JP5195669B2 - フェライトコアおよび電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、フェライトコアおよび電子部品に係り、さらに詳しくは、初透磁率が改善されたフェライトコアおよび該フェライトコアが適用された電子部品に関する。
フェライトは、たとえば、通信伝送トランスやスイッチング電源用トランスなどのトランス用のコアとして使用されている。このような用途においては、磁気特性が良好であること、特に、高い初透磁率(μi)を有することが要求されている。
近年、高い初透磁率が求められている。また、このようなコアにおいては、同一組成であっても、得られる初透磁率に劣化が見られることがあった。
なお、特許文献1では、コアの表面にバレルコーティング法でガラス塗膜を形成することが提案されている。しかしながら、特許文献1においては、初透磁率の改善については何ら考慮されていなかった。
特開2001−237135号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、初透磁率(μi)が改善されたフェライトコアを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、フェライトコアにおける初透磁率が低い要因の一つとして、フェライトコア中の残留応力に着目し、フェライトコアを構成する材質の熱膨張係数の差を利用することで、残留応力を低減できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るフェライトコアは、
フェライト組成物で構成されるコア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部に形成された被覆層と、を有し、
前記被覆層の熱膨張係数が、前記コア部の熱膨張係数よりも低いことを特徴とする。
本発明においては、コア部および被覆層の熱膨張係数を上記のように制御することで、焼成時に生じるコア部の残留応力や、焼成時におけるフェライト組成物に含まれる成分の蒸発等に起因する残留応力を、被覆層に生じる応力が低減する(キャンセルする)ことができる。すなわち、本発明に係るフェライトコア中の残留応力を低減することができる。
このフェライトコア中の残留応力は、初透磁率を劣化させる要因の一つであるため、上記のようにすることで、本発明に係るフェライトコアは初透磁率を改善することができる。また、被覆層はコア部の欠け等を抑制する保護層としての役割も有し、生産効率を向上させることができる。
好ましくは、前記被覆層がガラス組成物から構成されている。このようにすることで、コア部の表面に被覆層を容易に形成することができる。また、絶縁性を有するガラス組成物をコア部表面に形成した場合には、コア部と巻回されるワイヤ等との絶縁性を高めることができる。
好ましくは、前記コア部の表面積に対して、前記被覆層が形成されている割合を被覆率とした場合に、前記被覆率が50〜100%である。被覆率をこのような範囲とすることで、本発明の効果をさらに高めることができる。
好ましくは、前記被覆層の厚みが、0μm超50μm以下である。被覆層の厚みをこのような範囲とすることで、初透磁率を改善しつつ、本発明の効果をさらに高めることができる。
本発明に係る電子部品は、上記のいずれかに記載のフェライトコアを有する電子部品である。
本発明に係る電子部品としては、特に制限されないが、コイル部品、トランス部品、磁気ヘッド部品などが挙げられる。コイル部品としては、インダクタやチョークコイル等が挙げられ、トランス部品としては、スイッチング用、インバータ用等の電源トランス等が挙げられる。
本発明によると、コア部と被覆層との熱膨張の差を利用し、コア部の残留応力を低減することで、初透磁率が改善されたフェライトコアを得ることができる。特に、被覆層がコア部の表面を覆う割合(被覆率)や、被覆層の厚みを特定の範囲に制御することで、さらに初透磁率を改善することができる。
また、特に被覆層をガラス組成物で構成することで、被覆層をコア部の表面に容易に形成することができる。また、ガラス組成物が絶縁性である場合には、コア部が導電性であっても、巻回されるワイヤ等との絶縁性を確保することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアの概略断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るフェライトコアの製造に用いるバレル装置の概略断面図である。 図3は、コイルを巻回した後のドラムコアの断面図である。 図4は、本発明の実施例および比較例に係るフェライトコアの被覆層の厚みと、初透磁率と、の関係を示すグラフである。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
