JP7413699B2 - 色素増感型太陽電池および太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感型太陽電池および太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池および太陽電池モジュールに関するものである。
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。中でも、色素増感型太陽電池は、シリコン型太陽電池等に比べて軽量化が期待でき、また、広い照度範囲で安定して発電できることや、大掛かりな設備を必要とすることなく、比較的安価な材料を用いて製造し得ることなどから、注目されている。
ここで、色素増感型太陽電池は、通常、色素増感電極(光電極)と、電解液層と、触媒層を備える対向電極とがこの順に並んでなる構造を有する。
色素増感型太陽電池の電解液層には、酸化状態になった増感色素を還元して再生するための還元剤が含まれる。ここで、電解液層に含まれる還元剤としては、一般に、ヨウ化物が用いられている。そして、色素増感型太陽電池の光電変換効率を高めるため、電解液層中にヨウ素を更に添加することで、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせからなる酸化還元対(酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で相互に変換し得る一対の化学種)が利用されている。
しかしながら、電解液層中にヨウ素を添加した場合、三ヨウ化物イオン(I3 -)の形成により電解液が着色し、色素増感型太陽電池の光電変換効率がかえって低下する虞がある。
そこで近年、電解液中のヨウ素の添加量を低減しつつ、色素増感型太陽電池の高い光電変換効率を実現し得る電解液層の開発が進められている。
例えば、特許文献1では、ヨウ化物イオン等のハロゲンイオンをアニオンとするイオン液体を含み、下記式:
1O(CH2CH2O)n2
(式中、R1、R2は水素または炭素数1~8のアルキル基であり、nは1~10の整数である。)で表されるグリコールエーテルを溶媒とする電解液層を用いることで、ヨウ素の添加量を大幅に削減しても、色素増感型太陽電池の高い光電変換効率を実現し得ることが報告されている。
また、特許文献2では、ヨウ化物の無機塩および所定の構造のベンゾイミダゾール化合物を溶質とし、上述した式中、R1、R2を水素または炭素数1~2のアルキル基とし、nを2~6の整数とした構造で表されるグリコールエーテルおよび/またはγ-ブチロラクトンを溶媒とする電解液層を用いることで、ヨウ素を添加しなくても、色素増感型太陽電池の高い光電変換効率を実現し得ることが報告されている。
特開2011-181361号公報 特許第5401712号公報
ここで、色素増感型太陽電池においては、製造された直後の光電変換効率(以下、「初期光電変換効率」と称することがある。)が高いことが求められる。また、色素増感型太陽電池は、光や熱に長期に亘って曝されることがあるため、耐光性および耐熱性に優れることも求められている。
しかしながら、上記従来技術の電解液層を用いた色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率、耐光性および耐熱性を高いレベルで並立させる点において改善の余地があった。
そこで、本発明は、初期光電変換効率が高く、耐光性および耐熱性に優れた色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
また、本発明は、当該色素増感型太陽電池を備える太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、ヨウ化物と、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒とを含有する電解液層を備え、且つ、光電極および対向電極の少なくとも一方に紫外線吸収層を備える色素増感型太陽電池であれば、初期光電変換効率、耐光性および耐熱性を高いレベルで並立させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の色素増感型太陽電池は、光電極、電解液層、および対向電極をこの順に有する色素増感型太陽電池であって、前記電解液層が、ヨウ化物と溶媒とを含有し、前記溶媒が、下記式(I):
1O(CH2CH2O)n2 (I)
(式中、R1およびR2のいずれか一方は水素原子であり、他方は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、nは2以上5以下の整数である。)で表されるグリコールエーテルを含み、前記光電極および前記対向電極の少なくとも一方が紫外線吸収層を備えることを特徴とする。このように、ヨウ化物と、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒とを含有する電解液層を備え、且つ、光電極および対向電極の少なくとも一方に紫外線吸収層を備える色素増感型太陽電池であれば、初期光電変換効率が高く、且つ、耐光性および耐熱性に優れている。
ここで、本発明の色素増感型太陽電池は、前記グリコールエーテルがトリエチレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましい。グリコールエーテルとしてトリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率および耐熱性を更に高めることができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、前記溶媒がγ-ブチロラクトンを更に含むことが好ましい。溶媒としてγ-ブチロラクトンを更に用いれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池は、前記溶媒中における前記グリコールエーテルおよび前記γ-ブチロラクトンの合計体積に対する前記グリコールエーテルの体積割合が30体積%以上であることが好ましい。溶媒中におけるグリコールエーテルおよびγ-ブチロラクトンの合計体積に対するグリコールエーテルの体積割合が上記所定値以上であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率と耐熱性とを更に高いレベルで両立させることができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、前記ヨウ化物がアルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を含むことが好ましい。ヨウ化物としてアルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を用いれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池は、前記紫外線吸収層の透過限界波長が400nm以上415nm以下の波長域にあり、前記紫外線吸収層の波長傾斜幅が30nm未満であることが好ましい。紫外線吸収層の透過限界波長が上記所定範囲内の波長域にあり、前記紫外線吸収層の波長傾斜幅が上記所定値未満であれば、色素増感型太陽電池の耐光性を更に高めることができる。
