JPH08175145A - サスペンション制御装置 - Google Patents

サスペンション制御装置

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Publication number
JPH08175145A
JPH08175145A JP32321494A JP32321494A JPH08175145A JP H08175145 A JPH08175145 A JP H08175145A JP 32321494 A JP32321494 A JP 32321494A JP 32321494 A JP32321494 A JP 32321494A JP H08175145 A JPH08175145 A JP H08175145A
Authority
JP
Japan
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damping coefficient
damping
frictional force
force
suspension
Prior art date
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Pending
Application number
JP32321494A
Other languages
English (en)
Inventor
Michito Hirahara
道人 平原
Takeshi Kimura
健 木村
Yosuke Akatsu
洋介 赤津
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】走行条件或いは経時変化等による摩擦力の増加
によるサスペンション特性の変動を防止し、摩擦力変動
に関わらずサスペンション特性を一定とする。 【構成】車速センサ30の検出値Vが基準車速VMIN
りも大きいとき、バネ上及びバネ下加速度検出値X2n
及びX1n″に基づき5Hzの伝達ゲインG5nを算出し、
算出した5Hzの伝達ゲインG5nが予め設定した基準ゲ
インG5Hよりも大きいとき、摩擦力が大きいものと判定
し、減衰係数Cn を低減衰力を発生させる“ソフト”に
変更して出力し、その後、摩擦力が走行条件等により小
さくなり、5Hzの伝達ゲインG5nが予め設定した基準
ゲインG5Lよりも小さくなったとき、摩擦力の影響はな
いものとして減衰係数Cn を高減衰力を発生させる“ハ
ード”に設定し、全体の減衰力は摩擦力変動に関わら
ず、常に一定の減衰力となるように制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車体の姿勢変化状態
に基づいてサスペンションの減衰力を制御するようにし
たサスペンション制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のサスペンション制御装置として
は、例えば、特開昭61−1519号公報に記載された
サスペンション制御装置等が知られており、例えば、車
体の各輪上部に車体の上下方向の状態変化を検出する上
下加速度センサを配設し、また、車体の適所に車速を検
出する車速センサを配設し、さらに、ステアリングホイ
ールの操舵角を検出するステアリングセンサを配設し、
これら各検出値に基づいて、発生させる減衰力をハー
ド、ソフト、ノーマルの何れかに制御するようになされ
ている。そして、例えば、車両が比較的良路を走行中で
あり、上下加速度センサの検出値に基づく車体の上下加
速度が予め設定した所定値よりも小さい場合には乗心地
に影響が少ないため減衰力をハード(高減衰力)または
ノーマルに設定して操縦安定性を重視し、車両が悪路を
走行中であり、上下加速度検出値が予め設定した所定値
よりも大きい場合には減衰力をソフト(低減衰力)又は
ノーマルに設定して乗心地を重視し、操縦安定性及び乗
心地を良好に維持するようになされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来例のサスペンション制御装置では、経時変化に伴うサ
スペンション装置の摩擦力増加(ブッシュのヒステリシ
スロスを含む)、或いは、走行条件の変化に伴うサスペ
ンションの摩擦力変化等によって摩擦力が変化した場
合、摩擦力の変動分が減衰力として作用することによっ
て結果的に減衰力が変化してしまうことになり、よっ
て、サスペンション制御装置の減衰力特性が変化してし
まうことがある。このように摩擦力が大きくなると、例
えば、車両が良路を走行中等には、サスペンション装置
への路面からの入力が比較的小さいために、振動特性に
おけるサスペンション装置に対する摩擦力の影響が相対
的に大きく、且つ、車体の上下加速度も小さくなって減
衰力がハード側となるため乗心地を損ねてしまう。逆
に、車両が悪路を走行中である場合には、サスペンショ
ン装置への路面からの入力が比較的大きいためにその振
動特性におけるサスペンション装置の摩擦力の影響が相
対的により小さくなり、しかもこのときには、車体上下
加速度も大きくなって減衰力がソフト側となるため、バ
ネ下、バネ上の振動が十分に減衰されないという未解決
の課題がある。
【0004】また、摩擦力は、車両の走行条件、或い
は、バネの胴曲がり、経時劣化等の様々な要因により変
化するものであり、特にストラット型サスペンションの
摩擦力はその構造上、サスペンションストロークや、或
いはタイヤに加わる横力等により大きく変化するので、
この摩擦力の変化によって、常に所望のサスペンション
特性を得られるとは限らず、乗心地、或いは、操縦安定
性が変化する恐れがある。
【0005】そこで、この発明は、上記従来の未解決の
課題に着目してなされたものであり、経時変化、或い
は、走行条件等によって摩擦力が変化した場合でもサス
ペンション特性が変化することなく、常に一定のサスペ
ンション特性を維持することの可能なサスペンション制
御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に関わるサスペンション制御装置は、図1
の基本構成図に示すように、車体側部材及び車輪側部材
間に介装され、減衰係数が変更可能なショックアブソー
バを備えたサスペンション装置と、該サスペンション装
置の摩擦力を検出する摩擦力検出手段と、該摩擦力検出
手段の検出値に基づいて前記ショックアブソーバの減衰
係数を補正する減衰係数補正手段とを備えることを特徴
としている。
【0007】また、請求項2に関わるサスペンション制
御装置は、請求項1記載の摩擦力検出手段は、前記車体
側部材及び車輪側部材の上下加速度をそれぞれ検出する
上下加速度検出手段と、車速を検出する車速検出手段
と、該車速検出手段の検出値が予め設定した基準値より
も大きいとき前記上下加速度検出手段の各検出値をもと
に前記サスペンション装置の伝達特性を検出する伝達特
性検出手段とを有し、該伝達特性検出手段の検出値に基
づいて前記サスペンション装置の摩擦力を検出すること
を特徴としている。
【0008】また、請求項3に関わるサスペンション制
御装置は、請求項2に記載の伝達特性検出手段は、前記
上下加速度検出手段の検出値をもとに予め設定した所定
振動周波数域での伝達ゲイン又は位相遅れを検出するこ
とを特徴としている。さらに、請求項4に記載のサスペ
ンション制御装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の
ショックアブソーバは、段階的に減衰係数を変更させる
ことが可能であり、前記減衰係数補正手段は、減衰係数
を補正すべき条件が検出されたとき所定の遅延時間後に
前記ショックアブソーバの減衰力を補正することを特徴
としている。
【0009】
【作用】請求項1に関わるサスペンション制御装置は、
摩擦力検出手段で検出したサスペンション装置の摩擦力
に応じて減衰係数補正手段によりショックアブソーバの
減衰係数を補正することにより、例えば、走行条件、或
いは、経時変化等に伴うサスペンション装置の摩擦力変
動により摩擦力が増加した場合等には、減衰力として作
用する摩擦力増加分を減少させるように減衰係数を所定
値よりも小さく補正することにより、前記制御信号に応
じた減衰力と摩擦力の作用による減衰力との和により、
所望とする減衰力を発生させることになり、摩擦力変動
に伴うサスペンション特性の変化を防止する。
【0010】また、請求項2に関わるサスペンション制
御装置は、車速検出手段で検出した車速が予め設定した
基準値よりも大きいとき、上下加速度検出手段で検出し
た車体側部材及び車輪側部材それぞれの上下加速度をも
とに伝達特性検出手段によりサスペンション装置の伝達
特性を検出し、この検出した伝達特性に基づいてサスペ
