JP5209222B2 - 塗料組成物、塗膜及び塗装方法 - Google Patents

塗料組成物、塗膜及び塗装方法 Download PDF

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Description

本願発明は、防錆や表面保護のために鋼部材・コンクリート部材・木部材等の表面に塗布され、硬化して塗膜を形成する塗料組成物、この組成物によって形成される塗膜、及びこの組成物を使用する塗装方法に係り、特に水を含む常温硬化型の塗料組成物及び塗膜に関するものである。
船舶・建築物・橋梁等においては防錆・表面保護・外観の美化等の目的で塗装が広く行われている。このような塗装に用いられる塗料には、様々な種類・機能を持つものが知られている。一般に、船舶の船槽内やバラストタンク内等の閉鎖された部分の塗装では揮発性有機溶剤が発生する塗料を用いることは作業の安全性、良好な作業環境を維持する点から難しく、水系の塗料の使用が望まれる。
例えば、特許文献1には、塗料、インキ、コーティング材、接着剤等のベヒクルとして自己分散型水系ポリエステルが提案されている。また、特許文献2には有機酸化物等の硬化剤を含有する熱硬化性の樹脂組成物が提案されている。しかし、これらの樹脂組成物の硬化には加熱が必要で熱源設備が必要となり、任意の場所で硬化させることができない。また、硬化温度を下げるために、半減期温度の低い過酸化物を用いると、過酸化物が分解してラジカル発生し樹脂組成物の保存安定性が悪化するという問題点が生じる。さらに、水系の塗料は、防錆効果が溶剤系の塗料に比べて劣るものが多く、耐久性についても改良が望まれている。
これに対し、特許文献3には、優れた保存安定性を有するとともに、水分を蒸発させることで常温でも容易に均一な硬化反応を生じ得る樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物は塗料、インキ、コーティング材、接着剤等に用いることができるものであり、優れた密着性、耐熱性、耐水性を有するものである。
特開平5−295100号公報 特開2000−264938号公報 特開2004−292566号公報
しかしながら、従来の水系の樹脂組成物を塗料として用いたときに、次のような問題点が生じることがある。
上記樹脂組成物を用いた塗料を水平以外の面に塗布したとき、特に鉛直な面に塗布したときには、塗布後から硬化するまでに塗料が重力によって垂れ落ちる、いわゆる「だれ」という現象が生じることがある。このような「だれ」が生じると、塗装しようとする表面に付着している塗料の量にむらが発生し、硬化したときの塗膜は、所定の厚さより厚い部分と所定の厚さより薄い部分とが生じてしまう。このような厚さのむらが生じると充分な防錆効果が得られない。
本願発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた保存安定性、作業環境の良好性を有し、水分の蒸発によって常温でも硬化反応が生じるとともに、優れた密着性を有し、傾斜面・鉛直面に塗布してもいわゆる「だれ」が生じにくい塗料組成物を提供することである。また、上記塗料組成物の使用によって形成され、密着性、耐水性に優れた塗膜、及び上記塗料組成物を使用する塗装方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本願発明に係る塗料組成物は、 炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、酸価が3〜100KOHmg/gのポリエステルを塩基で中和した樹脂と、水と、無機材料からなる中空粒子と、を含有し、 比重が0.85〜0.95であり、 樹脂/水の重量比率が10/90〜70/30であり、 前記ポリエステルの含有量が20〜50重量%であり、 前記中空粒子の含有量が3.0〜15.0重量%であるものとする
上記ポリエステルを中和する塩基性化合物は、アンモニア又は有機アミン類が望ましく、これらを用いることによって硬化が速やかに生じる。
また、前記シランカップリング剤は下記式(1)で表される構造単位を有することが望ましい。
Figure 0005209222

(式中、R1は、炭素数2〜5のアルキレン基、R2は、同一又は異なっても良い炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。ただし、R2の少なくとも一つは、アルコキシ基である)
上記樹脂/シランカップリング剤の重量比率は70/30〜99.9/0.1とするのが望ましい。また、上記樹脂は平均粒径が0.01〜10μmで水に分散させたものとして用いるのが良い。
上記無機の中空粒子は、水酸基を含む材料で形成されているものが望ましい。このような中空粒子を用いることによって、加水分解したシランカップリング剤が該水酸基とも反応して強い結合力が発現される。
