以下、本発明の実施のための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の断面構成を模式的に表すものであり、図2は、図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋および拡大して表すものである。図1および図2に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、作用電極10と対向電極20とが電解質含有層30を介して対向配置されたものであり、作用電極10および対向電極20のうちの少なくとも作用電極10は、光透過性を有する電極である。
作用電極10は、例えば、導電性基板11と、その一方の面(対向電極20の側の面)に設けられた金属酸化物半導体層12と、この金属酸化物半導体層12を担持体として担持された色素13と、色素13が担持された金属酸化物半導体層12の上に設けられた被膜14とを有している。この作用電極10は、外部回路に対して、負極として機能するものである。導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものであり、導電層11Bは金属酸化物半導体層12と接して設けられている。
基板11Aは、例えば、ガラス、プラスチック、透明ポリマーフィルムなどの光透過性を有する絶縁性の材料により構成されている。透明ポリマーフィルムとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンあるいはブロム化フェノキシなどが挙げられる。
導電層11Bは、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO:F−SnO2 )などの光透過性を有する導電性材料により構成されている。
なお、導電性基板11は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板11の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物あるいは酸化スズにフッ素をドープしたものなどの光透過性を有する導電性材料が挙げられる。
金属酸化物半導体層12は、色素13を担持する担持体であり、例えば、図2に示したように多孔質構造を有している。この多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12は、例えば、緻密層12Aと多孔質層12Bとから形成されている。導電性基板11との界面においては、緻密層12Aが形成され、この緻密層12Aは、緻密で空隙が少ないことが好ましく、膜状であることがより好ましい。対向電極20側においては、多孔質層12Bが形成され、この多孔質層12Bは、間隙12Cを有する構成となっている。多孔質層12Bは、間隙12C(空隙)が多く、表面積が大きくなる構造が好ましく、特に、多孔質の微粒子が付着している構造がより好ましい。なお、金属酸化物半導体層12では、例えば、多孔質構造が図3に示すような構造となるように形成されてもよい。この場合においても、導電性基板11との界面においては緻密層12Aが形成され、対向電極20側においては間隙12Cを有する多孔質層12Bが形成された構成となっており、多孔質層12Bの表面積が大きくなる構造が好ましい。
この金属酸化物半導体層12は、金属酸化物半導体の材料のいずれか1種または2種以上を含んで形成されている。金属酸化物半導体の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウムなどが挙げられる。なお、金属酸化物半導体の材料は、1種あるいは2種以上の材料を複合(混合、混晶、固溶体など)させて含んでいてもよい。中でも、酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも1種が好ましい。
色素13は、金属酸化物半導体層12に担持されるており、光を吸収して励起し、電子を金属酸化物半導体層12へ注入することが可能な1種または2種以上の色素を含んでいる。この色素は、例えば、金属酸化物半導体層12と化学的に結合することができる電子吸引性の置換基を有するものであることが好ましい。色素としては、例えば、シアニン系色素、メロシアニンジスアゾ系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素あるいは無金属ポルフィリン系色素などの有機色素などが挙げられる。
また、色素としては、例えば、有機金属錯体化合物も挙げられ、一例としては、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくは硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、またはビピリジルルテニウム錯体、ターピリジルルテニウム錯体、フェナントロリンルテニウム錯体、ビシンコニン酸ルテニウム錯体、アゾルテニウム錯体あるいはキノリノールルテニウム錯体などのルテニウム錯体が挙げられる。
上記した有機色素あるいは有機金属錯体化合物としては、例えば、化1〜化3で表される一連の化合物が挙げられ、その他に、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミンB、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシンあるいはマーキュロクロムなどが挙げられる。
被膜14は、イオン性液体のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。この被膜14が設けられていることによって、色素13を担持した金属酸化物半導体層12の物理的ダメージが抑制されるため、励起した色素13から金属酸化物半導体層12への電子の注入が効率よく行われ、素子特性が向上する。さらに、この被膜14は、励起された色素13から電解質含有層30への電子の移動、および電子が注入された金属酸化物半導体層12から電解質含有層13への電子の移動を抑制する逆電防止バリア層としても機能し、この機能によっても素子特性が向上するものと考えられる。
この被膜14は、色素13が担持された金属酸化物半導体層12の全面を覆うように設けられてもよいし、その表面の一部を覆うように設けられてもよい。また、被膜14は、金属酸化物半導体層12の内部に入り込んで、多孔質層12Bの間隙12Cにも設けられていてもよく、間隙12Cを満たし多孔質層12Bのなかを充填するように設けられていてもよい。
イオン性液体としては、電池や太陽電池などにおいて使用可能なものが挙げられ、例えば、「Inorg.Chem」1996,35,p1168〜1178、「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、特表平9−507334号公報、または特開平8−259543号公報などに開示されているものが挙げられる。中でも、イオン性液体としては、室温(25℃)より低い融点を有する塩、または室温よりも高い融点を有しても他の溶融塩あるいは溶融塩以外の添加物を溶解させることにより室温で液状化する塩が好ましい。このイオン性液体の具体例としては、以下に示したアニオンおよびカチオンなどが挙げられる。
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム、またはそれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、スルホニウムおよびそれらの誘導体からなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、イミダゾリウムが好ましい。具体的には、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが好ましい。
また、イオン性液体のアニオンとしては、AlCl4 -あるいはAl2 Cl7 -などの金属塩化物や、PF6 -、BF4 -、CF3 SO3 -、N(CF3 SO2 )2 -、F(HF)n -あるいはCF3 COO- などのフッ素含有物イオンや、NO3 -、CH3 COO- 、C6 H11COO- 、CH3 OSO3 -、CH3 OSO2 -、CH3 SO3 -、CH3 SO2 -、(CH3 O)2 PO2 -、N(CN)2 -あるいはSCN- などの非フッ素化合物イオンや、ヨウ素あるいは臭素などのハロゲン化物イオンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、このアニオンとしては、ヨウ化物イオン、N(CN)2 -あるいはSCN- が好ましい。
特に、イオン性液体としては、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドおよび1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートのうちの少なくとも1種が好ましく、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
