JP2010009831A - 光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】変換効率を向上させることが可能な光電変換素子を提供する。
【解決手段】作用電極10および対向電極20と共に、その間に挟持された半固体状の電解質含有層30を備え、電解質含有層30は、粒子と共に有機溶媒およびイオン性液体を含んで構成されている。有機溶媒を含まない場合と比較して、光を吸収して励起した色素から金属酸化物半導体層12への電子の注入が効率よく行われ、金属酸化物半導体層12から外部回路へ速やかに電子が移動する。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素を用いた光電変換素子に関する。
従来、太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池などの光電変換素子として、色素を光増感剤として用いた色素増感型光電変換素子が知られている。この色素増感型光電変換素子は、理論的に高い効率が期待でき、一般に普及しているシリコン半導体を用いた光電変換素子より、コスト的に非常に有利であると考えられている。このため、次世代の光電変換素子として注目されており、実用化に向けて開発が進められている。
この色素増感型光電変換素子は、色素が光を吸収して電子を放出する性質を利用して発電を行うものであり、電解質を介して電気化学的なセル構造を有するのが特徴である。具体的には、酸化チタンなどの酸化物半導体を用いて焼成することにより多孔質状の層を形成し、色素を吸着させた電極と、その対極となる電極とを、電解質を介して貼り合わせた構造を有している。
この電解質(いわゆるレドックス電解質)としては、一般的に電解質塩を有機溶媒に溶解させた電解液(液状の電解質)が用いられている。この電解液の組成に関しては、変換効率の向上を目的として、既にいくつかの提案がなされている。例えば、ヨウ素イオンを含む電解液において、イオン性液体および有機溶媒にシアノエチル化された多糖類を添加する技術が知られている(特許文献1参照)。
その一方で、上記したような電解液を用いた場合には、液漏れ等を生じるおそれがあり、高い耐久性や安全性を確保することが困難であるため、半固体状の電解質を用いることが検討されている。具体的には、イオン性液体、p型導電性ポリマーおよび炭素材料を含む低流動性の電解質を用いることが提案されている(特許文献2参照)。なお、このような炭素材料は、対極となる電極の表面に導電層を形成する材料としても用いられている(特許文献3参照)。
特開2008−010189号公報 特開2007−227087号公報 特開2004−337530号公報
しかしながら、上記したような半固体状の電解質を用いた場合には、電解液を用いた場合と比較して、導電性が低くなりやすく、十分な変換効率を得ることが困難であった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、変換効率を向上させることが可能な光電変換素子を提供することにある。
本発明の光電変換素子は、色素を担持した担持体層を有する電極と、色素を担持した担持体層の上に形成された半固体状の電解質含有層とを備え、電解質含有層は、粒子と共に、有機溶媒およびイオン性液体を含有するものである。なお、この「半固体状」とは、液体のような高い流動性を有する状態や、固体のように流動性がない状態とは異なる状態の意味であり、例えば、ペースト状などの広い概念を表すものである。また、ここでの「イオン性液体」とは、その融点が100℃以下のもののことをいう。
本発明の光電変換素子では、担持体層に担持された色素に光があたると、その光を吸収して励起した色素が電子を担持体層へ注入し、その電子が外部回路へ移動する。一方、電解質含有層においては、その電子の移動に伴い、酸化された色素を基底状態に戻す(還元する)ように酸化還元反応が繰り返される。これにより、電子が光電変換素子内を連続的に移動し、定常的に光電変換が行われる。ここで、半固体状の電解質含有層が粒子およびイオン性液体と共に有機溶媒を含むことにより、電解質含有層において電子が速やかに移動し、酸化還元反応が良好に行われる。このため、外部回路への電子の移動も速やかに行われ、色素が吸収した光量に対する放電量が高くなる。
本発明の光電変換素子では、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)は、1/99以上90/10以下であるのが好ましい。これにより、色素が吸収した光量に対する放電量が高くなると共に、高温環境に曝された場合に、有機溶媒の気化が抑制される。また、粒子の電解質含有層中における含有量は、5重量%以上60重量%以下であることが好ましい。これにより、色素が吸収した光量に対する放電量がより高くなる。
また、本発明の光電変換素子では、有機溶媒は、常温で液体であり、かつ、官能基として、ニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環および環状エーテル構造のうちの少なくとも1種を有するものであってもよく、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、メトキシアセトニトリルおよびブチロニトリルのうちの少なくとも1種を含むようにするのが好ましい。これにより、色素が吸収した光量に対する放電量が高くなると共に、高温環境に曝された場合に、有機溶媒の気化が抑制される。なお、ここでの「常温」とは、5℃〜35℃の範囲をいい、「常温で液体」とは、その範囲の中のいずれかの温度で液体であるこという。
また、本発明の光電変換素子では、粒子は、導電性粒子であるのが好ましい。これにより、電解質含有層中における電子の移動がより速やかになる。この場合、導電性粒子は、カーボン粒子であるのが好ましい。これにより、酸化還元反応がより良好に行われる。また、イオン性液体は、ヨウ素塩であってもよい。
本発明の光電変換素子によれば、半固体状の電解質含有層が粒子およびイオン性液体と共に有機溶媒を含むようにしたので、有機溶媒を含まない場合と比較して、導電性が高くなり、変換効率を向上させることができる。特に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)を1/99以上90/10以下の範囲内にすれば、変換効率を向上させると共に、高い耐久性も確保することができる。また、粒子の電解質含有層中における含有量を5重量%以上60重量%以下にすれば、変換効率をより向上させることができる。
以下、本発明の実施のための最良の形態(以下、単に実施の形態という。)について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の断面構成を模式的に表すものであり、図2は、図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋および拡大して表すものである。図1および図2に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、作用電極10と対向電極20とが電解質含有層30を介して対向配置されたものであり、作用電極10および対向電極20のうちの少なくとも作用電極10は、光透過性を有する電極である。
