以下、本発明に係るセンサチップおよびその製造方法並びに圧力センサの各実施形態について図を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るセンサチップ40を採用する圧力センサ10の全体概略断面図である。図2は、図1のセンサチップ40の詳細断面図である。図3(A)は、センサチップ40の平面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す3B−3B線相当の切断面による断面図であり、図3(C)は、センサチップ40を長手方向他端側から見た側面図である。なお、図1および図2において、長手方向一端側および長手方向他端側は図中の下側および上側を示し、図3(A),(B)において、長手方向一端側および長手方向他端側は図中の左側および右側を示す。
圧力センサ10は、たとえば自動車に搭載され、燃料圧力、エンジンや駆動系の潤滑用オイル圧、あるいはエアコンの冷媒圧、さらには排気ガス圧等の圧力媒体の被測定圧力を検出する圧力センサ等に適用できる。
図1に示すように、圧力センサ10は、主に、圧力媒体の圧力に応じた電気信号を出力するセンシング部40aを有するセンサチップ40と、このセンシング部40aからの信号を取り出すためのリード24を有するコネクタケース20と、センサチップ40のセンシング部40aに圧力媒体を導入するための圧力導入通路31が形成されるハウジング30と、を備えている。
コネクタケース20は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂材料により、略環状に成形される下端部20aおよび中間部20bとこの中間部20bに着脱可能な上端部20cとを備えている。
下端部20aの中央には、センサチップ40のうちセンシング部40aが設けられる長手方向一端側とは反対側の長手方向他端側を収容するための開口部21が形成されている。
中間部20bの中央には、開口部22が形成されており、中間部20bの下端側は、その開口部22にて開口部21に連通するように下端部20aの上端側に係合可能に形成されている。
この中間部20bには、センサチップ40のセンシング部40aと外部の回路等とを電気的に接続するための複数個の金属製棒状のリード24が設けられており、各リード24の一側端部は、中間部20bの開口部22の内部に露出している。これら各リード24の一側端部は、センサチップ40の長手方向他端側の端面41eに設けられる各電極49とボンディングワイヤ26を介してそれぞれ電気的に接続されており、それによって、センサチップ40は、各リード24を介して外部と電気的に接続可能になっている。なお、ボンディングワイヤ26は、特許請求の範囲に記載の「配線部材」の一例に相当する。
各リード24は、例えば、黄銅にNiメッキ、Auメッキ等のメッキ処理を施した材料よりなり、インサートモールドにより中間部20bと一体に成形されている。
上端部20cには、上端側に開口部23が形成されており、各リード24の一側端部がセンサチップ40の各電極49に電気的に接続された中間部20bに対して開口部22を閉塞するように上端部20cを組み付けるとき、各リード24の他側端部が開口部23内に突出した形でそれぞれ露出する。
このようにコネクタケース20の開口部23に露出する各リード24の他側端部は、例えば、ワイヤハーネス等の図略の外部配線部材を介して外部回路(車両のECU等)に電気的に接続されるようになっている。
次に、ハウジング30について説明すると、このハウジング30は、例えば、ステンレス(SUS)などの金属材料をプレスや切削加工により図1中の上下方向に延びる中空筒状に成形されている。
圧力導入通路31は、ハウジング30の中空部として構成されたものである。つまり、圧力導入通路31は、ハウジング30の一端部側30aおよび他端部側30bにそれぞれ開口部31a,31bを有し、ハウジング30の内部にて両端部側間30a,30bを連通するように設けられたものである。
また、ハウジング30の一端部側30aの外面には、圧力センサ10を自動車の適所、例えば、エアコンの冷媒配管や自動車の燃料配管などの被検出体の適所に固定するためのネジ部32が形成されている。
そして、この被検出体から圧力導入通路31を介して圧力媒体が導入されるようになっている。この圧力媒体は、例えば、上述したエアコンの冷媒、ガソリンなどのエンジンの燃料、エンジンや駆動系の潤滑用オイル、あるいは排気ガスなどである。
そして、コネクタケース20の下端部20aは、ハウジング30の他端部側30bに連結されている。コネクタケース20とハウジング30との連結方法は特に限定するものではないが、溶接、接着、かしめなどが挙げられる。
本第1実施形態では、ハウジング30の他端部側30bにコネクタケース20の下端部20aが挿入された状態で、ハウジング30の他端部側30bの一部33が下端部20aにかしめ固定されている。これにより、コネクタケース20およびハウジング30は一体に組み付けられ、本第1実施形態のケース11が構成されている。
また、ハウジング30の他端部側30bとコネクタケース20の下端部20aとの間には、ハウジング30とコネクタケース20の間を気密的に封止するためのOリング25が配設されている。このOリング25は、例えば、シリコンゴム等の弾性材料よりなる。
次に、センサチップ40の構造について図2および図3を用いて詳細に説明する。
図2および図3に示すように、センサチップ40は、第1のシリコン基板41と第2のシリコン基板42とを後述するように絶縁層43を介して常温接合により貼り合せて構成されている。
第1のシリコン基板41における長手方向一端側の一側面41aには、4つの歪みゲージ44が形成されており、各歪みゲージ44は、当該各歪みゲージ44から信号を取り出すために一側面41aに形成される5つの第1配線部45にそれぞれ電気的に接続されている。なお、各歪みゲージ44と対応する第1配線部45との間には、歪みゲージ44からの信号を処理するための公知の回路部が設けられてもよい。また、本第1実施形態では、各歪みゲージ44から信号を外部にて調整可能とするために5つの第1配線部45を設けているが、4つの第1配線部45にて構成されてもよい。なお、歪みゲージ44は、特許請求の範囲に記載の「圧力検出部」の一例に相当する。
また、第1のシリコン基板41の他側面41bには、各歪みゲージ44近傍の厚さを薄くするように他側面41bから一側面41aに向けて第1凹部41cが設けられることで、薄肉部46が形成されている。
第2のシリコン基板42における長手方向一端側の一側面42aには、第2凹部42bが形成されており、この第2凹部42bと薄肉部46とを近接させるように両シリコン基板41,42を貼り合わせることにより、薄肉部46および第2凹部42bにより密閉されて圧力基準室47が形成される。これにより、薄肉部46は、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づいて変位するダイアフラム46として機能し、このダイアフラム46の変位が各歪みゲージ44により検出されることとなる。ここでは、各歪みゲージ44によりブリッジ回路が形成されており、ダイアフラム46の変位による当該ブリッジ回路の抵抗値変化が検出される。
すなわち、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部40aが構成されることとなる。
第1のシリコン基板41は、第2のシリコン基板42に対して長手方向他端側に突出するように当該第2のシリコン基板42に貼り合わされており、この突出する一側面41aと、長手方向他端側に形成される段差部41dとには、絶縁層43に形成されるコンタクトホール48aを介して各第1配線部45に電気的に接続される第2配線部48が5つ形成されている。各第2配線部48のうち、段差部41dの表面であって一側面41aに直交する端面41eに形成される部位が各電極49をそれぞれ構成する。
このように構成されるセンサチップ40は、センシング部40aを含む長手方向一端側のみがハウジング30の圧力導入通路31内に露出するように、ハウジング30の開口部31bに低融点ガラスなどよりなる接着剤50を介して支持されている。そして、センシング部40aは、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に応じてダイアフラム46が変位したとき、この変位に応じた信号を圧力検出信号として各電極49等を介して各リード24に出力する。なお、接着剤50は、特許請求の範囲に記載の「封止部材」の一例に相当する。
次に、本第1実施形態に係る圧力センサ10の製造方法について、その一具体例を述べる。
まず、後述するように形成されるセンサチップ40を用意し、このセンサチップ40を、センシング部40aを含む長手方向一端側のみが圧力導入通路31内に露出するように、ハウジング30の開口部31bに接着剤50を介して支持する。
