JP5208519B2 - 電流消費低減化のためのメモリ・システムおよびその方法 - Google Patents

電流消費低減化のためのメモリ・システムおよびその方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般的にはメモリ・システムに関する。またより詳細には、メモリ・システムにおいて動作時の電流消費を低減化するために効率よくハイレベルおよびローレベルの電圧を発生させる回路およびその電圧発生方法に関する。
通常のnチャネルMOS(n-Channel Metal Oxide Semiconductor)のFET(Field Effect Transistor)をメモリ・セルのセル・トランジスタとして用いた従来のDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリでは、メモリ・セルのセル・トランジスタのゲートにつながっている各ワード線をドライブするワード線回路の消費電流が大きいことが従来から問題とされてきた。
即ち、このようなメモリのメモリ・セルへハイレベルの値の書き込みを行う際には、当該メモリ・セルのソースにつながったビット線(データ線)にハイレベルの電圧を与えることで行うため、当該メモリ・セルのゲートにつながったワード線のハイレベル電圧(高電圧、Vpp)は少なくとも、ビット線のハイレベル電圧よりもセル・トランジスタの閾値電圧(Vt)分以上高くしなければならない。また、ワード線の電圧をローレベルにしてメモリ・セルにデータを保持する状態では、セル・トランジスタのドレイン-ソース間のリーク電流をf(Femto、フェムト: 1x10-15)A(アンペア)のオーダー以下に抑えるため、Vtはかなり高くしなければならない。さらにビット線がハイレベルの時は、Vtの電圧で基盤がバイアスされた状態でのソース・フォロワー(ドレイン接地)動作であることから、実際にこのビット線のフルのハイレベルを高速でメモリ・セルに書き込みするのに十分なワード線の電圧(セル・トランジスタのゲート電圧)はかなり高く、3.0V以上にもなる。最近はDRAM技術の微細化でワード線電圧を低くする必要性から、ワード線のハイレベル電圧(Vpp)は2.6V〜2.8V程度になってきたが、このためセル・トランジスタのVtも下げなければならない。しかし、Vtを下げるとメモリ・セルのリーク電流が増加してしまうので、これを防ぐためワード線のローレベル電圧(低電圧、Vnn)としては−0.2V〜−0.5Vの負電圧が用いられている。これら2.6V〜2.8Vのワード線ハイレベル電圧と−0.2V〜−0.5Vの負電圧のワード線ローレベル電圧は、それぞれDRAMチップ内部のチャージ・ポンプ回路(それぞれVppポンプおよびVnnポンプと呼ぶ)でDRAMの内部電圧から発生される。このようにワード線のローレベル電圧に負電圧を使用することによってハイレベル電圧は2.6V〜2.8Vと下がってきたが、それを発生する内部電圧も1.6V程度に下がっており、両者の電圧比は大きいままで、以下に述べるチャージ・ポンプ回路の効率の悪さに起因する変換ロスから消費電流も大きいものとなっている。
S.I.Choらによる「IEEE Journal of Solid State Circuits」, pp.1726-1729, vol.38, no.10, Oct. 2003によれば、一般的に、チャージ・ポンプ回路の効率は悪く、特に高電圧を作る場合のVppポンプの効率は40%程度でしかない。また、Y. Nakagome らによる「IEEE Journal of Solid State Circuits」, pp.465-472, vol.26, no.4, Apr. 1991によれば、チャージ・ポンプ回路の効率が悪い原因は、ジャンクションの逆バイアスを防ぐために単一の種類のトランジスタを使用しているため、制御および駆動回路に大きな電流が流れることによる。即ち、Vppポンプは全てnチャネルMOS FETからなり、高い電圧を制御するためさらに高い電圧をゲートに与えなければならず、この電圧を作るのにもキャパシターによるポンプが必要で、例えばVppとして電源電圧の2倍を得るには最大で3倍の電圧を制御回路で作らなければならず、これが消費電流を大きくする原因となっている。
メモリの回路(ワード線回路)内で実際に使用される電流に百分比で表した効率値の逆数を掛けた値の電流が電源から流れることになるので、例えば効率が40%では、実際のワード線回路で使われる電流の2.5倍の電流がそのメモリ・チップ内で消費されることになる。また、昨今のDRAMの記憶容量の増大に伴って一度に活性化する必要のあるワード線が多くなってきたのに加えて、特にSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)では、一般にリフレッシュ時に全バンクを同時にリフレッシュするので、通常のアクセス時に比べてバンク数倍(通常は4バンク)のワード線を活性化しなければならず、512MbitのSDRAMでは、これだけで20mA程度にもなる場合があり、通常のアクセス電流やリフレッシュ電流の低減化に対する大きな障害となってきている。
一方、このように内部電圧より高い電圧であるVppを作り出すチャージ・ポンプ回路を用いない方法としては、従来からブースト回路を用いる方法があった。ブースト回路とはキャパシタとnチャネルMOS FETによるスイッチとによって電圧をブーストする回路のことで、DRAMが現在のようなCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ではなくn型MOSのみで作られていた頃(大体1MbitのDRAM以前の1980年代中頃まで)から用いられてきたよく知られた構成である。
特開平6−139776号公報には、このブースト回路の高速化に関するアイデアが開示されている。即ち、ロー・アドレス・デコーダ(Row Address Decoder)の周りには様々な寄生付加容量があるが、ブースト回路はこれらの容量のつながっているノードをブーストしなければならないので、当該容量が大きいとブーストに時間がかかり高速動作ができなくなる。これを解決するために、これらのノードに対する電圧レベルの昇圧を全て当該ブースト回路に頼るのではなく、別ルートでスイッチを通じて電源から予め所定の電圧レベルまで持ち上げておき、その後その所定の電圧レベルからそれより高いワード線電圧レベルまでを当該ブースト回路を用いて昇圧することにより、当該ノードに対する電圧レベルの昇圧における総合的な時間を短縮するものである。