なお、本発明において、紫外線吸収層の「透過限界波長」とは、透過率が5%となる波長と、透過率が72%となる波長との中点(平均値)となる波長を指し、分光光度計を用いた透過スペクトル測定により確認することができる。
また、本発明において、紫外線吸収層の「波長傾斜幅」とは、透過率が5%となる波長と、透過率が72%となる波長との間隔(差の絶対値)を指し、分光光度計を用いた透過スペクトル測定により確認することができる。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池は、前記電解液層がヨウ素を更に含有することが好ましい。電解液層がヨウ素を更に含有していれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、前記電解液層中のヨウ素の濃度が0.01mоl/L以上1.00mоl/L以下であることが好ましい。電解液層中のヨウ素の濃度が上記所定範囲内であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率と耐光性とを更に高いレベルで両立させることができる。
なお、本発明において、電解液層中のヨウ素の濃度は、電解液層を調製する際のヨウ素の添加量から換算される濃度、即ち、ヨウ素の仕込み時濃度を指すものとする。
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池モジュールは、上述したいずれかの色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなることを特徴とする。本発明の太陽電池モジュールは、上述した色素増感型太陽電池を備えているため、初期光電変換効率が高く、且つ、耐光性および耐熱性に優れている。
本発明によれば、初期光電変換効率が高く、耐光性および耐熱性に優れた色素増感型太陽電池を提供することができる。
また、本発明によれば、当該色素増感型太陽電池を備える太陽電池モジュールを提供することができる。
本発明の色素増感型太陽電池の一例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(色素増感型太陽電池)
本発明の色素増感型太陽電池は、光電極、電解液層、および対向電極をこの順に有する。即ち、本発明の色素増感型太陽電池は、光電極と、電解液層と、対向電極とを備え、光電極と対向電極との間に電解液層が配置された構造を有する。
そして、本発明の色素増感型太陽電池が有する電解液層は、ヨウ化物と、下記式(I):
1O(CH2CH2O)n2 (I)
(式中、R1およびR2のいずれか一方は水素原子であり、他方は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、nは2以上5以下の整数である。)で表されるグリコールエーテルを含む溶媒と、を含有する。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池は、光電極および対向電極の少なくとも一方が紫外線吸収層を備えている。
本発明の色素増感型太陽電池は、電解液層の溶媒として、上記式(I)で表されるグリコールエーテルを含有しているため、理由は明らかではないが、高い初期光電変換効率と、優れた耐熱性とを両立することができる。
さらに、本発明の色素増感型太陽電池は、溶媒として上記所定のグリコールエーテルを含有する電解液層に加えて、光電極および対向電極の少なくとも一方に紫外線吸収層を備えているため、優れた耐光性を発揮させることができる。
したがって、本発明の色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率、耐光性および耐熱性を高いレベルで並立させることができる。
本発明の色素増感型太陽電池の一例を図1に示す。
図1に示す色素増感型太陽電池は、光電極10、電解液層20、対向電極30がこの順に並んでなる構造を有する。また、矢印は電子の動きを示す。
<光電極>
光電極10は、光電極基板10aと、該光電極基板10aの表面上に形成された多孔質半導体微粒子層10bと、該多孔質半導体微粒子層10bの表面に増感色素が吸着されて形成された増感色素層10cとを備える。また、光電極10は、光電極基板10aの上記多孔質半導体微粒子層10bおよび増感色素層10cが形成される側とは反対側の表面上に紫外線吸収層10fを備えている。
光電極基板10aは、多孔質半導体微粒子層10b等を担持する役割と、集電体としての役割を担うものである。
そして、光電極基板10aは、支持体10dと、該支持体10d上に形成された導電膜10eとからなる。
ここで、支持体10dとしては、軽量で、光電変換効率が高い色素増感型太陽電池を得る観点から、樹脂、ガラス等からなる非導電性のシートを用いることが好ましく、軽量で、光電変換効率が高く、安価な色素増感型太陽電池を得る観点から、透明樹脂からなる非導電性のシートを用いることがより好ましい。
そして、透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、シクロオレフィンポリマー(COP)、透明ポリイミド(PI)等の合成樹脂が挙げられる。なお、これらの透明樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
支持体10dの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、10μm以上10000μm以下である。
支持体10d上に形成される導電膜10eとしては、例えば、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)等の複合金属酸化物からなる導電膜が挙げられる。
なお、導電膜10eの表面抵抗値は、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは150Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下である。
また、導電膜10eの厚みは、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整可能である。
そして、導電膜10eは、スパッタリング法、コーティング法等の公知の方法により、支持体10d上に形成することができる。
多孔質半導体微粒子層10bは、半導体微粒子を含有する多孔質状の層である。多孔質状の層であることで、増感色素の吸着量が増え、変換効率が高い色素増感型太陽電池を得ることができる。
