JP4579527B2 - 燃料電池セル、燃料電池及び燃料電池セルの製法 - Google Patents

燃料電池セル、燃料電池及び燃料電池セルの製法 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池セル及び該燃料電池セルを組み立てて得られる燃料電池、ならびに燃料電池セルの製法に関するものである。
次世代エネルギーとして、近年、燃料電池セルのスタックを収納容器内に収容した燃料電池が種々提案されている。
図4は、従来の固体電解質形燃料電池のセルスタックを示すもので、このセルスタックは、複数の燃料電池セル1を整列集合させ、隣り合う一方の燃料電池セル1aと他方の燃料電池セル1bとの間に、金属フェルトからなる集電部材2を介在させ、一方の燃料電池セル1aの燃料極3と他方の燃料電池セル1bの酸素極(空気極)5とを電気的に接続して構成されていた。
燃料電池セル1(1a、1b)は、円筒状のサーメットからなる燃料極3(内部が燃料ガス通路となる)の外周面に、固体電解質4、導電性セラミックスからなる酸素極5を順次設けて構成されており、固体電解質4や酸素極5によって覆われていない燃料極3の表面には、インターコネクタ6が設けられている。図3から明らかなように、このインターコネクタ6は、酸素極5に接続しないように燃料極3と電気的に接続されている。また、燃料極3と固体電解質4との間には、必要により、反応防止層7が設けられている。
インターコネクタ6は、燃料ガス及び空気等の酸素含有ガスで変質しにくい導電性セラミックスにより形成されているが、この導電性セラミックスは、燃料極3の内部を流れる燃料ガスと酸素極5の外側を流れる酸素含有ガスとを確実に遮断するために、緻密なものでなければならない。
また、互いに隣り合う燃料電池セル1a,1bの間に設けられる集電部材2は、インターコネクタ6を介して一方の燃料電池セル1aの燃料極3に電気的に接続され、且つ他方の燃料電池セル1bの酸素極5に直接接続されており、これにより、隣り合う燃料電池セルは、直列に接続されている。
燃料電池は、上記の構造を有するセルスタックを収納容器内に収容して構成され、燃料極3の内部に燃料ガス(水素)を流し、酸素極5に空気(酸素)を流して600〜1000℃で発電される。
このような燃料電池を構成する燃料電池セルにおいては、一般に、燃料極3が、Niと、Yを含有するZrO(YSZ)とから形成され、固体電解質4がYを含有するZrO(YSZ)から形成され、酸素極5はランタンマンガネート系のペロブスカイト型複合酸化物から構成されている。
一般に、固体電解質形燃料電池に用いる固体電解質としては、ジルコニア(ZrO)にイットリア(Y)を加えた部分安定化ジルコニア(YSZ)が使用されているが、YSZは高いイオン伝導性を得るためには、900〜1050℃と作動温度を高くする必要がある。つまり、この部分安定化ジルコニアは、温度が低くなると酸素イオン伝導性が急激に低下するという問題がある。
そこで、近年では、安定化ジルコニアよりも高い酸素イオン伝導性が得られる物質として、ランタンガリウムペロブスカイト型複合酸化物(La1−xSr)(Ga1−yMg)O(以下LSGMと略すことがある)が注目されており、多くの研究が行われている。
このLSGM焼結体は、低温でも酸素イオン伝導性の低下が少ない物質で、LaやGaの一部が、置換固溶により、低原子価のSrやMg等に置き代わったものであり、これにより、焼結体の酸素イオン伝導性が大きくなるという性質を有する。この材料は安定性に優れ、現在では最も優れた酸化物イオン伝導体と考えられている。
しかしながら、LSGMは反応性が高く、これを固体電解質として燃料電池セルを作製すると、電極構成成分と固体電解質の構成成分(特にLa)とが固相内相互拡散し、その結果、電極と固体電解質との界面に絶縁抵抗の高い絶縁層が生成され、分極値およびセルの実抵抗値が高くなり、燃料電池セルの初期における出力密度が低くなるという問題があった。
即ち、LSGMからなる固体電解質成形体に、例えばNi、ZrOを含有する燃料極を焼き付けると、燃料極の構成成分であるNi、Zrと、固体電解質の構成成分であるLaとが固相内相互拡散し、燃料極と固体電解質との界面に、絶縁抵抗の高いLaNiO、LaNiO、LaZr等からなる絶縁層が生成され、分極値が高くなってしまうのである。また、固体電解質では、構成成分であるLaが減少したことにより、SrLaGa等の絶縁体が固体電解質中に形成され、セルの実抵抗値が高くなる。
上記のような燃料極の構成成分であるNiと、固体電解質の構成成分であるLaとが固相内相互拡散することにより生じる問題を解決するために、例えば図4に示すような構造の燃料電池セルにおいて、固体電解質4と燃料極3との間に反応防止層7を形成することが考えられている(非特許文献1参照)。
しかしながら、セルの製造時の歩留まり向上、コスト低減を達成するため、燃料極3、反応防止層7及び固体電解質4を同時焼成すると、燃料極3、固体電解質4或いは反応防止層7にクラックが発生したり、固体電解質4が支持体である燃料極3から剥離するという問題があった。即ち、固体電解質4を支持している燃料極3の熱膨張係数が、固体電解質4および反応防止層7の熱膨張係数に比して大きい。このため、同時焼成に際して、固体電解質4とこれを支持している燃料極3との熱膨張差が大きく、この結果、燃料極3、固体電解質4或いは反応防止層7でのクラックの発生や、燃料極3から固体電解質4の剥離という問題を生じているわけである。
上記のような問題を解決するために、熱膨張係数の低いムライト(3Al・2SiO)やスピネル(MgAl、CaAl)をNiと組み合わせて燃料極3を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
上記提案によれば、燃料極3の熱膨張係数を固体電解質4の熱膨張係数に近づけることができるため、同時焼成に際しての固体電解質4や燃料極3でのクラックの発生や、燃料極3からの固体電解質4の剥離を抑制できると記載されている。
