JP4206285B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水を含有する常温硬化型樹脂組成物に関する。さらに本発明は前記樹脂組成物により形成される塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤を含まず、また、硬化時にホルムアルデヒド等の刺激物を発生せず、しかも作業環境良好な、塗料、インキ、コーティング材、接着剤等のベヒクルとして、又は繊維、フィルム、紙製品の加工剤等に有用である樹脂組成物として、自己分散型水系ポリエステル(特許文献1参照)や、有機過酸化物等の硬化剤を含有する熱硬化性の樹脂組成物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの樹脂組成物の硬化には加熱が必要で、熱源設備を必要とし、任意の場所で硬化できない。そこで、硬化温度を下げるため、半減期温度の低い過酸化物を用いると、樹脂組成物の保存安定性が悪化する。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−295100号公報
【特許文献2】
特開2000−264938号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた保存安定性を有し、作業環境良好で、水分を蒸発させることで常温でも容易に均一な硬化反応を生じ得る、優れた密着性を有する水を含有する樹脂組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、密着性、耐熱性及び耐水性に優れた塗膜を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
〔1〕 炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、酸価が3〜100KOHmg/gの樹脂と、水とを含有する樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を硬化させてなる塗膜、
に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の樹脂組成物は、前記のように、炭素数1〜5のアルコキシ基及びアミノ基を有するシランカップリング剤と、酸価が3〜100KOHmg/gの樹脂と、水とを含有してなるものであり、かかる樹脂組成物を用いることで、常温でも容易に均一な硬化反応を生じ、均一な塗膜、或いは、種々の部材に対して優れた密着性をもたらすという効果が発現される。
【0007】
中でも、本発明の樹脂組成物においては、前記特定のシランカップリング剤と特定の樹脂とを併用することで、硬化時に、樹脂とシランカップリング剤とが反応するだけでなく、シランカップリング剤自体が加水分解及び自己縮合反応したり、或いは基材とも反応するため、樹脂成分及び/又は繊維、骨材等の各種基材間の密着性を高め、或いは塗膜強度を高め、複合材料の特性を向上させることができる。
なお、従来からカップリング剤として良く使用されているアミノ基を有しないアルコキシシラン類については、後述の比較例に示すように、密着性や常温硬化性に劣る。
【0008】
本発明に用いられるシランカップリング剤は、炭素数1〜5のアルコキシ基を有するものであり、密着性や常温硬化性の観点から、下記式(1):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1 は炭素数2〜5(好ましくは炭素数3)のアルキレン基、
R2 は同一又は異なっても良い炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜2、特には1)のアルキル基又は炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜2、特には1)のアルコキシ基を示す。ただし、R2 の少なくても一つは、アルコキシ基(好ましくはジもしくはトリアルコキシ基)である。)
で表される構造単位を有することが好ましく、下記式(2):
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R1 およびR2 は、前記と同じ。R3 は、炭素数2〜5(好ましくは炭素数2)のアルキレン基を示す。)
で表される構造単位を有することがより好ましく、式(3):
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R1 〜R3 は、前記と同じ。R4 は水素原子又は水酸基を有してもよい炭素数1〜3のアルキル基(好ましくは水素原子)を示す)
で表される化合物が特に好ましい。
【0015】
前記シランカップリング剤としては、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、特にはジ又はトリアルコキシシリル基を有するものが好ましい。なお、これらは信越化学社等から容易に入手できる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0016】