ンション装置の摩擦力を検出することにより、例えば、
車速検出手段の検出値に基づき車両が的確な伝達特性を
検出可能な走行状態であると判定したときの車体側部材
及び車輪側部材の上下加速度検出値に基づいて伝達特性
を検出し、このとき伝達特性は摩擦力の変化に応じて変
化する傾向があることから、例えば検出した伝達特性と
予め設定した伝達特性の基準値とを比較することにより
摩擦力の大小、或いは、変動量を容易に検出することが
できる。
【0011】また、請求項3に関わるサスペンション制
御装置は、上下加速度検出手段の検出値に基づき、予め
設定した所定振動周波数域での伝達ゲイン又は位相遅れ
を検出することにより、例えば、前記サスペンション装
置の摩擦力変化に伴う伝達ゲイン、或いは、位相遅れの
変化が大きく現れる周波数域を所定振動周波数域として
設定し、この周波数域での伝達ゲイン又は位相遅れを検
出し、所定の伝達ゲイン或いは位相遅れの基準値と比較
することにより、摩擦力変動を容易に検出することがで
きる。
【0012】さらに、請求項4に関わるサスペンション
制御装置は、例えば、前記ショックアブソーバの減衰係
数が段階的に変更させるものである場合に、減衰係数補
正手段は減衰係数を補正すべき条件が検出された時、所
定の遅延時間後に前記ショックアブソーバの減衰係数を
補正するので、減衰係数を高側又は低側に段階的に変化
させたときサスペンション装置は不安定となり的確な摩
擦力検出を行うことができないが、この間、サスペンシ
ョン制御装置はウエイト状態となるのでサスペンション
装置が誤制御されることはない。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図2は本発明の第1実施例におけるサスペンショ
ン制御装置の概略構成図である。図2に示すように、車
体側部材としての車体507と車輪側部材としての各車
輪13FL〜13RRとの間に、車重を支持するスプリ
ング510FL〜510RRと、衝撃や振動を減衰し、
且つ、減衰力を、少なくとも低減衰力と高減衰力との2
段階に切替可能な減衰力可変ショックアブソーバ501
FL〜501RRとを含むサスペンション装置509F
L〜509RRが介装されている。
【0014】そして、このサスペンション装置509F
L〜509RRの上部の車体側に、バネ上の上下方向の
加速度を検出するバネ上加速度センサ51FL〜51R
Rが取り付けられ、また、バネ下の上下方向の加速度を
検出するバネ下加速度センサ52FL〜52RR(図示
せず)及び車速センサ30(図示せず)が車両の適所に
取り付けられ、バネ上加速度センサ51n及びバネ下加
速度センサ52nが上下加速度検出手段に対応し、車速
センサ30が車速検出手段に対応している。
【0015】これらバネ上加速度センサ51n(n=F
L〜RR)のそれぞれは、図3に示すように、例えば、
上下加速度が零のときに零の電圧を出力し、上向きの加
速度が生じたときにこれに応じて正の電圧でなるバネ上
加速度検出値X2n″(n=FL〜RR)を出力し、下向
きの加速度が生じたときにこれに応じて負の電圧でなる
バネ上加速度検出値X2n″を出力する。同様に、バネ下
加速度センサ52n(n=FL〜RR)のそれぞれは、
例えば、上下加速度が零のときに零の電圧を出力し、上
向きの加速度が生じたときにこれに応じて正の電圧でな
るバネ下加速度検出値X1n″(n=FL〜RR)を出力
し、下向きの加速度が生じたときにこれに応じて負の電
圧でなるバネ下加速度検出値X1n″を出力し、これら各
加速度センサ51n及び52nの各検出値X1n″及びX
2n″と、車速センサ30の車速検出値Vは、それぞれ制
御装置4に供給される。
【0016】図4は、減衰力可変ショックアブソーバ5
01n(n=FL〜RR)の一例を示す断面図であり、
減衰力可変ショックアブソーバ501nのそれぞれは同
一構成であり、上端が車体507側に固定されて車体5
07と一体に動く外筒515及びロッド516と、下端
が車輪13n(n=FL〜RR)側に固定されて車輪1
3nと一体に動くチューブ517とを含み、ロッド51
6はアッパロッド518とロアロッド519とを連結し
て構成される。
【0017】ロアロッド519の下端には、チューブ5
17内を摺動するピストン520が配設され、ピストン
520の下方のチューブ517内にフリーピストン52
1が配置され、チューブ517内部のピストン520の
上方にピストン上室Aが、ピストン520とフリーピス
トン521との間にピストン下室Bが、フリーピストン
521の下方にガス室Cがそれぞれ形成され、このピス
トン上室Aとピストン下室Bとには作動油が、ガス室C
には高圧ガスがそれぞれ封入される。
【0018】ピストン520には、伸び側バルブ522
及び伸び側オリフィス523と、縮み側バルブ524及
び縮み側オリフィス525とが設けられている。アッパ
ロッド518の中心軸部分には、貫通孔526及び空洞
部527が形成され、また、ロアロッド519には、ピ
ストン上室Aとピストン下室Bとを連通するバイパス路
528、及びそのバイパス路528の途中部分とアッパ
ロッド518に形成された空洞部527とを連通する空
洞部529が形成されている。
【0019】アッパロッド518の空洞部527には、
縦断面形状がT字形のプランジャ530が配置され、こ
のプランジャ530の下方部分はロアロッド519の空
洞部529に挿入される。また、アッパロッド518の
空洞部527の内部において、プランジャ530の周囲
にソレノイド531が配置され、さらに、このプランジ
ャ530を常時上方に押圧するリターンスプリング53
2が配置される。
【0020】ソレノイド531は、アッパロッド518
の貫通孔526を通るリード線533を介して、アクチ
ュエータ駆動回路59に接続される。この減衰力可変シ
ョックアブソーバ501は、伸び行程では、伸び側バル
ブ522が開いて、伸び側オリフィス523を介してピ
ストン上室Aとピストン下室Bとが連通し、且つ、縮み
側バルブ524によって縮み側オリフィス525が閉塞
される。また、縮み行程では縮み側バルブ524が開い
て、縮み側オリフィス525を介してピストン上室Aと
ピストン下室Bとが連通し、且つ、伸び側バルブ522
によって伸び側オリフィス523が閉塞される。
【0021】また、上述した伸び行程又は縮み行程の何
れの場合であっても、ソレノイド531がアクチュエー
タ駆動回路59によって励磁されない非通電状態では、
プランジャ530がリターンスプリング532によっ
て、図面上方(D方向)に押圧され、プランジャ530
の下端がバイパス路528から外れ、バイパス路528
を介してピストン上室Aとピストン下室Bとが連通す
る。したがって、減衰力可変ショックアブソーバ501
の減衰力は低減衰力となる。
【0022】また、ソレノイド531がアクチュエータ
駆動回路59によって励磁された通電状態では、プラン
ジャ530はソレノイド531の電磁力によって、リタ
ーンスプリング532の付勢力に抗して、図面下方(E
方向)に移動され、バイパス路528が閉塞される。し
たがって、減衰力可変ショックアブソーバ501の減衰
力は高減衰力となる。
【0023】図5は、制御装置4の構成を示したもので
あり、制御装置4は、マイクロコンピュータ56と、前
記各センサからの検出値をデジタル値に変換してマイク
ロコンピュータ56に供給するA/D変換器と、マイク
ロコンピュータ56から出力される各輪に対する減衰係
数CFL〜CRRをD/A変換するD/A変換器58FL〜
58RRと、このD/A変換器58n(n=FL〜R
R)からのアナログ電圧vFL〜vRRが入力されるアクチ
ュエータ駆動回路59FL〜59RRとを備えている。
【0024】マイクロコンピュータ56は、少なくとも
入力インタフェース回路56a、出力インタフェース回
路56b、演算処理装置56c及び記憶装置56dを有
し、入力インタフェース回路56aには、バネ上加速度
センサ51FL〜51RRからのバネ上加速度検出値X
2FL ″〜X2RR ″、バネ下加速度センサ52FL〜52
RRからのバネ下加速度検出値X1FL ″〜X1RR ″、車
速センサ30からの車速検出値VがそれぞれA/D変換
器571FL〜571RR、572FL〜572RR及
び57Vを介して入力される。
【0025】そして、出力インタフェース回路56bか
ら出力される減衰係数CFL〜CRRがD/A変換器58F
L〜58RRでアナログ電圧vFL〜vRRに変換されて、
対応するアクチュエータ駆動回路59FL〜59RRに
それぞれ供給される。演算処理装置56cは、入力イン
タフェース回路56aを介して、バネ上加速度センサ5
1n及びバネ下加速度センサ52nからのバネ上加速度
検出値X2n″及びバネ下加速度検出値X1n″と、車速セ
