JP2007200833A - 色素増感型太陽電池用電解液、色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極及び色素増感型太陽電池 - Google Patents

色素増感型太陽電池用電解液、色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極及び色素増感型太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高温下でも、電池の発火・引火を防止できる色素増感型太陽電池用電解液及び酸化物半導体電極を提供する。
【解決手段】カチオン部及びアニオン部からなるイオン液体とレドックス電解質とを含有し、前記イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電解液7、並びに、導電性基板と、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層4と、該酸化物半導体層4に吸着された有機色素とからなる色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極6において、前記酸化物半導体層4が、更に前記イオン液体を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極6である。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池用電解液及び色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極、並びに該電解液及び/又は酸化物半導体電極を備えた色素増感型太陽電池に関し、特に発火・引火の危険性が抑制された色素増感型太陽電池用電解液及び色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極に関するものである。
近年、省エネルギー、資源の有効利用、環境汚染の防止等の面から、太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池が注目され、開発が進められている。現在、一般的に用いられている太陽電池は、光電変換材料として、結晶性シリコン、アモルファスシリコンを用いたpn接合型太陽電池である。しかしながら、pn接合型太陽電池においては、結晶性シリコン等の光電変換材料の製造に多大なエネルギーを要するため、省エネルギー化等の上記目的を達成することができない。また、光電変換材料の製造に多大なエネルギーが必要なため、結果として、pn接合型太陽電池は、高価なものと成らざるを得ない。
これに対して、光電変換材料として、シリコン等を用いずに、有機色素で増感された酸化物半導体を用いた色素増感型太陽電池が知られている。該色素増感型太陽電池には、大量生産され且つ比較的安価な酸化物半導体及び有機色素を用いることができるため、原材料の面で、上記シリコン等を用いたpn接合型太陽電池に比べて有利な点が多い。
上記色素増感型太陽電池としては、例えば、酸化亜鉛粉末を圧縮成形し、1300℃で1時間焼結して形成したディスク状焼結体の表面に、有機色素としてローズベンガルを吸着させてなる酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池が提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、該太陽電池は、電流/電圧曲線における0.2Vの起電圧時の電流値が約25μA程度と非常に低く、実用化には程遠いものであった。
これに対し、酸化物半導体表面に遷移金属錯体等の分光増感色素層を有するもの(特許文献1参照)、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に遷移金属錯体等の分光増感色素層を有するもの(特許文献2参照)、酸化物半導体微粒子集合体の焼結物からなる酸化物半導体膜を用いた色素増感型太陽電池(特許文献3参照)が知られており、これらの色素増感型太陽電池においては、光電変換効率が大幅に向上している。
ネイチャー,268(1976),p.402 特開平1−220380号公報 特表平5−504023号公報 特開平10−92477号公報
しかしながら、上記色素増感型太陽電池は、太陽光下での使用中に太陽光で加熱されるおそれがあり、該色素増感型太陽電池の電解液としては、一般に有機溶媒とレドックス電解質とを含む電解液が用いられるため、高温下では、電解液中の有機溶媒が気化・分解してガスを発生したり、発生したガスによって、電池が発火・引火する等の可能性があった。また、有機色素が吸着された酸化物半導体電極は、酸化物半導体層に有機色素溶液を含浸させて形成されるため、有機色素溶液中の溶媒が、上記電解液中の溶媒と同様に気化・分解してガスを発生したり、発生したガスによって、電池が発火・引火する等の可能性があった。更に、従来の色素増感型太陽電池においては、酸化物半導体層と電解液との濡れ性が良くないため、界面抵抗が大きく、電子移動の妨げとなり、太陽電池特性が良くないという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高温下でも、電池の発火・引火を防止できる色素増感型太陽電池用電解液及び酸化物半導体電極を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる色素増感型太陽電池用電解液及び/又は酸化物半導体電極を備えた、安全性の高い色素増感型太陽電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体を色素増感型太陽電池用電解液に添加したり或いは該イオン液体とレドックス電解質のみから色素増感型太陽電池用電解液を構成することで、電解液の発火・引火を防止でき、また、酸化物半導体電極の作製において、酸化物半導体層に含浸させる有機色素溶液に上記イオン液体を加えたり或いは該イオン液体と有機色素のみから有機色素溶液を構成することで、酸化物半導体電極の発火・引火を防止でき、そして、これら色素増感型太陽電池用電解液及び/又は酸化物半導体電極を用いることで、色素増感型太陽電池の安全性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の色素増感型太陽電池用電解液は、カチオン部及びアニオン部からなるイオン液体と、レドックス電解質とを含有し、前記イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする。
本発明の色素増感型太陽電池用電解液は、前記イオン液体及びレドックス電解質のみからなることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用電解液の好適例においては、前記イオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有する。ここで、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン液体としては、下記一般式(I):