作用電極10は、例えば、導電性基板11と、その一方の面(対向電極20の側の面)に設けられた金属酸化物半導体層12と、この金属酸化物半導体層12を担持体層として担持された色素13とを有している。この作用電極10は、外部回路に対して、負極として機能するものである。導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものであり、導電層11Bは金属酸化物半導体層12と接して設けられている。
基板11Aは、例えば、ガラス、プラスチック、透明ポリマーフィルムなどの光透過性を有する絶縁性の材料により構成されている。透明ポリマーフィルムとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンあるいはブロム化フェノキシなどが挙げられる。
導電層11Bは、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO:F−SnO2 )などの光透過性を有する導電性材料により構成されている。
なお、導電性基板11は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板11の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物あるいは酸化スズにフッ素をドープしたものなどの光透過性を有する導電性材料が挙げられる。
金属酸化物半導体層12は、色素13を担持する担持体層であり、例えば、図2に示したように多孔質構造を有している。この多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12は、例えば、緻密層12Aと多孔質層12Bとから形成されている。導電性基板11との界面においては、緻密層12Aが形成され、この緻密層12Aは、緻密で空隙が少ないことが好ましく、膜状であることがより好ましい。対向電極20側においては、多孔質層12Bが形成され、この多孔質層12Bは、空隙が多く、表面積が大きくなる構造が好ましく、特に、多孔質の微粒子が付着している構造がより好ましい。なお、金属酸化物半導体層12では、例えば、多孔質構造が単層構造となるように形成されてもよい。
この金属酸化物半導体層12は、金属酸化物半導体の材料のいずれか1種または2種以上を含んで形成されている。金属酸化物半導体の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウムなどが挙げられる。なお、金属酸化物半導体の材料は、1種あるいは2種以上の材料を複合(混合、混晶、固溶体など)させて含んでいてもよい。中でも、酸化チタンおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも1種が好ましい。
色素13は、金属酸化物半導体層12に担持されており、光を吸収して励起し、電子を金属酸化物半導体層12へ注入することが可能な1種または2種以上の色素を含んでいる。この色素は、例えば、金属酸化物半導体層12と化学的に結合することができる電子吸引性の置換基を有するものであることが好ましい。色素としては、例えば、シアニン系色素、メロシアニンジスアゾ系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素あるいは無金属ポルフィリン系色素などの有機色素などが挙げられる。
また、色素としては、例えば、有機金属錯体化合物も挙げられ、一例としては、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくは硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物などが挙げられる。具体的には、例えば、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、またはビピリジルルテニウム錯体、ターピリジルルテニウム錯体、フェナントロリンルテニウム錯体、ビシンコニン酸ルテニウム錯体、アゾルテニウム錯体あるいはキノリノールルテニウム錯体などのルテニウム錯体が挙げられる。
上記した有機色素あるいは有機金属錯体化合物としては、例えば、化1〜化3で表される一連の化合物が挙げられ、その他に、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミンB、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシンあるいはマーキュロクロムなどが挙げられる。
Figure 2010009831
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対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22を設けたものであり、導電層22は電解質含有層30と接して設けられている。この対向電極20は、外部回路に対して、正極として機能するものである。導電性基板21の材料としては、例えば、作用電極10の導電性基板11と同様の材料が挙げられる。導電層22に用いる導電材としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)あるいはインジウム(In)などの金属、炭素(C)、または導電性高分子などが挙げられる。これらの導電材は、単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、結着材として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマーあるいはポリイミド樹脂などを用いてもよい。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造としてもよい。
電解質含有層30は、レドックス電解質であり、粒子と共に、有機溶媒およびイオン性液体を含む電解液を含有し、半固体状となっている。これにより、液状の電解質(電解液)を用いた場合と比較して、液漏れなどが抑制されるため、耐久性および安全性が確保される。また、有機溶媒を含むことにより、それを含まない場合と比較して、電解質含有層30の導電性が向上するため、変換効率が向上する。
粒子は、電解質含有層30を半固体状とするための支持材であり、素子特性を良好に維持できるものであれば任意である。この粒子としては、例えば、導電性、半導体性あるいは絶縁性を有する粒子や、酸化還元反応を触媒する粒子などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、導電性を有するもの(導電性粒子)が好ましく、酸化還元反応を触媒するものがより好ましく、導電性を有する共に酸化還元反応を触媒するものが特に好ましい。粒子が導電性を有する場合には、電解質含有層30の電気抵抗が低下し、酸化還元反応を触媒する場合には、酸化還元反応が良好となる。よって、いずれの場合においても、変換効率がより向上し、双方の機能を備える場合には、特に高い効果が得られる。
