しかしながら、上記特許文献1,2に開示される圧力センサでは、センサチップやその配線部であるボンディング部分が圧力媒体に直接曝されて腐食することを防止するために保護用樹脂やオイルで覆うように構成されるので、センサチップやボンディング部分を腐食から防止することはできるが、保護用樹脂やオイルを備えるための部品数や製造工程が増加し接続作業が困難になるという問題がある。
また、特許文献1に開示される圧力センサでは、高温環境下で使用する場合に保護用樹脂とボンディング部分との熱膨張係数の違いによる熱応力がボンディング部分に付加されることとなり、保護用樹脂の剥離やボンディング部分の断線を引き起こす可能性がある。同様に、特許文献2に開示される圧力センサでは、メタルダイアフラム内をオイルで充填させるので、オイルの熱膨張に起因する熱応力によりメタルダイアフラムとセンサ保持体との接合部が劣化するだけでなく、検出精度が低下するという問題がある。
さらに、上記特許文献1,2に開示される圧力センサは、樹脂パッケージや基板もしくはセンサ保持体を介してセンサチップがハウジングに固定されており、これら各部材が複数の部品から構成されるため、部品数や製造工程の減少の要求に応えることができない。
また、上記特許文献1,2に開示される圧力センサは、圧力媒体の圧力が保護用樹脂やオイルを介してセンサチップに印加されるため、センサチップで直接圧力を検出する場合よりも圧力の検出精度が低下するという問題もある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ハウジング内に配置されるセンサチップから信号を取り出すための配線部を圧力媒体に曝すことなくセンサチップに確実かつ容易に接続し得る圧力センサおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の圧力センサは、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるとともに、この一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成されるセンサチップと、を備える圧力センサにおいて、前記中空部の内周面に対し面接触して固定され前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材を備え、前記中空部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁には反圧力導入側へ突出する環状支持部が前記一面のうち前記センシング部の外方である一側当接面に対して当接可能に形成され、前記センサチップは、前記電極が前記信号取出部材の一側端面にて露出する前記取出配線部に電気的に接続された状態で当該一側端面に固定されるとともに、前記一側当接面にて前記環状支持部に当接し、前記中空部の内周面とこの内周面に対向する前記センサチップの表面との間には非導電性の接着剤が充填されることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力センサにおいて、前記一側当接面には、前記環状支持部に対して底面にて当接する環状凹部が形成されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の圧力センサにおいて、前記信号取出部材は、中空状に形成されるとともにその内周面に前記取出配線部が配置されることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧力センサにおいて、前記センサチップは、2つの基板を備えており、前記センシング部は、前記2つの基板を貼り合わせることで密閉して形成される圧力基準室の圧力と前記圧力媒体の圧力の圧力差に応じた信号を出力することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧力センサにおいて、前記センサチップの前記他面には、前記一側当接面に対向する部位と前記電極との間にスリットが設けられることを特徴とする。
請求項6に記載の圧力センサは、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるとともに、この一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成されるセンサチップと、を備える圧力センサにおいて、前記中空部の内周面に対し面接触して固定され、圧力導入側には開口部が形成されるとともにこの開口部を構成する周壁が周方向に分割可能に形成される信号取出部材を備え、前記開口部を構成する底壁より前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が前記信号取出部材を圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、前記周壁の端部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部が前記一面のうち前記センシング部の外方である一側当接面に対して当接可能に形成され、前記センサチップは、分割した前記周壁を組み付ける際に前記開口部内に収容されることで、前記電極が前記底壁より突出する前記取出配線部に電気的に接続されるとともに、前記一側当接面にて前記環状支持部に当接し、前記周壁とこの周壁に対向する前記センサチップの表面との間には非導電性の接着剤が充填されることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6に記載の圧力センサにおいて、前記取出配線部は、前記周壁に沿うように前記開口部内に突出し、前記電極は、前記周壁の組み付け時に前記取出配線部に当接して電気的に接続されるように前記センサチップの表面のうち前記周壁に対向する面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6に記載の圧力センサにおいて、前記取出配線部は、前記底壁に沿うように前記開口部内に突出し、前記電極は、前記周壁の組み付け時に前記取出配線部に当接して電気的に接続されるように前記一面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項7または8に記載の圧力センサにおいて、前記センサチップ側配線部および前記取出配線部の少なくともいずれか一方には、他方に弾性的に当接して導通する導通部が形成されることを特徴とする。
請求項10に記載の圧力センサは、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるとともに、この一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成されるセンサチップと、を備える圧力センサにおいて、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部が形成されるとともにこの環状当接部の外方にて前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材を備え、前記中空部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁には圧力導入側へ突出する環状支持部が前記他面のうち前記センシング部が投影される部位よりも外方かつ前記電極よりも内方である他側当接面にて当接可能に形成され、前記環状凸部には、当該環状凸部に前記環状当接部にて当接した前記信号取出部材の前記取出配線部が挿通するための貫通孔が前記環状支持部よりも外方に形成され、前記センサチップは、前記他側当接面にて前記環状支持部に当接した状態で、前記電極が前記貫通孔を挿通する前記取出配線部に電気的に接続され、前記信号取出部材に形成される接着剤導入孔から前記貫通孔を介して導入される非導電性の接着剤が、前記他面と前記環状凸部との間に充填されることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項10に記載の圧力センサにおいて、前記環状凸部の反圧力導入側であって前記環状当接部に当接する部位には当該環状当接部に係合する係合部が形成されることを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項10または11に記載の圧力センサにおいて、前記信号取出部材の反圧力導入側には、前記環状当接部の内方に連通する連通孔が形成されるとともに、この連通孔の外方であって前記接着剤導入孔の内方に反圧力導入側へ突出する環状突出部が形成されることを特徴とする。
請求項13に記載の圧力センサの製造方法は、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるセンサチップと、を備える圧力センサの製造方法において、前記センシング部が前記一面に形成されるとともにこの一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成される前記センサチップを用意する第1工程と、前記中空部に内方へ突出する環状凸部が形成されるとともにこの環状凸部の内縁に反圧力導入側へ突出する環状支持部が前記一面のうち前記センシング部の外方である一側当接面に対して当接可能に形成される前記ハウジングを用意する第2工程と、前記中空部の内周面に対し面接触可能であって前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材を用意する第3工程と、前記センサチップを、前記電極と前記信号取出部材の一側端面にて露出する前記取出配線部とを電気的に接続した状態で当該一側端面に固定する第4工程と、前記一側端面の外縁であって前記センサチップの周囲に非導電性の接着剤を所定量塗布する第5工程と、前記一側当接面が前記環状支持部に当接するように前記信号取出部材を前記ハウジングの前記中空部内に焼き嵌めまたは圧入することで、前記環状凸部に押圧された前記接着剤を前記中空部の内周面とこの内周面に対向する前記センサチップの表面との間に充填させる第6工程と、を備えることを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項13に記載の圧力センサの製造方法において、前記一側当接面には、前記環状支持部に対して底面にて当接する環状凹部が形成されることを特徴とする。
請求項15の発明は、請求項13または14に記載の圧力センサの製造方法において、前記信号取出部材は、中空状に形成されるとともにその内周面に前記取出配線部が配置されることを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項13〜15のいずれか一項に記載の圧力センサの製造方法において、前記センサチップは、2つの基板を備えており、前記センシング部は、前記2つの基板を貼り合わせることで密閉して形成される圧力基準室の圧力と前記圧力媒体の圧力の圧力差に応じた信号を出力することを特徴とする。
請求項17の発明は、請求項13〜16のいずれか一項に記載の圧力センサの製造方法において、前記センサチップの前記他面には、前記一側当接面に対向する部位と前記電極との間にスリットが設けられることを特徴とする。
