JP5209359B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、金属酸化物で構成された空気極を用いる固体酸化物形燃料電池に関するものである。
優れた電解質材料であるジルコニア系酸素イオン伝導体を用いた固体酸化物形燃料電池に関心が高まりつつある。特に、エネルギーの有効利用という観点から、固体酸化物形燃料電池はカルノー効率の制約を受けないために本質的に高いエネルギー変換効率を有し、さらに、良好な環境保全が期待されるなどの優れた特徴を持っている(非特許文献1〜3参照)。
この固体酸化物形燃料電池は、当初、動作温度が900〜1000℃と高く、全ての部材がセラミックで構成されていた。燃料極,電解質,および空気極からなる単セルを、インターコネクタ(セパレータ)を挟んで積層してスタック構成としている固体酸化物形燃料電池では、上述したように動作温度が高温では、インターコネクタも加工が困難なセラミックで構成することになり、セルスタックの製造コストの低減が容易ではなかった。
ここで、動作温度を800℃以下まで低下させることができれば、インターコネクタにフェライト系Fe−Cr合金などの耐熱合金材料を用いることが可能となり、製造コストの低減が可能となる。しかしながら、動作温度の低下は、空気極の活性の低下を引き起こし、これに伴い空気極における電気化学的な抵抗、すなわち過電圧が、急激に増大して出力電圧の低下を招いてしまう。
このような動作温度の低下による空気極の問題を解消するために、LSFC(La1-XSrXFe1-YCoY3;X=0.1〜0.3,Y=0.1〜0.6,X+Y<0.7)、La1-XSrXCoO3(X=0.1〜0.5)、LNF(LaNi1-XFeX3:X=0.3〜0.8)などの、低温動作においても高い電極活性(電気化学反応の性能)を有する材料を用いる技術がある。これらは、いわゆるAサイトにLa,Srを含み、または、La,Caを含みBサイトにNi,Co,またはFeを含むペロブスカイト型の金属酸化物(ペロブスカイト酸化物)である。
ところで、よく知られているように、固体酸化物形燃料電池では、燃料極,電解質,空気極などは、各々を構成する材料(粉体)を焼成して作成している。しかしながら、上述した空気極材料は、ジルコニア系酸素イオン伝導体を用いた電解質と接した状態で焼成すると、接している部分にLa2Zr27などの絶縁体が生成され、空気極特性の劣化を招いている。
これを防ぐために、空気極と電解質との間に、Ce0.9Gd0.12およびCe0.8Sm0.22などの希土類を添加したセリウム酸化物(セリア)からなるセリア層を設け、Laを含むペロブスカイト酸化物とジルコニアとの接触を避ける方法が検討されている。上述したセリウム酸化物は、酸素イオン伝導性が高く、加えて、ペロブスカイト酸化物との間で絶縁体を生成するような反応が起こりにくいため、上述したようにセリア層を設けることは有効である。特に、プラセオジム(Pr)が添加されているセリウム酸化物は、イオン伝導性と電気伝導性(ホール伝導性)の両方の特性が良好な混合伝導性を有することから、上述したセリア層(空気極)に適している。
A. Mai, et al. , "Ferrite-based perovskites as cathode materials for anode-supported solid oxide fuel cells Part II. Influence of the CGO interlayer", Solid State Ionics, Vol.177, pp.2103-2107, 2006. Y. Matsuzaki, et al. , "Electrochemical properties of reduced-temperature SOFCs with mixed ionic-electronic conductors in electrodes and/or interlayers", Solid State Ionics, Vol.152-153, pp.463-468, 2002. 田川 博章著、「固体酸化物燃料電池と地球環境」、株式会社 アグネス承風社、178−181頁、1998年6月20日発行。
しかしながら、Prを添加したセリウム酸化物は、焼成し難い難焼結性であるという問題がある。ここで難焼結性とは、焼成後においても焼成前の粉体の状態が維持される性質であり、難焼結性の場合、セルの層としての形態を維持させることが容易ではない。このため、十分な強度の層を形成するためには、高い温度での焼成が必要となり、固体酸化物形燃料電池(空気極)の作製プロセスに大きな制約を生じる。また、Prを添加したセリウム酸化物は、600℃以上での熱膨張係数が、ジルコニア系酸素イオン伝導体を用いた電解質の2倍以上と大きく、発電動作時などの熱サイクルにともなって、他の層との間で熱膨張差が生じ、層間の剥離を発生することが懸念される。