次に、各リード24がインサートモールドされた中間部20bを用意し、この中間部20bの下端側と下端部20aの上端側とを係合する。そして、センサチップ40の長手方向他端側が下端部20aの開口部21内に収容されるように、Oリング25を介して下端部20aとハウジング30の他端部側30bとを連結する。
次に、センサチップ40の各電極49と対応するリード24の一側端部とを各ボンディングワイヤ26を介してそれぞれ電気的に接続する配線作業を実施する。このとき、各電極49は、長手方向他端側にて当該長手方向に直交する端面41eに形成されているので、センサチップ40に対して長手方向に平行な方向から配線作業が実施されることとなる。このため、当該配線作業時にセンサチップ40に生じる曲げ応力等が抑制されて、センサチップ40の変形や破損を防止することができる。また、センサチップ40の長手方向に沿う面に形成される電極に対して配線作業を実施する場合と比較して、センサチップ40の破損を防止するための補助的な支持部材も不要であり、コネクタケース20やハウジング30等が配線作業の邪魔になりにくいので、配線作業が容易になる。
特に、センサチップ40の各電極49に電気的に接続される各ボンディングワイヤ26は、当該センサチップ40の長手方向に引き出されるため、各ボンディングワイヤ26と各リード24とをセンサチップ40の長手方向に直交する方向に離間させる必要がないので、圧力センサ10において上記長手方向に直交する方向の寸法を小さくすることができる。
そして、各リード24の他側端部が開口部23内に突出させるように、コネクタケース20の中間部20bと上端部20cを組み付ける。こうして、コネクタケース20とハウジング30との組合せ固定がなされ、図1に示す圧力センサ10が完成する。
次に、上述したセンサチップ40を製造方法の工程を図4〜図7を用いて詳細に説明する。図4(A)〜(C)、図5(D)〜(F)および図6(G),(H)は、第1実施形態におけるセンサチップ40の製造方法の工程を示す説明図である。図7は、第1実施形態に係る複数のセンサチップ40が1枚のウエハWに形成された状態を示す平面図である。なお、図4〜図6および後述する図13,図14,図16,図17,図20,図21,図23,図24にて示す工程では、説明の便宜上、複数のセンサチップを同時に製造する工程において、2つのセンサチップを同時に製造する工程を図示している。
まず、図4(A)に示すように、例えば、厚さ300〜600ミクロンの(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第1のシリコン基板41を用意する。そして、この第1のシリコン基板41の一側面41aに、イオン注入等によりボロンを所定の濃度にて注入しp型のピエゾ抵抗である各歪みゲージ44を形成するとともに、より高濃度のボロンをイオン注入等してp+型拡散層配線である各第1配線部45を長手方向に沿うように形成する。そして、熱酸化等によりSiO2膜である絶縁層43を一側面41a上に形成する。
次に、図4(B)に示すように、第1のシリコン基板41の一側面41aに対して、トレンチエッチング等を施して各第1配線部45の近傍であって各歪みゲージ44から離間する部位に一側面41aから他側面41bに向けて深さ100〜300ミクロン程度のワイヤボンディングできる領域を確保できるように段差部41dを形成するとともに、この段差部41d上も含めてさらに絶縁層43を形成する。そして、各第1配線部45から信号を取り出すためのコンタクトホール48aを絶縁層43にそれぞれ形成する。
そして、図4(C)に示すように、第1のシリコン基板41において、各コンタクトホール48aを介して第1配線部45に電気的に接続されるアルミニウム等の配線層である第2配線部48を段差部41dの表面に形成する。段差部41dの表面のうち第1配線部45に近接する端面41eに配置される各第2配線部48の部位が電極49をそれぞれ構成する。図4(C)から判るように、端面41eは、一側面41aに直交する面として形成されるため、各電極49は、長手方向に対して直交するように形成されることとなる。
そして、図5(D)に示すように、第1のシリコン基板41において、各歪みゲージ44近傍の他側面41bにトレンチエッチング等を施して第1凹部41cを設けて各歪みゲージ44近傍の厚さを薄くすることにより、ダイアフラム46として機能する薄肉部46を形成する。
次に、図5(E)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第2のシリコン基板42を用意する。そして、この第2のシリコン基板42の一側面42aにトレンチエッチング等を施して、第2凹部42bおよび第3凹部42cを形成する。ここで、各第2凹部42bは、第1のシリコン基板41と第2のシリコン基板42とを後述するように貼り合わせるとき、各薄肉部46に近接する位置に形成される。また、各第3凹部42cは、両シリコン基板41,42を貼り合わせるとき、各第2配線部48に対向する位置に形成される。
そして、図5(F)に示すように、各薄肉部46と各第2凹部42bとを近接させるように第1のシリコン基板41の一側面41aと第2のシリコン基板42の一側面42aとを絶縁層43を介した常温接合により貼り合わせることで、薄肉部46と第2凹部42bとでもって圧力基準室47を形成する。これにより、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部40aが構成される。ここで、常温接合とは、例えば、接合面に対してアルゴンイオンやアルゴンプラズマ等で表面活性化を行い例えば真空状態で行なう接合をいう。
次に、図6(G)に示すように、第2のシリコン基板42の他側面を、研削加工により荒削りした後にCMP(Chemical Mechanical polishing)等を実施して、各圧力基準室47の気密を保ちつつ各第2配線部48が露出するまで平坦化する。
この段階では、図7に例示するように、隣接するセンサチップ40同士が長手方向一端側同士または長手方向他端側同士を連結させた状態にて、1枚のウエハWに複数のセンサチップ40が形成されることとなる。
そして、図6(H)に示すように、一方のセンサチップ40の各第2配線部48と他方のセンサチップ40の各第2配線部48との間における段差部41dを、ダイシング等を施して切断することにより、図3(A)〜(C)に示すセンサチップ40が複数完成する。
以上説明したように、本第1実施形態に係るセンサチップ40では、長手方向一端側にはセンシング部40aが形成されており、このセンシング部40aは、各歪みゲージ44が形成されてダイアフラム46として機能する薄肉部46と第2凹部42bを近接させるように第1のシリコン基板41と第2のシリコン基板42とを貼り合わせることで薄肉部46および第2凹部42bにより密閉されて形成される圧力基準室47を備えるとともに、この圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるように構成されている。また、センサチップ40の長手方向他端側であって当該長手方向に直交する端面41eには、センシング部40aからの信号を出力するための各電極49が形成されている。
これにより、センサチップ40のうちセンシング部40aを含む長手方向一端側のみを圧力媒体が導入される圧力導入通路31に露出するように、当該センサチップ40を接着剤50を介してハウジング30の開口部31bにて支持した状態で、長手方向他端側の端面41eに形成される各電極49に対してボンディングワイヤ26を電気的に接続する配線作業が実施されることとなる。そして、各電極49が形成される端面41eは、長手方向他端側にて当該長手方向に直交するように形成されているため、センサチップ40に対して配線作業が実施される際に当該センサチップ40に加わる押圧力が長手方向に平行な方向に作用するので、配線作業時におけるセンサチップ40に対する曲げ応力等をなくして、センサチップ40の変形や破損を防止することができる。
また、センサチップ40の長手方向に沿う面に形成される電極に対して配線作業を実施する場合と比較して、センサチップ40の破損を防止するための補助的な支持部材も不要であり、コネクタケース20やハウジング30等が配線作業の邪魔になりにくいので、配線作業が容易になる。
したがって、各電極49に対する配線作業を容易にするとともに当該作業によるセンサチップ40の破損を防止することができる。
