (1H, dd, J=7.7, 4.4 Hz), 4.22 (1H, dd, J=12.0, 5.5 Hz), 4.38 (1H, d, J=7.0 Hz), 4.46 (1H, dd, J=12.0, 1.8 Hz), 4.62 (1H, d, J=7.3 Hz), 4.67 (1H, d, J=7.7 Hz), 4.71 (1H, m)
8)13C−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(125MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.0ppmとした。)
14.6 (q), 20.8 (q), 21.1 (q), 22.4 (t), 23.8 (t), 26.2 (t), 26.8 (t), 30.5-30.9 (12シグナル, t), 33.2 (t), 35.0 (t), 35.5 (t), 35.8 (t), 38.4 (t), 63.5 (t), 64.5 (t), 66.6 (t), 70.6 (d), 71.2 (d), 71.6 (d), 72.5 (d), 72.9 (d), 74.4 (d), 75.7 (d), 75.8 (d), 77.2 (d), 77.6 (d), 80.2 (d), 83.5 (d), 84.6 (d), 102.5 (d), 104.3 (d), 105.6 (d), 172.2 (s), 173.0 (s), 178.3 (s)。
本発明の新規化合物F−19848Aは、種々の異性体を有する。本発明においては、これらの異性体がすべて単一の式で表されているが、ラセミ化合物等それらの異性体ならびにそれらの異性体の混合物も全て本発明のF−19848Aに含まれる。立体特異的合成法、あるいは光学活性化合物を原料化合物とする合成法により、本発明のF−19848Aの各異性体を直接製造することができる。また、先ず各異性体の混合物を製造し、次いで該混合物より所望の各異性体を分離することができる。
F−19848Aはカルボン酸基等を有し、当業者に周知の方法を用いて塩にすることができる。本発明にはF−19848A及びその塩も包含される。F−19848Aの塩としては、医学的に使用され、薬理学的に許容されるものであれば特に限定はない。また、F−19848Aの塩が医薬以外の用途に用いられる場合、例えば中間体として使用される場合には、該用途に用いることのできるものであれば特に限定されない。F−19848Aの塩としては、例えば、アンモニウム塩のような無機塩;ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニア塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。F−19848Aの好適な塩としては、薬理学的に許容される塩として好ましく使用されるもの、すなわち、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩等を挙げることができる。
また、F−19848A及び/又はその塩は溶剤和物になり得る。例えば、大気中での放置、再結晶などを経て、吸着水の付加、水和物化等が時に生じ得る。それらの溶剤和物も本発明に包含される。
さらに、本発明は、生体内において代謝されてF−19848A及び/又はその塩に変換される化合物、いわゆるプロドラッグも全て包含する。
本発明によって、ヒアルロン酸受容体であるCD44とヒアルロン酸の結合阻害活性を有する新規化合物F−19848A及びその塩、その製造方法及びF−19848Aを製造する微生物ダクリマイセス エスピー(Dacrymyces sp.)が提供された。さらに、本発明によって、新規化合物F−19848A及び/又はその塩を有効成分とする、変形性関節症の治療及び/又は予防薬が提供された。
1.F−19848A生産菌
F−19848Aは、日本国滋賀県で採集した担子菌子実体の担子胞子より分離されたダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204株(以下、単に「SANK 20204株」ともいう。)の培養物中に見出された。
F−19848A生産菌としては、F−19848Aを生産する微生物であれば特に限定されるものではないが、好適にはF−19848Aを生産する菌であり、より好適にはF−19848Aを生産するダクリマイセス(Dacrymyces)属の菌であり、さらに好適には前記の特性を有し且つF−19848Aを生産するダクリマイセス(Dacrymyces)属の菌であり、最適にはダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204株である。
SANK 20204株について以下に記載する。
本菌の菌学的性状を観察するため、次の各培地上で培養を行った。使用した各培地の組成を以下に記載する。
(表1)培地組成