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、プラセオジムを添加したセリウム酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池をより容易に作製できるようにすることを目的とする。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、燃料極,電解質,及び空気極を備える固体酸化物形燃料電池において、電解質と空気極との間に配置され、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を有して構成されたバッファ層を備え、バッファ層は、電解質の側に配置された第1バッファ層と、空気極の側に配置された第2バッファ層とから構成され、第1バッファ層は、プラセオジム以外の希土類が添加されたセリウム酸化物から構成され、第2バッファ層は、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を有しているようにしたものである。
上記固体酸化物形燃料電池において、空気極は、バッファ層の側に配置され、上記混合体にペロブスカイト型の金属酸化物が混合されて構成された活性層を備える。この場合、空気極は、空気極の電解質より離れた側に配置されてペロブスカイト型の金属酸化物より構成された集電層を備える。
以上説明したように、本発明によれば、空気極の側に、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を用いる層を備えるようにしたので、プラセオジムを添加したセリウム酸化物を用いた固体酸化物形燃料電池が、より容易に作製できるようになるという優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における固体酸化物形燃料電池の一部構成例を模式的に示す断面図である。この固体酸化物形燃料電池は、ジルコニア系の材料から構成された電解質101と、電解質101の一方の面に形成された燃料極102と、電解質101の他方に形成された、空気極103を備える。空気極103は、ペロブスカイト酸化物から構成された集電層103aと、電解質101の側に配置されて上記ペロブスカイト酸化物に加えてセリウム酸化物を含んだ活性層103bとから構成されている。集電層103aは、電解質101より離れた側に配置され、活性層103bは、電解質101の側に配置されている。
加えて、本実施の形態における固体酸化物形燃料電池は、電解質101と空気極103との間に配置され、プラセオジム(Pr)が添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を有して構成されたバッファ層104を備える。本実施の形態では、バッファ層104は、電解質101の側に配置された第1バッファ層104aと、空気極の側に配置された第2バッファ層104bとを備え、第2バッファ層104bが、Prが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体より構成されている。この場合、第1バッファ層104aは、Pr以外の希土類が添加されたセリウム酸化物から構成し、Prが含まれていないようにする。
上述した各層は、よく知られているように、各材料粉末(粉体)もしくは混合粉末のスラリを作製し、ドクターブレード法による成形やスクリーン印刷法による塗布で、スラリの膜(層)を形成し、これを1000〜1200℃で焼成することで作製することができる焼結体(多孔質焼結体)である。例えば、第2バッファ層104bは、Prを添加したセリウム酸化物の粉末に、コバルト酸化物および銅酸化物のすくなくとも1つの粉末を混合して混合粉末とし、この混合粉末を焼成して形成する。なお、電解質101は、より小さな粒径の粉末を用い、気体が通過することができない緻密な焼結体とする。
ここで、第2バッファ層104bにおけるコバルト酸化物の混合量(添加量)は、Prが添加されたセリウム酸化物に対して、Co34として0.1〜10wt%の範囲であればよく、好ましくは、0.5〜5.0wt%の範囲であればよい。また、さらに好ましくは、1.0〜4.0wt%の範囲であればよい。また、銅酸化物の添加量は、Prが添加されたセリウム酸化物に対して、CuOとして0.1〜10wt%の範囲であればよく、好ましくは、0.2〜4.0wt%の範囲であればよい。また、さらに好ましくは、0.5〜2.0wt%の範囲であればよい。
上述した本実施の形態によれば、Prが添加されたセリウム酸化物を用いる層に、コバルト酸化物および銅酸化物のすくなくとも1つを混合するようにしたので、焼結性を向上させることができる。酸化コバルト(Co34)や酸化銅(CuO)は、1000℃〜1300℃程度では、Prが添加されているセリウム酸化物(粉体粒子)にはあまり固溶せず、これらの混合粉末は、焼成時には隣接しながらも別々に存在する。また、酸化コバルトや酸化銅は、融点が比較的低い。酸化コバルトは、焼成時の温度付近ではCoOとして存在し、融点は1747℃である。また、酸化銅は、焼成時の温度付近ではCu2Oとして存在し、融点は1227℃である。従って、酸化コバルトや酸化銅は、焼成時には融点付近まで加熱されることになり、自己拡散係数が非常に高くなる。