フェライトコア
本発明に係るフェライトコアの形状は、特に制限されず、たとえば、ドラムコア、板コア、棒状コア、筒状コアなどが例示される。本実施形態では、図1に示すように、フェライトコア1はドラムコア形状を有しており、コア部2の表面全体に被覆層10が形成された構成を有している。
コア部
コア部2は、円柱または角柱状の巻芯部4と、その巻芯部4の軸方向に沿って両側に一体的に形成してある一対の鍔部5とを有する。鍔部5の外径は、巻芯部4の外径よりも大きく、巻芯部4の外周には、鍔部5にて囲まれた凹部6が形成してある。そして、その凹部6にワイヤ30を巻回することでコイル部品とされる。
コア部2の寸法は、特に制限されないが、本実施形態では、巻芯部4の外径は0.6〜1.2mmであり、巻芯部4の軸方向幅は0.3〜1.0mm、鍔部5の外径は2.0〜3.0mmであり、鍔部5の厚みは0.2〜0.3mm、鍔部5の外周表面から巻芯部4の外周表面までの深さは、0.5〜1.0mmである。なお、鍔部5の形状は、円形の他、四角形、八角形などでもよい。
コア部2は、フェライト組成物から構成されており、ZnO成分を含有することが好ましい。初透磁率を高くすることができるからである。本実施形態では、フェライト組成物として、Mn−Zn系フェライトあるいはNi−Zn系フェライトが好ましい。また、必要に応じ、特性向上等を目的として微量成分を含有してもよい。
コア部2の熱膨張係数は、フェライト組成物の組成により変化するが、おおむね70×10−7/℃〜110×10−7/℃程度である。
被覆層
被覆層10の材質としては、コア部2の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有するものであれば、特に制限されず、たとえば、ガラス組成物、SiO、B、ZrO等が例示される。なお、被覆層10は複数の材質から構成されていてもよいし、複数の層からなる積層構造を有していてもよい。
フェライト組成物の中には、外的な圧縮応力が加えられると、初透磁率(μi)が漸次小さくなるものがある。このようなフェライト組成物においては、外的な圧縮応力が加わっていない状態であっても、フェライト組成物中に、残留応力として内的な圧縮応力がすでに加えられていると考えられる。
このような残留応力は、フェライト組成物の焼成・冷却時の収縮に起因する応力や、焼成・冷却時におけるフェライト組成物中の成分、特にZnO成分の蒸発等により生じる応力等が原因となっていると考えられる。
そこで、コア部2の表面の少なくとも一部に、コア部2の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する被覆層10を形成することで、熱が加えられ、冷却される過程で、被覆層10の熱膨張がコア部2の熱膨張よりも小さいため、被覆層10にはコア部2の熱膨張に起因する引張応力が生じる。そして、この引張応力が、コア部2の残留応力(圧縮応力)をキャンセルすることができる。したがって、コア部(フェライト組成物)中の内的な圧縮応力を緩和できるため、フェライトコアの初透磁率を改善することができる。
本実施形態では、被覆層10はガラス組成物から構成されることが好ましい。ガラス組成物としては、コア部2の表面に非晶質の状態で形成されるもの、あるいは結晶化ガラスとして形成されるものであれば特に制限されず、たとえば、Si−B系ガラス(ホウケイ酸ガラス)、無アルカリガラス、鉛系ガラス等が例示される。
ガラス組成物の熱膨張係数は、ガラス組成物に含有される成分の組成や、各成分の含有量等により変化する。したがって、ガラス組成物の熱膨張係数が、コア部2の熱膨張係数よりも小さくなるように、成分の組成や含有量を適切に設定する必要がある。
被覆層10は、コア部2の表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、コア部2の表面積に対して、被覆層が形成される割合(被覆率)を、好ましくは50〜100%、より好ましくは90〜100%とする。被覆率が高くなるほど、コア部2の残留応力をキャンセルする効果が大きくなるため、初透磁率をより高めることができる。また、コア部2の欠け等を防止する保護層としての役割も大きくなる。
なお、図1では、被覆率が100%の場合を示している。また、コア部2において、ワイヤ等が巻回される部分(本実施形態では凹部6)付近に被覆層10が形成されていると、より高い効果が得られやすい。
被覆層10の厚みは、好ましくは0μm超50μm以下、より好ましくは5μm以上25μm以下である。被覆層10が形成されていれば、初透磁率が改善されるが、被覆層が厚くなりすぎると、初透磁率に対する寄与が少ないため初透磁率が悪化する傾向にある。また、被覆層がある程度の厚みを有していると、コア部の保護層としての機能を果たすこともできる。そのため、被覆層10の厚みは上記の範囲内であることが好ましい。