本発明の樹脂組成物に含有される樹脂は、酸価が3〜100mgKOH/gであれば、縮重合系樹脂又は付加重合系樹脂の、前記シランカップリング剤の存在により硬化し得るものならいずれでもよいが、縮重合系樹脂が好ましい。特には、水に25℃で溶解度1重量%以下の疎水性樹脂であることが好ましい。なお、前記樹脂はウレタン結合、エポキシ結合等で変性されていてもよいが、変性されていないものが好ましい。これらの樹脂の酸価としては、密着性、水分散性、耐水性及び硬化性の観点から、好ましくは10〜70mgKOH/g、より好ましくは15〜50mgKOH/gである。前記酸価はJIS K 0070に従って測定する。
【0017】
前記樹脂の軟化点は、結合強度の観点から、70〜150℃、好ましくは85〜120℃が望ましい。樹脂のガラス転移点は10〜80℃が好ましく、50〜80℃がさらに好ましい。なお、数平均分子量は、好ましくは1000〜3万、より好ましくは2000〜1万である。
【0018】
本発明に用いられる縮重合系樹脂としては、本発明の所望の効果の発現の観点から、ポリエステル又はポリエステルポリアミドが好ましく、ポリエステルがより好ましく、ラジカル重合可能な不飽和結合を有するポリエステルが更に好ましい。
【0019】
本発明に用いられる縮重合系樹脂、たとえば前記ポリエステルは、構成モノマーとして以下に挙げる酸成分とポリオール成分とを縮重合させることにより製造することができる。
【0020】
酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、ダイマー酸、アルケニル(炭素数4〜20)コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の二価カルボン酸、及び1,2,4−ベンゼントリカルボン酸等の三価カルボン酸、それらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
一方、前記ポリオール成分としては、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数2〜10の脂肪族ポリオール又はビスフェノールA、水素化ビスフェノールA等の芳香族系ポリオール及びそれらのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(付加モル数:2〜20モル)が挙げられ、特には耐熱性及び耐水性の点よりビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ポリオール成分中50〜100モル%、更には80〜100モル%含有するのが好ましい。
【0022】
ポリオール成分と酸成分との縮重合は、公知の方法、たとえば、ポリオール成分と酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて180〜250℃の温度で反応させることにより行うことができ、その終点は分子量の指標となる軟化点(Tm)、酸価等の追跡により決定すればよい。
【0023】
なお、ポリオール成分と酸成分とのモル比は、得られるポリエステルの酸価、軟化点、数平均分子量及びガラス転移点(Tg)等の値により適宜決定すればよいが、1:0.6〜1:1.5(ポリオール成分:酸成分)であることが好ましい。
【0024】
また、この縮重合の際に、酸化ジブチル錫等のエステル化触媒、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤等の添加剤を適宜使用できる。
【0025】
一方、本発明に用いられる縮重合系樹脂の好ましい態様の1つである前記ポリエステルポリアミドは、公知の方法、たとえば、前記ポリエステルの製造に用いた酸成分及び前記ポリオールを含む成分中にアミン誘導体を添加して縮重合することにより製造することができる。かかるアミン誘導体としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、キシリレンジアミン等のポリアミンが好ましい。
【0026】
ポリエステルポリアミドの合成の際の、ポリオール成分、酸成分及びアミン誘導体のモル比は、前記ポリエステルの場合と同様に、該ポリエステルポリアミドの酸価、数平均分子量及びガラス転移点等の値により、適宜決定すればよい。
【0027】
なお、得られる縮重合系樹脂の酸価、軟化点、数平均分子量及びガラス転移点の調整は、例えば、その原料の種類及び前記酸成分/ポリオール成分のモル比、反応温度、反応時間等を調整することにより行うことができる。
【0028】
前記ポリエステル又はポリアミドが、フマル酸等ラジカル重合性単量体を構成成分とする不飽和ポリエステル又は不飽和ポリエステルポリアミドである場合は、ラジカル発生剤を添加して、硬化を助けることもできる。ラジカル発生剤の添加方法としては、特開2000−264938号記載の方法でも良いし、水溶性であれば、後述のように水系分散体とした樹脂に添加することもできる。ラジカル発生剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等の水溶性硬化剤、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等の油溶性硬化剤等が挙げられる。
【0029】
更にアニリン誘導体、亜硫酸ナトリウム等の硬化促進剤を添加しても良い。
【0030】