半導体微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物の粒子が挙げられる。なお、半導微粒子の体積平均粒子径は、特に限定されず、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
多孔質半導体微粒子層10bの厚みは、特に限定されないが、20μm以下の厚みであることが好ましい。
多孔質半導体微粒子層10bは、特に限定されることはなく、公知の方法により形成することができる。例えば、上述した半導体微粒子を含むペーストを光電極基板10aの導電膜10e側の面に塗布した後、乾燥させることにより、多孔質半導体微粒子層10bを形成することができる。
増感色素層10cは、光によって励起されて多孔質半導体微粒子層10bに電子を渡し得る化合物(増感色素)が、多孔質半導体微粒子層10bの表面に吸着されてなる層である。
増感色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素等の有機色素;鉄、銅、ルテニウム等の金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体等の金属錯体色素;等が挙げられる。
増感色素層10cは、例えば、増感色素の溶液中に多孔質半導体微粒子層10bを浸漬する方法や、増感色素の溶液を多孔質半導体微粒子層10b上に塗布する方法等の公知の方法により形成することができる。
<<紫外線吸収層>>
紫外線吸収層10fは、太陽などの光源から照射される光のうち紫外線を吸収し得る材料からなる層である。そして、光電極10が紫外線吸収層10fを備えることで、色素増感型太陽電池の耐光性を十分に高めることができる。
紫外線吸収層10fを構成する材料としては、紫外線を吸収し得るものであれば、特に限定されず、例えば、酸化セリウム(IV)(CeO2)等を含む鉛ガラスを用いることができる。
また、紫外線吸収層10fとしては、市販のシャープカットフィルターを用いることができる。そして、紫外線吸収層10fとして好適に使用し得るシャープカットフィルターのガラスタイプとしては、L-40などが挙げられる。また、プラスチックタイプとしては、紫外線吸収剤を含むポリプロピレンやポリカーボネート等が挙げられる。なお、紫外線吸収剤としては、特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。
なお、紫外線吸収層10fの透過限界波長は、400nm以上415nm以下の波長域にあることが好ましく、紫外線吸収層10fの波長傾斜幅は30nm未満であることが好ましい。紫外線吸収層10fの透過限界波長が上記所定範囲内の波長域にあり、且つ、波長傾斜幅が30nm未満であれば、本発明の色素増感型太陽電池の耐光性を更に高めることができる。
なお、紫外線吸収層10fの厚みは、100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。紫外線吸収層10fの厚みが上記下限値以上であれば、色素増感型太陽電池の耐光性を更に高めることができる。一方、紫外線吸収層10fの厚みが上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
なお、図1に示す色素増感型太陽電池の光電極10は、光電極基板10aの支持体10d側の表面上に紫外線吸収層10dを備えているが、本発明の色素増感型太陽電池はこれに限定されることはなく、例えば、光電極基板10aの支持体10dとして、上述した紫外線吸収層10fと同じ紫外線吸収層を用いてもよい。即ち、光電極基板10aの支持体10dが紫外線吸収層を兼ねていてもよい。
また、図1では、光電極10が紫外線吸収層10fを備える例を示したが、本発明の色素増感型太陽電池は、これに限定されることはなく、光電極10および対向電極30の少なくとも一方が紫外線吸収層を備えていればよい。
例えば、本発明の色素増感型太陽電池は、後述の対向電極30が紫外線吸収層を備えていてもよい。対向電極が紫外線吸収層を備える場合も、色素増感型太陽電池の耐光性を十分に高めることができる。
対向電極30が紫外線吸収層を備える場合、後述の対向電極30の支持体30a側の表面上に、上述した紫外線吸収層10fと同じ紫外線吸収層が形成されていてもよいし、対向電極30の支持体30aとして、上述した紫外線吸収層10fと同じ紫外線吸収層を用いてもよい。
そして、色素増感型太陽電池の耐光性を更に高める観点から、紫外線吸収層は、色素増感型太陽電池の光が入射する側の面に配置されていることが好ましい。なお、色素増感型太陽電池の「光が入射する側の面」とは、例えば、光電極10の表面(即ち、電解液層20側とは反対側の面)であってもよいし、対向電極30の表面(即ち、電解液層20側とは反対側の面)であってもよいし、光電極10の表面および対向電極30の表面の両方であってもよい。特に、耐光性と光電変換効率とを両立させる観点から、紫外線吸収層は、少なくとも光電極10の表面に配置されていることが好ましく、光電極10の表面および対向電極30の表面の両方に配置されていることがより好ましい。
<電解液層>
電解液層20は、光電極10と対向電極30とを分離するとともに、電荷移動を効率良く行わせるための層である。
そして、本発明の色素増感型太陽電池の電解液層20は、ヨウ化物と、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒とを含有している。また、電解液層20は、任意で、ヨウ化物および上記溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。
<<ヨウ化物>>
電解液層20中のヨウ化物は、酸化状態になった増感色素を還元して再生するためのヨウ化物イオンを提供する。
そして、ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化物イオンをアニオンとして含む化合物であれば、特に限定されず、例えば、無機塩およびイオン液体などを用いることができる。
ここで、無機塩としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物;ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等のアルカリ土類金属ヨウ化物;ヨウ化アンモニウム;などを用いることができる。なお、これらの無機塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液層20中の上記無機塩の濃度は、0.01mоl/L以上であることが好ましく、0.05mоl/L以上であることがより好ましく、1.00mоl/L以下であることが好ましく、0.5mоl/L以下であることがより好ましい。電解液層20中の上記無機塩の濃度が上記所定範囲内であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
また、イオン液体としては、室温(25℃)付近において液状となる、いわゆる室温溶融塩を用いることができる。
