JP5368139B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ペロブスカイト型の金属酸化物で構成された空気極を用いる固体酸化物形燃料電池に関するものである。
近年、酸化物イオン伝導体を電解質に用いた固体酸化物形燃料電池に関心が高まりつつある。特に、エネルギーの有効利用という観点から、固体酸化物形燃料電池はカルノー効率の制約を受けないために本質的に高いエネルギー変換効率を有し、さらに、良好な環境保全が期待されるなどの優れた特徴を持っている。このような特徴を備えている固体酸化物形燃料電池に用いられる空気極は、酸素が電子と反応して酸化物イオン(酸素イオン)になる反応場であるため、高い電気伝導度と電極活性とが要求される。
ところで、固体酸化物形燃料電池は、当初、動作温度が900〜1000℃と高く、全ての部材がセラミックで構成されていた。燃料極,電解質,および空気極からなる単セルを、インターコネクタ(セパレータ)を挟んで積層してスタック構成としている固体酸化物形燃料電池では、上述したように動作温度が高温では、インターコネクタも加工が困難なセラミックで構成することになり、セルスタックの製造コストの低減が容易ではなかった。
ここで、動作温度を800℃以下まで低下させることができれば、インターコネクタにフェライト系Fe−Cr合金などの耐熱合金材料を用いることが可能となり、製造コストの低減が可能となる。しかしながら、動作温度の低下は、空気極の活性の低下を引き起こし、これに伴い空気極における電気化学的な抵抗、すなわち過電圧が、急激に増大して出力電圧の低下を招いてしまう。
例えば、従来より、La1-xSrxMnO3(LSM:x=0.1〜0.5)などは、ジルコニア系材料からなる電解質との化学反応性が低く、空気極としての信頼性が高い材料として用いられている。しかしながら、LSMは、動作温度が低下すると、空気極としての電極活性が要求特性を満たさなく不充分なものとなってしまう。このため、上述したような低温動作においても、高い電極性能を有する空気極材料が望まれている。
このような動作温度の低下による空気極の問題を解消するために、La1-XSrXCoYFe1-Y3(LSCF:X=0.1〜0.5,Y=0.1〜0.6,X+Y<0.7)などの、低温動作においても高い電極活性(電気化学反応の性能)を有するペロブスカイト型の金属酸化物(ペロブスカイト型酸化物)を用いる技術がある。また、LaSrCoO3などの高い電極活性を有する材料を用いる技術もある。また、Laを他の希土類元素に置き換える技術も提案されている(非特許文献1参照)。
なお、ペロブスカイト型酸化物は、AMO3の構造を基本とし、Aサイトが希土類元素(ランタノイド系の金属元素)、Mサイトが3価の金属元素で構成される。またペロブスカイト型酸化物は、AサイトおよびMサイトともに、複数の元素で構成することが可能である。例えば、LSMは、Aサイトをランタン(La)とストロンチウム(Sr)とから構成している。またLSCFは、AサイトをLaとSrとから構成し、Mサイトをコバルト(Co)と鉄(Fe)とから構成している。
L. Qiu, et al. , ""Ln1-xSrxCo1-yFeyO3-δ(Ln=Pr,Nd,Gd;x=0.2,0.3)for the electrodes of solid oxide fuel cells", Solid State Ionics, Vol.158, pp.55-65, 2003. T.Komatsu, et al., "Cr Poisoning Suppression in Solid Oxide Fuel Cells Using LaNi(Fe)O3 Electrodes", Electrochem. Solid-State Lett., Vol.9, pp.A9-A12, 2006.
