本発明にかかる帯電部材は、導電性基体と表面層とを有する。
[表面層]
本発明にかかる帯電部材を構成する表面層は、バインダー樹脂及び導電剤を含有し、該導電剤によって導電性を付与されている。更に、該表面層はカルサイト型の紡錘形の炭酸カルシウムが凝集してなる凝集体として含有する。
バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂を用いることができる。具体的には、ウレタン樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。これらのうち、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂が好ましい。かかる架橋性樹脂としては、アクリルポリオールをイソシアネートで架橋したウレタン樹脂を特に好適に用いることができる。このようなウレタン樹脂は導電性弾性層から滲出する低分子成分が表面へ滲出するのを抑制し感光体の汚染を抑制すると共に、帯電部材自体がトナー等の付着を抑制し汚れの発生を抑制できる表面層を形成することができる。
上記イソシアネートとしては、イソシアヌレート型の3量体が好ましい。剛直なイソシアヌレート型の分子が架橋点となり、表面層においてより密な架橋を形成することができ、導電性弾性層からの低分子量成分が帯電部材表面に滲出するのを抑制することできる。
また、イソシアネートは、イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとすることがより好ましい。イソシアネート基は反応し易く、例えば、表面層塗工用塗料中において、常温で徐々に反応が進み、塗料の特性が変化する場合があるが、ブロックイソシアネートとすることにより、ブロック剤の解離温度以下の環境においては反応の進行を阻止することができる。このため、取扱いが容易になる。ブロック剤としては、フェノールやクレゾール等のフェノール類、ε−カプロラクタムのラクタム類及びメチルエチルケトオキシム等のオキシム類等を挙げることができるが、解離温度が比較的低温のオキシム類が好ましい。
上記ウレタン樹脂を構成するアクリルポリオールとしては、ラクトン変性アクリルポリオールが好適に用いられる。ラクトン変性アクリルポリオールは、分子鎖骨格がスチレンとアクリルの共重合体であり、適度な硬度と非汚染性を有する。また、末端に水酸基を有する変性したラクトン基が多数の架橋点となり、イソシアネートで密に架橋することが可能であり、導電性弾性層からの低分子成分の滲出を抑制することができる。ラクトン変性アクリルポリオールのOH価は80KOHmg/g程度であることが好ましい。ポリオールのOH価がこの程度であると、OH価が小さいことによるイソシアネートとの架橋が不充分になり表面層が柔軟になることを抑制して、下層から滲出する低分子量成分を表面へ滲出させず感光体への付着を抑制することができる。また、OH基が大きいことによる表面層が高硬度になることを抑制して、耐衝撃性の低下を抑制することができる。
ラクトン変性アクリルポリオールとイソシアネートとの配合比は、配合した塗料中のイソシアネートの中のNCO基の数(A)と、ラクトン変性アクリルポリオール中のOH基の数(B)との比、A/Bが0.1〜2.0を満たす割合であることが好ましい。特に好ましくは0.3〜1.5の範囲である。
上記表面層に用いられる導電剤としては、金属酸化物系導電性微粒子、金属系導電性微粒子、カーボンブラック、カーボン系導電性微粒子等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック等を挙げることができる。金属酸化物系又は金属系導電性微粒子としては、例えば、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、銅、アルミニウム又はニッケル等の粒子を挙げることができる。かかる微粒子の平均粒径は10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは、10〜80nmである。この範囲であれば、体積抵抗率制御を容易にすることができる。
導電剤としては、金属酸化物系粒子をカーボンブラックで被覆した導電性粒子を使用することが好ましい。カーボンブラックは、粒子が数珠状に連なっているため、バインダー樹脂に対して、均一に分散しない傾向にある。導電性のカーボンブラックがバインダー樹脂中に偏在すると、その部分において体積抵抗率が低下し被帯電部材への過剰放電が生じ、ポチ状の画像不良を招引する傾向を有する。このため、カーボンブラックを金属酸化物系粒子に被覆した導電性粒子として使用することにより、バインダー樹脂への均一な分散が容易となり、全体に亘って均一な体積抵抗率を有する表面層の調製が容易となる。