ンサ30からの車速検出値Vとを入力し、車速検出値V
が予め設定した基準車速VMIN よりも大きいとき、バネ
上加速度検出値X2n″及びバネ下加速度検出値X1n″に
基づいて伝達ゲインG5n(n=FL〜RR)を算出し、
この伝達ゲインG5nをもとに減衰係数Cn (n=FL〜
RR)を設定し、出力インタフェース回路56bを介し
てD/A変換器58FL〜58RRに出力する。
【0026】記憶装置56dは、ROM、RAM、EP
−ROM等の不揮発性メモリ等で構成され、前記演算処
理装置56cの演算処理に必要なプログラムを予め記憶
していると共に、演算処理装置56cの演算結果を逐次
記憶する。また、アクチュエータ駆動回路59FL〜5
9RRのそれぞれは、例えばフローティング型の定電流
回路で構成され、入力される、減衰係数CFL〜CRRをD
/A変換したアナログ電圧vFL〜vRRに応じた励磁電流
FL〜iRRを各減衰力可変ショックアブソーバ501n
の各ソレノイド531nに供給する。
【0027】次に、上記実施例の動作を演算処理装置5
6cの処理手順を示す図6のフローチャートに基づいて
説明する。なお、演算処理装置56cでは、各輪に対す
る減衰係数CFL〜CRRの算出は、例えば、前左輪側、前
右輪側、後左輪側、後右輪側の順に、各減衰力可変ショ
ックアブソーバに対して同一処理を行うので、ここで
は、n=FL〜RRとして、ある減衰力可変ショックア
ブソーバ501nについて処理を行う場合について説明
する。
【0028】演算処理装置56cでは、イグニッション
スイッチがオン状態となり制御装置4の電源が投入され
ると、演算処理装置56cが起動し図6の減衰係数設定
処理を実行する。まず、ステップS1で、減衰係数の初
期値として“ハード”、すなわち、高減衰力を発生させ
る減衰係数に設定し、出力インタフェース回路56bを
介してD/A変換器58nに出力する。次いでステップ
S2に移行して、バネ上加速度センサ51n及びバネ下
加速度センサ52nの各加速度検出値X2n″及びX1n
と、車速センサ30の車速検出値Vとを読み込む。
【0029】次いで、ステップS3に移行し、車速検出
値Vが基準車速VMIN よりも大きいか否かを判定する。
ここで、基準車速VMIN は予め任意に設定された値であ
り、停車状態、或いは、極低速時には、バネ上及びバネ
下加速度検出値が極めて小さく、伝達ゲインを正確に算
出することができないので、伝達ゲインの算出に充分な
バネ上下加速度検出値を得ることの出来る車速を基準車
速VMIN として設定したものである。
【0030】そして、ステップS3で、V>VMIN であ
る場合にはステップS4に移行し、V>VMIN でない場
合には伝達ゲインの算出は不可能であるものとしてステ
ップS10に移行する。上記ステップS4では、バネ下
からバネ上への5Hzの伝達ゲインG5n(n=FL〜R
R)を算出する。ここで、算出周波数域を5Hzとして
設定したのは、人間は一般に3〜8Hz付近の振動を最
も不快と感じており、また、摩擦力(ブッシュ等のヒス
テリシスロスを含む。)が大きい場合には、バネ上共振
(1〜3Hz)とバネ下共振(10〜15Hz)との間
の周波数帯において摩擦力の増加分と一意な関係で伝達
ゲインが大きくなる傾向があるので、5Hzの伝達ゲイ
ンを代表して算出している。
【0031】ここで、この5Hzの伝達ゲインG5nの算
出は、正確な伝達ゲインを算出しようとする場合には、
例えば、フーリエ変換やパワースペクトル密度算出等の
計算負荷が大きいため、以下のような簡易算出方法によ
り、算出するようにしてもよい。この簡易算出方法で
は、例えば、5Hz付近だけを通すバンドパスフィルタ
等を介してバネ上加速度検出値X2n″及びバネ下加速度
検出値X1n″を入力する等によって、5Hz付近だけの
バネ上加速度検出値X2n″及びバネ下加速度検出値
1n″を検出し、これを自乗積分して自乗積分値I1n
及びI2n を算出する。このとき、積分時間は5Hzの
振動が数周期以上必要なため、制御周期が長くなり過ぎ
ない範囲で、例えば、約1秒以上の積分時間が望まし
い。
【0032】そして、これら自乗積分値I1n 及びI2
n をもとに下記(1)式に基づいて5Hzの伝達ゲイン
5nを算出する。なお、式中のSqrtは平方根を表す
ものとする。 G5n=Sqrt(I2n /I1n )(n=FL〜RR) ……(1) 図6に戻って、ステップS4で5Hzの伝達ゲインG5n
を算出すると次にステップS5に移行し、ステップS5
では、所定の記憶領域に記憶している前回設定時の減衰
係数Cn が減衰力可変ショックアブソーバ501nから
高減衰力を発生させる“ハード”に設定されているか否
かを判定し、“ハード”に設定されている場合にはステ
ップS6に移行し、“ハード”に設定されていない場合
にはステップS11に移行する。
【0033】そして、ステップS6では、ステップS4
で算出した5Hzの伝達ゲインG5nと予め設定した基準
ゲインG5Hとが、G5 >G5Hであるか否かを判定し、G
5 >G5Hである場合には摩擦力が大きいものと判定して
ステップS7に移行し、G5>G5Hでない場合には摩擦
力の影響は少ないものとし、ステップS10に移行す
る。
【0034】次いで、ステップS7では、減衰係数Cn
を減衰力可変ショックアブソーバ501nから低減衰力
を発生させる“ソフト”に設定してステップS8に移行
し、ステップS8では設定した減衰係数Cn を出力イン
タフェース回路56bを介してD/A変換器58nで所
定の電圧値vn に変換してアクチュエータ駆動回路59
nに出力する。
【0035】そして、ステップS9に移行してウエイト
状態、すなわち、予め設定した所定時間tα待機し、所
定時間tα経過後、ステップS10に移行する。ここ
で、この所定時間tαは減衰係数Cn が“ソフト”又は
“ハード”に切り換わることによる制御の違和感防止
と、“ハード”から“ソフト”或いは“ソフト”から
“ハード”に切り換わるときのハンチング防止のために
行うものであり、車体振動の減衰時間(一般に0.5〜
2.0秒)が望ましい。
【0036】そして、上記ステップS10では、所定の
制御終了条件を満足しているか、例えば、イグニッショ
ンスイッチのオフ状態が一定時間持続されたか否かを判
定する。そして、制御終了条件を満足する場合には処理
を終了し、制御終了条件を満足しない場合にはステップ
S2に戻る。上記ステップS11では、ステップS4で
算出した5Hzの伝達ゲインG5nと予め設定した基準ゲ
インG5LとがG5n<G5Lであるか否かを判定し、G5n
5Lである場合には摩擦力が小さいものと判定してステ
ップS12に移行し、G5n<G5Hでない場合には摩擦力
が大きいものとしてそのままステップS10に移行す
る。
【0037】ここで、上述の基準ゲインG5H及びG
5Lは、減衰係数Cn が“ソフト”又は“ハード”として
設定されることによってハンチングをおこさないように
設定したものであり、基準ゲインG5Hに対し、5Hzの
伝達ゲインG5n=G5Hとなるような摩擦力が働き、減衰
係数が“ハード”から“ソフト”に変わった後の伝達ゲ
インG5nがG5n>G5Lとなるように基準ゲインG5Lを設
定する。或いは、基準ゲインG5Lに対し、5Hzの伝達
ゲインG5n=G5Lとなるような摩擦力が働き、減衰係数
が“ソフト”から“ハード”に変わった後の伝達ゲイン
5nがG5n<G5Hとなるように基準ゲインG5Hを設定す
る。
【0038】そして、ステップS12では、減衰係数C
n を“ハード”に設定し、ステップS8に移行する。こ
こで、ステップS4が摩擦力検出手段及び伝達特性検出
手段に対応し、ステップS7及びステップS12が減衰
係数補正手段に対応している。したがって、上記第1実
施例におけるサスペンション制御装置を簡略化すると、
図7に示す制御モデルとなる。
【0039】次に、上記第1実施例の動作を説明する。
今、車両が平坦路に停止しているものとし、この状態か
らイグニッションスイッチをオン状態とすると、制御装
置4の電源が投入されて、演算処理装置56cが作動し
て図6に示す減衰力設定処理を実行する。そして、ま
ず、初期設定を行い、減衰係数Cn をサスペンション装
置から高減衰力を発生させる“ハード”に設定し、出力
インタフェース回路56bを介してD/A変換器58n
に出力する。D/A変換器58nではこれを所定の電圧
値vn に変換してアクチュエータ駆動回路59nに出力
し、アクチュエータ駆動回路59nでこの電圧値vn
基づいて、ソレノイド531nを励磁する所定の励磁電
流in を出力することによって、減衰力可変ショックア
ブソーバ501nのプランジャ530がソレノイド53
1nの電磁力によって、リターンスプリング532の付
勢力に抗して、図4の下方(E方向)に移動され、バイ
