JP4936110B2 - 複合磁性体の製造方法 - Google Patents
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また、特許文献2にはFe2O3、ZnO、CuO、及びNiOを主成分とするフェライト粉末に、シリコン(Si)粉末あるいはシリカ(SiO2)粉末、アルミナ(Al2O3)粉末などを少量(数wt%以下)添加混合し、焼結し、磁性材料本来の磁気的特性を損なうことなく、材料自体の直流重畳特性を向上し、磁気回路中に磁気ギャップを形成せずに済むようにしたフェライト焼結体が開示されている。
また直流重畳特性の改善について直接開示は無いが、特許文献3には機械的強度向上の目的から、Fe2O3 40〜52.5mol%、ZnO 35mol%以下、CuO 2〜20mol%、および残部がNiOから成る組成を主成分とし、これに、0.01〜3.0wt%の酸化ジルコニウム(ZrO2)あるいは相当量のジルコニウム原子を含む塩類を添加含有することが開示されている。その比較例には酸化ジルコニウム(ZrO2)を10wt%添加すると、1MHzにおける初透磁率が未添加のものと比べて約1/4程度となることが開示されており、直流重畳特性が改善できることが示唆されている。
また積層型インダクタは、フェライトからなる磁性体シートあるいは磁性体ペーストと、AgまたはAg合金等からなる内部電極用の導電ペーストとを厚膜積層技術によって積層一体化した後、焼成し、得られた焼成体表面に外部電極用ペーストを印刷または転写した後に焼き付けて製造されるが、磁性層には内部電極との線膨張係数の差異による応力が作用する。まためっきを行なう場合には、めっき皮膜などからの応力もある。
このように、様々な応力に晒されたフェライト磁心の内部には残留応力が存在することとなり、その結果、磁歪効果によってフェライトの透磁率を低下させ、所望のインダクタンスが得られない場合があった。
そこで本発明は、直流重畳特性に優れ、応力に対する磁気特性、特には透磁率の変化が少なく、もって安定したインダクタンスが得られるフェライト磁心用の複合磁性体の製造方法を提供することを目的とする。
前記第2相を構成する非磁性のセラミクスが、ZrSiO4(ジルコン)、ZrO2(ジルコニア)、Li2O・Al2O3・4SiO2(スポデュメン)、Li2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)のいずれかであるのが好ましい。
また、第1相を構成するフェライトが、Fe2O3:47〜50.5mol%、ZnO:19〜30mol%(15mol%以下をCuOで置換しても良い)、残部NiOを主成分とするのもの好ましい。更に、副成分として、Nb2O5、Ta2O5.V2O5、TiO2、Bi2O3、Co3O4、SnO2、CaO、SiO2換算で1.5wt%以下含んでいても良い。これら副成分は、結晶粒界に析出して焼結性を促進したり、結晶粒界に固溶して結晶磁気異方性を改善したりする。
本発明においては、Fe2O3、ZnO、NiO(一部をCuOで置換しても良い)を主成分とするフェライトの仮焼体を、粉砕条件の調整により、あるいは粉砕粉を分級したり、Fe、Ni,Znの各塩化物の水溶液を噴霧焙焼するなどして得たBET比表面積が5〜20m2/gのフェライト粉末と、非磁性のセラミクスとを混合して所定の形状に成形された成形体を、1000℃以下の温度で焼成して、Fe2O3、ZnO、NiO(一部をCuOで置換しても良い)を主成分とするフェライトの第1相と、非磁性のセラミクスからなる第2相とを組織中に共存したフェライト磁心を得る。
ZnをZnO換算で19〜30mol%含有させるのは高い飽和磁束密度を得るためである。19モル%未満であると所望の磁束密度が得られず、30モル%より多いとキュリー温度が低下し実用温度範囲を下回るという問題が生じる。なお、低温焼結化を目的として、Niの一部をCuで15mol%以下(CuO換算)置換しても良い。また、Niは、主成分組成からFe2O3量とZnO量を引いた残りとなる。所望の透磁率を得ながら、高い飽和磁束密度を得るには、NiO/CuOのモル比を0.3〜5.8とするのが好ましい。