(NPR1 2)n ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
−N+2 3- ・・・ (II)
(式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり;nは3〜15を表す]で表されるイオン液体が特に好ましい。また、前記一般式(I)中のnは、3又は4であることが好ましく、前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることが好ましい。
また、本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極は、導電性基板と、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層と、該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなり、前記酸化物半導体層が、更にカチオン部及びアニオン部からなるイオン液体を含み、該イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極の好適例においては、前記イオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有する。ここで、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン液体としては、上記一般式(I)で表されるイオン液体が特に好ましい。また、前記一般式(I)中のnは、3又は4であることが好ましく、前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極は、前記有機色素及び前記イオン液体を含む有機色素溶液を、前記導電性基板上に配設された酸化物半導体層に含浸させて、前記有機色素を該酸化物半導体層に吸着させてなることが好ましい。ここで、前記有機色素溶液は、有機色素及びイオン液体のみからなることが好ましい。
更に、本発明の色素増感型太陽電池は、導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記電解液が上記色素増感型太陽電池用電解液であることを特徴とする。
本発明の他の色素増感型太陽電池は、導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記酸化物半導体電極が上記色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極であることを特徴とする。
本発明の色素増感型太陽電池は、導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記電解液が上記色素増感型太陽電池用電解液であり、前記酸化物半導体電極が上記色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極であることが好ましい。
本発明によれば、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体を含有し、発火・引火の可能性が低い色素増感型太陽電池用電解液を提供することができる。また、酸化物半導体電極の作製において、カチオン部にリン及び窒素を含むイオン液体を含有する有機色素溶液を酸化物半導体層に含浸させることで、発火・引火の可能性を低減した酸化物半導体電極を提供することができる。更に、これら色素増感型太陽電池用電解液及び/又は酸化物半導体電極を用いることで、安全性が大幅に向上した色素増感型太陽電池を提供することができる。
<色素増感型太陽電池用電解液>
以下に、本発明の色素増感型太陽電池用電解液を詳細に説明する。本発明の色素増感型太陽電池用電解液は、カチオン部及びアニオン部からなるイオン液体と、レドックス電解質とを含有し、前記イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする。本発明の色素増感型太陽電池用電解液に含まれるイオン液体のカチオン部は、分解して、窒素ガスやリン酸エステル等を発生するため、発生した窒素ガスの作用によって、電解液が燃焼する危険性が低減されると共に、発生したリン酸エステル等の作用によって、電池を構成する高分子材料の連鎖分解が抑制されるため、電池の発火・引火の危険性を効果的に低減することができる。また、上記イオン液体のカチオン部がハロゲンを含む場合、万が一の燃焼時にはハロゲンが活性ラジカルの捕捉剤として機能し、電解液の燃焼の危険性を低減する。更に、上記イオン液体のカチオン部が有機置換基を含む場合、燃焼時にセパレーター上に炭化物(チャー)を生成するため酸素の遮断効果もある。
本発明の色素増感型太陽電池用電解液を構成するイオン液体は、少なくとも融点が50℃以下であり、融点が20℃以下であることが好ましい。また、該イオン液体は、カチオン部及びアニオン部からなり、該カチオン部及びアニオン部が静電気的引力で結合している。ここで、該イオン液体としては、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン性化合物が好ましく、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物が更に好ましい。
上記一般式(I)の化合物は、リン−窒素間二重結合を複数有する環状ホスファゼン化合物の一種であるため、高い燃焼抑制効果を有すると共に、R1の少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であるため、イオン性を有する。
上記一般式(I)中のR1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基であり、但し、少なくとも一つのR1は、上記一般式(II)で表されるイオン性置換基である。ここで、R1におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、フッ素が特に好ましい。また、R1における一価の置換基としては、アルコキシ基、アルキル基、アリールオキシ基、アリール基、カルボキシル基、アシル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基、プロポキシ基等や、二重結合を含むアリルオキシ基やビニルオキシ基等、更にはメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基等が挙げられ、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリールオキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素で置換されていることが好ましく、該ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が好適に挙げられる。
上記一般式(I)のnは、3〜15であり、原料物質の入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(II)で表される置換基は、−NR2 3とXとが主として静電気的引力によって結合してなる。そのため、式(II)のイオン性置換基を有する式(I)の化合物は、イオン性を有する。
