JP5189301B2 - レーザー走査型顕微鏡 - Google Patents

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Description

本発明は顕微鏡の技術分野に係り、特にHomo-FRET (Homo-Fluorescence resonance energy transfer)などによる偏光異方性を検出する顕微鏡に関する。
近年の顕微鏡観察では、標本の形状のみならず、生きた状態の標本における生体反応の観察が主流となりつつある。この観察の一つの例として、Homo-FRET (Homo-Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した蛍光観察法が知られている。
FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)とは、蛍光分子である2つの供与体(Donor)分子と受容体(Acceptor)分子によって起こされる現象であり、励起光によって励起された供与体分子が、近接している受容体分子にむけて励起エネルギーを移動させ、基底状態にある受容体分子が励起され蛍光を放射するという現象である。このFRETが起こる為には、供与体と受容体が近接している事(1〜10nm程度)などの条件を満たす必要がある。そこで、この条件と標本内の生体反応を結びつけることで標本の生体活動を観察することができる。
例えば、カルシウムイオンのような生体活動に密接な物質と反応し、供与体(Donor)分子と受容体(Acceptor)分子の距離が変化する試薬を用いることでカルシウムイオンの存在、分布、変化などをとおして生体活動を観察することができる。
この供与体と受容体が、互いに異なる蛍光分子で構成した場合を「Hetero-FRET」、互いに同じ蛍光分子で構成した場合を「Homo-FRET」と呼んで区別する。「Hetero-FRET」と「Homo-FRET」は観察手法という観点から見ても大きく異なる。
Hetero-FRETでは、互いに異なる蛍光分子間のエネルギー転移が起こり、放射される蛍光のスペクトルが異なる。つまり、供与体(Donor)の持っている発光波長の代わりに受容体(Acceptor)の発光波長が検出される。そこで、供与体(Donor)からの蛍光と受容体(Acceptor)からの蛍光を波長によって区別することができ、その蛍光の発光量を調べることによってHetero-FRETが起きているかどうかを観察することができる。
しかし、Homo-FRETでは、供与体(Donor)と受容体(Acceptor)が同じ種類の蛍光分子であり蛍光波長が同じであるために波長の違いによって観察をすることができない。
そこでHomo-FRETの観測は、偏光異方性を利用することで行われる。直線偏光の励起光を用いて蛍光分子を励起すると、射出される蛍光も同じ偏光異方性を持つという性質がある。しかし、励起から蛍光を射出する間にFRETが起こると偏光異方性が崩れる。したがって、直線偏光の入射に対して射出される蛍光の偏光の保存のされ方を観察することでHomo-FRETを観察することができる。
通常の偏光異方性の観察には、入射側の直線偏光と平行な直線偏光に対して垂直な直線偏光を観察し、その比をもって偏光異方性の崩れた度合いを測る。そのために従来の偏光異方性の観測では、蛍光の光路中に偏光ビームスプリッターを備えることによって平行な直線偏光と垂直な直線偏光とを分離して観測している。
しかしながら、Homo-FRETの偏光異方性の観察には高いSN比が求められ、従来の構成では十分な観測ができなかった。また、LSM(レーザー走査型顕微鏡)では特に高い精度の偏光異方性の検出が必要となる。
Biophysical Journal Volume 80 June 2001 3000-3008
本発明では、上記の技術的問題に鑑み、偏光異方性の高い検出能力を備えたレーザー走査型顕微鏡を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、レーザー光源からの直線偏光を試料に照射して、試料から発せられた蛍光の前記直線偏光と直交した偏光成分と、前記直線偏光と平行な偏光成分とを計測するレーザー走査型顕微鏡において、前記レーザー光源と前記試料の間の光路中に、入射光の偏光成分を分離しかつ外部信号により偏光成分の配分を制御する偏光分離光学素子と、前記試料から発せられた蛍光の前記蛍光の前記直線偏光と直交した偏光成分と、前記蛍光の前記直線偏光と平行な偏光成分とに分離する偏光ビームスプリッタと、前記2つの偏光成分に分離された蛍光をそれぞれ検出する2つの検出器と、を備え、Homo-FRET観測を行なうため前記偏光分離光学素子から射出される互いに振動面が直交する2つの直線偏光を前記試料にピクセル毎に交互に切り替えて照射することで解決される。