ポリエステル樹脂の有するカルボキシル基が塩基性化合物と塩を作って水系分散体を形成しており、この水系分散体はアミノ基を有するシランカップリング剤と混合されることによって、該アミノ基を有するシランカップリング剤が塩基性化合物と置き換わる。この反応が短時間で生じるためには、上記塩基性化合物がアンモニア又は有機アミン類であるのが望ましい。
一方、シランカップリング剤のアルコキシ基は加水分解され、シラノール基に置き換わる。そして、自己縮合反応を生じることによって硬化する。また、中空粒子が水酸基を含むものであると、加水分解されたシラノール基が、中空粒子が有する水酸基と縮合反応して結合する。
本発明の塗料組成物は、前記のように、常温でも容易に均一な硬化反応を生じ、塗布されたときに均一で強固な塗膜を形成する。つまり、本発明の塗料組成物においては、前記特定のシランカップリング剤と特定の樹脂とを併用することで、硬化時にポリエステル樹脂とシランカップリング剤とが反応するだけでなく、シランカップリング剤自体が加水分解及び自己縮合反応を生じ、塗膜強度が高いものとなる。
なお、従来からカップリング剤として良く使用されているアミノ基を有しないアルコキシシラン類を用いた場合については、密着性や常温硬化性に劣るものとなる。
また、本発明の塗料組成物は、中空粒子を含有することによって比重が調整されるとともに粘度が調整されているので、塗布後硬化するまでに重力によって塗料が垂れ落ちるいわゆる「だれ」が生じ難く、均一な塗膜が形成される。そして、上記中空粒子が水酸基を含むものであることによってシランカップリング剤と反応し、より強固で耐久性のある塗膜となる。
以下、本願発明に係る塗料組成物の実施の形態について説明する。
本願発明に係る塗料組成物は、炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、酸価が3〜100KOHmg/gのポリエステルを塩基で中和した樹脂と、水と、無機の中空粒子とを含有する。
上記シランカップリング剤は、炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するものであり、密着性や常温硬化性の観点から、下記式(1):
Figure 0005209222

(式中、R1 は炭素数2〜5(好ましくは炭素数3)のアルキレン基、R2 は同一又は異なっても良い炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜2、特には1)のアルキル基又は炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜2、特には1)のアルコキシ基を示す。ただし、R2 の少なくとも一つは、アルコキシ基(好ましくはジもしくはトリアルコキシ基)である。)で表される構造単位を有することが好ましい。
また、下記式(2):
Figure 0005209222

(式中、R1 およびR2 は、前記と同じ。R3 は、炭素数2〜5(好ましくは炭素数2)のアルキレン基を示す。)
で表される構造単位を有することがより好ましい。
さらに、式(3):
Figure 0005209222

(式中、R1 〜R3 は、前記と同じ。R4 は水素原子又は水酸基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基(好ましくは水素原子)を示す)で表される化合物が特に好ましい。
前記シランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、特にはジ又はトリアルコキシシリル基を有するものが好ましい。なお、これらは信越化学工業(株)社等から容易に入手できる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
上記ポリエステル樹脂は、酸価が3〜100mgKOH/gであれば使用可能で、酸価が3未満では、ポリエステルを塩基で中和しても水への分散が悪く、100を超えると塗膜の耐水性が悪化する。密着性、水分散性、耐水性及び硬化性の観点から、好ましくは10〜70mgKOH/g、より好ましくは15〜50mgKOH/gである。前記酸価はJIS K 0070に従って測定する。また、25℃の水への溶解度が1重量%以下の疎水性樹脂であることが好ましい。
なお、前記樹脂はウレタン結合、エポキシ結合、アミド結合等で変性されていてもよいが、変性されていないものが好ましい。
前記樹脂の軟化点は、結合強度の観点から、70〜150℃、好ましくは85〜120℃が望ましい。また、ガラス転移点は10〜80℃が好ましく、50〜80℃がさらに好ましい。なお、数平均分子量は、好ましくは1000〜3万、より好ましくは2000〜1万である。
本発明に用いられる樹脂すなわちポリエステルは、構成モノマーとして以下に挙げる酸成分とポリオール成分とを縮重合させることにより製造することができる。
酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、ダイマー酸、アルケニル(炭素数4〜20)コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の二価カルボン酸、及び1,2,4−ベンゼントリカルボン酸等の三価カルボン酸、それらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
一方、前記ポリオール成分としては、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ポリオール又はビスフェノールA、水素化ビスフェノールA等の芳香族系ポリオール及びそれらのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(付加モル数:2〜20モル)が挙げられ、特には耐熱性及び耐水性の点よりビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、アルコール成分中50〜100モル%、更には80〜100モル%含有するのが好ましい。
ポリオール成分と酸成分との縮重合は、公知の方法、たとえば、ポリオール成分と酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて180〜250℃の温度で反応させることにより行うことができ、その終点は分子量の指標となる軟化点(Tm)、酸価等の追跡により決定すればよい。
なお、ポリオール成分と酸成分とのモル比は、得られるポリエステルの酸価、軟化点、数平均分子量及びガラス転移点(Tg)等の値により適宜決定すればよいが、1:0.6〜1:1.5(ポリオール成分:酸成分)であることが好ましい。
また、この縮重合の際に、酸化ジブチル錫等のエステル化触媒、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤等の添加剤を適宜使用できる。
以上のようにして得られるポリエステルの酸価、軟化点、数平均分子量及びガラス転移点の調整は、例えば、前記酸成分/ポリオール成分のモル比、反応温度、反応時間等を調整することにより行うことができる。
前記ポリエステルが、フマル酸等ラジカル重合性単量体を構成成分とする不飽和ポリエステルである場合は、ラジカル発生剤を添加して、硬化を助けることもできる。ラジカル発生剤の添加方法としては、特開2000−264938号記載の方法でも良いし、水溶性であれば、後述のように水系分散体とした樹脂に添加することもできる。ラジカル発生剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性硬化剤、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等の油溶性硬化剤等が挙げられる。
さらにアニリン誘導体、亜硫酸ナトリウム等の硬化促進剤を添加しても良い。
本発明において、前記ポリエステル樹脂の形態は、均一硬化性の観点から、塩基性化合物で予め中和した水分散体であり、その平均粒径としては、分散性の観点から、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜2μmである。なお、前記酸価は、水分散体を得る観点からも好ましい。また、前記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置、SALD−2000J(商品名、島津製作所製)により測定する。
塩基性化合物としては、ポリエステル樹脂のカルボキシル基をイオン化するものであれば特に限定はないが、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物、アンモニア及び有機アミン類であり、アンモニア及び有機アミン類を用いると硬化が早く好ましい。有機アミン類としては、水分散体の安定性の点で、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン及びトリエタノールアミンが好ましい。
塩基性化合物の量は、安定な水分散体を製造する観点から、該ポリエステル樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、0.8〜1.4当量が好ましい。
また、分散体の製造方法には、特に限定はないが、該ポリエステル樹脂と塩基性化合物を水中で、必要に応じて公知の界面活性剤存在下で、乳化機により強制乳化させる方法、或いは転相乳化する方法が挙げられ、安定性の点から、転相乳化法が好ましい。転相乳化は、該ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、塩基性化合物及び水、さらに必要に応じて界面活性剤を加えた後、有機溶剤を留去して水系に転相することが好ましい。また、平均粒径は、ポリエステル樹脂の分子量、酸価、中和度の調整や転相乳化条件等を変えることによって適宜調整することができる。