上記導電性粒子は、金属酸化物系粒子のコア粒子にカーボンブラックの被覆層を形成して調製され、コア粒子にバインダー樹脂への分散性がよい金属酸化物系粒子を用いることにより、バインダー樹脂への分散が容易となる。金属酸化物系粒子は、小径化が容易であり、これを被覆するカーボンブラックが小径粒子状となり、得られる導電性粒子の粒子径をより小径とすることができるため、好ましい。金属酸化物系微粒子は表面層において所望の電気抵抗値を得るため、適宜選択することができるが、具体的には、以下のものを挙げることができる。酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、二酸化チタン、一酸化チタン等の酸化チタン、酸化鉄、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム。チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記表面層は、カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムが凝集してなる凝集体を含有する。
一般に炭酸カルシムの結晶構造としては、カルサイト型、アラゴナイト型、バテライト型が知られている。カルサイト型は紡錘形、立方形の粒子、アラゴナイト型は柱状粒子、バテライト型は球状粒子を形成する傾向にある。表面層に用いる炭酸カルシウムはカルサイト型結晶構造を有するものを使用する。カルサイト型炭酸カルシウムであれば、紡錘形粒子として得ることができ、特定の凝集体を形成して存在することができる。カルサイト型炭酸カルシウムは、天然の鉱石を粉砕して得られる重質炭酸カルシウムに含有されるものであっても、合成されたものであってもよい。
カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムは、その大きさとして、長径aが0.60μm以上0.80μm以下、短径bが0.20μm以上0.30μm以下であり、アスペクト比a/bが3.0以下である。
ここで、紡錘形の炭酸カルシウムの長径、短径の測定は、凝集体を走査型電子顕微鏡により観察し、凝集体を形成する紡錘形の炭酸カルシウムをランダムに10個程度選び、顕微鏡画像において長径、短径を測定し、その平均値を採用することができる。
上記紡錘形の炭酸カルシウムはその大部分が凝集体を形成して表面層中に含有される。凝集体は、図1(a)に一例を示すように、図1(b)にその一例を示す紡錘形の炭酸カルシウムが凝集し、ほぼ球形となっている。凝集体の平均粒子径は3.00μm以上10.00μm以下である。上記した特定の形状並びに大きさの炭酸カルシウムが凝集し、上記した数値の範囲の平均粒子径を有する凝集体は、紡錘形の炭酸カルシウムが凝集体表面から突出して、突起を形成し、いわゆる金平糖のような形状を有する。このような突起を有する凝集体は、表面層の表面に凸部を形成する。また、それと共にその表面の微小な凹凸により、被帯電部材に付着した転写残トナー、外添剤、紙粉等を掻き取る機能を有する。例えば、高速化や低温環境における画像形成において、振動等の影響によりクリーニング装置によるクリ−ニング不良が生じた場合、感光体表面から残留トナーを掻き取り、画像不良の発生を抑制することができる。また、クリーニングブレード等を装備せず、転写残トナーの回収を現像器により行うクリーナーレス画像形成システムにおいては、感光体上の転写残トナーを掻き乱し現像器での回収効率を向上させることができる。
上記凝集体の平均粒子径が3.00μm以上であれば、表面を後述する表面粗さを形成することができる。また、被帯電部材とのニップにおいて、良好な放電を行い得る空隙を形成し、良好な画像を得ることができる。また、凝集体の平均粒子径が10.00μm以下であれば、汚れや、過放電、ピンホールリークに起因する画像不良の発生を抑制することができる。特に、過放電に起因するポチ状の画像不良等を抑制することができる。
凝集体の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡観察により、ランダムに選択した10個程度の凝集体について、凝集体表面に突出する紡錘形の炭酸カルシウムにより形成される突起の隣接する各頂点を結んで形成される概略の円形の長径、短径を測定する。そして、その平均値を採用することができる。