本発明に用いられる付加重合系樹脂としては、本発明所望の効果発現の観点から、ビニル系樹脂が好ましく、重合の際には過酸化物、アゾ化合物、過硫化物等の前記のラジカル発生剤を用いるのが好ましい。また、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合、何れの重合法を用いても構わないが、水分散体製造の点から、溶液重合法が好ましい。なお、溶液重合法では、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤を用い、重合後、減圧下に溶剤を留去する。
【0031】
ビニル系樹脂を形成するために使用される単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン若しくはスチレン誘導体;エチレン、プロピレン等のエチレン系不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、酢酸ビニル、等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、等のエチレン性モノカルボン酸及びそのエステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のエチレン性モノカルボン酸置換体;マレイン酸等のエチレン性ジカルボン酸;ビニルケトン類;ビニルエーテル類、ビニリデンハロゲン化物;N−ビニル化合物類等が挙げられる。本発明において、好ましくはスチレン、エチレン性モノカルボン酸及びそのエステルが用いられ、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜8)エステルがより好ましく用いられる。
【0032】
また、必要に応じて、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和結合を2個以上有する化合物を架橋剤として使用することもできる。
【0033】
本発明の樹脂組成物に含有される付加重合系樹脂の酸価は前記した通りであるが、当該酸価は(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等の酸基含有単量体の導入量を調整することで容易に達成できる。
【0034】
また、前記ビニル系樹脂の軟化点は、前記した通りであるが、かかる樹脂の軟化点の調整は単量体の種類、量、ラジカル発生剤量等の調整又は反応条件の選択により、当業者に公知の方法で容易に行うことができる。
【0035】
本発明において、前記樹脂の形態は、耐水性の観点から、塩基性化合物で予め中和した水分散体であることが好ましく、その平均粒径としては、分散性の観点から、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.05〜2μmである。なお、前記酸価は、水分散体を得る観点からも好ましい。また、前記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置、SALD−2000J(商品名、島津製作所製)により測定する。
【0036】
塩基性化合物としては、樹脂のカルボキシル基をイオン化するものであれば特に限定はないが、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属等の水酸化物、アンモニア及び有機アミン類であり、アンモニア及び有機アミン類が硬化が早く好ましい。有機アミン類としては、水分散体の安定性の点で、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン及びトリエタノールアミンが好ましい。
【0037】
塩基性化合物の量は、安定な水分散体を製造する観点から、該樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、0.8〜1.4当量が好ましい。
【0038】
また、分散体の製造方法には、特に限定はないが、該樹脂と塩基性化合物を水中で、必要に応じて公知の界面活性剤存在下で、乳化機により強制乳化させる方法、或いは転相乳化する方法が挙げられ、安定性の点から、転相乳化法が好ましい。転相乳化は、該樹脂を有機溶剤に溶解させ、塩基性化合物及び水、さらに必要に応じて界面活性剤を加えた後、有機溶剤を留去して水系に転相することが好ましい。また、平均粒径は、樹脂の分子量、酸価、中和度の調整や転相乳化条件等を変えることによって適宜調整することができる。なお、ビニル系樹脂等を乳化重合等の安定な水分散体として製造した場合には、そのまま使用してもよい。
【0039】
前記有機溶剤としては、アセトン、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン及びTHF等、水溶性で水より沸点の低いものが好ましい。有機溶剤の使用量としては、水分散体に用いられる樹脂100重量部に対し有機溶剤100〜600重量部であることが好ましい。
【0040】
また、前記転相時の水の量としては、樹脂100重量部に対し、100〜1000重量部であることが好ましい。この場合、水に、高級アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩等の界面活性剤を樹脂100重量部に対し1〜20重量部程度さらに添加して、水分散体中の当該樹脂微粒子の平均粒径を調整してもよい。
【0041】