前記有機溶剤としては、アセトン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン及びTHF等、水溶性で水より沸点の低いものが好ましい。有機溶剤の使用量としては、水分散体に用いられるポリエステル樹脂100重量部に対し有機溶剤100〜600重量部であることが好ましい。
また、前記転相時の水の量としては、ポリエステル樹脂100重量部に対し、100〜1000重量部であることが好ましい。この場合、水に、高級アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等の界面活性剤を樹脂100重量部に対し1〜20重量部程度さらに添加して、水分散体中の当該樹脂微粒子の平均粒径を調整してもよい。
また、有機溶剤の留去は、減圧下25〜70℃で行うことが好ましく、有機溶剤の含有量を好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下に調整することが望ましい。また、得られた処理液のpHを6〜10となるように前述の塩基性化合物等を用い調整することがさらに好ましい。
以上のようにして得られる水分散体は、例えば、前記転相乳化によって得られたそのものであってもよいが、さらに水を添加したものでもよい。
かかる水分散体中の樹脂の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%であり、水の含有量は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
本発明において、ポリエステルを水分散体とし、これに前記シランカップリング剤を組み合わせることで、常温での保存安定性が良好となり、水分の蒸発により常温で反応、硬化させることができる。前記シランカップリング剤を前記水分散体と混合する場合、直接混合する以外に、無機中空粒子にシランカップリング剤を添加した後に前記水分散体と混合してもよい。
本発明の塗料組成物において、前記ポリエステル/前記シランカップリング剤の重量比率は、強度、硬化時間の観点から、70/30〜99.9/0.1が好ましく、更には80/20〜99/1が好ましい。
そして、本発明の塗料組成物中のポリエステルの含有量は、20〜50重量%とする。シランカップリング剤の含有量は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。水の含有量は、39.9〜89.9重量%が好ましく、50〜79.9重量%がより好ましい。
本発明の塗料組成物において、前記ポリエステル/水の重量比率は、水分散性の観点から、10/90〜70/30が好ましく、更には15/75〜65/35が好ましい。
上記無機中空粒子は、真密度が0.1〜0.7g/cm2のものが好ましく、0.1未満では塗料処方時に割れてしまい、塗料の比重低減効果なく、0.7を超えると塗料の比重調製に多量添加する必要があり、樹脂が減量した分、基材との密着性が低下し、好ましくない。また、耐圧強度が1MPa以上の無機中空粒子が割れ防止に有効で好ましい。例えば、硼珪酸Naよりなるスコッチライトグラスバブルスシリーズ(3M社製); シリカ、アルミナを主成分とするCenoSpheres(Ashtek社製)、セノライト(巴工業社製); シラスバルーン、ウィンライト(アクシーズケミカル社製)を挙げることができる。中でも、水酸基を有する無機の中空粒子はシランカップリング剤由来のシラノール基と反応し、塗膜がさらに強固になる。
上記無機中空粒子は、塗料の比重が0.85 〜 0.95になるように添加すればよく、その添加量はその他処方物の比重によるが、塗料中で3.0〜15.0重量%とする。比重はJIS R 3503に従って測定する。少ないと比重低減効果がなく、多過ぎると基材との密着性が悪化し、好ましくない。
防錆用途等、厚膜を作成する際、高粘度化或いはチキソ性を確保するのみでは、垂直面で塗料が垂れ落ちるいわゆる「だれ」を生じてしまうことがあり、上記無機中空粒子を含むことによって塗料自体の比重を低くするものである。また、無機系は膜強度、耐熱性を向上させることができる。