J.Electorochem.Soc.148.A788.2001 特開平7−29574号公報
しかしながら、特許文献1記載の燃料電池セルでは、同時焼成時に、燃料極3中のMg、Al、Si等の成分が反応防止層7に拡散して絶縁層を生成してしまい、やはりセルの実抵抗値が高くなり、燃料電池セルの発電性能を低くするという新たな問題を生じているのが現状である。
従って本発明の目的は、LSGM系複合酸化物からなる固体電解質を用いた燃料電池セルにおいて、同時焼成に際しての燃料極でのクラック発生、固体電解質の剥離が有効に抑制されるばかりか、固体電解質への元素拡散によるイオン伝導度の低下などの性能低下も抑制され、共焼結法により安価に製造することが可能な燃料電池セル及びその製造法を提供することにある。
本発明によれば、
燃料ガス通路が内部に形成されたガス透過性で且つ導電性の支持基板;
支持基板上に形成された燃料極層;
燃料極層上に形成され、Laが固溶したCeO 、Ceが固溶したLa 、あるいはそれらの混合体からなる反応防止層;
該記反応防止層を覆うように前記支持基板上に形成され、且つ少なくともLaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物からなる固体電解質層;及び
前記燃料極層と対面するように前記固体電解質層上に設けられた酸素極層;
とからなり、
前記支持基板は、鉄族金属もしくはその酸化物と、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選択された少なくとも1種の希土類元素酸化物とから形成されていることを特徴とする燃料電池セルが提供される。
本発明によれば、また、上記燃料電池セルの複数が集電部材を介して互いに直列に接続された構造を有するセルスタックを、収納容器内に収容してなることを特徴とする燃料電池が提供される。
本発明によれば、さらに、
鉄族金属粉末及び/又は鉄族金属の酸化物と、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選択された少なくとも1種の希土類元素酸化物とからなり、且つ内部に燃料ガス通路を備えた支持基板成形体と、燃料極成形体と、Laが固溶したCeO 、Ceが固溶したLa 、あるいはそれらの混合体からなる反応防止層成形体と、少なくともLaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物を含有する固体電解質層成形体とを、この順に重ね合わせて積層体を作製し、該積層体を同時焼成し、得られた焼結体の固体電解質層上に、燃料極層と対面するように酸素極層成形用ペーストを塗布し、焼き付けることを特徴とする燃料電池セルの製法が提供される。
即ち、本発明の燃料電池セルでは、セルを構成する支持基板が、NiやNiO等の鉄族金属乃至酸化物と、特定の希土類元素の酸化物から構成されているため、同時焼成によって生じる種々の不都合を有効に回避することが可能となる。
例えば、支持基板中の特定の希土類元素の酸化物は、焼成時や発電中において、鉄族金属やその酸化物との固溶、反応をほとんど生じない。また特定の希土類元素の酸化物は、拡散しにくい。従って、支持基板と固体電解質層とを同時焼成した場合にも、希土類元素の固体電解質層への拡散が有効に抑制され、固体電解質層のイオン伝導度等への悪影響を回避することができ、固体電解質層への元素拡散によるイオン伝導度の低下などの性能低下を抑制することが可能となるものである。さらに、このような特定の希土類元素の酸化物を支持基板中に含有させることにより、支持基板の熱膨張係数を、固体電解質層を形成するペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物の熱膨張係数に近似させることが可能となり、同時焼成時や発電時での熱膨張差によるクラックの発生、固体電解質層の支持基板からの剥離を有効に防止することができる。
本発明において、前記希土類元素の酸化物は、前記支持基板中に35〜65体積%の量で含有されていることが好ましく、これにより、上記の効果を有効に発現させることができる。
また、前記支持基板中の前記希土類元素の酸化物としては、安価であり、入手が容易であるという点で、Y及び/又はYbであることが好適である。
さらに、本発明においては、支持基板上の燃料極層は、電極反応を有効に生じさせ、且つセルの分極値を低下させるために、NiまたはNiOと、希土類元素が固溶したCeOとを含有していることが好ましい。
また、前記反応防止層は、Laが固溶したCeO、Ceが固溶したLa、あるいはそれらの混合体からなり、このような反応防止層を、燃料極層と固体電解質との間に形成することにより、元素拡散による固体電解質層界面での絶縁層の形成を有効に抑制し、また、反応防止層の熱膨張係数を固体電解質層や燃料極層などの熱膨張係数に近似させることができ、クラックの発生や剥離を有効に回避することができる。このような反応防止層の効果を有効に確保するために、この反応防止層は、Ce,La及びOの3元素基準で、下記式:
(CeO1−x(LaO1.5
式中、xは、0.1≦x≦0.6の数である、
で表される組成を有していることが好適である。
前記固体電解質層を形成するペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物は、下記式:
(La1−xSr)(Ga1−yMg)O
式中、xは、0<x<0.3の数であり、
yは、0<y<0.3の数である、
で表される組成を有していることが望ましい。このような組成の複合酸化物を固体電解質として使用することにより、高い発電性能を発揮させることができる。