このように、固溶することはないが自己拡散係数が非常に高い状態の酸化コバルトや酸化銅の微粒子がセリウム酸化物粒子間に存在している状態では、Prが添加されたセリウム酸化物粒子からの微量のセリウムが、酸化コバルトや酸化銅の微粒子を介して他のセリウム酸化物粒子に移動しやすい状態となる。この結果、Prが添加されたセリウム酸化物の粉体粒子間における界面の移動が促進され、結果として、焼結性を著しく高めることになる。また、酸化コバルトや酸化銅の微粒子は、焼成により焼結された後も、セリウム酸化物の粉体粒子間に残ることになるが、添加量が少なければ、焼結体(空気極,バッファ層)の伝導度特性などにはほとんど影響を与えない。
上述したように、本実施の形態によれば、第2バッファ層(Prが添加されたセリウム酸化物を用いる層)104bの焼結性を向上させることができ、焼結性の向上は、同じ温度の焼成でも、形成される層自体の機械強度が向上し、また、隣接する層との界面の密着性が向上するため、熱サイクル特性や経時安定性が向上する。
なお、上述した実施の形態では、固体酸化物形燃料電池の基本的な構成(単セル)を説明している。実際には、よく知られているように、複数の単セルがインターコネクタを介して積層された状態で用いられ、各単セルにおいて、都市ガスなどの炭化水素ガスを改質して得られた水素を含む燃料ガスが燃料極102の側に供給され、酸化剤ガスとしての酸素を含む空気が空気極103の側に供給されることで、発電動作が行われる。
次に、実際に作製した固体酸化物形燃料電池の単セルにおける特性測定結果について説明する。
[セルの作製]
はじめに、比較試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#1-0-0)を例にとり、単セルの作製について説明する。まず、よく知られたドクターブレード法でシート状に成形して焼成したSc23,Al23添加ジルコニア(0.89ZrO2−0.10Sc23−0.01Al23:SASZ)からなる電解質基板を用意する。電解質基板は、厚さ0.2mmに形成する。
次に、平均粒径が約0.3μmの8mol%Y23添加ジルコニア粉末に平均粒径が約0.8μmのNiO粉末(60wt%)を混合したNiO−8YSZ(0.92ZrO2−0.08Y23)のスラリを作製し、このスラリを上述した電解質基板の一方の面に、よく知られたスクリーン印刷法により塗布して燃料極塗布膜を形成する。加えて、この燃料極塗布膜の上に白金のメッシュよりなる集電体を配置する。この後、これらを、1400℃・4時間の熱処理条件で、空気中で焼成すると、上記混合粉末の焼結体からなる厚さ60μmの燃料極が形成される。
次に、平均粒径0.2μmのCe0.9Gd0.12(GDC)粉末のスラリを作製し、このスラリを電解質基板の他方の面にスクリーン印刷法で塗布して第1バッファ層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、さらに、平均粒径0.2μmのCe0.8Gd0.1Pr0.12(PDC)粉末のスラリを作製し、このスラリを第1バッファ層塗布膜の上にスクリーン印刷法で塗布して第2バッファ層塗布膜を形成する。これを乾燥した後、これらを、1200℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成すると、第1バッファ層および第2バッファ層が形成される。
次に、平均粒径が1.0μmのLaNi0.6Fe0.43(LNF)粉末と粒径0.2μmのCe0.8Pr0.22粉末とを混合し(LNFが50wt%)、この混合粉末のスラリを作製し、このスラリを、第2バッファ層の上にスクリーン印刷法により塗布して活性層塗布膜を形成する。この状態で、1000℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成すると、活性層が形成される。次に、平均粒径が1.0μmのLaNi0.6Fe0.43(LNF)粉末のみでスラリを作製し、このスラリを、活性層の上にスクリーン印刷法により塗布して集電層塗布膜を形成する。この状態で、1150℃・2時間の熱処理条件で、空気中で焼成すると、集電層が形成される。この後、白金メッシュ集電体を集電層の上に配置し、これらを1000℃・2時間の熱処理条件で加熱する。なお、活性層の厚さは4μm,集電層の厚さは40μmである。
このようにして形成した単セルは、図2の斜視図に示すように、1辺30mmの正方形の板状に形成された電解質基板201の上に、直径10mmの円盤に形成されたバッファ層203および空気極202が配置されている。なお、図2において、電解質基板201の下に配置される燃料極および集電体は、図示せずに省略している。また、この単セルは、電解質基板201の周辺部に白金からなる参照極204を備え、これに接続した状態で後述する電気的な測定を行う。
