JP5525152B2 - 紫外線硬化型コーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを被覆してなる樹脂被覆品 - Google Patents

紫外線硬化型コーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを被覆してなる樹脂被覆品 Download PDF

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Description

本発明は紫外線(UV)硬化型のコーティング用として好適なコーティング用樹脂組成物に関し、さらに詳しくは金属酸化物コロイドゾルを利用した、プラスチック、フィルム、軽金属など表面が軟質な基材に優れた耐擦傷性の保護被膜を形成するUV硬化型のコーティング剤として有用な無溶剤型のコーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを被覆してなる樹脂被覆品に関する。
従来、基材の表面保護には現在までに種々のものが使用されている。プラスチック材料は、軽量性、加工性などの特徴を活かして多くの用途で用いられているが、表面の耐擦傷性に劣る欠点がある。
表面が軟質であるプラスチック、軽金属などは、特に高いレベルの耐擦傷性が要求される用途において、シロキサン系の熱硬化型ハードコート剤が使用されている。このシロキサン系ハードコート剤については数多くの技術提案がなされてきた。例えば特許文献1には、トリヒドロキシシラン部分縮合物とコロイダルシリカからなる加熱硬化型のコーティング用組成物が開示されている。しかし、加熱硬化型ハードコーティング剤は、その硬化に関して多大な熱エネルギーを要することから経済的でなく、基材によっては加えられる熱により変形してしまうなどの問題点がある。
これらの問題点を解消するためにラジエーション硬化させるタイプのコーティング剤が提案されている。ここで、ラジエーション硬化とは電子線、紫外線などの電離放射線のエネルギーによって硬化することを意味する。なお、本明細書並びに本発明において「紫外線(UV)硬化型」と称する場合には、紫外線(UV)のみならず、電子線を含む広く電離放射線のエネルギーによって硬化し得る性質を意味するものとし、実質的に「ラジエーション硬化型」と同義とする。
このようなラジエーション硬化型コーティグ剤としては、シリカ粒子、アクリロキシ官能基シランもしくはその加水分解物、およびアクリレート化合物よりなる組成物が、特許文献2に開示されている。しかし、この場合アクリレート化合物は光重合開始剤により硬化するが、シリカ粒子、シラン部位の光硬化に関しては考慮されておらず、硬度が十分に発現するとは言いがたい。
特許文献3に、シリカなどの粒子表面に重合性官能基を導入する試みが開示されているが、このような変性シリカ粒子を作製する際に使用する不飽和二重結合を有する物質中に水酸基などの官能基が必要であり、設計の自由度が少なくなるという欠点がある。
上述した全ての系に言えることは、硬度、耐擦傷性のみ追い続けるあまり、硬く、脆いものとなってしまい、それ以外の例えば耐クラック性、可撓性、難燃性などの諸特性を付与するゆとりはない。
近年、環境問題がクローズアップされており、特にコーティング業界ではその希釈溶剤の問題が大きく取り上げられ、その対処に迫られている。2004年施行の改正大気汚染防止法では2010年までにVOC(揮発性有機化合物)削減目標を2000年比30%としている。また、各自治体、各業界団体においても、独自のVOC規制条例を定めて努力している。
コーティング業界における流れとしては、溶剤型塗料の無溶剤化、水系化、粉体化があるが、後者2つの方法は塗装ラインの特殊化と製品完成度の問題が大きく、難しい。
最も期待できるのが無溶剤化であり、そのとき問題になるのがVOCである。一方、現在、無溶剤型塗料として販売されているものでも、低沸点モノマーで希釈してあったり、低沸点の希釈剤を使用していたりさまざまである。日本塗料工業会ではVOCの定義として、世界保健機構(WHO)のVOC分類に基づく「沸点範囲(常圧;50−100℃〜240−260℃)の揮発性有機化学物質」を採用している。
また、無溶剤UV硬化型コーテイング剤は一般的には、上述した様々な沸点範囲の有機系単官能および/または多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ウレタン、ポリエステルアクリレート系オリゴマーを主成分としたものである。これらは、耐傷つき性、耐摩耗性に劣り、耐熱性、耐候性、耐久性に関しては、無機系に劣る。
一方、特許文献4に示すようなオキセタン、エポキシなどオキシラン環を有する無溶剤型カチオン硬化型光硬化性樹脂組成物が開示されているが、硬化速度、硬度、耐摩耗性に難があり、得られる塗膜はハードコートとはいい難い。
すなわち、これまでに提案されているラジエーション硬化型無機骨格硬化性樹脂組成物、または無溶剤UV硬化型樹脂組成物においては、VOCの発生がなく、かつ硬化性に問題がなく、造膜性や耐衝撃性、種々の外部刺激に対するクラック発生の問題がなく、しかも、経時安定性、耐擦傷性に優れ、かつ有機ポリマーの諸物性をも併有するラジエーション硬化型ハードコーティング用組成物は、未だに実用化されていない。
特開昭51−2736号公報 特開昭62−256874号公報 特開平9−100111号公報 特開平6−16804号公報
本発明は、シロキサン結合を有する無機系硬化性組成物の特長を損なうことなく、この種の無機系硬化性組成物において解決困難な問題とされていた硬化後のクラック発生の問題が軽減乃至解消され、高いレベルの耐擦傷性を付与することができ、好ましくはさらに保存性にも優れ、環境に配慮した紫外線(ラジエーション)硬化型のコーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを用いた樹脂被覆品を提供することを目的とする。
さらに本発明は、硬化性を阻害することなく、紫外線(ラジエーション)により瞬時に硬質皮膜を形成せしめ、かつ、無機オルガノシロキサン化合物に由来する硬質物性、含有する無機金属酸化物に由来する諸特性(例えば、導電性、光触媒活性、屈折率制御等)、有機ポリマーに由来する諸特性(例えば、造膜性、耐クラック性、可撓性、セルフヒーリング性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐炎性等)を併有する複合皮膜を形成し得る無溶剤型コーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを用いた樹脂被覆品を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成の紫外線硬化型コーティング用組成物が上記問題点を解決するのに有効であることを見出した。すなわち、本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物(以下、単に「本発明のコーティング用組成物」という場合がある。)は、(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤、(D)(メタ)アクリレート類を必須成分とし、かつ、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が以下に列挙する特定の有機官能基を含むことを特徴とする常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性の物である。
・特定の有機官能基:(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基およびメルカプト基
本発明において、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物(以下、「末端SiOH型」を省略する場合がある。)は、下記式(1)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物である