しかし、この方法は電圧レベルの昇圧における高速化についてしか解決するものではなく、消費電流の低減化に対する解を提供するものではない。また、上記のように昨今はチャージ・ポンプ回路を用いてDC的に常時、電源電圧より高い電圧を発生させてそれをワード線に供給する構成が一般的であり、このような構成の下で、高い電圧を供給する際の高速化と供給時における低消費電流化とを実現するような方法は考えられていなかった。
S.I.Cho et al., IEEE Journal of Solid State Circuits, pp.1726-1729, vol.38, no.10, Oct. 2003. Y.Nakagome et al., EEE Journal of Solid State Circuits, pp.465-472, vol.26, no.4, Apr. 1991. 特開平6−139776号公報
そこで本発明は、メモリ・セルのゲートをドライブするワード線に供給するハイレベルおよびローレベルの電圧を発生させるための、チャージ・ポンプ回路を含む電圧発生回路を備えたDRAM等のメモリを対象として、当該電圧発生回路の効率を上げることで、当該電圧発生回路の元来の効率の悪さに起因して生じているアクティブ時およびスタンバイ時の両方における大きな消費電流を低減し、併せて電圧供給における高速化をも達成できるようなメモリ・システム、およびその低電流化のための方法を提供することをその主たる目的とする。
この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また特許請求の範囲における従属項は本発明の更なる有利な実施例や具体例を規定する。
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、メモリ・セル・アレイと、前記メモリ・セル・アレイに対するアクセス開始要求または終了要求を受け取って前記メモリ・セル・アレイへのアクセスを制御するアクセス制御回路と、前記アクセス開始要求に応答して予め充電した電荷を前記アクセス制御回路に供給して前記アクセス制御回路をメモリ・アクセス用の低電圧から高電圧に駆動させるための高電圧供給ブースト回路とを備えるメモリ・システムを提供する。また、前記アクセス終了要求に応答して前記アクセス制御回路を前記高電圧から前記低電圧に切り換える際の過剰な電荷を吸収するための低電圧供給ブースト回路をさらに備えるメモリ・システムを提供する。
また、本発明の第2の形態においては、メモリ・システムにおいてメモリ・セル・アレイに対するアクセス開始要求または終了要求を受け取って前記メモリ・セル・アレイへのアクセスを制御するアクセス制御回路に対して、メモリ・アクセス用の高電圧および低電圧による駆動のために電圧供給ブースト回路によって電圧を供給する方法であって、前記アクセス開始要求に応答して前記電圧供給ブースト回路に電荷を充電する第1の充電ステップと、前記充電が完了した後前記充電された電荷を放電して前記アクセス制御回路に供給する第1の放電ステップと、前記放電後の残留電荷を前記電圧供給ブースト回路に保持したまま再度の充電のために初期化する第1の初期化ステップとを有する方法を提供する。また、前記アクセス終了要求に応答して前記アクセス制御回路から前記電圧供給ブースト回路に電荷を充電する第2の充電ステップと、前記充電が完了した後充電した前記電荷を放電する第2の放電ステップと、前記放電後の残留電荷を前記電圧供給ブースト回路に保持したまま再度の充電のために初期化する第2の初期化ステップとをさらに有する方法を提供する。
さらに、本発明の第3の形態においては、高電圧と低電圧の少なくとも2値の電圧による内部回路の駆動を必要とする対象システムに対して電圧を供給するための装置であって、前記対象システムに対する前記高電圧による駆動の開始要求に応答して予め充電した電荷を前記対象システムに供給して前記対象システム内の前記内部回路を前記低電圧から前記高電圧に駆動させるための高電圧供給ブースト回路と、前記対象システムに対する前記高電圧による駆動の終了要求に応答して前記対象システムの前記内部回路を前記高電圧から前記低電圧に切り換える際の過剰な電荷を吸収するための低電圧供給ブースト回路と
を備える装置、およびこれに対応するステップを有する電圧供給方法を提供する。
なお、上記に示した発明の概要は、本発明として必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これら複数の発明の特徴の一部からなる組み合わせについてもまた本発明となり得ることは言うまでもない。
本発明によれば、DRAM等のメモリ・システムのアクティブ時およびスタンバイ時における消費電流を低減することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これら実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本発明の実施形態を説明する前提として、まず従来技術におけるDRAM等のメモリの構成および動作の詳細を述べる。図1は従来技術におけるDRAMチップの構成図を示す。中央にロー・アドレス・デコーダ(Row Address Decoder: RDEC)100があり、これを挟んで両脇にメモリ・セル・アレイ(Memory Cell Array)104、106がある。メモリ・セル・アレイ104、106は、当該DRAMの記憶の単位であるメモリ・セル108〜111等が縦横に配列されたもので、縦方向に並んだメモリ・セル108、110等に対しては同じ1本のビット線(データ線とも言う)120が各メモリ・セルを構成するFETのソース112、114等に接続され、また横方向に並んだメモリ・セル108、109等に対しては同じ1本のワード線124が各メモリ・セルを構成するFETのゲート116、117等に接続されており、このビット線とワード線を適当なタイミングでハイレベルまたはローレベルにドライブすることにより、メモリ・セル・アレイ104、106内の任意のメモリ・セルにハイまたはローの値を記憶させ、または当該任意のメモリ・セルに記憶された値を読み出すことができる。ロー・アドレス・デコーダ100は、これに入力されるロー・アドレス(図示せず)をデコードして、メモリ・セル・アレイ104、106に対してワード線を供給するブロックである。