また、被膜14は、イオン性液体の他に、必要に応じて有機溶媒などを含んでいてもよい。この有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルホランあるいは3−メトキシプロピオニトリルなどが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、複数種を混合して用いられてもよい。
対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22を設けたものであり、導電層22は電解質含有層30と接して設けられている。この対向電極20は、外部回路に対して、正極として機能するものである。導電性基板21の材料としては、例えば、作用電極10の導電性基板11と同様の材料が挙げられる。導電層22に用いる導電材としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)モリブデン(Mo)あるいはインジウム(In)などの金属、炭素(C)、または導電性高分子などが挙げられる。これらの導電材は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、結着材として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマーあるいはポリイミド樹脂などを用いてもよい。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造としてもよい。
電解質含有層30は、イオン性液体を含むレドックス電解質を含有しており、半固体状となっている。これにより、電解液を用いた場合と比較して、液漏れなどが抑制されるため、耐久性および安全性が確保される。
電解質含有層30が含むイオン性液体としては、例えば、被膜14が含むイオン性液体と同様のものが挙げられる。電解質含有層30が含むイオン性液体は、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。また、被膜14が含むイオン性液体と同じ種類のものを用いてもよいし、異なった種類のものを用いてもよい。中でも、被膜14が含むイオン性液体と異なるものが好ましく、被膜14が含むイオン性液体と相溶性が低いものがより好ましい。製造後、長時間経過した後でも被膜14との界面が保たれるため、素子特性が向上するからである。特に、電解質含有層30が含むイオン性化合物としては、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドおよび1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートのうちの少なくとも1種が好ましい。
電解質含有層30は、イオン性液体の他に、半固体状となるための支持材を含んでいる。この支持材は、素子特性を良好に維持できるものであれば任意であるが、ここでは所定の材料からなる粒子のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいる。すなわち、ここでの電解質含有層30は、上記したイオン性液体と粒子との混合物を主材料として構成されている。なお、この「所定の材料からなる粒子」とは、素子特性を著しく損なう材料を含んでいない粒子という意味であり、粒子は、素子特性を良好に維持できるものであれば、1種の材料で構成されていてもよいし、複数種の材料を含んで構成されていてもよい。
この粒子としては、例えば、導電性、半導体性あるいは絶縁性を有する粒子や、酸化還元反応を触媒する粒子などが挙げられる。このような粒子を構成する材料としては、例えば、炭素材料、酸化チタン(TiO2 )、シリカゲル(酸化ケイ素;SiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸コバルト(CoTiO3 )あるいはチタン酸バリウム(BaTiO2 )などが挙げられる。中でも、粒子は、炭素材料を含有する粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子およびシリカゲル粒子からなる群のうちの少なくとも1種であることが好ましい。高い効果が得られるからである。特に、炭素材料を含有する粒子を含むことが好ましい。酸化還元反応を触媒するため、より高い効果が得られるからである。この炭素材料としては、黒鉛などの結晶質なものや、活性炭あるいはカーボンブラックなどの非晶質なものや、その他にも、グラフェン、カーボンナノチューブあるいはフラーレンなどが挙げられる。黒鉛としては、人造黒鉛あるいは天然黒鉛などが挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、オイルファーネス、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックあるいはケチェンブラックなどが挙げられる。炭素材料としては、特にカーボンブラックが好ましい。
電解質含有層30中における粒子の含有量は、高い素子特性が得られることから、多く含まれているほうが好ましく、中でも、5重量%以上40重量%以下であることがより好ましい。上記した範囲内であれば、十分な素子特性が得られると共に、電解質含有層30を形成する際の金属酸化物半導体層12に対する物理的ダメージが生じにくくなるからである。特に、10重量%以上35重量%以下であることが好ましい。素子特性が向上するからである。
電解質含有層30は、イオン性液体と粒子との主材料の他に、副材料を含んでいてもよい。この副材料は、例えば、ハロゲン単体を含有していてもよい。ハロゲン単体としては、例えば、ヨウ素(I2 )あるいは臭素(Br2 )が挙げられる。中でも、ヨウ素が好ましい。素子特性が向上するからである。なお、電解質含有層30では、粒子として触媒能を有さない粒子を用いる場合には、十分な素子特性を得るために、ハロゲン単体を含むことが必要となる。
副材料は、例えば、イオン性液体以外の、他の電解質塩のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、例えば、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類、あるいはハロゲン化ピリジニウム類などが挙げられる。中でも、ヨウ化物塩が好ましい。これにより、高い素子特性が得られる。特に、電解質含有層30が含むイオン性液体のアニオンがヨウ化物イオン以外のものである場合には、ヨウ化物塩を添加することにより、素子特性がより向上する。このヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化セシウム、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージド、トリメチルフェニルアンモニウムヨージド、3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージド、あるいは1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージドなどが挙げられる。中でも、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、あるいはテトラブチルアンモニウムヨージドなどのヨウ化四級アルキルアンモニウム類が好ましい。
副材料は、例えば、高分子化合物を含んでいてもよい。この高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系ポリマーや、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレンあるいはそれらの誘導体などのp型導電性ポリマーや、導電性ポリマーの一部をスルホン酸イオンなどのアニオンでドープしたp−ドープ型ポリマーが挙げられる。
また、副材料は、被膜14が有機溶媒を含む場合と同様に、必要に応じて有機溶媒などを含んでいてもよい。
この光電変換素子では、被膜14が含むイオン性液体と電解質含有層30が含むイオン性液体とが相溶したり、あるいは互いに拡散しあうことにより、被膜14と電解質含有層30との界面の一部あるいは全部が消失し、金属酸化物半導体層12と電解質含有層30とが接したような構成(被膜14と電解質含有層30とが一体化した構成)を有するものとなってもよい。この場合には、少なくとも金属酸化物半導体層12の近傍では、その他の電解質含有層30の領域と比較して、イオン性液体の存在する割合が高くなるため、電解質含有層30の流動性は、金属酸化物半導体層12の近傍よりもその他の領域のほうが低いものとなる。すなわち、電解質含有層30中における粒子の占める割合は、作用電極10の金属酸化物半導体層12の近傍よりも対向電極20の導電層22の近傍の方が高くなっている。このような構成を有する場合においても、被膜14をもともと備えていない光電変換素子と比較して、金属酸化物半導体層12および色素13に対する物理的ダメージが抑制されるため、素子特性は向上する。