さらに、被覆層10が絶縁性を有していれば、コア部2が導電性であっても、巻回されるワイヤとの絶縁を確保することができる。
次に、本実施形態に係るフェライトコアとして、被覆層10がガラス組成物で構成されているフェライトコアの製造方法の一例を説明する。
まず、コア部2を構成するフェライト組成物の原料を準備する。原料としては、酸化鉄、酸化亜鉛等の酸化物を用いてもよいし、焼成後に酸化物となるような各種化合物を用いてもよい。
次に、準備した原料およびバインダ樹脂等を混合し、その混合物を公知の成形方法により所定の形状に成形する。本実施形態ではドラムコア形状に成形し、コア部2の成形体を得る。なお、必要に応じて、混合物を仮焼してもよいし、成形に適した形態とするために粉砕、造粒等を行ってもよい。また、この成形体に対し、必要に応じて脱バインダ処理等を行ってもよい。
次に、得られた成形体を焼成し、焼結体(コア部2)を得る。焼成時に、上述した応力が生じ、コア部2に残留応力が生じることとなる。すなわち、この状態では、コア部2が本来有している初透磁率よりも低い初透磁率しか得られない。
次に得られたコア部2に対して、図2に示すバレル装置を用いて、コア部2の表面に、ガラス組成物、バインダ樹脂等から構成される熱処理前の被覆層10aを形成する。
図2に示すバレル装置20は、円柱状または角柱状のシリンダケーシング20aを有し、その中空の内部に、バレル容器22が、その軸芯回りに矢印A方向(またはその逆方向)に回転自在に収容してある。
ケーシング20aには、入口管23と出口管24とがそれぞれ形成してある。入口管23からは乾燥用気体がケーシング20aの内部に入り込み、出口管24からケーシング内部の空気を排出可能になっている。
バレル容器22の内部における軸芯位置には、スプレーノズル25が軸方向に沿って配置してあり、ノズル25から、バレル容器22の内部に貯留してある多数のコア部2に向けてスラリー26を吹き付け可能になっている。バレル容器22は、矢印A方向に回転するために、コア部2は、図2に示すような状態で存在し、バレル容器22の回転により撹拌される。
ノズル25は、コア部2の集合に向けてスラリー26を噴霧することができるようになっている。なお、ノズル25からのスラリーの噴霧方向を自由に変えられるようにしても良い。また、ケーシング20aには、図示省略してある排出パイプが接続してあり、余分なスラリー26を排出可能になっている。
バレル容器22の壁には、外部と内部とを連通する多数の孔が形成してあり、ケーシング20aの下方に貯留してあるスラリー26は、バレル容器22の内部にも侵入し、そのスラリー26にコア部2を浸漬することができる。また、乾燥用気体が入口管23からケーシング20aを通り出口管24へと流通する際には、バレル容器22の内部にも流通するようになっている。
熱処理前の被覆層10aを形成するために、まず、コア部2を、図2に示すバレル容器22の内部に多数収容する。そして、バレル容器22を回転させ、コア部2の集合を撹拌しながら、ノズル25からスラリー26を吹き付けて、熱処理前の被覆層10aを形成する。
スラリー26は、上述したガラス組成物を粉砕して得られるガラス粉末と、バインダ樹脂と、溶剤とを含む。さらにその他の添加物を含んでいてもよい。ガラス組成物は、該組成物を構成する酸化物、ハロゲン化物等の非酸化物等の原料を混合、溶融し、急冷して非晶質とすればよい。また、ガラス組成物として、結晶化ガラスを用いてもよい。本実施形態では、ガラス粉末としてSi−B系ガラスを用いる。ガラス粉末の平均粒径(メジアン径)は、特に限定されないが、好ましくは、0.1μm以上10μm以下の範囲である。
スラリー26に含まれるバインダ樹脂はポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール樹脂変性体、またはこれらの混合物であることが好ましい。このようにすることで、形成される熱処理前の被覆層10aは、コア部2との密着性に優れる。
溶剤は、水を含むことが好ましい。溶剤は水のみでもよいが、ガラス粉末の表面と水との接触角が大きいときは、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコール(IBA)等の水溶性のアルコールを一定の割合で混ぜることにより、ガラス粉末の凝集や沈降を抑制することが好ましい。
コア部2に吹き付けられたスラリー26は、各コア部2の表面を覆い焼成前被覆層10aを形成する。この時、余分なスラリー26は、図示省略してある排出パイプを通して排出される。ノズル25からスラリー26を吹き付ける処理時間は、特に限定されないが、たとえば30〜180分程度である。また、スプレー時のスラリー26の温度は、溶剤の組成にもよるが40℃以上100℃以下が好ましい。沸点の低い溶剤を使用する場合は、上記温度範囲内で温度を下げることが好ましい。