副成分としてNbをNb2O5換算で0.01〜1.0wt%含有すれば結晶粒径を制御する効果を得る。TaをTa2O5換算で0.01〜1.0wt%含有することで、抵抗率を向上することが出来る。TiをTiO換算で0.01〜2.0wt%含有することで、抵抗率を向上することが出来る。VをV2O5換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、低温焼結を促進するためである。BiをBi2O3換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、低温焼結を促進するとともに、抵抗率を向上させるためである。CoをCo3O4換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、高周波損失を低減するためである。SnをSnO2換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、ヒステリシス損失を低減するためである。CaをCaO換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、粒成長を抑制するためである。SiをSiO2換算で0.1〜1.5wt%含有するのは、粒成長を抑制するためである。
また素原料中に不可避的に含まれるNa,S,Cl,P、W,B等の不可避不純物は、極力低減するのが好ましいが、工業的に供される素原料中に含む程度は、その含有を許容し、0.05wt%以下であるのが好ましい。
また、フェライト粉末のBET比表面積が5m2/g未満であると、焼結体におけるフェライト(第1相)の平均結晶粒径が2μmを超える場合があり、BET比表面積が20m2/g超であると凝集し易くなるとともに、粉末表面に水分を吸着し易くなるので、非磁性のセラミクス粉末との均一な混合が困難となる。
非磁性のセラミクス粉末のBET比表面積が20m2/g超であると、凝集しやすくなるとともに、粉末表面に水分を吸着し易くなるので、フェライト粉末とともに溶剤分散、混合を行なう場合にはフェライト粉末との均一な混合が困難となる。
μi∝Bs2/(aK1+bλsσ)
(Bs=飽和磁束密度、K1=磁気異方性定数、λs=磁歪定数、σ=応力、a、bは定数)
また、格子歪を緩和することで、磁気異方性定数K1や飽和磁歪定数λsが小さくなり、その結果、応力に対する初透磁率μiの劣化が低減し、もって安定したインダクタンスが得られる。
本発明においても、フェライトの平均結晶粒径を微細なものとしているため、保磁力Hcの増加を招く。しかしながら本発明者等は、非磁性のセラミクス(第2相)の線膨張係数が、フェライト(第1相)の線膨張係数よりも小さい場合において、保磁力Hcが非磁性のセラミクス粉末の添加量に対して単調に増加するのではなく、極大値を示すことを新たに知見した。
この様な挙動は、前記引張り応力に基づき、引張応力によってフェライト結晶内の残留ひずみが低減し、フェライトのスピネル結晶を形成するイオン配列の歪みや応力が緩和されて格子定数が変化することによって生じると考えられる。保磁力Hcはヒステリシス損失と関係するが、ヒステリシス損失の増加を抑えることが出来るため、フェライト磁心のコア損失の著しい増加を防ぐのに有効である。
(フェライトと非磁性のセラミクスとの混合粉の作製)
まず、フェライトを構成するFe2O3、NiO、CuOおよびZnOの各主成分、及びCo3O4、BiO2、SnO2、SiO2の副成分とを湿式混合した後乾燥した後、850℃で2時間仮焼した。次いで、ボールミルで仮焼成粉を、BET比表面積が7.1m2/gとなるまで18時間粉砕した後、表1に示す所定のBET比表面積を有する非磁性のセラミクスを所定量加えて2時間混合し、仮焼混合粉を作製した。
更に、この仮焼混合粉にバインダとしてポリビニルアルコールを加えて、スプレードライヤーにて顆粒化した後、所定形状に成形し、大気中にて950℃で2時間焼成して外径φ14mm、内径φ7mm、厚み5mmのトロイダル磁心と角型磁心を得た。得られた試料について結晶粒径や、初透磁率μi、飽和磁束密度Bs等の磁気特性、抗応力特性、そして直流重畳特性を評価した。表1に各試料の組成とあわせて、評価結果を示す。またあわせて、Cu−Kα線によるX線回折測定により試料の結晶相の同定を行なった。なお、表中試料番号の前に*を付したものは比較例であり、それ以外は実施例であることを示している。