請求項18に記載の圧力センサの製造方法は、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるセンサチップと、を備える圧力センサの製造方法において、前記センシング部が前記一面に形成されるとともにこの一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成される前記センサチップを用意する第1工程と、前記中空部が形成される前記ハウジングを用意する第2工程と、前記中空部の内周面に対し面接触可能であって、圧力導入側に形成される開口部を構成する底壁より前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、前記開口部を構成する周壁が周方向に分割可能であり、当該周壁の端部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部が前記一面のうち前記センシング部の外方である一側当接面に対して当接可能に形成される信号取出部材を用意する第3工程と、分割した前記周壁の内面に非導電性の接着剤を所定量塗布する第4工程と、前記開口部内に前記センサチップを収容するように分割した前記周壁を組み付けることで、前記電極と前記取出配線部とを電気的に接続するとともに前記センサチップに押圧された前記接着剤を前記周壁の内周面とこの内周面に対向する前記センサチップの表面との間に充填させる第5工程と、前記信号取出部材を前記ハウジングの前記中空部内に焼き嵌めまたは圧入する第6工程と、を備えることを特徴とする。
請求項19に記載の圧力センサの製造方法は、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるセンサチップと、を備える圧力センサの製造方法において、前記センシング部が前記一面に形成されるとともにこの一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成される前記センサチップを用意する第1工程と、前記中空部が形成される前記ハウジングを用意する第2工程と、前記中空部の内周面に対し面接触可能であって、圧力導入側に形成される開口部を構成する底壁より前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、前記開口部を構成する周壁の端部には内方へ突出する環状凸部が形成される信号取出部材を用意する第3工程と、前記周壁の内面に非導電性の接着剤を所定量塗布する第4工程と、前記センサチップを弾性的に変形させた状態で前記開口部内に挿入した後に元の形状に戻して収容することで、前記電極と前記取出配線部とを電気的に接続するとともに前記センサチップに押圧された前記接着剤を前記周壁の内周面とこの内周面に対向する前記センサチップの表面との間に充填させる第5工程と、前記信号取出部材を前記ハウジングの前記中空部内に焼き嵌めまたは圧入する第6工程と、を備えることを特徴とする。
請求項20の発明は、請求項18または19に記載の圧力センサの製造方法において、前記取出配線部は、前記周壁に沿うように前記開口部内に突出し、前記電極は、前記センサチップを前記開口部内に収容するときに前記取出配線部に当接して電気的に接続されるように前記センサチップの表面のうち前記周壁に対向する面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されることを特徴とする。
請求項21の発明は、請求項18または19に記載の圧力センサの製造方法において、前記取出配線部は、前記底壁に沿うように前記開口部内に突出し、前記電極は、前記センサチップを前記開口部内に収容するときに前記取出配線部に当接して電気的に接続されるように前記一面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されることを特徴とする。
請求項22の発明は、請求項20または21に記載の圧力センサの製造方法において、前記センサチップ側配線部および前記取出配線部の少なくともいずれか一方には、他方に弾性的に当接して導通する導通部が形成されることを特徴とする。
請求項23に記載の圧力センサの製造方法は、中空部が形成されるハウジングと、前記中空部内に配置されて当該中空部内に導入される圧力媒体の圧力に応じた信号を出力するセンシング部が一面に形成されるセンサチップと、を備える圧力センサの製造方法において、前記センシング部が前記一面に形成されるとともにこの一面に対向する他面に前記センシング部からの信号を取り出すための電極が形成される前記センサチップを用意する第1工程と、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部が形成されるとともに、この環状当接部の外方にて前記センシング部からの信号を取り出すための取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成され、この取出配線部よりも外方に接着剤導入孔が貫通するように形成される信号取出部材を用意する第2工程と、前記中空部に内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁に圧力導入側へ突出する環状支持部が前記他面のうち前記センシング部が投影される部位よりも外方である他側当接面にて当接可能に形成され、前記環状凸部に前記取出配線部が挿通するための貫通孔が前記環状支持部よりも外方に形成される前記ハウジングを用意する第3工程と、前記環状当接部が前記環状凸部に当接するとともに前記環状支持部が前記他側当接面に当接した状態で、前記貫通孔を挿通する前記取出配線部に前記電極を電気的に接続する第4工程と、非導電性の接着剤を前記接着剤導入孔から前記貫通孔を介して前記他面と前記環状凸部との間に導入して充填する第5工程と、を備えることを特徴とする。
請求項24の発明は、請求項23に記載の圧力センサの製造方法において、前記環状凸部の反圧力導入側であって前記環状当接部に当接する部位には当該環状当接部に係合する係合部が形成されることを特徴とする。
請求項25の発明は、請求項23または24に記載の圧力センサの製造方法において、前記信号取出部材の反圧力導入側には、前記環状当接部の内方に連通する連通孔が形成されるとともに、この連通孔の外方であって前記接着剤導入孔の内方に反圧力導入側へ突出する環状突出部が形成されることを特徴とする。
請求項1の発明では、ハウジングの中空部の内周面に対し面接触して固定され、取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材が設けられている。また、ハウジングの中空部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁には反圧力導入側へ突出する環状支持部がセンサチップの一側当接面に対して当接可能に形成されている。そして、センサチップは、その電極が信号取出部材の一側端面にて露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該一側端面に固定されるとともに、一側当接面にてハウジングの環状支持部に当接する。また、中空部の内周面とこの内周面に対向するセンサチップの表面との間には非導電性の接着剤が充填される。
このように、センサチップは、ハウジングに固定される信号取出部材の一側端面に露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該一側端面に固定されるため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップを信号取出部材に押圧する方向に作用するので、圧力媒体の圧力が高くなる場合でも上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなる。また、取出配線部は信号取出部材の外周面に露出することなく圧力導入方向に貫通するように形成されているので、信号取出部材をハウジングの中空部の内周面に面接触して固定する際に取出配線部が損傷することもない。
また、ハウジングに固定する前の信号取出部材に対してセンサチップの電極を取出配線部に電気的に接続する場合には、ハウジング内で接続作業を実施する必要がないので、電気的接続作業が容易になる。
さらに、中空部の内周面とこの内周面に対向するセンサチップの表面との間には接着剤が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップは一側当接面にてハウジングの環状支持部に当接しているので、接着剤が一側当接面の内方に位置するセンシング部に漏出して検出精度が低下することもない。
したがって、ハウジング内に配置されるセンサチップから信号を取り出すための配線部を圧力媒体に曝すことなくセンサチップに確実かつ容易に接続することができる。
請求項2の発明では、一側当接面には、環状支持部に対して底面にて当接する環状凹部が形成されるため、接着剤がセンシング部に漏出するためには環状凹部内に入り込む必要があり漏出するまでの距離が長くなるので、接着剤のセンシング部への流出を確実に防止することができる。
請求項3の発明では、信号取出部材は、中空状に形成されるとともにその内周面に取出配線部が配置されるため、取出配線部を貫通させるためにインサート成形する場合と比較して、信号取出部材の製造コストを低減することができる。
請求項4の発明では、センシング部は、2つの基板を貼り合わせることで密閉して形成される圧力基準室の圧力と圧力媒体の圧力の圧力差に応じた信号を出力するように構成される。このようなセンサチップをハウジング内に配置する場合でも、当該センサチップから信号を取り出すための配線部を圧力媒体に曝すことなくセンサチップに確実かつ容易に接続することができる。
請求項5の発明では、センサチップの他面には、一側当接面に対向する部位と電極との間にスリットが設けられるため、センサチップが一側当接面にてハウジングの環状支持部に当接することから当該環状支持部を介する応力が一側当接面に作用する場合でもスリットの変位により当該応力が吸収されるので、この応力のセンシング部への伝達が抑制されて、センシング部の検出精度の低減を抑制することができる。
請求項6の発明では、ハウジングの中空部の内周面に対し面接触して固定され、圧力導入側に形成される開口部を構成する周壁が周方向に分割可能に形成される信号取出部材が設けられており、この信号取出部材は、開口部を構成する底壁より取出配線部が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、周壁の端部に形成される環状凸部の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部がセンサチップの一側当接面に対して当接可能に形成される。そして、センサチップは、分割した周壁を組み付ける際に開口部内に収容されることで、その電極が底壁より突出する取出配線部に電気的に接続されるとともにその一側当接面にて環状支持部に当接することで当該開口部内に固定される。また、周壁とこの周壁に対向するセンサチップの表面との間には非導電性の接着剤が充填される。
このように、センサチップは、分割した周壁を組み付ける際に開口部内に収容されることで、ハウジングに固定される信号取出部材の開口部内に露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該開口部内に固定されるため、上記請求項1の発明と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、センサチップはハウジングに直接接触しないので、センサチップに対するハウジングを介した応力の伝達を抑制することができる。
さらに、信号取出部材の周壁とこの周壁に対向するセンサチップの表面との間には接着剤が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップは一側当接面にて信号取出部材の環状支持部に当接しているので、接着剤が一側当接面の内方に位置するセンシング部に漏出して検出精度が低下することもない。