1 a2 bSi(R34-a-b ・・・ (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2はアリール基、ハロゲン化アリール基、置換アリール基、ハロゲン化アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、R3は炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基、イソシアナト基またはアルコキシアルコキシ基を表し、aは0,1,2のいずれかの整数であり、bは1または2であり、a+bは1または2である。)
また、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物のうちの少なくとも一部が、式(1)中の 2 として、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基およびメルカプト基からなる群より選ばれるいずれかの有機官能基を含むものである。
本発明のコーティング用組成物は、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物が、前記式(1)中の官能基R2と、反応する官能基、または、化学的相互作用することにより安定化する官能基を有する有機重合体(以下、「第1の有機重合体」と称する。)をさらに含有する。
本発明のコーティング用組成物としては、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物に含まれる−SiOH基と反応することにより、もしくは化学的相互作用することにより、安定化する官能基または構造を有する有機重合体(以下、「第2の有機重合体」と称する。)をさらに含有する。
本発明において、(C)光重合開始剤としては、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の双方を含むものであることが好ましい。
本発明において、(D)(メタ)アクリレート類としては、常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性を有し、単官能および/または多官能の(メタ)アクリレート類であることが好ましい。
本発明のコーティング用組成物としては、形成される硬化皮膜が実質的に無色透明であることが好ましい。
一方、本発明の無溶剤紫外線硬化型コーティング用組成物の製造方法は、上記本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物を製造するための製造方法であって、
(A)金属酸化物コロイドゾル存在下で、ゾルゲル法により(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物を合成せしめ、(D)(メタ)アクリレート類を添加したのち溶媒を留去し、(C)光重合開始剤を加えることを特徴とする。
また、本発明の樹脂被覆品は、上記本発明の硬化皮膜形成用のコーティング用組成物が、その表面の一部または全面に被覆されてなることを特徴とする。
本発明によれば、シロキサン結合を有する無機系硬化性組成物の特長を損なうことなく、この種の無機系硬化性組成物において解決困難な問題とされていた硬化後のクラック発生の問題が軽減乃至解消され、高いレベルの耐擦傷性を付与することができ、好ましくはさらに保存性にも優れ、かつ、環境に配慮した紫外線(ラジエーション)硬化型のコーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを用いた樹脂被覆品を提供することができる。
さらに本発明によれば、硬化性を阻害することなく、紫外線(ラジエーション)により瞬時に硬質皮膜を形成せしめ、かつ、無機オルガノシロキサン化合物に由来する硬質物性、含有する無機金属酸化物に由来する諸特性(例えば、導電性、光触媒活性、屈折率制御等)、有機ポリマーに由来する諸特性(例えば、造膜性、耐クラック性、可撓性、セルフヒーリング性、耐溶剤性、耐アルカリ性、耐炎性等)を併有する複合皮膜を形成し得る無溶剤型コーティング用組成物およびその製造方法、並びにこれを用いた樹脂被覆品を提供することができる。
以下、本発明のコーティング用組成物について詳細に説明する。
[本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物]
本発明のコーティング用組成物は、(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤、(D)(メタ)アクリレート類を必須成分とし、かつ、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物の少なくとも一部が以下に列挙する特定の有機官能基を含み、無溶剤型であることを特徴とするものである。
・特定の有機官能基:(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基およびメルカプト基
本発明のコーティング用組成物は、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物について、後に詳述する通り、さらに特定の構造の物が用いられる。
また、本発明のコーティング用組成物は、上記(A)〜(D)の各成分に加えて、第1の有機重合体を必須成分として含み、さらに必要に応じてその他の成分を加えてもよい。
以下、各成分ごとに詳細に説明する。
<(A)金属酸化物コロイドゾル>
本発明のコーティング用組成物における(A)金属酸化物コロイドゾルとしては、コロイダルシリカが代表的なものとして例示される。これは、直径5〜200nm、好ましくは5〜100nmのシリカ微粒子が水または有機溶媒中にコロイド状に分散されたものである。なかでも、酸性水溶液分散型コロイダルシリカが、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物との反応を考慮した場合、容易に化合出来るSiOH表面状態を有しているため最も適している。
かかるコロイダルシリカの具体例として、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、触媒化成工業(株)製のカタロイドSN、日本化学工業(株)製のシリカドール30Aなどが挙げられる。また、アルカリ性コロイダルシリカに種々の有機酸、無機酸を添加することにより、pHを3〜5のコロイダルシリカ酸性準安定域で安定化させ、その表面をSiOH型としたものも同様に使用することができる。
有機溶媒分散型のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST;触媒化成工業(株)製のOSCAL1132、OSCAL1232、OSCAL1332、OSCAL1432、OSCAL1532、OSCAL1632、OSCAL1732などを挙げることができる。
その他の(A)金属酸化物コロイドゾルは、種々の機能性付与、例えば、導電性、光触媒活性、屈折率制御の目的で添加される。具体的には、マグネシウム酸化物、珪素酸化物とマグネシウム酸化物との共酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、インジウム酸化物、ゲルマニウム酸化物、錫酸化物、亜鉛酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、セシウム酸化物、インジウム錫酸化物、および錫アンチモン酸化物のコロイドゾルが単独であるいは混合物として用いることができる。
これら(A)金属酸化物コロイドゾルは、金属原子−酸素原子の繰り返しで構成されるが、末端部位においては金属原子と結合しない酸素原子の結合手(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基のような形態)が存在するものが好ましく、当該結合手を有することでオルガノシロキサン((B)アルコキシシラン加水分解縮合物)のSiOHと反応し得る。
(A)金属コロイドゾルの粒子径としては、0.005μm〜1μmであることが好ましい。