さらに、本発明の燃料電池セルでは、前記酸素極層は、前記燃料極層、前記反応防止層及び前記固体電解質層を介して前記支持基板の一方側の面上に位置しており、該支持基板の他方側の面上には、インターコネクタが設けられており、前記反応防止層及び前記固体電解質層は、前記インターコネクタの両端部分にまで回り込んでいることが好ましい。即ち、酸素極層と燃料極層とを、固体電解質層を間に挟んで対峙させることにより、所定の電極反応によって発電させることができ、また、発生した電流は、支持基板上の他方側の面に設けられたインターコネクタによって集電される。この場合、固体電解質層とともに反応防止層をインターコネクタの両端部分まで回り込ませることにより、支持基板内部を流れる燃料ガスと酸素極層の外側を流れる酸素含有ガスとのリークを防止すると同時に、例えば支持基板中の希土類元素等の固体電解質層中への元素拡散を確実に抑制し、元素拡散による絶縁層の形成等による性能低下を防止することができる。
また、前記酸素極層は、ペロブスカイト型酸化物からなる多孔質導電性セラミックから形成されていることが好ましく、特にペロブスカイト型酸化物が、AサイトにLaを有するものであることが好適である。このようなペロブスカイト型酸化物は、高温での電気伝導性が高く、高い発電効率を確保する上で好適である。
上述した本発明の燃料電池セルは、元素拡散による絶縁層の形成等に起因する性能低下(セルの実抵抗値の増大)を抑制し、且つ熱膨張差によるクラックの発生や剥離が有効に抑制されているため、同時焼成法による製造が可能であり、高い生産効率で製造できるという利点を有するものである。
本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の燃料電池セルの横断面図であり、
図2は、図1の燃料電池セルの部分断面斜視図であり、
図3は、図1の燃料電池セルを用いて形成されたセルスタックを示す横断面図である。
図1及び図2を参照して、全体として30で示す本発明の燃料電池セルは、断面が扁平状で、全体的に見て楕円柱状の支持基板31を備えている。支持基板31の内部には、適当な間隔で複数の燃料ガス通路31aが形成されており、燃料電池セル30は、この支持基板31上に各種の部材が設けられた構造を有している。このような燃料電池セル30の複数を、図3に示すように、集電部材40により互いに直列に接続することにより、燃料電池を構成するセルスタックを形成することができる。
支持基板31は、図1に示されている形状から理解されるように、平坦部Aと平坦部Aの両端の弧状部Bとからなっている。平坦部Aの両面は互いにほぼ平行に形成されており、平坦部Aの一方の面上に、燃料極層32が設けられており、この燃料極層32を覆うように反応防止層33が設けられ、さらに、この反応防止層33を覆うように、緻密質な固体電解質層34が積層されており、これら反応防止層33及び固体電解質層34は、両側の弧状部Bを覆うように設けられている。また、この固体電解質層34の上には、燃料極層32と対面するように、平坦部Aの一方の表面に酸素極層35が積層されている。また、燃料極層32が積層されていない平坦部Aの他方の表面には、インターコネクタ37が形成されている。図1から明らかな通り、反応防止層33及び固体電解質層34は、インターコネクタ37の両サイドにまで延びており、支持基板31の表面が外部に露出しないように構成されている。
上記のような構造の燃料電池セルでは、酸素極層35と対面している燃料極層32が燃料極として作動して発電する。即ち、酸素極層35の外側に空気等の酸素含有ガスを流し、且つ支持基板31内のガス通路に燃料ガス(水素)を流し、所定の作動温度まで加熱することにより、酸素極層35及び燃料極層32で下記式で表される電極反応を生じることによって発電する。
酸素極層: 1/2O+2e → O2−(固体電解質)
燃料極層: O2−(固体電解質)+ H → HO+2e
かかる発電によって生成した電流は、支持基板31に取り付けられているインターコネクタ37を介して集電される。
上記のような構造を有する本発明の燃料電池セル30において、支持基板31は、燃料ガスを燃料極まで透過させるためにガス透過性であること、及びインターコネクタ37を介しての集電を行うために導電性であることが要求されるが、このような要求を満たすと同時に、同時焼成により生じる不都合を回避するために、鉄属金属成分と特定の希土類酸化物とから支持基板31を構成する。
鉄族金属成分は、支持基板31に導電性を付与するためのものであり、鉄族金属単体であってもよいし、また鉄族金属酸化物、鉄族金属の合金もしくは合金酸化物であってもよい。鉄族金属には、鉄、ニッケル及びコバルトがあり、本発明では、何れをも使用することができるが、安価であること及び燃料ガス中で安定であることからNi及び/またはNiOを鉄族成分として含有していることが好ましい。
また希土類酸化物成分は、支持基板31の熱膨張係数を、固体電解質層34を形成しているランタンガレート系複合酸化物と近似させるために使用されるものであり、高い導電率を維持し且つ反応防止層33および固体電解質層34等への元素拡散を防止するために、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選ばれた少なくとも1種の希土類元素を含む希土類酸化物が、上記鉄族成分と組合せで使用される。このような希土類酸化物の具体例としては、Y、Lu、Yb、Tm、Er、Ho、Dy、Gd、Sm、Prを例示することができ、特に安価であるという点で、Y、Ybが好適である。
これらの希土類酸化物は、焼成時や発電中において、鉄族金属やその酸化物との固溶、反応をほとんど生じることがなく、しかも、上記希土類酸化物は、拡散しにくい。従って、支持基板31と固体電解質層34とが同時焼成された場合においても、希土類元素の固体電解質層34への拡散が有効に抑制され、固体電解質層34のイオン伝導度等への悪影響を回避することができる。