なお、ここで言う「電解質含有層30中における粒子の占める割合が金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方が高い」という状態は、例えば、金属酸化物半導体層12と導電層22との間における粒子の存在する割合を模式的に表す場合に、図4に示した状態などのことである。すなわち、図4中のAのように、粒子の存在する割合は、金属酸化物半導体層12の近傍においてほとんど存在しないが、金属酸化物半導体層12の近傍から離れるに従って急激に増加したのち、導電層22の表面まで、ほぼ一定となっている。また、図4中のBのように、粒子の存在する割合は、金属酸化物半導体層12表面から導電層22表面に近づくに従って次第に増加するようになっている。さらに、図4中のCのように、粒子の存在する割合は、金属酸化物半導体層12の近傍から離れるに従って次第に増加したのち、導電層22表面に近づくに従って急激に増加したのちほぼ一定となっている。以上の状態が挙げられる。
この光電変換素子は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
まず、作用電極10を作製する。最初に、導電性基板11の導電層11Bが形成されている面に多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12を電解析出法や焼成法により形成する。電解析出法により形成する際には、例えば、金属塩を含む電解浴を酸素や空気によるバブリングを行いながら、所定の温度とし、その中に導電性基板11を浸漬し、対極との間で一定の電圧を印可することにより金属酸化物半導体層12を形成する。その場合、対極は、電解浴中において適宜運動させるようにしてもよい。また、焼成法により形成する際には、例えば、金属酸化物半導体の粉末を金属酸化物半導体のゾル液に分散させることにより、金属酸化物スラリーとし、その金属酸化物スラリーを導電性基板11に塗布して乾燥させたのち焼成し、金属酸化物半導体層12を形成する。続いて、金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を、有機溶媒に色素13を溶解した色素溶液に浸漬することにより、金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる。続いて、色素13を担持した金属酸化物半導体層12の上に、イオン性液体を含む溶液を塗布する。この際には、必要に応じて、真空雰囲気下において塗布してもよく、有機溶媒などを塗布し、金属酸化物半導体層12の表面の塗れ性を高めたのちにイオン性液体を含む溶液を塗布してもよい。もちろん、イオン性液体を含む溶液を複数回に分けて塗布してもよい。なお、この「イオン性液体を含む溶液」とは、イオン性液体を含む液状のもののことであり、イオン性液体の単独でもよいし、イオン性液体を溶媒に溶解した溶液でもよい。最後に、金属酸化物半導体層12の表面の少なくとも一部をイオン性液体を含む溶液が覆うようにすることにより、被膜14を形成する。これにより、後述する電解質含有層30を形成する際に生じるおそれがある、金属酸化物半導体層12の破壊や色素13のはがれなどの物理的ダメージが生じにくくなる。すなわち、被膜14は、電解質含有層30を形成する際の金属酸化物半導体層12および色素13の保護膜として機能する。
次に、例えば、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることにより形成する。
次に、主材料としてイオン性液体および粒子と、必要に応じて上記した副材料とを混合し、イオン性液体に粒子を分散させることにより、半固体状の電解質含有層30を形成するためのペーストを作製する。
最後に、作用電極10の被膜14の上に、そのペーストを塗布すると共に、作用電極10の色素13を担持した面と対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保って対向するように封止剤などのスペーサ(図示せず)を介して配置し貼り合わせる。これにより、電解質含有層30が形成される。こののち、最後に全体を封止することにより、図1ないし図3に示した光電変換素子が完成する。
この光電変換素子では、作用電極10に担持された色素13に光(太陽光または、太陽光と同等の可視光)があたると、光を吸収して励起した色素13が電子を金属酸化物半導体層12へ注入し、その電子が導電層11Bを介して外部回路に移動する。一方、電解質含有層30においては、対向電極20と共に、電子の移動に伴い酸化された色素13を基底状態に戻す(還元する)ように酸化還元反応が繰り返される。これにより、電子が作用電極10、対向電極20および電解質含有層30を連続的に移動し、定常的に光電変換が行われる。
また、この光電変換素子では、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように形成された被膜14を備えたことにより、被膜14を形成しなかった場合と比較して、半固体状の電解質含有層30を形成する際に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12に対する物理的ダメージが抑制される。このため、励起した色素13から金属酸化物半導体層12への電子の注入が効率よく行われ、金属酸化物半導体層12から外部回路へ速やかに電子が移動する。よって、本実施の形態における光電変換素子によれば、高い開放電圧が得られ、素子特性を向上させることができる。この場合には、電解質含有層30が支持材として炭素材料を含有する粒子を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。
また、本実施の形態における光電変換素子では、電解質含有層30が粒子を含み、被膜14が含むイオン性液体と電解質含有層30が含むイオン性液体とが相溶した状態になったり、あるいは互いに拡散しあった状態になった場合に、電解質含有層30中における粒子の占める割合が作用電極10の金属酸化物半導体層12の近傍よりも対向電極20の導電層22の近傍の方が高いものとなる。この場合においても、電解質含有層中における粒子の占める割合が均一の場合(例えば、被膜14を形成しなかった場合)と比較して、粒子による色素13を担持した金属酸化物半導体層12に対する物理的ダメージが抑制される。よって、高い開放電圧が得られ、素子特性を向上させることができる。
本実施の形態における光電変換素子の製造方法では、色素13を担持した金属酸化物半導体層12の上に、イオン性液体を含む溶液を塗布してから、その上に、半固体状の電解質含有層30を形成するようにしたことにより、例えば、粒子による金属酸化物半導体層12の破壊や、担持された色素13のはがれといった物理的ダメージが生じにくくなる。よって、製造された光電変換素子では、破壊や色素13のはがれなどによって生じた金属酸化物半導体層12の露出した領域と電解質含有層30との直接的な接触が抑制されるため、励起された色素13から金属酸化物半導体層12への電子の注入が効率よく行われ、金属酸化物半導体層13から外部回路へ速やかに電子が移動する。すなわち、この光電変換素子の製造方法によれば、金属酸化物半導体層12および色素13の物理的なダメージが抑制されるため、高い開放電圧が得られ、素子特性を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、金属酸化物半導体層12が図2あるいは図3に示したような多孔質構造を有する場合について説明したが、金属酸化物半導体層12は図2および図3に示した多孔質構造とは異なる他の多孔質構造を有していてもよく、色素13を担持することが可能であれば、多孔質構造を有しなくてもよい。また、電解質含有層30を半固体状とする支持材として粒子を用いる場合について説明したが、ポリマーなどを用いて半固体状としてもよい。これらいずれの場合においても、上記した光電変換素子およびその製造方法と同様の作用効果が得られる。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
上記実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として、色素増感型太陽電池を以下の手順で作製した。
まず、作用電極10を作製した。最初に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板11の片面側に、電解析出により、面積が1cm2 になるように酸化亜鉛よりなる金属酸化物半導体層12を形成した。電解析出の際には、水に対してエオシンYを30μmol/dm3 、塩化亜鉛を5mmol/dm3 、塩化カリウムを0.09mol/dm3 の濃度になるように調整した電解浴液40cm3 と、亜鉛板よりなる対極と、銀/塩化銀電極よりなる参照電極とを用いた。まず、この電解浴を酸素により15分間バブリングしたのち、温度を70℃とし、60分間、電位−1.0Vの定電位電解をバブリングしながら導電性基板11表面に製膜した。この基板を、乾燥させることなく水酸化カリウム水溶液(pH11)に浸漬し、そののちエオシンYを水洗した。次に、150℃、30分間乾燥させることにより金属酸化物半導体層12を形成した。続いて、色素である化1(1)に示した化合物の5mmol/dm3 エタノール溶液に浸漬し、色素13を担持させた。最後に、イオン性液体である1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(MPImI)を、色素13が担持した金属酸化物半導体層12に塗布することにより、被膜14を形成した。