本発明のコーティング用組成物における(A)金属酸化物コロイドゾルと後述する(B)アルコキシシラン加水分解縮合物との使用割合は、組成物の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、密着性および耐クラック性の点から適宜選択される。(A)金属酸化物コロイドゾルのソリッド分は、(A)金属酸化物コロイドゾルのソリッド分および(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分の合計量に対して5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、最も好ましくは20〜40%である。
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の添加量、存在量がこれより少な過ぎる場合、目的とする効果を期待することが困難な場合があり、多過ぎる場合は安定性、透明性、耐クラック性、硬度、耐熱性など溶液特性、皮膜特性上不利となる懸念がある。
<(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物>
本発明のコーティング用組成物における(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物は、末端がSiOHであって、少なくともその一部が後述する特定の有機官能基を含むものである
本発明において、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物としては、下記式(1)のアルコキシシランを加水分解縮合反応させた物である。
1 a2 bSi(R34-a-b ・・・ (1)
(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R2はアリール基、ハロゲン化アリール基、置換アリール基、ハロゲン化アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、R3は炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基、イソシアナト基またはアルコキシアルコキシ基を表し、aは0,1,2のいずれかの整数であり、bは1または2であり、a+bは1または2である。)
当該アルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトライソシアナトシラン、メチルトリイソシアナトシラン等が挙げられる。これらは単独でも、混合して使用してもよく、予め部分的に加水分解を施しておいたものを使用しても構わない。
また、後述する種々の有機ポリマーとのハイブリッド化を促進する目的で、目的とする有機ポリマーとの相溶性、反応性、種々の化学的インタラクションを形成する有機化合物を予め反応せしめたものを使用することも可能である。
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物(オルガノシロキサン樹脂成分)は、末端をSiOH型とすることにより、被塗物表面に塗布され、光重合開始剤により発生する酸により脱水縮合し、シロキサン結合を形成することができる。なお、末端がSiOR型(Rは有機基)である場合、反応後にこれが残ってしまう懸念があり、塗布後、この加水分解が律速段階となり、生成するアルコールが光重合開始剤に影響を与え、場合によっては硬化不良を引き起こしてしまうことがあるため適当ではない。
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物としては、そのピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量が制御された合成条件で合成されたものが好ましい。当該分子量が大き過ぎると、硬度の発現、特に耐擦傷性が不十分となる懸念がある。
本発明者らによる研究の結果、(B)として用いられるアルコキシシランの加水分解縮合物は、前記式(1)に示されるアルコキシシランの加水分解直後の発生期のSiOHが最も活性が高く、硬度、擦傷性が出やすいことがわかっている。即ち、(B)成分のアルコキシシラン加水分解縮合物のピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量分布が制御された合成条件にて製造されることが、本発明のコーティング用組成物において目的とする高硬度、高耐擦傷性、高耐摩耗性の発現に繋がることを意味する。
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の分子量制御方法としては、その代表的な合成方法であるゾルゲル法における水の添加量とトータルソリッドで制御できる。即ち、仕込みシランモノマーの加水分解性アルコキシシリル基(−SiOR)1モルに対して1.0モル以上の水を添加しトータルソリッドを10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%程度に抑え、シラノール濃度を低くすることにより低分子量化を図ることができる。
具体的に、末端がSiOHでそのピーク分子量がポリスチレン換算で1000以下となるように分子量を制御するためには、前記式(1)に示されるアルコキシシランを加水分解する際の条件について述べる。
水の添加量としては、前記式(1)のアルコキシシランモノマー1モルに対して、((4−a−b)+0.2)/2モル〜20モルとすることが好ましく、3モル〜10モルとすることがより好ましく、3.1モル〜6モルとすることがさらに好ましい。
水の添加量が不足する場合、末端の全てがSiOHになり得ず、アルコキシシリル基が残存してしまい、硬化性、硬度の面で目的を十分に達成することができない可能性があり、水の添加量が多過ぎる場合、得られた系が不安定化してしまい、その後に続く脱溶媒反応時にゲル化してしまうおそれが生ずる懸念があるため好ましくない。
上述した水とは、系に添加されるすべての水分が含まれる。即ち、添加される水分散金属酸化物コロイドゾル、加水分解触媒、有機ポリマーなどに含まれる水分を含めた総和にて論じられるものである。
また、加水分解時のトータルソリッドも活性な発生期の−SiOHの縮合を制御するのに有効である。トータルソリッドを10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%に制御することにより活性なシラノール濃度を低くすることに達成される。この濃度より高いと縮合が進んで分子量がアップしてしまい、濃度が低過ぎると収率の面から好ましくない。
本発明のコーティング用組成物において、上述した(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のうちの少なくとも一部が、前記式(1)中のbが1または2であり、かつ、R2が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基およびメルカプト基からなる群より選ばれるいずれかの有機官能基を含むことが好ましい。これら有機官能基は、本発明に必須の「特定の有機官能基」に相当するものであって、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物中のうちの少なくとも一部について、いずれかの箇所に導入されていることが必須であり、上記のようにR2の基として含まれることが好ましい。
これらラジカル反応性基(アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等)、カチオン反応性基(エポキシ基、メルカプト基)を含むアルコキシシラン加水分解縮合物は、金属酸化物−オルガノシロキサン(アルコキシシラン加水分解縮合物)硬化成分とUVラジカルあるいはUVカチオン硬化成分とを共重合せしめる反応性無機−有機架橋剤として作用する。当該特定の有機官能基を含むアルコキシシラン加水分解縮合物成分の存在量としては、全(B)アルコキシシラン加水分解縮合物中、20〜80モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましい。
