JP4069449B2 - 高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトおよびDC−DCコンバータ用トランス - Google Patents

高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトおよびDC−DCコンバータ用トランス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高磁束密度低損失フェライトに関し、特には耐熱衝撃に優れた高磁束密度低損失フェライトとこれを用いたDC−DCコンバータ用トランスに関する。
【0002】
【従来の技術】
スイッチング電源は、民生機器をはじめOA、産業用機器へと幅広い利用が進んでおり、現在、小型、薄型、軽量化が図られている。このスイッチング電源、DC/DCコンバータに使用されるトランスには、従来、Mn−Zn系のフェライト焼結体であるフェライトコアが使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
Mn−Zn系のフェライトコアは、飽和磁束密度、透磁率が大きく、また損失(コアロス)が100kW/m3程度(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)と小さいという特長があり、これまでスイッチング電源やDC/DCコンバータ等のトランスに用いられてきた。しかしながら、比抵抗が10Ω・m程度と比較的低く、コアに直接巻線をすると漏れ電流が発生する。このため、DC/DCコンバータ等のトランス用としては、Mn−Zn系のフェライトコアを使用する場合、フェライトコアにボビンをかぶせたり、絶縁被膜等の処理を行ってから巻線を行っていた。それにより、製造コストが高く、小型化が難しいという問題があった。
【0004】
これに対し、Ni系のフェライトコアは、一般に比抵抗が1×106Ω・m程度と非常に高く、コアに直接巻き線をすることが可能であるが、損失(コアロス)が大きいためコアが発熱し易く、また飽和磁束密度が小さいためフェライトコアの形状が大きくなり、DC/DCコンバータ等のトランス用として適していなかった。
【0005】
更に、近年携帯機器の小型・薄型化に伴い、これに使われるDC/DCコンバータトランス等も基板への面実装化が必要となり、小型・薄型化、高性能化が要求されている。このような要求から従来のボビンを使用し、ボビンへ巻き線を施しボビン端子で巻き線を半田付けしていたタイプのDC/DCコンバータトランスから、コアに直接端子を付け、コアに直接半田付けをするタイプのDC/DCコンバータトランスが必要となってきている。
【0006】
このような半田付けを行う場合、フェライトコアには室温から400度を超える温度が急激に加わるため、熱衝撃(以下ヒートショックと記載)によりコアが割れるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のことを鑑みて、比抵抗の高いNi系フェライトにて、飽和磁束密度が大きく損失(コアロス)が小さく、ヒートショックに強いDC/DCコンバータ等のトランス等として使用できるフェライトを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、主成分としてFe 46.0〜50.5mol%、ZnO 18.0〜28.0mol%、CuO 3.0〜12.0mol%、残部がNiOから成る組成を有し、かつ、副成分としてV2O5を0.2〜0.6wt%含有し、平均結晶粒径が21〜100μmであ耐熱衝撃性に優れた高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトである。本発明においては、Vを0.25〜0.6wt%含有すれば耐ヒートショック特性が向上するので好ましい。
そして、本発明の高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトでは、20〜140℃における損失(コアロス)の最小値が700kW/m以下(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)で、飽和磁束密度が400mT(印加磁界4000A/m)以上の磁気特性を具備する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトを磁心としたDC/DCコンバータ用トランスである。
【0010】
本発明では、成分組成範囲が重要な要件である。即ち、Fe23が46.0mol%未満であると、透磁率が低下し、コアロスが大きくなり、かつ、飽和磁束密度も低くなる。また、Fe23が50.5mol%を超えると、比抵抗が低くなり、Ni系フェライト材料の特徴である絶縁性が低くなり、不適当である。よって、Fe23は46.0〜50.5mol%の範囲であり、前記特性の劣化を考慮するとより好ましくは、47.0〜49.8mol%の範囲が望ましい。