次に、対向電極20を作製した。この際には、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板21の片面側に、スパッタリングにより、モリブデン(Mo)よりなる導電層22(100nm厚)を形成した。
次に、電解質含有層30を形成するためのペーストを準備した。この際には、イオン性液体としてMPImIと、粒子としてカーボンブラック(CB)とを重量比(MPImI:CB)で、88:12となるように混合することにより、ペーストとした。
最後に、作用電極10の被膜14の上に、そのペーストを塗布すると共に、作用電極10の色素13を担持した面と、対向電極20の導電層22側の面とを対向させ、厚さ50μmのスペーサを介して貼り合わせることにより、電解質含有層30を形成した。最後に全体を封止し、色素増感型太陽電池を得た。
(実施例1−2)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体として、MPImIに代えて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド(EMImSCN)を用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例1−3)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(EMImI)を加えると共に、電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体としてEMImIを加えたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。この際、被膜14を形成する際に用いたイオン性液体の組成は、重量比(MPImI:EMImI)で50:50とし、電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体の組成も同様に、重量比(MPImI:EMImI)で50:50とした。
(実施例1−4)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体としてMPImIとEMImIとの混合物に代えて、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(BMImI)を用いたことを除き、実施例1−3と同様の手順を経た。
(実施例1−5)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体として、EMImIに代えて、BMImIを用いたことを除き実施例1−3と同様の手順を経た。
(実施例1−6)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体として、MPImIに代えて、BMImIを用いたことを除き実施例1−3と同様の手順を経た。
(実施例1−7,1−8)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体として、EMImIに代えて、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(DMPImI)を用いたことを除き、実施例1−3あるいは実施例1−6と同様の手順を経た。
(実施例1−9,1−10)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体として、MPImIに代えて、EMImDCA(実施例1−9)あるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート(EMImSCN;実施例1−10)を用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(実施例1−11)
被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体として、EMImSCNを加えたことを除き、実施例1−9と同様の手順を経た。この際、被膜14を形成する際に用いたイオン性液体および電解質含有層30を形成する際に用いたイオン性液体の組成は、いずれも重量比(EMImDCA:EMImSCN)で50:50とした。
(比較例1−1〜1−9)
被膜14を形成しなかったことを除き、実施例1−1,1−3,1−5〜1−11と同様の手順を経た。
これらの実施例1−1〜1−11および比較例1−1〜1−9の色素増感型太陽電池について開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
開放電圧の相対値および増加率を調べる際には、電解質含有層を形成する際に用いたペーストの組成が同じ実施例と比較例とを比較して、その比較例の開放電圧(Voc)を100%として対応する実施例の相対値を算出した。また、実施例と対応する比較例との相対値の差を増加率とした。開放電圧を測定する際には、光源にAM1.5(100mW/cm2 )のソーラーシュミレータを用いて、色素増感型太陽電池の開放電圧をソースメータにて掃引することにより測定した。
なお、上記した開放電圧の相対値および増加率を調べる際の手順および条件は、以降の一連の実施例および比較例についても同様である。
表1に示したように、被膜14を形成した実施例1−1〜1−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例1−1〜1−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。この結果は、被膜14を形成することにより、励起した色素13から金属酸化物半導体層12への電子の注入が効率よく行われ、金属酸化物半導体層12から外部回路へ速やかに電子が移動することを表わしている。すなわち、電解質含有層30を形成する際に、金属酸化物半導体層12の破壊や、色素13のはがれといった物理的ダメージが抑えられたものと考えられる。しかも、励起した色素13あるいは電子が注入された金属酸化物半導体層12から電解質含有層30への電子の移動が抑制され、被膜14は、いわゆる金属酸化物半導体層12および色素13の保護膜として機能すると共に、逆電防止バリア層としても機能したものと考えられる。
なお、本実施例では示していないが、実施例1−1〜1−11の色素増感型太陽電池を長期間保存したのちに、同様にして開放電圧を測定したところ、保存前と保存後では、開放電圧がほぼ同等となった。すなわち、例え、被膜14が消失したとしても、上記した結果と同様の結果が得られることが示唆された。
このことから、この色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として炭素材料を含有する粒子を含む場合に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合が金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方が高いことにより、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。
また、被膜14が含むイオン性液体の種類に着目すると、実施例1−1〜1−11の中でも、EMImDCAあるいはEMImSCNを用いた実施例1−2,1−9〜1−11において開放電圧の増加率が大きかった。また、被膜14が含むイオン性液体の種類と電解質含有層30が含むイオン性液体の種類との組み合わせに着目すると、実施例1−1と実施例1−2との比較および実施例1−3と実施例1−4との比較から、双方において同一の種類のものを用いる場合よりも、互いに異なる種類のものを用いた方が、開放電圧の相対値が同等あるいはそれ以上となる傾向を示した。
このことから、被膜14および電解質含有層30が含むイオン性液体の組成に依存せずに、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。特に、被膜14が含むイオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いることにより、素子特性がより向上する傾向が見られた。
(実施例2−1〜2−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例2−1〜2−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−11および比較例2−1〜2−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
表2に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例2−1〜2−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例2−1〜2−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例3−1〜3−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例3−1〜3−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1〜3−11および比較例3−1〜3−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