上記一般式(II)中のR2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよい。ここで、R2における一価の置換基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、上記アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、複数のR2が互いに結合して環を形成する場合において、3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等のアザシクロアルカン環や、該アザシクロアルカン環のメチレン基がカルボニル基に置き換わった構造のアザシクロアルカノン環等が挙げられ、3つのR2が結合して形成する環としては、ピリジン環等が挙げられる。なお、上記一価の置換基中の水素元素は、ハロゲン元素等で置換されていてもよい。
上記一般式(II)中のX-は一価のアニオンを表す。式(II)のX-における一価のアニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等が挙げられる。
上記式(I)のイオン性化合物において、R1は、少なくとも一つが上記式(II)のイオン性置換基であるが、イオン性化合物の不燃性の観点から、その他がフッ素であることが好ましい。
上記イオン性化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、下記一般式(III):
(NPR3 2)n ・・・ (III)
[式中、R3は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR3は塩素であり;nは3〜15を表す]で表される環状ホスファゼン化合物と、下記一般式(IV):
NR2 3 ・・・ (IV)
[式中、R2は、上記と同義である]で表される1級、2級又は3級のアミンとを反応させることで、下記一般式(V):
(NPR4 2)n ・・・ (V)
[式中、R4は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR4は、下記一般式(VI):
−N+2 3Cl- ・・・ (VI)
(式中、R2は上記と同義である)で表されるイオン性置換基であり;nは上記と同義である]で表されるイオン性化合物(即ち、上記一般式(I)で表され、上記一般式(II)中のX-がCl-であるイオン性化合物)を生成させることができる。
更に、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物の塩素イオンは、適宜他の一価のアニオンと置換することができ、例えば、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物と下記一般式(VII):
+- ・・・ (VII)
[式中、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価のアニオンを表す]で表される塩(イオン交換剤)とを反応(イオン交換反応)させることで、上記一般式(I)で表されるイオン性化合物を生成させることができる。
なお、上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物と上記一般式(IV)で表されるアミンとを単に混合するだけでも、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物を生成させることができるが、生成した式(V)のイオン性化合物が不安定で単離が難しいことがあるため、水相及び有機相からなる二相系に、上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物と、上記一般式(IV)で表されるアミンとを加え、反応させて、上記一般式(V)で表されるイオン性化合物を生成させることが好ましい。この方法では、式(III)の環状ホスファゼン化合物及び式(IV)のアミンは有機相に主として存在し、一方、生成する式(V)の化合物はイオン性を有するため主として水相に存在する。そのため、水相と有機相とを分離した後、水相の水を公知の方法で乾燥させることで、式(V)のイオン性化合物を単離することができ、単離された式(V)のイオン性化合物は、大気下でも安定に存在する。
上記一般式(III)において、R3は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR3は塩素である。ここで、式(III)中のR3が塩素である部分に式(IV)のアミンが付加するため、出発物質である式(III)の環状ホスファゼン化合物の骨格のリンに結合する塩素の数を調整することで、式(V)のイオン性化合物中の式(VI)で表されるイオン性置換基の導入数をコントロールすることができる。
上記一般式(III)のR3において、ハロゲン元素としては、塩素の他に、フッ素、臭素等が好適に挙げられ、これらの中でも、塩素及びフッ素が好ましい。一方、R3における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(III)において、nは3〜15であり、入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(III)で表される環状ホスファゼン化合物は、例えば、式(III)中のR3が総て塩素である市販のホスファゼン化合物を出発物質として、総ての塩素をフッ素化剤によりフッ素化した後、目的とする塩素置換部位にアルコキシ基やアミン基等を導入した後、HClやホスゲン等の塩素化剤により再び塩素化を行う方法や、使用する式(III)中のR3が総て塩素である市販のホスファゼン化合物に対して導入するフッ素の当量を計算した上で、必要量のフッ素化剤を添加する方法等で合成することができる。ここで、再塩素化における塩素化剤やフッ素化におけるフッ素化剤の使用量や反応条件を変えることで、式(III)のR3における塩素数をコントロールすることができる。
上記一般式(IV)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(IV)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(IV)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。式(IV)で表されるアミンとして、具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等の環状3級アミン、ジメチルアニリン等のジアルキル置換アニリンやピリジン等の芳香族3級アミン、アニリン等の芳香族1級アミン等が挙げられ、これらの中でも、3級アミンが好ましい。