上記凝集体はカルサイト型の炭酸カルシウムをその全量に対し90質量%以上を含むことが好ましい。凝集体が90質量%以上の紡錘形の炭酸カルシウムを含有することにより、帯電部材への圧縮永久歪の発生を極めて有効に抑制することができる。
上記凝集体は以下の(1)から(3)の工程により得ることができる。
(1)濃度40質量%及び25℃における粘度2000センチポイズ以上の水酸化カルシウム水性懸濁液を7〜15質量%に調整して一次用水酸化カルシウム液を用意し、ガス分散撹拌型反応器中に仕込む。一次用水酸化カルシウム液濃度が7質量%以上であれば反応の進行が低速になるのを抑制し、15質量%以下であれば二次粒子同士の凝集を抑制し、炭酸カルシウム粒子の所望の凝集体を得ることができる。また、一次用水酸化カルシウム液の粘度が濃度40質量%及び25℃において2000センチポイズ以上であれば、得られる炭酸カルシウムにおいて、凝集体に含有されない、単離状態の紡錘形の炭酸カルシウムの含有量を低減することができる。一次用水酸化カルシウム液の粘度を上記範囲に調整するには、機械的処理等を用いることができる。
用いるガス分散撹拌型反応器は、単なるガス吹き込み撹拌型反応器では、炭酸カルシウム粒子が均一に分散した反応液が得られない傾向があり、液の混合撹拌及びガスの均一分散によるガス吸収効率を高めるような撹拌機を備えた反応器であることが好ましい。ターボミキサーのようなタービン型インペラーを有し、1000rpm以上の高速回転が可能な撹拌機を有するものがより好ましい。
このガス分散撹拌型反応器中の一次用水酸化カルシウム液に二酸化炭素含有ガスを吹き込み、カルシウムの70〜95%が炭酸化されるまで反応を行い、一次反応液(炭酸化率70〜95%)を得る。反応開始温度は5〜50℃であることが好ましく、より好ましくは5〜20℃である。二酸化炭素含有ガスの吹き込み量は、水酸化カルシウム1モル当り、1.0〜6.0モル/hrであることが好ましい。一次用水酸化カルシウム液に含まれるカルシウムに対し、70%以上を炭酸化することにより、後工程において形成する炭酸カルシウムの凝集体の形成を可能とする炭酸カルシウムの核を生成することができる。そのため、凝集体を形成しない、単離状態の紡錘形の炭酸カルシウムの生成を抑制することができる。二酸化炭素は純粋なものを用いる必要はなく、窒素等で希釈した二酸化炭素含有ガスを使用することができる。以下の工程において二酸化炭素を用いる場合も同様のものを用いることができる。
(2)続いて、得られた一次反応液をガス吹き込み撹拌型反応器に移し、反応液のpHが少なくとも12に保持されるように、二酸化炭素含有ガスを吹き込む。一次反応液にガスの吹き込みを行いながら、濃度40質量%及び25℃における粘度が2000センチポイズ以上の水酸化カルシウム水性懸濁液(以下、二次用水酸化カルシウム液という。)を連続的に添加する。その際一次反応液中のカルシウムと二次用水酸化カルシウム液中のカルシウムのモル比が10:1から1:20の範囲内であるように添加して、二次反応液を得る。
一次反応液中のカルシウムのモル数(C1)と二次用水酸化カルシウム液中のカルシウムのモル数(C2)のモル比C1/C2の値が10以下であれば、炭酸カルシウム微粒子の凝集力を高くし、平均粒子径3.00μm以上の凝集体を形成することを可能とする。また、高濃度に分散した場合、凝集体が崩壊するのを抑制することができる。モル比C1/C2の値が1/20以上であれば、得られる炭酸カルシウムにおいて凝集体を形成しない単離の紡錘形の炭酸カルシウムが多量になるのを抑制することができる。
用いるガス吹き込み撹拌型反応器は、(1)の工程で用いるガス分散攪拌型反応器より更に液循環を良好にした反応器であることが好ましく、より好ましくはプロペラ型インペラーを有し、100rpm以下の低速回転で撹拌を行う反応器である。
反応液に添加する二酸化炭素含有ガスは連続的に吹き込むことが好ましく、吹き込み量は二次用水酸化カルシウム液中の水酸化カルシウム1モル当り二酸化炭素が0.1〜3モル/hrであることが好ましい。
水酸化カルシウム水性懸濁液を添加する際に、反応液のpHを少なくとも12以上に保持することにより、この工程において2次粒子の発生を抑制することができる。反応液のpHは12〜12.5の範囲を保持することがより好ましい。
反応開始時の一次反応液の温度は、10〜70℃が好ましく、より好ましくは10〜40℃であり、添加する水酸化カルシウム水性懸濁液の温度は通常10〜70℃、好ましくは10〜40℃である。