また、前記偏光分離光学素子と前記試料の間の光路には第一のファイバーケーブルと第二のファイバーケーブルが備えられ、前記互いに振動面が直交する2つの直線偏光が互いに異なるファイバーケーブルを通過する構成とする。
さらに、前記偏光分離光学素子と前記試料の間の光路には1本のファイバーケーブルが備えられ、前記互いに振動面が直交する2つの直線偏光が同一のファイバーケーブルを通過する構成とする。
そして、前記偏光分離光学素子は第一の偏光分離光学素子と第二の偏光分離光学素子から構成され、前記第一の偏光分離光学素子から射出される第一の直線偏光を前記第一のファイバーケーブルに導き、前記第一の偏光分離光学素子から射出される第二の直線偏光を前記第二の偏光分離光学素子に導き、前記第二の偏光分離光学素子から射出される直線偏光のうちで前記第一の直線偏光と直交するものを前記第二のファイバーケーブルに導く構成とすることが好ましい。
また、前記偏光分離光学素子は第一の偏光分離光学素子と第二の偏光分離光学素子から構成され、前記第一の偏光分離光学素子から射出される第一の直線偏光を前記ファイバーケーブルに導き、前記第一の偏光分離光学素子から射出される第二の直線偏光を前記第二の偏光分離光学素子に導き、前記第二の偏光分離光学素子から射出される直線偏光のうちで前記第一の直線偏光と直交するものを前記ファイバーケーブルに導く構成とすることが望ましい。
ここで、前記偏光分離光学素子は音響光学可変波長フィルターであることが望ましい。また、前記偏光分離光学素子は音響光学可変波長素子であることも可能である。前記偏光分離光学素子はホログラフィック格子であることも考えられる。
本発明によれば、互いに直交した直線偏光を照射することで偏光異方性の高い検出能力を備える。
また、本発明は従来のレーザー走査型顕微鏡の構成を大幅に変更することがなく実施できる。
さらに、直線偏光を高速に切り換えることができるので、生体反応が速い試料内の分子運動の影響を減らすことができる。
本発明のレーザー走査型顕微鏡およびレーザー走査方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。
最初に、Homo-FRETによって偏光異方性が崩れることに関する説明をする。
典型的なHomo-FRETの観察方法としては、2つの蛍光分子をリンカーで結びつけて利用する方法がある。図1では蛍光分子の例としてGFP(Green Fluorescence Protein)のリンカーを示している。このリンカーは調べたい対象の生体内物質と反応しやすく、その生体内物質と反応して形状を変えるような試薬となるように調製する。そして、この試薬と反応する生体内物質があれば2つの蛍光分子が近づきHomo-FRETを起こすようになる。
次に、図1の(a)と(b)を参照してHomo-FRETが起きた時の偏光異方性の違いを説明する。
蛍光分子には吸光特性があり、光を吸収しやすい直線偏光の角度がある。さらに、励起して射出される蛍光は直線偏光の角度を継承する。図1では吸収する直線偏光の角度をθ1とし、放射される直線偏光をθ2として示している。ここで、図1の(a)は、2つのGFPが離れている為にHomo-FRETが起こらない。つまり、この状態ではθ1=θ2である。一方、図1の(b)は、2つのGFPが近接している為にHomo-FRETが起こる。この時はθ1≠θ2となる。そして、このθ1とθ2の差がHomo-FRETの観察対象となる。
図2は、Homo-FRETを起こすリンカーを含んだ試薬が試料内に多数あった状態を示している。実際の生体試料の中では、Homo-FRETを起こす試薬がランダムな位置にランダムな方向を向いて分布している。そして、その生体試料に直線偏光を入射したときに射出される蛍光を観察する。
図2の(a)は、リンカーの2つの蛍光分子が離れている状態に直線偏光が入射された様子を表した模式図である。このとき、吸光特性と直線偏光が一致するかそれに近い状態の蛍光分子が直線偏光によって励起される。同図においては励起される蛍光分子に両矢印を付して表している。これらの蛍光分子はHomo-FRETを起こさずにそのまま蛍光を射出するので、蛍光は振動面の角度がほぼ変わらない直線偏光となって検出される。この検出された蛍光を入射した直線偏光と平行な成分Iparaと垂直な成分Iperに分解してグラフ化したものがグラフ1である。グラフ1は、直線偏光がほとんど振動面を変えずに蛍光に変換されていることを示している。
図2の(b)は、リンカーの2つの蛍光分子が近接している状態で直線偏光が入射され様子を表した模式図である。このときも吸光特性と直線偏光が一致するかそれに近い状態の蛍光分子が励起されるが、蛍光を射出する蛍光分子は近接しているもう一つの蛍光分子である。同図においては励起される蛍光分子に両矢印を付し、蛍光を射出する蛍光分子に破線両矢印を付して表している。