表3に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例3−1〜3−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例3−1〜3−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例4−1〜4−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例4−1〜4−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例4−1〜4−11および比較例4−1〜4−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
表4に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例4−1〜4−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例4−1〜4−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例5−1〜5−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例5−1〜5−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例5−1〜5−11および比較例5−1〜5−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
表5に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例5−1〜5−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例5−1〜5−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例6−1〜6−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例6−1〜6−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例6−1〜6−11および比較例6−1〜6−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
表6に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例6−1〜6−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例6−1〜6−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例7−1〜7−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。
(比較例7−1〜7−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1−1〜1−9と同様の手順を経た。
これらの実施例7−1〜7−11および比較例7−1〜7−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
表7に示したように、色素13が化3(2)に示した化合物を含む場合においても、表1の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例7−1〜7−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例7−1〜7−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
上記した表1〜表7の結果から、色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として炭素材料を含有する粒子を含む場合に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。
(実施例8−1〜8−11)
電解質含有層30を形成する際に、CBに代えて、CBに副材料であるポリアニリン(PA)がコーティングされたポリアニリンカーボン(CB+PA;アルドリッチ社製)を用い、ペーストの組成を変更したことを除き、実施例1−1〜1−11と同様の手順を経た。この際、イオン性液体と粒子と副材料とを重量比(イオン性液体:CB:PA)で、85:12:3となるように混合し、ペーストを調整した。
(比較例8−1〜8−9)
被膜14を形成しなかったことを除き、実施例8−1,8−3,8−5〜8−11と同様の手順を経た。
これらの実施例8−1〜8−11および比較例8−1〜8−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
表8に示したように、電解質含有層30が副材料としてポリアニリンを含む場合においても、表1に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例8−1〜8−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例8−1〜8−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
このことから、この色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として炭素材料を含有する粒子を含む場合に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成や副材料の有無に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。また、同様に、被膜14が含むイオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いることにより、素子特性がより向上する傾向が見られた。
(実施例9−1〜9−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例9−1〜9−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例9−1〜9−11および比較例9−1〜9−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表9に示した結果が得られた。
表9に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例9−1〜9−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例9−1〜9−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例10−1〜10−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例10−1〜10−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例10−1〜10−11および比較例10−1〜10−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表10に示した結果が得られた。
表10に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例10−1〜10−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例10−1〜10−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例11−1〜11−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例11−1〜11−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例11−1〜11−11および比較例11−1〜11−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表11に示した結果が得られた。
表11に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例11−1〜11−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例11−1〜11−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例12−1〜12−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例12−1〜12−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例12−1〜12−11および比較例12−1〜12−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
