JP5195908B2 - 減衰力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両のサスペンション装置などに用いられるダンパの減衰力特性を制御する減衰力制御装置に関する。
車体などのバネ上部材を支持する車両のサスペンション装置は、バネ上部材とバネ下部材との間に介装されたバネおよびダンパを備える。ダンパの減衰力特性を可変制御する減衰力制御装置が知られている。かかる減衰力制御装置は、例えばスカイフック制御理論や非線形H制御理論に基づき、バネ上部材の振動状態に応じてダンパの減衰力特性を可変制御する。
特開平6−247117号公報には、サスペンション装置のダンパが伸びる行程と縮む行程のいずれか一方の行程側の減衰力特性を可変制御するときは、他方の行程側の減衰力特性が低減衰力特性に固定される構造を有するダンパを備えたサスペンション装置が記載されている。このサスペンション装置のダンパの減衰力特性を制御する減衰力制御手段は、バネ上部材の上下方向の速度(バネ上速度)と、サスペンション装置の振動速度、すなわちバネ下部材の上下方向の速度に対するバネ上部材の上下方向の速度であるバネ上−バネ下相対速度との積が正であるときに、減衰力特性がバネ上速度をバネ上−バネ下相対速度で除した値に比例する特性となるように、ダンパの減衰力特性を可変制御する。また、バネ上速度とバネ上−バネ下相対速度との積が負であるときに、減衰力特性がバネ上速度に比例する特性となるように、ダンパの減衰力特性を可変制御する。
バネ上共振周波数(例えば1Hz)付近の低周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力された場合には、スカイフック制御理論や非線形H制御理論に基づきダンパの減衰力特性を可変制御することにより、車両の乗り心地が向上する。
また、バネ上共振周波数よりも高い中/高周波数帯域、特にバネ上共振周波数とバネ下共振周波数(例えば11Hz)の間の周波数帯域である中周波数帯域(例えば4〜8Hz)の振動がサスペンション装置に入力された場合においては、ダンパにより発生される減衰力が高いほどバネ上部材への振動の伝達率が大きくなって、乗り心地が悪化する。したがって、上述の可変制御中にこのような中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力された場合、従来においては、ダンパの減衰力特性が、比較的低い(好ましくは最も低い)減衰力を発生する低減衰力特性に固定される。このような低減衰力固定制御により、車両の乗り心地の悪化が抑えられる。
ダンパの減衰力特性の制御モードが可変制御から低減衰力固定制御に変化する場合や、低減衰力固定制御から可変制御に変化する場合には、減衰力特性を変更するためのアクチュエータやバルブなどにより構成される減衰力特性変更手段が作動する。したがって、制御モードの変化が頻繁に起こる場合、減衰力特性変更手段の作動頻度が増加する。また、可変制御時には、車両の乗り心地を良好にするために、ダンパの減衰力特性が比較的高い減衰力を発生する高減衰力特性の範囲内にて可変制御されている場合もある。このような場合に制御モードが変化したときは、減衰力特性変更手段は、減衰力特性を高減衰力特性から低減衰力特性へ、あるいは低減衰力特性から高減衰力特性へと大きく変化させなければならない。よって、減衰力特性変更手段の作動量が増大する。減衰力特性変更手段の作動頻度の増加や作動量の増大は、減衰力特性変更手段の耐久性の悪化を招く。
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、減衰力特性の制御モードが変化する場合、特にサスペンション装置に中/高周波数帯域の振動が入力されているか否かに基づいて制御モードが変化する場合に、減衰力特性変更手段の作動頻度の増加や作動量の増大を抑えることができる減衰力制御装置を提供することにある。
本発明の特徴は、バネおよびダンパを備え、バネ上部材とバネ下部材との間に介装され、バネ上部材を支持する複数のサスペンション装置のダンパの減衰力特性を制御する減衰力制御装置において、ダンパの減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段と、サスペンション装置の上下方向の振動速度を表すバネ上−バネ下相対速度を取得するバネ上−バネ下相対速度取得手段と、複数のサスペンション装置により支持される位置におけるバネ上部材の上下方向の速度の総和であるバネ上速度和を取得するバネ上速度和取得手段と、バネ上速度和とバネ上−バネ下相対速度との積の正負を判別する正負判別手段と、正負判別手段により積が正であると判別された場合に、バネ上部材の振動状態に応じてダンパの減衰力特性が変化するように、減衰力特性変更手段の作動を制御する減衰力特性制御手段と、正負判別手段により積が負であると判別された場合に、減衰力特性変更手段の作動を禁止する作動禁止手段と、を備えた減衰力制御装置としたことにある。
また、減衰力特性制御手段は、非線形H制御理論に基づいて、サスペンション装置のダンパが発生すべき制御目標の減衰力である要求減衰力を計算する要求減衰力計算手段と、要求減衰力計算手段により計算された要求減衰力に基づいてダンパの減衰力特性を決定し、決定した減衰力特性に応じた信号を減衰力特性変更手段に出力する減衰力特性決定手段と、を備え
本発明によれば、複数のサスペンション装置による支持位置におけるバネ上部材の上下方向の速度の総和(バネ上速度和)と、サスペンション装置の振動速度、すなわち、サスペンション装置の一端側に連結されたバネ上部材の上下方向の速度とサスペンション装置の他端側に連結されたバネ下部材の上下方向の速度との差であるバネ上−バネ下相対速度との積の正負が正負判別手段により判別される。この積が正である場合は、その積の計算に用いたバネ上−バネ下相対速度により振動しているサスペンション装置のダンパの減衰力特性がバネ上部材の振動状態に応じて変化するように、その減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段の作動が制御される。これにより減衰力特性が可変制御される。一方、この積が負である場合には、その積の計算に用いたバネ上−バネ下相対速度により振動しているサスペンション装置のダンパの減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段の作動が禁止される。これにより、上記積が負である間は、減衰力特性が減衰力特性変更手段の作動禁止直前の減衰力特性から変化しないように、減衰力特性が制御される。この制御は、本明細書において作動禁止制御と呼称される。
したがって、正負判別手段の判別結果に基づいて減衰力特性の制御モードが上記可変制御から上記作動禁止制御に変化した場合、減衰力特性は、制御モードの変化直前の減衰力特性に固定される。よって、制御モードの変化に伴い減衰力特性変更手段が作動することはない。これにより減衰力特性変更手段の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられ、減衰力特性変更手段の耐久性が向上する。
また、制御モードが可変制御から作動禁止制御に変化し、さらに作動禁止制御から可変制御に変化した場合、つまり作動禁止制御を挟んで可変制御が再開された場合において、可変制御再開時の減衰力特性は、作動禁止制御の直前に可変制御されていた減衰力特性に等しい。すなわち作動禁止制御を挟んで可変制御時の減衰力特性が引き継がれる。したがって、可変制御再開直後の減衰力特性が可変制御により目標とされる減衰力特性に近い場合が多い。よって、可変制御再開後に減衰力特性が所望の特性に変化するまでに作動する減衰力特性変更手段の作動量の増大が抑えられ、減衰力特性変更手段の耐久性が向上する。また、可変制御再開後には、減衰力特性を速やかに所望の減衰力特性に設定することができるため、制御の遅れが少ない。加えて、制御の遅れに伴う減衰力の不足を抑えることができる。
また、非線形H制御理論に基づいて計算された要求減衰力は、複数のサスペンション装置による支持位置におけるバネ上部材の上下方向の速度の影響を大きく受ける。つまり、バネ上速度和の正負は、高い確率で要求減衰力の正負と一致する。このため、正負判別手段の判別結果は、要求減衰力とバネ上−バネ下相対速度との積の正負と一致する可能性が高い。また、要求減衰力とバネ上−バネ下相対速度との積が負である場合は、サスペンション装置に中/高周波数帯域の振動が入力されている可能性が高い。これらのことから、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力されているか否かは、正負判別手段の判別結果により判断することができる。本発明は、正負判別手段による判別結果が負である場合、すなわちバネ上速度和とバネ上−バネ下相対速度との積が負である場合に、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力されていると推定する。そして、上記積が負である間は減衰力特性の制御モードを作動禁止制御として減衰力特性変更手段の作動を禁止する。したがって本発明によれば、中/高周波数帯域の振動が入力されているときに減衰力特性変更手段の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられる。これにより減衰力特性変更手段の耐久性が向上する。