請求項7の発明では、取出配線部は、周壁に沿うように開口部内に突出し、センサチップの電極は、周壁の組み付け時に取出配線部に当接して電気的に接続されるようにセンサチップの表面のうち周壁に対向する面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されるため、分割した周壁が組み付けられる際の周方向の押圧力によりセンサチップ側配線部と取出配線部とが押し付けられることから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
請求項8の発明では、取出配線部は、底壁に沿うように開口部内に突出し、センサチップの電極は、周壁の組み付け時に取出配線部に当接して電気的に接続されるように一面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されるため、圧力媒体の圧力がセンサチップ側配線部を取出配線部に押圧する方向に作用することから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
請求項9の発明では、センサチップ側配線部および取出配線部の少なくともいずれか一方には、他方に弾性的に当接して導通する導通部が形成されるため、両配線部間の電気的接続をさらに確実にすることができる。
請求項10の発明では、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部が形成されるとともにこの環状当接部の外方に取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材が設けられている。また、ハウジングの中空部には内方へ突出する環状凸部が形成されるとともに、この環状凸部の内縁には圧力導入側へ突出する環状支持部がセンサチップの他側当接面に対して当接可能に形成され、この環状支持部よりも外方に取出配線部が挿通するための貫通孔が形成される。そして、センサチップは、他側当接面にて環状支持部に当接した状態で、電極が貫通孔を挿通する取出配線部に電気的に接続される。そして、信号取出部材に形成される接着剤導入孔から貫通孔を介して導入される非導電性の接着剤が、センサチップの他面とハウジングの環状凸部との間に充填される。
このように、センサチップは、その電極が貫通孔を挿通する取出配線部に電気的に接続された状態で環状支持部に当接するため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップをハウジングの環状凸部に押圧する方向に作用するので、上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなり、電気的接続が確実かつ容易となり得る。
さらに、センサチップの他面とハウジングの環状凸部との間には接着剤が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップは他側当接面にてハウジングの環状支持部に当接しているので、接着剤が他側当接面の内方に位置するセンシング部が投影される部位に漏出してセンシング部による検出精度が低下することもない。
請求項11の発明では、環状凸部の反圧力導入側であって環状当接部に当接する部位には当該環状当接部に係合する係合部が形成されるため、環状当接部が係合部に係合することでハウジングの環状凸部に対する信号取出部材の位置決めを容易にすることができる。
請求項12の発明では、信号取出部材の反圧力導入側には、環状当接部の内方に連通する連通孔が形成されるとともに、この連通孔の外方であって接着剤導入孔の内方に反圧力導入側へ突出する環状突出部が形成されるため、空気穴として機能する連通孔に対して環状突出部により接着剤の漏出を防止することができる。
請求項13の発明では、まず、センシング部および電極が一面および他面に形成されるセンサチップを用意する。そして、中空部に内方へ突出する環状凸部が形成されるとともにこの環状凸部の内縁に反圧力導入側へ突出する環状支持部がセンサチップの一側当接面に対して当接可能に形成されるハウジングを用意する。そして、中空部の内周面に対し面接触可能であって取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材を用意する。そして、センサチップを、電極と取出配線部とを電気的に接続した状態で信号取出部材の一側端面に固定する。そして、信号取出部材の一側端面の外縁であってセンサチップの周囲に非導電性の接着剤を所定量塗布する。一側当接面が環状支持部に当接するように信号取出部材をハウジングの中空部内に焼き嵌めまたは圧入することで、環状凸部に押圧された接着剤を中空部の内周面とこの内周面に対向するセンサチップの表面との間に充填させる。このようにして圧力センサが製造される。
このように、センサチップは、ハウジングに固定される信号取出部材の一側端面に露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該一側端面に固定されるため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップを信号取出部材に押圧する方向に作用するので、上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなり、電気的接続が確実かつ容易となり得る。特に、取出配線部は信号取出部材の外周面に露出することなく圧力導入方向に貫通するように形成されているので、信号取出部材をハウジングの中空部内に焼き嵌めまたは圧入する際に取出配線部が損傷することもない。
さらに、一側端面の外縁であってセンサチップの周囲に所定量塗布された接着剤は、信号取出部材をハウジングの中空部内に焼き嵌めまたは圧入する際に環状凸部に接触して押圧されることでセンサチップの一面の外縁とハウジングの環状凸部との間およびセンサチップの他面の外縁と信号取出部材の一側端面との間に流れ込むので、上記電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が確保されて当該電気的接続部が圧力媒体に曝されることを防止することができる。特に、センサチップは一側当接面にてハウジングの環状支持部に当接しているので、接着剤が一側当接面の内方に位置するセンシング部に漏出して検出精度が低下することもない。
請求項14の発明では、一側当接面には、環状支持部に対して底面にて当接する環状凹部が形成されるため、接着剤がセンシング部に漏出するためには環状凹部内に入り込む必要があり漏出するまでの距離が長くなるので、接着剤のセンシング部への流出を確実に防止することができる。
請求項15の発明では、信号取出部材は、中空状に形成されるとともにその内周面に取出配線部が配置されるため、取出配線部を貫通させるためにインサート成形する場合と比較して、信号取出部材の製造コストを低減することができる。
請求項16の発明では、センシング部は、2つの基板を貼り合わせることで密閉して形成される圧力基準室の圧力と圧力媒体の圧力の圧力差に応じた信号を出力するように構成される。このようなセンサチップをハウジング内に配置する場合でも、当該センサチップから信号を取り出すための配線部を圧力媒体に曝すことなくセンサチップに確実かつ容易に接続することができる。
請求項17の発明では、センサチップの他面には、一側当接面に対向する部位と電極との間にスリットが設けられるため、センサチップが一側当接面にてハウジングの環状支持部に当接することから当該環状支持部を介する応力が一側当接面に作用する場合でもスリットの変位により当該応力が吸収されるので、この応力のセンシング部への伝達が抑制されて、センシング部の検出精度の低減を抑制することができる。
請求項18の発明では、まず、センシング部および電極が一面および他面に形成されるセンサチップを用意する。そして、中空部が形成されるハウジングを用意する。そして、中空部の内周面に対し面接触可能であって、圧力導入側に形成される開口部を構成する底壁より取出配線部が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、開口部を構成する周壁が周方向に分割可能であり、当該周壁の端部に形成される環状凸部の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部が一側当接面に対して当接可能に形成される信号取出部材を用意する。そして、分割した周壁の内面に非導電性の接着剤を所定量塗布する。そして、開口部内にセンサチップを収容するように分割した周壁を組み付けることで、電極と取出配線部とを電気的に接続するとともにセンサチップに押圧された接着剤を周壁の内周面とこの内周面に対向するセンサチップの表面との間に充填させる。そして、信号取出部材をハウジングの中空部内に焼き嵌めまたは圧入する。このようにして圧力センサが製造される。
このように、センサチップは、分割した周壁を組み付ける際に開口部内に収容されることで、ハウジングに固定される信号取出部材の開口部内に露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該開口部内に固定されるため、上記請求項13の発明と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、センサチップはハウジングに直接接触しないので、センサチップに対するハウジングを介した応力の伝達を抑制することができる。
さらに、分割した周壁の内面に所定量塗布された接着剤は、各周壁を組み付ける際にセンサチップに接触して押圧されることでセンサチップの表面と開口部の内面との間に流れ込むので、上記電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が確保されて当該電気的接続部が圧力媒体に曝されることを防止することができる。特に、センサチップは一側当接面にて信号取出部材の環状支持部に当接しているので、接着剤が一側当接面の内方に位置するセンシング部に漏出して検出精度が低下することもない。
請求項19の発明では、まず、センシング部および電極が一面および他面に形成されるセンサチップを用意する。そして、中空部が形成されるハウジングを用意する。そして、中空部の内周面に対し面接触可能であって、圧力導入側に形成される開口部を構成する底壁より取出配線部が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、開口部を構成する周壁の端部には内方へ突出する環状凸部が形成される信号取出部材を用意する。そして、周壁の内面に非導電性の接着剤を所定量塗布する。そして、センサチップを弾性的に変形させた状態で開口部内に挿入した後に元の形状に戻して収容することで、電極と取出配線部とを電気的に接続するとともにセンサチップに押圧された接着剤を周壁の内周面とこの内周面に対向するセンサチップの表面との間に充填させる。そして、信号取出部材をハウジングの中空部内に焼き嵌めまたは圧入する。このようにして圧力センサが製造される。
このように、センサチップは、弾性的に変形させた状態で開口部内に挿入した後に元の形状に戻して収容することで、ハウジングに固定される信号取出部材の開口部内に露出する取出配線部に電気的に接続された状態で当該開口部内に固定されるため、上記請求項18の発明と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、周壁等を分割可能に形成する必要もないため、部品点数を削減することができる。