パス路528が閉塞される。したがって、減衰力可変シ
ョックアブソーバ501nの減衰力は高減衰力となる。
【0040】そして、このとき、車両が停車している状
態であるので、車速検出値Vが零となることから的確な
伝達ゲインの算出は不可能であるものとし、伝達ゲイン
の算出は行わず、減衰係数Cn は初期値、すなわち、
“ハード”に設定された状態を維持する。この状態か
ら、車両が発進してうねり路等を直進走行する状態とな
ると、車速検出値VがV<VMIN である間は、正確な伝
達ゲインの算出は不可能であるので、伝達ゲインの算出
は行わず、よって、減衰係数は初期設定した“ハード”
の状態を維持する。
【0041】そして、車速検出値Vが基準車速VMIN
越えると、演算処理装置56cでは伝達ゲインの算出が
可能であるものとして、バネ上加速度検出値X2n″とバ
ネ下加速度検出値X1n″とをもとに5Hzの伝達ゲイン
5nの算出を行い、このとき、サスペンション装置に経
時変化、走行条件等により摩擦力の変化が生じておら
ず、サスペンション装置設計時のサスペンション特性を
維持している状態であるものとすると、バネ上加速度検
出値X2n″及びバネ下加速度検出値X1n″に基づき算出
した伝達ゲインG5nは、サスペンション装置が初期のサ
スペンション特性を維持していることから、基準ゲイン
5Hよりも小さくなり、よって、摩擦力の影響は少ない
ものとして減衰係数の変更は行わない。
【0042】そして、例えば、サスペンション装置に経
時変化、或いは、走行条件等に伴う摩擦力の増加が生じ
ている場合には、バネ上加速度検出値X2n″及びバネ下
加速度検出値X1n″に基づき算出した伝達ゲインG
5nは、摩擦力の増加に伴って基準ゲインG5Hよりも大き
くなるので、演算処理装置56cでは減衰係数Cn
“ソフト”に設定し、出力インタフェース回路56bを
介してD/A変換器58nに出力する。D/A変換器5
8nではこれを所定の電圧値vn に変換してアクチュエ
ータ駆動回路59nに出力し、アクチュエータ駆動回路
59nでこの電圧値v n に基づいて、ソレノイド531
nを励磁する所定の励磁電流in の出力を停止すること
によって、減衰力可変ショックアブソーバ501nのプ
ランジャ530がリターンスプリング532によって、
図4の上方(D方向)に押圧され、プランジャ530の
下端がバイパス路528から外れ、バイパス路528を
介してピストン上室Aとピストン下室Bとが連通して、
減衰力可変ショックアブソーバ501nの減衰力は低減
衰力となる。
【0043】これによって、例えば減衰係数Cn が“ハ
ード”に設定され、減衰力可変ショックアブソーバ50
1nから高減衰力が発生されている状態で、さらに摩擦
力が加わった場合、減衰力が大きくなり過ぎるために乗
心地が悪化するが、伝達ゲインに基いて摩擦力の影響が
大きいと判定したとき減衰係数Cn を低減衰力に設定す
ることにより、高減衰力を発生している状態でさらに摩
擦力が加算されて減衰力が増加することはなく、乗心地
の悪化を防止することができ、また、操縦安定性の低下
を防止することができる。
【0044】そして、このとき、高減衰力に設定されて
いる状態から低減衰力に変更したので、所定時間、例え
ば0.5〜2.0秒程度、ウエイト状態状態となるの
で、低減衰力に設定することによって伝達ゲインG5n
不安定となり、この不安定な伝達ゲインG5nに基づき摩
擦力の影響の大小を判定することにより、減衰係数Cn
が高減衰力又は低減衰力に変更されることに伴いハンチ
ングが生じることを防止する。
【0045】そして、次に減衰係数設定処理を実行した
ときには、現在減衰係数が低減衰力に設定されているこ
とから、ステップS5からステップS11に移行し、こ
のとき、算出した伝達ゲインG5nが基準ゲインG5Lより
も大きいものとすると、減衰係数は低減衰力に設定され
たままとなる。このとき、例えば、振動入力等による摩
擦力の変化、或いは、ブッシュのヒステリシスロス等の
変化等によって伝達ゲインG5nが小さくなり、基準ゲイ
ンG5Lよりも小さくなった場合には、摩擦力の影響は小
さいものとしてステップS11からS12に移行して減
衰係数Cn を高減衰力に設定し、これにより、摩擦力の
影響が小さい場合には減衰力を抑制しない。
【0046】したがって、摩擦力が大きい場合には低減
衰力に設定し、摩擦力が小さくなった場合には高減衰力
に設定するようにしているので、サスペンション装置全
体としては摩擦力により減衰力が変化することはなく、
摩擦力の変化に係わらず、確実に所定の減衰力を発生さ
せることができる。よって、第1実施例のサスペンショ
ン制御装置では、走行条件、経時劣化等の様々な要因に
よる摩擦力変化に伴う操縦安定性、或いは乗心地の悪化
を防止し、常に所望のサスペンション特性に近い特性を
得ることができる。
【0047】図8は、横軸にバネ上及びバネ下間の相対
距離X、縦軸にサスペンション装置に働く制御力Fとし
た場合のサスペンション特性を表したものであり、図8
(a)は、例えば、減衰係数Cn が高減衰力に設定され
ている場合の摩擦力変化が発生していないときのサスペ
ンション特性であるものとする。そして、経時変化、或
いは走行条件等により摩擦力が増加した場合、図8
(b)に示すようにこの摩擦力の増加分が減衰力に加算
されるために、そのサスペンション特性が変化する。
【0048】そこで、図6の減衰力設定処理において、
伝達ゲインG5nに基づいて摩擦力が大きいと判定したと
き、減衰係数Cn を小さく設定することにより、図8
(c)に示すように、摩擦力が加算された分、サスペン
ション装置が発生する減衰力が小さくなるので、図8
(d)に示すように、実線で示す、摩擦力がある状態で
減衰力を小さくした場合のサスペンション特性を、破線
で示す、摩擦力が増加していない場合のサスペンション
特性に近づけることができる。
【0049】したがって、摩擦力変化が発生した場合で
も初期のサスペンション特性を維持することができ、良
好な乗心地を提供することができ、また、操縦安定性が
損なわれることはない。また、図9は、車両の振動特性
を表したものであり、破線aは摩擦力Ff=0〔k
g〕、減衰係数C=2500〔Ns/m〕、一点鎖線b
は摩擦力Ff=20〔kg〕、減衰係数C=2500
〔Ns/m〕、実線cは摩擦力Ff=20〔kg〕、減
衰係数C=1600〔Ns/m〕に設定した場合の振動
特性を表している。破線a及び一点鎖線bに示すよう
に、摩擦力が発生することによって摩擦力が発生してい
ない状態に比較して振動特性が変化しているが、実線c
に示すように摩擦力が発生しているとき減衰係数を小さ
くすることによって、実線cは破線aとほぼ同等とな
り、摩擦力が発生している場合でも減衰係数を小さくす
ることによって、摩擦力がない状態の振動特性を維持す
ることができる。
【0050】なお、上記第1実施例においては、減衰力
を高減衰力に維持するようにした場合について説明した
が、例えば、バネ上及びバネ下間の相対速度とバネ上加
速度とに応じて減衰係数Cn を算出し、算出した減衰係
数Cn に基づいて摩擦力の影響を判定し、これに応じて
減衰係数Cn を設定するようにすることも可能である。
【0051】次に、本発明の第2実施例について説明す
る。この第2実施例は、上記第1実施例では減衰係数C
n を高減衰力と低減衰力との2段階に設定可能な減衰力
可変ショックアブソーバに適用した場合について説明し
たが、この第2実施例では減衰係数Cn を連続的に設定
可能な減衰力可変ショックアブソーバに適用したもので
ある。
【0052】図10は、第2実施例におけるサスペンシ
ョン制御装置の概略構成を示したものであり、車輪側部
材としての各車輪13FL〜13RRと車体側部材とし
ての車体2との間にそれぞれサスペンション装置を構成
する減衰力可変ショックアブソーバ3FL〜3RRが配
設され、これら減衰力可変ショックアブソーバ3FL〜
3RRの減衰力を切り換えるステップモータ41FL〜
41RRが後述する制御装置4からの制御信号によって
制御される。
【0053】減衰力可変ショックアブソーバ3FL〜3
RRは、図11〜図15に示すように、外筒5と内筒6
とで構成されるシリンダチューブ7を有するツインチュ
ーブ式ガス入りストラット型に構成され、内筒6内がこ
れに摺接するピストン8によって上下圧力室9U,9L
に画成されている。ピストン8は、図12〜図15で特
に明らかなように、外周面に内筒6と摺接するシール部
材9がモールドされ内周面に中心開孔10を有する円筒
状の下部半体11と、下部半体11に内嵌された上部半
体12とで構成されている。
【0054】下部半体11には、上下に貫通して穿設さ
れた伸側油流路13と、上面側から下方にシール部材9
の下側まで延長して穿設された前記伸側油流路13より