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<PDA培地(ポテトデキストロース寒天(Potato Dextrose Agar)培地)>
ポテトデキストロース寒天培地「ニッスイ」(日水製薬(株)製) 39g
寒天 5g
蒸留水 1000ml
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<MEA培地(麦芽エキス寒天培地)>
麦芽エキス 12.5g
寒天 20g
蒸留水 1000ml
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

SANK 20204株の培養下での菌学的性状は次の通りである。
PDA培地上での成長は、23℃、2週間の培養で3〜5mmである。菌そうは綿毛状、白色である。裏面は変化なし。浸出液および匂いはない。気菌糸は幅1〜1.5μm、薄壁で平滑である。隔壁にかすがい連結はない。分生子は形成されない。
MEA培地上での成長は、23℃、2週間の培養で6〜7mmである。菌そうは薄く圧伏、白色である。裏面は変化なし。浸出液および匂いはない。
SANK 20204株を同定するため、分離に供試した子実体乾燥標本の菌学的性状を観察した。その乾燥標本の菌学的性状は次の通りである。
子実体は群生、平らに広がり、径は0.6〜6mm、軟ゼラチン質、乾燥時は淡黄色である。担子器は(20〜33)×(4〜6μm)(小柄を除いた円筒部分)、Y字型、基部にかすがい連結はない。小柄は18以下×3μm。担子胞子は(9〜15)×(5〜7μm)、(0〜)3隔壁、長楕円形〜豆形、厚壁、平滑である。分生子は観察されない。
本菌の以上のような菌学的性状は、マクナブ「タキソノミックスタディーインザダクリマイセタシー. VIII. ダクリマイセス」、ニュージーランドジャーナルオブボタニー、1973年、第11巻、p.461−524(McNabb RFR, “Taxonomic studies in the Dacrymycetaceae VIII. Dacrymyces Nees ex Fries, New Zealand Journal of Botany 11, p.461−524(1973))のアカキクラゲ属(Dacrymyces)の記載に一致した。よって本菌株を、ダクリマイセス エスピー(Dacrymyces sp.)と同定した。
なお、SANK 20204株は、ダクリマイセス エスピー(Dacrymyces sp. SANK 20204株として、平成16年9月15日付けで日本国茨城県つくば市東1−1−1の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託され、受託番号FERM BP−10124を付与された。
周知の通り、真菌類は自然界において、又は人工的な操作(例えば、紫外線照射、放射線照射、化学薬品処理等)により、変異を起こしやすく、本発明のSANK 20204株もその点は同じである。本発明にいうSANK 20204株はその全ての変異株を包含する。
また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組み換え、形質導入、形質転換等によりえられたものも包含される。即ち、F−19848Aを生産するSANK 20204株、それらの変異株およびそれらと明確に区別されない菌株は全てSANK 20204株に包含される。
2.培養
F−19848A生産菌は、微生物による発酵生産に通常使用されるような、微生物が同化できる炭素源、窒素源および無機塩を含有する培地を用いて培養することができる。
炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、マンニトール、グリセリン、デキストリン、オート麦、ライ麦、押麦、トウモロコシデンプン、ジャガイモ、トウモロコシ粉、大豆粉、綿実油、糖蜜、クエン酸、酒石酸等を単独で用いるか、あるいは2つ以上を併用することができる。炭素源の含有量は、通常、培地量の1〜10重量%で変量する。
窒素源としては、蛋白質もしくはその加水分解物を含有する物質、無機塩等を用いることができる。そのような窒素源としては、大豆粉、フスマ、落花生粉、綿実油、カゼイン加水分解物、ファーマミン、魚粉、コーンスチープリカー、ペプトン、肉エキス、イースト、イーストエキス、マルトエキス、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等を例示することができる、それらは単独で用いるか、あるいは2つ以上を併用することができる。窒素源の含有量は、通常、培地量の0.1〜10重量%の範囲で変量する。
栄養無機塩としては、イオンを得ることができる通常の塩類、金属等を用いることができる。塩類としては、ナトリウム、アンモニウム、カルシウム、フォスフェート、サルフェート、クロライド、カーボネート等を例示することができる。金属としては、カリウム、カルシウム、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム等の金属を例示することができる。また、菌の資化しうるビタミンB1、ビオチンのようなビタミン類、チアミンのような菌体増殖促進物質等も必要に応じて添加してもよい。