ZnOは18.0mol%未満であると、コアロスが大きくなり、透磁率が低くなる。また28.0mol%を超えると、飽和磁束密度が400mTよりも低くなる。よって、18.0〜28.0mol%の範囲であり、前記特性の劣化を考慮するとより好ましくは、20.0〜25.0mol%の範囲が望ましい。
CuOは12mol%を超えると、コアロスが大きくなる。よって、12mol%以下の範囲であり、より好ましくは、3.0〜9.0mol%である。 CuOは焼結促進効果を有し特性劣化を抑え焼成温度を下げるために用いられるが3mol%未満と成ると焼成温度を1100℃を超える温度に上げる必要があり、その場合には比抵抗が低下するため3mol%以上が望ましい。
は0.1wt%未満であるとヒートショックに弱く、半田付けするとコアが割れてしまう。また、0.6wt%を超えると、初透磁率が低くなり実用上好ましくない。また、0.25wt%以上とすれば,より耐ヒートショック性が向上する。
【0011】
また平均結晶粒径が10μm未満であると、コアロスが大きくなり、かつ、ヒートショックに弱く、また100μmを超えると、抗折強度が劣化し実用上好ましくない。このため、平均結晶粒径は10〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0012】
この平均結晶粒径は、焼結体の断面を鏡面研磨後、酸エッチングあるいは熱処理を施し、SEM(走査型電子顕微鏡)により所定の倍率で観察する。そして、結晶粒子の数が50個以上入る正方形の領域規定し、その領域内の各結晶の面積を測定し、その面積から円換算で直径を求め、これを各結晶の結晶粒径とし、その領域内の平均を平均結晶粒径とした。尚、前記領域の領域線上に結晶が重なるものは含めないものとする。
【0013】
また、本発明によるNi−Cu−Zn系フェライトは、高磁束密度で、低損失な特性を特徴としており、損失(コアロス)は700kW/m3(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)以下であることを特徴とし、飽和磁束密度が400mT(印加磁界4000A/m)以上であることを特徴としている。これらの特性を満足しないと、スイッチング電源、DC−DCコンバータ用トランスとして実用性が低くなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るフェライト焼結体の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
Fe23、NiO、ZnO、CuOの原料粉末を所定量秤量し、これに所定量のイオン交換水を添加したものをボールミルにて4時間混合し、電気炉を用いて最高温度850℃で2時間仮焼成した後、これを炉冷し、40メッシュのふるいで解砕する。しかる後、再び所定量のVを秤量しイオン交換水と共に添加したものをボールミルにて6時間粉砕し、粉砕されたスラリー状の原料を乾燥および解砕する。これにバインダー(ポリビニルアルコール)を加えて造粒し、40メッシュのふるいにて整粒した顆粒を乾式圧縮成形機と金型を用いて、外径30mm、内径20mm、高さ10mmのリング状コアと長さ60mm、幅12mm、厚み5mmの板状コアを成形圧147MPaで成形し、これを大気中、1100℃で1.0時間焼成した。焼成して得られたリング状コアの各試料の成分組成及び焼成密度を測定した後、周波数50kHz、磁束密度150mTの測定条件において20〜140℃の温度範囲で損失(コアロス)と印加磁界4000A/mの測定条件において20℃の飽和磁束密度を測定した。また、成分組成は、工程中で変化し、秤量組成と若干異なるので、最終組成として表1に載せる。
【0015】
【表1】
【0016】
DC/DCコンバータのはんだ実装温度は高温はんだで行われ、他の部品との熱容量の差異から、350〜400度の温度に3秒程度さらされる。そこで、焼成して得られた板状コアの各試料を400度に加熱した半田槽に長さ方向に10mm、3秒間浸しヒートショックによる割れを確認した。さらに厳しい試験条件として460度でも同様の試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0017】
【表2】
【0018】
表1に示すように、本発明の実施例は、20〜140℃におけるコアロスの最小値が700kW/m3(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)以下を満足し、また飽和磁束密度は400mT(印加磁界4000A/m)以上を満足し、全て420mT以上を達成している。この実施例の初透磁率は、200以上を示し、比抵抗は1×106Ω・m以上を有している。また、焼成密度は5.10×10kg/m以上の値を示している。
【0019】