請求項20の発明では、取出配線部は、周壁に沿うように開口部内に突出し、センサチップの電極は、センサチップを開口部内に収容するときに取出配線部に当接して電気的に接続されるようにセンサチップの表面のうち周壁に対向する面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されるため、分割した周壁が組み付けられる際の周方向の押圧力または弾性変形したセンサチップの復元力により、センサチップ側配線部と取出配線部とが押し付けられることから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
請求項21の発明では、取出配線部は、底壁に沿うように開口部内に突出し、センサチップの電極は、センサチップを開口部内に収容するときに取出配線部に当接して電気的に接続されるように一面上に形成されるセンサチップ側配線部に電気的に接続されるため、圧力媒体の圧力がセンサチップ側配線部を取出配線部に押圧する方向に作用することから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
請求項22の発明では、センサチップ側配線部および取出配線部の少なくともいずれか一方には、他方に弾性的に当接して導通する導通部が形成されるため、両配線部間の電気的接続をさらに確実にすることができる。
請求項23の発明では、まず、センシング部および電極が一面および他面に形成されるセンサチップを用意する。そして、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部の外方に取出配線部が圧力導入方向に貫通して形成され、この取出配線部よりも外方に接着剤導入孔が貫通するように形成される信号取出部材を用意する。そして、中空部に内方へ突出する環状凸部の内縁に圧力導入側へ突出する環状支持部がセンサチップの他側当接面に当接可能に形成され、当該環状凸部に取出配線部が挿通するための貫通孔が環状支持部よりも外方に形成されるハウジングを用意する。そして、信号取出部材の環状当接部がハウジングの環状凸部に当接するとともに環状支持部がセンサチップの他側当接面に当接した状態で、貫通孔を挿通する信号取出部材の取出配線部にセンサチップの電極を電気的に接続する。そして、非導電性の接着剤を信号取出部材の接着剤導入孔から貫通孔を介してセンサチップの他面とハウジングの環状凸部との間に導入して充填する。
このように、センサチップは、その電極が貫通孔を挿通する取出配線部に電気的に接続された状態で環状支持部に当接するため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップをハウジングの環状凸部に押圧する方向に作用するので、上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなり、電気的接続が確実かつ容易となり得る。
さらに、センサチップの他面とハウジングの環状凸部との間には接着剤が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップは他側当接面にてハウジングの環状支持部に当接しているので、接着剤が他側当接面の内方に位置するセンシング部が投影される部位に漏出してセンシング部による検出精度が低下することもない。
請求項24の発明では、環状凸部の反圧力導入側であって環状当接部に当接する部位には当該環状当接部に係合する係合部が形成されるため、環状当接部が係合部に係合することでハウジングの環状凸部に対する信号取出部材の位置決めを容易にすることができる。
請求項25の発明では、信号取出部材の反圧力導入側には、環状当接部の内方に連通する連通孔が形成されるとともに、この連通孔の外方であって接着剤導入孔の内方に反圧力導入側へ突出する環状突出部が形成されるため、空気穴として機能する連通孔に対して接着剤の漏出を防止することができる。
以下、本発明に係る圧力センサの各実施形態について図を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。図1は、本第1実施形態に係る圧力センサ10の全体概略断面図である。図2(A)は、図1に示す2A−2A線相当の切断面による断面図であり、図2(B)は、2B−2B線相当の切断面による断面図である。
圧力センサ10は、たとえば自動車のブレーキ圧や燃料圧を検出するものに適用される。図1〜図3に示すように、圧力センサ10は、主に、ステンレス鋼など金属製のハウジング11と、センシング部20aを有するセンサチップ20と、センシング部20aからの信号を取り出すための取出配線部42を有する信号取出部材40とを備えている。
ハウジング11は、中空部11aを有するように略円筒状に形成されており、この中空部11aの一端側は、測定媒体としての圧力媒体が導入される圧力導入孔13を構成する。また、ハウジング11のうち圧力導入孔13が形成される一端側の外周面には当該圧力センサ10を自動車の適所、例えば、自動車の燃料配管などの被検出体の適所に固定するためのねじ部14が形成されている。
中空部11aを構成する内周面の長手方向中央には、内方へ突出する環状凸部15が形成されている。この環状凸部15の内縁には反圧力導入側(センサチップ側)へ突出する環状支持部15aが後述するセンサチップ20の一側当接面20dに対して当接可能に環状に形成されている。
センサチップ20は、支持基板21aと、この支持基板21aの表面に形成される酸化膜21bと、この酸化膜21bを挟んで支持基板21aの反対側に形成されるSOI層21cと、を有するSOI基板21を備えている。
支持基板21aには、圧力導入孔13側に位置する面と対向する面に凹部22が形成されている。この凹部22によりSOI基板21には、支持基板21aにおける凹部22の底部と酸化膜21bのうち凹部22の底部と対応する部分とから薄膜なダイアフラム24が構成されている。そして、このダイアフラム24の圧力導入孔13側に位置する面が受圧面となる。
SOI層21cは、部分的にもしくは全域にP型不純物がドーピングされたP型半導体とされ、酸化膜21bまで達するトレンチ25が形成されることにより、4つのゲージ抵抗26、4つの配線27および外周部28に区画されている。そして、SOI層21cのうちこれらを構成しない部分は除去された構成とされている。
各ゲージ抵抗26は、ダイアフラム24の変位に応じた電気信号を出力するように当該ダイアフラム24の内側に設けられており、各ゲージ抵抗26を構成するSOI層21cの全域がP型半導体とされている。これにより、センシング部20aは、ダイアフラム24が受けた圧力を各ゲージ抵抗26によって電気信号に変換し、この電気信号をセンサ信号として出力する半導体ダイアフラム式のものとして構成される。
各配線27は、各ゲージ抵抗26同士を電気的に接続するものであり、それぞれが2つのゲージ抵抗26を接続することでブリッジ回路を構成している。また、各配線27は、後述するように導通孔29に形成される電極30と電気的に接続されている。
外周部28は、SOI層21cのうち各ゲージ抵抗26および各配線27を囲む部分であり、トレンチ25により各ゲージ抵抗26および各配線27と分離されている。なお、各ゲージ抵抗26、各配線27および外周部28をトレンチ25によらず分離する構成としてもよいが、トレンチ25によって区画することでハウジング11とセンサチップ20との接合部における応力を抑制することもできる。
センサチップ20には支持基板21aから各配線27が構成されるSOI層21cまで達する円錐状の導通孔29がそれぞれ形成されており、各導通孔29には図略の絶縁層を介して電極30がそれぞれ形成されている。各電極30は、SOI層21cに形成された各配線27を介して各ゲージ抵抗26にそれぞれ電気的に接続されている。
これにより、センシング部20aが形成される圧力導入側の面(以下、一面20bという)に対向する面(以下、他面20cという)に当該センシング部20aからの信号を取り出すための電極30が形成されることとなる。
また、一面20bには、センシング部20aを保護するために、酸化膜やパリレン等から形成される保護部材31が設けられている。この保護部材31には、センシング部20aを保護する部位よりも外方に環状の凹部(以下、環状凹部31aという)が形成されている。
信号取出部材40は、セラミック製の円柱部41と、この円柱部41にインサート形成される4つの取出配線部42とを備えている。円柱部41は、その外周面にてハウジング11の中空部11aの内周面に焼き嵌め可能に形成されている。また、円柱部41には、センサチップ20の凹部22に連通するための空気穴43が圧力導入方向(図1の上下方向)に形成されている。
各取出配線部42は、センサチップ20の対応する電極30に接続可能に、円柱部41を圧力導入方向に貫通してその一端が一側端面41aに露出するようにそれぞれ形成されている。
センサチップ20は、各電極30が信号取出部材40の一側端面41aにて露出する各取出配線部42に導電性のエラストマ32等を介して電気的に接続された状態で当該一側端面41aに固定されている。なお、各電極30および各取出配線部42は、例えば、はんだ等を介して接続されてもよい。
そして、センサチップ20が固定された信号取出部材40が、ハウジング11の中空部11aの内周面に対し焼き嵌めされて面接触することで固定される。このとき、ハウジング11の環状支持部15aは、センサチップ20の環状凹部31aの底面(以下、一側当接面20dという)に当接している。
また、中空部11aの内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20の表面との間には、例えば、エポキシ樹脂や低融点ガラス、シリコン系樹脂等の非導電性の接着剤50が充填されている。この接着剤50は、ハウジング11に対する信号取出部材40の固定を強固にするとともに、電極30および取出配線部42の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性を確保するために設けられるものである。
このように構成される圧力センサ10では、センサチップ20が各電極30にて取出配線部42に電気的に接続された状態で信号取出部材40の一側端面41aに固定されるため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップ20を信号取出部材40に押圧する方向に作用する。このため、圧力媒体の圧力が高くなる場合でも上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなる。
次に、本第1実施形態に係る圧力センサ10の製造方法の工程を図3および図4を用いて詳細に説明する。図3(A)〜(F)は、第1実施形態におけるセンサチップ20の製造方法の工程を示す説明図である。図4(A)〜(C)は、第1実施形態における圧力センサ10の製造方法の工程を示す説明図である。
まず、図3(A)〜(F)を用いてセンサチップ20の製造方法の工程を説明する。
図3(A)に示すように、支持基板21aの表面に酸化膜21bを介してSOI層21cが形成されるSOI基板21を用意する。このSOI基板21は、例えば、支持基板21aの表面から酸素イオンを注入して注入表面から結晶欠陥層と酸素注入層を形成し、その後高温アニールにより結晶欠陥層をSOI層21cとし、酸素注入層を酸化膜21bとすることで形成される。
次に、図3(B)に示すように、SOI層21cのうち少なくとも各ゲージ抵抗26を構成する部分と各配線27を構成する部分とに対して、SOI層21cの酸化膜21bと接合する面の対向面から例えばP型不純物のイオン注入を行なうことによりこれらの部分の全域をP型半導体にする。