粒子を構成する材料としては、例えば、炭素材料、酸化チタン(TiO2 )、シリカゲル(酸化ケイ素;SiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2 )、チタン酸コバルト(CoTiO3 )あるいはチタン酸バリウム(BaTiO2 )などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。中でも、粒子は、構成材料として炭素材料を含有するカーボン粒子であるのが好ましい。カーボン粒子は、導電性を有し、しかも酸化還元反応を触媒するため、高い効果が得られるからである。カーボン粒子としては、導電性が高いものが好ましく、さらに、比表面積が大きいものが好ましい。電解質含有層30の導電性が高くなり、しかも電解液との接触面積が大きくなるため、酸化還元反応がより良好に触媒されるからである。カーボン粒子の導電性としては、カーボン粒子のバルク抵抗が10Ωcm以下(0.1Ωm以下)であるのが好ましい。これにより、電解質含有層30の電気抵抗を十分に低く抑えられるため、素子の内部抵抗も十分に低く抑えられる。詳細には、通常、色素増感型の光電変換素子では、構成する材料の抵抗が変換効率を損失する主な要因の一つとなっている。中でも、導電性基板に用いられる光透過性を有する導電性材料は、比較的、電気抵抗が高い材料であり、例えば、FTO(F−SnO2 )では、10Ωcm程度の抵抗を有している。このため、粒子としてカーボン粒子を用いた場合に、上記した導電層11Bを構成する材料として用いるFTOなどの光透過性を有する導電性材料よりも抵抗が低い、すなわちバルク抵抗が10Ωcm以下のカーボン粒子を用いれば、素子の内部抵抗が低く抑えられ、十分な変換効率を得ることができる。
このようなカーボン粒子としては、黒鉛などの結晶質なものや、活性炭あるいはカーボンブラックなどの非晶質なものや、その他にも、グラフェン、カーボンナノチューブあるいはフラーレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。黒鉛としては、人造黒鉛あるいは天然黒鉛などが挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、オイルファーネス、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックあるいはケチェンブラックなどが挙げられる。炭素材料としては、特にカーボンブラックが好ましい。高い効果が得られるからである。また、カーボンブラックとしては、DBP吸収量(JIS K6217−4)が高いものが好ましい。単位粒子あたりの電解液の吸収量が増えることとなり、変換効率の向上に寄与すると考えられるからである。
粒子の電解質含有層30中における含有量は、高い変換効率が得られることから、多く含まれているほうが好ましい。中でも、5重量%以上60重量%以下であることがより好ましい。上記した範囲内であれば、十分な耐久性が確保されると共に、変換効率がより向上するからである。特に、粒子の電解質含有層30中における含有量は、10重量%以上60重量%以下であることが好ましい。より高い変換効率が得られるからである。
有機溶媒は、電解液中に1種あるいは2種以上が含まれている。この有機溶媒は、電気化学的に不活性であり、イオン性液体を溶解することが可能であれば任意であるが、常温で液体であることが好ましい。常温で固体であると、導電性が低下しやすくなり、常温で気体であると、耐久性を損なうおそれがあるからである。また有機溶媒は、粘度および電気伝導率の高いものであるのが好ましい。粘度が高いことにより沸点が高くなるため、高温環境下に曝されても電解質の漏れが抑制され、電気伝導率が高いことにより高い変換効率が得られるからである。このような有機溶媒は、常温で液体であり、官能基として、ニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環および環状エーテル構造のうちの少なくとも1種を有することが好ましい。このような官能基を含まないものと比較して、高い効果が得られるからである。この官能基を有する有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピルニトリル、ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルホキシドあるいは1,4−ジオキサンなどが挙げられる。中でも、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、メトキシアセトニトリルおよびブチロニトリルのうちの少なくとも1種が好ましい。
イオン性液体は、電解質塩であり、電解液中に1種あるいは2種以上含まれている。ここでのイオン性液体とは、融点が100℃以下のもののことをいう。このようなイオン性液体としては、電池や太陽電池などにおいて使用可能なものが挙げられ、例えば、「Inorg.Chem」1996,35,p1168〜1178、「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、特表平9−507334号公報、または特開平8−259543号公報などに開示されているものが挙げられる。中でも、イオン性液体としては、室温(25℃)より低い融点を有する塩が好ましい。製造時において半固体状の電解質含有層30の形成する際に用いるペーストの調整が容易になるからである。このイオン性液体としては、以下に示したアニオンおよびカチオンを含むものが挙げられる。
イオン性液体のカチオンは、環状構造を含んでいてもよいし、環状構造を含まなくてもよい。このカチオンとしては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム、またはそれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、スルホニウムおよびそれらの誘導体からなる群のうちの少なくとも1種が好ましく、特に、イミダゾリウムが好ましい。具体的には、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムが好ましい。
また、イオン性液体のアニオンとしては、AlCl4 -あるいはAl2 Cl7 -などの金属塩化物や、PF6 -、BF4 -、CF3 SO3 -、N(CF3 SO2 2 -、F(HF)n -あるいはCF3 COO- などのフッ素含有物イオンや、NO3 -、CH3 COO- 、C6 11COO- 、CH3 OSO3 -、CH3 OSO2 -、CH3 SO3 -、CH3 SO2 -、(CH3 O)2 PO2 -、N(CN)2 -あるいはSCN- などの非フッ素化合物イオンや、ヨウ素あるいは臭素などのハロゲン化物イオンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、このアニオンとしては、ハロゲン化物イオンが好ましく、特に、ヨウ化物イオンが好ましい。すなわち、イオン性液体はハロゲン化物塩であることが好ましく、特にヨウ化物塩(ヨウ素塩)であることが好ましい。
この電解液では、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)は、1/99以上90/10以下であるのが好ましい。変換効率が向上するうえ、高温環境に曝されても、電解液の飛散や蒸発が抑制され、耐久性および安全性が確保されるからである。中でも、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)は、3/97以上90/10以下であるのが好ましく、25/70以上90/10以下であるのが特に好ましい。変換効率がより向上するからである。