上記一般式(V)において、R4は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR4は、上記一般式(VI)で表されるイオン性置換基である。R4におけるハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。なお、式(IV)のアミンの使用量等を調整することで、R4の一部を塩素とすることができる。一方、R4における一価の置換基としては、R1における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができる。また、式(V)中のnは3〜15であり、原料の入手容易性の観点から、3〜4が好ましく、3が特に好ましい。
上記一般式(VI)において、R2は、上記一般式(II)中のR2と同義で、それぞれ独立して一価の置換基又は水素であり、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、該R2は互いに結合して環を形成してもよい。式(VI)のR2における一価の置換基としては、式(II)のR2における一価の置換基の項で例示したものを同様に挙げることができ、また、式(VI)の3つのR2のいずれか2つが結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環としては、式(II)の3つのR2のいずれか2つが互いに結合して形成する環及び3つのR2が結合して形成する環の項で例示したものを同様に挙げることができる。
式(V)のイオン性化合物の製造にあたって、式(IV)のアミンの使用量は、目的とするアミンの導入量に応じて適宜選択でき、例えば、式(III)の環状ホスファゼン化合物中のR3における塩素1molあたり、1〜2.4molの範囲が好ましい。
また、式(III)の環状ホスファゼン化合物と式(IV)のアミンとの反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、20℃〜80℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記水相及び有機相からなる二相系において、有機相に使用する有機溶媒としては、水に対して混和性が無く、式(III)の環状ホスファゼン化合物と式(IV)のアミンを溶解できるものが好ましく、具体的には、クロロホルム、トルエン等の極性の低い溶媒が好ましい。また、上記水相及び有機相の使用量は、特に限定されるものではなく、水相の体積は、式(III)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して0.2〜5mLの範囲が好ましく、有機相の体積は、式(III)の環状ホスファゼン化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
上記一般式(VII)において、A+は一価の陽イオンを表し、X-は一価の陰イオンを表す。式(VII)のA+における一価の陽イオンとしては、Ag+、Li+等が挙げられる。また、式(VII)のX-における一価の陰イオンとしては、Cl-以外の一価の陰イオン、具体的には、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -の他、(CF3SO2)2-、(C25SO2)2-、(C37SO2)2-、(CF3SO2)(C25SO2)N-、(CF3SO2)(C37SO2)N-、(C25SO2)(C37SO2)N-等のイミドイオンが挙げられる。ここで、A+がLi+である場合、X-としてはイミドイオンが好ましい。小さなイオン半径を有するLi+とは対照的に、上記イミドイオンは大きなイオン半径を有するため、陽イオンと陰イオンとのイオン半径の違いによる影響(ソフト・ハード塩基・酸の関係)で良好に反応し、置換反応が進むからである。一方、A+がAg+である場合は、ほぼ総ての陰イオンを使用することができる。式(VII)の塩としてAg+-を使用した場合、AgClが沈降するため、不純物の除去も簡単に行うことができる。
式(I)のイオン性化合物の製造にあたって、式(VII)の塩の使用量は、式(V)のイオン性化合物の塩素イオンの量に応じて適宜選択でき、例えば、式(V)のイオン性化合物の塩素イオン1molあたり、1〜1.5molの範囲が好ましい。
また、式(V)のイオン性化合物と式(VII)の塩との反応における反応温度は、特に制限されるものではないが、室温〜50℃の範囲が好ましく、室温でも十分に反応が進行する。また、反応圧力も特に限定されず、大気圧下で実施することができる。
上記式(V)のイオン性化合物と式(VII)の塩との反応は、水相で行うことが好ましい。なお、上記式(V)のイオン性化合物と、式(VII)で表され且つA+がAg+である銀塩との反応では、副生成物として塩化銀が生成するが、該塩化銀は、水に対する溶解度が非常に低いため、反応を水相で行う場合、副生成物の分離が容易となる。目的物質である式(I)のイオン性化合物の水相からの単離は、水相の水を公知の方法で蒸発させればよい。上記水相の体積は、特に限定されるものではないが、式(V)のイオン性化合物1mLに対して2〜5mLの範囲が好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用電解液に用いるレドックス電解質としては、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。これらレドックス電解質は、公知の方法によって得ることができ、例えば、I-/I3 -系のレドックス電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩若しくはイミダゾリウム塩或いはLiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物を単独或いはヨウ素と混合することによって調製でき、Br-/Br3 -系レドックス電解質は、臭素のアンモニウム塩若しくはイミダゾリウム塩或いはLiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物を単独或いは臭素と混合することによって調製できる。これらレドックス電解質の中でも、I-/I3 -系のレドックス電解質が好ましい。本発明の色素増感型太陽電池用電解液中のレドックス電解質の濃度は、0.1〜2mol/L(M)の範囲が好ましく、0.5〜1.5mol/Lの範囲が更に好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用電解液は、前記イオン液体及びレドックス電解質のみからなることが好ましいが、目的に応じて、色素増感型太陽電池用電解液に使用される公知の添加剤等を含有することができる。ここで、電解液中の上記イオン液体の含有量は、電解液の安全性の観点から、3体積%以上が好ましい。
<色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極>