この場合、蛍光を射出する蛍光分子は励起された蛍光分子と異なるので、直線偏光の振動面は保存されない。この射出される蛍光を入射した直線偏光と平行な成分Iparaと垂直な成分Iperに分解してグラフ化したものがグラフ2である。グラフ2は、直線偏光の振動面が保存されていない様子を示している。
グラフ1とグラフ2の違いからも解るように、偏光異方性の観察は直線偏光の平行成分Iparaと垂直成分Iperの比により観察される。このときには、単なる比を使わずに、
をもって偏光異方性rを測定するのが一般的である。
図3は、従来のレーザー走査型顕微鏡の模式図である。同図における顕微鏡本体1は、対物レンズ4を使ってステージ2上の試料3を観察する。そして顕微鏡本体1にはスキャンユニット5が接続され、スキャンユニット5にはレーザーユニット6からファイバーケーブル7を通してレーザーが導入され内部でレーザー走査が行われる。また、偏光異方性を検出する構成ではファイバーケーブル7は偏波面保存ファイバーを使い、直線偏光を崩さずにスキャンユニット5へ導く。そして、スキャンユニット5やレーザーユニット6に接続されるコンピュータ端末8が備えられ、スキャンユニット5やレーザーユニット6の制御によって得られた検出された光の可視化に利用される。
図4は、偏光異方性を観察する際の従来のレーザー走査型顕微鏡の内部構成を示している概略図である。通常のレーザー走査型顕微鏡ではレーザー光源として、例えばアルゴンイオンレーザー(488nm)とHe−Neグリーンレーザー(543nm)とHe−Neレーザー(633nm)などの複数のレーザー光源9を搭載し、ダイクロイックミラー10やミラー11を組み合わせることによって同一光路に合成することで一つのレーザーユニット6を構成する。一つの光路に合成されたレーザーは、AOTF(Acousto-optic tunable filters)12によって光量調節などを行った後にファイバーカップリング機構13を経由してファイバーケーブル7に導入される。後述するようにAOTF12を流用することによって従来のレーザー走査型顕微鏡に大幅な変更をすることなく本発明を実施することができる。
ファイバーケーブル7からスキャンユニット5に導入されたレーザーは、ミラー14を介してダイクロイックミラー15によって対物レンズ4方向へ反射される。その光路の途中にはガルバノミラー16、瞳投影レンズ17、結像レンズ18、ミラー19が配置され、レーザーを走査する機能が備えられている。
試料からの蛍光は逆の光路を通り、ダイクロイックミラー15を通過して検出光路に導かれる。検出光路には結像レンズ20が配置され、蛍光は共焦点ピンホール21に結像され、これを通過した蛍光は偏光ビームスプリッター22によって平行成分Iparaと垂直成分Iperに分離される。分離された蛍光のそれぞれの直線偏光は、2つの検出器(例えば、フォトマルチプライヤ)24によって検出される。
なお、図中の符号11、14、19、23は光路を曲げるためのミラーである。
図5は、従来のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTF(Acousto-optic tunable filters)12の使用法を説明するための概略図である。AOTF12は圧電トランスドゥーサー25によって発生させた超音波によって光学素子内に回折格子と同様な機能を持たせることができる光学素子である。AOTF12は入射された光線を回折現象によって0次光と1次光に分解し、さらに圧電トランスドゥーサー25を制御することで分解の比率を変えることができる。
上記の従来のレーザー走査型顕微鏡ではAOTF12にレーザー光源9からレーザーを入射し、0次光26と1次光27に分解して、1次光のみをファイバーカップリング機構13に導く。つまり、0次光は利用しない。なお、0次光は入射されるレーザーと同じ振動面の直線偏光であり、1次光は入射されるレーザーと直交した振動面の直線偏光である。
図6は、本発明のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTF12の使用法を説明するための概略図である。本発明では、AOTF12にレーザー光源9からのレーザーを入射し、0次光26と1次光27に分解して、それぞれを異なるファイバーケーブル7を有するファイバーカップリング機構13へ導く。つまり、従来とは違い0次光26も利用する。
ここで留意されたいのは、0次光26と1次光27は振動面が直交した直線偏光となることである。ここでは、AOTF12からの0次光26と1次光27の両方を、圧電トランスドゥーサー25を制御することで励起光の偏光を高速に切り替えることができる。このことにより、従来のHomo-FRET観測では励起光の偏光を切り替えなかった為に十分なSN比を得ることができなかったが、本発明では切り替えを行うことでSN比を向上させることができる。