ロー・アドレス・デコーダ100の中には、ワード線124〜126等を生成しこれをハイまたはローにドライブするための回路ブロックであるワード線回路102が各メモリ・セル・アレイ毎に存在する。図2はワード線回路102の詳細な回路例を示したものである。この例では、10ビットのロー・アドレスを入力し計1024本のワード線を生成するロー・アドレス・デコーダ100におけるワード線回路102を示す。即ち、10ビットのロー・アドレスの内3ビットをデコードして8本のソース・ドライブ信号(SDV)200および8本のワード線リセット信号(WLr)204を生成し、またロー・アドレスの残り7ビットをデコードして128本のデコーダ出力信号(RDout)202を生成する。8本のソース・ドライブ信号(SDV)200の中の1本と8本のワード線リセット信号(WLr)204の中の1本であって前記1本のソース・ドライブ信号に対応するものとからなるペア、および128本のデコーダ出力(RDout)202の中の1本の、両者をそれぞれ選択して入力する場合の異なる1024(=8x128)通りの組合せに対応して1024個のワード線ドライバ回路220等が存在し、それらによって1024本のワード線(WL)230等がドライブされる。即ち、1本のソース・ドライブ信号206は128本のデコーダ出力信号202のそれぞれが入力される128個のワード線ドライバ回路のすべてに入力され、また、1本のデコーダ出力信号208は8本のソース・ドライブ信号200のそれぞれが入力される8個のワード線ドライバ回路のすべてに入力される。
1つのワード線ドライバ回路220について見ると、10ビットのロー・アドレスの内の3ビットのデコードにより1本のソース・ドライブ信号206が選択されると、この信号はドライバ230のハイ側電源電圧(Vpp)によってハイレベル(Vpp)になると共に、ワード線リセット信号210はドライバ234のロー側電源電圧(Vnn)によってローレベル(Vnn)になる。このとき残り7ビットのデコードによりデコーダ出力信号208も選択されると、この信号はドライバ232のロー側電源電圧(Vnn)によってローレベル(Vnn)になる。このため、ソース・ドライブ信号206がつながる、ワード線ドライバ回路220内のpチャネルMOS FET222のソースはハイレベル(Vpp)であり、そのゲートはローレベル(Vnn)となるため、当該pチャネルMOS FET222がオンしてpチャネルMOS FET222のドレインの電圧レベルもハイレベル(Vpp)になる。同時に、このワード線ドライバ回路220に対するワード線リセット信号210はローレベル(Vnn)なのでnチャネルMOS FET224はオフとなり、結局ワード線230はハイレベル(Vpp)にドライブされ、ワード線230につながった多数のセル・トランジスタのゲートをオンにする。一方、ロー・アドレスのデコードの結果ソース・ドライブ信号206が非選択の場合はワード線リセット信号210はドライバ234のハイ側電源電圧(Vdd)によってハイレベル(Vdd)になり、nチャネルMOS FET224はオンとなるので、ワード線230はローレベル(Vnn)にドライブされ、ワード線230につながったセル・トランジスタのゲートはオフのままである。
この回路でドライバ230、232に対する電源電圧(Vpp)、およびドライバ230、232、234に対するロー側電源電圧(Vnn)は、それぞれ図1のVppポンプ130、およびVnnポンプ132から供給される。Vppポンプ130およびVnnポンプ132はメモリ・セル・アレイ104、106の外側の周辺部分に配置され、メタルの配線140、142を通じてロー・アドレス・デコーダ100内のVpp供給線およびVnn供給線にそれぞれ結線されている。
ここでワード線回路102における消費電流について検討する。ワード線回路102ではハイ側電源電圧をVpp、ロー側電源電圧をVnnとしているので、メモリ・セルのアクセスにおいて消費される電流(Iw)は図1に示すようにVppポンプ130からVnnポンプ132に流れる。Vppポンプ130およびVnnポンプ132も通常はメモリ・チップの内部電源(Vdd)から発生させるので、この電流Iwは結局内部電源(Vdd)からの電流となる。Vppポンプ130およびVnnポンプ132の百分比で表した効率をそれぞれEvp、Evnとすれば、それらの逆数をIwに掛けて、足し合わせた値である
Iw・(1/Evp+1/Evn) .......... [式1]
の電流がVddの電源からグラウンドに流れ、これがメモリ・チップのワード線回路102での総消費電流となる。Evp、Evn共に通常0.5以下の数値であるので、それらの逆数は2以上になり、この消費電流は実際にワード線回路102で必要な電流Iwの数倍にもなる。
一般にVppポンプ130およびVnnポンプ132はメモリ・チップの周辺に置かれるが、それらから供給されて実際に動作するワード線回路102はメモリ・チップの中央のロー・アドレス・デコーダ100の中にあり、配線の抵抗値もかなり高い。図1にこの配線抵抗を示すが、実際に動作する所での十分なワード線のハイレベルおよびローレベルを確保するためには、ポンプでは配線抵抗での低下を考慮して高めの電圧にしなければならず、これも余分な電流消費を生じる原因となる。
この従来技術のワード線回路102での大きな消費電流を低減するため、本発明ではまず、Vppポンプ130、Vnnポンプ132によって供給されている回路の動作モードに着目する。一般にVppポンプ130、Vnnポンプ132ともワード線回路だけのためにあり、他の回路では一切使用されていない。両ポンプともその目的は、メモリ・セルへのアクセス時にそのメモリ・セルに係るワード線の電圧レベルをVppに上げ、その後Vnnに戻すことと、アクセスがない時にはそのワード線の電圧レベルをVnnにしておくことという二つの動作のためである。従来技術では、ポンプはレギュレーターと同じようにフィードバック回路で電圧を制御している。従って、Vppではアクセスが来て電流を消費すると電圧レベルが低下し、予め設定したレベル以下になるとポンプの制御回路がキャパシターで電荷を供給する動作を開始し、何回かそれを繰り返して電流消費で下がった電圧レベルを元のレベルに戻そうとする。アクセスが終了すると、電流が使われなくなるので電圧レベルが上昇して来るが、これも予め設定したレベル以上になると制御回路はキャパシターによる電荷供給を止める。キャパシターのポンプ動作は25〜30nsに一回という比較的遅いサイクル時間である。この様にVppレベルは予め設定した二つのレベル間を行き来するリップルを持って平均的に望むDCレベルに制御されている。これは生じた結果に対してそれを補正するという典型的な負帰還制御である。