そして、イオン液体としては、アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を用いることが好ましい。イオン液体として、アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を用いれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩としては、ジメチルイミダゾリウムヨージド、メチルプロピルイミダゾリウムヨージド(1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムヨージド)、メチルブチルイミダゾリウムヨージド、メチルへキシルイミダゾリウムヨージド、およびブチルメチルイミダゾリウムヨージド(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド)などを用いることができる。なお、これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩としては、特開2011-181361号公報に記載のアルキル基が鎖中にオキシエチレン基を有するイミダゾリウムのヨウ化物塩を用いることもできる。
中でも、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高める観点から、アルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩としては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージドを用いることが好ましい。
なお、上述したアルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電解液層20中の上記イオン液体の濃度は、0.05mоl/L以上であることが好ましく、0.10mоl/L以上であることがより好ましく、5.00mоl/L以下であることが好ましく、2.00mоl/L以下であることがより好ましい。電解液層20中の上記イオン液体の濃度が上記所定範囲内であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高めることができる。
<<溶媒>>
電解液層20中の溶媒は、所定の構造のグリコールエーテルを含む。また、電解液層20中の溶媒は、所定の構造のグリコールエーテル以外のその他の溶媒を更に含んでいてもよい。
<<所定の構造のグリコールエーテル>>
電解液層20中の溶媒として含まれるグリコールエーテルは、下記式(I):
1O(CH2CH2O)n2 (I)
(式中、R1およびR2のいずれか一方は水素原子であり、他方は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、nは2以上5以下の整数である。)で表される。電解液層20が溶媒として上記所定の構造のグリコールエーテルを含有することで、色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率と、耐熱性とを高いレベルで両立することができる。
上記所定の構造のグリコールエーテルとしては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル(R1およびR2のいずれか一方が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、n=2であるもの);トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル等のトリエチレングリコールモノアルキルエーテル(R1およびR2のいずれか一方が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、n=3であるもの);テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル等のテトラエチレングリコールモノアルキルエーテル(R1およびR2のいずれか一方が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、n=4であるもの);ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノプロピルエーテル等のペンタエチレングリコールモノアルキルエーテル(R1およびR2のいずれか一方が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、n=5であるもの);などが挙げられる。なお、これらのグリコールエーテルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
中でも、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率および耐熱性を更に高める観点から、上記所定の構造のグリコールエーテルとしては、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル(R1およびR2のいずれか一方が炭素数1以上3以下のアルキル基であり、n=3であるもの)を用いることが好ましく、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを用いることが特に好ましい。
<<その他の溶媒>>
電解液層20中の溶媒は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、上記所定の構造のグリコールエーテル以外のその他の溶媒を更に含んでいてもよい。
その他の溶媒としては、特に限定されないが、γ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。電解液層20中の溶媒が上記所定の構造のグリコールエーテルに加えてγ-ブチロラクトンを更に含んでいれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
ここで、溶媒として上記所定の構造のグリコールエーテルとγ-ブチロラクトンとを併用する場合、溶媒中における所定の構造のグリコールエーテルの体積割合は、所定の構造のグリコールエーテルおよびγ-ブチロラクトンの合計体積を100体積%として、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、45体積%以上であることが更に好ましく、80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることが更に好ましい。溶媒中における所定の構造のグリコールエーテルの体積割合が上記下限値以上であれば、色素増感型太陽電池の耐熱性を十分に高めることができる。一方、溶媒中における所定の構造のグリコールエーテルの体積割合が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高めることができる。