また、電解液は、イオン性液体の他に、他の電解質塩のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、例えば、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類、あるいはハロゲン化ピリジニウム類などが挙げられる。中でも、ヨウ化物塩が好ましい。これにより、高い素子特性が得られる。特に、電解質含有層30が含むイオン性液体のアニオンがヨウ化物イオン以外のものである場合には、ヨウ化物塩を添加することにより、素子特性がより向上する。このヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化セシウム、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージド、トリメチルフェニルアンモニウムヨージド、3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージド、3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージド、あるいは1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージドなどが挙げられる。中でも、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、あるいはテトラブチルアンモニウムヨージドなどのヨウ化四級アルキルアンモニウム類が好ましい。
電解液は、上記した他に、添加剤などを含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、ハロゲン単体などが挙げられる。ハロゲン単体としては、例えば、ヨウ素(I2 )あるいは臭素(Br2 )が挙げられる。中でも、ヨウ素が好ましい。素子特性が向上するからである。なお、電解質含有層30では、粒子として触媒能を有さない粒子を用いる場合には、十分な素子特性を得るために、ハロゲン単体を含むことが必要となる。
また、電解質含有層30は、上記した粒子および電解液の他に、例えば、高分子化合物を含んでいてもよい。この高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系ポリマーや、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレンあるいはそれらの誘導体などのp型導電性ポリマーや、導電性ポリマーの一部をスルホン酸イオンなどのアニオンでドープしたp−ドープ型ポリマーが挙げられる。
この光電変換素子は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
まず、作用電極10を作製する。最初に、導電性基板11の導電層11Bが形成されている面に多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12を電解析出法や焼成法により形成する。電解析出法により形成する際には、例えば、金属塩を含む電解浴を、酸素や空気によるバブリングを行いながら、所定の温度とし、その中に導電性基板11を浸漬し、対極との間で一定の電圧を印可することにより金属酸化物半導体層12を形成する。その場合、対極は、電解浴中において適宜運動させるようにしてもよい。また、焼成法により形成する際には、例えば、金属酸化物半導体の粉末を金属酸化物半導体のゾル液に分散させることにより、金属酸化物スラリーとし、その金属酸化物スラリーを導電性基板11に塗布して乾燥させたのち焼成し、金属酸化物半導体層12を形成する。続いて、金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を、有機溶媒に色素13を溶解した色素溶液に浸漬することにより、金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる。続いて、必要に応じて、色素13を担持した金属酸化物半導体層12の上に、イオン性液体を含む溶液を塗布して、後述する電解質含有層30を形成する際に生じるおそれがある、金属酸化物半導体層12の破壊や色素13のはがれなどの物理的ダメージを抑制するための保護膜を形成してもよい。この際には、真空雰囲気下において塗布してもよく、有機溶媒などを塗布し、金属酸化物半導体層12の表面の塗れ性を高めたのちにイオン性液体を含む溶液を塗布してもよい。もちろん、イオン性液体を含む溶液を複数回に分けて塗布してもよい。なお、このイオン性液体を含む溶液とは、イオン性液体を含む液状のもののことであり、イオン性液体の単独でもよいし、イオン性液体を溶媒に溶解した溶液でもよい。
次に、例えば、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることにより形成する。
次に、有機溶媒およびイオン性液体を混合すると共に、必要に応じて添加剤等を加えることにより上記した電解液を調整したのち、この電解液に粒子を混合、分散させることにより、半固体状の電解質含有層30を形成するためのペーストを作製する。
最後に、作用電極10の色素13を担持した金属酸化物半導体層12の上に、上記したペーストを塗布すると共に、作用電極10の色素13を担持した面と対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保って対向するように封止剤などのスペーサ(図示せず)を介して貼り合わせ、こののち全体を封止することにより、電解質含有層30を形成する。これにより、図1,図2に示した光電変換素子が完成する。
この光電変換素子では、作用電極10に担持された色素13に光(太陽光または、太陽光と同等の可視光)があたると、光を吸収して励起した色素13が電子を金属酸化物半導体層12へ注入する。その電子が隣接した導電層11Bに移動したのち外部回路を経由して、対向電極20に到達する。一方、電解質含有層30では、電子の移動に伴い酸化された色素13を基底状態に戻す(還元する)ように、レドックス電解質が酸化される。この酸化された電解質が上記した電子を受け取ることによって還元される。このようにして、作用電極10および対向電極20の間における電子の移動と、これに伴う電解質含有層30における酸化還元反応とが繰り返される。これにより、連続的な電子の移動が生じ、定常的に光電変換が行われる。
また、この光電変換素子では、半固体状の電解質含有層30が粒子およびイオン性液体と共に有機溶媒を含むようにしたので、有機溶媒を含まない場合と比較して、電解質含有層30中における導電性が高くなる。このため、変換効率を向上させることができる。この場合、特に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)を1/99以上90/10以下の範囲内にすれば、変換効率を向上させると共に、高い耐久性も確保することができる。
また、電解質含有層30中における粒子の含有量を5重量%以上60重量%以下の範囲内にすれば、変換効率をより向上させることができる。