また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどアルコール含有多官能アクリレートをγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシランなどでシリル化し、本発明における(B)成分として用いることは、上記反応性無機−有機架橋剤として働くためこれも有用である。
既述のとおり、本発明のコーティング用組成物における(B)アルコキシシラン加水分解縮合物と(A)金属酸化物コロイドゾルとの使用割合は、組成物の安定性、得られる硬化膜の透明性、耐摩耗性、耐擦傷性、密着性および耐クラック性の点から適宜選択される。(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分は(A)金属酸化物コロイドゾルのソリッド分および(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分の合計量に対して20〜95質量%、好ましくは40〜90質量%、最も好ましくは60〜80質量%である。
(B)アルコキシシラン加水分解縮合物の添加量、存在量がこれより少な過ぎる場合、目的とする効果を期待することが困難な場合があり、多過ぎる場合は安定性、透明性、耐クラック性、硬度、耐熱性など溶液特性、皮膜特性上不利となる懸念がある。
<(C)光重合開始剤>
本発明のコーティング用組成物には、さらに(C)光重合開始剤が使用される。本発明において(C)光重合開始剤としては、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤が挙げられ、これらを併用する。ラジカル系光重合開始剤は、本発明のコーティング用組成物におけるアクリレート部位の硬化に利用され、カチオン系光重合開始剤は末端SiOHの脱水縮合反応を促進させ、かつ、エポキシ部のカチオン重合にも利用される。即ち、本発明においては、無機成分と有機成分が光で開始される2つの別種の反応により一体化して硬化する反応機構によって進行するため、無機の特性と有機の特性を併有する硬化体が得られるのである。
本発明において使用されるラジカル系光重合開始剤としては、光励起によってラジカル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。
一方、本発明において使用されるカチオン系光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、下記式(2)で表される、いわゆるラジエーション感受性芳香族オニウム塩が好ましい。
(R3−C64n+MQh - ・・・ (2)
(式中、XはI,PおよびSからなる群より選択されるいずれかの基であり、Mは金属または半金属であり、QはCl、F、BrおよびIからなる群より選択されるいずれかのハロゲンであり、R3は水素または炭素数1〜12の一価炭化水素基であり、hは4〜6の整数であり、nは2または3の整数である。)
上記式中のMQh -が、SbF6 -、AsF6 -、BF4 -あるいはPF6 -である化合物が、一般には使用される。
本発明のコーティング用組成物に使用されるラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の添加量としては、それぞれ0.005〜10質量%の範囲が好ましい。この範囲を超えて少ない場合は、硬化不良、硬度の不足などの問題が生じる懸念があり、多い場合は、着色の問題が発生する懸念があるため、それぞれ好ましくない。
<(D)(メタ)アクリレート類>
本発明の無溶剤紫外線硬化型コーティング用組成物として、上記(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)末端がSiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物および(C)光重合開始剤だけでは無溶剤化するための脱溶媒工程でゲル化してしまうため目的を達成し得ない。脱溶媒工程において(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)(末端がSiOH型で、特定の有機官能基を含む)アルコキシシラン加水分解縮合物を安定した状態で存在させるために、(D)(メタ)アクリレート類が必須となる。
(D)(メタ)アクリレート類としては、(A)金属酸化物コロイドゾルおよび(B)アルコキシシラン加水分解縮合物を安定に溶解し、(C)光重合開始剤で重合する不飽和二重結合を1個以上有する光重合性化合物が好適なものとして挙げられ、VOC削減の観点からは、常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性を有し、単官能および/または多官能の(メタ)アクリレート類を特に好適な物として挙げることができる。
(C)光重合開始剤で重合する不飽和二重結合を1個以上有するとともに、常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性を有し、単官能および/または多官能の重合性化合物として具体的には、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ぺンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;
また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネートなどの3官能(メタ)アクリレート類;また、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシ)ホスフェ−ト、ヘキサメタクリロイロキシエトキシシクロトリホスファゼン(PPZ)などの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに上記したような化合物の他にポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、変性ポリブタジエン等を挙げることができる。
(D)(メタ)アクリレート類のソリッド分は、(A)金属酸化物コロイドゾル、(B)アルコキシシラン加水分解縮合物および(D)(メタ)アクリレート類のソリッド分の合計量に対して10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%、最も好ましくは40〜80質量%である。
(D)(メタ)アクリレート類の添加量、存在量がこれより少な過ぎる場合、目的とする効果を期待することが困難な場合があり、多過ぎる場合は安定性、透明性、耐クラック性、硬度、耐熱性など溶液特性、皮膜特性上不利となる懸念がある。
本発明のコーティング用組成物においては、以上(A)〜(D)の成分の他、前記式(1)中の官能基R2と、反応する官能基、または、化学的相互作用により安定化する官能基を有する第1の有機重合体をさらに含有する。
第1の有機重合体としては、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、およびペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物のようなアルコキシシリル基変性多官能アクリレート類;ジアリルフタレート樹脂、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(以上、(メタ)アクリレート類とラジカル反応、チオール酸と付加反応);ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリチオール樹脂、ポリカルボン酸類(以上、エポキシ基と付加反応);エポキシ樹脂(アミノ基、メルカプト基と付加反応);等が挙げられる。
<その他の成分>
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物は、以上(A)〜(D)の成分及び第1の有機重合体を必須とするが、必要に応じてその他の成分が添加される。