また、この希土類酸化物は、後述する燃料極層32や反応防止層33の形成に使用される希土類元素が固溶したCeOの熱膨張係数(10.5〜14×10−6/℃)よりも遥かに小さい。例えばY、Ybは、熱膨張係数が約8.14×10−6/℃である。従って、Y、Ybなどの希土類酸化物の含有比率を制御することにより、支持基板31の熱膨張係数を、固体電解質層34を形成するペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物の熱膨張係数(11.0〜11.7×10−6/℃)に近づけることができ、熱膨張差に起因するクラックの発生や剥離を有効に抑制することが可能となる。
本発明においては、特に支持基板31の熱膨張係数を固体電解質層34(ランタンガレート系複合酸化物)と近似させるという点で、上記の鉄族成分は、支持基板31中に65〜35体積%の量で含まれ、上記の希土類酸化物は、支持基板31中に35〜65体積%の量で含まれていることが好適である。尚、支持基板31中には、要求される特性が損なわれない限りの範囲で他の金属成分や酸化物成分を含有していてもよい。
上記のような鉄族金属成分と希土類酸化物とから構成される支持基板31は、燃料ガス透過性を有していることが必要であるため、通常、開気孔率が30%以上、特に35乃至50%の範囲にあることが好適である。また、支持基板31の導電率は、300S/cm以上、特に440S/cm以上であることが好ましい。
また、支持基板31の平坦部Aの長さは、通常、15〜35mm、弧状部Bの長さ(弧の長さ)は、3〜8mm程度であり、支持基板31の厚みは(平坦部Aの両面の間隔)は2.5〜5mm程度であることが望ましい。
(燃料極層32)
本発明において、燃料極層32は、電極反応を生じせしめるものであり、多孔質の導電性セラミックスから形成される。例えば、希土類元素が固溶しているCeOと、Ni及び/またはNiOとから形成される。
燃料極層32中の希土類元素が固溶しているCeO含量は、35乃至65体積%の範囲にあるのが好ましく、またNi或いはNiO含量は、65乃至35体積%であるのがよい。さらに、この燃料極層32の開気孔率は、15%以上、特に20乃至40%の範囲にあるのがよく、その厚みは、1〜30μmであることが望ましい。例えば、燃料極層32の厚みがあまり薄いと、性能が低下するおそれがあり、またあまり厚いと、固体電解質層34と燃料極層32との間で熱膨張差による剥離等を生じるおそれがある。
また、CeO中に固溶している希土類元素としては、支持基板31で使用する希土類酸化物に関して示したものと同様のものを例示することができるが、セルの分極値を低くするという点で、Sm及びYであることが好ましく、その固溶量は、CeO当り5乃至40モル%、特に10〜30モル%程度(SmO1.5或いはYO1.5換算)であるのがよい。
さらに、この燃料極層32は、少なくとも酸素極層35に対面する位置に存在していればよい。従って、図1及び図2の例では、支持基板31の一方側の平坦部Aにのみ燃料極層32が設けられているが、この燃料極層32は、反応防止層33や固体電解質層34と共に、インターコネクタ37の両サイドにまで延びていてもよいし、さらには、支持基板31の全周にわたって燃料極層32を形成することも可能である。
(反応防止層33)
燃料極層32上に設けられている反応防止層33は、固体電解質層34への元素拡散を防止し、絶縁層形成による性能低下を回避するためのものであり、Laが固溶したCeO、又はCeが固溶したLa、あるいはそれらの混合体から形成される。さらに、元素拡散を遮断または抑制する効果を高めるために、他の希土類元素の酸化物が反応防止層33中に含有されていてもよい。この希土類元素としては、Sc,Y,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luを例示することができる。
このような反応防止層は、Ce,La及びOの3元素基準で、下記式:
(CeO1−x(LaO1.5
式中、xは、0.1≦x≦0.6、特に0.2≦x≦0.5の数である、
で表される組成を有していることが好適である。即ち、上記組成式において、xが0.1≦x≦0.6を満足することにより、燃料極層32から固体電解質34に拡散しようとするNiを遮断または抑制する効果を高くできる。例えば、xが0.1より小さいと反応防止層33中のLa量が少ないため、Laの拡散を遮断する効果が低下し、xが0.6より大きいと反応防止層33中のLaが電極に拡散してしまい、絶縁層形成抑制効果が低下するおそれがある。本発明では、特にxが0.2≦x≦0.5を満足することにより、反応防止層33の熱膨脹係数を他のセル構成部材である燃料極層32や酸素極層35、及び固体電解質層34の値に近づけることができため、熱膨張差に起因するクラックの発生や剥離を抑制することができる。
本発明においては、このような反応防止層33を形成することにより、支持基板31と固体電解質層34とを同時焼成した場合にも、固体電解質層34への元素拡散が有効に抑制され、固体電解質層34のイオン伝導度等への悪影響を回避することができるわけである。また、希土類元素が仮に同時焼成時に拡散したとしても、反応防止層33は、希土類元素酸化物が固溶したCeOから構成されているため、反応防止層33を通過して固体電解質層34への拡散の影響は最小限に抑制できることとなる。
尚、このような反応防止層33は、図1及び図2に示されているように、固体電解質層34と共に、インターコネクタ37の両端部まで延びていることが好ましい。これにより、支持基板31から固体電解質層34への元素拡散を確実に防止することができるからである。また、反応防止層33が、支持基板31の全周を取り巻くように形成することもできる。このような場合には、インターコネクタ37は、反応防止層33を介して支持基板31上に設けられることとなり、インターコネクタ37への元素拡散による性能低下(集電機能の低下)も有効に回避することができる。
(固体電解質層34)