また、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力されていると推定されるときに減衰力特性変更手段の作動を禁止することにより、ダンパの減衰力がさらに高くなるように減衰力特性が変化することが防止される。したがって、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力されているときに車両の乗り心地がこれ以上悪化することが防止される。
また、バネ上速度和とバネ上−バネ下相対速度との積が正であるときには、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置に入力されている可能性が低い。このときに非線形H制御理論を用いて計算された要求減衰力に基づいて減衰力特性を可変制御することにより、車両の乗り心地が向上する。
本発明において、バネ上速度和の正負およびバネ上−バネ下相対速度の正負は予め統一されている。バネ上速度和の正負の計算に関し、上方向に向かうバネ上速度が正の速度と定められ、下方向に向かうバネ上速度が負の速度と定められた場合、バネ上−バネ下相対速度の正負に関し、バネ上部材とバネ下部材との間隔が狭まる方向(縮み側方向)に向かう相対速度が正の速度と定められ、バネ上部材とバネ下部材との間隔が広がる方向(伸び側方向)に向かう相対速度が負の速度と定められる。逆に、バネ上速度和の正負の計算に関し、下方向に向かうバネ上速度が正の速度と定められ、上方向に向かうバネ上速度が負の速度と定められた場合、バネ上−バネ下相対速度の正負に関し、バネ上部材とバネ下部材との間隔が広がる方向(伸び側方向)に向かう相対速度が正の速度と定められ、上記間隔が狭まる方向(縮み側方向)に向かう相対速度が負の速度と定められる。
また、複数のサスペンション装置は、バネ上部材の前方左右および後方左右に連結した4個のサスペンション装置であるのがよい。各サスペンション装置は、車両の4輪にそれぞれ接続されたバネ下部材にそれぞれ連結しているとよい。
また、作動禁止手段は、ダンパの減衰力特性の目標特性を、可変制御または作動禁止制御により前回決定された目標特性と同じ特性となるように設定することによって、減衰力特性変更手段の作動を禁止するものであるのがよい。つまり、作動禁止手段により、ダンパの減衰力特性が、前回の制御時に設定されている目標特性と同じ目標特性となるように制御される。これによれば、簡単な制御により減衰力特性変更手段の作動が禁止される。
また、減衰力特性変更手段は、ダンパに取付けられ、作動することによりダンパの減衰力特性を変更するバルブ部材と、バルブ部材に連結し、バルブを作動させるアクチュエータとを備えるものであるのがよい。これによれば、アクチュエータおよびバルブ部材の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられるので、これらの耐久性が向上する。
また、減衰力特性変更手段は、ダンパの減衰力特性を段階的に変更するものであるのがよい。
図1は、本実施形態に係るサスペンション制御装置の全体概略図である。 図2は、本実施形態に係る車両の4輪モデルを示す図である。 図3は、本実施形態に係るマイクロコンピュータが実行する減衰力制御プログラムの流れを示すフローチャートである。 図4は、本実施形態に係るマイクロコンピュータが実行する制御フラグ設定プログラムの流れを示すフローチャートである。 図5は、本実施形態に係るマイクロコンピュータが実行する可変減衰係数計算プログラムの流れを示すフローチャートである。 図6は、本実施形態に係るマイクロコンピュータが実行する要求減衰力計算プログラムの流れを示すフローチャートである。 図7は、本実施形態に係るマイクロコンピュータが実行する要求段数決定プログラムの流れを示すフローチャートである。 図8は、非線形H制御理論に基づいて計算された要求減衰力の時系列推移を表すグラフである。 図9は、減衰力とバネ上−バネ下相対速度との関係を表す減衰力特性マップである。 図10は、可変絞り機構の作動により変化するダンパの減衰力特性を表す段数の推移を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について、説明する。
図1は、本実施形態に係るサスペンション制御装置の全体概略図である。図1に示されるように、このサスペンション制御装置1は、4個のサスペンション装置(サスペンション機構)SPFL,SPFR,SPRL,SPRRおよび電気制御装置ELを備える。各サスペンション装置SPFL,SPFR,SPRL,SPRRは、車体などからなるバネ上部材HAを支持する。4個のサスペンション装置の構成は同一である。代表してサスペンション装置SPFLの構成について説明する。
サスペンション装置SPFLは、バネ10FLおよびダンパ20FLを備える。バネ10FLおよびダンパ20FLは、バネ上部材HAとバネ下部材LAFLとの間に並列的に介装される。サスペンション装置SPFLは、その上端側にて車両のバネ上部材HAに連結する。また、サスペンション装置SPFLは、その下端側にて、左前輪60FLに接続したバネ下部材LAFLに連結する。左前輪60FLに連結されたナックルや、一端がナックルに連結されたロアアーム等がバネ下部材LAFLに相当する。なお、サスペンション装置SPFRの下端側は、右前輪60FRに接続したバネ下部材LAFRに、サスペンション装置SPRLの下端側は、左後輪60RLに接続したバネ下部材LARLに、サスペンション装置SPRRの下端側は、右後輪60RRに接続したバネ下部材LARRに、それぞれ連結する。
ダンパ20FLは、バネ下部材LAFLに対するバネ上部材HAの振動に抵抗を与えることによって、振動を減衰する機能を有する。ダンパ20FLは、シリンダ21FL、ピストン22FL、ピストンロッド23FLを備える。シリンダ21FLは内部にオイルなどの粘性流体が封入された中空部材である。シリンダ21FLは、その下端にてバネ下部材LAFL(例えばロアアーム)に連結する。ピストン22FLはシリンダ21FL内に配設されている。ピストン22FLは、シリンダ21FLの内部を軸方向に移動可能である。ピストンロッド23FLはその一端にてピストン22FLに接続している。その接続端からシリンダ21FLの軸方向上方に延設し、シリンダ21FLの上端から外部に突き出ている。ピストンロッド23FLは、その他端にてバネ上部材HAである車体に連結する。
ピストン22FLによって、シリンダ21FL内に上部室R1と下部室R2が区画形成される。また、ピストン22FLには連通路24FLが形成されている。連通路24FLは、上部室R1と下部室R2とを連通する。
上記構造のダンパ20FLにおいて、車両が路面凸部を乗り越えることなどによりバネ上部材HAがバネ下部材LAFLに対して上下に振動した場合に、ピストンロッド23FLを介してバネ上部材HAに連結したピストン22FLが、バネ下部材LAFLに連結したシリンダ21FL内を軸方向に相対変位する。この相対変位に伴い連通路24FL内を粘性流体が流通する。この流通時に発生する抵抗が上下振動に対する減衰力である。この減衰力により、バネ下部材LAFLに対するバネ上部材HAの振動が減衰する。
可変絞り機構30FLが、サスペンション装置SPFLに取付けられている。この可変絞り機構30FLは、本発明の減衰力特性変更手段に相当する。可変絞り機構30FLは、バルブ31FLおよびアクチュエータ32FLを有する。バルブ31FLは連通路24FLに設けられている。バルブ31FLの作動により、連通路24FLの少なくとも一部の流路断面積の大きさや連通路24FLの接続本数が変化する。すなわちバルブ31FLの作動によって連通路24FLの開度OPが変化する。バルブ31FLは、例えば連通路24FL内に組み込まれたロータリーバルブにより構成される。ロータリーバルブの回転角の変化により連通路24FLの接続本数や流路断面積を変更させることで、開度OPが変化する。アクチュエータ32FLはバルブ31FLに接続される。アクチュエータ32FLの作動に連動してバルブ31FLが作動する。アクチュエータ32FLは、例えばバルブ31FLがロータリーバルブである場合に、このロータリーバルブを回転させるためのモータにより構成される。