本発明のコーティング用組成物においては、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物に含まれる−SiOH基または他の官能基と反応することにより、もしくは水素結合、π−π共役、配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基または構造を有する第2の有機重合体を、反応系中に存在させることができる。かかる第2の有機重合体を含有することによって、容易に無機−有機ハイブリッド体を形成することが可能となる。
第2の有機重合体の内、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物に含まれる−SiOH基または他の官能基と反応することにより、もしくは水素結合することにより、安定化する官能基または構造を有する有機重合体としては、アクリルシリコーン、アルコキシシリル基変性エポキシ樹脂、アルコキシシリル基変性ウレタン樹脂、アルコキシシリル基変性ポリエステル、アルコキシシリル基変性ポリブタジエン、アルコキシシリル基変性フッ素樹脂など各種シリル化ポリマー;エポキシ樹脂;各種グリシジルエーテル;アクリルポリオール、エポキシポリオールなどポリオール類;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリオキサゾリン樹脂、ポリチオール樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂などを例示することができる。
また、第2の有機重合体の内、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物に含まれる−SiOH基または他の官能基との、π−π共役や配位結合などの化学的相互作用により安定化する官能基または構造を有する有機重合体としては、ポリスチレン、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、各種アイオノマー樹脂、有機金属含有ポリマーなどが例示される。
これら第2の有機重合体は、オルガノシロキサン部位と安定化、一体化して樹脂の骨格に取り込まれ、オルガノシロキサンの無機特性に対して有機特性を付与する特性上、合成の初めの段階で仕込まれるべきである。いわゆる、オルガノシロキサン加水分解重縮合の系中に添加されるin situゾルゲル法が適用される。
これら有機重合体(第1の有機重合体および第2の有機重合体の双方)を含有する本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物を用いることで得られる硬化皮膜は均質で、実質的に無色透明で、無機シロキサン樹脂組成物由来の硬度、耐擦傷性、耐熱性、耐候性、耐酸性等の諸特性と、ハイブリッド化して導入される有機成分由来の諸特性を併有させることが可能となる。
これら有機重合体の配合量(第1の有機重合体と第2の有機重合体の合計量)としては、(A)金属酸化物コロイドゾルのソリッド分に(B)アルコキシシラン加水分解縮合物のソリッド分を加えた無機成分Xに対する、上記有機重合体成分のソリッド分Yの質量比(X/Y)で表したとき、95/5〜50/50が好ましく、90/10〜70/30がより好ましい。この範囲を超えて有機重合体配合量が少ないと、その添加効果が出にくくなり、また、多くなりすぎると、無機特性、特に耐擦傷性が低下し、また、当該樹脂組成物の粘度が高くなりすぎたり、場合によっては、固形化してしまうため好ましくない。
本発明のコーティング用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、塗工性および得られる塗膜の平滑性や外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。かかる添加剤の配合量としては、既述の(A)〜(D)の各成分および必要に応じて添加される有機重合体の全成分合計量100質量部に対して0.001〜2質量部の範囲が好ましい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、フィラーなどを、公知の知見に従って配合してもかまわない。
本発明のコーティング用組成物は、昨今の環境問題を鑑みて、無溶剤型である。無溶剤の定義は日本塗料工業会が採用している世界保健機構(WHO)のVOC分類に基づく「沸点範囲(常圧;50−100℃〜240−260℃)の揮発性有機化学物質」を含まないものとした。すなわち、本発明において、「無溶剤」との表記は、「常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性」と定義付けられるものとする。
[本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物の製造方法]
本発明の紫外線硬化型コーティング用組成物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある。)は、ゾルゲル法を利用したアルコキシシランの加水分解重縮合反応と、それに続く脱溶媒反応である。詳しくは、(A)金属酸化物コロイドゾル存在下で、ゾルゲル法により(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物を合成せしめ<工程I>、(D)(メタ)アクリレート類を添加したのち溶媒を留去し<工程II>、(C)光重合開始剤を加える<工程III>ことを特徴とする。
本発明の製造方法により、最終的に、既述の本発明のコーティング用組成物に相当する組成を有し、沸点が260℃以下の物質を含まず、かつ、常温、常圧で液状を呈するコーティング用組成物を得る。もし、260℃以下の沸点を有する物質を含んでいれば無溶剤に当たらず、かかる物質を含んでいなかったとしても常温、常圧で液状でなければ、塗布作業を行うことができず、コーティング剤として機能しない。
以下、好ましい態様について、工程を追って説明する。なお、本発明の製造方法は、以下の態様に限定されるものではない。
<工程I>
本工程では、当該(A)金属酸化物コロイドゾル存在下で、ゾルゲル法により(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物を形成する。
(A)金属酸化物コロイドゾルは、酸性サイドの物を使用することが好ましい。もしもアルカリ性サイドの物であった場合には、適当な酸でpHが3〜4の准安定域に予め調整しておく。
前記式(1)で表されるアルコキシシランモノマー、および当該樹脂組成物用に設計、選択された有機重合体(前記第1の、および/または、第2の有機重合体)を適切な割合で反応容器に仕込み、溶媒として十分な親水性溶媒/ポリマーの良溶媒を添加する。N2ガスで十分パージし、温度を例えば35℃に保持し、スターラーで攪拌する。ここに、予め調製しておいた(A)金属酸化物コロイドゾルを含む酢酸酸性水溶液を例えば1時間かけて滴下する。このときの水の全添加量は重要で、既述の式(1)で表される特定のアルコキシシラン1モルに対して水の添加量を3.1モル〜6モルとすることにより、最適な条件で合成することができる。
水/(A)金属酸化物コロイドゾル/酸の滴下終了後、例えば、35℃に30分保ち、ヒーターを取り付けて、30分かけて60℃まで昇温し、3時間ランニングさせる。
以上のようにして、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物を合成した。
<工程II>
本工程では、工程Iで得られた溶液に対し、(D)(メタ)アクリレート類を添加したのち溶媒を留去する。
前工程でのランニング終了後、設計量の(D)(メタ)アクリレート類を仕込み、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去した。
<工程III>
本工程では、(C)光重合開始剤を加える。本工程では、さらに、必要に応じて添加される添加剤等のその他の成分も添加される。
すなわち、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の2種類の(C)光重合開始剤と、必要に応じて添加剤とを添加する。