[実施例1]
次に、実施例1として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(試料セル:#1-0-1〜#1-0-7)の作製について説明する。この試料セルは、上述した比較試料セルの第2バッファ層を、平均粒径0.2μmのCe0.8Gd0.1Pr0.12(PDC)粉末に加えて平均粒径0.8μmのCo34の粉末を混合してスラリを作製し、このスラリを第1バッファ層塗布膜の上にスクリーン印刷法で塗布し、これを1200℃・2時間の熱処理条件で焼成したものに変更する。また、Co34の添加量(混合量)を、PDCとCo34の全量に対し、0.1wt%,0.2wt%,0.5wt%,1.0wt%,2.0wt%,5.0wt%,10.0wt%と変化させ、以下の表1に示すように、試料セル(#1-0-1〜#1-0-7)とする。
また、以下の表においては、電極性能の指標として、空気極202と参照極204との電位差をデジタルボルトメータで測定した結果を、「電圧」として示している。この測定では、燃料極には室温(23℃程度)において加湿した水素ガスを燃料ガスとして供給し、空気極には酸素を供給し、800℃の発電状態において、0.2A/cm2における空気極の電圧降下量を空気極と参照極との間の電位差から求めている。なお、開放起電力としては、800℃で1.10V以上の値が得られる。
また、バッファ層(第2バッファ層)と同じ組成の粉末を用いて25mm径のペレットをプレス成形し、これを1300℃・12時間の熱処理条件で焼成し、得られる焼結体のかさ密度を理論密度で規格化した値(表中「相対密度」)を、焼結性の評価値とする。
Figure 0005209359
表1に示すように、Prの濃度が10at%と高い場合、酸化コバルトが添加されていない場合もしくはこの添加量が低いと、かさ密度が低く、焼結性が低い傾向にあることがわかる。これに対し、酸化コバルトの添加量が増加すると、焼結性が向上し、添加量が0.5%以上では、十分に高い焼結性(かさ密度;表中の相対密度)が得られている。また、酸化コバルトを添加しても、電極性能の低下は見られず、むしろ性能の向上が見られる。これは、焼結性の向上にともない、バッファ層と活性層との界面の密着性が向上したことに起因するものと考えられる。
[実施例2]
次に、実施例2として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#2-0-1〜#2-0-13,試料セル:#2-1-1〜#2-1-13)について説明する。まず、比較試料セル(#2-0-1〜#2-0-13)は、以下の表2に示すように、上述した比較試料セル(#1-0-0)の第2バッファ層のGdとPrとの組成を変化させて作製したものであり、酸化コバルトを含んでいない。また、試料セル(#2-1-1〜#2-1-13)は、表2に示すように、比較試料セル(#2-0-1〜#2-0-13)に対して第2バッファ層にコバルト酸化物を添加したものである。
Figure 0005209359
表2に示すように、試料セル(#2-1-1〜#2-1-13)は、比較試料セル(#2-0-1〜#2-0-13)に比較して、酸化コバルトを2wt%添加したことにより、焼結性(表中の相対密度)が向上している。また、電極性能も向上している。
[実施例3]
次に、実施例3として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#3-0-1〜#3-0-4,試料セル:#3-1-1〜#3-1-4)について説明する。まず、比較試料セル(#3-0-1〜#3-0-4)は、以下の表3に示すように、上述した実施例2の比較試料セルのGDCをSDCに変更して作製したものであり、酸化コバルトを含んでいない。また、試料セル(#3-1-1〜#3-1-4)は、表3に示すように、比較試料セル(#3-0-1〜#3-0-4)に対して第2バッファ層にコバルト酸化物を添加したものである。
Figure 0005209359
表3に示すように、試料セル(#3-1-1〜#3-1-4)は、比較試料セル(#3-0-1〜#3-0-4)に比較して、酸化コバルトを2wt%添加したことにより、焼結性(相対密度)が向上している。また、電極性能も向上している。
[実施例4]
次に、実施例4として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#4-0-1〜#4-0-4,試料セル:#4-1-1〜#4-1-4)について説明する。まず、比較試料セル(#4-0-1〜#4-0-4)は、以下の表4に示すように、上述した実施例3の比較試料セルのSDCをYDCに変更して作製したものであり、酸化コバルトを含んでいない。また、試料セル(#4-1-1〜#4-1-4)は、表4に示すように、比較試料セル(#4-0-1〜#4-0-4)に対して第2バッファ層にコバルト酸化物を添加したものである。