また、本第1実施形態に係るセンサチップ40の製造方法では、各歪みゲージ44から長手方向に離間する部位に形成される段差部41dの表面のうち少なくとも第1配線部45に近接する端面41eには、各第1配線部45に電気的に接続される第2配線部48の一部を構成する電極49がそれぞれ形成される。すなわち、長手方向一端側に形成されるセンシング部40aからの信号を出力するために長手方向他端側に形成される各電極49が、段差部41dの端面41eに形成されることとなる。そして、ダイアフラム46として機能する薄肉部46と第2凹部42bとを近接させるように第1のシリコン基板41の一側面41aと第2のシリコン基板42の一側面42aとを貼り合わせることにより薄肉部46と第2凹部42bとでもって圧力基準室47を形成する。
これにより、段差部41dの端面41eは、長手方向に直交する面として形成され、この端面41eに各電極49を形成することができる。すなわち、上述した作用・効果を奏するセンサチップ40を形成することができる。
特に、本第1実施形態に係る圧力センサ10では、センサチップ40の各電極49にそれぞれ電気的に接続される各ボンディングワイヤ26は、当該センサチップ40の長手方向に引き出されるため、各ボンディングワイヤ26と各リード24とをセンサチップ40の長手方向に直交する方向に離間させる必要がないので、圧力センサ10において上記長手方向に直交する方向の寸法を小さくすることができる。
図8は、第1実施形態の第1の変形例におけるセンサチップ40bを示す説明図であり、図8(A)は、センサチップ40bの平面図であり、図8(B)は、図8(A)に示す8B−8B線相当の切断面による断面図であり、図8(C)は、センサチップ40bを長手方向他端側から見た側面図である。
図8(A)〜(C)に示すように、センサチップ40bにおいて、各第2配線部48は、段差部41dの表面のうち端面41eのみに形成されてもよい。具体的な製造方法として、図4(C)に示す工程において、各コンタクトホール48aを介して第1配線部45に電気的に接続される各第2配線部48を段差部41dの表面に形成する際、段差部41dの表面のうち端面41eのみに形成する。
これにより、第2配線部48を切断することなく端面41eを除く段差部41dをより多く除去することができる。このため、端面41eに形成される各電極49に対する配線作業を妨げる部位をなくすことができ、各電極49に対する配線作業をより容易にすることができる。
図9は、第1実施形態の第2の変形例におけるセンサチップ40cを示す断面図である。
図9に示すように、センサチップ40cにおいて、各電極49が形成される端面41eは、長手方向に対して所定の傾斜角度(X度)を有するようにテーパ状に形成されてもよい。例えば1〜45度程度で形成することができる。これにより、この傾斜角度を調整することで配線作業時における各電極49に電気的に接続されるボンディングワイヤ26等の配線部材の引き出し方向を所望の方向に設定できるので、配線作業をより容易にすることができる。また、センサチップ40cに対して長手方向に平行な方向から配線作業が実施されるので、当該作業時にセンサチップ40cに生じる曲げ応力等が抑制されて、センサチップ40cの変形や破損を防止することができる。
図10は、第1実施形態の第3の変形例におけるセンサチップ40の製造方法を示す説明図であり、図11は、第1実施形態の第4の変形例におけるセンサチップ40の製造方法を示す説明図である。
図10に示すように、隣接するセンサチップ40同士が長手方向一端側と長手方向他端側とを連結させた状態にて、1枚のウエハWに複数のセンサチップ40が形成されてもよい。
また、図11に示すように、長手方向に直交する方向にて隣接するセンサチップ40同士が第2のシリコン基板42の第3凹部42cを連結させた状態にて、1枚のウエハWに複数のセンサチップ40が形成されてもよい。すなわち、上述した図5(E)にて示す第2のシリコン基板42の一側面42aに形成される第3凹部42cは、長手方向に直交する方向にて隣接する他のセンサチップと連通する溝部42dとして形成されてもよい。これにより、ダイシング等の工程が簡素化され製造コストを低減することができる。
図12は、第1実施形態の第5の変形例における圧力センサ10を示す断面図である。
図12に示すように、ハウジング30の開口部31bの一部は、圧力導入通路31に沿う方向(長手方向)に長くなるように形成されてもよい。これにより、ハウジング30において、センサチップ40との間に介在する接着剤50と接触する接触面積が増加するため、センサチップ40の支持が強固となり、上述した各電極49に対する配線作業が容易になる。
図13は、1枚のウエハを複数のセンサチップ40に分断する分断方法の第1の分断変形例を示す断面図であり、図14は、1枚のウエハを複数のセンサチップ40に分断する分断方法の第2の分断変形例を示す断面図である。
1枚のウエハを複数のセンサチップ40に分断する分断方法の第1の分断変形例として、図6(H)に示す工程に代えて、図13に示す工程を採用してもよい。
具体的には、図13に示すように、図6(G)に示す工程により各第2配線部48が露出するまで平坦化した後(図13中の二点鎖線α1参照)、一方のセンサチップ40の各第2配線部48と他方のセンサチップ40の各第2配線部48との間における段差部41dを、幅の広いダイシングソーを用いたダイシングを施して切断する(図13中の二点鎖線α2参照)。これにより、1度の切断作業にて、第2配線部48を切断することなく端面41eを除く段差部41dをより多く除去することができる。または幅の狭いダイシングソーでα2の線に沿って2回で切断することもできる。
また、1枚のウエハを複数のセンサチップ40に分断する分断方法の第2の分断変形例として、図6(G)および図6(H)に示す工程に代えて、図14に示す工程を採用してもよい。
具体的には、図14に示すように、各第2配線部48が露出するように第2のシリコン基板42の第3凹部42cの長手方向両端側近傍に対応する部位をダイシングを施すことでそれぞれ切断した後(図14中の二点鎖線β1参照)、一方のセンサチップ40の各第2配線部48と他方のセンサチップ40の各第2配線部48との間における段差部41dを、ダイシングを施して切断する(図14中の二点鎖線β2参照)。これにより、ダイシング工程のみで、1枚のウエハを複数のセンサチップ40に分断することができる。特に、幅の広いダイシングソーを用いたダイシングを実施することにより、上述した第1の分断変形例の作用・効果をも奏する。または幅の狭いダイシングソーで2回で切断することもできる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図15〜図17を参照して説明する。図15は、第2実施形態に係るセンサチップ60の断面図である。図16(A)〜(C)および図17(D)〜(F)は、第2実施形態におけるセンサチップ60の製造方法の工程を示す説明図である。
図15に示すように、本第2実施形態に係るセンサチップ60では、第1のシリコン基板41および第2のシリコン基板42に代えて第1のシリコン基板61および第2のシリコン基板62を採用し、この第1のシリコン基板61に各歪みゲージ44からの信号を処理するための回路部64が形成され、各電極49が第2のシリコン基板42に形成される点が、上記第1実施形態にて述べたセンサチップ40と主に異なる。したがって、第1実施形態のセンサチップ40と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
図15に示すように、センサチップ60は、第1のシリコン基板61と第2のシリコン基板62とを後述するように低融点ガラス層63を介して貼り合せて構成されている。
第1のシリコン基板61における長手方向一端側の一側面61aには、4つの歪みゲージ44が形成されており、各歪みゲージ44は、第1配線部45を介して回路部64にそれぞれ電気的に接続されている。
また、第1のシリコン基板61は、その厚さが薄くなるように形成されている。このため、各歪みゲージ44近傍の部位は、ダイアフラム46として機能する薄肉部46として構成される。
第2のシリコン基板62における長手方向一端側の一側面62aには、第2凹部62bが形成されており、この第2凹部62bと薄肉部46とを近接させるように両シリコン基板61,62を低融点ガラス層63を介して貼り合わせることにより、薄肉部46および第2凹部62bにより密閉されて圧力基準室47が形成される。
これにより、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部60aが構成されることとなる。
第1のシリコン基板61は、第2のシリコン基板62に対して長手方向他端側に突出するように当該第2のシリコン基板62に貼り合わされており、この突出する一側面61aと、第2のシリコン基板62の長手方向他端側の端面62dとには、絶縁層43に形成されるコンタクトホール65aおよび第3配線部65を介して回路部64に電気的に接続される第2配線部48が形成されている。端面62dは、一側面62aに直交するように形成されており、この端面62dに形成される第2配線部48の部位が各電極49を構成する。