大径の孔部14a及び円筒体11の外周面から孔部14
aの底部に連通して穿設された孔部14bで構成される
圧側油流路14と、中心開孔10の上下開口端に形成さ
れた円環状溝15U,15Lと、上面側に形成された円
環状溝15Uと前記伸側油流路13とにそれぞれ連通す
る長溝16と、下面側に形成され円環状溝15Lと連通
する長溝17とが形成され伸側油流路13の下端側及び
長溝17が伸側ディスクバルブ18によって閉塞され、
圧側油流路14の上端側が圧側ディスクバルブ19によ
って閉塞されている。
【0055】また、上部半体12は、下部半体11の中
心開孔10内に嵌挿された小径軸部21と、この軸部2
1の上端に一体に形成された内筒6の内径より小径の大
径軸部22とで構成され、これら小径軸部21及び大径
軸部22の中心位置に、小径軸部21の下端面側から大
径軸部22の中間部まで達する孔部23aと、この孔部
23aの上端側に連通してこれより小径に孔部23b
と、この孔部23bの上端側に連通するこれより大径の
孔部23cとで構成される貫通孔23が形成され、小径
軸部21の円環状溝15U及び15Lに対向する位置に
それぞれ半径方向に内局面側に貫通する一対の貫通孔2
4a,24b及び25a,25bが穿設され、且つ、大
径軸部22の孔部23aの上端側にこれと連通する弧状
溝26が形成されていると共に、この弧状溝26と下端
面とを連通するL字状の圧側油流路27が形成され、こ
の圧側油流路27の下端面開口部が圧側ディスクバルブ
28によって閉塞されている。
【0056】そして、下部半体11と上部半体12と
が、下部半体11の中心開孔10内に小径軸部21を嵌
挿した状態で、小径軸部21の下部半体11より下方に
突出した下端部にナット29を螺合させてナット締めす
ることにより、一体に連結されている。さらに、上部半
体12の孔部23a内に可変絞りを構成する上端部が閉
塞された円筒状の弁体31が回動自在に配設されてい
る。この弁体31には、図12に示すように、上部半体
12における大径軸部22の弧状溝26に対向する位置
に半径方向に内周面に達する貫通孔32が形成されてい
ると共に、図13〜図15に示すように上部半体12の
小径軸部21の貫通孔24a及び24b間に対応する外
周面にこれらを連通する連通溝33が形成され、さら
に、図14に示すように上部半体12の小径軸部21の
貫通孔25a及び25b間に対応する外周面にこれらを
内周面側に連通させる軸方向に延長する長孔34が形成
されている。
【0057】そして、貫通孔32、連通溝33及び長孔
34の位置関係が、図16に示す弁体31の回転角、す
なわち、後述するステップモータ41FL〜41RRの
ステップ角に対する減衰力特性が得られるように選定さ
れている。すなわち、例えば、時計方向の最大回転角位
置である図16のA位置では、図12に示すように、貫
通孔32のみが弧状溝26に連通しており、したがっ
て、ピストン8が下降する圧側移動に対しては、下圧力
室9Lから圧側油流路14を通り、その開口端と圧側デ
ィスクバルブ19とで形成されるオリフィスを通って上
圧力室9Uに向かう破線図示の圧側流路C1と、下圧力
室9Lから弁体31の内周面を通り、貫通孔32、弧状
溝26、圧側油流路27を通り、その開口端と圧側ディ
スクバルブ28とで形成されるオリフィスを通って上圧
力室9Uに向かう破線図示の圧側流路C2とが形成さ
れ、且つ、ピストン8が上昇する伸側移動に対しては、
上圧力室9Uから長溝16、伸側流路13を通り、その
開口端と伸側ディスクバルブ18とで形成されるオリフ
ィスを通って下圧力室9Lに向かう破線図示の伸側流路
T1のみが形成され、伸側に対してはピストン速度の増
加に応じて急増する高減衰力を発生させて、圧側に対し
てはピストン速度の増加に応じて微増する低減衰力を発
生させる。
【0058】このA位置から弁体31を反時計方向に回
動させることにより、図13に示すように、弁体31の
連通溝33と小径軸部21の貫通孔24a,25aとが
連通状態となり、回動角の増加に応じて連通溝33と貫
通孔24a,25aとの開口面積が徐々に増加する。こ
のため、ピストン8の伸側移動に対しては、図13
(a)に示すように、流路T1と並列に長溝16、円環
状溝15U、貫通孔24a、連通溝33、貫通孔24
b、円環状溝15L、長溝17を通り、長溝17と圧側
ディスクバルブ18とで形成されるオリフィスを通って
下圧力室9Lに向かう流路T2が形成されることにな
り、減衰力の最大値が図16に示すように、連通溝33
と小径軸部21の貫通孔24a,25aとの開口面積の
増加に応じて徐々に減少し、伸側移動に対しては、図1
3(b)に示すように、流路C1及びC2が形成されて
いる状態を維持するため、最小減衰力状態を維持する。
【0059】さらに、弁体31を反時計方向に回動させ
て位置B近傍となると、図14に示すように、弁体31
の貫通孔25a,25b間が長孔34によって連通され
る状態となる。このため、ピストン8の伸側移動に対し
ては、図14(a)に示すように、流路T1及びT2と
並列に長溝16、円環状溝15U、貫通孔25a、長孔
34、孔部23aを通って下圧力室9Lに向かう流路T
3が形成されることになり、伸側減衰力が最小減衰力状
態となると共に、ピストン8の圧側移動に対しては、流
路C1及びC2に加えて孔部23a、長孔34、貫通孔
25a、円環状溝15Uを通って長溝16に達する流路
C3及び孔部23a、長孔34、貫通孔25b、円環状
溝15L、貫通孔24b、連通溝33、貫通孔24a、
円環状溝15Uを通って長溝16に達する流路C4が形
成されるが、図16に示すように、最小減衰力状態を維
持する。
【0060】さらに、弁体31を反時計方向に回動させ
ると、長孔34と貫通孔24b及び25bとの間の開口
面積が小さくなり、回動角θB2で長孔34と貫通孔24
b及び25bとの間が図15に示すように遮断状態とな
るが、貫通孔32と弧状溝26との間の開口面積は回動
角θB2から徐々に小さくなる。このため、回動角θB2
ら反時計方向の最大回動角θC 迄の間では、ピストン8
の伸側移動に対しては、流路T1及びT2が併存するこ
とから最小減衰力状態を維持し、逆にピストン8の圧側
移動に対しては、貫通孔32と弧状溝26との間が遮断
状態となることにより、ピストン8の圧側移動に対し
て、下圧力室9Lから上圧力室9Uに達する流路が流路
C1のみとなり、圧側高減衰力状態となる。
【0061】一方、上部半体12の孔部23cには、円
筒状のピストンロッド35が嵌着され、このピストンロ
ッド35の上端が、図11に示すように、シリンダチュ
ーブ7より上方に突出され、その上端側が車体側部材3
6に取り付けられたブラケット37にゴムブッシュ38
U及び38Lを介してナット39によって固定されてい
ると共に、ピストンロッド35の上端にブラケット40
を介してステップモータ41FL〜41RRがその回転
軸41aを下方に突出した関係で固定され、この回転軸
41aと前述した弁体31とがピストンロッド35内に
緩挿された連結杆42によって連結されている。なお、
43はバンパーラバーである。また、シリンダチューブ
7の下端は車輪側部材(図示せず)に連結されている。
【0062】そして、図17に示すように、各車輪位置
に対応する車体側には、バネ上の上下方向の加速度を検
出するバネ上加速度センサ51FL〜51RRが取り付
けられ、また、バネ下の上下方向の加速度を検出するバ
ネ下加速度センサ52FL〜52RR及び車速センサ3
0が車両の適所に取り付けられ、バネ上加速度センサ5
1n及びバネ下加速度センサ52nが上下加速度検出手
段に対応し、車速センサ30が車速検出手段に対応して
いる。
【0063】これらバネ上加速度センサ51FL〜51
RRのそれぞれは、上記第1実施例と同様であり、これ
ら各加速度センサ51n及び52nの各検出値X2n″及
びX 1n″と車速センサ30の車速検出値Vとは、制御装
置4に供給される。そして、制御装置4は、上記第1実
施例と同様に、入力インタフェース回路56a、出力イ
ンタフェース回路56b、演算処理装置56c及び記憶
装置56dを少なくとも有するマイクロコンピュータ5
6と、バネ上加速度センサ51FL〜51RRのバネ上
加速度検出値X2FL ″〜X2RR ″、バネ下加速度センサ
52FL〜52RRのバネ下加速度検出値X1FL ″〜X
1RR ″、車速センサ30からの車速検出値Vをデジタル
値に変換して入力インタフェース回路56aに供給する
A/D変換器571FL〜571RR、572FL〜5
72RR、57Vと、出力インタフェース回路56bか
ら出力される各ステップモータ41FL〜41RRに対
するステップ制御信号が入力され、これをステップパル
スに変換して各ステップモータ41FL〜41RRを駆