(3)二次用水酸化カルシウム液の添加終了後、反応液のpHが7付近に低下するまで二酸化炭素含有ガスを吹き込んで炭酸化反応を完結させ、炭酸カルシウムの凝集体を得ることができる。反応液のpHが7付近に低下するまで二酸化炭素含有ガスを吹き込むことにより、カルシウムの炭酸化反応を完結させることができる。この方法を連続方式と称する。
上記凝集体の他の製造方法としては、上記連続方式において(1)の工程により得られた一次反応液に、(2)の工程で使用する二次用水酸化カルシウム液を一時に加え、二酸化炭素含有ガスを連続的に吹き込む、バッチ方式を挙げることができる。このバッチ方式においては、二次用水酸化カルシウム液や、二酸化炭素の使用量、反応温度等は上記連続方式の場合と同様であることが好ましい。
上記連続方式、バッチ方式により、得られた反応系から分散媒を濾別し、脱水、乾燥、粉砕、分級等によりカルサイト型炭酸カルシウムを得る。得られるカルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムは、長径aが0.60μm以上0.80μm以下、短径bが0.20μm以上0.30μm以下、及びアスペクト比a/bが3.0以下である。そして、その90質量%以上が平均粒子径が3.00μm以上10.00μm以下の凝集体として得られる。
上記カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムは凝集体に含有されるものも含めて、表面層中のバインダー樹脂に対して、2質量%以上70質量%以下の範囲で含有されることが好ましい。この範囲であることで表面層の表面粗さを後述する範囲とすることができる。
上記表面層は、上記物質の機能を阻害しない範囲で、必要によりその他の配合剤を含有していてもよい。
このような表面層は、表面粗さRzjisが3.00μm以上20.00μm以下である。表面粗さRzjisが、3.00μm以上であれば、凝集体により帯電部材の表面に形成される凸部への汚れ付着、凸部間に形成される凹部への堆積物が付着するのを抑制し、得られる画像において帯電ムラ画像の発生を抑制することができる。また、被帯電部材とのニップ部において、充分な放電を発生させ得る空隙を形成することができる。また、表面粗さRzjisが20μm以下であれば、放電不良起因の画像の発生を抑制することができる。
ここで、表面粗さRzjisは、JISB0601に準じて、帯電部材の無作為の6点における10点平均表面粗さを、表面粗さ測定器SE−3400((株)小坂研究所製)を用いて測定した測定値を採用することができる。
上記表面層のガラス転移温度Tgは、粘弾性測定法で、ピーク温度が45℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上である。また、表面層のTgの上限はバインダー樹脂が適度な可撓性を有し、クラックの発生を抑制できる範囲が好ましい。表面層のTgは、バインダー樹脂を構成するイソシアネートの含有比率によって調節することができる。
ここで、ガラス転移温度Tgは以下の方法により測定した測定値を採用することができる。帯電部材の表面から表面層を剥離する、あるいはPET樹脂シートやフッ素系樹脂シートの上に表面層作成用塗料を塗布して表面層を形成し、シートから表面層を剥離して、5mm×40mm程度の短冊形に切り出しサンプルとする。測定装置は、動的粘弾性測定装置RSA−II(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、また治具としてフィルムテンションフィクスチャーを用いる。測定は、−50℃〜150℃の温度範囲において測定周波数6.28rad/sec、昇温速度5℃/min.、初期歪0.07〜0.25%のオートテンションモードで行う。損失正接tanδの温度分散を測定し、ピーク温度をTgとする。
上記表面層の厚さとしては、上記凝集体により表面に凹凸が形成されるような厚さが好ましい。具体的には、1〜100μmが好ましく、より好ましくは、2〜50μmである。
膜厚は、帯電部材をカッターナイフ等で切断し、層の断面を光学顕微鏡または電子顕微鏡により観察し、その厚さを実測することにより求めることができる。