ところが、実際のワード線回路102では、外部からのアクセスやリフレッシュは、共にアクセス開始の要求(コマンド)が出てからワード線が駆動される(即ち、実際にアクセスが開始する)まで少なくとも10nsは遅れており、Vppの供給において大きな電流を必要とするタイミングは十分に予知出来る。Vnnの供給において大きな電流を必要とするのはアクセスが終了してワード線の電圧レベルがVnnに戻る時であり、これもタイミングは十分に予知出来る。従って、VppおよびVnnの供給に関して、従来技術のように、生じた結果に対処する方法、即ち電流が流れたため電圧レベルが下がったという結果を受けてこれに対処してポンプを駆動して電圧を戻し、また電流が流れなくなったため電圧レベルが上がるという別の結果を受けてそれに対処してポンプを止めるという動作をとるのではなく、予め電流が流れるタイミングが分かっているので、そのタイミングで必要な電流を供給することで、そもそも電圧レベルが下がるという結果は生じないし、その後電圧レベルが上がるという別の結果も生じない。
本発明の実施形態では、上述の原理に基づいた回路構成を提案する。即ち、本発明の実施形態によれば、メモリ・セルへのアクセスが無いときにワード線230の電圧レベルをVnnに保持するために必要であるので、従来技術に係るVppポンプ130およびVnnポンプ132そのものはそのまま使用し、アクセスがあったときに必要なタイミングで必要な量の電流を局所的に効率よく供給するための回路を追加することで、ポンプの制御回路は電圧レベルの変動を感知せず、結果的に効率の悪いポンプを殆ど動作させることがないので、アクセスがあったときのワード線回路102の動作電流を大幅に低減することができる。
前述の、アクセスが来たら必要なタイミングで必要な電流を供給するための回路は、高い電圧(即ちVpp)や負電圧(即ちVnn)をメモリ・チップの内部電圧から発生することで当該電流を供給しなければならないものであり、キャパシターを用いたブースト方式を使用することになるので、ローカル・ブースト回路と呼ぶ。
初めに、このローカル・ブースト回路の原理について説明する。まず、ワード線にハイレベルの電圧を供給する場合の電荷の転送の原理を説明する。図3は、ローカル・ブースト回路による電荷の転送の原理を示したものである。この回路は、ブースト・キャパシタ302(静電容量:Cb)と、その両電極を様々な電圧レベルへ接続する切り替え用スイッチSW1およびSW2とから成る。ここで発生した電圧を使用するワード線回路102のハイ側電源電圧用の電極をERws308とし、ワード線回路102にはここを通じて流れる電流に係る寄生容量310(静電容量:Cw)が存在する。寄生容量310には、先につながるワード線の容量の他に、各種配線の容量およびノードの接合容量等が考えられる。ERsup312はブースト・キャパシタ302への充電用電極(供給電圧レベル:Vsup)で、通常はチップの内部電圧(Vdd)である。ERpul314はブースト・キャパシタ302の低電位側の電極を持ち上げるための電極(供給電圧レベル:Vpul)である。初めに、図3(a)に示すようにSW1 を電極ERsup側に、SW2をグラウンド側に接続してブースト・キャパシタ302への充電を行う。ワード線回路102の電極ERws308での電圧レベルはローであり、簡単のため0Vとしておく。従って、ブースト・キャパシタ302にはCb・Vsupの電荷が貯まり、寄生容量310には電荷は無い。
次に、図3(b)に示すように、SW1を電極ERws308側に、SW2を電極ERpul側にする事によってブースト・キャパシタ302に貯まっていた電荷は寄生容量310へチャージ・シェアリングにより転送され、ブースト・キャパシタ302と寄生容量310の共通ノードとなった電極ERws308における電圧レベルをVxとすれば、元の電荷Cb・Vsupは、ブースト・キャパシタ302に貯まるCb・(Vx−Vpul)の電荷と、寄生容量310に貯まるCw・Vxの電荷とに分かれる。このVx は電極ERws308に生じ、これが実際にはワード線回路102におけるワード線のハイレベル電圧であるVppとなる。Cb/Cw=Kとおけば、
Vx=K・(Vsup+Vpul)/(K+1) ..... [式2]
となる。寄生容量310に転送された電荷QtrはCw・Vxなので、
Qtr=Cw・K・(Vsup+Vpul)/(K+1) ..... [式3]
となる。
その後、図3(c)に示すように、この回路をリセットするためにSW1をオープンにしSW2をグラウンド側にすることで、次のアクセスでのブースト・キャパシタ302への充電の準備が整う。この時、ブースト・キャパシタ302の低電位側電極の電圧レベルはVpulから0Vに下がるので、その高電位側電極の電圧レベルをVrとすると、
Vr=(Vx−Vpul)=(K・Vsup−Vpul)/(K+1) ..... [式4]
となる。ブースト・キャパシタ302への次の充電はSW1を再び電極ERsup312側に接続して行うので、電極ERsup312から充電される電荷Qinは
Qin=Cb・(Vsup−Vr)=Cb・(Vsup+Vpul)/(K+1) ..... [式5]
となる。図3(a)に示した最初の充電はブースト・キャパシタ302の両端に電圧がかかってない状態からのものであるが、2回目以降はVrの電圧レベルが残った状態からの充電となり、これが実際には毎回必要な充電電荷である。ここで、K=Cb/CwなのでQinとQtrとは等しくなる。つまり、毎回充電した電荷Qinは全て、寄生容量310へ転送される電荷Qtrとなる。
次に、このローカル・ブースト回路における電荷の転送効率を考える。転送される電荷はQtrであり、ブースト・キャパシタ302によるブースト動作において必要となる電荷は、ブースト・キャパシタ302への充電電荷Qin(これはQtrに等しい)と、これ以外のものとしては回路動作によるものがあり、その主なものはブースト・キャパシタ302の低電位側電極の電圧レベルをVpulに持ち上げる電荷である。つまり、ブースト・キャパシタ302の低電位側電極とグラウンドの間のキャパシタに対する充電電流であり、この静電容量はCbより小さいがCbに比例することから1より小さい比例定数をRcとすると、充電電荷はRc・Cb・Vpulとなる。これは、ローカル・ブースト回路で消費される電流は、ブースト・キャパシタ302への充電電流以外では、ブースト・キャパシタ302の低電位側電極の電圧レベルをVpulに持ち上げるための電流が多くを占めることを意味するので、ローカル・ブースト回路の大まかな転送効率をQefとすると、