表12に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例12−1〜12−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例12−1〜12−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例13−1〜13−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例13−1〜13−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例13−1〜13−11および比較例13−1〜13−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表13に示した結果が得られた。
表13に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例13−1〜13−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例13−1〜13−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例14−1〜14−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。
(比較例14−1〜14−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例8−1〜8−9と同様の手順を経た。
これらの実施例14−1〜14−11および比較例14−1〜14−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表14に示した結果が得られた。
表14に示したように、色素13が化3(2)に示した化合物を含む場合においても、表8の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例14−1〜14−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例14−1〜14−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
上記した表8〜表14の結果から、色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として炭素材料を含有する粒子を含む場合に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。また、表1〜表14の結果から、粒子として炭素材料を含有する粒子を含む場合には、副材料の有無に関係なく、高い効果が得られることが確認された。
(実施例15−1〜15−11)
対向電極20を作製する際にモリブデンに代えて、白金(Pt)よりなる導電層22を形成すると共に、電解質含有層30を形成する際に粒子および副材料としてCB+PAに代えて、酸化チタン(TiO2 )およびヨウ素(I2 )を用い、ペーストの組成を変更したことを除き、実施例8−1〜8−11と同様の手順を経た。この際、イオン性液体とTiO2 とを重量比(イオン性液体:TiO2 )で、70:30となるよう混合し、さらにI2 をペースト中における濃度が1mol/dm3 となるよう加えて、ペーストを調整した。
(比較例15−1〜15−9)
被膜14を形成しなかったことを除き、実施例15−1,15−3,15−5〜15−11と同様の手順を経た。
これらの実施例15−1〜15−11および比較例15−1〜15−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表15に示した結果が得られた。
表15に示したように、電解質含有層30が含む粒子として酸化チタン粒子を用いた場合においても、表1および表8に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例15−1〜15−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例15−1〜15−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
このことから、この色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として酸化チタン粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。特に、被膜14が含むイオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いることにより、素子特性がより向上する傾向が見られた。
(実施例16−1〜16−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例16−1〜16−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例16−1〜16−11および比較例16−1〜16−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表16に示した結果が得られた。
表16に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例16−1〜16−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例16−1〜16−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例17−1〜17−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例17−1〜17−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例17−1〜17−11および比較例17−1〜17−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表17に示した結果が得られた。
表17に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例17−1〜17−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例17−1〜17−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例18−1〜18−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例18−1〜18−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例18−1〜18−11および比較例18−1〜18−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表18に示した結果が得られた。
表18に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例18−1〜18−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例18−1〜18−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例19−1〜19−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例19−1〜19−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例19−1〜19−11および比較例19−1〜19−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表19に示した結果が得られた。
表19に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例19−1〜19−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例19−1〜19−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例20−1〜20−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例20−1〜20−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例20−1〜20−11および比較例20−1〜20−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表20に示した結果が得られた。