次に、本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極を詳細に説明する。本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極は、導電性基板と、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層と、該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなり、前記酸化物半導体層が、更にカチオン部及びアニオン部からなるイオン液体を含み、該イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする。本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極は、例えば、有機色素及び上記イオン液体を含む有機色素溶液を、導電性基板上に配設された酸化物半導体層に含浸させて、有機色素を酸化物半導体層に吸着させて製造される。本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極の酸化物半導体層に含まれるイオン液体のカチオン部は、分解して、窒素ガスやリン酸エステル等を発生するため、発生した窒素ガスの作用によって、有機色素溶液が燃焼する危険性が低減されると共に、発生したリン酸エステル等の作用によって、電池を構成する高分子材料の連鎖分解が抑制されるため、電池の発火・引火の危険性を効果的に低減することができる。また、上記イオン液体のカチオン部がハロゲンを含む場合、万が一の燃焼時にはハロゲンが活性ラジカルの捕捉剤として機能し、有機色素溶液の燃焼の危険性を低減する。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極において、酸化物半導体層に含ませるイオン液体は、上述した色素増感型太陽電池用電解液に用いるイオン液体と同じであり、カチオン部にリン−窒素間二重結合を有するイオン液体が好ましく、上記一般式(I)で表されるイオン液体が特に好ましい。一般式(I)で表されるイオン液体については、電解液の項で述べたのと同様であり、電解液に含有させるのに好適なイオン液体は、酸化物半導体層に含有させるイオン液体としても好適である。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極に用いる導電性基板は、透明であることが好ましく、導電性を有さない透明基板上に導電性酸化物層が配設されてなることが好ましい。ここで、導電性酸化物としては、ITO、SnO2、フッ素ドープSnO2(一般にFTOと呼ばれる)等が好ましい。また、導電性を有さない透明基板の材料としては、ガラスや透明プラスチック等が挙げられる。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極に用いる酸化物半導体層の材料としては、従来公知のものを用いることができ、具体的には、Ti、Sn、Nb、Zn、In等の遷移金属の酸化物や、SrTiO3等のペロブスカイト系酸化物が好ましく、これらの中でもTiO2が特に好ましい。上記酸化物半導体は、微粒子であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、比表面積が5m2/g以上であることが好ましく、5m2/g以上であることが更に好ましい。上記酸化物半導体層の厚さは、1μm〜1mmの範囲が好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極に用いる有機色素としては、従来公知のものを用いることができ、太陽光を広い波長範囲に渡って吸収できるものが好ましい。該有機色素としては、ビピリジルRu錯体、ターピリジルRu錯体、フェナントロリンRu錯体、ビシンコニン酸Ru錯体等のRu錯体、クロロフィル、ローダミン、エオシン、フロキシン、フルオレセイン、エリスロシン、ウラニン、ローズベンガル等が挙げられる。これら有機色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極の作製に用いる有機色素溶液は、上記イオン液体及び上記有機色素のみからなることが好ましいが、目的に応じて、公知の添加剤等を含有することができる。ここで、有機色素溶液中の上記イオン液体の含有量は、有機色素溶液の安全性の観点から、3体積%以上が好ましい。なお、有機色素溶液中の有機色素の濃度は、有機色素溶液100mL中、有機色素が1〜10000mg含まれることが好ましく、10〜500mg含まれることが更に好ましい。
<色素増感型太陽電池>
次に、本発明の色素増感型太陽電池を詳細に説明する。本発明の色素増感型太陽電池は、導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備え、少なくとも電解液に上述した本発明の色素増感型太陽電池用電解液を用いるか、酸化物半導体電極に上述した本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極を用いることを特徴とし、電解液に上述した本発明の色素増感型太陽電池用電解液を用い、且つ酸化物半導体電極に上述した本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極を用いることが好ましい。本発明の色素増感型太陽電池には、上述の色素増感型太陽電池用電解液及び/又は色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極が用いられているため、高温下でも、電解液及び/又は酸化物半導体層中に含まれる有機色素溶液の発火・引火の危険性が抑制されている。
本発明の色素増感型太陽電池には、上述した本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極を用いることが好ましいが、電解液に上述した本発明の色素増感型太陽電池用電解液を用いる場合、酸化物半導体電極として、公知の酸化物半導体電極を用いてもよい。
本発明の色素増感型太陽電池に用いる対向電極は、導電性を有さない透明基板上に導電性酸化物層が配設され、該導電性酸化物層の上に、レドックス電解質中のイオンの還元反応を促進する触媒を配置したものが好ましい。ここで、導電性酸化物としては、ITO、SnO2等が好ましい。また、導電性を有さない透明基板の材料としては、ガラスや透明プラスチック等が挙げられる。更に、レドックス電解質中のイオンの還元反応を促進する触媒としては、Pt、Ru、Rh、Pd等が挙げられ、これらの中でもPtが好ましい。これら触媒は、スパッタリング等により、導電性酸化物層上に形成することができる。また、スパッタリングで触媒を付着させた後、更に、塩化白金酸水溶液等を塗布し、焼成還元してもよい。
本発明の色素増感型太陽電池には、上述した本発明の色素増感型太陽電池用電解液を用いることが好ましいが、酸化物半導体電極に上述した本発明の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極を用いる場合、電解液として、公知の電解液を用いてもよい。