次に、上述したセンサチップ60を製造方法の工程を図16(A)〜(C)および図17(D)〜(F)を用いて詳細に説明する。
まず、図16(A)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第1のシリコン基板61を用意する。そして、この第1のシリコン基板61の一側面61aに、上記第1実施形態と同様に各歪みゲージ44および各第1配線部45を形成するとともに、公知の半導体プロセス等により回路部64を形成する。そして、絶縁層43に形成されるコンタクトホール65aを介して回路部64からの信号を取り出すための第3配線部65を一側面61a上に形成する。
次に、図16(B)に示すように、CMP等を実施して第1のシリコン基板61の厚さを薄くすることによりダイアフラム46として機能する薄肉部46を形成する。
そして、図16(C)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第2のシリコン基板62を用意する。そして、この第2のシリコン基板62の一側面62aにトレンチエッチング等を施して、第2凹部62bおよび第3凹部62cを形成した後、絶縁層43を形成する。ここで、各第2凹部62bは、第1のシリコン基板61と第2のシリコン基板62とを後述するように貼り合わせるとき、各薄肉部46に近接する位置に形成される。また、各第3凹部62cは、両シリコン基板61,62を貼り合わせるとき、各第3配線部65の一部に対向する位置に形成される。なお、第3凹部62cの表面のうち第2凹部62b側の端面62dは、一側面62aに直交するように形成されている。なお、本第2実施形態では第1のシリコン基板61を薄くしてから第2のシリコン基板と貼り合わせたが、貼り合わせた後、第1のシリコン基板61を薄くしてもよい。他の実施形態でも同様におこなうことができる。
そして、図17(D)に示すように、薄肉部46と第2凹部62bとを近接させるように第1のシリコン基板61の一側面61aと第2のシリコン基板62の一側面62aとを低融点ガラス層63を介して貼り合わせることにより、薄肉部46と第2凹部62bとでもって圧力基準室47を形成する。これにより、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部60aが構成される。なお、低融点ガラス層63は、第2凹部62b(各薄肉部46)および第3凹部62cを除くように設けられる。
次に、図17(E)に示すように、第2のシリコン基板62の他側面をCMP等を実施して、各圧力基準室47の気密を保ちつつ各第3配線部65の一部が露出するまで平坦化する。
そして、図17(F)に示すように、第3配線部65に電気的に接続されるとともに端面62dに配置されて電極49を構成するための第2配線部48をスパッタデポジション等によるアルミニウム層の形成、フォトリソグラフィによるパターン形成、アルミニウム層のエッチングにより形成する。そして、一方のセンサチップ60の各第3配線部65と他方のセンサチップ60の各第3配線部65との間における第1のシリコン基板61の部位を、ダイシング等を施して切断することにより、図15に示すセンサチップ60が複数完成する。
以上説明したように、本第2実施形態に係るセンサチップ60の製造方法では、ダイアフラム46として機能する薄肉部46と第2凹部62bとを近接させるように第1のシリコン基板61の一側面61aと第2のシリコン基板62の一側面62aとを低融点ガラス層63を介して貼り合わせることにより薄肉部46と第2凹部62bとでもって圧力基準室47を形成する。そして、第2のシリコン基板62において、第2凹部62bから長手方向に離間させ一側面62aに対して直交するように形成される端面62dには、各歪みゲージ44からの信号を処理するための回路部64に対して電気的に接続される第2配線部48の一部を構成する電極49がそれぞれ形成される。
このようにセンサチップ60を構成する場合でも、上記第1実施形態と同様に、センサチップ60の各電極49に対して長手方向に平行な方向から配線作業が実施されると、当該作業時にセンサチップ60に生じる曲げ応力等が抑制されて、センサチップ60の変形や破損を防止することができ、配線作業が容易になる。
図18は、第2実施形態の第1の変形例におけるセンサチップ60bを示す断面図である。
図18に示すように、センサチップ60bにおいて、第2のシリコン基板62の第2凹部62bを廃止してもよい。すなわち、図16(C)に示す工程において、第2凹部62bを形成する工程を廃止する。
この場合、薄肉部46近傍を除くように設けられる低融点ガラス層63を介して第1のシリコン基板61の一側面61aと第2のシリコン基板62の一側面62aとを貼り合わせることにより、薄肉部46と第2のシリコン基板62の一側面62aと低融点ガラス層63とでもって圧力基準室47が形成される。
これにより、第2のシリコン基板62に第2凹部62bを形成することなく圧力基準室47を形成することができるので、製造工程が削減されてセンサチップ60bを製造するための製造コストを低減することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図19〜図21を参照して説明する。図19は、第3実施形態に係るセンサチップ70の断面図である。図20(A)〜(C)および図21(D)〜(F)は、第3実施形態におけるセンサチップ70の製造方法の工程を示す説明図である。
図19に示すように、本第3実施形態に係るセンサチップ70では、第2のシリコン基板62に代えて第2のシリコン基板72を採用し、この第2のシリコン基板72の長手方向他端側の端面72dが、一側面72aに対して交差するように傾斜して形成され、この端面72dに各電極49が形成される点が、上記第2実施形態にて述べたセンサチップ60と主に異なる。したがって、第2実施形態のセンサチップ60と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
以下、本第3実施形態に係るセンサチップ70を製造方法の工程を図20(A)〜(C)および図21(D)〜(F)を用いて詳細に説明する。
まず、図20(A)に示すように、上記第2実施形態と同様に、第1のシリコン基板61を用意し、この第1のシリコン基板61の一側面61aに、各歪みゲージ44、各第1配線部45および回路部64を形成する。そして、絶縁層43に形成されるコンタクトホール65aを介して回路部64からの信号を取り出すための第3配線部65を一側面61a上に形成する。
次に、図20(B)に示すように、上記第2実施形態と同様に、CMP等を実施して第1のシリコン基板61の厚さを薄くすることによりダイアフラム46として機能する薄肉部46を形成する。
そして、図20(C)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第2のシリコン基板72を用意する。そして、この第2のシリコン基板72の一側面72aにトレンチエッチング等を施して、第2凹部72bおよび第3凹部72cを形成した後、絶縁層43を形成する。ここで、各第2凹部72bは、第1のシリコン基板61と第2のシリコン基板72とを後述するように貼り合わせるとき、各薄肉部46に近接する位置に形成される。また、各第3凹部72cは、両シリコン基板61,72を貼り合わせるとき、各第3配線部65の一部に対向する位置に形成される。
そして、図21(D)に示すように、薄肉部46と第2凹部72bとを近接させるように第1のシリコン基板61の一側面61aと第2のシリコン基板72の一側面72aとを低融点ガラス層63を介して貼り合わせることにより薄肉部46と第2凹部72bとでもって圧力基準室47を形成する。これにより、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部70aが構成される。なお、低融点ガラス層63は、第2凹部72b(各薄肉部46)および第3凹部72cを除くように設けられる。
次に、図21(E)に示すように、第2のシリコン基板72において、第2凹部72bから離間する第3凹部72cの部位に対して他側面からアルカリエッチング等を実施することにより、第3配線部65の一部を露出させるように除去するとともに一側面72aに対して交差する端面72dを傾斜させて形成する。そして、露出する第3配線部65と端面72d等に絶縁層43を形成し、この絶縁層43に第3配線部65を介する信号を取り出すためのコンタクトホール65bを形成する。
そして、図21(F)に示すように、第3配線部65に電気的に接続されるとともに端面72dに配置されて電極49を構成するための第2配線部48を形成する。そして、一方のセンサチップ70の各第2配線部48と他方のセンサチップ70の各第2配線部48との間における第1のシリコン基板61の部位を、ダイシング等を施して切断することにより、図19に示すセンサチップ70が複数完成する。