さらに、粒子として、導電性粒子を用いるのが好ましく、特にカーボン粒子を用いるのが好ましい。導電性粒子を用いた場合には、電解質含有層30の導電性が向上し、カーボン粒子を用いた場合には、電解質含有層30中において導電性が向上すると共に酸化還元反応が良好に行われるため、さらに変換効率を向上させることができる。また、この場合、カーボン粒子が酸化還元反応を触媒するため、対向電極20における導電層22を構成する材料として、一般的に用いられている白金などの高価なものを必要としないので、コストを抑えることができる。
ちなみに、本実施の形態における光電変換素子では、上記した有機溶媒のイオン性液体に対する重量比の好ましい範囲を、高温環境下における安全性および耐久性を評価することによっても、推測することができる。ここで、以下の参考データを参照して、その組成と高温環境下における安全性および耐久性との関係について説明する。
(参考データ1〜9)
電解質含有層30の代わりに、有機溶媒を含む液体として後述の表1に示す組成の有機溶媒、イオン性液体あるいはそれらの混合液を用いて、簡易セルを以下の手順により作製した。
具体的には、まず、作用電極の代わりとして、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板の片面側に、電解析出により、面積が1cm2 になるように酸化亜鉛よりなる金属酸化物半導体層が形成された第1の基板を準備した。また、対向電極の代わりとして、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板の片面側に、スパッタリングにより、モリブデン(Mo)よりなる導電層が形成された第2の基板を準備した。この際、第2の基板には、後述する液体注入用の穴(φ1mm)を2つ開けたものを用意した。
続いて、有機溶媒を含む液体を準備した。この際、有機溶媒としてアセトニトリル(AN)、プロピルニトリル(PN)、ブチロニトリル(BN)、メトキシアセトニトリル(MAN)、あるいはメトキシプロピオニトリル(MPN)を用い、イオン性液体として1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(MPImI)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(BMImI)あるいは1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(DMPImI)を用い、表1に示した組成となるようにした。
続いて、第1の基板の金属酸化物半導体層が形成された面と、第2の基板の導電層が形成された面とを対向させ、第1の基板および第2の基板が所定の間隔を保つために厚さ50μmのスペーサを介して貼り合わせた。そののち、液体注入用の穴から調整した液体を両基板の間に注入し、全体を封止して簡易セルを得た。
これらの参考データ1〜9の簡易セルについて、高温環境下における耐久性を以下の方法により調べたところ、表1に示した結果が得られた。
耐久性を調べる際には、簡易セルを高温雰囲気中に曝し、簡易セルからの液体の漏れの有無を目視により確認した。詳細には、恒温槽内の簡易セルを20℃ずつ、80℃から160℃まで昇温させ、液体の漏れが確認された温度を上限温度とした。
Figure 2010009831
表1に示したように、液体がアセトニトリル等の有機溶媒からなる参考データ1〜5では、120℃以下で液漏れが観察されたが、イオン性液体を含む参考データ6〜9では、160℃においても液漏れは見られなかった。すなわち、液体としてイオン性液体と有機溶媒とを混合して用いることにより、イオン性液体の種類に依存せず、高温での耐久性および安全性を確保できることが確認された。このことから、光電変換素子では、電解質含有層30が有機溶媒と共にイオン性液体を含むことにより、耐久性および安全性が確保できることが確認され、特に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比が90/10以下であれば、十分な安全性および耐久性が確保されることが示唆された。
本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1)
上記実施の形態で説明した光電変換素子の具体例として、色素増感型太陽電池を以下の手順で作製した。
まず、作用電極10を作製した。最初に、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板11の片面側に、電解析出により、面積が1cm2 になるように酸化亜鉛よりなる金属酸化物半導体層12を形成した。金属酸化物半導体層12を形成する際には、まず、電解浴液40cm3 と、亜鉛板よりなる対極と、銀/塩化銀電極よりなる参照電極とを備えた電解浴を用意した。この電解浴液としては、エオシンYを30μmol/dm3 、塩化亜鉛を5mmol/dm3 、塩化カリウムを0.09mol/dm3 の濃度で含む水溶液を用いた。次いで、この電解浴液を酸素により15分間バブリングしたのち、その温度を70℃とした電解浴に導電性基板11を浸漬し、バブリングしながら60分間、電位−1.0Vで定電位電解して酸化亜鉛を析出させた。続いて、この導電性基板11を、乾燥させることなく水酸化カリウム水溶液(pH11)に浸漬したのち、エオシンYを水洗し、150℃、30分間乾燥させることにより金属酸化物半導体層12を形成した。最後に、金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を、色素である化1(1)に示した化合物の5μmol/dm3 エタノール溶液に浸漬し、色素13を担持させた。
次に、対向電極20を作製した。縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1cmのF−SnO2 よりなる導電性基板21の片面側に、スパッタリングにより、モリブデン(Mo)よりなる導電層22(100nm厚)を形成した。
次に、電解質含有層30を形成するためのペーストを準備した。まず、有機溶媒としてメトキシプロピオニトリル(MPN)と、イオン性液体として1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(MPImI)とを混合し、電解液を調整した。この際、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(有機溶媒(W1)/イオン性液体(W2)=MPN/MPImI)を50/50(W1/W2)とした。最後に、カーボンブラック(CB)に高分子化合物であるポリアニリン(PA)がコーティングされたポリアニリンカーボン(CB+PA)に対して、電解液を加え混合することにより、ペーストとした。この際、粒子であるCBの電解質含有層30中における含有量を12重量%となるように、ペーストの組成を重量比(CB:電解液:PA)で、12:85:3とした。
次に、作用電極10の色素13が担持された金属酸化物半導体層12の上に、そのペーストをスキージすると共に、作用電極10の色素13を担持した面と、対向電極20の導電層22側の面とを対向させ、厚さ50μmのスペーサを介して貼り合わせることにより、電解質含有層30を形成した。この際、スペーサは、金属酸化物半導体層12の周りを取り囲むように配置した。最後に全体を封止し、色素増感型太陽電池を得た。