上記表面層の作成方法としては、押し出し成形、射出成形、又は圧縮成形等により、例えばチューブ状に形成し、導電性基体上に被覆する方法等を使用することもできるが、塗工方法が好ましい。塗工方法としては、上記バインダー、導電剤、上記炭酸カルシウムと、その他の必要に応じて、シリコーンオイル等のレベリング剤等の材料とを、分散装置を用いて分散し塗料とする。分散装置としては、モーターで回転させる回転羽、ホモジナイザー等の攪拌分散装置、加速した塗料を衝突させて分散する微細オリフィス分散装置、サンドミル、ペイントシェーカ、ダイノミル及びパールミル等のビーズを利用した分散装置等を用いることができる。得られた塗料を、必要に応じてUVやEBによる表面処理を行った導電性基体上に塗工する。塗工方法としては、スプレー、浸漬塗工、ロールコータ、コイルコータ、カーテンフローコータ、電着塗装、静電塗装、紛体塗装等を使用することができる。中でも均一な膜厚の塗膜が得られることから、浸漬塗工が好ましい。
上記表面層に上記凝集体に由来する凸部を形成し、上記表面粗さRzjisとする方法としては、具体的には、以下の方法により達成できる。
カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムが凝集してなる凝集体の添加量を調整する。
表面層の膜厚を、例えば、添加する凝集体の平均粒子径の2倍以下等に調整する。
[導電性基体]
本発明の帯電部材における導電性基体は、導電性支持体と、その上に形成され、表面層が有する弾性に加え更なる弾性を接触帯電用帯電部材に付与するために導電性弾性層を有することが好ましい。
上記導電性支持体は、その上に設けられる導電性弾性層、表面層等を支持し、被帯電部材との当接による負荷に十分に耐え得る強度を有するものである。その形状としては帯電部材の形状によって選択することができ、板状であってもよいが、帯電部材がローラー形状の場合、円柱状、円筒状等を挙げることができる。導電性支持体の材質としては、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル等の金属性(合金製)を挙げることができる。これらの導電性支持体には、導電性を阻害しない範囲で、耐傷性、防錆を目的としてメッキ処理等の表面処理を施してもよい。
上記導電性弾性層は、導電性を有し、被帯電部材との接触を確実に行うため、帯電部材に弾性を付与するために設けられるものである。導電性弾性層は充実体、発泡体いずれであってもよく、1層であっても2層以上からなるものであってもよい。
上記導電性弾性層は、導電剤と高分子弾性体を含有することが好ましい。かかる高分子弾性体としては、ゴム、エラストマー、樹脂等いずれであってもよい。ゴムとしては、具体的には以下のものを例示することができる。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム。樹脂、エラストマーとしては、具体的には、以下のものを例示することができる。ブタジェン樹脂(RB)、ポリスチレン、スチレン−ブタジェン−スチレンエラストマー(SBS)、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリスチレン系高分子材料。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系高分子材料。ポリエステル系高分子材料。ポリウレタン系高分子材料。アクリル系樹脂、ブタジェン−アクリロニトリル共重合体等のアクリル系高分子材料。PVC、RVC等の熱可塑性エラストマー。これらの1種又は2種以上を組み合わせた混合物。
これらのうち、所望の導電性を均一に安定して得られることから、極性ゴムが好ましく、具体的には、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ポリエーテル共重合体や、これらの2種以上の混合物等が好ましい。
上記エピクロルヒドリンゴムとしては、具体的には、以下のものを例示することができる。エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体。
上記導電性弾性層に含有される導電剤としては、電子導電系、イオン導電系いずれも使用することができる。具体的には、電子導電系導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ等の金属酸化物、Cu、Ag等の金属粉、導電性の繊維等を挙げることができる。イオン導電系導電剤としては、例えば、以下のものを例示することができる。ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド。トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等の陽イオン性界面活性剤。ラウリルベタイン、ステアリルべタイン、ジメチルアルキルラウリルベタイン等の両性イオン界面活性剤。過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸トリメチルオクタデシルアンモニウム等の第四級アンモニウム塩。トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等の有機酸リチウム塩。