F−19848A生産菌を液体培養するに際しては、シリコン油、植物油、界面活性剤等を消泡剤として使用することができる。F−19848Aを製造する目的でSANK 20204株を培養する際の培地のpHは、培地の成分、生育温度等により異なるが、通常発酵生成物を生産するために用いられるpHであればよい。
SANK 20204株の培養温度は、培地の成分、pH等により異なるが、通常、10℃〜30℃であり、18〜28℃の範囲が生育に良好である。F−19848Aの生産には、20〜26℃が好適である。
F−19848A製造のための培養方法としては、特に制限はなく、微生物一般に用いられる培養方法であればよく、固形培地を用いた培養法、攪拌培養法、振とう培養法、通気培養法等を使用することができる。
以下にSANK 20204株の培養法を示すが、F−19848Aを製造できる限りにおいて、本方法に限定されない。
SANK 20204株の培養は、通常、1つ又は2つ以上の段階からなる種培養より開始し、ロータリー振盪培養機中で20〜26℃(好適には23℃)で、5〜10日間(好適には7日間)あるいは十分に生育するまで振とうして行う。
SANK 20204株を固体培養する場合、上記の種培養液を三角フラスコなどの固体培地培養容器中の本培養培地に接種することができる。培養は、接種した固体培地培養容器を20〜26℃(好適には23℃)で10〜20日間(好適には14日間)静置して、生産培養を行なう。このようにして得られた本培養培地(培養物)中に所望のF−19848Aを得ることができる。
SANK 20204株を比較的小さな規模で液体培養する場合、本培養培地を含む三角フラスコに種培養液を接種し、ロータリー振盪培養機中で、20〜26℃(好適には23℃)で数日間振とうする。
一方、SANK 20204株を比較的大きな規模で液体培養する場合、攪拌機、通気装置、保温装置等をつけた適当なタンクを用いることが好ましい。該装置を用いることにより、培地を予め該タンクの中で作製することができる。例えば、本培養培地を121℃にて加熱滅菌し、冷却する。次いで、種培養物を接種し、23℃にて通気攪拌しつつ本培養を行う。このような培養方法は、所望のF−19848Aを大量に製造するのに適している。
本発明のF−19848A生産菌を培養して該物質を製造する場合、該培養物中のF−19848Aの生産量は、後述する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、生物活性試験等により、経時的に追跡することができる。HPLC分析又は生物活性試験にて追跡する場合、予め、培養物をアセトン等の親水性溶媒で抽出し、該親水性溶媒を留去した後、n−ブタノール等の水と混和しない溶媒で抽出する。次いで、該水と混和しない溶媒を留去した後、適当な溶媒に再溶解したものを分析又は試験に供することが好ましい。生物活性試験としては、ヒアルロン酸−CD44結合阻害試験等を挙げることができる。
3.F−19848Aの回収
培養終了後、珪藻土等を助剤とするろ過操作又は遠心分離操作等により、培養物を可溶性画分(培養上清)および不溶性画分(菌体)に分別し、次いで得られた各画分中に存在するF−19848Aを、その物理化学的性状を利用して抽出精製することによってF−19848Aを回収することができる。
例えば、培養上清を、n−ブタノール、酢酸エチルなど水と混和しない有機溶媒の1つ又は2つ以上の混合物を用いて抽出することにより、該抽出物より、F−19848Aを精製することができる。
得られた抽出物を、各種吸着用樹脂を用いたクロマトグラフィーに供することができる。吸着剤としては、活性炭、アンバーライトXAD−2、XAD−4(以上ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンHP−10、HP−20、HP−50、CHP20P(以上三菱化学(株)社製)等を挙げることができる。前記の抽出物をこれらの吸着剤と接触させてF−19848Aを吸着せしめた後、メタノール水、アセトン水等の含水溶媒を用いて所望のF−19848Aを溶出することができる。反対に、前記の抽出物をこれらの吸着剤と接触させて不純物を吸着せしめ、所望のF−19848Aを素通り画分中に回収することもできる。
得られたF−19848A含有画分を、イオン交換クロマトグラフィーに供することができる。イオン交換樹脂としては、ダウエックス 50Wx4、ダウエックス1x2、ダウエックス SBR−P(以上、ダウ・ケミカル社製)等を挙げることができる。F−19848A含有画分をイオン交換樹脂と接触させてF−19848Aを吸着せしめた後、塩酸、アンモニア等の溶媒を用いて所望のF−19848Aを溶出することができる。反対に、前記の抽出物をこれらのイオン交換樹脂と接触させて不純物を吸着せしめ、所望のF−19848Aを素通り画分中に回収することもできる。