また、水系処方で使用される増粘剤は、水素結合を介したり、三次元ゲル構造を作ることにより増粘作用を生じるが、代表例としては、セルロースエーテル系、例えば、カルボキシメチルセルロースNa塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース; アルカリ膨潤型ポリアクリレート; ポリアクリルアミド; 天然多糖等有機系、例えば、キサンタンガム、ローカントビーンガム、カラギナンNa塩、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、アラビアガム、トラガカントガム、ウェランガム、ジュランガム、アルギン酸Na、ペクチン; 会合性ポリエーテルウレタン系、例えば、Tafigelシリーズ(Muntsen Chemie社製)、Rheolateシリーズ(Elementis社製); 粘土系、例えば、スメクタイト、ベントナイト、セピオライト、モンモリノナイト、ヘクトライト、ラポナイト、或いは、それらを化学修飾したもの、を挙げることができる。以上の増粘剤を、処方系に必要な粘度、或いはチキソ性を発揮するまで、添加すればよいが、単独使用でも併用しても構わない。特に、粘土系材料は水酸基を有するものが多く、シランカップリング剤由来のシラノール基と反応でき、塗膜を強固にでき、好ましい。
添加量は全系の0.1〜10.0重量%が好ましい。少ないと所定の粘度に調製できず、多過ぎると塗膜の耐水性が悪化し、好ましくない。
また、本発明の塗料組成物には、前記シランカップリング剤の加水分解、自己縮合反応を促進すべく、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸第一錫等の公知の触媒を使用しても構わない。
さらに本発明の塗料組成物には、前記成分の他に公知の各種添加剤、たとえばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤、EDTA等のキレート剤、亜硫酸塩、炭酸カルシウム、タルク等の公知の充填剤、フタル酸ジアリル等の公知の可塑剤、顔料、染料、酸素吸収剤等を本発明の所望の効果を損なわない範囲で配合してもよいし、樹脂に内部添加しておいてもよい。
本発明の塗料組成物には、前記成分の全て又は適宜選択された成分をそれぞれ予め混合して調製物とすることもでき、もしくは使用する直前にそれらを混合して調製物とすることもできる。
本発明の塗料組成物は、船舶・橋梁・建築物等の塗装対象物に対して、ローラによる塗布、刷毛塗り、スプレーによる吹き付け等によって塗膜を形成することができる。このときの塗装厚さは、硬化後の厚さが200〜300μmとなるように調整するのが望ましい。硬化時に塗装厚さは減少するのであらかじめ減少量を実験等によって調査しておき、これに基づいて塗布量を決定することができる。
上記塗装作業にあたって、塗布した塗料組成物から大量の有機溶剤が発生することがなく、臭気や作業者に対する危険性が回避されるとともに、引火の危険性も排除することができる。また、比重が調整されているため、鉛直面等に塗布した組成物が重力で垂れ落ちることが少なく、均一に塗布することができる。
以上に説明した塗料組成物は、塗布するときの作業性に優れ、例えば、水分散体として船舶や構造物上に塗布すると、常温でも水の蒸発により樹脂成分がカップリング剤により効率よく硬化し、中空粒子とも結合して強固な塗膜が形成される。そして、この塗膜は優れた防錆効果と耐久性を有するものとなる。また、室温における硬化に要する時間も通常の塗工で問題のない範囲である。さらに、臭気や火災の危険性等のない原料によりなるものである。したがって、船舶の内部、特にバラストタンク等の閉所においても安全に効率良く塗布作業を行うことが可能になるとともに、常時海水に曝されるような過酷な条件でも十分な防錆効果を発揮するものとなる。
樹脂製造例1
ポリエステルの調製
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)3500g、及びテレフタル酸332g、酸化ジブチル錫8gを窒素気流下にて230℃で6時間反応させた後、160℃に降温し、フマル酸928g、ハイドロキノン0.2gを加え、窒素気流下にて160℃で4時間反応させた。その後、200℃まで昇温後、常圧にて1時間、9.33kPaの減圧下で1時間反応させた。得られたポリエステルは酸価(AV)が20.0mgKOH/g、水酸基価(OHV)は21.3mgKOH/g、軟化点(Tm)が109.1℃、ガラス転移点(Tg)が64.3℃、数平均分子量4200の固体であった。また、このポリエステルは水に溶解せず、疎水性を示した。軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所製)を用い、荷重20kgf(196N)、オリフィス径10mm、オリフィス長さ1mm、3℃/分の昇温条件で測定し、半量流れ出た温度を軟化点とした。酸価、及び水酸基価は、JIS K0070の方法により測定した。また、ガラス転移点は、示差走査熱量計、DSC200(商品名、セイコー電子社製)により、10℃/分の昇温条件にて測定し、接線法で求めた。分子量はGPCにより、40℃で、溶離液としてクロロホルムを毎分1mlの流速で流し、試料濃度0.5重量%のクロロホルム溶液を100μl注入して測定した。標準試料:単分散ポリエチレン。分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー(株)製)。