動するモータ駆動回路60FL〜60RRとを備えてい
る。
【0064】ここで、マイクロコンピュータ56の演算
処理装置56cは、バネ上加速度検出値X2n″に基づい
て必要とする減衰係数C1nを算出すると共に、車速検出
値Vが所定の基準車速VMIN よりも大きいときバネ上加
速度検出値X2n″及びバネ下加速度検出値X1n″に基づ
いて伝達ゲインG5nを算出し、算出した伝達ゲインG 5n
をもとに摩擦力の影響も含めてサスペンション装置全体
での現在の等価減衰係数Ceqと、前回の減衰係数Cn
との偏差ΔCn (=Ceq−Cn )を算出し、所望の減
衰係数C1nからこの偏差ΔCn を減算した値を今回の減
衰係数Cn として設定し、この減衰係数Cn をもとにス
テップモータ41FL〜41Rの目標ステップ角θT
算出し、この目標ステップ角θT と現在のステップ角θ
P との差値を算出して、これに応じたステップ制御量S
をモータ駆動回路60FL〜60RRに出力する。
【0065】また、記憶装置56dは、演算処理装置5
6cの演算処理に必要なプログラムを予め記憶している
と共に、演算処理過程での必要な値及び演算結果を逐次
記憶する。次に、演算処理装置56cでの処理手順をフ
ローチャートに基づいて説明する。
【0066】なお、演算処理装置56cでは、各輪に対
する減衰係数Cn の算出は、例えば、前左輪側、前右輪
側、後左輪側、後右輪側の順に、各減衰力可変ショック
アブソーバ3FL〜3RRに対して同一処理を行うの
で、ここでは、n=FL〜RRとして、ある減衰力可変
ショックアブソーバ3nについて処理を行う場合につい
て説明する。
【0067】演算処理装置56cでは、イグニッション
スイッチがオン状態となり、制御装置4の電源が投入さ
れると、演算処理装置56cが起動し、図18の減衰係
数設定処理を実行する。この第2実施例における減衰係
数設定処理は、ステップS1〜ステップS4は上記第1
実施例と同様であり、ステップS1で初期設定を行い、
予め設定した減衰係数Cの初期値C0 となるようモータ
駆動回路60nにステップ制御量Sを出力し、次いで、
ステップS2でバネ上加速度センサ51n及びバネ下加
速度センサ52nの各加速度検出値X2n″及びX1n
と、車速センサ30の車速検出値Vとを読み込む。
【0068】そしてステップS3で車速検出値Vが予め
設定した基準車速VMIN よりも大きいか否かを判定し、
V>VMIN である場合にはステップS4に移行し、V>
MI N でない場合にはステップS32に移行する。上記
ステップS4では、バネ下からバネ上への5Hzの伝達
ゲインG5nを上記第1実施例と同様に算出し、ステップ
S21に移行する。
【0069】このステップS21では、前回算出時に所
定記憶領域に記憶している前回の減衰係数Cn (m−
1)とステップS4で算出した5Hzの伝達ゲインG5n
とから摩擦力の影響も含めたサスペンション装置全体で
の現在の等価減衰係数Ceqnと前回の減衰係数C
n (m−1)との偏差ΔCn 、すなわち、ΔCn =Ce
n−Cn (m−1)を算出する。
【0070】この偏差ΔCn は以下のように算出するこ
とができる。今、バネ上変位をX2 、バネ下変位を
1 、減衰係数をC、バネ定数をK、バネ上質量をMと
すると、この伝達関数は、次式(2)のように表すこと
ができる。 G(s)=X2 /X1 =(Cs+K)/(Ms2 +CS+K)……(2) ここで、伝達ゲインgをg=|G(jω)|とすると、 g2 =(B1 4 +B2 2 +B3 )/(A1 4 +A
2 2 +A3 ) と表すことができる。この両辺をCで微分し、dg/d
cを算出すると、
【0071】
【数1】
【0072】したがって、前回の減衰係数C(m−1)
をC、ステップS4で算出した5Hzの伝達ゲインG5
をgに代入すると、減衰係数Cの変化量に対する伝達ゲ
インgの変化量、すなわち、dg/dcを算出すること
ができる。よって、伝達ゲインG5 が所望とする伝達ゲ
インよりもΔgだけ増加したとすると、サスペンション
装置全体の減衰係数の増加分、すなわち、偏差ΔCは、
次式(3)により算出することができる。
【0073】 ΔCn =Δg/(dg/dc) ……(3) そして、ステップS22に移行し、現在の振動状態に応
じた減衰係数C1 とステップS21で算出した偏差ΔC
n とをもとに減衰係数Cの設定を行う。この減衰係数C
1 の算出は、例えば、ステップS2で読み込んだバネ上
加速度検出値X2n″を、例えば、ローパスフィルタ処理
することにより積分して車体上下速度X2n′を算出し、
算出した車体上下速度X2n′に基づいて次式(4)の演
算を行ってスカイフック近似制御を行うための減衰係数
1 を算出し、これを記憶装置42dの所定記憶領域に
更新記憶する。
【0074】 C1n=α・X2n′ ……(4) ここで、αは制御ゲインであり、減衰力可変ショックア
ブソーバ3nの減衰力の制御幅と減衰力可変ショックア
ブソーバ3nを搭載する車両の特性に応じて任意に設定
されることができ、操縦性を重視する車両では制御ゲイ
ンを比較的大きな値に設定し、乗心地を重視する車両で
は制御ゲインを比較的小さい値に設定する。
【0075】そして、算出した減衰係数C1nとステップ
S21で算出した偏差ΔCn とをもとに次式(5)から
減衰係数Cn を算出する。 Cn =C1n−ΔCn ……(5) そして、ステップS23に移行して、設定した減衰係数
n が予め設定した減衰係数の上限値CLIM 以下である
か否かを判定し、上限値CLIM 以下でない場合には、ス
テップS24に移行して減衰係数Cn を上限値CLIM
更新したのち、ステップS25に移行し、ステップS2
3で減衰係数Cn が上限値CLIM 以下である場合にはそ
のままステップS25に移行する。
【0076】このステップS25では、減衰係数Cn
予め設定した減衰係数の下限値CMI N 以下であるか否か
を判定し、C≦CMIN である場合にはステップS27に
移行し、C≦CMIN でない場合にはステップS26に移
行する。このステップS26では、車体上下速度X2n
が正の値であるか否かを判定し、X2n′>0である場合
にはステップS28に移行し、X2n′>0でない場合に
はステップS29に移行する。
【0077】そして、ステップS27では、図16に対
応する制御マップのθB1〜θB2の領域を参照して目標ス
テップ角θT を算出した後、ステップS30に移行す
る。また、ステップS28では、減衰係数Cn を伸側で
設定するように、制御マップのθA 〜θB1の領域を参照
して目標ステップ角θT を算出した後、ステップS30
に移行する。
【0078】また、ステップS29では、減衰係数Cn
を圧側で設定するように、制御マップのθB2〜θC の領
域を参照して目標ステップ角θT を算出した後、ステッ
プS30に移行する。そして、ステップS30では、記
憶装置56dの所定記憶領域に記憶されている現在設定
されている現在ステップ角θP と目標ステップ角θT
の偏差を算出し、これをステップ制御量Sとして記憶装
置56dの所定記憶領域に更新記憶すると共に、前記目
標ステップ角θT を現在ステップ角θP として更新記憶
し、次いで、ステップS31に移行して、記憶装置56
dの所定記憶領域に格納されているステップ制御量Sを
モータ駆動回路60nに出力した後、ステップS32に
移行する。
【0079】このステップS32では、所定の制御終了
条件を満足するか、例えば、イグニッションスイッチの
オフ状態が一定時間持続されたか否かを判定する。そし
て、制御終了条件を満足する場合には処理を終了し、制
御終了条件を満足しない場合にはステップS2に戻る。
ここで、ステップS4が摩擦力検出手段及び伝達特性検
出手段に対応し、ステップS21及びS22が減衰係数
補正手段に対応し、ステップS25〜S31が制御信号
形成手段に対応している。
【0080】したがって、今、例えば、車両が平坦路で
停止している状態からイグニッションスイッチをオン状
態にすると、制御装置4に電源が投入されて演算処理装
置56cが起動し、図18の減衰係数設定処理を開始
し、所定の初期設定を行って、減衰係数として予め設定
した初期値C0nとなるようモータ駆動回路60nに所定
のステップ制御量Sを出力する。
【0081】そして、バネ上及びバネ下上下加速度検出
値X2n″、X1n″及び車速検出値Vを読み込み、車速検
出値Vが予め設定した基準車速VMIN よりも大きいかを
判定し、このとき車両は停止しているので、減衰係数の
更新は行わず減衰係数Cn は初期値C0nが設定された状
態となる。そして、この状態から車両が走行開始してう
ねり路を走行する状態となると、車速検出値Vが基準車
速VMIN よりも小さい場合には、正確な伝達ゲインG5n
を検出することができないので、減衰係数Cn の設定は