Qef =Qtr/(Qin+Rc・Cb・Vpul) ..... [式6]
となる。Qin=Qtrを用いてこの式を整理すると、
Qef=1/(1+Rc・(K+1)・Vpul/(Vsup+Vpul) ) ..... [式7]
となる。
次に、上述のこれらの式から最適な回路方式を求める。まず、Vx、Qef ともにVsup、Vpulが高いほど良いことがわかるが、Vsupはブースト・キャパシタ302への大きな電流を流すので単純にチップの内部電圧(例えば1.65V)を使った方が良い。表1は、例えば2.8Vのブースト電圧VxをVsup=1.65Vの内部電圧から得る場合に、Vpulの異なる値に対してK(=Cb/Cw)の値がそれぞれどのようになるかを
Vx=K・(Vsup+Vpul)/(K+1)=2.8 ..... [式8]
から求め、更にそのKとVpulの値でQefがどの様な値になるかを[式7]から求めて表したものである。ここで、[式7]においてRcは0.3と想定している。つまり、ブースト・キャパシタ302の低電位側電極とグラウンドとの間の静電容量はCbの30%であると仮定している。
Figure 0005208519

表1は、ブースト・キャパシタ302の低電位側電極を持ち上げる電圧レベルであるVpulを高くするほどKが小さくて良く、また大まかな電荷転送効率も良くなることを示している。即ち、一見Vpulを大きくするとブースト・キャパシタ302の低電位側電極の電圧レベルを持ち上げる電荷が増えQefが悪くなる様にも考えられるが、実際にはKが小さくなる効果の方が大きく、静電容量Cbを小さくでき、QefはVpulが高いほど良くなる。従って、効率良く少ない電流でローカル・ブースト回路を働かせるにはVpulを出来るだけ高くすれば良いことがわかる。仮にVpulをVppと同じ2.8Vにすると、Kは1.7となり、即ちCbはCwの70%増程度で良いことになるが、Vpulがメモリ・チップの内部電圧である1.6V程度である場合はCbをCwの5.6倍にする必要がある。即ち、Qtrは常に一定の値Cw・Vx=2.8・Cwであることを考慮すると、この同じ値の電荷を転送するのにVpulが高いほどはるかに小さいCbで良いことを示している。
以上の解析結果に基づいて、本発明の実施形態に係る構成について以下に説明する。図4は、本発明の実施形態に係る、ローカル・ブースト回路400が付加されたワード線回路420とVppポンプ404およびVnnポンプ406とを備えたメモリ・システム410の構成を示すものである。ワード線回路420内のワード線ドライバ回路422のpチャネルMOS FET424のソースに電圧を供給するソース・ドライブ信号(SDV)426を駆動するドライバ428へのハイ側電源電圧の供給線(電極)をERws430(電圧レベル:Vws)とし、ここにローカル・ブースト回路400がSW1を介して結線される。電極ERws430の電圧レベルVwsは、ワード線432がオフの時はローレベルになっており、電極ERws430からグラウンドに至る、ワード線回路420内の各ワード線の静電容量を含めた総静電容量(上記記述における「寄生容量」に相当)をCwとする。電源電圧としてVppが供給されるものは図2の従来技術の場合と同じであり、即ちロー・アドレス・デコーダのデコーダ出力信号RDout434をドライブするドライバ436のハイ側電源電圧はVppポンプ404から供給されるVppであり、またドライバ428、436、438のロー側電源電圧はVnnポンプ406から供給されるVnnである。
ドライバ436のハイ側電源電圧がVppポンプ404から供給されるVppで良い理由は、ドライバ436のハイ側電源ラインは非常に多くのデコーダ出力信号(本実施形態の場合128本)をドライブすることになるが、実際の動作では、同時点にはその内の1出力(例えばRDout434)のみがハイからローになり、しかもこの出力は、先につながる少数(本実施形態の場合8個)のワード線ドライバ回路内のFET(例えば、pチャネルMOS FET424)のゲートをドライブするのみであり、ドライバ436のハイ側電源電圧VppがVppポンプ404から供給されたとしてもVppポンプ404からは殆ど電流が流れないためである。
一方ソース・ドライブ信号(SDV)は、その先につながるワード線をローからハイまでドライブするのに用いられ、ワード線はメモリ・セル・アレイ452内の非常に多数のメモリ・セルのセル・トランジスタのゲートにつながっているため電流を大きく消費するので、当該ソース・ドライブ信号をドライブするドライバ428のハイ側電源電圧は効率の悪いVppポンプ404からでなく、効率を最適化したローカル・ブースト回路400から供給する。また、前述のようにローカル・ブースト回路400の最適化のため、ブースト・キャパシタ442(静電容量:Cb)の低電位側電極の電圧レベルを持ち上げるための電極に供給する電圧レベル(図3でいうところのVpul)は高いほどよいため、本実施形態ではVppとしている。
以上の様に、本発明に係る実施形態においては、Vpp自体は従来技術と同じくVppポンプ404で発生させて供給するが、この効率の悪いポンプからは出来るだけ電流を流さず、殆どの電流供給はローカル・ブースト回路400に担わせるという方式を採用する。
なお、ブースト・キャパシタ442の低電位側電極をVppまで持ち上げるには、通常はVppポンプ404からの電流を使用するのであるが、Vppポンプ404からの電流を更に減らす手段として、最初0VからはnチャネルMOS FETのソース・フォロワー(ドレイン接地型)回路で電圧レベルを持ち上げ、その後電圧レベルが上がってきたらVppポンプ404からのVppに切り替える方式を採用することもできる。その理由は、ブースト・キャパシタ442の低電位側電極とグラウンドとの間のキャパシターは、通常nチャネルMOS FETにおいてソースとドレインをショートした拡散層における容量と、反転したN型チャンネル下でP型基盤との間で逆バイアスがかけられたディプリーション(Depletion)層における容量との並列容量からなるため容量はもともと小さく、また電圧が高くなるほど更に小さくなるためである。
また、図4のSW1 には通常はnチャネルMOS FETのみで構成したソース・フォロワー(ドレイン接地型)回路を用いるが、nチャネルMOS FETの場合はゲート電圧を非常に高くしないと十分なスイッチとして動作しないため、実際にはVddの3倍もの電圧をゲートにかける必要がある。本発明の実施形態によれば、このnチャネルMOS FETのみによるスイッチの代わりに、N型基盤を常にVppポンプ404からの電圧で保持したpチャネルMOS FETを採用することもでき、低抵抗で電荷移転ができるため低電流となり、またゲートに高い電圧を必要としないため信頼性の観点からも有利である。