表20に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例20−1〜20−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例20−1〜20−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例21−1〜21−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例21−1〜21−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例15−1〜15−9と同様の手順を経た。
これらの実施例21−1〜21−11および比較例21−1〜21−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表21に示した結果が得られた。
表21に示したように、色素13が化3(2)に示した化合物を含む場合においても、表15の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例21−1〜21−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例21−1〜21−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
上記した表15〜表21の結果から、色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として酸化チタン粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。
(実施例22−1〜22−11)
電解質含有層30を形成する際に、粒子として酸化チタンに代えて、シリカゲル(SiO2 )を用いたことを除き、実施例15−1〜15−11と同様の手順を経た。
(比較例22−1〜22−9)
被膜14を形成しなかったことを除き、実施例22−1,22−3,22−5〜22−11と同様の手順を経た。
これらの実施例22−1〜22−11および比較例22−1〜22−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表22に示した結果が得られた。
表22に示したように、電解質含有層30が含む粒子としてシリカゲル粒子を用いた場合においても、表1、表8および表15に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例22−1〜22−11では、電解質含有層の組成が同じであるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例22−1〜22−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
このことから、この色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子としてシリカゲル粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。また、同様に、被膜14が含むイオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いることにより、素子特性がより向上する傾向が見られた。
(実施例23−1〜23−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例23−1〜23−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例23−1〜23−11および比較例23−1〜23−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表23に示した結果が得られた。
表23に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例23−1〜23−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例23−1〜23−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例24−1〜24−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例24−1〜24−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例24−1〜24−11および比較例24−1〜24−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表24に示した結果が得られた。
表24に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例24−1〜24−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例24−1〜24−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例25−1〜25−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例25−1〜25−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例25−1〜25−11および比較例25−1〜25−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表25に示した結果が得られた。
表25に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例25−1〜25−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例25−1〜25−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例26−1〜26−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例26−1〜26−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例26−1〜26−11および比較例26−1〜26−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表26に示した結果が得られた。
表26に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例26−1〜26−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例26−1〜26−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例27−1〜27−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例27−1〜27−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例27−1〜27−11および比較例27−1〜27−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表27に示した結果が得られた。
表27に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例27−1〜27−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例27−1〜27−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例28−1〜28−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例28−1〜28−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例22−1〜22−9と同様の手順を経た。
これらの実施例28−1〜28−11および比較例28−1〜28−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表28に示した結果が得られた。
表28に示したように、色素13が化3(2)に示した化合物を含む場合においても、表22の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例28−1〜28−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例28−1〜28−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
上記した表22〜表28の結果から、色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子としてシリカゲル粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。