表2に示すように、本発明の実施例は、400度の半田槽に浸してもコアが割れることが無く、ヒートショックに強い材料となっていることを示している。
更に厳しい460度の条件下(例えばPbフリー半田を用いる場合)で使用する場合にはVOの含有量を0.25wt%以上にする事で対応可能である。
【0020】
(実施例2)
表1中の試料No.13,No.20と同一組成のドラム型コアを作製した。図1にその外観斜視図を示す。このドラム型コアの寸法は、巻心径が2.5mm、鍔径が6.0mm、巻幅が0.7mmで全長が1.8mmである。このドラム型コアに、UEW0.12mmφの被覆導線を用いて、30ターン巻線した。この試料を用いて、直流重畳特性の評価を行った。測定条件は、周波数100kHz、電流1mAである。この直流重畳特性の測定温度は、20℃、60℃、100℃で評価した。20℃のときの結果を図2に、またその他の温度と合わせ結果を表3に示す。図2においてIdcは直流重畳時の電流値である。 また、この表3のインダクタンスLとは直流重畳をかける前の初期のインダクタンス値であり、L−20%時の電流値とは、電流値(Idc)を上げ、インダクタンスが低下し、初期値から20%インダクタンス値が下がった時の電流値を示したものである。
図2及び表3に示すように、本発明によれば測定温度20℃、60℃、100℃の各温度で、インダクタンス値及び電流値が比較例5とほぼ同等な値となっており、かつ、400度、460度に加熱した半田槽に浸した結果、割れなかったことからコアに直接半田付けを必要とするDC/DCコンバータ用トランスとして、実用的であり、使用可能であることがわかる。
【0021】
【表3】
【0022】
図3に本発明のフェライト焼結体を用いて構成したDC/DCコンバータ用トランスを示す。このDC/DCコンバータ用トランスはドラム型コア2に巻線4を施し、前記ドラム型コア2に形成された金属端子5に前記巻線4の端部をはんだ付けしている。そしてドラム型コア2の外周には閉磁路を構成するように、前記ドラム型コアを構成する同一のフェライト焼結体でコア2を配置している。このDC/DCコンバータ用トランスでは、従来のボビンへ巻き線を施しボビン端子で巻き線を半田付けしていたタイプのDC/DCコンバータトランスと比較し30%程度小型化することが出来た。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、Ni−Cu−Znフェライトにおいて、コアロスが700kW/m3以下(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)で、飽和磁束密度が400mT以上(印加磁界4000A/m)という非常に低損失で飽和磁束密度の高いフェライト焼結体を得る事が出来、しかもNi系フェライト特有の比抵抗の高いフェライト焼結体が得られ、かつ熱衝撃に強い、DC/DCコンバータ等のトランスとして有用であり、トランスの小型化及び製造コストの低減に大いに役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に用いるフェライトコアの外観斜視図である。
【図2】 本発明の一実施例に係るフェライトコアの直流重畳特性である。
【図3】 本発明の一実施例に係るDC−DCコンバータ用トランスの外観図である。

Claims (4)

  1. 主成分としてFe 46.0〜50.5mol%、ZnO 18.0〜28.0mol%、CuO 3.0〜12.0mol%、残部がNiOから成る組成を有し、かつ、副成分としてV0.2〜0.6wt%含有し、平均結晶粒径が21〜100μmであることを特徴とする耐熱衝撃性に優れた高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライト。
  2. を0.25〜0.6wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の耐熱衝撃性に優れた高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライト。
  3. 20〜140℃における損失(コアロス)の最小値が700kW/m以下(周波数50kHz、動作磁束密度150mT)で、飽和磁束密度が400mT(印加磁界4000A/m)以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱衝撃性に優れた高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライト。
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の高磁束密度低損失Ni−Cu−Zn系フェライトを磁心としたことを特徴とするDC/DCコンバータ用トランス。
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