なお、図20(A)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第1工程」の一例に相当し、図20(B)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第2工程」の一例に相当し、図20(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第3工程」の一例に相当し、図21(D)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第4工程」の一例に相当し、図21(E)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第5工程」の一例に相当し、図21(F)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項5に記載の「第6工程」の一例に相当する。
以上説明したように、本第3実施形態に係るセンサチップ70の製造方法では、ダイアフラム46として機能する薄肉部46と第2凹部72bとを近接させるように第1のシリコン基板61の一側面61aと第2のシリコン基板72の一側面72aとを貼り合わせることにより薄肉部46と第2凹部72bとでもって圧力基準室47を形成する。そして、第2のシリコン基板72において第2凹部72bから離間する端面72dを、第1配線部45に電気的に接続される第3配線部65の一部を露出させるように除去するとともに一側面72aに対して交差するように傾斜させて形成する。そして、この端面72dには、第3配線部65等を介して第1配線部45に電気的に接続される第2配線部48の一部を構成する各電極49が形成される。
このようにセンサチップ70を構成する場合でも、上記第2実施形態と同様に、センサチップ70の各電極49に対して長手方向に平行な方向から配線作業が実施されると、当該作業時にセンサチップ70に生じる曲げ応力等が抑制されて、センサチップ70の変形や破損を防止することができ、配線作業が容易になる。
さらに、端面72dの傾斜角度を調整することで配線作業時における各電極49に電気的に接続されるボンディングワイヤ26等の配線部材の引き出し方向を所望の方向に設定できるので、配線作業をより容易にすることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を図22〜図25を参照して説明する。図22は、第4実施形態に係るセンサチップ80の断面図である。図23(A)〜(D)および図24(E)〜(G)は、第4実施形態におけるセンサチップ80の製造方法の工程を示す説明図である。図25は、第2封止部87と第2支持部88との配置関係を説明するための概念図である。
図22に示すように、本第4実施形態に係るセンサチップ80では、第1のシリコン基板61および第2のシリコン基板62に代えて第1のシリコン基板81および第2のシリコン基板82を採用し、圧力基準室47が第1封止部84および第2封止部87を用いて形成されるとともに、第2のシリコン基板82に各歪みゲージ44からの信号を処理するための回路部64が設けられる点が、上記第1実施形態にて述べたセンサチップ40と主に異なる。したがって、第1実施形態のセンサチップ40と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。なお、第1封止部84と第2封止部87とは、圧力基準室47(歪みゲージ44)に対して対称に配置されている。
以下、本第4実施形態に係るセンサチップ80を製造方法の工程を図23(A)〜(D)および図24(E)〜(G)を用いて詳細に説明する。
まず、図23(A)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第1のシリコン基板81を用意する。そして、この第1のシリコン基板81の一側面81aに各歪みゲージ44および各第1配線部45を形成する。
次に、図23(B)に示すように、第1のシリコン基板81の一側面81aに絶縁層43を形成し、この絶縁層43に形成される各コンタクトホール83aを介して各第1配線部45に導通する第1導通部83と、各歪みゲージ44を囲む環状の第1封止部84と、この第1封止部84に連結する第1支持部85とを同一の厚さで同一の導電材料、例えばアルミニウムにて形成する。
そして、図23(C)に示すように、CMP等を実施して第1のシリコン基板81の厚さを薄くすることによりダイアフラム46として機能する薄肉部46を形成する。
そして、図23(D)に示すように、例えば、(110)面方位のn型単結晶シリコンからなる第2のシリコン基板82を用意する。そして、この第2のシリコン基板82の一側面82aにトレンチエッチング等を施して、第2凹部82bおよび第3凹部82cを形成するとともに、公知の半導体プロセス等により回路部64を形成する。なお、第3凹部82cの表面のうち第2凹部82b側の端面82dは、一側面82aに直交するように形成されている。次に第2のシリコン基板82において、一側面82aにSiO2膜等の絶縁層43を形成する。
次に、図24(E)に示すように、絶縁層43上に、第1導通部83を介して各第1配線部45および回路部64を電気的に接続するための第2導通部86と、第2凹部82bの周囲であって第1封止部84に対向する環状の第2封止部87と、第1支持部85に対向する第2支持部88とを同一の厚さで第1封止部84と同一の導電材料にて形成する。
このとき、図25に示すように、第2封止部87は、第2凹部82bを囲むように形成され、第2支持部88は、U字状に形成されて両端部が第2封止部87に連結するように形成される。第2封止部87および第2支持部88がそれぞれ対向する第1封止部84および第1支持部85も同様の形状に形成されている。
そして、回路部64に電気的に接続されて端面82dに配置されて各電極49を構成するための第2配線部48を形成する。
そして、図24(F)に示すように、薄肉部46および第2凹部82bを近接させるように第1導通部83および第2導通部86と、第1封止部84および第2封止部87と、第1支持部85および第2支持部88とを、上述した常温接合を実施してそれぞれ融着させる。これにより、薄肉部46と第2凹部82bと両封止部84,87とでもって圧力基準室47が密閉されて形成されるとともに、各歪みゲージ44と回路部64とが両導通部83,86を介して電気的に接続される。これにより、圧力基準室47の基準圧力と圧力媒体の圧力との圧力差に基づくダイアフラム46の変位に応じた信号が各歪みゲージ44から出力されるセンシング部80aが構成される。このとき、両封止部84,87とともに両支持部85,88が融着するので、第1のシリコン基板81と第2のシリコン基板82とを均一な隙間を介するように貼り合わせることができる。このようにして環状の封止部の下を通って圧力センサの信号等を外部に取り出すことができる。
そして、図24(G)に示すように、第2のシリコン基板82の他側面に対してCMP等を実施して各電極49が露出するまで平坦化する。そして、第1のシリコン基板81の長手方向他端側の端面と第2のシリコン基板82の端面82dとが近接するように、第1のシリコン基板82の長手方向他端側を、ダイシング等を施して切断する。
これにより、図22に示すセンサチップ80が複数完成する。
なお、図23(A)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第1工程」の一例に相当し、図23(B)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第2工程」の一例に相当し、図23(C)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第3工程」の一例に相当し、図23(D)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第4工程」の一例に相当し、図24(E)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第5工程」の一例に相当し、図24(F)に示す工程は、特許請求の範囲の請求項6に記載の「第6工程」の一例に相当する。