アクチュエータ32FLの作動に伴うバルブ31FLの作動により開度OPが変化した場合、連通路24FL内を粘性流体が流通するときの抵抗の大きさも変化する。この抵抗力は上述したように振動に対する減衰力である。したがって、開度OPが変化すれば、ダンパ20FLの減衰力特性も変化する。減衰力特性は、シリンダ21FLに対するピストン22FLの速度(すなわちバネ上−バネ下相対速度)に対する減衰力の大きさの変化特性である。
また、本実施形態においては、開度OPは段階的に設定される。このため開度OPの変更に伴いダンパ20FLの減衰力特性も段階的に変更される。減衰力特性は、設定される開度OPの設定段数により表される。すなわち各減衰力特性は、開度OPの設定段数に習って、1段、2段、・・・、というように段数表示される。この場合、例えば段数を表す数字が大きくなるほど減衰力が大きくなるように、減衰力特性を表す各段数を設定することができる。減衰力特性を表す設定段数は、可変絞り機構30FLの作動により変更される。
図2は、バネ上部材HAに4個のサスペンション装置SPFL,SPFR,SPRL,SPRRを取付けた車両モデル(4輪モデル)を示す図である。図に示されるように、サスペンション装置SPFLの上端側はバネ上部材HAの左前方位置に、サスペンション装置SPFRはバネ上部材HAの右前方位置に、サスペンション装置SPRLはバネ上部材HAの左後方位置に、サスペンション装置SPRRはバネ上部材HAの右後方位置に、それぞれ連結する。
次に、電気制御装置ELについて説明する。電気制御装置ELは、図1に示されるように、バネ上加速度センサ41FL,41FR,41RL,41RRと、ストロークセンサ43FL,43FR,43RL,43RRと、ロール角加速度センサ45と、ピッチ角加速度センサ47と、マイクロコンピュータ50を備える。
図2に示されるように、バネ上加速度センサ41FLは、サスペンション装置SPFLがバネ上部材HAを支持している位置であるバネ上部材HAの左前方位置に設置され、その位置おけるバネ上部材HAの上下方向の加速度xbFL"を検出する。バネ上加速度センサ41FRは、サスペンション装置SPFRがバネ上部材HAを支持している位置であるバネ上部材HAの右前方位置に設置され、その位置おけるバネ上部材HAの上下方向の加速度xbFR"を検出する。バネ上加速度センサ41RLは、サスペンション装置SPRLがバネ上部材HAを支持している位置であるバネ上部材HAの左後方位置に設置され、その位置おけるバネ上部材HAの上下方向の加速度xbRL"を検出する。バネ上加速度センサ41RRは、サスペンション装置SPRRがバネ上部材HAを支持している位置であるバネ上部材HAの右後方位置に設置され、その位置におけるバネ上部材HAの上下加速度xbRR"を検出する。なお、各加速度センサは、上方向に向かう加速度を正の加速度として検出し、下方向に向かう加速度を負の加速度として検出する。
ロール角加速度センサ45はバネ上部材HAに取付けられており、バネ上部材HAの制御目標位置(例えば重心位置)のロール方向(前後軸周り方向)の角加速度であるロール角加速度θr"を検出する。ピッチ角加速度センサ47もバネ上部材HAに取付けられており、バネ上部材HAの制御目標位置(例えば重心位置)のピッチ方向(左右軸周り方向)の角加速度であるピッチ角加速度θp"を検出する。
また、各サスペンション装置SPFL,SPFR,SPRL,SPRRには、ストロークセンサ43FL,43FR,43RL,43RRがそれぞれ取付けられている。ストロークセンサ43FLは、サスペンション装置SPFLのダンパ20FL内に配設されたピストン22FLの相対変位量(ストローク量)を計測することにより、バネ上部材HAの左後方位置における基準位置から上下方向の変位量(バネ上変位量)xbFLと、サスペンション装置SPFLに連結しているバネ下部材LAFLの基準位置から上下方向の変位量(バネ下変位量)xwFLとの差であるバネ上−バネ下相対変位量xsFL(=xwFL-xbFL)を検出する。ストロークセンサ43FRは、バネ上部材HAの右前方位置における基準位置から上下方向の変位量xbFRと、サスペンション装置SPFRに連結しているバネ下部材LAFRの基準位置から上下方向の変位量xwFRとの差であるバネ上−バネ下相対変位量xsFR(=xwFR-xbFR)を検出する。ストロークセンサ43RLは、バネ上部材HAの左後方位置における基準位置から上下方向の変位量xbRLと、サスペンション装置SPRLに連結しているバネ下部材LARLの基準位置から上下方向の変位量xwRLとの差であるバネ上−バネ下相対変位量xsRL(=xwRL-xbRL)を検出する。ストロークセンサ43RRは、バネ上部材HAの右後方位置における基準位置から上下方向の変位量xbRRと、サスペンション装置SPRRに連結しているバネ下部材LARRの基準位置から上下方向の変位量xwRRとの差であるバネ上−バネ下相対変位量xsRR(=xwRR-xbRR)を検出する。なお、各ストロークセンサは、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔が、基準間隔から狭まる方向に向かう変位を正の変位量として検出し、広がる方向に向かう変位を負の変位量として検出する。
図1に示されるように、各センサの検出値はマイクロコンピュータ50に入力される。マイクロコンピュータ50は入力された検出値を基に、各ダンパ20FL,20FR,20RL,20RRの減衰力特性の制御目標段数である要求段数DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRRを計算し、計算した要求段数DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRRを各アクチュエータ32FL,32FR,32RL,32RRに出力する。各アクチュエータ32FL,32FR,32RL,32RRは、対応するダンパ20FL,20FR,20RL,20RRの減衰力特性を表す段数が要求段数になるように作動する。このマイクロコンピュータ50および可変絞り機構30(30FL,30FR,30RL,30RR)により、本発明の減衰力制御装置が構成される。
上記のように構成されたサスペンション制御装置1において、例えばバネ上加速度センサ41FL,41FR,41RL,41RRのいずれかの検出値が所定の閾値を越えた場合(すなわちサスペンション装置SPFL,SPFR,SPRL,SPRRの減衰力制御が必要となる場合)、減衰力制御の実行フラグがONに設定される。減衰力制御の実行フラグがONに設定された場合、マイクロコンピュータ50は、減衰力を制御するためのプログラムを実行する。
図3は、マイクロコンピュータ50が実行する減衰力制御プログラムの流れを示すフローチャートである。減衰力制御が開始された場合、マイクロコンピュータ50は、まず図3のステップ(以下、ステップ番号をSと略記する)100にて、制御フラグを設定する。
図4は、マイクロコンピュータ50がS100にて実行する制御フラグ設定プログラムの流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ50はこのプログラムを図4のS100にて開始する。次に、S102にて、バネ上加速度センサ41FL,41FR,41RL,41RRから、バネ上加速度xbFL",xbFR",xbRL",xbRR"をそれぞれ入力する。また、ストロークセンサ43FL,43FR,43RL,43RRから、バネ上−バネ下相対変位量xsFL,xsFR,xsRL,xsRRを、それぞれ入力する。
続いて、マイクロコンピュータ50は、S104にて、バネ上加速度xbFL",xbFR",xbRL",xbRR"をそれぞれ時間積分することにより、バネ上速度xbFL',xbFR',xbRL',xbRR'をそれぞれ計算する。バネ上速度xbFL'はバネ上部材HAの左前方位置における上下方向の変位速度、バネ上速度xbFR'はバネ上部材HAの右前方位置における上下方向の変位速度、バネ上速度xbRL'はバネ上部材HAの左後方位置における上下方向の変位速度、バネ上速度xbRR'はバネ上部材HAの右後方位置における上下方向の変位速度である。なお、マイクロコンピュータ50は、上方向に向かうバネ上速度を正の速度として、下方向に向かうバネ上速度を負の速度として計算する。
次いで、マイクロコンピュータ50は、S106にて、バネ上速度和xb'を計算する。このバネ上速度和xb'は各バネ上速度xbFL',xbFR',xbRL',xbRR'の総和である。S106では、これらのバネ上速度を加算することによりバネ上速度和xb'が計算される。S106の処理が、本発明のバネ上速度和取得手段に相当する。