得られたF−19848A含有画分を、さらに、シリカゲル、マグネシウム−シリカゲル系のフロリジル等の担体を用いた吸着カラム・クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、TSKゲルトヨパールHW−40F(登録商標、トーソー(株)社製)、セファデックスLH−20(登録商標、アマシャム バイオサイエンス社製)等を用いた分配カラムクロマトグラフィー、コスモシール140C18(登録商標、ナカライテスク社製)等を用いた逆相カラムクロマトグラフィー、順相もしくは逆相カラムを用いたHPLC等により精製し、所望のF−19848Aを単離することができる。
本発明のF−19848Aを精製する際の、各精製工程における該物質の挙動は、例えば、次の条件によるHPLCにより追跡することができる。
(F−19848Aを検出するためのHPLCの条件)
分離カラム: Waters SYMMETRY C18(φ4.6×150mm:Waters社製)
移動相: アセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=13:7
流速: 1.0ml/分
検出波長: 210 nm
保持時間: 5.6分
4.ヒアルロン酸CD−44結合阻害試験
F−19848Aがヒアルロン酸とCD44が結合するのを阻害する活性を有することが本発明者らによって明らかにされた。ヒアルロン酸とCD44との結合阻害試験(「ヒアルロン酸−CD44結合阻害試験」という。)はヒアルロン酸とCD44との結合に対する本発明のF−19848Aの影響を調べることができる限りにおいて特に制限されないが、例えば後の(試験例1)に詳述するように、ヒトCD44発現細胞懸濁液に蛍光ヒアルロン酸と被験化合物(F−19848A)を添加して、蛍光ヒアルロン酸のCD44への特異的吸着量を測定する方法を用いることができる。
5.F−19848Aの作用
本発明において「変形性関節症」とは慢性の関節炎を伴う関節疾患であり、関節の構成要素の退行変性により、軟骨の破壊と骨及び/又は軟骨の増殖性変化をきたす疾患を意味する。変形性関節症としては変形性膝関節症、変形性肩関節症、変形性股関節症、変形性肘関節症、変形性足関節症、変形性手関節症、変形性指関節症等を例示することが出来る。
F−19848A及び/又はその塩は、ヒアルロン酸−CD44結合阻害活性を有することが本発明者らによって明らかにされた。したがって、F−19848A及び/又はその塩は、変形性関節症の治療薬または予防薬の用途に有効であり、肩及び膝関節等の大きな関節のみならず、全身の関節炎の治療又は予防に好適である。すなわち、本発明は、F−19848A又はその塩を含むことからなる医薬組成物、並びに、該物質を有効成分として含有する変形性関節症の治療又は予防剤を提供する。
本発明のF−19848A又はその塩は、医薬としてヒト又はヒト以外の動物に投与されるに際し、種々の形態をとり得る。その投与形態は、製剤、年齢、性別、疾患等に依存する。例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等は経口投与される。注射剤等は静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与又は腹腔内投与される。坐剤は直腸内投与される。軟膏等は外用剤として使用される。
F−19848Aを有効成分として含有する医薬製剤は、常法に従い、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、矯味矯臭剤、コーティング剤等、医薬製剤分野において通常使用し得る公知の補助剤を用いて製造することができる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用することができ、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、珪酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、澱粉液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、澱粉等の保湿剤、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状珪酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、硼酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を挙げることができる。錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多重錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用することができ、例えば、ブドウ糖、乳糖、澱粉、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤を挙げることができる。