行わず、初期値C0nが減衰係数として設定されている。
そして、車速検出値VがVMIN よりも大きくなると、ス
テップS3からステップS4に移行し、バネ上及びバネ
下の加速度検出値をバンドパスフィルタ処理した値の自
乗積分値を求め、前記(1)式に基づいて5Hzの伝達
ゲインG5nを算出し、また、バネ上加速度検出値X2n
を例えば、ローパスフィルタ処理等によって積分した値
と所定の制御ゲインαとに基づいて減衰係数C1nを算出
する。
【0082】このとき、経時変化、或いは、走行状態等
による摩擦力変動により摩擦力が増加したものとする
と、バネ上共振とバネ下共振との間の周波数帯で伝達ゲ
インが大きくなる傾向があることから、伝達ゲインG5n
の変動は摩擦力の増加に応じた値となるので、摩擦力が
大きい場合には伝達ゲインG5nは大きな値となる。ま
た、車体振動が大きいとバネ上加速度検出値X2n″が大
きくなることから、車体上下速度X2n′と制御ゲインα
とから算出される減衰係数C1nは比較的大きな値に設定
され、逆にバネ上加速度検出値X2n″が小さいと減衰係
数C1nは比較的小さな値に設定される。
【0083】そして、所定の記憶領域に記憶されている
前回算出時の減衰係数C(m−1)と、算出した伝達ゲ
インG5nとをもとに偏差ΔCn を算出すると、摩擦力の
増加分に応じた減衰係数Cn の増加分を算出することが
でき、このとき生じている摩擦力が大きい場合には偏差
ΔCn が大きくなり、摩擦力が小さい場合には偏差ΔC
n は小さくなる。
【0084】したがって、前記(5)式によって、現在
の振動入力に対して算出した減衰係数C1nから摩擦力に
応じた偏差ΔCn を減算し、これを減衰係数Cn として
設定することにより、これは摩擦力変動分が減衰力とし
て作用することを考慮して設定した減衰係数であるの
で、所望とする減衰係数C1nに応じた減衰力を確実に発
生させることができ、例えば経時変化、或いは走行条件
等によって摩擦力が増加した場合でも、摩擦力変動を考
慮した減衰係数を設定するので、摩擦力増加分が減衰力
として作用した場合でも全体の減衰力が増加することは
なく、所望とする減衰力を確実に発生させることがで
き、よって、乗心地が悪化することはなく、また操縦安
定性の低下を防止することができる。
【0085】なお、上記第2実施例においては、減衰力
を制御する弁体31をロータリ形に構成した場合につい
て説明したが、これに限定されるものではなく、スプー
ル形に構成して、圧側と伸側とで異なる流路を形成する
ようにしてもよい。この場合にはステップモータ41F
L〜41RRの回転軸41aにピニオンを連結し、この
ピニオンに噛合するラックを連結杆42に取り付ける
か、又は電磁ソレノイドを適用して弁体31の摺動位置
を制御すればよい。
【0086】また、上記第2実施例においては、ステッ
プモータをオープンループを制御する場合について説明
したが、これに限らずステップモータの回転角をエンコ
ーダ等で検出し、これをフィードバックすることにより
クローズドループ制御するようにしてもよい。次に、本
発明の第3実施例について説明する。
【0087】この第3実施例は、上記第1実施例ではバ
ネ上とバネ下間の伝達ゲインをもとに摩擦力の大小判定
を行う場合について説明したが、伝達ゲインに替えてバ
ネ上とバネ下との位相差をもとに摩擦力判定を行うよう
にしたものであり、第3実施例のサスペンション制御装
置の構成は、図2〜5に示す第1実施例の構成と同様で
ある。
【0088】そして、制御装置4の演算処理装置56c
では図19に示す減衰係数設定処理を行って減衰係数C
n の設定を行う。この第3実施例における減衰係数設定
処理は、図6に示す上記第1実施例の減衰係数設定処理
のステップS4,S6,S11に対応するステップS4
a,S6a,S11aが異なる他は第1実施例と同様で
あり、同一部には同一符号を付与し、ここでは、処理の
異なるステップS4a、S6a、S11aについて説明
する。
【0089】まず、ステップS4aでは、バネ下とバネ
上との間の5Hzの位相遅れP5n(n=FL〜RR)を
算出する。ここで、算出周波数域を5Hzとして設定し
たのは、一般に人間は3〜8Hz付近の振動を最も不快
と感じており、また、摩擦力の増加に伴い、バネ上共振
(1〜3Hz)とバネ下共振(10〜15Hz)との間
の周波数帯において位相遅れが小さくなる傾向があるた
めである。
【0090】そして、ステップS4aで5Hzの位相遅
れP5nを算出した後ステップS5に移行し、現在設定さ
れている減衰係数Cn が高減衰力を発生させる“ハー
ド”であるか否かを判定し、“ハード”が設定されてい
る場合にはステップS6aに移行し、“ハード”が設定
されていない場合にはステップS11aに移行する。こ
のステップS6aでは、ステップS4aで算出した5H
zの位相遅れP5nと予め設定した基準値P5LとがP5n
5Lであるか否かを判定し、P5n<P5Lである場合には
摩擦力が大きいものと判定し、ステップS7に移行して
減衰係数Cnを“ソフト”に変更する。P5n<P5Lでな
い場合には、摩擦力の影響が小さいものと判定してその
ままステップS10に移行し、減衰係数Cn の変更は行
わない。
【0091】一方、上記ステップS11aでは、ステッ
プS4aで算出した5Hzの位相遅れP5nと予め設定し
た基準値P5HとがP5n>P5Hであるか否かを判定し、P
5n>P5Hである場合には摩擦力が小さいものと判定して
ステップS12に移行して減衰係数Cn を“ハード”に
変更する。P5n>P5Hでない場合には摩擦力が大きいも
のと判定してそのままステップS10に移行し、減衰係
数Cn の変更は行わない。
【0092】ここで、位相遅れの基準値P5H及びP
5Lは、減衰係数Cn を変更したときにハンチングをおこ
さないように設定するものであり、上記第1実施例と同
様に設定したものである。したがって、例えば、車両が
平坦路を直進走行しており、このとき、初期設定によっ
て減衰係数Cn は“ハード”に設定されているものと
し、この状態から、車両がうねり路等に進入したものと
する。バネ上及びバネ下加速度検出値51n及び52n
からの各検出値をもとに5Hzの位相遅れP5nを算出
し、このとき、車両の走行状態、或いは経時変化等によ
って摩擦力が増加しているものとすると、摩擦力が増加
するとその増加分と一意な関係で位相遅れP5nは小さく
なる傾向があることから、算出した位相遅れP5nが基準
値P5Lよりも小さくなり、これによって、演算処理装置
56cでは、摩擦力が大きいものと判定して減衰係数C
nを“ソフト”に変更して出力し、これによって減衰力
が低減衰力となることから、摩擦力の増加により減衰力
が増加した分、減衰力を低く設定することにより、全体
の減衰力は高減衰力に設定した場合の減衰力とほぼ同等
となり、よって、摩擦力の増加に伴い、減衰力が変化す
ることはなく、操縦安定性が悪化することはなく、ま
た、減衰力が大きくなり過ぎることにより乗心地が悪化
することはない。
【0093】そして、この状態から例えば、走行条件等
によって摩擦力が低下したものとすると、摩擦力が低下
することに伴い5Hzの位相遅れP5nが大きくなること
から、P5n>P5Hとなったとき演算処理装置56cでは
摩擦力の影響は小さいものと判定して減衰係数Cn
“ハード”に変更する。したがって、摩擦力が大きく減
衰力の増加を引き起こす場合には、減衰係数C n を低減
衰力に変更し、摩擦力が小さく減衰力変動を引き起こさ
ない場合には減衰係数Cn を高減衰力に設定することに
よって、摩擦力変動に係わらず、減衰力可変ショックア
ブソーバの全減衰力は常に高減衰力に維持されることに
なり、所望とする減衰力を確実に維持するようになされ
ているので、摩擦力変動が生じた場合でも、操縦安定
性、乗心地が低下することはなく、確実に初期性能を維
持することができる。
【0094】なお、上記第3実施例は、摩擦力の増加分
と摩擦力増加に伴う位相遅れとが一意な関係であること
を利用して、位相遅れにより摩擦力の影響の大小を判定
する例を上記第1実施例に適用した場合について説明し
たが、同様にして上記第2実施例において位相遅れによ
り摩擦力の大小の判定を行うことも可能である。この場
合、図18に示す第2実施例の減衰係数設定処理のステ
ップS4では上記第3実施例と同様にして5Hzの位相
遅れP5nを算出し、ステップS21において上記第1実
施例と同様にして、算出した位相遅れP5nと前回設定し
た減衰係数C(m−1)とから偏差ΔCを算出し、これ
をもとにステップS22で減衰係数Cを設定する。
【0095】また、上記第3実施例においては、減衰力
を高減衰力に維持するようにした場合について説明した
が、例えば、バネ上及びバネ下間の相対速度とバネ上加