以下に、本発明の色素増感型太陽電池を、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の色素増感型太陽電池の一実施態様の部分断面図である。図示例の色素増感型太陽電池は、透明基板1A,1B上に導電性酸化物層2A,2Bがそれぞれ配置されている。更に、導電性酸化物層2A上には、レドックス電解質中のイオンの還元反応を促進する触媒3が配置されている。一方、導電性酸化物層2B上には、酸化物半導体層4が配置されており、該酸化物半導体層4には、有機色素が吸着されている。また、透明基板1A、導電性酸化物層2A及び触媒3からなる対向電極5と、透明基板1B、導電性酸化物層2B及び酸化物半導体層4からなる酸化物半導体電極6とが、電解液7を介して対向配置されており、対向電極5の触媒3と、酸化物半導体電極6の酸化物半導体層4とが電解液7に接触している。本発明の色素増感型太陽電池においては、酸化物半導体層4及び/又は電解液7中に上記イオン液体が含まれるため、電池の発火・引火の危険性が低減されている。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(イオン液体合成例1)
水 5gとクロロホルム 5gからなる二相系を調製し、該二相系にトリエチルアミン 5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。該二相系をスターラーで撹拌すると、反応に伴って発熱が観測された。3分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ白色結晶が生成し、更に減圧乾燥して白色結晶 5.2g(収率 53%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.2gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体A 1.8g(収率 79%)を得た。得られたイオン液体Aを重水に溶解させて、1H-NMR、31P-NMR及び19F-NMRで分析したところ、該イオン液体Aは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが−N+(CH2CH2)3BF4 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図2に、31P-NMRの結果を図3に、19F-NMRの結果を図4に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007200833
(イオン液体合成例2)
水 5gとクロロホルム 5gからなる二相系を調製し、該二相系にN-メチル-2-ピロリドン 5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。該二相系をスターラーで撹拌すると、反応に伴って発熱が観測された。3分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ白色結晶が生成し、更に減圧乾燥して白色結晶 3.6g(収率 35.7%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体B 1.21g(収率 53.3%)を得た。得られたイオン液体Bを重水に溶解させて、1H-NMRで分析したところ、該イオン液体Bは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが上記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、式(II)中のX-がBF4 -で、R2の一つがメチル基で、他の二つのR2が互いに結合して窒素原子と共に2-アザシクロペンタノン環を形成しているイオン性化合物であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図5に、31P-NMRの結果を図6に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007200833
(イオン液体合成例3)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にピリジン5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 5.2g(収率 57%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体C 1.4g(収率 60%)を得た。得られたイオン液体Cを重水に溶解させて、1H-NMRで分析したところ、該イオン液体Cは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+55BF4 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図7に、31P-NMRの結果を図8に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007200833
(イオン液体合成例4)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にアニリン5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 4.8g(収率 54%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体D 1.6g(収率 72%)を得た。得られたイオン液体Dを重水に溶解させて、1H-NMRで分析したところ、該イオン液体Dは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+265BF4 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図9に、31P-NMRの結果を図10に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007200833
(イオン液体合成例5)
水 15mLとクロロホルム 15mLからなる二相系を調製し、該二相系にジメチルアニリン5mLと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物 5mLとを順次滴下した。その後、該二相系を冷却しながら撹拌すると、クロロホルム相に白色結晶が沈殿した。常温に戻して撹拌すると該白色結晶は消えた。なお、クロロホルム相は、反応前は無色であったが、反応後は白濁した。ピペットを用いて水相を採取し、エバポレートした後、真空ポンプを用いて水を留去したところ、白色結晶 5.1g(収率 52%)を得た。次に、得られた白色結晶 2g及びAgBF4 2.3gを水 20mLに溶解させ、30分間の撹拌の後に、水相を採取し、水を蒸発させたところ透明の液体が残留し、更に減圧乾燥してイオン液体E 1.5g(収率 65%)を得た。得られたイオン液体Eを重水に溶解させて、1H-NMRで分析したところ、該イオン液体Eは、上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ一つが−N+(CH3)265BF4 -であることを確認した。生成物の1H-NMRの結果を図11に、31P-NMRの結果を図12に、反応スキームを下記に示す。
Figure 2007200833
(イオン液体合成例6)