この固体電解質層34は、少なくともLaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物から形成されている。この複合酸化物は、安定化ジルコニアに比して高い酸素イオン伝導性を有するものであり、これを固体電解質として使用することにより、高い発電効率を得ることができる。
本発明において、この固体電解質層34は、ガス透過を防止するという点から、相対密度(アルキメデス法による)が93%以上、特に97%以上の緻密質であることが望ましく、且つその厚みが5乃至50μmの範囲にあることが好ましい。また、この固体電解質層34は、ガスのリークを防止するために、燃料極層32を完全に覆うように設けられると共に、インターコネクタ37の両端部まで延びていることが好ましい。
また、固体電解質層34を構成する上記のランタンガレート系複合酸化物は、AサイトにLaおよびSr、BサイトにGaおよびMgを有するものであり、下記式:
(La1−xSr)(Ga1−yMg)O
式中、xは、0<x<0.3の数であり、
yは、0<y<0.3の数である、
で表される組成を有していることが望ましい。このような組成の複合酸化物を固体電解質として使用することにより、高い発電性能を発揮させることができる。特に、ペチニ法等の液相法で作製された原料粉末により得られるものでは、不純物量が少なく、合成率が非常に高いため、1200〜1450℃の低温で焼成しても、固体電解質層34を相対密度98%以上の緻密体にすることができる。その結果、セルの実抵抗値が低減でき高い発電性能を発揮することができる。
(酸素極層35)
酸素極層35は、所謂ABO型のペロブスカイト型酸化物からなる導電性セラミックスから形成される。かかるペロブスカイト型酸化物としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物、特にAサイトにLaを有するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物の少なくとも1種が好適であり、600〜1000℃程度の作動温度での電気伝導性が高いという点からLaFeO系酸化物が特に好適である。尚、上記ペロブスカイト型酸化物においては、AサイトにLaと共にSrなどが存在していてもよいし、さらにBサイトには、FeとともにCoやMnが存在していてもよい。
また、酸素極層35は、ガス透過性を有していなければならず、従って、酸素極層35を形成する導電性セラミックス(ペロブスカイト型酸化物)は、開気孔率が20%以上、特に30乃至50%の範囲にあることが望ましい。このような酸素極層35の厚みは、集電性という点から30〜100μmであることが望ましい。
(インターコネクタ)
上記の酸素極層35に対面する位置において、支持基板31上に設けられているインターコネクタ37は、導電性セラミックスからなるが、燃料ガス(水素)及び酸素含有ガスと接触するため、耐還元性、耐酸化性を有していることが必要である。このため、かかる導電性セラミックスとしては、一般に、ランタンクロマイト系のペロブスカイト型酸化物(LaCrO系酸化物)が使用される。また、支持基板31の内部を通る燃料ガス及び支持基板31の外部を通る酸素含有ガスのリークを防止するため、かかる導電性セラミックスは緻密質でなければならず、例えば93%以上、特に95%以上の相対密度を有していることが好適である。
かかるインターコネクタ37は、ガスのリーク防止と電気抵抗という点から、10〜200μmであることが望ましい。即ち、この範囲よりも厚みが薄いと、ガスのリークを生じやすく、またこの範囲よりも厚みが大きいと、電気抵抗が大きく、電位降下により集電機能が低下してしまうおそれがあるからである。
また、このインターコネクタ37は、支持基板31の他方の平坦部A上に直接設けることもできるが、例えば、Ni及び/又はNiOとYなどからなる接合層38を介して支持基板31上に形成することもできる。また、先に述べたように、燃料極層32を支持基板31の全周にわたって設けた場合には、このインターコネクタ37は、燃料極層32を間に挟んで支持基板31上に形成されることとなる。
さらに、インターコネクタ37の外面(上面)には、P型半導体層39を設けることが好ましい。即ち、この燃料電池セルから組み立てられるセルスタック(図3参照)では、インターコネクタ37には、導電性の集電部材40が接続されるが、集電部材40を直接インターコネクタ37に接続すると、非オーム接触により、電位降下が大きくなってしまい、集電性能が低下してしまう。しかるに、集電部材40を、P型半導体層39を介してインターコネクタ37に接続させることにより、両者の接触がオーム接触となり、電位降下を少なくし、集電性能の低下を有効に回避することが可能となり、例えば、一方の燃料電池セル30の酸素極層35からの電流を、他方の燃料電池セル30の支持基板31に効率良く伝達できる。
上記のようなP型半導体としては、遷移金属ペロブスカイト型酸化物を例示することができる。
具体的には、インターコネクタ37を構成するLaCrO系酸化物よりも電子伝導性が大きいもの、例えば、BサイトにMn、Fe、Coなどが存在するLaMnO系酸化物、LaFeO系酸化物、LaCoO系酸化物などの少なくとも一種からなるP型半導体セラミックスを使用することができる。このようなP型半導体層39の厚みは、一般に、30乃至100μmの範囲にあることが好ましい。

(燃料電池セルの製造)
以上のような構造を有する燃料電池セルは、以下のようにして製造される。
先ず、Ni等の鉄族金属或いはその酸化物粉末と、Yなどの希土類酸化物の粉末と、有機バインダーと、溶媒とを混合してスラリーを調製し、このスラリーを用いての押出成形により、支持基板成形用シート(支持基板成形体)を作製し、これを乾燥する。この支持基板成形体を900〜1000℃で仮焼し、支持基板仮焼体を作製する。尚、支持基板成形体は、所定の強度を有するならば、仮焼しないでもよい。