注射剤として調製される場合、液剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であることが好ましく、これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に形成するに際しては、希釈剤として当該分野において公知のものを広く使用することができ、例えば、水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エポキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。等張を維持するために充分な量の食塩、ブドウ糖又はグリセリンを含有せしめてもよい。溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤糖、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤、他の薬剤等を含有せしめてもよい。
なお、注射剤を静脈内投与する場合、単独で、ブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して、又は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等とのエマルジョンとして投与される。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用することができ、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
軟膏等の外用剤の形態に成形するに際しては、賦型剤として、疎水性基剤(油脂性軟膏基剤)、吸水基剤、親水性基剤(クリーム)ならびに水溶性基剤(非グリース製軟膏基剤)のいずれか一つに属する、当該分野で公知のものを広く使用することができる。
上述の医薬製剤に含有せしめるF−19848A又はその塩の量は、特に限定されないが、上限は30〜70重量%、下限は1重量%であり、好適な範囲は1〜30重量%である。
F−19848A又はその塩の投与量は、症状、年齢、体重、投与方法、剤形等に依存するが、通常成人に対して1日当たり投与するF−19848A又はその塩の量は、上限が100〜1000mg、下限が1〜10mgであり、好適な範囲は10〜100mgである。
F−19848A又はその塩の投与回数は、数日に1回、1日1回、又は1日複数回である。
本発明は、薬理上有効な量のF−19848A又はその塩を投与することからなる炎症性疾患、炎症又は感染症の治療又は予防方法、それら疾患の治療又は予防のためのF−19848A又はその塩の使用をも提供する。
次に、実施例、試験例、製剤例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1).F−19848A生産菌の培養
ダクリマイセス エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204株(以下、「SANK 20204株」とする。)のスラントより約1cm角の菌糸片を切り取りあらかじめ滅菌水約3mlで満たしたガラス製ホモジナイザー中に懸濁した。ガラス製ホモジナイザーを用いて菌糸片をホモジナイズし、全量を滅菌(121℃、20分間)した後述の組成からなる種培養培地30mlを含む100ml容三角フラスコに接種した。同様の操作を行い、15本の種培養フラスコを用意した。23℃で210rpmのロータリー振とう培養機中で7日間培養した。このようにして得られた種培養液を、滅菌(121℃、40分間)した後述の生産培養培地の培地組成を含む500ml容固体培地培養容器(藤森工業 アグリフレックス)30本にそれぞれ15ml接種し、23℃で静置して14日間培養した。

(表2)種培養培地の培地組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
グルコース 4g
マルトエキス(Difco) 10g
イーストエキス(Difco) 4g
寒天 3g
消泡剤* 0.05ml
蒸留水 1000ml
―――――――――――――――――――――――――――――――――
* ニッサン・ディスフォームCB−442(登録商標、日本油脂(株)社製)

(表3)生産培養培地の培地組成(500ml容固体培地培養容器1本あたり)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
押麦(大麦) 64g
マンニトール 1g
L−グルタミン酸ナトリウム一水和物 0.5g
イーストエキス(Difco) 0.5g
KHPO 0.1g
MgSO・7HO 0.1g
蒸留水 100ml
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(実施例2).F−19848Aの単離