次に、マイクロコンピュータ50は、S108にて、バネ上−バネ下相対変位量xsFLを時間微分することにより、バネ下速度xwFL'(バネ下部材LAFLの上下方向の変位速度)とバネ上速度xbFL'との差であるバネ上−バネ下相対速度xsFL'(=xwFL'-xbFL')を、バネ上−バネ下相対変位量xsFRを時間微分することにより、バネ下速度xwFR'(バネ下部材LAFRの上下方向の変位速度)とバネ上速度xbFR'との差であるバネ上−バネ下相対速度xsFR'(=xwFR'-xbFR')を、バネ上−バネ下相対変位量xsRLを時間微分することにより、バネ下速度xwRL'(バネ下部材LARLの上下方向の変位速度)とバネ上速度xbRL'との差であるバネ上−バネ下相対速度xsRL'(=xwRL'-xbRL')を、バネ上−バネ下相対変位量xsRRを時間微分することにより、バネ下速度xwRR'(バネ下部材LARRの上下方向の変位速度)とバネ上速度xbRR'との差であるバネ上−バネ下相対速度xsRR'(=xwRR'-xbRR')を、それぞれ計算する。なお、マイクロコンピュータ50は、バネ上部材HAと各バネ下部材LAFL,LAFR,LARL,LARRの間隔が狭まる方向、つまりダンパ20FL,20FR,20RL,20RRがそれぞれ縮む方向に向かうバネ上−バネ下相対速度を正の速度として計算し、広がる方向、つまりダンパ20FL,20FR,20RL,20RRがそれぞれ伸びる方向に向かうバネ上−バネ下相対速度を負の速度として計算する。S108の処理が、本発明のバネ上−バネ下相対速度取得手段に相当する。
続いて、マイクロコンピュータ50は、S110にて、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xsFL'との積が正であるか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS112に進んで制御フラグFLFLを0に設定する。一方、S110の判定結果がNoである場合はS114に進んで制御フラグFLFLを1に設定する。S112またはS114にて制御フラグFLFLを設定した後は、S116に進む。
S116にて、マイクロコンピュータ50は、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xsFR'との積が正であるか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS118に進んで制御フラグFLFRを0に設定する。一方、S116の判定結果がNoである場合はS120に進んで制御フラグFLFRを1に設定する。S118またはS120にて制御フラグFLFRを設定した後は、S122に進む。
S122にて、マイクロコンピュータ50は、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xsRL'との積が正であるか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS124に進んで制御フラグFLRLを0に設定する。一方、S122の判定結果がNoである場合はS126に進んで制御フラグFLRLを1に設定する。S124またはS126にて制御フラグFLRLを設定した後は、S128に進む。
S128にて、マイクロコンピュータ50は、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xsRR'との積が正であるか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS130に進んで制御フラグFLRRを0に設定する。一方、S128の判定結果がNoである場合はS132に進んで制御フラグFLRRを1に設定する。S130またはS132にて制御フラグFLRRを設定した後は、S134に進んでこのプログラムを終了する。
このように、制御フラグ設定プログラムの実行により、バネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xsFL',xsFR',xsRL',xsRR'との積が正である場合に制御フラグが0に設定され、負である場合に制御フラグが1に設定される。後述するように、バネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xsFL',xsFR',xsRL',xsRR'との積が正である場合には、サスペンション装置に中/高周波数帯域の振動が入力されていない可能性が高い。一方、バネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xsFL',xsFR',xsRL',xsRR'との積が負である場合には、サスペンション装置に中/高周波数帯域の振動が入力されている可能性が高い。したがって、制御フラグは中/高周波数帯域の振動の入力の有無を表し、中/高周波数帯域の振動が入力されていない場合に制御フラグが0に設定され、入力されている場合に制御フラグが1に設定される。図4のS110,S116,S122,S128の処理が、本発明の正負判別手段に相当する。
マイクロコンピュータ50は、図3のS100にて制御フラグを設定した後はS200に進み、可変減衰係数を計算する。図5は、マイクロコンピュータ50がS200にて実行する可変減衰係数計算プログラムの流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ50はこのプログラムを図5のS200にて開始する。次に、S202にて、制御フラグFLFLが0に設定されているか否かを判定する。制御フラグFLFLが0に設定されている場合(S202:Yes)はS204に進む。S204にてマイクロコンピュータ50は可変減衰係数CvFLを計算する。可変減衰係数CvFLは、ダンパ20FLが発生すべき目標の減衰力である要求減衰力FreqFLの係数(要求減衰係数CreqFL)の可変分を表す。可変減衰係数CvFLは、非線形H制御理論に基づいて計算される。
非線形H制御理論は最適制御理論の一つである。本実施形態においては、可変減衰係数を計算するにあたり、図2に示される車両の4輪モデルが制御対象モデルに設定される。また、設定されたモデルの運動方程式(バネ上部材HAの制御目標位置における上下方向の運動方程式(ヒーブ運動方程式)、バネ上部材HAの制御目標位置におけるロール方向の運動方程式(ロール運動方程式)、バネ上部材HAの制御目標位置におけるピッチ方向の運動方程式(ピッチ運動方程式))に基づいて、状態空間表現が双線形となるように表される制御システムが設計される。そして、設計された制御システムに対し、リカッチ不等式の解を求めることにより、制御入力として可変減衰係数が算出される。
非線形H制御理論を適用した場合、可変減衰係数CvFLは以下の式により計算される。
CvFL=K1FL・xbFL'+K2FL・xbFR'+K3FL・xbRL'+K4FL・xbRR'
+K5FL・xsFL+K6FL・xsFR+K7FL・xsRL+K8FL・xsRR
+K9FL・αxh"+K10FL・βθr"+K11FL・γθp"
上式において、K1FL〜K11FLはゲインである。α,β,γは制御目標位置によって変化する重みである。xh"は、制御目標位置(例えば重心位置)におけるバネ上部材HAの上下方向の加速度(ヒーブ加速度)であり、各バネ上加速度xbFL",xbFR",xbRL",xbRR"から求めることができる。各ゲインにかかる変数は、バネ上部材HAの振動状態を表す。
S204にて可変減衰係数CvFLを計算した後は、マイクロコンピュータ50はS206に進む。また、S202の判定にて、制御フラグFLFLが0に設定されていないと判定した場合(S202:No)、すなわち制御フラグFLFLが1に設定されている場合は、S204を飛ばしてS206に進む。
S206にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLFRが0に設定されているか否かを判定する。制御フラグFLFRが0に設定されている場合(S206:Yes)はS208に進む。S208にてマイクロコンピュータ50は、非線形H制御理論に基づいて可変減衰係数CvFRを計算する。可変減衰係数CvFRは、ダンパ20FRが発生すべき目標の減衰力である要求減衰力FreqFRの係数(要求減衰係数CreqFR)の可変分を表す。可変減衰係数CvFRは以下の式により計算される。
CvFR=K1FR・xbFL'+K2FR・xbFR'+K3FR・xbRL'+K4FR・xbRR'
+K5FR・xsFL+K6FR・xsFR+K7FR・xsRL+K8FR・xsRR
+K9FR・αxh"+K10FR・βθr"+K11FR・γθp"
上式において、K1FR〜K11FRはゲインである。
S208にて可変減衰係数CvFRを計算した後は、マイクロコンピュータ50はS210に進む。また、S206の判定にて、制御フラグFLFRが0に設定されていないと判定した場合(S206:No)、すなわち制御フラグFLFRが1に設定されている場合は、S208を飛ばしてS210に進む。