そして、図3(C)に示すように、周知のフォトレジストやエッチングなどにより酸化膜21bまで達するトレンチ25を形成する。これにより、SOI層21cにトレンチ25によって区画された各ゲージ抵抗26と各配線27を形成するとともに、各ゲージ抵抗26と各配線27を取り囲むトレンチ25によりSOI層21cで構成される外周部28を形成する。その後、各ゲージ抵抗26を形成するSOI層21cをさらにエッチングなどにより薄くする。なお、各ゲージ抵抗26および各配線27は、本図とは別断面で電気的に接続されている。
次に、図3(D)に示すように、エッチングなどにより支持基板21aのSOI層21cが形成される面と対向する面から凹部22を形成して、支持基板21aにおける凹部22の底部と酸化膜21bのうち凹部22の底部と対応する部分とからなるダイアフラム24を形成する。なお、ダイアフラム24の厚さは適宜変更可能であり、例えば、凹部22を酸化膜21bが露出するまで形成して、ダイアフラム24を酸化膜21bで形成することもできる。これにより、圧力媒体の圧力に基づくダイアフラム24の変位に応じた信号が各ゲージ抵抗26から出力されるセンシング部20aが構成される。
そして、図3(E)に示すように、支持基板21aから各配線27に達する導通孔29を、例えばレーザー等によりそれぞれ形成する。
そして、図3(F)に示すように、各導通孔29に図略の絶縁層を介して金属を埋め込み電極30をそれぞれ形成する。そして、環状凹部31aが形成された保護部材31でセンシング部20aを保護することにより、本第1実施形態に係るセンサチップ20が完成する。なお、図3(A)〜図3(F)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当する。
次に、上述のように形成されるセンサチップ20を信号取出部材40とともにハウジング11に組み付けて圧力センサ10を形成する工程を図4(A)〜(C)を用いて説明する。
まず、中空部11aに内方へ突出する環状凸部15が形成されるとともにこの環状凸部15の内縁に反圧力導入側へ突出する環状支持部15aがセンシング部20aの一側当接面20dに対して当接可能に冷間鍛造により形成されるハウジング11を用意する。そして、ハウジング11の圧力導入孔13を構成する一端側の外周面にねじ部14を形成する。なお、ハウジング11は、本第1実施形態では、冷間鍛造により形成されるが、他の鋳造方法により形成されてもよいし、複数の部品を製造した後に金属接合等により一体化してハウジング11を形成してもよい。なお、本工程は、特許請求の範囲の請求項13に記載の「第2工程」の一例に相当する。
次に、セラミック製の円柱部41にてハウジング11の中空部11aの内周面に対し望ましくは面接触可能であって、各取出配線部42が圧力導入方向に貫通して一端が一側端面41aに露出するようにそれぞれ形成される信号取出部材40を用意する。なお、本工程は、特許請求の範囲の請求項13に記載の「第3工程」の一例に相当する。ただし、セラミック製の円柱部41と、ハウジング11の中空部11aの内周面とが固定されていれば良いため、必ずしも面接触ではなく、点接触や線接触であっても良い。
そして、図4(A)に示すように、センサチップ20を、各電極30と対応する取出配線部42とを導電性のエラストマ32等を介してそれぞれ電気的に接続した状態で信号取出部材40の一側端面41aに固定する。
次に、図4(B)に示すように、信号取出部材40の一側端面41aの外縁であってセンサチップ20の周囲に接着剤50を所定量塗布する。そして、加熱して拡径したハウジング11の中空部11a内に、センサチップ20が固定された信号取出部材40を挿入して焼き嵌めする。なお、上記所定量は、例えば、後述するように環状凸部15に押圧された接着剤50がセンシング部20aやセンシング部20aの他面20cへの投影部位まで流れ込まない程度の量に設定される。
このとき、取出配線部42は信号取出部材40の外周面に露出することなく円柱部41を圧力導入方向に貫通するように形成されているので、信号取出部材40をハウジング11の中空部11aの内周面に挿入する際に取出配線部42が損傷することもない。
そして、図4(C)に示すように、センサチップ20の一側当接面20dがハウジング11の環状支持部15aに当接するまで、信号取出部材40を拡径した中空部11a内に挿入することで、接着剤50が中空部11aの内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20の表面との間に充填される。これにより、各電極30および各取出配線部42の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が確保される。
このとき、接着剤50は、信号取出部材40をハウジング11の中空部11a内に挿入する際に環状凸部15に接触して押圧されることでセンサチップ20の一面20bの外縁と環状凸部15との間や他面20cの外縁と信号取出部材40の一側端面41aとの間に流れ込むので、上記電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が確実に確保される。
特に、センサチップ20は環状凹部31aの底面である一側当接面20dにて環状支持部15aに当接しているので、接着剤50がセンシング部20aに漏出するためには環状凹部31a内に入り込む必要があり漏出するまでの距離が長くなるので、接着剤50のセンシング部20aへの流出を確実に防止することができる。
このようにして、図1に示す圧力センサ10が完成する。
なお、図4(A)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項13に記載の「第4工程」の一例に相当し、図4(B)および図4(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項13に記載の「第5工程」および「第6工程」の一例に相当する。
以上説明したように、本第1実施形態の圧力センサ10では、ハウジング11の中空部11aの内周面に対し面接触して固定され、各取出配線部42が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材40が設けられている。また、ハウジング11の中空部11aには内方へ突出する環状凸部15が形成されるとともに、この環状凸部15の内縁には反圧力導入側へ突出する環状支持部15aがセンサチップ20の一側当接面20dに対して当接可能に形成されている。そして、センサチップ20は、各電極30が各取出配線部42に電気的に接続された状態で信号取出部材40の一側端面41aに固定されるとともに、一側当接面20dにてハウジング11の環状支持部15aに当接する。また、中空部11aの内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20の表面との間には非導電性の接着剤50が充填される。
このように、センサチップ20は、ハウジング11に固定される信号取出部材40の各取出配線部42に電気的に接続された状態で一側端面41aに固定されるため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップ20を信号取出部材40に押圧する方向に作用するので、圧力媒体の圧力が高くなる場合でも上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなる。また、各取出配線部42は信号取出部材40の外周面に露出することなく圧力導入方向に貫通するように形成されているので、信号取出部材40をハウジング11の中空部11a内に焼き嵌めして固定する際に各取出配線部42が損傷することもない。
また、ハウジング11に固定する前の信号取出部材40に対してセンサチップ20の各電極30を対応する取出配線部42に電気的に接続するため、ハウジング11内で接続作業を実施する必要がないので、電気的接続作業が容易になる。
さらに、中空部11aの内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20の表面との間には接着剤50が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップ20は一側当接面20dにてハウジング11の環状支持部15aに当接しているので、接着剤50が一側当接面20dの内方に位置するセンシング部20aに漏出して検出精度が低下することもない。
したがって、ハウジング11内に配置されるセンサチップ20から信号を取り出すための各取出配線部42を圧力媒体に曝すことなくセンサチップ20に確実かつ容易に接続することができる。
また、本第1実施形態の圧力センサ10では、一側当接面20dは、環状支持部15aが当接する環状凹部31aの底面として形成されるため、接着剤50がセンシング部20aに漏出するためには環状凹部31a内に入り込む必要があり漏出するまでの距離が長くなるので、接着剤50のセンシング部20aへの流出を確実に防止することができる。
また、本第1実施形態の圧力センサ10の製造方法では、上述した図3(A)〜図3(F)および図4(A)〜(C)等に示す工程により圧力センサが製造される。このため、一側端面41aの外縁であってセンサチップ20の周囲に所定量塗布された接着剤50は、信号取出部材40をハウジング11の中空部11a内に焼き嵌めする際に環状凸部15に接触して押圧されることでセンサチップ20の一面20bの外縁と環状凸部15との間および他面20cの外縁と一側端面41aとの間に流れ込むので、上記電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が確保されて当該電気的接続部が圧力媒体に曝されることを防止することができる。
図5は、第1実施形態の第1の変形例における圧力センサ10を示す全体概略断面図である。
第1実施形態に係る第1の変形例として、図5に示すように、中空状に形成される中空部41bの内周面に各取出配線部42aを印刷等して設けた信号取出部材40aを採用してもよい。これにより、取出配線部42を貫通させるために上述した円柱部41等にインサート成形する場合と比較して、信号取出部材40aの製造コストを低減することができる。
図6は、第1実施形態の第2の変形例における圧力センサ10を示す全体概略断面図である。
第1実施形態に係る第2の変形例として、図6に示すように、センサチップ20の他面20cであって一側当接面20dに対向する部位と電極30との間にスリット33を設けてもよい。
これにより、センサチップ20が一側当接面20dにてハウジング11の環状支持部15aに当接することから当該環状支持部15aを介する応力が一側当接面20dに作用する場合でもスリット33の変位により当該応力が吸収されるので、この応力のセンシング部20aへの伝達が抑制されて、センシング部20aの検出精度の低減を抑制することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図7および図8を参照して説明する。図7は、本第2実施形態に係る圧力センサ10aの全体概略断面図である。図8(A)〜8(C)は、図7のセンサチップ20eの製造方法の工程の一部を示す説明図である。
図7に示すように、本第2実施形態に係る圧力センサ10aでは、上述したセンサチップ20に代えてセンサチップ20eを採用する点が、上記第1実施形態にて述べた圧力センサ10と主に異なる。したがって、第1実施形態の圧力センサ10と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