Figure 0005209359
表4に示すように、試料セル(#4-1-1〜#4-1-4)は、比較試料セル(#4-0-1〜#4-0-4)に比較して、酸化コバルトを2wt%添加したことにより、焼結性(相対密度)が向上している。また、電極性能も向上している。
[実施例5]
次に、実施例5として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#5-0-0,試料セル:#5-0-1〜#5-0-7)について説明する。本実施例5では、以下の表5に示すように、実施例1の試料セルにおけるコバルト酸化物を銅酸化物(CuO)に変更して作製した。
Figure 0005209359
表5に示すように、実施例1に示したコバルト酸化物の添加の場合と同様に、銅酸化物の添加により焼結性が向上している。また、銅酸化物の添加の場合、コバルト酸化物の添加の場合に比較して、より少ない添加量でも焼結性が著しく向上している。なお、銅酸化物を添加しても、電極性能の低下は見られない。
[実施例6]
次に、実施例6として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(試料セル:#6-1-1〜#6-1-13)について説明する。本実施例6では、以下の表6に示すように、実施例2の試料セル(#2-1-1〜#2-1-13)におけるコバルト酸化物を銅酸化物(CuO)に変更して作製した。この実施例6では、比較試料セルは、表2に示す「#2-0-1〜#2-0-13」となる。
Figure 0005209359
表6に示すように、実施例2に示したコバルト酸化物の添加の場合と同様に、銅酸化物の添加により焼結性が向上している。また、銅酸化物の添加の場合、コバルト酸化物の添加の場合に比較して、より少ない添加量でも焼結性が著しく向上している。なお、銅酸化物を添加しても、電極性能の低下は見られず、比較試料セル(#2-0-1〜#2-0-13)よりは向上している。
[実施例7]
次に、実施例7として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#7-0-1,#7-0-2,試料セル:#7-1-1,#7-1-2,#7-2-1,#7-2-2)について説明する。まず、比較試料セル(#7-0-2)は、上述した実施例2の比較試料セル(#2-0-10)において、以下の表7に示すように、空気極の活性層および集電層を、LNFに代えてLSFC(La0.8Sr0.2Fe0.7Co0.33)を用いて作製する。なお、比較試料セル(#7-0-1)は、実施例2の比較試料セル(#2-0-10)と同様である。また、表中の「PDC+Co」は、PDCに対して、Co34の形で2wt%混合したこと(98wt%PDC+2wt%Co34)を示している。
また、比較試料セル(#7-0-2)のバッファ層に、コバルト酸化物(Co34;平均粒径0.2μm)を2wt%添加して試料セル(#7-1-2)とする。なお、試料セル(#7-1-1)は、実施例2の試料セル(#2-1-10)と同様である。従って、試料セル(#7-1-2)は、試料セル(#2-1-10)の空気極の活性層および集電層を、LNFに代えてLSFC(La0.8Sr0.2Fe0.7Co0.33)にしたものである。
また、試料セル(#7-2-1,#7-2-2)は、PDC粉末にCo34粉末を混合し、これに、LNFまたはLSFCを混合したペーストを作製し、これを焼成することで活性層としたものであり、他の構成は、試料セル(#7-1-1,#7-1-2)と同様である。
Figure 0005209359
表7に示すように、試料セル(#7-1-1;試料セル#2-1-10と同様),試料セル(#7-1-2),試料セル(#7-2-1),試料セル(#7-2-2)は、比較試料セル(#7-0-1,#7-0-2)に比較して、空気極特性(電極性能)の電圧降下が低減されており、PDCを用いている層においてはコバルト酸化物を添加することで、各々の比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#7-1-1,#7-1-2,#7-2-1,#7-2-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
[実施例8]
次に、実施例8として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#8-0-1,#8-0-2,試料セル:#8-1-1,#8-1-2)について説明する。本実施例8では、以下の表8に示すように、実施例7の比較試料セル(#7-0-1,#7-0-2)および試料セル(#7-1-1,#7-1-2)の第1バッファ層を取り除いた層構成とした。また、表中の「PDC+Co」は、PDCに対して、Co34の形で2wt%混合したこと(98wt%PDC+2wt%Co34)を示している。
Figure 0005209359