なお、フェライト組成物は、Fe2O3:47.5mol%、NiO:19.7mol%、CuO:8.8mol%、ZnO:24.0mol%を主成分とし、この主成分に対してBi2O3:1wt%、Co3O4:0.08wt%、SnO2:0.5wt%、SiO2:0.5wt%を副成分として添加・含有するものとした(表1の試料番号1)。
(フェライトの平均結晶粒径)
フェライト磁心の表面を電子顕微鏡を用いて5000倍で複数の試料で、かつ複数の視野にて写真撮影し、この写真上で任意の方向に一定長さの線を引き、この線上に存在する粒子を計測して、前記長さを粒子数で除した値を求め、その平均値を平均結晶粒径としている。なお写真撮影と同一視野で、EPMAやEDXによる組成分析を行なっておき、非磁性セラミクスとフェライト結晶とを区別した。
トロイダル形状のフェライト磁心に銅線を7ターン巻き、測定周波数100KHz、測定電流1mAでLCRメーターを用いてインダクタンスを測定し、下記の式を用いて初透磁率μiを算出した。
初透磁率μi=(le ×L)/(μ0 ×Ae×N2)
le :磁路長 L:試料のインダクタンス、μ0:真空の透磁率=4π×10−7(H/m)
Ae :試料の断面積,N:コイルの巻数
焼結後の円柱状試料を用いて、熱膨張率を室温から900℃まで測定し、室温から890℃までの平均線熱膨張係数を算出した。
トロイダル形状のフェライト磁心を半分に切断し、その2箇所の切断面全面に導電性ペーストを塗布、乾燥して、その導電性ペーストを塗布した2面間で絶縁抵抗計を用いて抵抗を測定した。
その後、測定した抵抗値と試料の面積、長さより抵抗率を算出した。
磁場の強さを4000A/m、測定周波数を10kHzに設定して、残留磁束密度Br及び保磁力HcをB−Hアナライザで測定した。
8mm×4mm×2mmの角型磁心に銅線を12回巻線した後、これをテンションメータを備えた加圧ジグに配置し、一軸方向から圧縮力を印加して、このときのインダクタンス値を連続的に測定し、得られた測定値からインダクタンス変化率を算出した。インダクタンス変化率は以下の式により求めた。
(L1−L0)/L0×100(%)
L1:一軸圧縮力印加時のインダクタンス値
L0:一軸圧縮力印加なしのインダクタンス値
測定条件はJISC2514の直流重畳インダクタンスの測定条件に従い、設定電圧を0.1V、周波数10kHzとした条件にて、得られたトロイダルコアに銅線を10ターン巻回した後、このトロイダルコアに直流電流を通電し、電流量を増大させていってインダクタンスの変化量を計測した。
一方、ZrSiO4(ジルコン)、ZrO2(ジルコニア)、Li2O・Al2O3・4SiO2(スポデュメン)、Li2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)では、分解、反応によって生じた新たな結晶相は見られなった。
実施例の何れの試料も、比較例と比べて直流重畳特性が改善されていることが分かる。また、各試料のインダクタンス値の初期値(印加磁界0A/m)において差があるが、Li2O・Al2O3・4SiO2(スポデュメン)、ZrO2(ジルコニア)、ZrSiO4(ジルコン)については、非磁性のセラミクスの線膨張係数との関係が見られ、フェライトとの線膨張係数差が小さいほど、フェライトに作用する引張応力が小さいため透磁率の低下が抑えられて、相対的に大きなインダクタンス値を示す。負の線膨張係数を有するLi2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)は、他の非磁性のセラミクスとは前記説明とは異なる挙動を示す。この理由は明らかでは無いが、フェライトに圧縮応力を作用させている場合も想定され、圧縮応力と引張応力が相殺されて、比較的高いインダクタンス値を示すとも考えられる。
次に、本発明に係るフェライト磁心を用いて構成した積層型電子部品について説明する。