次に、スラリー26をスプレーしながら同時に熱処理前の被覆層10aの乾燥処理を行う。乾燥処理では、入口管23から乾燥用気体をケーシング20aの内部に流し込み、出口管24から排出させる。この乾燥処理に用いる乾燥用気体は、たとえば温度50〜100℃の空気である。スプレー処理後、さらに乾燥処理を、たとえば5〜30分行ってもよい。
乾燥処理後、熱処理前の被覆層10aが形成されたコア部2は、バレル容器22から取り出され、熱軟化処理される。熱処理条件は、熱処理前の被覆層10aに含まれるガラス粉末の軟化点などに応じて決定される。具体的には、熱処理温度は、好ましくは600〜800℃であり、熱処理時間は、5〜120分である。
Mn−Zn系フェライトの場合、熱処理は、酸素分圧0.1%以下での窒素ガス雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。コア部2の酸化は、特性劣化の原因となるため、酸素分圧を低くすることで、酸化を防止することができるからである。
熱処理後、コア部2の表面には、ガラス化した被覆層10が形成され、図1に示すフェライトコア1が得られる。なお、本実施形態では、ガラス化とは、連続された非晶質な個体膜で、結晶と同程度の剛性を持つ状態になることと定義される。
その後に、図3に示すように、各コア部2における一方の鍔部5の端面に、銀、チタン、ニッケル、クロム、銅などで構成された一対の端子電極32を、印刷、転写、浸漬、スパッタ、メッキ法などで形成する。端子電極32は、コア部2が導電性であっても、被覆層10が存在しているために絶縁されている。
その後に、巻芯部4の周囲にワイヤ30を巻回し、そのワイヤの両端を、それぞれ端子電極32に熱圧着、超音波やレーザなどによる溶接、はんだ法などで接続し、本発明の一実施形態に係るコイル部品が完成する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述の実施形態においては、焼成されたコア部に対して、熱処理前の被覆層を形成し、これを熱処理して被覆層を形成したが、コア部の焼成と被覆層の熱処理とを同時に行ってもよい。このようにすることで、工程を簡略化できる。
また、脱バインダ工程において、スラリーに含まれるバインダ樹脂の有機成分が揮発しやすいように、ガラス粉末の粒径を特定の範囲としてもよい。このようにすることで、熱処理前の被覆層自体の強度を高めて、熱処理前の被覆層形成時におけるコア部の欠け等を防止することができる。
また、熱処理前の被覆層を形成する工程において、たとえばスラリーに含まれるバインダ樹脂の量を変化させることで、熱処理前の被覆層の表面付近の強度を、該被覆層のコア部との境界付近の強度よりも弱くなるようにしてもよい。このようにすることで、該被覆層の表面付近が犠牲膜の役割を果たし、コア部の欠け等を効果的に防止することができる。
さらに、熱処理前の被覆層を複数層とし、コア部に近い層に含まれるガラス組成物の軟化点よりも、該被覆層の表面側の層に含まれるガラス組成物の軟化点を高くしてもよい。そして、熱処理工程において、熱処理温度を、コア部に近い層に含まれるガラス組成物の軟化点より高く、かつ被覆層の表面側の層に含まれるガラス組成物の軟化点よりも低くする。このようにすることで、被覆層の表面側の層を犠牲膜とすることができ、コア部の欠け等を効果的に防止することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
コア部を構成するフェライト組成物の原料として、Fe、NiO、CuO、ZnO、MnOを準備した。そして、準備した原料の粉末を秤量した後、ボールミルで湿式混合して原料の混合物を得た。得られた混合物を、仮焼した後、さらに湿式粉砕・乾燥して原料粉末を得た。
この原料粉末に、バインダ樹脂としてのPVAを添加して造粒して顆粒とした。この顆粒を加圧成形して、トロイダル形状(寸法=外径10mm×内径6mm×高さ3mm)の成形体を得た。
次に、この成形体を、空気中および窒素雰囲気中で焼成して、トロイダル形状の焼結体としてのコア部を得た。本実施例では、下記のコア部A〜Cを試料として用いた。
コア部Aは、組成が、Fe:53モル%、ZnO:24モル%、MnO:23モル%であり、熱膨張係数は102×10−7/℃であった。
コア部Bは、組成が、Fe:55モル%、ZnO:2モル%、MnO:43モル%であり、熱膨張係数は100×10−7/℃であった。
コア部Cは、組成が、Fe:49モル%、ZnO:22モル%、NiO:22モル%、CuO:残部であり、熱膨張係数は80×10−7/℃であった。