また、所定の調合組成に従い、Ni(或いはNiO)、及び希土類元素が固溶したCeO(例えば、(CeO1−x(Yx/2)の粉末を秤量、混合する。この混合粉末に、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法等によって燃料極成形用シート(燃料極成形体)を作製する。尚、燃料極成形体を作製する代りに、燃料極原料を溶媒中に分散したペーストを、上記で形成された支持基板成形体の所定位置に塗布し乾燥して、燃料極層用のコーティング層を形成することもできる。
さらに、例えば、Laが固溶したCeO粉末を粒度調製した後に、溶媒としてトルエンを添加し、反応防止層用のペーストを作製し、このペーストを、燃料極成形体の表面に塗布して、反応防止層の塗布膜(反応防止層用成形体)を形成する。尚、La粉末とCeO粉末を混合して、反応防止層用のペーストを作製しても良い。また、シート状の反応防止層成形体を作製し、これを燃料極成形体の表面に積層しても良い。
さらに、(La1−xSr)(Ga1−yMg)O(x、yが所定値)のランタンガレート粉末に、トルエン、バインダー、市販の分散剤を加えてスラリー化したものをドクターブレード法等により、例えば、10〜50μmの厚さに成形してシート状の固体電解質成形体を作製する。この固体電解質層用成形体を、反応防止層の塗布膜(反応防止層用成形体)上に積層し、乾燥する。
この後、インターコネクタ用材料(例えば、LaCrO系酸化物粉末)、有機バインダー及び溶媒を混合してスラリーを調製し、インターコネクタ用シートを作製する。
このインターコネクタ用シートを、上記で得られた積層成形体の所定位置にさらに積層し、焼成用積層成形体を作製する。
次いで、上記の焼成用積層成形体を脱バインダー処理し、大気中、1350〜1600℃で同時焼成し、得られた焼結体の所定の位置に、酸素極層材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含有するペースト、及び必要により、P型半導体層材料(例えば、LaFeO系酸化物粉末)と溶媒を含むペーストを、ディッピング等により塗布し、1000〜1300℃で焼き付けることにより、図1及び図2に示す構造の本発明の燃料電池セル30を製造することができる。
尚、支持基板31や燃料極層32の形成にNiを用いた場合には、大気中での焼成により、Niが酸化されてNiOとなっているが、必要により、還元処理することにより、Niに戻すことができる。また、発電中に還元雰囲気に曝されるため、この時にもNiに還元されることになる。
また、例えば、固体電解質層原料粉末の平均粒径が0.1〜0.7μmの微粉末5〜40質量%と平均粒径が1〜2.5μmの粗粉末60〜95質量%の混合粉末を用いて形成すると、1200〜1450℃の低温で焼成でき、このような低温で焼成しても、焼結時に固体電解質を構成する結晶粒子のネック成長がしやすく、相対密度98%以上の緻密体にすることができる。
(セルスタック)
セルスタックは、図3に示すように、上述した燃料電池セル30が複数集合して、上下に隣接する一方の燃料電池セル30と他方の燃料電池セル30との間に、金属フェルト及び/又は金属板からなる集電部材40を介在させ、両者を互いに直列に接続することにより構成されている。即ち、一方の燃料電池セル30の支持基板31は、インターコネクタ37、P型半導体層39、集電部材40を介して、他方の燃料電池セル30の酸素極層35に電気的に接続されている。また、このようなセルスタックは、図3に示すように、隣接して配置されており、隣接するセルスタック同士は、導電部材42によって直列に接続されている。
本発明の燃料電池は、図3のセルスタックを、収納容器内に収容して構成される。この収納容器には、外部から水素等の燃料ガスを燃料電池セル30に導入する導入管、及び空気等の酸素含有ガスを燃料電池セル30の外部空間に導入するための導入管が設けられており、燃料電池セルが所定温度(例えば、600乃至900℃)に加熱されることにより発電し、使用された燃料ガス、酸素含有ガスは、収納容器外に排出される。
尚、本発明は上記形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、支持基板31の形状を円筒状とすることも可能であるし、酸素極層35と固体電解質層34との間に、適当な導電性を有する中間層を形成することも可能である。
本発明を次の実験例で説明する。
(実験例)
平均粒径0.5μmのNiO粉末と、表1に示す希土類酸化物粉末(平均粒径は0.8〜1.0μm)を、焼成後における体積比率が表1になるように混合した(試料No.1〜18)。
また、表2に示す複合希土類酸化物粉末(平均粒径0.8〜1.0μm)と、上記のNiO粉末とを、表2に示す比率になるように混合した(試料No.21〜36)。
尚、表1及び2中のNiO粉末量は、Ni換算量である。例えば、試料No.1ではNiO粉末とY粉末とを混合し、焼成後にNiOは、Ni換算で65体積%となり、Yは35体積%となったことを意味する。
また、表2に示した複合希土類酸化物粉末の組成は、原料粉末中の構成元素のモル比率(実測値)より、安定な酸化物の重量比率に換算し、さらに安定な酸化物の体積比率に換算したものである。
上記の混合粉末に、増孔剤、有機バインダー(ポリビニルアルコール)と、水(溶媒)とを混合して形成した支持基板用スラリーを直方体状に押出成形し、これを乾燥し、脱バインダー処理し、大気中にて1400℃で焼成した。
得られた焼結体を長さ20mmに加工し、大気中及び酸素分圧約10−19Paでの還元雰囲気中において室温〜1000℃での熱膨張係数を測定し、さらに、導電率を酸素分圧約10−19Paでの還元雰囲気中或いは酸素分圧約10−0.7Paでの大気中において1000℃で4端子法にて測定した。その結果を表1および2に記載した。