本発明の積層型電子部品は、磁性フェライト層と内部電極とを多層積層して構成され、磁性フェライト層をFe2O3、NiO(一部をCuOで置換しても良い)、ZnOを主成分とするフェライトの第1相と非磁性のセラミクスからなる第2相を含む複合磁性体を用いて構成したものである。
図4は、本発明の積層型電子部品の一実施形態である積層型チップインダクタの一例を示す内部透過斜視図である。積層型チップインダクタ1は、磁性フェライト層2と内部電極3とが交互に積層一体化された多層構造であり、その端部には、内部電極3と電気的に導通する外部電極5,5が設けられている。
積層型チップインダクタを構成する磁性フェライト層2は、実施例1で開示したフェライト組成物と非磁性のセラミクスで構成されたものであり、フェライト組成物として、Fe2O3:47.5mol%、NiO:19.7mol%、CuO:8.8mol%、ZnO:24.0mol%を主成分とし、この主成分に対してBi2O3:1wt%、Co3O4:0.08wt%、SnO2:0.5wt%、SiO2:0.5wt%を副成分とを含み、さらに
非磁性のセラミクスとして、ZrSiO4(ジルコン)、ZrO2(ジルコニア)、Li2O・Al2O3・4SiO2(スポデュメン)、Li2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)を含む。
この混合粉を、ポリビニルブチラールを主成分としたバインダと、エタノール、トルエン、キシレン等の溶媒とともにボールミル中で混練してスラリーとし、粘度を調製した後、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム上にドクターブレード法等で塗布し、乾燥して磁性フェライト層用シートとする。この磁性フェライト層用シートに内部電極用ペーストを印刷、乾燥し、積層した後、焼成して形成する。
また、エチルセルロース等のバインダと、テルピネオール、ブチルカルビトール等の溶剤とともに混練して磁性フェライト層用ペーストを作成し、このペーストを内部電極用ペーストと交互に印刷積層して、焼成し形成しても良い。
実施例2と同様の製造プロセスにて、図5に示すモジュールを作製した。このモジュールは、多層基板1a内にインダクタLout(図示せず)を内蔵し、主面に形成された実装用の電極に、スイッチング素子を含む半導体集積回路IC、コンデンサCを実装するものであって、図6に示した降圧型DC−DCコンバータを構成する。裏面にはプリント基板に実装のための端子電極も形成されている。得られた多層基板1aについて、直流重畳特性、抗応力特性を評価したが、実施例1で開示した結果と同様に、優れた特性が得られた。またDC−DCコンバータを動作させたところ、優れた変換効率を得られることを確認した。
2 磁性フェライト層
3 内部電極
5 外部電極
Claims (2)
- Fe2O3、NiO(一部をCuOで置換しても良い)、ZnOを主成分とするフェライトの第1相と非磁性のセラミクスからなる第2相を含む複合磁性体の製造方法であって、
Fe 2 O 3 、NiO(一部をCuOで置換しても良い)、ZnOを主成分とし、BET比表面積が5〜20m 2 /gに調整されたフェライト粉末に、BET比表面積が5〜20m 2 /gに調整された非磁性のセラミクスを前記主成分に対して2.5〜25wt%添加して混合する工程と、
前記工程を経た混合粉又はスラリーを用いて成形体を得る工程と、
得られた成形体を1000℃以下で焼成して、平均結晶粒径が0.3〜2μmである第1相のフェライトと、非磁性のセラミクスからなる第2相を含む複合磁性体とする工程を備え、
前記非磁性のセラミクスの線膨張係数は、前記フェライトの線膨張係数よりも小さく、もって複合磁性体の線膨張係数が6〜10ppm/℃であることを特徴とする複合磁性体の製造方法。 - 前記第2相を構成する非磁性のセラミクスが、ZrSiO4(ジルコン)、ZrO2(ジルコニア)、Li2O・Al2O3・4SiO2(スポデュメン)、Li2O・Al2O3・2SiO2(ユークリプタイト)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の複合磁性体の製造方法。
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