なお、本発明の実施にはAOTFだけではなく、AOM(Acousto-optic tunable modulators)やEOHG(Electro-Optic Holographic Gratings)を使っても同様に本発明を実施できる。以下では実施の偏光分離光学素子としてAOTFを使って説明するが、本発明のこれに限定するものではない。ただし、AOTFの方が複数波長の偏光を扱う点でアドバンテージを持つ。
図7は、本発明のレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。本発明のレーザー走査型顕微鏡も、図4の従来のレーザー走査型顕微鏡の内部構成とほぼ同様の構成を持つ。しかしながら、図4におけるAOTF12からダイクロイックミラー15までの光路が異なる。本発明のレーザー走査型顕微鏡では、AOTF12からの0次光と1次光の両方を利用するために0次光と1次光のそれぞれを2本のファイバーケーブル7を用いてスキャンユニット5に導入する。その後レーザー光合成素子28によって二つの光路を結合する。ここでレーザー光合成素子28とは、ハーフミラーもしくは偏光ビームスプリッターを指す。残りの光路は図4と同様であるので省略する。
図8は、本発明のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTF12周辺部の別の構成を説明するための概略図である。実施例2では、レーザー光源9から入射されたレーザーは0次光26と1次光27に分離され、それをファイバーカップリング機構13の手前で結合する。そのために同図の例ではハーフミラー28とミラー29を組み合わせることで0次光26と1次光27を結合している。
図9は、図8に示されたAOTF12周辺部の構成を組み込んだレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。図9と図4とを比較すると解るように、両構成の違いはレーザーユニット6の内部構成だけである。
本実施例の構成では複数のレーザー光源9からのレーザーをダイクロイックミラー10で同一光路に結合して、一つの光線になったレーザーをAOTF12に導く。AOTF12に入射されたレーザーは0次光と1次光に分解され射出されるが、ハーフミラー28とミラー29によって再び同一光路に結合される。その後、ファイバーカップリング機構13によってファイバーケーブル7へ導入される。
図10は、本発明のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTF12の別の使用法を説明する為の概略図である。従来のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTFの使用法は光量の調節が目的であったが、本実施例では光量の調節をしながら偏光の切り替えもできるような構成としている。
レーザー光源9からAOTF12に入射されたレーザーは0次光26と1次光27に分離されて射出される。その後、0次光26と1次光27のどちらか一方の直線偏光をファイバーカップリング機構13に導入する。そして、もう一方の直線偏光を新たなAOTF30に入射する。それから、AOTF30で、さらに0次光と1次光に分離して、一方のみ光をファイバーカップリング機構13に導入する。AOTF30は0次光と1次光を分解するだけではなくその比率も変えることが出来るので、本構成によれば光量の調節をしながら偏光の切り替えを行うことができる。
なお、本実施例におけるレーザー走査型顕微鏡の内部構成は、図7によって説明された内部構成のAOTF12の単純な置き換えである為に説明は省略する。
図11は、本発明のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTF12のさらなる使用法を説明する為の概略図である。本構成例は実施例2におけるAOTFの構成と実施例3におけるAOTFの構成の組み合わせである。
レーザー光源9からAOTF12に入射されたレーザーは0次光26と1次光27に分離されて射出される。その後、0次光26と1次光27のどちらか一方の直線偏光を新たなAOTF30に入射する。そしてAOTF12で、さらに0次光と1次光に分離して、一方の光のみを使用する。そして、残された2つの直線偏光をハーフミラー28とミラー29によって結合した後に、同一のファイバーカップリング機構13に導入する。このようにすることで光量の調節をしながら偏光の切り替えを行うことができる。