(実施例1−2〜1−10)
有機溶媒として、MPNに代えて、プロピレンカーボネート(PC;実施例1−2)、N−メチルピロリドン(NMP;実施例1−3)、ペンタノール(PNOH;実施例1−4)、キノリン(QN;実施例1−5)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF;実施例1−6)、γ−ブチルラクトン(BL;実施例1−7)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE;実施例1−8)、ジメチルスルホキシド(DMSO;実施例1−9)あるいは1,4−ジオキサン(DOX;実施例1−10)を用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
(比較例1)
電解液を調整する際に、有機溶媒を用いずにMPImIのみを用いたことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
これらの実施例1−1〜1−10および比較例1の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例1の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
変換効率を測定する際には、光源にAM1.5(100mW/cm2 )のソーラーシュミレータを用いて、電池特性評価を行った。これにより、色素増感型太陽電池の開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)および形状因子(FF)を測定し、それら開放電圧等の値から変換効率(η;%)求めた。
なお、上記した変換効率を測定する際の手順および条件は、以降の一連の実施例および比較例についても同様である。
Figure 2010009831
表2に示したように、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例1−1〜1−10では、それを含まない比較例1よりも変換効率の相対値が高くなった。この結果は、粒子およびイオン性液体と共に、有機溶媒を用いたことにより、電解質含有層30における導電性が向上したことを表している。
このことから、この色素増感型太陽電池では、半固体状の電解質含有層30が粒子およびイオン性液体と共に、有機溶媒を含むことにより、その有機溶媒の種類に依存せず、変換効率が向上することが確認された。
また、有機溶媒の特性等について着目すると、実施例1−1〜1−10において用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、しかも、官能基として、ニトリル基(=MPN)、炭酸エステル構造(=PC)、環状エステル構造(=BL)、ラクタム構造(=NMP)、アミド基(=DMF)、アルコール基(=PNOH,DEGBE)、スルフィニル基(=DMSO)、ピリジン環(=QL)あるいは環状エーテル構造(=DOX)を有するものであった。また、中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例1−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
このことから、電解質含有層30が、有機溶媒として常温で液体であり、かつ上記した官能基のうちの少なくとも1種を有するものを含むようにすれば、高い変換効率が得られることが示唆された。
(実施例2−1〜2−10)
金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる際に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
(比較例2)
実施例2−1〜2−10と同様に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−10および比較例2の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例2の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表3に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表3に示したように、色素13が化1(2)に示した化合物を含む場合においても、表2の結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例2−1〜2−10では、それを含まない比較例2よりも変換効率の相対値が高くなった。また、この場合に用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環あるいは環状エーテル構造を有するものであった。中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例2−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
(実施例3−1〜3−10)
金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる際に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
(比較例3)
実施例3−1〜3−10と同様に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化1(3)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1と同様の手順を経た。
これらの実施例3−1〜3−10および比較例3の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例3の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表4に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表4に示したように、色素13が化1(3)に示した化合物を含む場合においても、表2の結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例3−1〜3−10では、それを含まない比較例3よりも変換効率の相対値が高くなった。また、この場合に用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環あるいは環状エーテル構造を有するものであった。中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例3−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
(実施例4−1〜4−10)
金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる際に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