センサチップ20eは、絶縁膜35を介してSOI基板21における支持基板21aの表面にSi基板34を貼り合わされた構成とされている。SOI基板21は、圧力導入孔13側に向けられ、上記第1実施形態と同様にSOI基板21には、支持基板21aに凹部22が形成され凹部22の底部と酸化膜21bのうち凹部22に対応する部分とによる薄膜なダイアフラム24が構成されている。そして、SOI層21cにも同様にトレンチ25により区画された各ゲージ抵抗26、各配線27、外周部28が設けられている。
本第2実施形態では、Si基板34が支持基板21aの凹部22を構成しない部分と絶縁膜35を介して貼り合わされており、支持基板21aに形成される凹部22により密閉された圧力基準室23が構成されている。これにより、圧力基準室23の圧力と圧力媒体の圧力の圧力差に基づくダイアフラム24の変位に応じた信号が各ゲージ抵抗26から出力されるセンシング部20aが構成される。
また、センサチップ20eには、圧力基準室23を通過しないように各配線27に達する円錐状の導通孔29がそれぞれ形成されており、各導通孔29には図略の絶縁層を介して電極30がそれぞれ形成されている。
このように構成されるセンサチップ20eは、各電極30が信号取出部材40の一側端面41aにて露出する各取出配線部42に導電性のエラストマ32等を介して電気的に接続された状態で当該一側端面41aに固定されている。
本第2実施形態におけるセンサチップ20eは、以下のように形成される。
まず、上記第1実施形態の図3(A)〜(D)に示すように、SOI基板21に凹部22、トレンチ25、各ゲージ抵抗26、各配線27および外周部28を形成する。
そして、図8(A)に示すように、Si基板34に酸化やCVD等により絶縁膜35をSOI基板21に接合させる面に形成する。
次に、図8(B)に示すように、大気圧下でSOI基板21における支持基板21aのうち凹部22が形成されていない部分とSi基板34とを絶縁膜35を介して貼り合わせる。これにより、凹部22による圧力基準室23が形成され、この圧力基準室23の圧力と圧力媒体の圧力の圧力差に基づくダイアフラム24の変位に応じた信号が各ゲージ抵抗26から出力されるセンシング部20aが構成される。
そして、図8(C)に示すように、圧力基準室23を通過しないように各配線27に達する円錐状の導通孔29をそれぞれ形成し、各導通孔29に対し図略の絶縁層を介して電極30をそれぞれ形成する。そして、環状凹部31aが形成された保護部材31でセンシング部20aを保護することにより、本第2実施形態に係るセンサチップ20eが完成する。そして、このセンサチップ20eを上記第1実施形態と同様に、信号取出部材40とともにハウジング11に組み付けることにより、図7に示す圧力センサ10aが完成する。
以上説明したように、本第2実施形態の圧力センサ10aでは、センシング部20aは、2つの基板21,34を貼り合わせることで密閉して形成される圧力基準室23の圧力と圧力媒体の圧力の圧力差に応じた信号を出力するように構成される。このようなセンサチップ20eをハウジング11内に配置する場合でも、当該センサチップ20eから信号を取り出すための各取出配線部42を圧力媒体に曝すことなくセンサチップ20eに確実かつ容易に接続することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図9〜図12を参照して説明する。図9は、本第3実施形態に係る圧力センサ10bの全体概略断面図である。図10(A)は、図9に示す10A−10A線相当の切断面による断面図であり、図10(B)は、10B−10B線相当の切断面による断面図である。図11(A)〜11(C)は、図9のセンサチップ20fの製造方法の工程の一部を示す説明図である。図12(A)〜(C)は、第3実施形態における圧力センサ10bの製造方法の工程を示す説明図である。
図9に示すように、本第3実施形態に係る圧力センサ10bは、主に、ステンレス鋼など金属製のハウジング11bと、センシング部20aを有するセンサチップ20fと、センシング部20aからの信号を取り出すための取出配線部62を有する信号取出部材60とを備えている。
ハウジング11bは、上記第1実施形態にて述べたハウジング11に対して、環状凸部15が廃止されるように形成されている。
センサチップ20fは、上記第1実施形態にて述べたセンサチップ20に対して、各電極30を後述する導通部62aに導通するためのセンサチップ側配線部36が新たに設けられている。各センサチップ側配線部36は、その一部がセンサチップ20fの周方向の面に露出するように断面L字状に形成されている。
信号取出部材60は、セラミック製の円柱部61と、この円柱部61にインサート形成される4つの取出配線部62とを備えるとともに、圧力導入側には開口部64が形成されている。
図9および図10に示すように、円柱部61は、周方向(図9中の左右方向)に2つの部材(以下、左側円柱部61aおよび右側円柱部61bともいう)に分割可能に構成されており、この分割時には、開口部64を構成する底壁65および周壁66もそれぞれ周方向に2つの部材に分割するように構成される。また、円柱部61は、その外周面にてハウジング11bの中空部11aの内周面に焼き嵌め可能に形成されるとともに、センサチップ20fの凹部22に連通するための空気穴63が圧力導入方向に形成されている。また、底壁65の中央部には、内方への接着剤50の漏出を妨げる突起が設けられている。
各取出配線部62は、円柱部61を圧力導入方向に貫通して周壁66に沿い開口部64内に突出するように形成されている。また、各取出配線部62の突出側には、センサチップ側配線部36に対して弾性的に当接して導通可能な導通部62aが形成されている。
周壁66の端部には内方へ突出する環状凸部67が形成されるとともに、この環状凸部67の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部67aがセンサチップ20fの保護部材31のうち環状凹部31aよりも内方であってセンシング部20aの外方の部位である一側当接面20gに対して当接可能に形成されている。
次に、本第3実施形態に係る圧力センサ10bの製造方法の工程を図11および図12を用いて詳細に説明する。まず、図3(A)〜(F)および図11(A)〜(C)を用いてセンサチップ20fの製造方法の工程を説明する。
上記第1実施形態の図3(A)〜(F)に示すように、SOI基板21に凹部22、トレンチ25、各ゲージ抵抗26、各配線27、外周部28、各導通孔29および各電極30を形成する。なお、図3(A)〜(F)では、説明の便宜上、1つのセンサチップの製造工程について図示されているが、上記各実施形態では、複数のセンサチップが1枚のウェハから製造されるものとする。
次に、図11(A)に示すように、隣接する外周部28間に凹部36aを形成する。そして、図11(B)に示すように、各凹部36aおよび凹部36aに隣接する各電極30にセンサチップ側配線部36を構成するためのアルミニウム材料をCVD等により堆積する。
そして、図11(C)に示すように、各凹部36aの底部を取り除くようにダイシング処理を施すことにより、断面L字状のセンサチップ側配線部36が形成される。そして、環状凹部31aが形成された保護部材31でセンシング部20aを保護することにより、本第3実施形態に係るセンサチップ20fが完成する。なお、図3(A)〜(F)および図11(A)〜(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第1工程」の一例に相当する。
次に、上述のように形成されるセンサチップ20fを信号取出部材60とともにハウジング11bに組み付けて圧力センサ10bを形成する工程を図12(A)〜(C)を用いて説明する。
まず、中空部11aの圧力導入側に段部が形成されるハウジング11bを用意する。そして、ハウジング11の圧力導入孔13を構成する一端側の外周面にねじ部14を形成する。なお、本工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第2工程」の一例に相当する。
次に、セラミック製の円柱部61にてハウジング11bの中空部11aの内周面に対し面接触可能であって、圧力導入側に形成される開口部64を構成する底壁65より各取出配線部62が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、円柱部61とともに周壁66が周方向に分割可能であり、当該周壁66の端部には内方へ突出する環状凸部67が形成されるとともに、この環状凸部67の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部67aが一側当接面20gに対して当接可能に形成される信号取出部材60を用意する。なお、本工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第3工程」の一例に相当する。
そして、図12(A)に示すように、分割した周壁66の内面に非導電性の接着剤50を所定量塗布する。
次に、図12(B)に示すように、開口部64内にセンサチップ20fを収容するように分割した周壁66を組み付けることで、各電極30と各取出配線部62とがセンサチップ側配線部36を介して電気的に接続されるとともに、接着剤50が周壁66の内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20fの表面との間に充填される。
これにより、センサチップ20fにより接着剤50が周方向に押圧されることで、当該接着剤50が、センサチップ20fの一面20bの外縁と環状凸部67との間や他面20cの外縁と底壁65との間に流れ込む。このとき、周壁66の環状支持部67aは、一側当接面20gに対して当接するため、センシング部20aへの接着剤50の流出が確実に防止される。
また、各取出配線部62には、導通部62aが形成されているので、この導通部62aが弾性的にセンサチップ側配線部36に当接して導通することにより、各電極30と各取出配線部62とを確実に電気的に接続することができる。
そして、図12(C)に示すように、センサチップ20fを組み付けた信号取出部材60を、加熱して拡径したハウジング11bの中空部11aの段部まで挿入するように焼き嵌めする。これにより、各電極30および各取出配線部62の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が接着剤50により確保される。
このようにして、図9に示す圧力センサ10bが完成する。
なお、図12(A)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第4工程」の一例に相当し、図12(B)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第5工程」の一例に相当し、図12(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項18に記載の「第6工程」の一例に相当する。
以上説明したように、本第3実施形態の圧力センサ10bでは、ハウジング11bの中空部11aの内周面に対し面接触して固定され、圧力導入側に形成される開口部64を構成する周壁66が周方向に分割可能に形成される信号取出部材60が設けられており、この信号取出部材60は、開口部64を構成する底壁65より各取出配線部62が圧力導入方向に貫通して突出するように形成され、周壁66の端部に形成される環状凸部67の内縁から反圧力導入側へ突出する環状支持部67aがセンサチップ20fの一側当接面20gに対して当接可能に形成される。そして、センサチップ20fは、分割した周壁66を組み付ける際に開口部64内に収容されることで、各電極30が各取出配線部62にセンサチップ側配線部36を介して電気的に接続されるとともにその一側当接面20gにて環状支持部67aに当接することで当該開口部64内に固定される。また、周壁66とこの周壁66に対向するセンサチップ20fの表面との間には非導電性の接着剤50が充填される。