実施例1で得られた培養物3Lにアセトン3Lを加えて抽出した後、これを遠心分離してアセトン抽出液を得た。このアセトン抽出液を減圧下濃縮してアセトンを留去し、pH3.0に調整後、酢酸エチル抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水してろ紙でろ過後、減圧下濃縮乾固して、F−19848Aを含む抽出物7.5gを得た。
次いで、コスモシルカラム・クロマトグラフィーを行った。すなわち、前記抽出物7.5gにアセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=2:3、100mlを加え、予めアセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=2:3で平衡化したコスモシルカラム(Cosmosil 140C18−OPN、容積250ml)に付した。該カラムを、アセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=2:3(910ml)、で洗浄した後、アセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=1:1(460ml)、アセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=11:9(1180ml)を用いて吸着画分を段階的に溶出させ、溶出液を20mlずつ82個の画分として回収した。
F−19848Aを含む溶出画分No.40〜No.57を合併し(360ml)、減圧下で濃縮することによりアセトニトリルを留去した後、酢酸エチル抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水した。それをろ紙でろ過後、減圧下濃縮乾固して、F−19848A質を含む部分精製物402.8mgを得た。
この部分精製物をHPLCカラム(Waters SYMMETRY C18 φ19×100mm:Waters社製)で分離した。部分精製物402.8mgをアセトニトリル:0.6%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=3:2、3.3mlに溶解したものを試料溶液とした。この試料溶液300μlを、あらかじめアセトニトリル:0.6%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=3:2で平衡化したカラムに注入後、アセトニトリル:0.6%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=3:2を溶媒として、流速6ml/分で溶出した。検出波長210nmで溶出液をモニターし、保持時間13.5から17.3分までを分取した。残りの試料溶液についても同様の操作を行い、活性画分250mlを得た。減圧下濃縮してアセトニトリルを留去後、酢酸エチルで抽出した。その抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水した。それをろ紙でろ過後、減圧下濃縮乾固して、F−19848Aの無色粉末182mgを得た。
このようにして得たF−19848Aを下記条件のHPLCにて分析した:
分離カラム: Waters SYMMETRY C18(φ4.6×150mm:Waters社製)
移動相: アセトニトリル:0.3%トリエチルアミンリン酸緩衝液(pH3)=13:7
流速: 1.0ml/分
検出波長: 210 nm
保持時間: 5.6分
(試験例1).ヒアルロン酸−CD44結合阻害試験
ヒトCD44のcDNAはヒトリンパ節由来cDNAライブラリー(TAKARA)を鋳型にPCRにより増幅した。PCRに用いたプライマーはデータベース(GenBank)より得られたCD44 cDNA配列(GenBankアクセッション番号(Accession number): U40373:配列表の配列番号1)のアミノ酸コード領域のヌクレオチド番号65乃至85の5’側にSal I切断点とKozac配列(Nucleic Acids Research、15巻、8125‐8148頁、1987年)を導入したプライマー1:
5’-AGCTAGGTCGACACCATGGACAAGTTTTGGTGGCAC-3’(配列表の配列番号3)
と第1130塩基から第1150塩基の相補鎖の5’側にHind III切断点を導入したプライマー2:

5’-AGCTAGAAGCTTACACCCCAATCTTCATGTC-3’(配列表の配列番号4)