図12は、本発明のレーザー走査型顕微鏡の別の構成を示す概略図である。本発明のレーザー走査型顕微鏡も、図4のレーザー走査型顕微鏡の内部構成とほぼ同様の構成を持つ。しかしながら、本発明では、波長の同じレーザー光源9のそれぞれを2本のファイバーケーブル7を用いてスキャンユニット5に導入する。ここでは、それぞれのレーザーを操作するシャッター31が設けられており、画像ごとに切り替え可能となっている。シャッター31はメカニカルシャッターでも良いし、AOTFやAOMのような非線形光学素子でも良い。そして、スキャンユニット5に導入されたレーザー光の偏光は互いに直交する。その後、レーザー光合成素子28によって二つの光路を結合する。ここでレーザー光合成素子とはハーフミラーもしくは偏光ビームスプリッターを指す。残りの光路は図4と同様であるので省略する。
また2つのレーザーを用いずに、一つのレーザー光源9からの光線を分割し、それぞれを2本のファイバーケーブル7をつかってスキャンユニット5に導入しても良い。
なおスキャニングユニット5のレーザー光合成素子28に偏光ビームスプリッターを使うことで少ない光量損失で同じもしくは極めて近い波長のレーザー光を合成することができる極めて優れたレーザー走査型顕微鏡となる。つまりHomo-FRETのみではなくさまざまなアプリケーションに対応できるレーザー走査型顕微鏡となる。例えば同じもしくは極めて近い波長のCWレーザーとパルスレーザーを組み合わせることにより、煩雑なレーザー切り替え作業や取替え作業を伴わずに一般的な顕微鏡観察とFLIM(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy)と呼ばれる蛍光寿命のイメージングが一台のレーザー走査型顕微鏡にて可能となる。
以下では、本発明のレーザー走査型顕微鏡による走査方法の説明をする。
図13は、本発明のレーザー走査型顕微鏡で試料面を走査する方法を示している概略図である。試料面の走査は、試料面を格子状に分割したピクセルを一列ごとに走査したものを結合させることによって行う。そして、本発明の実施では試料の励起光の偏光である励起偏光を切り換えながら蛍光の偏光の直交成分と平行成分を計測する。
以下の説明では、励起偏光をIperとIparaとし、励起偏光に直交した蛍光の偏光をそれぞれIper perとIpara perとして平行な蛍光の偏光をそれぞれIper paraとIpara paraとする。
図14は、本発明のレーザー走査型顕微鏡による励起偏光の切り換えと走査のピクセル移動の順序を表しているフローチャートを示している。
図14の(a)は、本発明の励起偏光の切り替えをピクセル毎に行う方法である。
本実施例では、はじめのピクセルに対して蛍光の偏光の直交成分Iper perと平行成分Iper paraを取得する(S1)。その後、励起偏光を切り換える(S2)。この状態で取得される蛍光は直交成分Ipara perと平行成分Ipara paraである(S3)。この段階でこのピクセルでのすべての4つのデータがすべてそろったので次のピクセルへ移動する(S4)。そして励起光の偏光状態を元に戻すためにまた励起偏光の切り替えを行う(S5)。上記のフローを全てのピクセルに対して繰り返す。
この方法によれば、各ピクセルに対して正確な観察が行える。従来は本発明のように高速に偏光を切り換える手段がなかった為に上記のようにピクセル毎に偏光を切り替えることができなかった。
図14の(b)は、本発明の励起偏光の切り替えをフレーム毎に行う方法である。本実施形態では図14の(a)のフローよりもフレームあたりの取得時間が短い。つまり、フレームを時系列で取得する際などにフレーム間での時間差を短くしながら正確な観測が行える。なお、ここでのフレームとは、試料全体を含むピクセル全体を指している。
本実施形態では、はじめのピクセルに対して蛍光の偏光の直交成分Iper perと平行成分Iper paraを取得する(S6)。その後、次のピクセルに移動する(S7)。そしてこの操作を全てのピクセルに対して実行する。その後、励起偏光の切り替えを行う(S8)。そして、はじめのピクセルから蛍光の偏光の直交成分Ipara perと平行成分Ipara paraを取得する(S9)。その後、次のピクセルに移動する(S10)。そして、この操作を全てのピクセルに対して実行する。このようにして全てのピクセルに対して4つのデータを得ることができる。
以上のように、本発明によれば偏光異方性の高い検出能力を備えたレーザー走査型顕微鏡が提供される。