次に被覆層を形成するためのガラス組成物の粉末を準備した。ガラス組成物としてはSi−B系ガラスを用いた。Si−B系ガラスは、ガラス成分を構成する酸化物等の原料を混合・溶融し、その後急冷して作製した。
本実施例では、Si−B系ガラス中の成分の組成、含有量等を変化させて、熱膨張係数を変化させたガラス組成物D〜Gを用いた。ガラス組成物Dの熱膨張係数は60×10−7/℃、ガラス組成物Eの熱膨張係数は64×10−7/℃、ガラス組成物Fの熱膨張係数は100×10−7/℃、ガラス組成物Gの熱膨張係数は110×10−7/℃であった。
なお、コア部およびガラス組成物の熱膨張係数は、TMAにより測定した。
次に、熱処理前の被覆層を形成するために用いられるスラリーを作製した。まず、得られたガラス組成物の粉末とPVAとを所定の重量比で混合した。さらに、得られた固形成分(ガラス粉末およびPVAの混合物)と溶剤とを所定の重量比で混合し、ボールミルで混合してスラリーを準備した。溶剤としては、水とエタノールを8:2で混合したものを用いた。スラリー中のガラス粉末に対するバインダ樹脂の含有量は10重量%であった。
次に、バレル装置のバレル容器内にコア部を投入し、コア部の表面全体に、上述したスラリーを用いたスプレー処理により、被覆層を形成した。すなわち、被覆率が100%となるようにした。また、スプレーと同時に、温風温度70℃で乾燥処理した。
その後に、バレル容器から、熱処理前の被覆層が形成されたコア部を取り出し、このコア部を750℃で1時間熱処理して、ガラス化した被覆層がコア部の表面全体に形成されたフェライトコア(トロイダル形状)を得た。
得られたフェライトコアについて、被覆層の厚みおよび初透磁率(μi)を以下のようにして測定した。結果を表1に示す。
被覆層の厚み
被覆層の厚みは、被覆層形成前後の寸法より算出した。
初透磁率
得られたトロイダル形状のコアに銅線ワイヤを10ターン巻きつけ、インピーダンスアナライザ(ヒューレットパッカード 4284A)を使用して、初透磁率μiを測定した。測定条件としては、測定周波数1kHz、測定温度25℃、測定レベル0.5mAとした。結果を表1に示す。
Figure 0005195669
表1より、試料1および2、試料3および4、試料5および6をそれぞれ比較すると、熱膨張係数がコア部の熱膨張係数よりも小さい被覆層を形成することで、初透磁率を改善できることが確認できた。
また、試料3および7を比較することで、被覆層の熱膨張係数と、コア部の熱膨張係数とが同じである場合には、初透磁率は、被覆層が形成されていない場合と同じであることが確認できる。また、試料3および8を比較することで、被覆層の熱膨張係数が、コア部の熱膨張係数よりも大きい場合には、逆に初透磁率が悪化していることが確認できる。これは、被覆層の熱膨張係数が、コア部の熱膨張係数よりも大きいため、被覆層にも圧縮応力が加わり、コア部の圧縮応力をさらに大きくし、その結果、初透磁率が悪化したと考えられる。
実施例2
コア部Bおよびガラス組成物Eを用いて、被覆率を表2に示すように変化させた以外は、実施例1と同様にして、フェライトコアを作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0005195669
表2より、被覆率が大きくなるにつれ、初透磁率が改善されることが確認できる。
実施例3
コア部Bと、ガラス組成物EおよびGを用いて、被覆層の厚みを変化させた以外は、実施例1と同様にして、フェライトコアを作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を図4に示す。
図4より、熱膨張係数がコア部Bよりも小さいガラス組成物Eを被覆層とした場合には、被覆層の厚みを50μmとした場合にも、初透磁率が改善されることが確認できる。これに対し、熱膨張係数がコア部Bよりも大きいガラス組成物Gを被覆層とした場合には、被覆層が存在することで、コア部Bにさらに圧縮応力が加えられるため、被覆層の厚みが大きくなるほど、初透磁率が低下することが確認できる。
1… フェライトコア
2… コア部
10… 被覆層
10a… 熱処理前被覆層
20… バレル装置

Claims (2)

  1. フェライト組成物で構成されるコア部と、前記コア部の表面の少なくとも一部に形成され、ガラス組成物から構成されている被覆層と、を有し、
    前記被覆層の熱膨張係数が、前記コア部の熱膨張係数よりも低く、
    前記被覆率が50〜100%であり、
    前記被覆層の厚みが、5μm以上25μm以下であることを特徴とするフェライトコア。
  2. 請求項1に記載のフェライトコアを有する電子部品。
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