ところで、電極材料の熱膨張係数(Thermal Expansion Coefficient:TEC)は、セル作製時の電極の状態に大きな影響を与える場合がある。たとえば、電解質材料のTECと比較して空気極のTECが大きい場合は、セル作製時や運転中の熱履歴等によって電解質と空気極の剥離またはクラックが生じ、電極として機能しない場合が発生する。
一方、空気極の厚みが大きいほど、電解質と空気極が接する界面における活性点(上記の反応場に相当)において均一に電流を供給することができるようになり、特性の向上が期待できる。このため、特性の向上を図ろうとすれば、空気極をより厚く形成した方がよいことになる。しかしながら、上述したように、空気極のTECと電解質のTECとの差が大きい場合、特性向上のために空気極の厚さを増加させると、逆に空気極の剥離やクラックの発生が助長されるという問題が発生することになる。
例えば、前述したLSCFは、低温動作においても高い電極活性を示すが、従来知られている電解質材料との熱膨張係数の差が比較的大きい。このため、LSCFより空気極を構成する場合、厚く形成しようとすると、剥離やクラックが発生し易いものとなる。
また、AMO3の組成をとるペロブスカイト酸化物として、Mサイトに2価の遷移金属であるニッケル(Ni)を含むLaNi0.6Fe0.43(LNF)があり、これが、電気伝導度が高く、上述した酸化クロムとの反応性が低く、空気極の材料として注目されている(非特許文献2参照)。また、LNFは、LSCFと比べて従来知られている電解質材料との熱膨張係数の差が小さく、TECの違いによる問題が発生しにくい。しかしながら、LNFは、前述したLSMと同様に、動作温度の低下に伴い電極活性が低下し、空気極としての電極活性が要求特性を満たさなくなり、空気極として不十分なものとなる。
以上に説明したように、現在用いられている低温動作においても高い電極活性を示す空気極材料は、TECの差による問題があり、一方、電解質材料とのTECの差が小さい空気極材料は、所望とする低温動作特性が得られないという問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、他の材料と空気極との熱膨張係数の差を小さくできる状態で、より電極活性が高くできるようにすることを目的とする。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池は、燃料極,電解質,及び空気極を備える固体酸化物形燃料電池において、空気極は、NdCu0.6Co0.2Fe0.23からなるペロブスカイト型構造の金属酸化物から構成されたものである。
上記固体酸化物形燃料電池において、電解質は、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム安定化ZrO2,イットリア安定化ジルコニア,スカンジア安定化ジルコニア,サマリア安定化ジルコニアの中から選ばれた粉体の焼結体から構成されたものであればよい。
以上説明したように、本発明によれば、空気極を、LnExCoyFe(1-y-x)3(Lnはランタンまたはネオジム、Eは銅またはニッケル、0.3<x<0.6,0.1<y<0.3,かつx+y≦0.9)より構成したので、他の材料と空気極との熱膨張係数の差を小さくできる状態で、より電極活性が高くできるようになるという優れた効果が得られる。
本発明の実施の形態における固体酸化物形燃料電池の一部構成を模式的に示す断面図である。 試料セルの構成を示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1における固体酸化物形燃料電池の一部構成例を模式的に示す断面図である。この固体酸化物燃料電池は、ジルコニア系の材料から構成された電解質101と、電解質101の一方の面に形成された燃料極102とを備える。また、本実施の形態の固体酸化物形燃料電池は、電解質101の他方に形成され、ランタン(La)またはネオジム(Nd),遷移金属,コバルト,および鉄(Fe)を備えるペロブスカイト型構造の金属酸化物(ペロブスカイト型酸化物)から構成された空気極103を備える。上記遷移金属は、銅(Cu)またはニッケル(Ni)である。ここで、このペロブスカイト型酸化物は、LnExCoyFe(1-y-x)3(LnはLaまたはNd、EはCuまたはNi)で示され、0.3≦x≦0.6,0.1≦y≦0.3,かつx+y≦0.9の範囲とされたものである。
例えば、空気極103は、LaExCoyFe(1-y-x)3で示されるペロブスカイト型酸化物の焼成体(多孔質焼結体)から構成されている。なお、LaExCoyFe(1-y-x)3における酸素は、化学量論組成から多少ずれた値の範囲も含むものである。このような、空気極103は、上記ペロブスカイト型酸化物からなる所定の粒径の粉末を有する多孔質焼結体から形成されていればよい。