以上のようにして、目的物たる本発明の無溶剤型の紫外線硬化型コーテイング用組成物を得た。
[本発明の樹脂被覆品]
本発明の樹脂被覆品は、以上説明した本発明のコーティング用組成物が、その表面の一部または全面に被覆されてなる物である。被覆される対象物たる基材は、硬質樹脂被膜の形成が望まれるあらゆる物品が挙げられる。
基材の表面の一部または全面に本発明のコーティング用組成物を被覆するには、本発明のコーティング用組成物を塗布した上で硬化することにより、所望の硬化被膜が得られる。
本発明のコーティング用組成物の基材(被塗物)表面への塗布は、バーコート法、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ローラーコート法、リバースコートあるいはグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などといった、従来公知のあらゆる塗装方法、印刷方法によることが可能であり、塗布される基材の形状に応じて適宜選択することができる。
また、本発明のコーティング用組成物は、塗料、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキなどのインキバインダー、およびラミネーション接着剤を含む各種接着剤として使用することができる。
本発明のコーティング用組成物は、公知の紫外線硬化方法により硬化させることができ、特に紫外線もしくは電子線を用いることが好ましい。
紫外線照射装置としては、通常200〜500nmの範囲の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を有するものが使用できる。紫外線の積算光量は、用途、膜厚、着色剤の有無、(C)光重合開始剤の種類および量等により必要最低積算光量が左右されるため一概には言えない。
これら紫外線や電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用は効果的である。
また、本発明のコーティング用組成物は、フリーラジカルによるアクリレート成分とカチオンによるシロキサンおよびエポキシ成分の複合架橋により硬化していく。反応速度としては「ラジカル反応>カチオン反応」であり、無機/有機配合量、有機成分、無機成分の選択により硬化性、柔軟性を制御したり、UV照射後に後加工することも可能となる。
本発明のコーティング用組成物の厚みは、通常0.1〜20μm、好ましくは2〜10μm、最も好ましくは3〜8μmである。コート層の厚みがかかる範囲内で塗布された場合には、硬化時に発生する応力の為にコート層と基材との密着性が低下したりすることなく、高硬度、耐擦傷性、耐摩耗性を有するコート層を得ることができる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これにより本発明が限定されるものでないことは言うまでもない。
<合成例1:シリル化多官能アクリレートの合成>
窒素導入管および温度計を取り付けた300mlの4口フラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製、商品名ライトアクリレートPE−3A)149gを秤量して仕込み、102.5gのγ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー社製、商品名Y−5187)を室温で1hかけて滴下した。これを60℃に昇温し3h反応させた。
FT−IRにより、2200cm-1のイソシアネートの吸収が消え、3300cm-1に−NHの吸収が現れ、1700cm-1以下にウレタンの吸収が出現したことから、ペンタエリスリトールトリアクリレートがシリル化されたことを確認した。
<合成例2:予備実験/加水分解条件の設定>
窒素導入管および温度計を取り付けた300mlの4口フラスコに、153.1gのメチルトリメトキシシラン、14.8gのメタノールを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、1mol/l(1N)酢酸水溶液9.6g、蒸留水72gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させて目的物を得た。得られた溶液は無色透明低粘性液体であり、GPC測定を行ったところ、そのピーク分子量はポリスチレン換算で670であった。また、FT−IR測定から、得られたものは末端SiOH型のシロキサン縮合物であった。
この予備実験によりトータルソリッド30質量%、水4mol/シラン1mol仕込み条件で、ピーク分子量が1000以下の(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物が合成できることが確認できた。
[実施例1]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、81gのメチルトリメトキシシラン、140gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、23.6gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、9.6gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、105.3gのメタノールを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、スノーテックスO40{日産化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)40%}94.5g、1mol/l(1N)酢酸水溶液11.3g、蒸留水28.0gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ネオペンチルグリコールジアクリレート126g、トリメチロールプロパントリアクリレート25.2g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100.8gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(ラジカル系光重合開始剤、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物、チバスペシャルティーケミカルズ社製)を15g、サンエイドSI100(カチオン系光重合開始剤、芳香族スルホニウム塩とγ−ブチロラクトンの混合物、三新化学工業社製)を5g、KF−618(湿潤剤、変性シリコーンオイル、信越化学工業社製)を0.5g、UCR L72(レべリング剤、特殊アクリル重合物、共栄社化学社製)を0.5g添加して、実施例1のコーティング用組成物を得た。
[実施例2]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、81gのメチルトリメトキシシラン、140gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、23.6gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、9.6gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、105.3gのメタノールを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、スノーテックスO40{日産化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)40%}94.5g、1mol/l(1N)酢酸水溶液11.3g、蒸留水28.0gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ネオペンチルグリコールジアクリレート126g、トリメチロールプロパントリアクリレート13g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート113gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を15g、サンエイドSI100(三新化学工業社製)を5g、KF−618(信越化学工業社製)を0.5g、UCR L72(共栄社化学社製)を0.5g添加して、実施例2のコーティング用組成物を得た。