以上説明したように、本第4実施形態に係るセンサチップ80の製造方法では、第1のシリコン基板81の一側面81aに絶縁層43を形成するとともに、この絶縁層43上に、各歪みゲージ44から信号を取り出すための第1配線部45に導通する第1導通部83と各歪みゲージ44を囲む環状の第1封止部84とを、同一の厚さで同一の導電材料にて形成する。そして、第2凹部82bと回路部64とを第2のシリコン基板82の一側面82aに形成するとともに、当該一側面82aに対して直交する端面82dを回路部64近傍に形成する。そして、第2のシリコン基板82の一側面82aに絶縁層43を形成し、この絶縁層43上に、第1導通部83を介して第1配線部45におよび回路部64を電気的に接続するための第2導通部86と第2凹部82bの周囲であって第1封止部84に対向する環状の第2封止部87とを、同一の厚さで第1封止部84と同一の導電材料にて形成する。そして、回路部64に電気的に接続されて端面82dに配置されて各電極49を構成するための第2配線部48を形成する。そして、薄肉部46および第2凹部82bを近接させるように第1導通部83および第2導通部86と第1封止部84および第2封止部87とをそれぞれ融着させることにより各歪みゲージ44と回路部64とを電気的に接続するとともに薄肉部46と第2凹部82bと両封止部84,87とでもって圧力基準室47を形成する。
このように、各歪みゲージ44を囲む環状の第1封止部84と第1導通部83とは、同一の厚さで同一の導電材料にて形成されており、第1封止部84に対向する環状の第2封止部87と第2導通部86とは、同一の厚さで第1封止部84と同一の導電材料にて形成されている。これにより、第1導通部83と第2導通部86とを融着させる工程において、同時に第1封止部84と第2封止部87とを融着させて圧力基準室47が形成されるので、製造工程が削減されてセンサチップ80を製造するための製造コストを低減することができる。
図26は、第4実施形態の第1の変形例における要部を示す概念図である。なお、図26では、第2のシリコン基板82における第2封止部87と第2支持部88との配置関係を概念的に示している。
上述した第4実施形態において、第1支持部85および第2支持部88は、第1封止部84および第2封止部87を囲むように環状に形成されてもよい(図26参照)。これにより、圧力基準室47の気密性をより高めることができる。
また、第1導通部83および第2導通部86と、第1封止部84および第2封止部87と、第1支持部85および第2支持部88とは、同じ材料で形成されることに限らず、上述した融着時に同じ特性を示す同質の導電材料であってもよい。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を図27を参照して説明する。図27は、第5実施形態に係るセンサチップ90を示す説明図であり、図27(A)は、センサチップ90の平面図であり、図27(B)は、図27(A)に示す27B−27B線相当の切断面による断面図であり、図27(C)は、センサチップ90を長手方向他端側から見た側面図である。
図27(A)〜(C)に示すように、本第5実施形態に係るセンサチップ90では、第1のシリコン基板41および第2のシリコン基板42に代えて第1のシリコン基板91および第2のシリコン基板92を採用する点が、上記第1実施形態にて述べたセンサチップ40と主に異なる。したがって、第1実施形態のセンサチップ40と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
第1のシリコン基板91は、例えば、(110)または(100)面方位のp型単結晶シリコン基板93に対して、一側面にn型エピタキシャル層94が形成され、このn型エピタキシャル層94に各歪みゲージ44、各第1配線部45や各第2配線部48等が形成される。また、第2のシリコン基板92は、例えば、(110)または(100)面方位のp型単結晶シリコン基板よりなる。
n型エピタキシャル層94には、p型のイオン注入がなされて熱拡散によるp型アイソレーション層95が形成される。そして、p型アイソレーション層95とp型単結晶シリコン基板93とは、例えば、0V(グランド電位)にされ、n型エピタキシャル層94は、+電位(電源電位等)にされる。なお、図27にて、符号96,97は、n+型拡散層(n型エピタキシャル層)の電圧印加用のパッドと、このパッド96に電気的に接続される配線層とを示す。符号98,99はp型アイソレーション層95の電圧印加用コンタクト98と、このパッドに電気的に接続される配線層とを示す。
これにより、センサチップ90が外部からの電位的干渉を受けた場合でもp型層でシールドされるため、安定した圧力の測定が可能となる。
なお、第2のシリコン基板92は、p型単結晶シリコン基板に限らず、n型単結晶シリコン基板により構成されてもよい。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態を図28を参照して説明する。図28は、第6実施形態に係るセンサチップ100を示す説明図であり、図28(A)は、センサチップ100の平面図であり、図28(B)は、図28(A)に示す28B−28B線相当の切断面による断面図であり、図28(C)は、図28(A)に示す28C−28C線相当の切断面による断面図であり、図28(D)は、センサチップ100を長手方向他端側から見た側面図である。
図28(A)〜(D)に示すように、本第6実施形態に係るセンサチップ100では、第1のシリコン基板41に代えて第1のシリコン基板101を採用する点が、上記第1実施形態にて述べたセンサチップ40と主に異なる。したがって、第1実施形態のセンサチップ40と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
第1のシリコン基板101は、第1のシリコン基板41に対して上記第5実施形態にて述べた、n+型拡散層(n型エピタキシャル層)の電圧印加用のパッド96と、このパッド96に電気的に接続される配線層97とが、新たに形成されている。
このようにしても、センサチップ100が外部からの電位的干渉を受けた場合でも、安定した圧力の測定が可能となる。
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態を図29〜図32を参照して説明する。図29は、本第7実施形態に係るセンサチップ110を採用する圧力センサ10aの全体概略断面図である。図30は、第7実施形態に係るセンサチップ110の概念図である。図31は、図29のセンサチップ110の詳細断面図である。図32は、第7実施形態に係る複数のセンサチップ110が1枚のウエハに形成された状態を示す平面図である。
図29に示すように、本第7実施形態に係る圧力センサ10aは、上記第2実施形態におけるハウジング30およびセンサチップ60に代えて、ハウジング34と温度検出部112を有するセンサチップ110とを採用している点が、上記第2実施形態にて述べた圧力センサ10と主に異なる。したがって、第2実施形態の圧力センサ10と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
ハウジング34は、圧力導入通路31に沿う方向(長手方向)の長さが短くなるように形成されている。このため、ネジ部32を上記被検出体に締結して圧力センサ10aを被検出体の適所に固定する際、ハウジング34の開口部31bに接着剤50を介して支持されるセンサチップ110を被検出体に近づけることができる。ハウジング34の底面30aがセンサチップ110の先端部にほぼ同一になるような構成にしてもよい。
図30にて概念的に示すように、センサチップ110は、圧力媒体の圧力を検出可能なセンシング部60aに加えて、圧力媒体の温度を検出可能な温度検出部112を備えており、センシング部60aからの信号と温度検出部112からの信号とを回路部64により処理して出力するように構成されている。ここで、温度検出部112は、例えば、抵抗体温度センサやダイオード温度センサ等である。
本第7実施形態に係るセンサチップ110の一例を図31を用いて詳細に説明する。
図31に示すように、センサチップ110は、上述した第2のシリコン基板62と第1のシリコン基板111とを低融点ガラス層63を介して貼り合せて構成されている。第1のシリコン基板111は、上述した各歪みゲージ44、各第1配線部45や回路部64が形成されるとともに、長手方向一端側に圧力媒体の温度を検出可能な温度検出部112が公知の半導体プロセスにより形成されている。この温度検出部112は、配線部113等を介して回路部64に電気的に接続されている。
本第7実施形態に係るセンサチップ110では、温度検出部112に対向する第2のシリコン基板62の部位が除去されている。これにより、温度検出部112の応答性を高くすることができる。
また、センサチップ110は、図32に例示するように、隣接するセンサチップ110同士が長手方向一端側と長手方向他端側とを連結するような状態にて1枚のウエハWに複数形成され、ダイシング等を施して切断することにより、図31に示すセンサチップ110が複数完成する。