(比較例4)
実施例4−1〜4−10と同様に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1と同様の手順を経た。
これらの実施例4−1〜4−10および比較例4の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例4の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表5に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表5に示したように、色素13が化2(1)に示した化合物を含む場合においても、表2の結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例4−1〜4−10では、それを含まない比較例4よりも変換効率の相対値が高くなった。また、この場合に用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環あるいは環状エーテル構造を有するものであった。中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例4−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
(実施例5−1〜5−10)
金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる際に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
(比較例5)
実施例5−1〜5−10と同様に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化2(2)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1と同様の手順を経た。
これらの実施例5−1〜5−10および比較例5の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例5の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表6に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表6に示したように、色素13が化2(2)に示した化合物を含む場合においても、表2の結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例5−1〜5−10では、それを含まない比較例5よりも変換効率の相対値が高くなった。また、この場合に用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環あるいは環状エーテル構造を有するものであった。中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例5−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
(実施例6−1〜6−10)
金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる際に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、実施例1−1〜1−10と同様の手順を経た。
(比較例6)
実施例6−1〜6−10と同様に、色素として化1(1)に示した化合物に代えて、化3(1)に示した化合物を用いたことを除き、比較例1と同様の手順を経た。
これらの実施例6−1〜6−10および比較例6の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例6の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表7に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表7に示したように、色素13が化3(1)に示した化合物を含む場合においても、表2の結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例6−1〜6−10では、それを含まない比較例6よりも変換効率の相対値が高くなった。また、この場合に用いた有機溶媒は、いずれも常温で液体であり、官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環あるいは環状エーテル構造を有するものであった。中でも、有機溶媒としてMPNを用いた実施例6−1において変換効率の相対値が最も高くなった。
上記した表2〜表7の結果から、色素増感型太陽電池では、半固体状の電解質含有層30が粒子およびイオン性液体と共に、有機溶媒を含むことにより、色素13の種類や、その有機溶媒の種類に依存せず、変換効率が向上することが確認された。また、電解質含有層30が、有機溶媒として常温で液体であり、かつ官能基としてニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環および環状エーテル構造のうちの少なくとも1種を有するものを含むようにすれば、高い変換効率が得られることが示唆された。
(実施例7−1〜7−7)
電解質含有層30を形成する際に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(W1/W2)を変更すると共にポリアニリンカーボン(CB+PA)に代えてカーボンブラック(CB)を用いてこれを粒子とし、ペーストの組成を変更したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。この際、有機溶媒(MPN)のイオン性液体(MPImI)に対する重量比(W1/W2)を、1/99(実施例7−1)、3/97(実施例7−2)、5/95(実施例7−3)、25/75(実施例7−4)、50/50(実施例7−5)、75/25(実施例7−6)あるいは90/10(実施例7−7)とした。また、CBのペースト中の含有量を、電解質含有層30中におけるCBの含有量が40重量%となるようにした。
(比較例7)
電解液を調整する際に、有機溶媒を用いずにMPImIのみを用いたことを除き、実施例7−1と同様の手順を経た。
これらの実施例7−1〜7−7および比較例7の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、比較例7の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表8に示した結果が得られた。
Figure 2010009831
表8に示したように、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(W1/W2)を変更した場合においても、表2に示した結果と同様の結果が得られた。すなわち、電解質含有層30が有機溶媒を含む実施例7−1〜7−7では、それを含まない比較例7よりも変換効率の相対値が高くなった。この場合に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(W1/W2)に着目すると、W1/W2が1/99以上90/10以下の範囲内で変換効率の相対値が高くなり、特に25/75以上90/10以下の範囲内において変換効率の相対値が高くなり極大値を示した。