このように、センサチップ20fは、分割した周壁66を組み付ける際に開口部64内に収容されることで、ハウジング11bに固定される信号取出部材60の開口部64内に露出する各取出配線部62に電気的に接続された状態で当該開口部64内に固定されるため、上記第1実施形態と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、センサチップ20fはハウジング11bに直接接触しないので、センサチップ20fに対するハウジング11bを介した応力の伝達を抑制することができる。
さらに、信号取出部材60の周壁66とこの周壁66に対向するセンサチップ20fの表面との間には接着剤50が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップ20fは一側当接面20gにて信号取出部材40の環状支持部67aに当接しているので、接着剤50が一側当接面20gの内方に位置するセンシング部20aに漏出して検出精度が低下することもない。
また、本第3実施形態の圧力センサ10bでは、各取出配線部62は、周壁66に沿うように開口部64内に突出し、センサチップ20fの各電極30は、断面L字状に形成されるセンサチップ側配線部36に電気的に接続されるため、分割した周壁66が組み付けられる際の周方向の押圧力により各センサチップ側配線部36と各取出配線部62とが押し付けられることから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
さらに、本第3実施形態の圧力センサ10bでは、各取出配線部62には、センサチップ側配線部36に弾性的に当接して導通する導通部62aが形成されているため、両配線部間の電気的接続をさらに確実にすることができる。なお、導通部62aは、センサチップ側配線部36に設けられてもよい。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図13および図14を参照して説明する。図13は、本第4実施形態に係る圧力センサ10cの全体概略断面図である。図14(A)〜(C)は、第4実施形態における圧力センサ10cの製造方法の工程を示す説明図である。
図13に示すように、本第4実施形態に係る圧力センサ10cでは、上述したセンサチップ20fおよび信号取出部材60に代えてセンサチップ20hおよび信号取出部材60aを採用する点が、上記第3実施形態にて述べた圧力センサ10bと主に異なる。したがって、第3実施形態の圧力センサ10bと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
センサチップ20hは、センサチップ側配線部36に代えてセンサチップ側配線部36bを採用する点が上記センサチップ20fと異なる。各センサチップ側配線部36bは、対応する電極30に電気的に接続されるように、センサチップ20fの一面20b上に形成されている。
信号取出部材60aは、各取出配線部62の一端が底壁65に沿うように開口部64内に突出し、この端部には、センサチップ側配線部36bに対して弾性的に当接して導通可能な導通部62bが形成されている。
次に、本第4実施形態に係る圧力センサ10cの製造方法の工程を図3(A)〜(F)および図14(A)〜(C)を用いて詳細に説明する。
まず、図3(A)〜(F)に示すように、SOI基板21に凹部22、トレンチ25、各ゲージ抵抗26、各配線27、外周部28、各導通孔29および各電極30を形成した後、各電極30に導通するセンサチップ側配線部36bを一面20b上に形成する。そして、環状凹部31aが形成された保護部材31でセンシング部20aを保護することにより、本第4実施形態に係るセンサチップ20hが完成する。
次に、上述のように形成されるセンサチップ20hを信号取出部材60とともにハウジング11bに組み付けて圧力センサ10cを形成する工程を図14(A)〜(C)を用いて説明する。
まず、上記第3実施形態と同様に、中空部11aの圧力導入側に段部が形成されるハウジング11bと、上述した信号取出部材60aとを用意する。そして、図14(A)に示すように、分割した周壁66の内面に非導電性の接着剤50を所定量塗布する。
次に、図14(B)に示すように、開口部64内にセンサチップ20hを収容するように分割した周壁66を組み付けることで、各電極30と各取出配線部62とがセンサチップ側配線部36bを介して電気的に接続されるとともに、接着剤50が周壁66の内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20hの表面との間に充填される。
これにより、センサチップ20hにより接着剤50が周方向に押圧されることで、当該接着剤50が、センサチップ20hの一面20bの外縁と環状凸部67との間や他面20cの外縁と底壁65との間に流れ込む。このとき、周壁66の環状支持部67aは、一側当接面20gに対して当接するため、センシング部20aへの接着剤50の流出が確実に防止される。
また、各取出配線部62には、導通部62bが形成されているので、この導通部62bが圧力導入方向にて弾性的にセンサチップ側配線部36bに当接して導通することにより、各電極30と各取出配線部62とを確実に電気的に接続することができる。
そして、図14(C)に示すように、センサチップ20hを組み付けた信号取出部材60aを、加熱して拡径したハウジング11bの中空部11aの段部まで挿入するように焼き嵌めする。これにより、各電極30および各取出配線部62の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が接着剤50により確保される。
このようにして、図13に示す圧力センサ10cが完成する。
以上説明したように、本第4実施形態の圧力センサ10cでは、信号取出部材60aの開口部64内にセンサチップ20hを収容するように分割した周壁66を組み付けることで、各電極30と各取出配線部62とが一面20b上のセンサチップ側配線部36bを介して電気的に接続される。このようにしても、センサチップ20hから信号を取り出すための各取出配線部62を圧力媒体に曝すことなくセンサチップ20hに確実かつ容易に接続することができる。
特に、各取出配線部62は、底壁65に沿うように開口部64内に突出し、センサチップ20hの各電極30は、周壁66の組み付け時に各取出配線部62の導通部62bに当接して電気的に接続されるように一面20b上に形成されるセンサチップ側配線部36bに電気的に接続されている。このため、圧力媒体の圧力がセンサチップ側配線部36bを取出配線部62に押圧する方向に作用することから、両配線部間の電気的接続をより確実にすることができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を図15および図16を参照して説明する。図15は、本第5実施形態に係る圧力センサ10dの全体概略断面図である。図16(A)〜(C)は、第5実施形態における圧力センサ10dの製造方法の工程を示す説明図である。
図15に示すように、本第5実施形態に係る圧力センサ10dでは、上述した信号取出部材60aに代えて信号取出部材70を採用する点が、上記第4実施形態にて述べた圧力センサ10cと主に異なる。したがって、第4実施形態の圧力センサ10cと実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
信号取出部材70は、セラミック製の円柱部71と、この円柱部71にインサート形成される4つの取出配線部72とを備えるとともに、圧力導入側には開口部74が形成されている。円柱部71は、その外周面にてハウジング11bの中空部11aの内周面に焼き嵌め可能に形成されるとともに、センサチップ20hの凹部22に連通するための空気穴73が圧力導入方向に形成されている。
各取出配線部72は、円柱部71を圧力導入方向に貫通して開口部74を構成する底壁75に沿い開口部74内に突出するように形成されている。また、各取出配線部72の突出端部には、センサチップ側配線部36bに対して弾性的に当接して導通可能な導通部72aが形成されている。
開口部74を構成する周壁76の内周面の一部は、センサチップ20hが後述するように開口部74内に収容されるとき、当該センサチップ20hの対向する表面に当接可能に形成されている。また、周壁76の端部には、圧力導入側へ傾斜して突出する環状凸部77が形成されている。また、底壁65の中央部には、内方への接着剤50の漏出を妨げる突起が設けられている。
次に、本第5実施形態に係る圧力センサ10dの製造方法の工程を図16を用いて詳細に説明する。
まず、上記第4実施形態と同様に、ハウジング11bおよびセンサチップ20hと、上述のように構成される信号取出部材70とを用意する。そして、図16(A)に示すように、信号取出部材70の周壁76の内面に非導電性の接着剤50を所定量塗布する。
そして、センサチップ20hを、各センサチップ側配線部36bが近接する方向(図16(A)中のα方向)に屈曲させるように弾性変形させた状態で開口部74内に挿入した後に、図16(B)に示すように、元の形状に戻して収容する。このとき、各電極30と各取出配線部72とがセンサチップ側配線部36bを介して電気的に接続されるとともに、接着剤50が周壁76の内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20hの表面との間に充填される。
これにより、センサチップ20hにより接着剤50が周方向に押圧されることで、当該接着剤50が、センサチップ20hの一面20bの外縁と環状凸部77との間や他面20cの外縁と底壁75との間に流れ込む。
また、各取出配線部72には、導通部72aが形成されているので、この導通部72aが圧力導入方向にて弾性的にセンサチップ側配線部36bに当接して導通することにより、各電極30と各取出配線部72とを確実に電気的に接続することができる。
そして、図16(C)に示すように、センサチップ20hを組み付けた信号取出部材70を、加熱して拡径したハウジング11bの中空部11aの段部まで挿入するように焼き嵌めする。これにより、各電極30および各取出配線部72の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が接着剤50により確保される。
このようにして、図15に示す圧力センサ10dが完成する。
以上説明したように、本第5実施形態の圧力センサ10dの製造方法では、周壁76の内面に接着剤50を所定量塗布し、センサチップ20hを弾性的に変形させた状態で開口部74内に挿入した後に元の形状に戻して収容することで、各電極30と各取出配線部72とをセンサチップ側配線部36bを介して電気的に接続するとともに接着剤50を周壁76の内周面とこの内周面に対向するセンサチップ20hの表面との間に充填させる。