また、比較例として、平均粒径0.5μmのNiO粉末と、平均粒径が0.4μmのYSZ(Y安定化ジルコニア)粉末との混合粉末(表1の試料No.19)を用い、また、平均粒径0.5μmのNiO粉末と平均粒径0.5μmのスピネル(MgAl)粉末との混合粉末(表1の試料No.20)を用い、それぞれ、増孔剤、有機バインダー(ポリビニルアルコール)と、水(溶媒)とを混合し、上記と同様の条件で焼成し、熱膨張係数及び導電率を測定し、これらの結果を表1に記載した。
Figure 0004579527
Figure 0004579527
また、上記で用いた各試料粉末を用いて、押出成形して、扁平状の支持基板用成形体を作製し、これを乾燥した。
次に、20モル%Yを含有するCeO(YDC)粉末と、NiO粉末と、有機バインダー(アクリル樹脂)と、溶媒(トルエン)とを混合した燃料極層用のペーストを用いて支持基板用成形体上に塗布した。次に、この積層成形体を乾燥させた後、40モル%Laを含有するCeO(LDC)粉末と、有機バインダー(アクリル樹脂)と、溶媒(トルエン)とを混合した反応防止層用のペーストを、燃料極層成形体上に塗布した。
また、(La1−xSr)(Ga1−yMg)O(x=0.1、y=0.2)のランタンガレート粉末と、有機バインダー(アクリル樹脂)と、トルエンからなる溶媒とを混合したスラリーを準備し、ドクターブレード法によって固体電解質層用シートを作製した。
上記固体電解質層用シート表面に反応防止層用のペーストを塗布し、上記積層成形体に積層し、その両端間が所定間隔をおいて離間するように(図1参照)巻き付け、乾燥した。
一方、平均粒径1.5μmのLaCrO系酸化物粉末と、有機バインダー(アクリル樹脂)と、溶媒(トルエン)とを混合したスラリーを準備して、インターコネクタ用シートを作製し、このシートを、上記積層シートにおける支持基板用成形体の露出部分に積層し、焼結用積層成形体を作製した。
次に、この焼結用積層成形体を脱バインダー処理し、大気中にて1420℃で同時焼成した。
得られた焼結体を、平均粒径2μmのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8粉末と、溶媒(ノルマルパラフィン)とからなるペースト中に浸漬し、焼結体に形成されている固体電解質層の表面に酸素極用コーティング層を設け、同時に、上記ペーストをインターコネクタの外面に塗布し、P型半導体用コーティング層を設け、1150℃で焼き付け、図1に示すような燃料電池セルを作製した(試料No.37〜72)。
作製した燃料電池セルにおいて、支持基板の平坦部Aの長さは26mm、弧状部Bの長さは3.5mm、燃料極層の厚みは10μm、反応防止層の厚みは10μm、固体電解質層の厚みは40μm、酸素極層の厚みは50μm、インターコネクタの厚みは50μm、P型半導体層の厚みは50μmとした。
尚、前述した比較例の試料No.19、20に対応する燃料電池セルは、試料No.55,56である。
得られた燃料電池セルの固体電解質層の断面をEPMAにより分析し、支持基板、燃料極層からの拡散元素を確認するとともに、支持基板のガス通路内に水素ガスを流し、更に燃料電池セルの外側(酸素極の外面)に空気を流し、850℃において100時間発電させ、冷却させた後、燃料電池セル内部を加圧して(1kgf/cm)水中に浸し、ガス漏れの有無を観察し、支持基板、固体電解質層のクラックや、支持基板からの固体電解質層、燃料極層の剥離を観察した。
また、850℃において100時間後の、燃料電池セル1本当たりの発電性能を測定し、表3及び表4に記載した。
Figure 0004579527
Figure 0004579527
表1から、原料粉末として、NiO粉末を用いた場合において、適量のY粉末、Yb粉末、Lu粉末、Er粉末、Tm粉末、Gd粉末、Sm粉末、Ho粉末、Dy粉末、Pr粉末を用いて支持基板を作することにより、支持基板の熱膨張係数を、固体電解質の熱膨張係数11.2×10−6に近づけられることが判る。また、Y、Yb量が多くなる程、支持基板の導電率が低下していき、支持基板中の特定の希土類酸化物の量が35〜65体積%の範囲内であれば、優れた導電率を有することが判る。
一方、比較例の試料No.19の焼結体の熱膨張係数は、固体電解質の熱膨張係数よりもかなり大きく、後述するように、元素の拡散が生じることが判る。
また、比較例の試料No.20の焼結体の熱膨張係数は、固体電解質の熱膨張係数にある程度近づけることができ、導電率も良好であるものの、後述するように、元素の拡散が生じることが判る。
また、表1から、希土類酸化物としてNd粉末、CeO粉末、La粉末を用いた支持基板(試料No.16〜18)では優れた導電率を示すものの、焼結体(支持基板)の熱膨張係数が固体電解質の熱膨張係数11.2×10−6よりも非常に大きいことが判る。
表2からは、希土類酸化物粉末として、2種以上を併用した場合においても、その量を調整することにより、焼結体(支持基板)の熱膨張係数を、固体電解質の熱膨張係数11.2×10−6に近づけられることが判る。また、その量が多くなる程、焼結体の導電率が低下していくが、35〜65体積%の範囲内であれば、優れた導電率を有することが判る。
表3および表4の結果から理解されるように、本発明の燃料電池セル試料No.37〜51、57〜72では、燃料極層、固体電解質層のクラックや、支持基板からの固体電解質層、燃料極層の剥離は見られなかった。また、元素拡散も見られず、発電性能も850℃において0.7V時に0.72W/cm以上と良好であった。
一方、試料No.37〜51、57〜72では、支持基板と固体電解質層との熱膨張係数差が比較的小さいために、燃料極層、反応防止層、固体電解質層のクラックや、支持基板からの固体電解質層、反応防止層、燃料極層の剥離は見られないが、長期的な信頼性の観点からは、支持基板中の特定の希土類酸化物の量は、支持基板の導電率を損なわない範囲で多い方が望ましく、35〜65体積%、特に40〜65体積%が適当である。