表8に示すように、試料セル(#8-1-1,#8-1-2)は、比較試料セル(#8-0-1,#8-0-2)に比較して、空気極特性の電圧降下が低減されており、第1バッファ層がない場合においても、PDCを用いている層においてはコバルト酸化物を添加することで、比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#8-1-1,#8-1-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
[実施例9]
次に、実施例9として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#9-0-1,#9-0-2,試料セル:#9-1-1,#9-1-2)について説明する。本実施例9では、以下の表9に示すように、実施例7の比較試料セル(#7-0-1,#7-0-2)および試料セル(#7-1-1,#7-1-2)の第2バッファ層を取り除いた層構成とした。
Figure 0005209359
表9に示すように、試料セル(#9-1-1,#9-1-2)は、比較試料セル(#9-0-1,#9-0-2)に比較して、空気極特性の電圧降下が低減されており、第2バッファ層がない場合においても、PDCを用いている層においてはコバルト酸化物を添加することで、比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#9-1-1,#9-1-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
なお、上述した実施例8,9からも明らかなように、バッファ層は2層構成となっている必要はない。また、実施例9から明らかなように、空気極がプラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体にペロブスカイト型の金属酸化物が混合されて構成された活性層を備えていれば、バッファ層に上記セリウム酸化物が添加されている必要はない。
[実施例10]
次に、実施例10として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#10-0-1,#10-0-2,試料セル:#10-1-1,#10-1-2)について説明する。本実施例10では、以下の表10に示すように、実施例9の比較試料セル(#9-0-1,#9-0-2)および試料セル(#9-1-1,#9-1-2)の第1バッファ層を取り除いた層構成とした。従って、本実施例10では、バッファ層を用いずに、空気極(活性層)が電解質に接して形成されている構成としたものである。
Figure 0005209359
表10に示すように、試料セル(#10-1-1,#10-1-2)は、比較試料セル(#10-0-1,#10-0-2)に比較して、空気極特性の電圧降下が低減されており、バッファ層がない場合においても、PDCを用いている層(空気極)においてはコバルト酸化物を添加することで、比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#10-1-1,#10-1-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
このように、バッファ層は必要なものではなく、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体にペロブスカイト型の金属酸化物が混合されて構成された活性層が、電解質の側に配置された空気極とすることで、電極性能の向上が図れる。また、コバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つが添加されているので、焼結性の向上が図れる。
[実施例11]
次に、実施例11として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#11-0-1,#11-0-2,試料セル:#11-1-1,#11-1-2)について説明する。本実施例11では、以下の表11に示すように、実施例7の比較試料セル(#7-0-1,#7-0-2)および試料セル(#7-2-1,#7-2-2)において、活性層を用いずに集電層から空気極が構成されているようにしたものである。言い換えると、空気極にセリウム酸化物が含まれていないようにしたものである。また、表中の「PDC+Co」は、PDCに対して、Co34の形で2wt%混合したこと(98wt%PDC+2wt%Co34)を示している。
Figure 0005209359
表11に示すように、試料セル(#11-1-1,#11-1-2)は、比較試料セル(#11-0-1,#11-0-2)に比較して、空気極特性の電圧降下が低減されており、セリウム酸化物を含まずに空気極を構成した場合においても、PDCを用いている層においてはコバルト酸化物を添加することで、比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#11-1-1,#11-1-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