S210にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLRLが0に設定されているか否かを判定する。制御フラグFLRLが0に設定されている場合(S210:Yes)はS212に進む。S212にてマイクロコンピュータ50は、非線形H制御理論に基づいて可変減衰係数CvRLを計算する。可変減衰係数CvRLは、ダンパ20RLが発生すべき目標の減衰力である要求減衰力FreqRLの係数(要求減衰係数CreqRL)の可変分を表す。可変減衰係数CvRLは以下の式により計算される。
CvRL=K1RL・xbFL'+K2RL・xbFR'+K3RL・xbRL'+K4RL・xbRR'
+K5RL・xsFL+K6RL・xsFR+K7RL・xsRL+K8RL・xsRR
+K9RL・αxh"+K10RL・βθr"+K11RL・γθp"
上式において、K1RL〜K11RLはゲインである。
S212にて可変減衰係数CvRLを計算した後は、マイクロコンピュータ50はS214に進む。また、S210の判定にて、制御フラグFLRLが0に設定されていないと判定した場合(S210:No)、すなわち制御フラグFLRLが1に設定されている場合は、S212を飛ばしてS214に進む。S214にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLRRが0に設定されているか否かを判定する。制御フラグFLRRが0に設定されている場合(S214:Yes)はS216に進む。S216にてマイクロコンピュータ50は、非線形H制御理論に基づいて可変減衰係数CvRRを計算する。可変減衰係数CvRRは、ダンパ20RRが発生すべき目標の減衰力である要求減衰力FreqRRの係数(要求減衰係数CreqRR)の可変分を表す。可変減衰係数CvRRは以下の式により計算される。
CvRR=K1RR・xbFL'+K2RR・xbFR'+K3RR・xbRL'+K4RR・xbRR'
+K5RR・xsFL+K6RR・xsFR+K7RR・xsRL+K8RR・xsRR
+K9RR・αxh"+K10RR・βθr"+K11RR・γθp"
上式において、K1RR〜K11RRはゲインである。
マイクロコンピュータ50はS216にて可変減衰係数CvRRを計算した後に、S218に進んでこのプログラムを終了する。また、S214の判定にて、制御フラグFLRRが0に設定されていないと判定した場合(S214:No)、すなわち制御フラグFLRRが1に設定されている場合は、S216を飛ばしてS218に進み、このプログラムを終了する。
上記した処理の流れからわかるように、可変減衰係数CvFL,CvFR,CvRL,CvRRは、対応する制御フラグFLFL,FLFR,FLRL,FLRRが0に設定されている場合、すなわちバネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xsFL',xsFR',xsRL',xsRR'との積が正である場合に、非線形H制御理論に基づいて計算される。
マイクロコンピュータ50は、図3のS200にて可変減衰係数を計算した後はS300に進み、要求減衰力を計算する。図6は、マイクロコンピュータ50がS300にて実行する要求減衰力計算プログラムの流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ50はこのプログラムを図6のS300にて開始する。次に、S302にて、制御フラグFLFLが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS304に進み、ダンパ20FLが発生すべき制御目標の減衰力である要求減衰力FreqFLを計算する。要求減衰力FreqFLは、線形減衰係数CsFLに可変減衰係数CvFLを加算することにより得られる要求減衰係数CreqFLに、バネ上−バネ下相対速度xsFL'を乗じることにより計算される。線形減衰係数CsFLは、要求減衰係数CreqFLの固定分を表す係数であり、予め設定される。
S304にて要求減衰力FreqFLを計算した後は、S306に進む。また、S302の判定結果がNoである場合、すなわち制御フラグFLFLが1に設定されている場合は、S304を飛ばしてS306に進む。
S306にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLFRが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS308に進み、ダンパ20FRが発生すべき制御目標の減衰力である要求減衰力FreqFRを計算する。要求減衰力FreqFRは、線形減衰係数CsFRに可変減衰係数CvFRを加算することにより得られる要求減衰係数CreqFRに、バネ上−バネ下相対速度xsFR'を乗じることにより計算される。線形減衰係数CsFRは、要求減衰係数CreqFRの固定分を表す係数であり、予め設定される。
S308にて要求減衰力FreqFRを計算した後は、S310に進む。また、S306の判定結果がNoである場合、すなわち制御フラグFLFRが1に設定されている場合は、S308を飛ばしてS310に進む。
S310にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLRLが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS312に進み、ダンパ20RLが発生すべき制御目標の減衰力である要求減衰力FreqRLを計算する。要求減衰力FreqRLは、線形減衰係数CsRLに可変減衰係数CvRLを加算することにより得られる要求減衰係数CreqRLに、バネ上−バネ下相対速度xsRL'を乗じることにより計算される。線形減衰係数CsRLは、要求減衰係数CreqRLの固定分を表す係数であり、予め設定される。
S312にて要求減衰力FreqRLを計算した後は、S314に進む。また、S310の判定結果がNoである場合、すなわち制御フラグFLRLが1に設定されている場合は、S312を飛ばしてS314に進む。
S314にて、マイクロコンピュータ50は、制御フラグFLRRが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS316に進み、ダンパ20RRが発生すべき制御目標の減衰力である要求減衰力FreqRRを計算する。要求減衰力FreqRRは、線形減衰係数CsRRに可変減衰係数CvRRを加算することにより得られる要求減衰係数CreqRRに、バネ上−バネ下相対速度xsRR'を乗じることにより計算される。線形減衰係数CsRRは、要求減衰係数CreqRRの固定分を表す係数であり、予め設定される。
S316にて要求減衰力FreqRRを計算した後は、S318に進んでこのプログラムを終了する。また、S314の判定結果がNoである場合、すなわち制御フラグFLRRが1に設定されている場合は、S316を飛ばしてS318に進み、このプログラムを終了する。
上記した処理の流れからわかるように、要求減衰力FreqFL,FreqFR,FreqRL,FreqRRは、対応する制御フラグFLFL,FLFR,FLRL,FLRRが0に設定されている場合、すなわちバネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xsFL',xsFR',xsRL',xsRR'との積が正である場合に、非線形H制御理論に基づいて計算された可変減衰係数CvFL,CvFR,CvRL,CvRRを用いて計算される。図5に示される可変減衰係数計算処理および図6に示される要求減衰力計算処理が、本発明の要求減衰力計算手段に相当する。
マイクロコンピュータ50は図3のS300にて、上記したように要求減衰力FreqFL,FreqFR,FreqRL,FreqRRを計算した後は、S400に進み、要求段数を決定する。図7は、マイクロコンピュータ50がS400にて実行する要求段数決定プログラムの流れを示すフローチャートである。マイクロコンピュータ50はこのプログラムを図6のS400にて開始する。次に、S402にて、制御フラグFLFLが0であるか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS404に進み、第一減衰力特性テーブルを参照し、ダンパ20FLの減衰力特性の制御目標段数である要求段数DreqFLを決定する。
第一減衰力特性テーブルは、複数のバネ上−バネ下相対速度xsFL'と、各相対速度においてダンパ20FLが発生し得る減衰力とを、減衰力特性を表す段数ごとに対応付けたテーブルである。この第一減衰力特性テーブルはマイクロコンピュータ50のメモリに記憶されている。S404にてマイクロコンピュータ50は、第一減衰力特性テーブルを参照し、バネ上−バネ下相対速度xsFL'に対応する減衰力を段数ごとに抽出する。そして、抽出した減衰力のうち要求減衰力FreqFLに最も近い減衰力についての段数を、要求段数DreqFLに決定する。