<<その他の成分>>
電解液層20は、任意で、上述したヨウ化物および溶媒以外のその他の成分を更に含有する。
その他の成分としては、本発明の所望の効果が得られる範囲内であれば、特に限定されず、例えば、ヨウ素、ベンゾイミダゾール化合物、グアニジンチオシアン酸塩などを用いることができる。
[ヨウ素]
電解液層20は、その他の成分として、ヨウ素を更に含有することが好ましい。電解液層20がヨウ素を更に含有していれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。また、電解液層20がヨウ素を更に含有していれば、色素増感型太陽電池の電流電圧特性にみられる履歴現象(ヒステリシス)の発生を抑制することができる。即ち、電解液層20にヨウ素を更に添加することで、色素増感型太陽電池のヒステリシスの発生を抑えることができる。
なお、電解液層20中に含まれるヨウ素(I2)は、上述したヨウ化物に由来するヨウ化物イオン(I-)と反応することで、三ヨウ化物イオン(I3 -)および五ヨウ化物イオン(I5 -)などのイオンとして存在していてもよい。
そして、電解液層20中のヨウ素の濃度は、0.01mоl/L以上であることが好ましく、0.02mоl/L以上であることがより好ましく、0.04mоl/L以上であることが一層好ましく、1.00mоl/L以下であることが好ましく、0.80mоl/L以下であることがより好ましい。電解液層20中のヨウ素の濃度が上記下限値以上であれば、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高めることができる。また、電解液層20に含ませるヨウ素の濃度が上記下限値以上であれば、色素増感型太陽電池のヒステリシスの発生を抑えることができる。一方、電解液層20中のヨウ素の濃度が上記上限値以下であれば、色素増感型太陽電池の耐光性を更に高めることができる。
[ベンゾイミダゾール化合物]
電解液層20は、その他の成分として、ベンゾイミダゾール化合物を更に含有してもよい。電解液層20がベンゾイミダゾール化合物を更に含有していれば、逆電流が抑制され、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を更に高めることができる。
ベンゾイミダゾール化合物としては、特開2011-181361号公報に記載のものを用いることができる。中でも、色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高める観点から、N-ブチルベンゾイミダゾール(1-ブチルベンゾイミダゾール)を用いることが好ましい。
そして、電解液層20中のベンゾイミダゾール化合物の濃度は、0.01mоl/L以上であることが好ましく、0.02mоl/L以上であることがより好ましく、0.03mоl/L以上であることが更に好ましく、1.00mоl/L以下であることが好ましく、0.80mоl/L以下であることがより好ましい。電解液層20中のベンゾイミダゾール化合物の濃度が上記所定の範囲内であれば色素増感型太陽電池の初期光電変換効率を一層高めることができる。
<<電解液層の形成方法>>
なお、電解液層20は、上述した成分を含む溶液(電解液)を、光電極10の増感色素層10cまたは対向電極30の触媒層30bの表面上に塗布または滴下したり、光電極10と対向電極30とを積層させてなるセルの隙間に注入したりすることで、形成することができる。
<対向電極>
対向電極30は、支持体30aと、支持体30aの一方側(電解液層20側)の表面上に形成された導電膜30cと、該導電膜30c上に形成された触媒層30bとを備えている。
ここで、対向電極30の支持体30aは、触媒層30bおよび導電膜30cを担持する役割を担うものである。
支持体30aとしては、軽量で、光電変換効率が高い色素増感型太陽電池を得る観点から、樹脂、ガラス等からなる非導電性のシートを用いることが好ましく、軽量で、光電変換効率が高く、安価な色素増感型太陽電池を得る観点から、透明樹脂からなる非導電性のシートを用いることがより好ましい。
なお、透明樹脂としては、光電極10における支持体10dの構成材料として上述した透明樹脂と同じものを用いることができる。
また、支持体30aの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、10μm以上10000μm以下である。
導電膜30cとしては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン等の金属;酸化スズ、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)等の複合金属酸化物;カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素材料;などの材料からなる導電膜が挙げられる。導電膜30cがカーボンナノチューブからなる場合、当該導電膜30cは後述の触媒層30bを兼ねることもでき、触媒層30bを省略することができる。なお、これらの材料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、導電膜30cの表面抵抗値は、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは150Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下である。
また、導電膜30cの厚みは、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整可能である。
そして、導電膜30cは、スパッタリング法、コーティング法等の公知の方法により、支持体10d上に形成することができる。
対向電極30の触媒層30bは、色素増感型太陽電池の電解液層における酸化還元反応を促進させるためのものである。
そして、触媒層30bとしては、特に限定されないが、初期光電変換効率を更に高める観点から、白金や、カーボンナノチューブを含む触媒層を用いることが好ましい。
なお、カーボンナノチューブを含む触媒層としては、例えば、特開2014-120219号公報に記載のカーボンナノチューブを含む触媒層を用いることができる。
<光電変換のメカニズム>
図1に示す色素増感型太陽電池においては、次のようなリサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。すなわち、(i)増感色素層10cの増感色素が光を受けて励起されると、増感色素の電子が取り出される。(ii)この電子は、導電膜10eを介して光電極10から出て、外部の回路40を通って対向電極30に移動し、さらに触媒層30bを介して、電解液層20に移動する。(iii)電解液層20に含まれる還元剤(ヨウ化物)により、酸化状態の増感色素が還元されて、増感色素が再生され、再び光を吸収できる状態に戻る。
<色素増感型太陽電池の製造方法>