なお、電解質101は、例えば、酸化スカンジウム(Sc23)および酸化アルミニウム(Al23)安定化ZrO2(SASZ),イットリア安定化ジルコニア(YSZ),スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ),サマリア安定化ジルコニア(SSZ)などのジルコニア材料の粉体の焼結体から構成されていればよい。また、燃料極102は、例えば、Ni−イットリア安定化ジルコニアサーメット(Ni−YSZ),Ni−アルミナ添加スカンジア安定化ジルコニア(Ni−SASZ)などの、電解質101を構成する酸化物材料に金属Niが混合された電子伝導性を有する金属−酸化物混合体(サーメット)の粉体の焼成体(多孔質焼結体)から構成されていればよい。
また、これらの各層は、よく知られているように、粉体もしくは混合粉体のスラリを作製し、ドクターブレード法による成形やスクリーン印刷法による塗布で、スラリの膜(層)を形成し、これを1000〜1200℃で焼成することで作製することができる。
このように構成した本実施の形態の固体酸化物形燃料電池によれば、LaもしくはNd,NiもしくはCu,Co,およびFeよりなるペロブスカイト型酸化物(LnExCoyFe(1-y-x)3;Ln=LaorNd,E=CuorはNi,0.3≦x≦0.6,0.1≦y≦0.3,x+y≦0.9)で空気極103を構成したので、LSCFなどの一般に用いられている空気極材料およびその組成範囲に比較し、電解質材料に近い熱膨張係数が得られるようになる。この結果、本実施の形態によれば、空気極と電解質の活性点においてより均一に電流を供給できるように、空気極の厚さを100μmよりも厚くしても剥離やクラックの生じない空気極を形成することが可能となる。
なお、上述した実施の形態では、固体酸化物形燃料電池の基本的な構成(単セル)を説明している。実際には、よく知られているように、複数の単セルがインターコネクタを介して積層された状態で用いられ、各単セルにおいて、都市ガスなどの炭化水素ガスを改質して得られた水素を含む燃料ガスが燃料極102の側に供給され、酸化剤ガスとしての酸素を含む空気が空気極103の側に供給されることで、発電動作が行われる。
次に、実際に作製した固体酸化物形燃料電池の単セルにおける特性測定結果について説明する。
[熱膨張係数]
始めに、上述した本実施の形態における空気極の熱膨張係数について説明する。
[熱膨張係数測定について]
熱膨張係数の特性測定では、まず、室温から1050℃までの空気雰囲気下における線熱膨張を測定し、この測定結果より熱膨張係数を求める。なお熱膨張係数は、一般に室温から1000℃の間の変位が使用される。熱膨張係数の測定は、例えばブルカー・AX社の熱膨張計DIL(Dilatometer)を用い、緻密な焼結体のサンプルを用いて線熱膨張測定を行って算出した。
[試料の作製]
比較試料となるLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83粉末(LSCF)を用いたペレット(比較試料#1-0-0)を例に取り、ペレットの作製について説明する。平均粒径が1.0μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83粉末にPVB(ポリビニルブチラール)が固溶したバインダ溶液を滴化し、混合処理をし、これを乾燥した後で再粉末化処理を行う。このようにして再粉末化した試料原料を、治具に詰め、油圧プレス機により10.787315×106Pa(110kgf/cm2)の圧力をかけて圧縮成型する。
次に、圧縮成型した試料ペレットを酸素雰囲気下で1400℃・24時間から1000℃・48時間の条件下で焼成し、測定対象の比較試料とする。得られた比較試料は、2mm×2mm×20mmの直方体形状である。なお、試料についても、原料として、以下の表1に示すようにLaNixCoyFe(1-y-x)3の粉末(#1-1-1〜#1-1-5)を用い、この他は上述した比較試料と同様に作製する。表1には、LaNixCoyFe(1-y-x)3のNi,Co,Feの組成を変化させ、各試料(#1-1-1〜#1-1-5)としている。
Figure 0005368139
[結果]
表1に示す各試料について、前述した熱膨張係数測定を行うと、Co添加量の増加に伴い、熱望晶係数が増加していることがわかる。ただし、いずれの試料(#1-1-1〜#1-1-5)も、比較試料(#1-0-0)に比較して低い熱膨張係数となっている。ここで、一般的に使用される電解質材料であるジルコニア系電解質のTECは、10.0×10-6(1/K)程度である。また、セリア系電解質のTECは、12.0×10-6(1/K)程度である。従って、上述した試料(#1-1-1〜#1-1-5)の熱膨張係数は、LSCFよりも電解質に近いものとなっている。