また、有機溶剤の留去は、減圧下25〜70℃で行うことが好ましく、有機溶剤の含有量を好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下に調整することが望ましい。また、得られた処理液のpHを6〜10となるように前述の塩基性化合物等を用い調整することがさらに好ましい。
【0042】
以上のようにして得られる水分散体は、例えば、前記転相乳化によって得られたそのものであってもよいが、さらに水を添加したものでもよい。
【0043】
かかる水分散体中の樹脂の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%であり、水の含有量は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%である。
【0044】
本発明において、樹脂を水分散体とし、これに前記シランカップリング剤を組み合わせることで、常温での保存安定性が良好であり、水分の蒸発により常温で反応、硬化する本発明の樹脂組成物が得られる。前記シランカップリング剤を前記水分散体と混合する場合、直接混合する以外に、各種基材にシランカップリング剤を添加した後に前記水分散体と混合してもよい。
【0045】
中でも、本発明の樹脂組成物における前記樹脂/前記シランカップリング剤の重量比率は、強度、硬化時間の観点から、70/30〜99.9/0.1が好ましく、更には80/20〜99/1が好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物中の樹脂の含有量は、10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましい。シランカップリング剤の含有量は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。水の含有量は、39.9〜89.9重量%が好ましく、50〜79.9重量%がより好ましい。
【0047】
また、本発明の樹脂組成物には、前記シランカップリング剤の加水分解、自己縮合反応を促進すべく、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸第一錫等の公知の触媒を使用しても構わない。
【0048】
さらに本発明の樹脂組成物には、前記成分の他に、公知の各種添加剤、たとえば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤、EDTA等のキレート剤、亜硫酸塩、炭酸カルシウム、タルク等の公知の充填剤、フタル酸ジアリル等の公知の可塑剤、顔料、染料、酸素吸収剤等を本発明の所望の効果を損なわない範囲で配合してもよいし、樹脂に内部添加しておいてもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物には、前記成分の全て又は適宜選択された成分をそれぞれ予め混合して調製物とすることもでき、もしくは使用する直前にそれらを混合して調製物とすることもできる。
【0050】
本発明の樹脂組成物は、安全性に優れ、かつ常温でも水の蒸発により均一な硬化反応を生じ得るものであり、種々の基材に対する密着性に優れるものであるため、塗料、インキ、コーティング材、接着剤等のベヒクルとして、又は繊維、フィルム、紙製品の加工剤として好適に使用することができる。
【0051】
中でも、本発明の樹脂組成物を公知の方法、例えば、常温で水分を蒸発し硬化させてなる塗膜は、耐熱性及び耐水性に優れるものであり、好ましい。硬化方法としては、常温で水分を蒸発できる方法であれば、特に限定はない。
【0052】
【実施例】
樹脂製造例1
ポリエステルの調製
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)3500g、フマル酸1160g、ハイドロキノン0.3g及び酸化ジブチル錫8.4gを窒素気流下にて160℃で4時間反応させた。その後、200℃まで昇温後、常圧にて1時間、9.33kPaの減圧下で1時間反応させた。得られたポリエステルは酸価(AV)が23.0mgKOH/g、水酸基価(OHV)は33.7mgKOH/g、軟化点(Tm)が95.1℃、ガラス転移点(Tg)が61.3℃、数平均分子量3300の固体であった。また、このポリエステルは水に溶解せず、疎水性を示した。軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所製)を用い、荷重20kgf(196N)、オリフィス径10mm、オリフィス長さ1mm、3℃/分の昇温条件で測定し、半量流れ出た温度を軟化点とした。水酸基価は、JIS K0070の方法により測定した。また、ガラス転移点は、示差走査熱量計、DSC200(商品名、セイコー電子社製)により、10℃/分の昇温条件にて測定し、接線法で求めた。分子量はGPCにより、40℃で、溶離液としてクロロホルムを毎分1mlの流速で流し、試料濃度0.5重量%のクロロホルム溶液を100μl注入して測定した。標準試料:単分散ポリエチレン。分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー(株)製)。
【0053】
樹脂製造例2
ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.2モル)2450g、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数:2.1モル)950g、テレフタル酸830g、ドデセニル無水コハク酸670g、及び酸化ジブチル錫11gを窒素気流下にて230℃で5時間反応させた。その後、200℃まで降温し、無水トリメリット酸480gを加え、常圧にて1時間、9.33kPaの減圧下で1時間反応させた。得られたポリエステルは酸価が31.7mgKOH/g、水酸基価は32.5mgKOH/g、軟化点が104.3℃、ガラス転移点(Tg)が64.0℃、数平均分子量3900の固体であった。また、このポリエステルは水に溶解せず、疎水性を示した。
【0054】
樹脂製造例3
ビニル系樹脂の調製
キシレン550gに、窒素気流下135℃でスチレン820g、2−エチルヘキシルアクリレート150g、メタクリル酸30g及びラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド50gの混合液を1時間かけて滴下し、さらに2時間熟成した。その後、200℃まで昇温し、減圧下でキシレンを留去してバットに抜き出した。得られたビニル系樹脂は酸価が20.5mgKOH/g、軟化点が110.0℃、ガラス転移点(Tg)が63.0℃、数平均分子量3250の固体であった。また、このビニル系樹脂は水に溶解せず、疎水性を示した。
【0055】
(1)水分散体(A)の調製
樹脂製造例1で得られたポリエステル300g及びフタル酸ジアリル45gをメチルエチルケトン540gに溶解させた。次いで、N,N−ジメチルエタノールアミン12gを添加して中和し、攪拌下でイオン交換水680gを加えた後、減圧下40℃でメチルエチルケトンを留去し水分調整を行い、pH8.4の自己分散型水系ポリエステル樹脂(平均粒径:0.46μm、固形分:35重量%)を得た〔水分散体(A)〕。
【0056】
(2)水分散体(B)、(C)の調製
樹脂製造例2で得られたポリエステル又は樹脂製造例3で得られたビニル樹脂を用いる以外は水分散体(A)と同様にして、自己分散型水系ポリエステル樹脂(平均粒径:0.52μm、固形分35重量%)〔水分散体(B)〕、自己分散型水系ビニル樹脂(平均粒径:0.38μm、固形分35重量%)〔水分散体(C)〕を得た。
【0057】
実施例1〜4、比較例1〜6
水分散体とシランカップリング剤を表1に記載の量で混合して樹脂組成物を得、下記の方法に従って成膜時間、密着性、耐熱性及び耐水性を評価した。
【0058】
樹脂組成物を24℃の室温下で、バーコーターを用いてスレート板上に0.1mm厚になるように塗工した。この塗工してから樹脂組成物が膜化するまでの時間を成膜時間として測定した。
また、密着性は、成膜を金属性スパチュラで剥がすことで評価し、容易に剥がせないものを「◎」とし、力を加えればなんとか剥がれるものを「○」とし、容易に剥がせるものを「×」とした。
耐熱性は、成膜を有するスレート板(以下、硬化物という)を120℃のオーブンに100時間放置した後の硬化物の状態を目視で評価し、硬化物に変化がないものを「○」とし、変化があったものを「×」とした。
また、耐水性は、硬化物を40℃の湯に24時間漬けた後の硬化物の状態を目視で評価し、硬化物に変化がないものを「○」とし、変化があったものを「×」とした。
これらの実施例1〜4及び比較例1〜6の結果を表1に示す。
【0059】
なお、実施例2で用いた樹脂組成物は、調製した後40℃で1ヶ月放置したものを用いた。また、実施例3では、スレート板のかわりにポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果より、本発明の樹脂組成物は常温で短時間で硬化でき、その密着性、硬化後の耐熱性、耐水性も良好であることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
本発明の水を含有する樹脂組成物は、優れた保存安定性を有し、作業環境良好で、水を蒸発させることで常温でも容易に均一な硬化反応を生じ、優れた密着性、耐熱性及び耐水性を有する塗膜を生じるため、かかる樹脂組成物を、塗料、インキ、コーティング材、接着剤等のベヒクルとして、又は繊維、フィルム、紙製品の加工剤として好適に使用することができる。
Claims (5)
- ポリエステル/シランカップリング剤の重量比率が、70/30〜99.9/0.1である請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリエステルの平均粒径が0.01〜10μmである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- ポリエステルが、酸成分と、ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド付加物(付加モル数:2〜20モル)を50〜100%含有したポリオール成分とを縮重合させて得られるポリエステルである、請求項1〜3いずれか記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4いずれか記載の樹脂組成物を硬化させてなる塗膜。
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