本発明の色素増感型太陽電池は、特に限定されず、既知の方法により製造することができる。例えば、図1に示した色素増感型太陽電池は、下記の方法により製造することができる。
まず、光電極10の増感色素層10cが対向電極30の触媒層30bと向き合うようにして、光電極10と対向電極30とを、中心部をくり抜いたスペーサーを介して重ね合わせた後、加熱により融着させて両電極を貼り合わせる。次いで、対向電極30側に設けた注液口から、上述した所定の成分を含む電解液を入れて電解液層20を形成する。そして、紫外線硬化樹脂で注液口を塞ぎ、スライドガラスで蓋をした後、紫外線を照射して樹脂を固めることで色素増感太陽電池を製造することができる。
<その他の部材等>
以上、一例を用いて説明したが、本発明の色素増感型太陽電池は、図1に示すものに限定されるものではなく、上述した光電極10、電解液層20、および対向電極30以外のその他の部材を有していてもよいものとする。
また、本発明の色素増感型太陽電池は、太陽を光源とするものに限定されず、例えば屋内照明を光源とするものであってもよい。
(太陽電池モジュール)
本発明に係る太陽電池モジュールは、前述した色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなるものである。
ここで、本発明の太陽電池モジュールは、例えば、本発明に係る色素増感型太陽電池を平面状または曲面上に配列し、各電池間に非導電性の隔壁を設けるとともに、各電池の光電極や対向電極を導電性の部材を用いて電気的に接続することで得ることができる。
そして、本発明に係る太陽電池モジュールは、本発明に係る色素増感型太陽電池を用いているので、初期光電変換効率が高く、耐光性および耐熱性に優れている。
なお、太陽電池モジュールの形成に使用する色素増感型太陽電池の数は特に限定されず、目的の電圧に応じて適宜決定することができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における各種の測定および評価については、以下の方法に従って行なった。
<初期変換効率>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)光源を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mW/cm2(JIS C8912のクラスA))に調整した。各実施例および比較例で作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、下記の操作により電流電圧特性の測定を行った。
1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化後、0.05秒後から0.15秒後の値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8V~0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を、光電流とした。
そして、上記の電流電圧特性の測定結果より初期光電変換効率(%)を求め、下記の基準に従って評価した。
A:3.5%以上
B:2.5%以上3.5%未満
C:1.5%以上2.5%未満
D:1.5%未満
<耐光性>
上述した初期変換効率の測定に用いた色素増感型太陽電池をメタルハライドランプ式ソーラシミュレータ(セリック株式会社製)内に設置して、1sunの光照射下で500時間静置する耐光性試験を行った。
耐光性試験後の色素増感型太陽電池を用いて、上述の初期変換効率の測定と同様にして、耐久試験後の光電変換効率(%)を求めた。
そして、上述で得られた初期光電変換効率および耐久試験後の光電変換効率の値を用いて、下記式(X)により耐光性試験後の性能保持率(%)を算出した。
耐光性試験後の性能保持率(%)=(耐光性試験後の光電変換効率/初期光電変換効率)×100 ・・・ (X)
得られた耐久試験後の性能保持率から、下記の基準に従って、色素増感型太陽電池の耐光性を評価した。なお、耐光性試験後の性能保持率が高いほど、色素増感型太陽電池は耐光性に優れていることを示す。
A:90%以上
B:80%以上90%未満
C:70%以上80%未満
D:70%未満
<耐熱性>
上述した初期変換効率の測定に用いた色素増感型太陽電池を60℃、35%RHの小型環境試験機(エスペック株式会社製)内に設置して、500時間静置する耐熱性試験を行った。
耐熱性試験後の色素増感型太陽電池を用いて、上述の初期変換効率の測定と同様にして、耐熱性試験後の光電変換効率(%)を求めた。
そして、上述で得られた初期光電変換効率および耐熱性試験後の光電変換効率の値を用いて、下記式(Y)により耐熱性試験後の性能保持率(%)を算出した。
耐熱性試験後の性能保持率(%)=(耐熱性試験後の光電変換効率/初期光電変換効率)×100 ・・・ (Y)
得られた耐熱試験後の性能保持率から、下記の基準に従って、色素増感型太陽電池の耐熱性を評価した。なお、耐熱性試験後の性能保持率が高いほど、色素増感型太陽電池は耐熱性に優れていることを示す。
A:90%以上
B:80%以上90%未満
C:80%未満
<色素退色>
上記耐光性試験後に色素増感型太陽電池の光電極の色味を目視確認し、下記の基準に従って、色素退色を評価した。
A:色素退色無し
B:色素退色有り
<ヨウ素退色>
上記耐光性試験後に色素増感型太陽電池の電解液層を目視確認し、下記の基準に従って、ヨウ素退色を評価した。
A:ヨウ素退色無し
B:ヨウ素退色有り
<ヒステリシス特性>
上記耐光性試験後の色素増感型太陽電池を用いて電流電圧特性を測定し、バイアス電圧を順方向と逆方向でステップさせたときに得られる電流電圧曲線にヒステリシスが発生しているかを確認した。評価は、下記の基準に従って実施した。なお、色素増感型太陽電池におけるヒステリシスの発生を抑制する観点から、上記評価は、CよりもBであることが好ましく、BよりもAであることがより好ましいものとする。
A:ヒステリシスの発生が認められないか、または僅かに認められる
B: ヒステリシスの発生が認められる
(実施例1)
<光電極の製造>
支持体であるポリエチレンナフタレート(PEN)製のフィルム(厚み:125μm)上に、スパッタ処理によりインジウム-スズ酸化物(ITO)からなる導電膜(厚み:200nm)が形成されてなるフィルム(ITO-PENフィルム、導電膜側の表面抵抗値:15Ω/□)の導電膜側の面上に、低温成膜用の酸化チタンペースト(ペクセル・テクノロジーズ社製「PECC-C01-06」)を、ベーカー式アプリケーターを用いて、塗膜の厚みが100μmとなるように塗布した。得られた塗膜を常温で10分間乾燥させた後、150℃のホットプレート上でさらに10分間加熱乾燥して、ITO-PENフィルムと5μmの厚みの多孔質半導体微粒子層とからなる積層体を得た。