このように構成されるセンサチップ110は、センシング部60aおよび温度検出部112が圧力導入通路31に露出するように、ハウジング34の開口部31bに接着剤50を介して支持される。そして、長手方向他端側の端面62dに形成される各電極49に対してボンディングワイヤ26を電気的に接続する配線作業が実施される。
以上説明したように、本第7実施形態に係るセンサチップ110では、センシング部60aと温度検出部112とが設けられているので、各電極49に対する配線作業を容易にするとともに当該作業によるセンサチップ110の破損を防止する効果に加えて、1つのセンサチップ110で圧力媒体の圧力と温度とを同時に検出する効果を奏する。
また、本第7実施形態に係る圧力センサ10aでは、ハウジング34は、圧力導入通路31に沿う方向(長手方向)の長さが短くなるように形成されているので、センサチップ110の長手方向一端側に形成される温度検出部112を被検出体に近づけることができるので、圧力媒体の温度を遅延無く正確に検出することができる。また温度検出部112、センシング部60a、回路部64、パッド部(電極49)が一直線に構成されるのでセンサチップ110を細長い形状にすることができ、パッケージ径を小さくすることに貢献できる。また上記実施形態ではピエゾ抵抗のセンシング部60aをもって説明したが、このような圧力センシング部をピエゾ抵抗にかえて容量検出型のダイアフラム構造の圧力センシング部で構成(図示せず)してもよい。さらにウエハ状態での電気的検査をおこなうため端面部のみにパッドを形成するだけでなくチップ表面上にパッドを配線の途中等に設けることもできる。
図33は、第7実施形態の第1の変形例におけるセンサチップ110aを示す断面図である。
図33に示すように、センサチップ110aにおいて、温度検出部112を保護するように第2のシリコン基板62と第1のシリコン基板111とを貼り合わせてもよい。これにより、温度検出部112が形成される第1のシリコン基板111の部位の強度を向上させることができる。
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態を図34〜図35を参照して説明する。図34は、第8実施形態に係るセンサチップ110の概念図である。
上記第1実施形態において、薄肉部46および歪みゲージ44が同一の基板(第1のシリコン基板101)に形成されていた。しかし、図34に示すように、本第8実施形態に係るセンサチップ110は、歪みゲージ44がSOI層200に形成されている点で、第1実施形態と異なる。また、本第8実施形態では、SOI層200に、互いが絶縁体分離トレンチで区画された複数の素子形成領域が設けられており、各素子形成領域にはトランジスタなどの回路が形成されている点で、前述の各実施形態と異なる。したがって、前述の各実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
図34に示すように、第1のシリコン基板101上には、埋込絶縁層(埋込酸化膜)201が設けられ、さらに埋込絶縁層201の上には単結晶シリコンよりなるSOI層200が設けられている。このSOI層200は、SOI層200の表面から埋込絶縁層201に到達するまでの深さで設けられた絶縁体分離トレンチ202が設けられている。そして、この絶縁体分離トレンチ202を周形状に複数設けることにより多数の素子形成領域が区画形成されている。なお、絶縁体分離トレンチ202に関して、トレンチの側面にはシリコン酸化膜が形成されるとともに、シリコン酸化膜の内方にはポリシリコンが充填されている。または、シリコン酸化膜だけで形成してもよい。
絶縁体分離トレンチ202により形成された素子形成領域のうちセンサチップ110の先端(電極49が配置されない側)の素子形成領域には、前述の温度検出部112が形成されている。
温度検出部112が形成された素子形成領域よりも電極49寄りの素子形成領域には、歪みゲージ44と第1配線部45とからなる圧力検出素子が作りこまれる。また、第2のシリコン基板42において、歪みゲージ44が形成される素子形成領域に対応する場所には、凹部が形成されている。そして、SOI層200と第2のシリコン基板42とが接合されることで、この凹部が気密封止され圧力基準室47となる。他方、第1のシリコン基板101において、歪みゲージ44が形成される素子形成領域に対応する場所にも、凹部が形成されており、この第1のシリコン基板101の凹部から圧力が印加される。なお、第1のシリコン基板101の凹部の底部には埋込絶縁層201が露出している。この露出している埋込絶縁層201は、第1のシリコン基板101に凹部をエッチングで形成する際に、エッチングストッパーとして用いられたものである。
歪みゲージ44が形成された素子形成領域よりも電極49寄りの素子形成領域には、緩衝部204が形成されている。この緩衝部204とは、特段に回路などが形成されていない領域であり、後述するハーメチックシールに起因するセンサチップ110への応力を緩和することを目的として設けられた領域である。
緩衝部204が形成された素子形成領域よりも電極49寄りの素子形成領域には、回路部64が形成されている。
本実施形態のセンサチップ110も、前述の図2のように、センサチップ110とハウジング30との間に接着剤50を配置することで、ハーメチックシールを行っている。すなわち、圧力導入通路31と、開口部21とは、ハーメチックシールにより分離されている。そこで、本実施形態では、第2のシリコン基板42においてハーメチックシールがなされる領域には、絶縁層43(シリコン酸化膜)が配置されている。また、第1シリコン基板101においてもハーメチックシールがなされる領域には、絶縁層43(シリコン酸化膜)が配置されている。なお、第1シリコン基板101及び第2のシリコン基板42において、ハーメチックシールがなされない場所であって、温度検出部112や歪みゲージ44や回路部64が形成される領域には、絶縁層43(シリコン酸化膜)が配置されていないことが望ましい。
ここで、ハーメチックシールがなされる領域とは、前述の緩衝部204に対応する領域である。すなわち、緩衝部204に対応する領域には、第1のシリコン基板101及び第2のシリコン基板42の表面に絶縁層43(シリコン酸化膜)が配置され、両絶縁層43の上に接着剤50が配置されている。
次に、上述したセンサチップ110の製造方法を図35(A)(B)を用いて詳細に説明する。
まず、図35(A)に示すように、第1のシリコン基板101とSOI層200との間に絶縁層43が配置された所謂SOI基板を準備する。そして、このSOI基板のSOI層200に絶縁体分離トレンチ202を形成し、さらに区画された素子形成領域に歪みゲージ44、温度検出部112、回路部64を不純物拡散などにより形成する。そして、素子形成領域の上面に絶縁層43を形成した後、該当箇所にコンタクトホール65a等を開け、配線部113、第3配線部65、第2配線部48、電極49を形成することで、歪みゲージ44や温度検出部112を回路部64と導通させるとともに、回路部64を電極49と導通させる。その後、素子形成領域上の絶縁層43及び配線部113、第3配線部65、第2配線部48の上にパッシベーション層203を形成する。
また、第1のシリコン基板101の表面に、絶縁層43を形成した後、歪みゲージ44に対応する箇所、すなわちセンシング部40aとなる箇所の絶縁層43を除去し、第1のシリコン基板101をエッチングストップ層となる埋込絶縁層201が露出するまでエッチングする。これにより、第1のシリコン基板101に凹部が形成される。
次に、図35(B)の工程について説明する。図35(B)の工程は、図35(A)の工程の後に行われる工程である。まず、図35(A)で形成したパッシベーション層203をCMPなどの方法で平坦化する。また、第2のシリコン基板42を準備した後に凹部を形成し、ハーメチックシールがなされる領域に絶縁層43が残るようパターニングとエッチングとを行う。その後、第1のシリコン基板101と第2のシリコン基板42の貼り合せ界面を活性化させ、両基板を常温で直接接合する。これにより図34のセンサチップ110を形成することができる。
以下、本実施形態におけるセンサチップ110の効果について説明する。第1の効果は、絶縁体分離トレンチ202により複数の素子形成領域を形成することで、歪みゲージ44や温度検出部112といった異なる素子を同一基板(SOI層200)に形成することができる点である。また、絶縁体分離トレンチ202で温度検出部112、歪みゲージ44、ガラスハーメチックシール部、回路部64を絶縁体で互いに電気的に分離することにより安定した動作を得ることができる。
第2の効果は、素子形成領域のうちハーメチックシールに該当する場所の素子形成領域を何も素子が形成されない緩衝部204とすることで、ハーメチックシールに起因する熱応力によって、歪みゲージ44が歪んだり、素子の特性が変動することを防止した点である。また、緩衝部204は絶縁体分離トレンチ202により囲まれている為、ハーメチックシールに起因する応力を、他の素子形成領域に伝達させにくくしている。