[実施例12]
次に、実施例12として、試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#12-0-1,#12-0-2,試料セル:#12-1-1,#12-1-2)について説明する。本実施例12では、以下の表12に示すように、実施例1の比較試料セル(#11-0-1,#11-0-2)および試料セル(#11-1-1,#11-1-2)の第1バッファ層を取り除いた層構成とした。また、表中の「PDC+Co」は、PDCに対して、Co34の形で2wt%混合したこと(98wt%PDC+2wt%Co34)を示している。
Figure 0005209359
表12に示すように、試料セル(#12-1-1,#12-1-2)は、比較試料セル(#12-0-1,#12-0-2)に比較して、空気極特性の電圧降下が低減されており、第1バッファ層がない場合においても、PDCを用いている層においてはコバルト酸化物を添加することで、比較例に比較して良好な空気極特性が得られている。なお、表には示していないが、試料セル(#12-1-1,#12-1-2)においては、前述した実施例の場合と同様に、コバルト酸化物の添加により焼結性が向上している。
なお、実施例11および実施例12からも明らかなように、バッファ層が、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体にペロブスカイト型の金属酸化物が混合された混合体を含んでいれば、空気極に上記セリウム酸化物が含まれて構成されている必要はない。
なお、上述した、粒径は、よく知られているレーザー回折散乱法による光強度分布パターンの測定から得られた平均粒子径である。例えば、堀場製作所株式会社製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いることで、粒径の測定が可能である。
以上に説明したように、本発明では、空気極の側に、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を用いる層を備えるようにした。このように、Ce0.7Gd0.1Pr0.22などの、セリウム酸化物のCeの一部または添加物であるGdなどの一部をPrに置換した混合伝導性の材料を用いる場合、コバルト酸化物あるいは銅酸化物(粉末)を添加して作製(焼成)することで、形成される層(空気極、バッファ層)の焼結性を向上させることができる。また、電極特性の向上も図れる。このように、本発明によれば、固体酸化物形燃料電池の高性能化を図れるようになり、固体酸化物形燃料電池の高信頼性,高効率化に大きな貢献をなすものである。
本発明の実施の形態における固体酸化物形燃料電池の構成例を模式的に示す断面図である。 試料セルの構成を示す斜視図である。
符号の説明
101…電解質、102…燃料極、103…空気極、103a…集電層、103b…活性層、104…バッファ層、104a…第1バッファ層、104b…第2バッファ層。

Claims (3)

  1. 燃料極,電解質,及び空気極を備える固体酸化物形燃料電池において、
    前記電解質と前記空気極との間に配置され、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を有して構成されたバッファ層を備え
    前記バッファ層は、前記電解質の側に配置された第1バッファ層と、前記空気極の側に配置された第2バッファ層とを備え、
    前記第1バッファ層は、プラセオジム以外の希土類が添加されたセリウム酸化物から構成され、
    前記第2バッファ層は、プラセオジムが添加されたセリウム酸化物とコバルト酸化物および銅酸化物の少なくとも1つとの混合体を有していることを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  2. 請求項1記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記空気極は、前記バッファ層の側に配置され、前記混合体にペロブスカイト型の金属酸化物が混合されて構成された活性層を備える
    ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  3. 請求項記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記空気極は、前記空気極の前記電解質より離れた側に配置されて前記ペロブスカイト型の金属酸化物より構成された集電層を備える
    ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
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