(実施例29−1〜29−11)
電解質含有層30を形成する際に、粒子として酸化チタンに代えて、酸化亜鉛(ZnO)を用いたことを除き、実施例22−1〜22−11と同様の手順を経た。
(比較例29−1〜29−9)
被膜14を形成しなかったことを除き、実施例29−1,29−3,29−5〜29−11と同様の手順を経た。
これらの実施例29−1〜29−11および比較例29−1〜29−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表29に示した結果が得られた。
表29に示したように、電解質含有層30が含む粒子として酸化亜鉛粒子を用いた場合においても、表1、表8、表15および表22に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例29−1〜29−11では、電解質含有層の組成が同じであるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例29−1〜29−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
このことから、この色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として酸化亜鉛粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。この場合においても、特に、被膜14が含むイオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミドあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネートを用いることにより、素子特性がより向上する傾向が見られた。
(実施例30−1〜30−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例30−1〜30−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例30−1〜30−11および比較例30−1〜30−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表30に示した結果が得られた。
表30に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例30−1〜30−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例30−1〜30−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例31−1〜31−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例31−1〜31−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例31−1〜31−11および比較例31−1〜31−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表31に示した結果が得られた。
表31に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例31−1〜31−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例31−1〜31−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例32−1〜32−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例32−1〜32−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例32−1〜32−11および比較例32−1〜32−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表32に示した結果が得られた。
表32に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例32−1〜32−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例32−1〜32−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例33−1〜33−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例33−1〜33−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例33−1〜33−11および比較例33−1〜33−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表33に示した結果が得られた。
表33に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例33−1〜33−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例33−1〜33−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例34−1〜34−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例34−1〜34−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例34−1〜34−11および比較例34−1〜34−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表34に示した結果が得られた。
表34に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例34−1〜34−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例34−1〜34−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
(実施例35−1〜35−11)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例29−1〜29−11と同様の手順を経た。
(比較例35−1〜35−9)
色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例29−1〜29−9と同様の手順を経た。
これらの実施例35−1〜35−11および比較例35−1〜35−9の色素増感型太陽電池について、開放電圧の相対値および増加率を調べたところ、表35に示した結果が得られた。
表35に示したように、色素13が化3(2)に示した化合物を含む場合においても、表29の結果と同様の結果が得られた。すなわち、被膜14を形成した実施例35−1〜35−11では、電解質含有層の組成は同一であるが、被膜14を形成しなかった対応する比較例35−1〜35−9と比較して、開放電圧の相対値が高くなった。
上記した表29〜表35の結果から、色素増感型太陽電池では、電解質含有層30が粒子として酸化亜鉛粒子を含む場合においても、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成に依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。
また、上記した表1〜表35の結果から、上記した光電変換素子では、電解質含有体30が粒子を含む場合に、色素13を担持した金属酸化物半導体層12を覆うように被膜14を形成する、あるいは電解質含有層30中における粒子の占める割合を金属酸化物半導体層12の近傍よりも導電層22の近傍の方を高くすることにより、色素13の種類や、電解質含有層30および被膜14が含むイオン性液体の組成や、粒子の種類などに依存せずに、高い開放電圧が得られ、素子特性が向上することが確認された。この場合には、電解質含有層30が含む粒子として、炭素材料を含有する粒子を用いた場合において、開放電圧の増加率が大きくなった。この結果は、炭素材料を含有する粒子が酸化還元反応を触媒する機能を有するため、その機能を有しない、あるいは機能が低い粒子を用いる場合よりも、電解質含有層30における酸化還元反応がさらに良好となり、金属酸化物半導体層12から外部回路への電子の移動がより速やかに行われたものと考えられる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の光電変換素子の使用用途は、必ずしも既に説明した用途に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、光センサなどが挙げられる。
10…作用電極、11,21…導電性基板、11A…基板、11B…導電層、12…金属酸化物半導体層、12A…緻密層、12B…多孔質層、12C…間隙、13…色素、14…被膜、20…対向電極、22…導電層、30…電解質含有層。