[セルの損傷]
上述では、空気極材料自体の熱膨張係数を測定したが、以下では、電解質に対する空気極特性として、これらを一体に作製したときの剥がれやクラックの有無などの損傷について評価する。
[損傷の評価方法]
作製する空気極の厚みを変化させて電解質の上に形成した複数のハーフセルを作製し、各厚み条件における電解質からの空気極の剥離・クラックの有無を確認する。
[試料セルの作製]
比較試料となる固体酸化物形燃料電池ハーフセル (比較試料セル#2-0-0)を例に取り、試料セル(ハーフセル)の作製について説明する。SASZからなる50×50mmの平板型の電解質基板を用意する。厚さ1.0mmに成型した電解質基板のを用いる。次に、平均粒径が1.0μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83粉末のスラリを作製し、このスラリを上述した電解質基板上にスクリーン印刷法により塗布し、空気極塗布膜を形成する。焼成後に形成される空気極の厚みが100μm,150μm,および200μmの3条件となるようにスラリの厚みを変化させた試料を1100℃・2時間の熱処理条件で焼成する。なお、昇・降温速度は、毎時200℃とする。
なお、試料セルについても、空気極原料として、以下の表2に示すように(LaorNd)(NiorCu)xCoyFe(1-y-x)3の粉末(#2-1-1〜#2-1-7)を用い、この他は上述した比較試料セルと同様に作製する。表2には、(LaorNd)(NiorCu)xCoyFe(1-y-x)3の(NiorCu),Co,Feの組成を変化させ、各試料セル(#2-1-1〜#2-1-7)としている。
Figure 0005368139
[結果]
表2に示す各試料セルに対して前述した評価を行うと、試料セル(#2-1-1〜#2-1-6)は、いずれも空気極の厚みが従来の100μmを超えて150μmになっても剥離もクラックも確認されない。なお、目視により剥離やクラックを確認し、これら確認されない場合を「○」とし、確認される場合を「×」として表2に示している。また、試料セル(#2-1-1〜#2-1-5)についtは、空気極の厚みが200μmになっても剥離もクラックも確認されない。
以上の結果から、LnExCoyFe(1-y-x)3(LnはLaまたはNd、Eは銅またはニッケル)の構成において、「0.3≦x≦0.6,0.1≦y≦0.3,x+y≦0.9」の組成範囲であれば、空気極の熱膨張係数を電解質の熱膨張係数に近い値にできることがわかる。これは、これらの組成範囲であれば、空気極の厚さを従来の100μmを超えて150μmまでは剥離もクラックも生じないことから明らかである。さらには、組成範囲が「0.4≦x≦0.6,0.1≦y≦0.3,0.6≦x+y≦0.9」であれば、さらに空気極の厚さを厚くして200μmとしても、剥離もクラックも生じないことが確認された。
[単セルの電気的特性]
次に、本実施の形態における空気極材料を用いた場合の、単セルの電気的特性について説明する。以下では、電極性能の指標である界面抵抗について測定した結果を示す。
[界面抵抗測定方法]
この測定では、後述するように各々作製した試料セルにおいて、電極性能の指標である界面抵抗を交流インピーダンス法で測定する。測定時は、開放電圧の条件で行い、空気極と燃料極との間に5mV程度の交流電圧が印加されるように微小な交流信号(電流)を印加(流)し、これに対して空気極と参照極との間に現れる微小な電位変化(応答)をインピーダンス測定器で測定し、この測定結果(周波数応答性)よりインピーダンス(界面抵抗)を求める。また、この測定は、作製した試料セルにおいて、電流値を一定(0.3A/cm2)として100時間の通電を行った後に行う。なお、測定において、燃料極には室温(23℃程度)とした加湿水素ガスを燃料ガスとして供給し、空気極には酸素を供給する。また、開放起電力としては、800℃で1.09V以上の値が得られる。
[セルの作製]
次に、比較試料となる固体酸化物形燃料電池セル(比較試料セル:#3-0-0)を例にとり、単セルの作製について説明する。まず、よく知られたドクターブレード法でシート状に成形して焼成したSc23,Al23添加ジルコニア(0.89ZrO2−0.10Sc23−0.01Al23:SASZ)からなる電解質基板を用意する。電解質基板は、厚さ0.2mmに形成する。次に、平均粒径が約0.6μmのSASZの粉末(40wt%)に平均粒径が0.2μmのNiO粉末(60wt%)を混合した混合粉末(燃料極材料粉末)のスラリを作製し、このスラリを上述した電解質基板の一方の面に、よく知られたスクリーン印刷法により塗布して燃料極塗布膜を形成する。加えて、この燃料極塗布膜の上に白金のメッシュよりなる集電体を配置し、これらを、1300℃・8時間の熱処理条件で、空気中で焼成し、上記混合粉末の焼結体からなる厚さ60μmの燃料極が形成された状態とする。