第3の効果は、ハーメチックシールに該当する場所にのみ絶縁層43を形成しておくことで、接着剤50を塗布する際にハーメチックシールに該当する場所には濡れ性良く配置することができる。他方、ハーメチックシールに該当しない場所には、絶縁層43が配置されていないため接着剤50が流れ込みにくくなる。その結果、ハーメチックシールに起因する応力を、歪みゲージ44などの実際に素子が形成されている領域に印加されにくくすることができる。
図36は、第8実施形態の第1の変形例におけるセンサチップ110を示す断面図である。この図36に示すように、第1のシリコン基板101の凹部を埋込絶縁層201が露出するまで掘らず、第1のシリコン基板101の一部を薄肉部46としている点が図34と異なる。
図36に示すようにセンシング部40aに該当する凹部の底面にシリコンを残しておくことで、接着剤50が、凹部すなわちセンシング部40aに流入しにくくなる。これにより、センシング部40aに接着剤50が流入することで、歪みゲージ44に接着剤50に起因する応力が印加されることを抑制することができる。
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態を図37〜図38を参照して説明する。図37は、第9実施形態に係るセンサチップ110の概念図である。
前述第2実施形態の図15に示した第1のシリコン基板61が、本実施形態9ではSOI層200となっている点で第2実施形態と異なる。したがって、前述の各実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
図37に示すように、SOI層200は、低融点ガラス層63を介して、第2のシリコン基板62と貼り合わされている。そして、SOI層200のうち貼り合される側の面には、前述の第8実施形態で記載した絶縁体分離トレンチ202により各々区画された素子形成領域を配線する配線部65、113などが形成されている。一方、SOI層200のうち貼り合される側とは反対側の面には、絶縁層、具体的には埋込絶縁層201が形成されている。前述の第8実施形態では第1のシリコン基板とSOI層200との間に配置されていたこの埋込絶縁層201を表面側に配置するための方法については、図38を用いて後述する。
埋込絶縁層201のうち、緩衝部204に対応する場所の一部には、埋込絶縁層201がライン状に除かれ、SOI層200を露出されるスリット205が設けられる。なお、温度検出部112および歪みゲージ44および回路部64が形成される素子形成領域には埋込絶縁層201が配置されている。
次に、上述したセンサチップ110の製造方法について、図38を用いて詳細に説明する。
まず、図38(A)に示すように、埋込絶縁層201を介して支持基板206とSOI層200とが接合されたSOI基板を準備する。そして、このSOI基板のSOI層200に絶縁体分離トレンチ202を形成し、さらに区画された素子形成領域に歪みゲージ44、温度検出部112、回路部64を不純物拡散などにより形成する。そして、素子形成領域の上面に絶縁層43を形成した後、該当箇所にコンタクトホールを開け、配線部113および第3配線部65等を形成することで、歪みゲージ44や温度検出部112等を回路部64と導通させる。さらに、歪みゲージ44が配置されている領域を除いて、回路部64や配線を覆うように、低融点ガラス63を塗布する。
次に、図38(B)に示す工程を説明する。前述の図16(C)の工程により第2凹部62bが形成された状態の第1のシリコン基板62を準備し、そのうち第2凹部62bが形成されない側の面であって、SOI層200との接合後に緩衝部204と対応する場所に絶縁層43を形成する。そして、SOI層200上に配置された低融点ガラス63(低融点ガラス層63)を介して、第1のシリコン基板62とSOI層200とを接合する。このとき、圧力基準室47が形成される。さらに、接合の後、第1のシリコン基板62の側面に電極49を形成する。
続いて、図38(C)に示すように、支持基板206を研削、CMP、エッチングなどの手法により除去する。すなわち、SOI基板の埋込絶縁層201が露出する。
最後に、埋込絶縁層201を部分的にエッチングしてスリット205を設ける。以上の工程により図37に示したセンサチップ110を製造することができる。
本実施形態のセンサチップ110の効果について説明する。第1の効果は、埋込絶縁層201にスリット205を設けることで、スリット205に挟まれた埋込絶縁層201は接着剤50への濡れ性が良好となり、またスリット205によりシリコンが露出する部分には接着剤50が流れ込みにくい。すなわち接着剤50を容易に精度良く塗布することができ、回路部64へのひずみの影響を低減することができる。
また、温度検出部112および歪みゲージ44および回路部64が形成される素子形成領域には埋込絶縁層201を残しておくことで、リーク電流の発生を抑制することができるという第2の効果を奏することができる。
なお、図38(A)(B)では、SOI層200側に低融点ガラス63を配置した後に、第2のシリコン基板62とSOI層200とを接合した例を示した。しかしながら、第2のシリコン基板62側に低融点ガラス63を配置した後に、SOI層200と接合しても良い。
図39(A)(B)は、第9実施形態の変形例におけるセンサチップ110を示す断面図である。図39(A)は、図39(B)に示す39A−39A線相当の切断面による断面図である。図39(B)は、図39(A)に示す39B−39B線相当の切断面による断面図である。この図39(A)(B)に示すように、第1のシリコン基板62に低融点ガラス63を溜めるためのガラス溜まり208と、第1のシリコン基板62とSOI層200とを接合した際に溢れた低融点ガラス63を導出するガラス逃げ通路207とを有する点が、図37と異なる。
図39(A)(B)に示すように、ガラス溜まり208は、第1のシリコン基板62の接合側の面に凹部形状に設けられている。そして、このガラス溜まり208は、接合後に圧力基準室47となる領域との間に、第1のシリコン基板62の残し部209を介して、区画されている。すなわち、圧力基準室47となる領域は、第1のシリコン基板62の残し部209に囲まれ、第1のシリコン基板62の残し部209はガラス溜まり208に囲まれている。さらに、ガラス溜まり208は、第1のシリコン基板62の外周部210に囲まれている。
さらに、図39(A)(B)に示すように、外周部210には、ガラス溜まり208や圧力基準室47と同様の深さで掘り込まれたガラス逃げ通路207が2箇所設けられている。このガラス逃げ通路207は、ガラス溜まり208と第1のシリコン基板62の端面とを連通するものである。
次に、上述したセンサチップ110の製造方法について、図40を用いて詳細に説明する。
まず、図40(A)に示すように、前述した図38(A)の工程と同等の工程を行い、SOI層200に温度検出部112、歪みゲージ44、回路部64、配線を形成する。その後、図38(A)の工程とは異なり、温度検出部112、歪みゲージ44、回路部64、配線の上に、パッシベーション層203を形成する。そして、パッシベーション層203をCMPなどの方法で平坦化する。
次に図40(B)に示すように、第1のシリコン基板62に、圧力基準室47、ガラス溜まり208、ガラス逃げ通路207となる凹部をエッチングにより形成する。その後、凹部が形成された第1のシリコン基板62の表面上に、熱酸化、CVDなどの手法を用いて、酸化膜(SiO2層)を形成する。
さらに図40(C)に示すように、ガラス溜まり208にスクリーン印刷、インクジェット法などの手法を用いて、低融点ガラス63を外周部210の高さ(ガラス溜まり208の深さよりも高く)よりも高く形成する。このとき、圧力基準室47となる領域およびガラス逃げ通路207には低融点ガラス63は塗布されない。その後、第1のシリコン基板62の低融点ガラス63を塗布した側と、SOI層200のパッシベーション層203を形成した側とを接合する。接合時、第1のシリコン基板62とSOI層200とに挟まれ、低融点ガラス63がガラス逃げ通路207に流入する。このようにガラス逃げ通路207を設けるため、低融点ガラス63が圧力基準室47に流入することは無い。
このように、ガラス溜まり208とガラス逃げ通路207とを設けることで、第9実施形態よりも、低融点ガラス63を精度良く塗布することができる。特に、圧力基準室47に低融点ガラス63が流入しないため、圧力基準室47に低融点ガラス63が流れ込み室の体積がばらつく、もしくは、歪みゲージ44に影響を及ぼすことが無い。
なお、上記各実施形態において、接着剤50として低融点ガラスを使う場合には、シリコン基板同士の接着に使う低融点ガラス63(低融点ガラス層63)よりも、軟化点温度を高くしておくと良い。