[実施例3]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、81gのメチルトリメトキシシラン、140gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、23.6gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、9.6gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、105.3gのメタノールを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、スノーテックスO40{日産化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)40%}94.5g、1mol/l(1N)酢酸水溶液11.3g、蒸留水28.0gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50.4g、ペンタエリスリトールトリアクリレート50.4g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12.6g、トリメチロールプロパントリアクリレート12.6gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を10g、サンエイドSI100(三新化学工業社製)を3.3g、KF−618(信越化学工業社製)を0.33g、UCR L72(共栄社化学社製)を0.33g添加して、実施例3のコーティング用組成物を得た。
[実施例4]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、115gのメチルトリメトキシシラン、198gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、42.5gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、9.6gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、180gのIPA−ST−ZL(日産化学工業社製オルガノシリカゾル)を仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、1mol/l(1N)酢酸水溶液16.1g、蒸留水121gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ネオペンチルグリコールジアクリレート94.3g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリート104.8g、ペンタエリスリトールトリアクリレート36.7g、トリメチロールプロパントリアクリレート26.2gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を15g、サンエイドSI100(三新化学工業社製)を5g、KF−618(信越化学工業社製)を0.5g、UCR L72(共栄社化学社製)を0.5g添加して、実施例4のコーティング用組成物を得た。
[実施例5]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、67gのメチルトリメトキシシラン、116gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、42.5gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製サイラエースS510)、9.6gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、アトムコンポブリッドAB3073(アトミクス(株)製メタノール溶剤型アクリルシリコーン樹脂)23g、メタノール114gを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、スノーテックスO40{日産化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)40%}85.1g、1mol/l(1N)酢酸水溶液10.1g、蒸留水25.2gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ネオペンチルグリコールジアクリレート182.7g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリート146.2g、トリメチロールプロパントリアクリレート36.5gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を21.9g、サンエイドSI100(三新化学工業社製)を7.3g、KF−618(信越化学工業社製)を0.7g、UCR L72(共栄社化学社製)を0.7g添加して実施例5のコーティング用組成物を得た。
[比較例1]
窒素導入管および温度計を取り付けた500mlの4口フラスコに、34.3gのメチルトリメトキシシラン、34.3gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−5103)、2.0gの合成例1のシリル化多官能アクリレート、15gのライトアクリレートDPE−6A(共栄社化学社製)、220.5gのイソプロピルアルコール(IPA)を仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、シリカドール33A(日本化学工業社製シリカゾル、NV(固形分濃度)33%)153g、1mol/l(1N)酢酸水溶液4.3gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させて目的物を得た。得られた溶液は乳白色透明低粘性液体であった。
次いで、合成物を褐色瓶に移し、イルガキュアー184(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を4.2g、サンエイドSI100L(三新化学工業社製)を4.2g添加して、比較例1のコーティング用組成物を得た。
[比較例2]
実施例1と同じ様にゾルゲル反応を実施し、(D)アクリレート類を添加せずに、脱溶媒したところ、脱溶剤の進行に従い、反応液はゲル化していった。
[比較例3]
窒素導入管および温度計を取り付けた1リットルの4口フラスコに、122.4gのメチルトリメトキシシラン、210.6gのγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名KBM−5103)、117gのIPAを仕込み、窒素をバブリングしながら均一に攪拌した。
別に、1mol/l(1N)酢酸水溶液16.1g、蒸留水29.1gを秤量し、均一になるまで混合した。これを上記4口フラスコに1時間かけて滴下ロートにて滴下した。この時、フラスコ内の温度は35℃に保った。
滴下終了後35℃に30分間保ち、その後30分かけて60℃に昇温し、3時間反応させた。ランニング終了後、ネオペンチルグリコールジアクリレート77.1g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート61.7g、トリメチロールプロパントリアクリレート15.2gを加え、150mmHgの減圧下において50℃の温度で系内の水および有機溶媒を完全に除去し、イルガキュア754(チバスペシャルティーケミカルズ社製)を9.3g、サンエイドSI100(三新化学工業社製)を3.1g、KF−618(信越化学工業社製)を0.3g、UCR L72(共栄社化学社製)を0.3g添加して、比較例3のコーティング用組成物を得た。