を用いた。PCR増幅産物を制限酵素Sal I(TAKARA)とHind III(TAKARA)により切断し、この断片を発現ベクター、pRK5(ファーミンジェン)に組み込んだ。これをリン酸カルシウム法によりpSV2neo(インビトロジェン)とともにコラーゲンコートシャーレ上で10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(インビトロジェン)を用い培養したヒト腎臓上皮由来細胞株HEK293(CRL−1573、アメリカン タイプ カルチャー コレクション)に導入し、抗生物質G418(500μg/ml)により遺伝子導入細胞を選択した。抗ヒトCD44モノクローナル抗体(バイオメダ)を用い、ウエスタンブロッティングによりCD44の発現を確認した。このCD44発現細胞を4日間培養したあとカルシウムイオン、マグネシウムイオンフリーのダルベッコリン酸バッファー(以下、PBSと称する。)で洗浄し、2mM エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を含むPBSでシャーレからはがした。遠心(1800×g、5分)により細胞を回収した後、0.2M 塩化ナトリウムを含む50mM トリス塩酸バッファーpH7.8(以下、「バッファーA」と称する。)で2度洗浄した。細胞を再度バッファーAに懸濁し、2分間の超音波処理による破砕の後、400×gで10分間遠心した。この上清を20,000×gで1時間遠心し、沈殿をバッファーAで1度洗浄後、バッファーA中で超音波処理し、均一化したものをCD44発現細胞膜懸濁液とした。
蛍光ヒアルロン酸はベルダーらの方法(Carbohydrate Research、44巻、251−257頁、1975年)に若干の修正を加え、以下のように調製した。50mgのヒアルロン酸ナトリウム(生化学工業、鶏冠由来、分子量1.58×10)を40mlの蒸留水に溶解し、20mlのジメチルスルホキシド(以下、DMSO)と混合した。この混合液にアセトアルデヒド(25μl、フルカ)とシクロヘキシルイソシアニド(25μl、フルカ)を含むDMSO(0.5ml)に溶解したフルオロセインアミン−アイソタイプI(25mg、アルドリッチ)を加えた。室温(約25℃)で5時間攪拌した後、240mlの塩化ナトリウム飽和エタノールに注ぎ、沈殿した蛍光ヒアルロン酸を遠心(1000×g、15分)で回収した。これを60mlの蒸留水に溶解し、240mlの塩化ナトリウム飽和エタノールで沈殿させ、回収する作業を2度繰り返した後、10mlの蒸留水に溶解し、透析により脱塩を行い、蛍光ヒアルロン酸溶液とした。
上記CD44発現細胞膜懸濁液(タンパク質濃度として100μg/ml)を、96ウェルガラス繊維濾紙黒色プレート(ユニフィルター、疎水性GF/C膜、ワットマン)に1ウェルに対し200μl分注し、ここへメタノールで溶解した被検化合物(F−19848A)を1μl添加した後、さらに蛍光ヒアルロン酸0.2μgを添加した。室温で1時間インキュベートした後、液体をマルチスクリーン(MILLIPORE)を用いて吸引濾過した。これにバッファーAを1ウェルあたり250μl添加し、吸引濾過する操作を6回繰り返すことによりフィルターに吸着した細胞膜を洗浄した。洗浄後、1ウェルに対し0.3N 水酸化ナトリウムを100μl添加し、アルボ(アマシャム−ファルマシア)により、励起光485nmによる発光光535nmを測定し、CD44発現細胞膜への蛍光ヒアルロン酸の結合量を検出した。蛍光ヒアルロン酸の非特異的結合は過剰量の非標識ヒアルロン酸(終濃度100μg/ml)を加えることにより検出した。蛍光ヒアルロン酸の全結合と非特異的結合の差を特異的結合とし、特異的結合に対する阻害率(%)を算出した。表4に、F−19848Aを終濃度でそれぞれ40、30、20および10μM添加した場合の阻害率(%)の平均値と標準偏差を示した。F−19848Aはヒアルロン酸とCD44との結合を顕著に阻害し、IC50値は23.5μMであった(表4)。
(表4)
Figure 2006176438
(製剤例1).経口用カプセル剤
下記表5に記載の処方の粉末を混合し、30メッシュのふるいを通した後、この粉末をゼラチンカプセルに入れ、カプセル剤とする。

(表5) F−19848A含有経口カプセル剤
―――――――――――――――――――――――――――――
F−19848A 30mg
乳糖 170mg
トウモロコシ澱粉 150mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
―――――――――――――――――――――――――――――
合計 352mg
―――――――――――――――――――――――――――――
本発明の提供するF−19848Aは、優れたヒアルロン酸−CD44結合阻害活性を有し、変形性関節症およびそれに起因する疾患の治療または予防に有用である。
配列番号3:CD44用PCRセンスプライマー
配列番号4:CD44用アンチセンスプライマー

Claims (8)

  1. 下記一般式(I)
    Figure 2006176438

    (I)

    で表される新規化合物F−19848A又はその塩。
  2. 下記の1)乃至8)の物理化学的性質を示す化合物又はその塩:
    1)性質:酸性、無色粉末;
    2)溶解性:DMSO、メタノールに可溶;