Homo-FRETにより偏光異方性が崩れる原理を説明する為の図である。 Homo-FRETを観察する原理を説明する為の図である。 従来のレーザー走査型顕微鏡の構成の概略図である。 従来のレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。 従来のレーザー走査型顕微鏡におけるAOTFの使用法を説明する為の図である。 本発明の実施例1におけるAOTFの使用法を説明する為の図である。 本発明の実施例1におけるレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。 本発明の実施例2におけるAOTFの使用法を説明する為の図である。 本発明の実施例2におけるレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。 本発明の実施例3におけるAOTFの使用法を説明する為の図である。 本発明の実施例4におけるAOTFの使用法を説明する為の図である。 本発明の実施例5のおけるレーザー走査型顕微鏡の内部構成の概略図である。 本発明のレーザー走査型顕微鏡における走査方法を例示している概略図である。 本発明のレーザー走査型顕微鏡における走査方法を示すフローチャートを示している図である。
符号の説明
1・・・顕微鏡本体
2・・・ステージ
3・・・試料
4・・・対物レンズ
5・・・スキャンユニット
6・・・レーザーユニット
7・・・ファイバーケーブル
8・・・コンピュータ端末
9・・・レーザー光源
10・・・ダイクロイックミラー
11・・・ミラー
12・・・AOTF
13・・・ファイバーカップリング機構
14・・・ミラー
15・・・ダイクロイックミラー
16・・・ガルバノミラー
17・・・瞳投影レンズ
18・・・結像レンズ
19・・・ミラー
20・・・結像レンズ
21・・・共焦点ピンホール
22・・・偏光ビームスプリッター
23・・・ミラー
24・・・検出器
25・・・圧電トランスドゥーサー
26・・・0次光
27・・・1次光
28・・・レーザー光合成素子
29・・・ミラー
30・・・AOTF
31・・・シャッター

Claims (8)

  1. レーザー光源からの直線偏光を試料に照射して、試料から発せられた蛍光の前記直線偏光と直交した偏光成分と、前記直線偏光と平行な偏光成分とを計測するレーザー走査型顕微鏡において、
    前記レーザー光源と前記試料の間の光路中に、入射光の偏光成分を分離し、かつ外部信号により偏光成分の配分を制御する偏光分離光学素子と、
    前記試料から発せられた蛍光の前記直線偏光と直交した偏光成分と、前記直線偏光と平行な偏光成分とに分離する偏光ビームスプリッタと、
    前記2つの偏光成分に分離された蛍光をそれぞれ検出する2つの検出器と、を備え、
    Homo-FRET観測を行なうため前記偏光分離光学素子から射出される互いに振動面が直交する2つの直線偏光を前記試料にピクセル毎に交互に切り替えて照射することを特徴とするレーザー走査型顕微鏡。
  2. 前記偏光分離光学素子と前記試料の間の光路には第一のファイバーケーブルと第二のファイバーケーブルが備えられ、
    前記互いに振動面が直交する2つの直線偏光が、互いに異なるファイバーケーブルを通過することを特徴とする請求項1に記載のレーザー走査型顕微鏡。
  3. 前記偏光分離光学素子と前記試料の間の光路には1本のファイバーケーブルが備えられ、
    前記互いに振動面が直交する2つの直線偏光が、同一のファイバーケーブルを通過することを特徴とする請求項1に記載のレーザー走査型顕微鏡。
  4. 前記偏光分離光学素子は第一の偏光分離光学素子と第二の偏光分離光学素子から構成され、
    前記第一の偏光分離光学素子から射出される第一の直線偏光を前記第一のファイバーケーブルに導き、
    前記第一の偏光分離光学素子から射出される第二の直線偏光を前記第二の偏光分離光学素子に導き、
    前記第二の偏光分離光学素子から射出される直線偏光で前記第一の直線偏光と直交する偏光を前記第二のファイバーケーブルに導くことを特徴とする請求項2に記載のレーザー走査型顕微鏡。
  5. 前記偏光分離光学素子は第一の偏光分離光学素子と第二の偏光分離光学素子から構成され、
    前記第一の偏光分離光学素子から射出される第一の直線偏光を前記ファイバーケーブルに導き、
    前記第一の偏光分離光学素子から射出される第二の直線偏光を前記第二の偏光分離光学素子に導き、
    前記第二の偏光分離光学素子から射出される直線偏光で前記第一の直線偏光と直交する偏光を前記ファイバーケーブルに導くことを特徴とする請求項3に記載のレーザー走査型顕微鏡。
  6. 前記偏光分離光学素子は音響光学可変波長フィルターであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のレーザー走査型顕微鏡。
  7. 前記偏光分離光学素子は音響光学可変波長素子であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のレーザー走査型顕微鏡。
  8. 前記偏光分離光学素子はホログラフィック格子であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のレーザー走査型顕微鏡。
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