S402の判定結果がNoである場合、つまり制御フラグFLFLが1に設定されている場合は、S406に進む。S406にてマイクロコンピュータ50は、要求段数DreqFLを要求段数前回値DreqFL*に設定する。要求段数前回値DreqFL*は、前回の要求段数決定処理時にS404またはS406にて決定された要求段数である。したがって、このS406において、要求段数DreqFLが前回の処理により決定された要求段数DreqFLと同じ値に設定される。
S404またはS406にて要求段数DreqFLを決定した後は、マイクロコンピュータ50はS408に進み、制御フラグFLFRが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS410に進み、第二減衰力特性テーブルを参照し、ダンパ20FRの減衰力特性の制御目標段数である要求段数DreqFRを決定する。
第二減衰力特性テーブルは、複数のバネ上−バネ下相対速度xsFR'と、各相対速度においてダンパ20FRが発生し得る減衰力とを、減衰力特性を表す段数ごとに対応付けたテーブルである。この第二減衰力特性テーブルもマイクロコンピュータ50のメモリに記憶されている。S410にてマイクロコンピュータ50は、第二減衰力特性テーブルを参照し、バネ上−バネ下相対速度xsFR'に対応する減衰力を段数ごとに抽出する。そして、抽出した減衰力のうち要求減衰力FreqFRに最も近い減衰力についての段数を、要求段数DreqFRに決定する。
S408の判定結果がNoである場合、つまり制御フラグFLFRが1に設定されている場合は、S412に進む。S412にてマイクロコンピュータ50は、要求段数DreqFRを要求段数前回値DreqFR*に設定する。要求段数前回値DreqFR*は、前回の要求段数決定処理時にS410またはS412にて決定された要求段数である。したがって、このS412において、要求段数DreqFRが前回の処理により決定された要求段数DreqFRと同じ値に設定される。
S410またはS412にて要求段数DreqFRを決定した後は、マイクロコンピュータ50はS414に進み、制御フラグFLRLが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS416に進み、第三減衰力特性テーブルを参照し、ダンパ20RLの減衰力特性の制御目標段数である要求段数DreqRLを決定する。
第三減衰力特性テーブルは、複数のバネ上−バネ下相対速度xsRL'と、各相対速度においてダンパ20RLが発生し得る減衰力とを、減衰力特性を表す段数ごとに対応付けたテーブルである。この第三減衰力特性テーブルもマイクロコンピュータ50のメモリに記憶されている。S416にてマイクロコンピュータ50は、第三減衰力特性テーブルを参照し、バネ上−バネ下相対速度xsRL'に対応する減衰力を段数ごとに抽出する。そして、抽出した減衰力のうち要求減衰力FreqRLに最も近い減衰力についての段数を、要求段数DreqRLに決定する。
S414の判定結果がNoである場合、つまり制御フラグFLRLが1に設定されている場合は、S418に進む。S418にてマイクロコンピュータ50は、要求段数DreqRLを要求段数前回値DreqRL*に設定する。要求段数前回値DreqRL*は、前回の要求段数決定処理時にS416またはS418にて決定された要求段数である。したがって、このS418において、要求段数DreqRLが前回の処理により決定された要求段数DreqRLと同じ値に設定される。
S416またはS418にて要求段数DreqRLを決定した後は、マイクロコンピュータ50はS420に進み、制御フラグFLRRが0に設定されているか否かを判定する。この判定結果がYesである場合はS422に進み、第四減衰力特性テーブルを参照し、ダンパ20RRの減衰力特性の制御目標段数である要求段数DreqRRを決定する。
第四減衰力特性テーブルは、複数のバネ上−バネ下相対速度xsRR'と、各相対速度においてダンパ20RRが発生し得る減衰力とを、減衰力特性を表す段数ごとに対応付けたテーブルである。この第四減衰力特性テーブルもマイクロコンピュータ50のメモリに記憶されている。S422にてマイクロコンピュータ50は、第四減衰力特性テーブルを参照し、バネ上−バネ下相対速度xsRR'に対応する減衰力を段数ごとに抽出する。そして、抽出した減衰力のうち要求減衰力FreqRRに最も近い減衰力についての段数を、要求段数DreqRRに決定する。
S420の判定結果がNoである場合、つまり制御フラグFLRRが1に設定されている場合は、S424に進む。S424にてマイクロコンピュータ50は、要求段数DreqRRを要求段数前回値DreqRR*に設定する。要求段数前回値DreqRR*は、前回の要求段数決定処理時にS422またはS424にて決定された要求段数である。したがって、このS424では、要求段数DreqRRが前回の処理により決定された要求段数DreqRRと同じ値に設定される。
S422またはS424にて要求段数DreqRRを決定した後は、マイクロコンピュータ50はS426に進み、決定した要求段数DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRRを出力する。出力された要求段数DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRRは、対応するアクチュエータ32FL,32FR,32RL,32RRに入力される。各アクチュエータは、対応するダンパの減衰力特性を表す段数が要求段数となるように作動する。これにより、対応するバルブ31FL,31FR,31RL,31RRがそれぞれ制御される。このようにして、ダンパ20FL,20FR,20RL,20RRの減衰力特性が制御される。
S426にて要求段数を出力した後、マイクロコンピュータ50はS428に進み、要求段数DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRRを、それぞれ要求段数前回値DreqFL*,DreqFR*,DreqRL*,DreqRR*に代入する。その後、S430に進んでこのプログラムを終了する。S404,S410,S416,S422の処理および、これらの処理を受けて行われるS426の処理が、本発明の減衰力特性決定手段に相当する。また、S406,S412,S418,S424の処理が、本発明の作動禁止手段に相当する。
マイクロコンピュータ50は図3のS400にて上記のように要求段数を決定した後に、この減衰力制御プログラムを終了する。この減衰力制御プログラムは短時間毎に繰り返し実行される。これにより、ダンパ20FL,20FR,20RL,20RRの減衰力特性が継続的に制御される。
以上の説明からわかるように、本実施形態においては、制御フラグが0に設定されているとき、つまりバネ上速度和xb'と各バネ上−バネ下相対速度xs'(xsFL',xsFR',xsRL',xsRR')との積が正であるときは、非線形H制御理論に基づき算出される可変減衰係数Cv(CvFL,CvFR,CvRL,CvRR)を用いて要求減衰力Freq(FreqFL,FreqFR,FreqRL,FreqRR)が計算され、計算された要求減衰力Freqに基づいて要求段数Dreq(DreqFL,DreqFR,DreqRL,DreqRR)が決定される。そして、要求段数Dreqに基づいてダンパ20(20FL,20FR,20RL,20RR)の減衰力特性を表す段数が可変制御される。また、可変減衰係数Cvは、上記した計算式からわかるようにバネ上部材HAの振動状態を表す状態変数により変動する。したがってこのような可変制御により、バネ上部材HAの振動状態に応じてダンパ20の減衰力特性(段数)が変化するように、可変絞り機構30(30FL,30FR,30RL,30RR)の作動が制御される。
一方、制御フラグが1に設定されているとき、つまりバネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負(または0)であるときは、要求段数Dreqが前回値Dreq*に設定される。このためダンパ20の減衰力特性を表す段数が固定されるとともに、可変絞り機構30の作動が禁止される。本実施形態において、このような段数の固定制御は作動禁止制御と呼称される。
バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正である場合は、サスペンション装置SP(SPFL,SPFR,SPRL,SPRR)に中/高周波数帯域の振動が入力されている可能性が低い。一方、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負である場合は、サスペンション装置SPに中/高周波数帯域の振動が入力されている可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、サスペンション装置SPに中/高周波数帯域の振動が入力されていないときに、非線形H制御理論に基づいてダンパ20の減衰力特性が可変制御され、サスペンション装置SPに中/高周波数帯域の振動が入力されているときに減衰力特性が固定される。
バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積の正負により中/高周波数帯域の振動が入力されているか否かを推定することができる理由について、以下に説明する。
図8は、非線形H制御理論に基づいて計算された要求減衰力Freqの時系列推移を表すグラフである。このグラフの横軸は経過時間[sec.]であり、縦軸は減衰力[N]である。図の実線で示されるグラフAが要求減衰力Freqの時系列推移である。また、図の破線で示されるグラフB,C,D,Eは、要求減衰力Freqを主立った要因ごとに内訳した減衰力の時系列推移である。グラフBは、要求減衰力のうち、各サスペンション装置SPによるバネ上部材HAの支持位置におけるバネ上速度に関係した減衰力の時系列推移、グラフCは、各サスペンション装置SPについてのバネ上−バネ下相対変位量に関係した減衰力の時系列推移、グラフDはバネ上部材HAの重心位置に関係した減衰力の時系列推移、グラフEは線形減衰係数に基づいて計算される減衰力(線形減衰力)の時系列推移である。
図からわかるように、要求減衰力Freqに影響する各要因のうち、最も要求減衰力Freqに与える影響が大きい要因は、グラフBにより表されるバネ上速度である。したがって、バネ上速度の総和であるバネ上速度和xb'の時系列推移は要求減衰力Freqの時系列推移に類似する。このため、バネ上速度和xb'が正の値であるときには要求減衰力Freqも正の値であり、バネ上速度和xb'が負の値であるときには要求減衰力Freqも負の値である可能性が高い。つまり、バネ上速度和の正負と要求減衰力Freqの正負とは、一致する可能性が高い。
図9は、減衰力とバネ上−バネ下相対速度との関係を表す減衰力特性マップ(F−Vマップ)である。このF−Vマップの横軸はバネ上−バネ下相対速度V(=xs')、縦軸は減衰力Fである。減衰力Fの正負に関し、例えばダンパ20の縮みを抑える方向に向かう減衰力が正の減衰力であり、ダンパ20の伸びを抑える方向に向かう減衰力が負の減衰力である。F−Vマップの第一象限内の領域は、バネ上−バネ下相対速度xs'が正であり且つ減衰力も正の領域である。要求減衰力FreqがF−Vマップの第一象限内の領域を推移しているときは、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積は正である。また、第三象限内の領域は、バネ上−バネ下相対速度xs'が負であり且つ減衰力も負の領域である。要求減衰力FreqがF−Vマップの第三象限内の領域を推移しているときは、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積は正である。
本明細書において、第一象限内の領域は縮み側領域、第三象限内の領域は伸び側領域と呼称される。減衰力が縮み側領域を推移しているときは、減衰力は、バネ上部材HAとバネ下部材LA(LAFL,LAFR,LARL,LARR)との間隔が狭まることによるダンパ20の縮みを抑える方向に作用する。これによりダンパ20が縮む方向の振動が制振される。また、減衰力が伸び側領域を推移しているときは、減衰力は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔が広がることによるダンパ20の伸びを抑える方向に作用する。これによりダンパ20が伸びる方向の振動が制振される。
非線形H制御理論に基づいてバネ上共振周波数付近の振動に対する減衰力を制御する場合において、中/高周波数帯域の振動が入力されていないときは、要求減衰力FreqはF−Vマップの縮み側領域および伸び側領域を推移する。すなわち、中/高周波数帯域の振動が入力されていない場合、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積は正である。また、上述のように要求減衰力Freqの正負はバネ上速度和xb'の正負と一致する可能性が高いので、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正である場合は、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積も正である可能性が高い。これらのことから、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正であるときは、中/高周波数帯域の振動が入力されていない可能性が高いことが推定される。
また、F−Vマップの第二象限内の領域は、バネ上−バネ下相対速度xs'が負であり、且つ減衰力が正の領域である。したがって、要求減衰力Freqが第二象限内を推移しているときは、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積は負である。また、F−Vマップの第四象限内の領域は、バネ上−バネ下相対速度xs'が正であり、且つ減衰力が負の領域である。したがって、要求減衰力Freqが第四象限内を推移しているときも、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積は負である。
減衰力が第二象限内の領域を推移しているときは、減衰力は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔が広がることによるダンパ20の伸びを助長する方向に作用する。つまり減衰力によりダンパ20の伸びが促される。また、減衰力が第四象限内の領域を推移しているときは、減衰力は、バネ上部材HAとバネ下部材LAとの間隔が狭まることによるダンパ20の縮みを助長する方向に作用する。つまり減衰力によりダンパ20の縮みが促される。本明細書においては、第二象限内の領域および第四象限内の領域は、アクティブ領域と呼称される。
非線形H制御理論に基づいてバネ上共振周波数付近の振動に対する減衰力を制御しているときに、中/高周波数帯域の振動が入力された場合は、要求減衰力Freqがアクティブ領域を推移することもある。また、上述のように要求減衰力Freqの正負はバネ上速度和xb'の正負と一致する可能性が高いので、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負である場合は、要求減衰力Freqとバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負である可能性が高い。これらのことから、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負であるときは、中/高周波数帯域の振動が入力されている可能性が高いことが推定される。
このように、本実施形態によれば、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正であるとき、すなわち中/高周波数帯域の振動が入力されていないときに、非線形H制御理論に基づいて要求減衰力Freqを計算することにより、バネ上部材HAの振動状態に応じてダンパ20の減衰力特性が変化するように可変絞り機構30の作動が制御される。これにより、車両の乗り心地が向上するように減衰力特性が可変制御される。また、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負であるとき、すなわち中/高周波数帯域の振動が入力されているときは、可変絞り機構30の作動が禁止される。これにより、ダンパ20の減衰力特性が変化しないように制御される。このような作動禁止制御により、可変絞り機構30の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられ、可変絞り機構30を構成するバルブ31(31FL,31FR,31RL,31RR)やアクチュエータ32(32FL,32FR,32RL,32RR)の耐久性が向上する。また、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置SPに入力されていると推定されている間はダンパ20の減衰力特性が固定されることにより、車両の乗り心地がこれ以上悪化することが防止される。