この積層体を幅2.0cm、長さ2.0cmのサイズにカットし、さらに当該積層体の任意の辺の4mm内側より、多孔質半導体微粒子層を直径6mmの円になるように削って成形した。その後、当該積層体を増感色素溶液〔増感色素:ルテニウム錯体(N719、ソラロニクス社製)、濃度:0.3mM、溶媒:アセトニトリル、tert-ブタノール〕に、40℃で2時間浸漬させることで、増感色素を多孔質半導体微粒子層に吸着させた。浸漬処理の後、積層体をアセトニトリルで洗浄し、乾燥させることで、多孔質半導体微粒子層の表面に増感色素が吸着されてなる増感色素層を形成した。さらに、当該増感色素層が形成された側とは反対側の面に、紫外線吸収層として、紫外線吸収剤を含むUVカットフィルム(透過限界波長408nm、波長傾斜幅16nm、厚み500μm)を重ねることで、紫外線吸収層を備える光電極を得た。
<対向電極の製造>
支持体であるガラス基板(厚み:1.0mm)上に、スパッタ処理によりインジウム-スズ酸化物(ITO)からなる導電膜(厚み:200nm)が形成されてなるガラス基板(ITOガラス、導電膜側の表面抵抗値:15Ω/□)上に、さらにスパッタ処理により白金層(厚み:10nm)を形成して、白金を触媒層とする白金電極を作製した。
この白金電極を幅2.0cm、長さ2.0cmのサイズにカットし、電極中央に穴を開けて電解液を導入するための注液口を設けて対向電極を得た。
<電解液の調製>
ヨウ素、無機塩としてのヨウ化リチウム、イオン液体としての1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMImI)を、各成分の濃度が下記の通りになるように、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)およびγ-ブチロラクトン(GBL)の混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))に溶解して、電解液を得た。
<<電解液の組成>>
ヨウ素:0.04mol/L
ヨウ化リチウム:0.10mol/L
BMImI:0.40mol/L
<色素増感型太陽電池の製造>
三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミランフィルム」(厚み25μm)を、18mm四方に切り取り、さらに中心部を直径9mmにくり抜き、スペーサーフィルムを作製した。スペーサーフィルムを、上記で作製した光電極と対向電極で挟み込み、110℃に加熱したホットプレート上で融着させ両電極を貼り合わせた。対向電極に設けた注液口から電解液を入れ、紫外線硬化樹脂で注液口を塞ぎ、スライドガラスで蓋をしたのち、紫外線を照射して樹脂を固めて色素増感型太陽電池を得た。
得られた色素増感型太陽電池を用いて、初期光電変換効率、耐光性、耐熱性、色素退色、ヨウ素退色、ヒステリシス特性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の電解液の調製において、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0.1mol/Lに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1の電解液の調製において、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0.02mol/Lに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1の電解液の調製において、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMImI)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1の電解液の調製において、ヨウ素を使用せず、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0mol/Lに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))から、TGMEのみに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))から、トリエチレングリコール(TG)のみに変更すると共に、光電極の製造において、増感色素層とは反対側の面に紫外線吸収層を重ねず、紫外線吸収層を備えない光電極を色素増感型太陽電池の製造に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
比較例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコール(TG)のみから、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)のみに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコール(TG)のみから、トリエチレングリコールジメチルエーテル(TGDE)のみに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
比較例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコール(TG)のみから、γ-ブチロラクトン(GBL)のみに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
比較例4の電解液の調製において、ヨウ素を使用せず、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0mol/Lに変更したこと以外は、比較例4と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例1の光電極の製造において、増感色素層とは反対側の面に紫外線吸収層を重ねず、紫外線吸収層を備えない光電極を色素増感型太陽電池の製造に用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例7)
比較例6の電解液の調製において、ヨウ素を使用せず、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0mol/Lに変更したこと以外は、比較例6と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例8)
比較例6の電解液の調製において、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMImI)を使用しなかったこと以外は、比較例6と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例9)
比較例6の電解液の調製において、ヨウ素を使用せず、得られる電解液中のヨウ素の濃度を0.04mol/Lから0mol/Lに変更すると共に、BMImIを使用しなかったこと以外は、比較例6と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例10)