上記イオン液体合成例1と同様にして合成した、トリエチルアミンと、上記一般式(III)で表され、式中のnが3であって、6つのR3のうち1つが塩素で且つ5つがフッ素である環状ホスファゼン化合物との反応物 2gにLiCF3SO3を1.5g反応させ、更に1g反応させた後、ろ過してイオン液体F[上記一般式(I)で表され、式中のnが3であって、6つのR1のうち5つがフッ素で且つ1つが−N+(CH2CH2)3・CF3SO3 -であるイオン液体]1.54g(収率 61%)を得た。
(実施例1)
上記のようにして合成したイオン液体Aに、ヨウ素を30mM(mmol/L)、ヨウ化カリウムを0.3M(mol/L)になるように溶解させて、電解液を調製した。得られた電解液に対して、下記の方法で安全性を評価した。結果を表1に示す。
(1)電解液の安全性
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法で、大気環境下において着火した炎の燃焼挙動から電解液の安全性を評価した。その際、着火性、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象についても観察した。具体的には、UL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーに電解液 1.0mLを染み込ませて、127mm×12.7mmの試験片を作製して行った。ここで、試験炎が試験片に着火しない場合(燃焼長:0mm)を「不燃性」、着火した炎が25mmラインまで到達せず且つ落下物にも着火が認められない場合を「難燃性」、着火した炎が25〜100mmラインで消火し且つ落下物にも着火が認められない場合を「自己消火性」、着火した炎が100mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
次に、アセトニトリルに、Ru(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)2(NCS)2錯体を3×10-4Mになるように溶解させて有機色素溶液を調製した。また、TiO2コロイド溶液(TiO2:11質量%含有)1mLに対して、ポリエチレングリコール(PEG:Mw=20000)0.05gを加え、乳鉢ですりつぶして均一なペーストを作製した。次に、ガラス基板にITOを塗布して導電性基板を作製した。該導電性基板のITO側にメンディングテープを基板上に四角形の枠が形成されるように貼り付け、更に、枠の厚みが100μm程度になるようにメンディングテープを重ねて貼り付けた。該基板上の枠内に上記ペーストを入れ、室温(20℃)で10分程乾燥させた。乾燥後、大気圧下、500℃で30分間焼成し、放冷した後、室温(20℃)でTiO2表面に0.1MのTiCl4水溶液を一滴滴下し、密閉容器中で一晩放置した。その後、基板上のTiO2層を蒸留水で洗浄し、乾燥させ、更に、450℃で30分間焼成した後、放冷した。放冷により80℃程度になったところで、TiO2付き基板を上記有機色素溶液中に浸漬し、一晩浸漬して、酸化物半導体電極を作製した。
一方、ガラス基板に酸化スズを塗布し、該酸化スズ層の表面に、Ar雰囲気下、加熱せずスパッタリング法で白金を付着させ対向電極を作製した。
上記Ru色素が固定されたTiO2酸化物半導体電極に上記電解液を数滴滴下し、中央部を四角く切り取った厚さ25μmのスペーサーフィルムを介して、酸化物半導体電極と対向電極とを対向させ、クリップで2箇所固定して、色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に対して、下記の方法で、電池特性を測定した。結果を表1に示す。
(2)電池特性
擬似太陽光(AM1.5、198mW/cm2)を照射し、短絡光電流、光電圧、形状因子(フィルファクター)、変換効率を測定した。なお、AM(Air mass:エア・マス)とは、大気通過量を意味し、AM1.0とは真上(入射角90度)から入射した光を意味し、AM1.5とはその通過量が1.5倍(入射角41.8度)での到達光を意味する。
(実施例2〜6)
上記のようにして合成したイオン液体B〜Fに、ヨウ素を30mM(mmol/L)、ヨウ化カリウムを0.3M(mol/L)になるように溶解させて、電解液を調製した。得られた電解液に対して、上記の方法で安全性を評価した。また、該電解液を用いて、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
アセトニトリル/3-メチル-2-オキサゾリジノン(体積比=50/50)混合溶液に、ヨウ素を30mM(mmol/L)、ヨウ化カリウムを0.3M(mol/L)になるように溶解させて電解液を調製した。得られた電解液に対して、上記の方法で安全性を評価した。また、該電解液を用いて、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2007200833
表1の結果から、実施例で用いた電解液は、安全性が高いことが分る。また、実施例の色素増感型太陽電池は、十分な電池特性を有することが分る。
(実施例7)
上記のようにして合成したイオン液体Aに、Ru(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)2(NCS)2錯体を3×10-4Mになるように溶解させて、有機色素溶液を調製した。得られた有機色素溶液の安全性を上記の電解液の安全性と同様にして評価した。次に、上記のようにして得られた有機色素溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして酸化物半導体電極を作製した。また、実施例1と同様にして対向電極を作製した。更に、アセトニトリル/3-メチル-2-オキサゾリジノン(体積比=50/50)混合溶液に、ヨウ素を30mM(mmol/L)、ヨウ化カリウムを0.3M(mol/L)になるように溶解させて、電解液を調製した。次に、該電解液と、上記酸化物半導体電極及び対向電極とを用い、実施例1と同様の方法で、色素増感型太陽電池を作製した。得られた色素増感型太陽電池に対して、上記の方法で、電池特性を測定した。結果を表2に示す。
(実施例8〜11)
上記のようにして合成したイオン液体B〜Eに、Ru(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)2(NCS)2錯体を3×10-4Mになるように溶解させて、有機色素溶液を調製した。得られた有機色素溶液に対して、上記の方法で安全性を評価した。また、該有機色素溶液を用いて、実施例7と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2)
アセトニトリルに、Ru(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)2(NCS)2錯体を3×10-4Mになるように溶解させて、有機色素溶液を調製した。得られた有機色素溶液に対して、上記の方法で安全性を評価した。また、該有機色素溶液を用いて、実施例7と同様にして色素増感型太陽電池を作製し、電池特性を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2007200833