速度とに応じて減衰係数Cn を算出し、算出した減衰係
数Cn に基づいて摩擦力の影響を判定し、これに応じて
減衰係数Cn を設定するようにすることも可能である。
【0096】なお、上記各実施例においては、路面から
の振動入力による車体の姿勢変化を抑制する場合につい
て説明したが、これに限らず、例えば、横方向の加速度
を検出する横方向加速度センサ、或いは、前後方向の加
速度を検出する前後方向加速度センサ等を車両の適所に
配設し、これら各検出値に基づいて車両の旋回状態、制
動状態等の走行状態を検出して、これによる車体の姿勢
変化を抑制する制御を合わせて行うようにしてもよい。
【0097】また、上記各実施例においては、マイクロ
コンピュータ56を適用して制御する場合について説明
したが、これに限定されるものではなく、同等の機能を
果たすように構成したアナログ電子回路、或いは論理回
路等を適用することも可能である。また、上記各実施例
においては、各車輪に対してそれぞれバネ上加速度セン
サ及びバネ下加速度センサを設けた場合について説明し
たが、何れか1つの上下加速度センサを省略して、省略
した位置の上下加速度を他の上下加速度センサの値から
推定するようにしてもよい。この場合、車両平面上にそ
れぞれ3つの加速度センサがあればそれらの値から各車
輪に対する上下加速度の算出が可能であるが、このと
き、これら3つの加速度センサが1直線上に配置されな
いようにする必要がある。
【0098】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1のサスペ
ンション制御装置は、走行条件、或いは、経時変化等に
伴う摩擦力増加に伴い、摩擦力増加分が減衰力として作
用する場合でも、摩擦力が大きいとき減衰係数を小さく
補正し、補正した減衰係数に応じた減衰力を発生させる
ように制御することにより、制御信号に応じた減衰力と
摩擦力の作用による減衰力とから所望とする減衰力を発
生することになり、摩擦力変動によりサスペンション特
性が変化することはなく、操縦安定性を維持することが
できる。
【0099】また、請求項2のサスペンション制御装置
は、車両が的確な伝達特性を検出可能な走行状態である
と判定したときの車体側部材及び車輪側部材の上下加速
度検出値に基づいて伝達特性を検出し、この伝達特性の
変化状態から摩擦力の変化状態を検出することにより、
例えば検出した伝達特性と予め設定した基準値とを比較
すること等により摩擦力を容易に検出することができ
る。
【0100】また、請求項3のサスペンション制御装置
は、上下加速度検出手段の検出値をもとに、例えば、摩
擦力変化に伴う伝達ゲイン或いは位相遅れの変化状況が
顕著に現れる周波数域を所定振動周波数域として設定す
ることにより、摩擦力の変化を的確に検出することがで
きる。さらに、請求項4のサスペンション制御装置は、
例えば、ショックアブソーバの減衰係数が段階的に変更
されるものである場合には、減衰係数を高側又は低側に
段階的に変化させたときサスペンション装置は不安定と
なるが、減衰係数補正手段は減衰係数を補正すべき条件
が検出された時、所定の遅延時間後に前記ショックアブ
ソーバの減衰係数を補正するので、サスペンション装置
が不安定な状態での制御は行わないので、サスペンショ
ン装置が御制御されることを防止し、的確な制御を行う
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるサスペンション制御装置の概略
構成を示す基本構成図である。
【図2】第1実施例におけるサスペンション制御装置の
一例を示す構成図である。
【図3】本発明に適用したバネ上及びバネ下の上下加速
度センサの上下加速度と出力電圧との関係を示す特性図
である。
【図4】第1実施例における減衰力可変ショックアブソ
ーバの一例を示す縦断面図である。
【図5】第1実施例における制御装置4の一例を示すブ
ロック図である。
【図6】第1実施例における減衰係数設定処理の処理手
順の一例を示すフローチャートである。
【図7】第1実施例におけるサスペンション制御装置を
簡略化した制御モデルである。
【図8】摩擦力の変化に伴うサスペンション特性の変化
を現したものである。
【図9】摩擦力の変化に伴う振動特性の変化を現したも
のである。
【図10】第2実施例におけるサスペンション制御装置
の一例を示す構成図である。
【図11】第2実施例における減衰力可変ショックアブ
ソーバの一例を示す一部を断面とした正面図である。
【図12】車体上昇時の最大減衰力状態での減衰力調整
機構を示す拡大断面図である。
【図13】車体上昇時の中間減衰力状態での減衰力調整
機構を示す拡大断面図であり、(a)は伸側、(b)は
圧側の作動油経路をそれぞれ示している。
【図14】車体無変動時の減衰力調整機構を示す拡大断
面図であり、(a)は伸側、(b)は圧側の作動油経路
をそれぞれ示している。
【図15】車体下降時の最大減衰力状態での減衰力調整
機構を示す拡大断面図であり、(a)は伸側、(b)は
圧側の作動油経路をそれぞれ示している。
【図16】減衰力可変ショックアブソーバのステップ角
に対する減衰力特性を示す説明図である。
【図17】第2実施例における制御装置4の一例を示す
ブロック図である。
【図18】第2実施例における減衰係数設定処理の処理
手順の一例を示すフローチャートである。
【図19】第3実施例における減衰係数設定処理に処理
手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
2 車体 3FL〜3RR 減衰力可変ショックアブソーバ 4 制御装置 13FL〜13RR 車輪 30 車速センサ 41 ステップモータ 51FL〜51RR バネ上加速度センサ 52FL〜52RR バネ下加速度センサ 56 マイクロコンピュータ 56c 演算処理装置 59FL〜59RR アクチュエータ駆動回路 60FL〜60RR モータ駆動回路 501FL〜501RR 減衰力可変ショックアブソー
バ 531 ソレノイド

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体側部材及び車輪側部材間に介装さ
    れ、減衰係数が変更可能なショックアブソーバを備えた
    サスペンション装置と、該サスペンション装置の摩擦力
    を検出する摩擦力検出手段と、該摩擦力検出手段の検出
    値に基づいて前記ショックアブソーバの減衰係数を補正
    する減衰係数補正手段とを備えることを特徴とするサス
    ペンション制御装置。
  2. 【請求項2】 前記摩擦力検出手段は、前記車体側部材
    及び車輪側部材の上下加速度をそれぞれ検出する上下加
    速度検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、該車
    速検出手段の検出値が予め設定した基準値よりも大きい
    とき前記上下加速度検出手段の各検出値をもとに前記サ
    スペンション装置の伝達特性を検出する伝達特性検出手
    段とを有し、該伝達特性検出手段の検出値に基づいて前
    記サスペンション装置の摩擦力を検出することを特徴と
    する上記請求項1記載のサスペンション制御装置。
  3. 【請求項3】 前記伝達特性検出手段は、前記上下加速
    度検出手段の検出値をもとに予め設定した所定振動周波
    数域での伝達ゲイン又は位相遅れを検出することを特徴
    とする上記請求項2記載のサスペンション制御装置。
  4. 【請求項4】 前記ショックアブソーバは、段階的に減
    衰係数を変更させることが可能であり、前記減衰係数補
    正手段は、減衰係数を補正すべき条件が検出されたとき
    所定の遅延時間後に前記ショックアブソーバの減衰力を
    補正することを特徴とする上記請求項1乃至3の何れか
    に記載のサスペンション制御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013071522A (ja) * 2011-09-27 2013-04-22 Hitachi Automotive Systems Ltd 減衰力調整式緩衝器
JP2014054895A (ja) * 2012-09-12 2014-03-27 Nissan Motor Co Ltd 車両用フリクション検出装置及び車両用フリクション検出方法
KR20210089771A (ko) * 2018-12-21 2021-07-16 히다치 아스테모 가부시키가이샤 차량 운동 상태 추정 장치, 차량 운동 상태 추정 방법 그리고 차량

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