実施例1の電解液の調製において、BMImIを使用しないと共に、使用する溶媒をトリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))から、GBLのみに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例11)
実施例1の電解液の調製において、使用する溶媒をトリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))から、GBLのみに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光電極、対向電極、電解液、および色素増感型太陽電池を調製および製造し、各種の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1中、
「TG」は、トリエチレングリコールを示し、
「TGME」は、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを示し、
「TGDE」は、トリエチレングリコールジメチルエーテルを示し、
「GBL」は、γ-ブチロラクトンを示し、
「TGME/GBL」は、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(TGME)とγ-ブチロラクトン(GBL)との混合溶媒(TGME:GBL=1:1(体積比))を示し、
「LiI」は、ヨウ化リチウムを示し、
「BMImI」は、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージドを示す。
Figure 0007413699000001
表1より、ヨウ化物と、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒とを含有する電解液層を備え、且つ、光電極および対向電極の少なくとも一方に紫外線吸収層を備える実施例1~6の色素増感型太陽電池であれば、初期光電変換効率、耐光性および耐熱性を高いレベルで並立させ得ることが分かる。
一方、電解液層に、ヨウ化物を用いているが、所定の構造のグリコールエーテルではなく、トリエチレングリコールを含む溶媒を用い、且つ、光電極および対向電極のいずれにも紫外線吸収層を備えていない比較例1の色素増感型太陽電池は、耐熱性は良好であるが、初期光電変換効率が低く、耐光性にも劣ることが分かる。
また、ヨウ化物と、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒とを含有する電解液層を備えているものの、光電極および対向電極のいずれにも紫外線吸収層を備えていない比較例2、6~9の色素増感型太陽電池は、少なくとも耐光性に劣ることが分かる。
さらに、電解液層に、ヨウ化物を用いているが、所定の構造のグリコールエーテルに代えて、所定の構造を有しないグリコールエーテルであるトリエチレングリコールジメチルエーテルを含む溶媒を用い、且つ、光電極および対向電極のいずれにも紫外線吸収層を備えていない比較例3の色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率および耐光性は良好であるが、耐熱性に劣ることが分かる。
また、電解液層に、ヨウ化物を用いているが、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒に代えて、γ-ブチロラクトンを溶媒として用い、且つ、光電極および対向電極のいずれにも紫外線吸収層を備えていない比較例4および5の色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率および耐光性は良好であるが、耐熱性に劣ることが分かる。
さらに、電解液層にヨウ化物を用い、且つ、光電極および対向電極の少なくとも一方に紫外線吸収層を備えているが、電解液層の溶媒として、所定の構造のグリコールエーテルを含む溶媒に代えて、γ-ブチロラクトンを用いた実施例10および11の色素増感型太陽電池は、初期光電変換効率および耐光性は良好であるが、耐熱性に劣ることが分かる。
本発明によれば、初期光電変換効率が高く、耐光性および耐熱性に優れた色素増感型太陽電池を提供することができる。
また、本発明によれば、当該色素増感型太陽電池を備える太陽電池モジュールを提供することができる。
10 光電極
10a 光電極基板
10b 多孔質半導体微粒子層
10c 増感色素層
10d 支持体
10e 導電膜
10f 紫外線吸収層
20 電解液層
30 対向電極
30a 支持体
30b 触媒層
30c 導電膜
40 外部の回路

Claims (8)

  1. 光電極、電解液層、および対向電極をこの順に有する色素増感型太陽電池であって、
    前記電解液層が、ヨウ化物と溶媒とを含有し、
    前記溶媒が、下記式(I):
    O(CHCHO) (I)
    (式中、RおよびRのいずれか一方は水素原子であり、他方は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、nは2以上5以下の整数である。)
    で表されるグリコールエーテルと、γ-ブチロラクトンとを含み、
    前記光電極および前記対向電極の少なくとも一方が紫外線吸収層を備える、色素増感型太陽電池。
  2. 前記グリコールエーテルがトリエチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記溶媒中における前記グリコールエーテルおよび前記γ-ブチロラクトンの合計体積に対する前記グリコールエーテルの体積割合が30体積%以上である、請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記ヨウ化物がアルキルイミダゾリウムのヨウ化物塩を含む、請求項1~のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記紫外線吸収層の透過限界波長が400nm以上415nm以下の波長域にあり、
    前記紫外線吸収層の波長傾斜幅が30nm未満である、請求項1~のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記電解液層がヨウ素を更に含有する、請求項1~のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  7. 前記電解液層中のヨウ素の濃度が0.01mоl/L以上1.00mоl/L以下である、請求項1~のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  8. 請求項1~のいずれかに記載の色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなる太陽電池モジュール。
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