表2の結果から、実施例で用いた有機色素溶液は、安全性が高いことが分る。また、実施例の色素増感型太陽電池は、十分な電池特性を有することが分る。
本発明の色素増感型太陽電池の一実施態様の部分断面図である。 イオン液体合成例1で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例1で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例1で得られた生成物の19F-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例2で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例3で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例3で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例4で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例4で得られた生成物の31P-NMRの結果である。 イオン液体合成例5で得られた生成物の1H-NMRの結果である。 イオン液体合成例5で得られた生成物の31P-NMRの結果である。
符号の説明
1A,1B 透明基板
2A,2B 導電性酸化物層
3 触媒
4 酸化物半導体層
5 対向電極
6 酸化物半導体電極
7 電解液

Claims (16)

  1. カチオン部及びアニオン部からなるイオン液体と、レドックス電解質とを含有する色素増感型太陽電池用電解液において、
    前記イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池用電解液。
  2. 前記イオン液体及びレドックス電解質のみからなることを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電解液。
  3. 前記イオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有することを特徴とする請求項1に記載の色素増感型太陽電池用電解液。
  4. 前記イオン液体が、下記一般式(I):
    (NPR1 2)n ・・・ (I)
    [式中、R1は、それぞれ独立してハロゲン元素又は一価の置換基で、少なくとも一つのR1は、下記一般式(II):
    −N+2 3- ・・・ (II)
    (式中、R2は、それぞれ独立して一価の置換基又は水素で、但し、少なくとも一つのR2は水素ではなく、また、R2は互いに結合して環を形成してもよく;X-は一価のアニオンを表す)で表されるイオン性置換基であり;nは3〜15を表す]で表されることを特徴とする請求項3に記載の色素増感型太陽電池用電解液。
  5. 前記一般式(I)中のnが3又は4であることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池用電解液。
  6. 前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることを特徴とする請求項4に記載の色素増感型太陽電池用電解液。
  7. 導電性基板と、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層と、該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極において、
    前記酸化物半導体層が、更にカチオン部及びアニオン部からなるイオン液体を含み、該イオン液体のカチオン部がリンと窒素を含有することを特徴とする色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  8. 前記酸化物半導体層中に含まれるイオン液体のカチオン部がリン−窒素間二重結合を有することを特徴とする請求項7に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  9. 前記イオン液体が、上記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項8に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  10. 前記一般式(I)中のnが3又は4であることを特徴とする請求項9に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  11. 前記一般式(I)中のR1は、少なくとも一つが前記一般式(II)で表されるイオン性置換基で、その他がフッ素であることを特徴とする請求項9に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  12. 前記有機色素及び前記イオン液体を含む有機色素溶液を、前記導電性基板上に配設された酸化物半導体層に含浸させて、前記有機色素を該酸化物半導体層に吸着させてなる請求項7に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  13. 前記有機色素溶液が前記有機色素及び前記イオン液体のみからなることを特徴とする請求項12に記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極。
  14. 導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記電解液が請求項1〜6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電解液であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  15. 導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記酸化物半導体電極が請求項7〜13のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  16. 導電性基板、該導電性基板上に配設された酸化物半導体層及び該酸化物半導体層に吸着された有機色素とからなる酸化物半導体電極と、対向電極と、電解液とを備えた色素増感型太陽電池において、前記電解液が請求項1〜6のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用電解液であり、前記酸化物半導体電極が請求項7〜13のいずれかに記載の色素増感型太陽電池用酸化物半導体電極であることを特徴とする色素増感型太陽電池。
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WO2011019019A1 (ja) * 2009-08-10 2011-02-17 ダイキン工業株式会社 色素増感型太陽電池用の電解液および色素増感型太陽電池

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