また、比較例の試料No.55では、燃料極層、反応防止層、固体電解質層のクラックや、支持基板からの固体電解質層、反応防止層、燃料極層の剥離は見られないものの、Zr、の拡散が固体電解質層に見られ、100時間発電後の発電性能が0.019W/cmと低くなった。
比較例の試料No.56では、燃料極層、反応防止層、固体電解質層のクラックや、支持基板からの固体電解質層、反応防止層、燃料極層の剥離は見られないものの、Mg、Alの拡散が反応防止層に見られ、100時間発電後の発電性能が0.019W/cmと低くなった。
さらに、表3の結果から、比較例となる試料No.52〜54では拡散は見られないものの、支持基板と固体電解質層との熱膨張係数差が大きく、燃料極層、反応防止層、固体電解質層にクラックが発生した。
表4からは、希土類粉末として複合希土類酸化物を用いた試料No.57〜72(本発明例)においても、複合希土類酸化物の量を調整することにより支持基板の熱膨張係数を、固体電解質の熱膨張係数11.2×10−6に近づけられることできるため、燃料極層、反応防止層、固体電解質層のクラック発生を抑制できることが判る。また、同様の理由により支持基板からの固体電解質、反応防止層、燃料極層の剥離も見られない。
本発明の燃料電池セルを示す横断面図である。 図1の燃料電池セルの部分断面斜視図である。 複数の燃料電池セルにより形成されたセルスタックを示す横断面図である。 従来の燃料電池セルからなるセルスタックを示す横断面図である。
符号の説明
30:燃料電池セル
31:支持基板
31a:燃料ガス通路
32:燃料極層
33:反応防止層
34:固体電解質層
35:酸素極層
37:インターコネクタ

Claims (11)

  1. 燃料ガス通路が内部に形成されたガス透過性で且つ導電性の支持基板;
    支持基板上に形成された燃料極層;
    燃料極層上に形成され、Laが固溶したCeO 、Ceが固溶したLa 、あるいはそれらの混合体からなる反応防止層;
    該反応防止層を覆うように前記支持基板上に形成され、且つ少なくともLaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物からなる固体電解質層;及び
    前記燃料極層と対面するように前記固体電解質層上に設けられた酸素極層;
    とからなり、
    前記支持基板は、鉄族金属もしくはその酸化物と、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選択された少なくとも1種の希土類元素酸化物とから形成されていることを特徴とする燃料電池セル。
  2. 前記支持基板中には、前記希土類元素の酸化物が35〜65体積%の量で含有されている請求項1に記載の燃料電池セル。
  3. 前記支持基板中の前記希土類元素の酸化物が、Y及び/又はYbである請求項1または2に記載の燃料電池セル。
  4. 前記燃料極層は、NiまたはNiOと、希土類元素が固溶したCeOとを含有している請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池セル。
  5. 前記反応防止層は、Ce,La及びOの3元素基準で、下記式:
    (CeO1−x(LaO1.5
    式中、xは、0.1≦x≦0.6の数である、
    で表される組成を有している請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料電池セル。
  6. 前記固体電解質層を構成するペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物は、下記式:
    (La1−xSr)(Ga1−yMg)O
    式中、xは、0<x<0.3の数であり、
    yは、0<y<0.3の数である、
    で表される組成を有する請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池セル。
  7. 前記酸素極層は、前記燃料極層、前記反応防止層及び前記固体電解質層を介して前記支持基板の一方側の面上に位置しており、該支持基板の他方側の面上には、インターコネクタが設けられており、前記反応防止層及び前記固体電解質層は、前記インターコネクタの両端部分にまで回り込んでいる請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池セル。
  8. 前記酸素極層は、ペロブスカイト型酸化物からなる多孔質導電性セラミックから形成されている請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池セル。
  9. 前記多孔質導電性セラミックを構成している前記ペロブスカイト型酸化物が、AサイトにLaを有するものである請求項に記載の燃料電池セル。
  10. 請求項1乃至のいずれかに記載の燃料電池セルの複数が集電部材を介して互いに直列に接続された構造を有するセルスタックを、収納容器内に収容してなることを特徴とする燃料電池。
  11. 鉄族金属粉末及び/又は鉄族金属の酸化物と、Y,Lu,Yb,Tm,Er,Ho,Dy,Gd,Sm,Prからなる群より選択された少なくとも1種の希土類元素酸化物とからなり、且つ内部に燃料ガス通路を備えた支持基板成形体と、燃料極成形体と、Laが固溶したCeO 、Ceが固溶したLa 、あるいはそれらの混合体からなる反応防止層成形体と、少なくともLaとGaを含むペロブスカイト型ランタンガレート系複合酸化物を含有する固体電解質層成形体とを、この順に重ね合わせて積層体を作製し、該積層体を同時焼成し、得られた焼結体の固体電解質層上に、燃料極層と対面するように酸素極層成形用ペーストを塗布し、焼き付けることを特徴とする燃料電池セルの製法。
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