図4に示すように、ローカル・ブースト回路400は各々の活性化するメモリ・セル・アレイ450、452毎に置かれ、メモリ・チップに与えられるロー・アドレスをデコードすることにより事前にどこで電流が必要になるか、即ちどのローカル・ブースト回路を活性化するべきかが分かるため、そのローカル・ブースト回路に対しての前述のブースト動作を行う準備ができる。また、ローカル・ブースト回路400を使ってほとんどの電流を必要なタイミングに必要な量だけ必要な場所で局所的に供給するので、Vppポンプ404およびVnnポンプ406からそれぞれ実際に動作するワード線回路420までの配線抵抗は、あったとしても問題にはならない。
実際の設計においては、ワード線のハイレベル電圧として必要なVppが得られるように、推定したワード線回路420内の各ワード線の静電容量を含めた総静電容量Cwを基にブースト・キャパシタ442のCbの値を決めるが、上述の様にVppからいくらか電流が使われるので、それをも補うようにCb等の値の最適化を行うことで、Vppポンプ404の制御回路がセンスしている電圧レベルが下がることが無いようにすることができ、Vppポンプをほとんど動作させることがなく、その結果ワード線回路420での消費電流を大きく低減することができる。1024本のワード線からなる図4のワード線回路420の例では、1本のソース・ドライブ信号426につき128個のワード線ドライバ回路がつながっているので、ソース・ドライブ信号1本当たりのワード線回路420での容量は、ワード線1本あたりの容量の128本分で約2pF程度であるので、Vpulを2.8VのVppにすれば、表1によりCbはCwの1.7倍となり、余裕をみて2倍としてもCbは4pFで済むことになり、低電流および小面積で必要な電圧および電流を供給することができる。
次に、本発明の実施形態に係る構成に基づく詳細な動作ステップについて以下に説明する。最初に、ワード線の電圧レベルをVppにする際の動作について説明する。図5(a)〜(c)は、本発明の実施形態に基づく、ワード線回路500に対するVpp用ローカル・ブースト回路502の動作ステップを示したものであり、また図6(a)〜(c)は、図5(a)〜(c)のそれぞれに対応付けて、ワード線510の電圧レベルの推移をタイミング・チャートで示したものである。
当該メモリ・システム(実際にはそのメモリ・システムにおけるメモリ・セル・アレイ)に対するアクセス開始要求があったこと、即ち例えば、ロー・アドレス・デコーダ(図示せず)によるロー・アドレスのデコードが開始されたことに応答して、所定のタイミング(図6(a)でT0に当たる時刻)で、図5(a)に示すように、SW3をオープンにして、SW1を電極ERsup522側に、SW2をグラウンド側にすることで、Vpp用ブースト・キャパシタ524(静電容量:Cb)を充電する。これは、ロー・アドレス・デコーダによってワード線(WL)510が選択されるのに合わせてVpp用ブースト・キャパシタ524によるブーストを開始するための準備状態にするためである。電極ERws512の電圧レベルはVnnであるためワード線510はローレベル(Vnn)であり、RDout514はVppポンプで発生させたVppで直接バイアスされている。Vppポンプ506およびVpp用ローカル・ブースト回路502の間の結線とグラウンドとの間にはディカップリング・キャパシター520(静電容量:Cdp)が存在し、nF程度のオーダーの非常に大きな容量を持つ。
Vpp用ブースト・キャパシタ524への充電が完了した後、前記アクセス開始要求に基づいてロー・アドレス・デコーダによるロー・アドレスのデコードが確定して、ワード線回路500が属する方のメモリ・セル・アレイが指定され、特定のメモリ・セルに対する実際のアクセスが開始したことに応答して、所定のタイミング(図6(b)でT1に当たる時刻)で、図5(b)に示すように、SW1を電極ERws512側にし、その後SW2をVppポンプ506の出力側にして電圧レベルをVppにする。これにより、ブースト・キャパシタ524から電荷が放電されて電極ERws512に供給され、電極ERws512の電圧レベルはワード線回路500内の各ワード線の静電容量を含めた総静電容量CwとCbとで決まる電圧レベル(Vppより少し高めの電圧レベル)に上昇し、ロー・アドレス・デコーダによってワード線510が選択されたとすると、ワード線510を上記電圧レベルと同じレベルまで昇圧させることが可能となり、ワード線510がつながるメモリ・セルからのデータ読み出し動作ができる。
Vpp用ブースト・キャパシタ524からの放電の後、当該メモリ・セルに対するアクセスが継続中の所定のタイミング(図6(b)でT2に当たる時刻)において、SW3を閉じてVppポンプ506の出力側につなぐ。これは、Vppポンプ506から失われた電荷をVpp用ローカル・ブースト回路502においていくらか高めに設定された電圧から補うため、および、ページモードなどの様に長い時間ワード線510をハイレベルにしておく必要がある場合に電流リークがあったことで電圧レベルが下がるのを防ぐためである。リークするのは一般的に少ない電流で、これがあっても、大きな容量Cdpのディカップリング・キャパシター520から供給されるので、直ちにVppの値が下がってポンプアップ動作が開始されるようなことは無い。
更にその後、当該メモリ・システムに対するアクセス終了要求があるより前の所定のタイミング(図6(c)でT3に当たる時刻)において、図5(c)に示すように、SW3をオープンにし、それ以後SW1をオープンにしSW2をグラウンドにしてVpp用ブースト・キャパシタ524の低電位側電極の電圧レベルをグラウンドにするすることで、Vpp用ブースト・キャパシタ524への再度の充電のためにVpp用ブースト・キャパシタ524の両電極における電圧レベルを初期化(リセット)する。電極ERws512はどこにもつながってなく、またワード線510はハイレベル状態のままであるため、電極ERws512はVppに充電されたままである。なお、以上の図6(a)〜(c)のタイミングではVnn用ローカル・ブースト回路504は何も動作しない。