図10は、可変絞り機構30(アクチュエータ32およびバルブ31)の作動により変化するダンパ20の減衰力特性を表す段数の推移を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間[ms]、縦軸は段数である。図に示されるように、段数は例えば1段から5段まで可変する。発生する減衰力が最も低い減衰力特性を表す段数は1段であり、発生する減衰力が最も高い減衰力特性を表す段数が5段である。段数を表す数字が大きいほど、発生する減衰力が高くなる。また、実線で示されているグラフAにより、本実施形態にて示された減衰力制御により求められる要求段数に基づいて変化する段数の推移が表される。破線で示されているグラフBにより、従来の制御にしたがって変化する段数の推移が表される。
経過時間0〜30msの期間は、中/高周波数帯域の振動が入力されていない。すなわち、上記の期間において、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正である。したがって、ダンパ20の減衰力特性の制御モードは可変制御である。この期間においては、グラフAにより示される段数もグラフBにより示される段数も、同じように変化する。30ms経過時点における段数は3段である。
経過時間30ms〜50msの期間は、中/高周波数帯域の振動が入力されている。すなわち、上記の期間内は、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負である。従来の制御(グラフB)によれば、経過時間30msの時点から減衰力特性の制御モードが可変制御から低減衰力固定制御に変化する。このため、段数が3段から1段まで変更される。アクチュエータ32の作動応答速度が10ms/段であるとすると、段数は、30msの時点から10msごとに1段ずつ低下し、50msの時点にて1段になる。一方、本実施形態の制御(グラフA)によれば、経過時間30msの時点にて、減衰力特性の制御モードが可変制御から作動禁止制御に変化する。作動禁止制御中は、要求段数Dreqが前回の要求段数決定処理にて決定された段数Dreq*と同じ段数に設定される。このため段数は、制御モードの変化直前の段数である3段に固定される。このように、本実施形態によれば、制御モードが可変制御から作動禁止制御に変化する前後で段数が変化しない。つまり、可変制御から作動禁止制御に変化する際に可変絞り機構30が作動しない。これにより可変絞り機構30の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられる。
経過時間50ms以降は、中/高周波数帯域の振動が入力されていない。すなわち上記の期間にてバネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正である。したがって、従来の制御(グラフB)も本実施形態の制御(グラフA)も、50msの時点にて可変制御が再開される。この場合において、従来の制御(グラフB)によれば、経過時間50msの時点にて段数が1段である。したがって、可変制御により計算される要求段数Dreqが5段である場合には、段数が要求段数Dreqに到達するまでに時間がかかってしまう。また、段数が要求段数Dreqに到達するまで減衰力が不足する。一方、本実施形態の制御(グラフA)によれば、作動禁止制御を挟んで減衰力特性を表す段数が引き継がれる。したがって、経過時間50msの時点にて段数が既に3段である。よって、可変制御再開時に計算される要求段数Dreqが5段である場合でも、段数を速やかに要求段数Dreqに設定することができる。また、要求段数Dreqに到達するまでの時間が短いため、減衰力が不足する期間が短い。これにより、図の斜線で示された領域により示される減衰力によって減衰力不足が解消される。
また、従来の制御(グラフB)において、経過時間30msの以降の段数は、3段→2段→1段→2段→3段→4段→5段のように推移する。段数の切替え回数は6回である。一方、本実施形態の制御(グラフA)において、経過時間30ms以降の段数は、3段→4段→5段のように推移する。段数の切替え回数は2回である。このように、本実施形態によれば、減衰力特性の制御モードの変化に伴う可変絞り機構30による段数の切替え回数(作動量)が従来の場合と比較して少ない。これにより、可変絞り機構30を構成するバルブ31およびアクチュエータ32の耐久性が向上する。
以上のように、本実施形態によれば、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が正の場合に減衰力特性の制御モードが可変制御にされる。したがって、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置SPに入力されていないときは、非線形H制御理論に基づき、バネ上部材HAの振動状態に応じて減衰力特性が変化するように可変絞り機構30の作動が制御される。また、バネ上速度和xb'とバネ上−バネ下相対速度xs'との積が負の場合には、減衰力特性の制御モードが作動禁止制御にされる。したがって、中/高周波数帯域の振動がサスペンション装置SPに入力されているときは、可変絞り機構30の作動が禁止される。これにより可変絞り機構30の作動頻度の増加および作動量の増大が抑えられる。よって、可変絞り機構30の耐久性が向上する。
また、作動禁止制御を挟んで可変制御が再開された場合において、可変制御再開時の減衰力特性は、作動禁止制御の直前に可変制御されていた減衰力特性に等しい。したがって、可変制御再開後に減衰力特性が所望の特性まで変更するまでに作動する可変絞り機構30の作動量の増大が抑えられ、ひいては可変絞り機構30の耐久性が向上する。また、可変制御再開後には、減衰力特性を速やかに所望の減衰力特性に設定することができるため、制御の遅れが少ない。加えて、制御の遅れに伴って発生する減衰力不足を解消できる。
また、制御モードが作動禁止制御である場合、ダンパの減衰力特性を表す段数の制御目標段数である要求段数が、前回の要求段数決定処理により決定された要求段数と同じ段数に設定される。これにより、簡単な制御で可変絞り機構30の作動を禁止させることができる。

Claims (4)

  1. バネおよびダンパを備え、バネ上部材とバネ下部材との間に介装され、バネ上部材を支持する複数のサスペンション装置の前記ダンパの減衰力特性を制御する減衰力制御装置において、
    前記ダンパの減衰力特性を変更する減衰力特性変更手段と、
    前記サスペンション装置の上下方向の振動速度を表すバネ上−バネ下相対速度であって、バネ上部材とバネ下部材との間隔が狭まる方向に向かう相対速度が正の速度と定められ、バネ上部材とバネ下部材との間隔が広がる方向に向かう相対速度が負の速度と定められるバネ上−バネ下相対速度を取得するバネ上−バネ下相対速度取得手段と、
    複数の前記サスペンション装置により支持される位置におけるバネ上部材の上下方向の速度であり、上方向に向かう速度を正、下方向に向かう速度を負と定めたバネ上速度の総和であるバネ上速度和を取得するバネ上速度和取得手段と、
    前記バネ上速度和と前記バネ上−バネ下相対速度との積の正負を判別する正負判別手段と、
    前記正負判別手段により前記積が正であると判別された場合に、非線形H 制御理論に基づいて、前記サスペンション装置の前記ダンパが発生すべき減衰力である要求減衰力を計算し、計算した要求減衰力に基づいて前記ダンパの減衰力特性を決定し、決定した減衰力特性に応じた信号を前記減衰力特性変更手段に出力することにより、バネ上部材の振動状態に応じて前記ダンパの減衰力特性が変化するように、前記減衰力特性変更手段の作動を制御する減衰力特性制御手段と、
    前記正負判別手段により前記積が負であると判別された場合に、前記減衰力特性変更手段の作動を禁止する作動禁止手段と、
    を備えることを特徴とする、減衰力制御装置。
  2. 請求項1に記載の減衰力制御装置において、
    前記作動禁止手段は、前記ダンパの減衰力特性の目標特性を、前回決定された目標特性と同じ特性となるように設定することによって、前記減衰力特性変更手段の作動を禁止することを特徴とする、減衰力制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の減衰力制御装置において、
    前記減衰力特性変更手段は、前記ダンパに取付けられ、作動することにより前記ダンパの減衰力特性を変更するバルブ部材と、前記バルブ部材に連結し、前記バルブを作動させるアクチュエータとを備えることを特徴とする、減衰力制御装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の減衰力制御装置において、
    前記減衰力特性変更手段は、前記ダンパの減衰力特性を段階的に変更することを特徴とする、減衰力制御装置。
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