なお、本実施例では示していないが、W1/W2が90/10より大きい場合においても、比較例7よりも変換効率の相対値は高くなる傾向を示した。しかし、この場合には、上記した表1の参考データからも明らかなように、有機溶媒の種類によっては、耐久性および安全性が低下することが推測された。
このことから、この色素増感型太陽電池では、半固体状の電解質含有層30が粒子およびイオン性液体と共に、有機溶媒を含むことにより、有機溶媒の含有量に依存せず、変換効率が向上することが確認された。この場合、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(W1/W2)を1/99以上90/10以下の範囲内にすれば、変換効率が向上するうえ、耐久性および安全性が確保されることが確認された。特に、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比(W1/W2)を25/75以上90/10以下の範囲内にすれば、より変換効率が向上することが確認された。
(実施例8−1〜8−4)
電解質含有層30を形成する際に、CBの電解質含有層30中における含有量を、5重量%(実施例8−1)、10重量%(実施例8−2)、30重量%(実施例8−3)あるいは60重量%(実施例8−4)となるようにペーストを調整したことを除き、実施例7−5と同様の手順を経た。
(比較例8)
電解質含有層30を形成する際に、CBを用いなかったことを除き、実施例8−1と同様の手順を経た。
これらの実施例8−1〜8−4および比較例8の色素増感型太陽電池について、変換効率を測定し、実施例8−1の変換効率を100%として実施例の変換効率の相対値を調べたところ、表9に示した結果が得られた。なお、表9には、実施例7−5についても実施例8−1の変換効率を100%とした場合の相対値を算出し、その結果を併せて示した。
Figure 2010009831
表9に示したように、電解質含有層30が粒子としてCBを含む実施例8−1〜8−4,7−5では、変換効率が測定可能であったが、粒子を含まない比較例8では、変換効率が測定できなかった。この結果は、CBがレドックス電解質の酸化還元反応を触媒していることを表している。また、この場合、CBの電解質含有層30中における含有量の増加に伴い、変換効率の相対値が著しく上昇した。この場合におけるCBの電解質含有層30中における含有量は、5重量%以上60重量%以下の範囲内であった。
このことから、この色素増感型太陽電池では、半固体状の電解質含有層30が粒子およびイオン性液体と共に、有機溶媒を含むことにより、粒子の含有量に依存せず、変換効率が向上することが確認された。この場合には、粒子の電解質含有層30中における含有量が多いほど、より高い変換効率が得られることが示唆され、特にその含有量を5重量%以上60重量%以下の範囲内とすれば、変換効率がより向上することが確認された。
また、上記した表1〜表9の結果から、本発明の光電変換素子では、電解質含有体30が粒子と共に、有機溶媒およびイオン性液体を含むようにしたことにより、色素13の種類や、電解質含有層30における有機溶媒の種類、有機溶媒のイオン性液体に対する重量比、粒子の含有量および高分子化合物等の有無に依存せずに、変換効率を向上させることができることが確認された。本実施例では開示していないが、粒子としてカーボンブラック以外のカーボン粒子や、その他の材料である酸化チタン等からなる粒子を用いた場合についても同様に、有機溶媒を含まない場合と比較して、変換効率が向上することが確認されている。それらの結果と上記した本実施例の結果とを比較した場合には、電解質含有層30が含む粒子として、カーボン粒子を用いた場合において、より高い変換効率が得られることが示唆された。すなわち、カーボン粒子が酸化還元反応を触媒する機能を有するため、その機能を有しない、あるいは機能が低い粒子を用いた場合よりも、電解質含有層30における酸化還元反応がさらに良好となり、変換効率が向上したものと考えられる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本発明の光電変換素子の使用用途は、必ずしも既に説明した用途に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、光センサなどが挙げられる。
本発明の一実施の形態に係る光電変換素子の構成を表す断面図である。 図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋および拡大して表す断面図である。
符号の説明
10…作用電極、11,21…導電性基板、11A…基板、11B…導電層、12…金属酸化物半導体層、12A…緻密層、12B…多孔質層、13…色素、20…対向電極、22…導電層、30…電解質含有層。

Claims (8)

  1. 色素を担持した担持体層を有する電極と、
    前記色素を担持した担持体層の上に形成された半固体状の電解質含有層と
    を備え、
    前記電解質含有層は、粒子と共に、有機溶媒およびイオン性液体を含有する
    ことを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記有機溶媒の前記イオン性液体に対する重量比(有機溶媒/イオン性液体)は、1/99以上90/10以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記粒子の前記電解質含有層中における含有量は、5重量%以上60重量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換素子。
  4. 前記有機溶媒は、常温で液体であり、かつ、官能基として、ニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環および環状エーテル構造のうちの少なくとも1種を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  5. 前記有機溶媒は、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、メトキシアセトニトリルおよびブチロニトリルのうちの少なくとも1種を含む
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  6. 前記粒子は、導電性粒子である
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
  7. 前記導電性粒子は、カーボン粒子である
    ことを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子。
  8. 前記イオン性液体は、ヨウ素塩であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
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