このように、センサチップ20hは、弾性的に変形させた状態で開口部74内に挿入した後に元の形状に戻して収容することで、ハウジング11bに固定される信号取出部材70の開口部74内に露出する各取出配線部72に電気的に接続された状態で当該開口部74内に固定されるため、上記第4実施形態と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、周壁76等を分割可能に形成する必要もないため、部品点数を削減することができる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態を図17を参照して説明する。図17は、本第6実施形態に係る圧力センサ10eの全体概略断面図である。
図17に示すように、本第6実施形態に係る圧力センサ10eでは、上述したハウジング11および信号取出部材40に代えてハウジング11cおよび信号取出部材80を採用する点が、上記第1実施形態にて述べた圧力センサ10と主に異なる。したがって、第1実施形態の圧力センサ10と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
ハウジング11cは、上記ハウジング11に対して、環状支持部15aを廃止するように形成されている。また、信号取出部材80は、信号取出部材40に対して、その円柱部81が外周面にてハウジング11cの中空部11aの内周面に焼き嵌め可能であってその一側端面81aの外縁がハウジング11cの環状凸部15に当接可能に形成されている。また、円柱部81には、4つの取出配線部82がインサート形成されるとともに、センサチップ20の凹部22に連通するための空気穴83が圧力導入方向に形成されている。
そして、本第6実施形態における圧力センサ10eは、以下のようにして形成される。まず、上記第1実施形態におけるセンサチップ20と、上述したハウジング11cおよび信号取出部材80を用意する。次に、センサチップ20を、各電極30と対応する取出配線部82とを導電性のエラストマ32等を介してそれぞれ電気的に接続した状態で信号取出部材80の一側端面81aに固定する。そして、センサチップ20の他面20cの外縁と一側端面81aとの間に非導電性の接着剤50を塗布する。そして、センサチップ20が環状凸部15の内方に位置するように信号取出部材80をハウジング11cの中空部11a内に焼き嵌めする。このとき、信号取出部材80は、一側端面81aの外縁にて接着剤50を介してハウジング11cの環状凸部15に当接している。このようにして、図17に示す圧力センサ10eが完成する。
以上説明したように、本第6実施形態の圧力センサ10eでは、センサチップ20が、各電極30が各取出配線部82に電気的に接続された状態で環状凸部15の内方にて信号取出部材80の一側端面81aに固定されるため、上記第1実施形態と同様に、上記電気的接続部の接続が確実かつ容易となり得る。特に、環状凸部15はその内方にセンサチップ20が配置されるためハウジング11cをセンサチップ20に対して周方向に大きくする必要があるが、センサチップ20はハウジング11cに直接接触しないので、センサチップ20に対するハウジング11cを介した応力の伝達を抑制することができる。
さらに、センサチップ20の他面20cの外縁と信号取出部材80の一側端面81aとの間には接着剤50が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることを防止することができる。
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態を図18および図19を参照して説明する。図18は、本第7実施形態に係る圧力センサ10fの全体概略断面図である。図19(A)〜(C)は、第7実施形態における圧力センサ10fの製造方法の工程を示す説明図である。
図18に示すように、本第7実施形態に係る圧力センサ10fでは、上述したハウジング11および信号取出部材40に代えてハウジング11dおよび信号取出部材90を採用する点が、上記第1実施形態にて述べた圧力センサ10と主に異なる。したがって、第1実施形態の圧力センサ10と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
ハウジング11dは、中空部11aを有するように略円筒状に形成されており、この中空部11aの一端側には、圧力導入孔13が形成されるとともにこの外周面にねじ部14が形成されている。また、中空部11aを構成する内周面の長手方向中央には、内方へ突出する環状凸部15が形成されている。この環状凸部15の内縁には圧力導入側へ突出する環状支持部15bが後述するセンサチップ20の他側当接面20iに対して当接可能に環状に形成されている。
また、環状凸部15には、後述する各取出配線部92が挿通するための貫通孔15cが環状支持部15bよりも外方にそれぞれ形成されている。各貫通孔15cは、挿通する取出配線部92に対してショートをなくすため一定の距離を保つように形成されている。また、環状凸部15の反圧力導入側であって後述する環状当接部93が当接する部位には、当該環状当接部93に係合可能な係合部15dが形成されている。
信号取出部材90は、円板部91と、この円板部91に対して貫通するように固定される4つの取出配線部92とを備えている。円板部91には、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部93が形成されており、この環状当接部93の外方にて各取出配線部92がセンサチップ20の対応する電極30に接続可能に設けられている。
また、円板部91には、環状当接部93の内方に連通して環状凸部15の内方とともにセンサチップ20の凹部22に連通する空気穴として機能する連通孔94が形成されている。また、円板部91には、外縁部に複数の接着剤導入孔95が形成されており、各接着剤導入孔95の内方近傍であって連通孔94の外方には、反圧力導入側へ突出して接着剤50の流出を防止するための環状突出部96が形成されている。
次に、本第7実施形態に係る圧力センサ10fの製造方法の工程を図19(A)〜(C)を用いて詳細に説明する。
まず、上記第1実施形態と同様に、センサチップ20と、上述のように構成される信号取出部材90およびハウジング11dとを用意する。なお、各工程は、特許請求の範囲の請求項23に記載の「第1工程」〜「第3工程」の一例に相当する。
そして、図19(A)に示すように、各取出配線部92が対応する貫通孔15cを挿通するように、信号取出部材90の環状当接部93をハウジング11dにおける環状凸部15の係合部15dに係合させる。
次に、図19(B)に示すように、センサチップ20を、他面20cのうちセンシング部20aが投影される部位よりも外方である他側当接面20iにて環状支持部15bに当接させた状態で、各電極30と貫通孔15cを挿通した各取出配線部92とを導電性のエラストマ32等を介して電気的に接続する。このとき、各取出配線部92は、円板部91に固定されているので、接続作業時に各取出配線部92がずれることもない。
そして、図19(C)に示すように、非導電性の接着剤50を信号取出部材90の各接着剤導入孔95から各貫通孔15cを介してセンサチップ20の他面20cと環状凸部15との間に所定量導入して充填する。これにより、各電極30および各取出配線部92の電気的接続部を含む空間と圧力媒体が導入される空間との間の気密性が接着剤50により確保される。
このとき、センサチップ20に対して環状凸部15の環状支持部15bが他側当接面20iにて当接し、環状凸部15に対して信号取出部材90の環状当接部93が係合部15dに係合して当接するため、各接着剤導入孔95から導入された接着剤50が、他面20cのうちセンシング部20aが投影される部位に流出することが防止される。
また、各接着剤導入孔95の内方近傍には環状突出部96が形成されているので、各接着剤導入孔95から接着剤50を導入する際に内方へ流出することが防止される。
このようにして、図18に示す圧力センサ10fが完成する。
なお、図19(A)および図19(B)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項23に記載の「第4工程」の一例に相当し、図19(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項23に記載の「第5工程」の一例に相当する。
以上説明したように、本第7実施形態の圧力センサ10fでは、周方向中央部から圧力導入側へ突出する環状当接部93が形成されるとともにこの環状当接部93の外方に各取出配線部92が圧力導入方向に貫通して形成される信号取出部材90が設けられている。また、ハウジング11dの中空部11aには内方へ突出する環状凸部15が形成されるとともに、この環状凸部15の内縁には圧力導入側へ突出する環状支持部15bがセンサチップ20の他側当接面20iに対して当接可能に形成され、この環状支持部15bよりも外方に各取出配線部92が挿通するための各貫通孔15cが形成される。そして、センサチップ20は、他側当接面20iにて環状支持部15bに当接した状態で、各電極30が貫通孔15cを挿通する各取出配線部92に電気的に接続される。そして、信号取出部材90に形成される各接着剤導入孔95から各貫通孔15cを介して導入される接着剤50が、センサチップ20の他面20cとハウジング11dの環状凸部15との間に充填される。
このように、センサチップ20は、各電極30が貫通孔15cを挿通する各取出配線部92に電気的に接続された状態で環状支持部15bに当接するため、圧力媒体の圧力がこの電気的接続部に対してセンサチップ20を環状凸部15に押圧する方向に作用するので、上記電気的接続部を破断させる方向の力が作用し難くなり、電気的接続が確実かつ容易となり得る。
さらに、センサチップ20の他面20cとハウジング11dの環状凸部15との間には接着剤50が充填しているので、上記電気的接続部が圧力媒体に曝されることが防止され、特に、センサチップ20は他側当接面20iにてハウジング11dの環状支持部15bに当接しているので、接着剤50が他側当接面20iの内方に位置するセンシング部20aが投影される部位に漏出してセンシング部20aによる検出精度が低下することもない。
また、本第7実施形態の圧力センサ10fでは、環状凸部15の反圧力導入側であって環状当接部93に当接する部位に係合部15dが形成されるため、環状当接部93が係合部15dに係合することでハウジング11dの環状凸部15に対する信号取出部材90の位置決めを容易にすることができる。
さらに、本第7実施形態の圧力センサ10fでは、円板部91の反圧力導入側には、連通孔94の外方であって接着剤導入孔95の内方に反圧力導入側へ突出する環状突出部96が形成されるため、接着剤50を接着剤導入孔95から導入する際に連通孔94に対して接着剤50の漏出を防止することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記各実施形態において、圧力媒体に応じて、センシング部20aを保護する保護部材31を廃止してもよいし、保護部材31の環状凹部31aを廃止してもよい。
(2)上記第1実施形態において、信号取出部材40は、焼き嵌めにより、ハウジング11の中空部11aの内周面に対して固定されることに限らず、例えば、圧入等、中空部11aの内周面に面接触して固定されてもよい。また、信号取出部材40の円柱部41は、セラミックにより形成されることに限らず、焼き嵌めまたは圧入可能な材料で構成されてもよい。他の各実施形態においても同様である。
(3)上記第1実施形態において、絶対圧を測定するためのセンサチップを採用する場合には、空気穴43を廃止してもよい。他の各実施形態においても同様である。
(4)上記第2〜第6実施形態において、第1実施形態の第1の変形例(図5参照)にて説明したように、信号取出部材の円柱部を中空状にしてこの中空部の内周面に各取出配線部を印刷等により設けるようにしてもよい。