本発明の実施形態に係る構成に基づく詳細な動作ステップについて、次にワード線の電圧レベルをVnnに戻す際の動作について説明する。図7(a)〜(c)は、本発明の実施形態に基づく、ワード線回路500に対するVnn用ローカル・ブースト回路504の動作を示したものであり、また図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(c)のそれぞれに対応付けて、ワード線510の電圧レベルの推移をタイミング・チャートで示したものである。
当該メモリ・システムに対するアクセス終了要求があったこと、即ち例えば、ロー・アドレス・デコーダによるロー・アドレスのデコードが終了したことに応答して、所定のタイミング(図8(a)でT4に当たる時刻)で、図7(a)に示すように、SW4を電極ERws512側にし、SW5をグラウンド側にする。これにより、ワード線回路500内の各ワード線の静電容量を含めた総静電容量Cwに充電された電荷がVnn用ブースト・キャパシタ530(静電容量:Cn)へ充電される。グラウンドとVnnポンプ508の出力との間にもディカップリング・キャパシター532(静電容量:Cdn)が存在し、やはりnF程度のオーダーの大きな容量を持つ。電極ERws512からVnn用ブースト・キャパシタ530への充電によって生じるCwとCnの間のチャージ・シェアリングで、電極ERws512における電圧レベルはVppから下がり始め、ほぼ同時に、アクセス終了要求に基づくワード線510の非選択に従って図8(a)のタイミング・チャートに示すようにワード線510の電圧レベルも下がり始める。
Vnn用ブースト・キャパシタ530への充電が完了した後、非選択になったワード線の電圧レベルがローレベルとなって実際のアクセスが終了する前の所定のタイミング(図8(b)でT5に当たる時刻)において、図7(b)に示すように、SW4をグラウンド側にし、SW5をVnnポンプ508の出力側にしてVnn用ブースト・キャパシタ530の低電位側電極の電圧レベルをVnnにする。これにより、Vnn用ブースト・キャパシタ530に貯まった電荷がVnnポンプ508に供給される。このタイミングは、ワード線510が非選択になった(即ち、T4ですでに非選択になっている)ことで、RDout514とWLr518がハイレベルになり、ワード線510の電圧レベルがVnnに引き下げられて行くが、この引き下げる動作に必要な電荷がVnn用ブースト・キャパシタ530からのブーストで供給され、しかも元々Vnn用ブースト・キャパシタ530に充電した電荷は電極ERws512に貯まった電荷の再利用であるので、電源からの充電電流によるものではく、効率の高い動作となる。
その後、非選択になったワード線の電圧レベルがローレベル(Vnn)となって実際のアクセスが終了したことに応答して、所定のタイミング(図8(c)でT6に当たる時刻)で、図7(c)に示すように、SW4をオープンにし、SW5をグラウンドにしてVnn用ブースト・キャパシタ530の低電位側電極の電圧レベルをグラウンドにするすることで、Vnn用ブースト・キャパシタ530への再度の充電のためにVnn用ブースト・キャパシタ530の両電極における電圧レベルを初期化(リセット)する。
以上で全ての動作ステップが終了し、当該メモリ・システムに対する次のアクセス開始要求、即ち例えば、ロー・アドレス・デコーダへのロー・アドレスの入力によるデコード開始があると、再度図5(a)からの状態を繰り返す。この様に、Vnn用ローカル・ブースト回路504側がVpp用ローカル・ブースト回路502側で生じた電荷を再利用して、必要なタイミングでそこから電荷を供給することで高い効率が得られること、また、VppおよびVnnへのドライブにおいては、Vppポンプ506およびVnnポンプ508が殆ど動作せず、それぞれVpp用ローカル・ブースト回路502およびVnn用ローカル・ブースト回路504から電流がほとんど供給されることから、ワード線回路500における消費電流の大幅な低減化が達成できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
従来技術におけるDRAMチップの構成図を表す。 ワード線回路の詳細な回路例を示す。 ローカル・ブースト回路による電荷の転送の原理を示す。 本発明の実施形態に係る、ローカル・ブースト回路が付加されたワード線回路とVppポンプおよびVnnポンプとを備えたメモリ・システムの構成を示す。 本発明の実施形態に基づく、ワード線回路に対するVpp用ローカル・ブースト回路の動作ステップを示す。 ワード線の電圧レベルの推移を図5に対応してタイミング・チャートで示す。 本発明の実施形態に基づく、ワード線回路に対するVnn用ローカル・ブースト回路の動作ステップを示す。 ワード線の電圧レベルの推移を図7に対応してタイミング・チャートで示す。

Claims (8)

  1. メモリ・セル・アレイと、
    前記メモリ・セル・アレイに対するアクセス開始要求およびアクセス終了要求のいずれかを受け取って前記メモリ・セル・アレイへのアクセスを制御する、アクセス制御回路と、
    前記アクセス開始要求に応答して予め充電した電荷を、前記アクセス制御回路に供給して、前記アクセス制御回路をメモリ・アクセス用の電圧からメモリ・アクセス用の高電圧に駆動させるための、高電圧供給ブースト回路と、
    前記アクセス終了要求に応答して、前記アクセス制御回路を前記高電圧から前記電圧に切り換える際の過剰な電荷を吸収するための、電圧供給ブースト回路と、を備え、
    前記高電圧供給ブースト回路は、
    前記アクセス開始要求に応答して電源電圧の供給源から予め充電した電荷を、前記アクセス制御回路における前記高電圧の供給源に放電するための、高電圧ブースト用キャパシタと、
    前記充電時には前記高電圧ブースト用キャパシタの一方の電極を前記電源電圧の前記供給源に接続し、前記放電時には前記一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源に接続し、その他の時には前記一方の電極をオープンにする、第1の半導体スイッチと、
    前記充電時には前記高電圧ブースト用キャパシタの他方の電極をグラウンドに接続し、前記放電時には前記他方の電極を、前記電源電圧から前記高電圧を生成し供給する高電圧発生回路の高電圧供給源に接続し、その他の時には前記他方の電極をグラウンドに接続する、第2の半導体スイッチと、を備える
    メモリ・システム。
  2. 前記高電圧供給ブースト回路は、