樹脂製造例2
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)2450g、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.1モル)950g、テレフタル酸664g、ドデセニル無水コハク酸603g、及び酸化ジブチル錫11gを窒素気流下にて230℃で5時間反応させた。その後、200℃まで降温し、無水トリメリット酸480gを加え、常圧にて1時間、9.33kPaの減圧下で1時間反応させた。得られたポリエステルは酸価が23.2mgKOH/g、水酸基価は23.5mgKOH/g、軟化点が120.3℃、ガラス転移点(Tg)が63.0℃、数平均分子量4100の固体であった。また、このポリエステルは水に溶解せず、疎水性を示した。
(1)水分散体(A−1)の調製
樹脂製造例1で得られたポリエステル300g及びフタル酸ジアリル45gをメチルエチルケトン540gに溶解させた。次いで、N,N−ジメチルエタノールアミン10gを添加して中和し、攪拌下でイオン交換水680gを加えた後、減圧下40℃でメチルエチルケトンを留去し水分調整を行い、pH8.2の自己分散型水系ポリエステル樹脂(平均粒径:0.24μm、固形分:35重量%)を得た〔水分散体(A−1)〕。
(2)水分散体(A−2)の調製
樹脂製造例2で得られたポリエステルを用いる以外は水分散体(A−1)と同様にして、自己分散型水系ポリエステル樹脂(平均粒径:0.15μm、固形分35重量%)〔水分散体(A−2)〕を得た。
実施例1、2、比較例1、2
次に、上記水分散体(A−1)又は(A−2)と中空粒子を主成分として、表1に記載の配合で組成物を調製し、塗布直前にシランカップリング剤を添加混合し、表面の防錆油をヘキサンで拭き取った高張力鋼板(10cmx20cmx0.5cm)上に、ゴムベラを用いて25℃にて塗布した。塗布は両面2回塗りとし、各層は1m2 当たり0.4Kg程度の使用量で2枚準備した。
上記のように形成された塗装板を縦置きとして、だれの有無、5分置きに硬化時間(指触)を確認し、24時間放置乾燥後、1枚は40℃のオーブンに放置した3%食塩水に漬け、1枚は60℃に保温したオーブン中に放置し、耐温水性は3日置きに、耐熱性は30分後、60分後、1日置きに、それらの変化を観察した。結果を表1に示す。
Figure 0005209222
表1に示されるように、本件発明の塗料用組成物を用いた塗装板について、塗装後のだれなく、硬化も早く、耐温水性、耐熱性についても明らかに良好な結果が得られた。

Claims (7)

  1. 炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、酸価が3〜100KOHmg/gのポリエステルを塩基で中和した樹脂と、水と、無機材料からなる中空粒子と、を含有し、
    比重が0.85〜0.95であり、
    樹脂/水の重量比率が10/90〜70/30であり、
    前記ポリエステルの含有量が20〜50重量%であり、
    前記中空粒子の含有量が3.0〜15.0重量%であることを特徴とする塗料組成物。
  2. 前記中空粒子を構成する無機材料は、水酸基を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
  3. シランカップリング剤が下記式(1)
    Figure 0005209222

    (式中、R1は、炭素数2〜5のアルキレン基、R2は同一または異なっても良い炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。ただし、R2の少なくとも一つは、アルコキシ基である)
    で表される構造単位を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗料組成物。
  4. 樹脂/シランカップリング剤の重量比率が70/30〜99.9/0.1であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の塗料組成物。
  5. 樹脂が水に平均粒径0.01〜10μmで分散しているものを用いることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の塗料組成物。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の塗料組成物を硬化させてなる塗膜。
  7. 請求項1から請求項5までのいずれかに記載の塗料組成物を、船舶、建築物又は橋梁の塗装に用いることを特徴とする塗装方法。
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