次に、平均粒径が1.0μmのLa0.8Sr0.2MnO3(LSM)粉末のスラリを作製し、このスラリを、上述した電解質基板の他方の面にスクリーン印刷法により塗布して空気極塗布膜を形成する。加えて、この空気極塗布膜の上に白金のメッシュよりなる集電体を配置し、これら空気極塗布膜が形成された電解質基板を、1100℃・2時間の熱処理条件で焼成し、上記粉末の焼結体からなる厚さ60μmの空気極が形成された状態とする。
また、上述した比較試料セル(#3-0-0)に加え、次に示す2つの比較試料セルを作製する。まず、LSMに代えてLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83(LSCF)を用いて空気極を作製して比較試料セル(#3-0-1)とする。また、LSMに代えてLaNi0.6Fe0.43(LNF)を用いて空気極を作製して比較試料セル(#3-0-2)とする。
このようにして形成した単セルは、図2の斜視図に示すように、1辺30mmの正方形の板状に形成された電解質基板201の上に、直径10mmの円盤に形成された空気極202が配置されている。なお、図2において、電解質基板201の下に配置される燃料極および集電体は、図示せずに省略している。また、この単セルは、電解質基板201の周辺部に白金からなる参照極203を備え、これに接続した状態で前述した測定を行う。
次に、試料セル(#3-1-0〜#3-1-9,#3-2-0〜#3-2-9)の作製について説明する。これらの試料セルは、上述した比較試料セルの空気極に用いたLSMの代わりに、以下の表3に示すように、LaNixCoyFe(1-y-x)3の粉末(#3-1-0〜#3-1-9)およびLaCuxCoyFe(1-y-x)3の粉末(#3-2-0〜#3-2-9)を用い、この他は比較試料セルと同様に作製する。なお、表3には、LaNixCoyFe(1-y-x)3においては、Ni,Co,Feの組成を変化させ、各試料セル(#3-1-0〜#3-1-9)としている。同様に、LaCuxCoyFe(1-y-x)3においては、Cu,Co,Feの組成を変化させ、各試料セル(#3-2-0〜#3-2-9)としている。
Figure 0005368139
表3に示す各試料セルにおいて前述した界面抵抗測定を行うと、比較試料セル(#3-0-0〜#3-0-2)に比較し、試料セル(#3-1-0〜#3-1-9)および試料セル(#3-2-0〜#3-2-9)のいずれも、界面抵抗が低く良好な結果が得られている。なお、表3に示す試料セルにおいては、空気極の材料としてのLaExCoyFe(1-y-x)3(EはCuまたはNi)において、0.25≦x≦0.7,0.05≦y≦0.5の範囲となっている。なお、表3では、x+y≦0.9の範囲となっている。従って、これらの範囲となっていれば、表3に示した結果と同様の結果が得られるものと考えられる。
以上に説明したように、本発明によれば、空気極を、LnExCoyFe(1-y-x)3(LnはLaまたはNd、Eは銅またはニッケル、0.3≦x≦0.6,0.1≦y≦0.3,x+y≦0.9)からなるペロブスカイト型構造の金属酸化物から構成されているようにしたので、空気極の熱膨張係数を電解質のそれとほぼ同等とすることができる。この結果、空気極の厚さを従来の100μmよりも厚くしても、剥離やクラックの生じない空気極を形成することが可能となる。このように、本発明は、高い信頼性および高い効率を必要とする固体酸化物形燃料電池に好適である。
101…電解質、102…燃料極、103…空気極。

Claims (2)

  1. 燃料極,電解質,及び空気極を備える固体酸化物形燃料電池において、
    前記空気極は、NdCu 0.6 Co 0.2 Fe 0.2 3 からなるペロブスカイト型構造の金属酸化物から構成されたものである
    ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
  2. 請求項1記載の固体酸化物形燃料電池において、
    前記電解質は、酸化スカンジウム、酸化アルミニウム安定化ZrO2,イットリア安定化ジルコニア,スカンジア安定化ジルコニア,サマリア安定化ジルコニアの中から選ばれた粉体の焼結体から構成されたものである
    ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池。
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