    前記高電圧ブースト用キャパシタの前記一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源に接続した状態で、前記一方の電極を、前記高電圧発生回路の高電圧供給源に接続して、前記一方の電極から前記高電圧発生回路に電荷を補填するための、第3の半導体スイッチをさらに備える、請求項1に記載のメモリ・システム。
  3. 電源電圧から前記電圧を生成し供給する電圧発生回路をさらに備え、
    前記電圧供給ブースト回路は、
    前記アクセス終了要求に応答して予め前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源から充電した電荷を、前記電圧発生回路の電圧供給源を介して放電するための、電圧ブースト用キャパシタと、
    前記充電時には前記電圧ブースト用キャパシタの一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源に接続し、前記放電時には前記一方の電極をグラウンドに接続し、その他の時には前記一方の電極をオープンにする、第4の半導体スイッチと、
    前記充電時には前記電圧ブースト用キャパシタの他方の電極をグラウンドに接続し、前記放電時には前記他方の電極を前記電圧発生回路の前記電圧供給源に接続し、その他の時には前記他方の電極をグラウンドに接続する、第5の半導体スイッチとを備える、請求項2に記載のメモリ・システム。
  4. 前記メモリ・セル・アレイは、nチャネルMOS
    FETから構成されるDRAMのメモリ・セル・アレイであり、
    前記アクセス制御回路は、前記メモリ・セル・アレイを構成するセル・トランジスタのゲートにつながる複数のワード線を駆動するワード線回路である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のメモリ・システム。
  5. 前記高電圧発生回路および前記電圧発生回路は、いずれもチャージ・ポンプ回路からなる、請求項3に記載のメモリ・システム。
  6. メモリ・システムにおいて、メモリ・セル・アレイに対するアクセス開始要求およびアクセス終了要求のいずれかを受け取って前記メモリ・セル・アレイへのアクセスを制御するアクセス制御回路に対して、メモリ・アクセス用の高電圧およびメモリ・アクセス用の電圧による駆動のために、高電圧供給ブースト回路および電圧供給ブースト回路によって電圧を供給する方法であって、
    前記アクセス開始要求に応答して、前記高電圧供給ブースト回路に電荷を充電する第1の充電ステップと、
    前記充電が完了した後、前記充電された電荷を放電して前記アクセス制御回路に供給する第1の放電ステップと、
    前記放電後の残留電荷を前記高電圧供給ブースト回路に保持したまま再度の充電のために初期化する第1の初期化ステップと、
    前記アクセス終了要求に応答して、前記アクセス制御回路から前記電圧供給ブースト回路に電荷を充電する第2の充電ステップと、
    前記充電が完了した後、充電した前記電荷を放電して、電源電圧から前記電圧を生成し供給する電圧発生回路に供給する第2の放電ステップと、
    前記放電後の残留電荷を前記電圧供給ブースト回路に保持したまま再度の充電のために初期化する第2の初期化ステップと、を有し、
    前記高電圧供給ブースト回路は高電圧ブースト用キャパシタを備え、
    前記第1の充電ステップは、
    前記アクセス開始要求に応答して、前記高電圧ブースト用キャパシタの一方の電極を電源電圧の供給源に接続するステップと、
    前記高電圧ブースト用キャパシタの他方の電極をグラウンドに接続するステップとを有し、
    前記第1の放電ステップは、
    前記充電が完了した後、前記アクセス開始要求に基づくアクセス開始に応答して、前記一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の供給源に接続するステップと、
    前記接続の後、前記他方の電極を電源電圧から前記高電圧を生成し供給する高電圧発生回路の高電圧供給源に接続するステップとを有し、
    前記第1の初期化ステップは、
    前記放電の後、前記アクセス終了要求の前の所定のタイミングにおいて、前記一方の電極をオープンにするステップと、
    前記他方の電極をグラウンドに接続するステップとを有し、
    前記放電後の残留電荷を前記高電圧ブースト用キャパシタに保持したまま前記他方の電極の電圧レベルをグラウンドにして再度の充電のために初期化することを特徴とする、方法。
  7. 前記第1の放電ステップの後、前記第1の初期化ステップの前の所定のタイミングで、前記高電圧ブースト用キャパシタの前記一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源に接続した状態で、前記一方の電極を、前記高電圧発生回路の高電圧供給源に接続して、前記一方の電極から前記高電圧発生回路に電荷を補填するステップと、
    前記補填するステップの後、前記第1の初期化ステップのの所定のタイミングで、前記一方の電極の、前記高電圧発生回路の前記高電圧供給源への接続を解除するステップとをさらに有する、請求項6に記載の方法。
  8. 前記電圧供給ブースト回路は電圧ブースト用キャパシタをさらに備え、
    前記第2の充電ステップは、
    前記アクセス終了要求に応答して、前記電圧ブースト用キャパシタの一方の電極を前記アクセス制御回路における前記高電圧の前記供給源に接続するステップと、
    前記電圧ブースト用キャパシタの他方の電極をグラウンドに接続するステップとを有し、
    前記第2の放電ステップは、
    前記充電が完了した後、前記アクセス終了要求に基づくアクセス終了の前の所定のタイミングにおいて、前記一方の電極をグラウンドに接続するステップと、
    前記他方の電極を、前記電圧発生回路の電圧供給源に接続するステップとを有し、 前記第2の初期化ステップは、
    前記アクセス終了に応答して、前記一方の電極をオープンにするステップと、
    前記他方の電極をグラウンドに接続するステップとを有し、
    前記放電後の残留電荷を前記電圧ブースト用キャパシタに保持したまま前記他方の電極の電圧レベルをグラウンドにして再度の充電のために初期化することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
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