    3)分子式:C468220(ESI−TOFMSスペクトルにより決定);
    4)分子量:954(ESI−MSスペクトルにより決定);
    5)紫外線吸収スペクトル:λmax nm(ε)
    メタノール溶液中で測定した紫外線吸収スペクトルは、末端吸収のみである;
    6)赤外線吸収スペクトル(KBr):νmax cm−1
    KBrディスク法で測定した赤外線吸収スペクトルは、次の通りである:
    3409、2926、2854、1737、1369、1244、1081、1051;
    7) 1H−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
    重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(500MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.00ppmとした。)
    0.91 (3H, t, J=7.0 Hz), 1.20-1.38 (32H, m), 1.38-1.46 (4H, m), 1.46-1.55 (4H, m), 1.63 (1H, m), 1.74 (1H, m), 2.06 (3H, s), 2.11 (3H, s), 3.14-3.28 (4H, m), 3.30 (1H, m), 3.34 (1H, m), 3.42-3.55 (5H, m), 3.61 (1H, m), 3.80 (1H, m), 3.83 (1H, m), 3.97 (1H, dd, J=11.7, 5.5 Hz), 4.08 (1H, dd, J=7.7, 4.4 Hz), 4.22 (1H, dd, J=12.0, 5.5 Hz), 4.38 (1H, d, J=7.0 Hz), 4.46 (1H, dd, J=12.0, 1.8 Hz), 4.62 (1H, d, J=7.3 Hz), 4.67 (1H, d, J=7.7 Hz), 4.71 (1H, m)
    8)13C−核磁気共鳴スペクトル; δ (ppm)
    重メタノール溶液中で測定した核磁気共鳴スペクトル(125MHz)は、次の通りである。(TMSのシグナルを0.0ppmとした。)
    14.6 (q), 20.8 (q), 21.1 (q), 22.4 (t), 23.8 (t), 26.2 (t), 26.8 (t), 30.5-30.9 (12シグナル, t), 33.2 (t), 35.0 (t), 35.5 (t), 35.8 (t), 38.4 (t), 63.5 (t), 64.5 (t), 66.6 (t), 70.6 (d), 71.2 (d), 71.6 (d), 72.5 (d), 72.9 (d), 74.4 (d), 75.7 (d), 75.8 (d), 77.2 (d), 77.6 (d), 80.2 (d), 83.5 (d), 84.6 (d), 102.5 (d), 104.3 (d), 105.6 (d), 172.2 (s), 173.0 (s), 178.3 (s)。
  3. ダクリマイセス(Dacrymyces)属に属するF−19848A又は請求項2に記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物よりF−19848A又は請求項2に記載の化合物を回収することを特徴とする、F−19848A又は請求項2に記載の化合物の製造方法。
  4. ダクリマイセス(Dacrymyces)属に属するF−19848A又は請求項2に記載の化合物の生産菌がダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204(FERM BP−10124)であることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
  5. ダクリマイセス・エスピー(Dacrymyces sp.) SANK 20204(FERM BP−10124)。
  6. F−19848A、その塩、請求項2に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される、少なくともいずれか一つを含むことからなる医薬組成物。
  7. F−19848A、その塩、請求項2に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される、少なくともいずれか一つを有効成分として含有する変形性関節症治療薬及び/または予防剤。
  8. F−19848A、その塩、請求項2に記載の化合物及びその塩からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含有してなるヒアルロン酸とCD44の結合阻害剤。
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