[評価塗膜作製方法]
ポリカーボネート樹脂板の表面をイソブタノールで脱脂処理した基材に対し、上記得られた実施例および比較例(ただし、比較例2を除く。)の各コーティング用組成物を#20バーコーターにて均一に塗布し、10分間セッティングの後下記条件でUV硬化させて、各種評価用塗膜を作製した。
(UV硬化条件)
ウシオ電機社製UV照射装置「UVC−5034」を用い、メタルハライドランプ80W/cm、該ランプの高さ120mm、コンベヤー速度3m/分、照射光量1000mJ/cm2の条件で、UV硬化させた。
なお、(4)鉛筆硬度の評価用として、基材をボンデライト鋼板にして、上記と同様に塗膜形成したものを作製した。
また、(7)耐クラック性および(8)可撓性の評価用として、脱脂処理後のポリカーボネート樹脂板基材に対して、各コーティング用組成物の乾燥膜厚が20μmになるように調整して、フィルムアプリケーター法により塗布したことを除いて、上記と同様に塗膜形成したものを作製した。ただし、比較例3のコーティング用組成物については、硬化不良(タック大)であったため、(7)耐クラック性および(8)可撓性の評価は実施しなかった。
[評価方法]
(1)溶液外観:
得られた実施例1〜5および比較例1〜3の各コーティング用組成物の溶液を試験管に満たし、外観を目視にて判定した。
(2)溶液粘度:
得られた実施例1〜5および比較例1、3の各コーティング用組成物の溶液について、室温(23℃)下における粘度を測定した。
(3)塗膜外観:
評価用塗膜の外観を、濁り、艶びけ、ブツ、クラックなどの有無を中心に目視にて確認した。評価基準は、以下のとおりである。
○・・・良好
×・・・濁り、艶びけ、ブツ、クラックなどの塗膜外観異常あり
(4)鉛筆硬度:
評価用塗膜について、JIS K5600−5−4引っかき硬度(鉛筆法)に従って鉛筆硬度を測定した。当該評価のみ、基材がボンデライト鋼板のものを用いた。
(5)耐擦傷性:
評価用塗膜について、#0000スチールウールを用い、500gの荷重で20回擦った後の表面の傷つき状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
◎・・・全くキズがつかない
○・・・わずかに1〜2本キズがつく
△・・・数本のキズがつく
×・・・全面にキズがつく
(6)溶液安定性:
得られた実施例および比較例(ただし、比較例2を除く。)の各コーティング用組成物の溶液を密閉容器に封入して、恒温室(23℃)に3カ月間放置した後の状態を観察し、以下の評価基準で評価した
○・・・全く変化なし
×・・・顕著な増粘〜ゲル化
(7)耐クラック性:
乾燥膜厚が20μmの評価用塗膜について塗膜外観を観察し、以下の評価基準で評価した。
◎・・・クラック、割れ、はがれ無し
○・・・厚塗り部一部クラック有り
△・・・クラック発生
×・・・全面クラック、はがれ発生
(8)可撓性:
(7)耐クラック性の評価試験後の塗膜を、ポリカーボネート樹脂板基材ごと10回たわませた後の塗膜外観を観察し、以下の評価基準で評価した。
◎・・・クラック、割れ、はがれ無し
○・・・部分的に一部クラック有り
△・・・大きくクラック発生
×・・・全面にクラック、割れ、はがれ発生
(9)溶液の臭気:
得られた実施例および比較例(ただし、比較例2を除く。)の各コーティング用組成物の溶液について、無作為に集めた10人のモニタリングにより、以下の基準で評価した。
○・・・強い臭気を感じた人間が3人以下であった。
△・・・強い臭気を感じた人間が4人以上6人以下であった。
×・・・強い臭気を感じた人間が7人以上であった。
[結果]
実施例および比較例のコーティング用組成物のスペック、および上記評価試験の結果を下記表1および表2にまとめる。
Figure 0005525152
Figure 0005525152
[結果の考察]
以上の結果より、本発明のコーティング用組成物によるコーティング膜が、硬質で耐擦傷性に優れたものであることがわかる。また、本発明のコーティング用組成物の溶液が、粘度や溶液安定性に優れ塗布適性を有し、臭気の発生の無い環境への配慮が為されたものであることがわかる。

Claims (6)

  1. (A)金属酸化物コロイドゾル、(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物、(C)光重合開始剤および(D)(メタ)アクリレート類を必須成分とし、
    (B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物が、下記式(1)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物であり、
    Si(R4−a−b ・・・ (1)
    (式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rはアリール基、ハロゲン化アリール基、置換アリール基、ハロゲン化アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基およびシアノ基からなる群より選ばれる1以上の基を含む有機官能基を表し、Rは炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基、イソシアナト基またはアルコキシアルコキシ基を表し、aは0,1,2のいずれかの整数であり、bは1または2であり、a+bは1または2である。)
    (B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物のうちの少なくとも一部が、式(1)中のRとして、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基およびメルカプト基からなる群より選ばれるいずれかの有機官能基を含み、かつ、
    式(1)中の官能基Rと、反応する官能基、または、化学的相互作用することにより安定化する官能基を有する有機重合体をさらに含有し、
    (C)光重合開始剤が、ラジカル系光重合開始剤およびカチオン系光重合開始剤の双方を含むことを特徴とする常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性の紫外線硬化型コーティング用組成物。
  2. (B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物に含まれる−SiOH基と反応することにより、もしくは化学的相互作用することにより、安定化する官能基または構造を有する有機重合体をさらに含有する請求項1に記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
  3. (D)(メタ)アクリレート類が、常圧で沸点が260℃を超える液状不揮発性を有し、単官能および/または多官能の(メタ)アクリレート類である請求項1または2に記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
  4. 形成される硬化皮膜が実質的に無色透明である請求項1〜のいずれかに記載の紫外線硬化型コーティング用組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の紫外線硬化型コーティング用組成物の製造方法であって、
    (A)金属酸化物コロイドゾル存在下で、ゾルゲル法により(B)末端SiOH型アルコキシシラン加水分解縮合物を合成せしめ、(D)(メタ)アクリレート類を添加したのち溶媒を留去し、(C)光重合開始剤を加えることを特徴とする無溶剤紫外線硬化型コーティング用組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜に記載の硬化皮膜形成用コーティング用組成物が、その表面の一部または全面に被覆されてなることを特徴とする樹脂被覆品。
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