これらの導電剤の導電性弾性層中の含有量は、導電性弾性層の電気抵抗値が108Ω以下、より好ましくは104Ω以上108Ω以下となるような範囲であることが好ましい。具体的には、高分子弾性体100質量部に対し、0.1〜5質量部を挙げることができる。
ここで、導電性弾性層の導電性は、以下の測定値に基づき得られる値を採用することができる。導電性弾性層原料を用いて厚さ1mmのシートに成形したサンプルの両面に金属を蒸着して電極とガード電極とを作製する。微小電流計(ADVANTEST R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER(株)アドバンテスト社製)を用いて200Vの電圧を印加して30秒後の電流を測定する。膜厚と電極面積とから体積抵抗率を算出する。
上記導電性弾性層は、上記物質の機能を阻害しない範囲で、必要によりその他の配合剤を含有していてもよい。配合剤としては、例えば、充填材、可塑剤、加硫剤、受酸剤、老化防止剤、加硫遅延剤、加工助剤等を挙げることができる。
充填材は、導電性弾性層の補強や、増量により、高分子弾性体の使用量の減量等を目的として用いられる。充填剤としては、例えば、MT、FT、GPF、SRFカーボンブラック等の導電性が低いカーボンブラックや、高比表面積、高ストラクチャーの導電性カーボンブラックや、タルク、クレー、シリカ等の無機充填材等を用いることができる。上記カーボンブラックは、高分子弾性体に対して抵抗の均一性を損なわない範囲で用いることができ、具体的には、高分子弾性体100質量部に対して、0.5〜15質量部を挙げることができる。
受酸剤は、高分子弾性体としてエピクロルヒドリンゴム等の塩素を含む材料を使用する場合に使用することが好ましい。受酸剤としては、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を挙げることができ、導電性弾性体層中の含有量としては、高分子弾性体100質量部に対して、1〜10質量部を挙げることができる。
可塑材としては、エステル系可塑材を用いることが好ましく、具体的には、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル等を挙げることができる。感光体への可塑材への移行により感光体の汚染を抑制するため、エステル系可塑剤はプロピレングリコール等と高分子量化したエステル化合物を用いることが好ましい。
加硫剤は、高分子弾性体を架橋(加硫)して導電性弾性層の耐久性を高めるために使用することができる。加硫剤としては、イオウやイオウ含有有機化合物やパーオキサイドを始めとする各種加硫剤を使用することができる。パーオキサイドを使用した場合は帯電部材において圧縮永久歪の発生の抑制効果を奏するが、金型加硫を必要とする等の加硫方法が限定され、得られる電気抵抗値が高くなる傾向がある。また、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンを使用した場合には、帯電部材において圧縮永久歪の発生の抑制効果を奏するが、スコーチ性が低下し、取扱いに注意が必要となる場合がある。イオウやイオウ含有有機化合物を用いた場合、スコーチ性、圧縮永久歪の発生の抑制の調製が容易であるため、好ましい。
上記導電性弾性層は、硬度として、JIS A硬度が30以上80以下であることが好ましい。硬度は、JIS K 6253に規定されているデュロメータ硬さ試験のタイプA型を用いて行い、JIS K 6253に準じて測定した測定値を採用することができる。
上記導電性弾性層の厚さとしては、例えば、0.5mm以上5.0mm以下とすることができる。
また、上記導電性弾性層には、上記表面層に含有されるカルサイト型の紡錘形の炭酸カルシウムが凝集してなる凝集体を含有させることもできる。該凝集体はその表面に有する微細な突起が、導電性弾性層を構成する高分子弾性体と密着し、導電性弾性体層に高分子弾性体が有する弾性以上の弾性を付与することができる。このため、導電性弾性層は感光体との圧接に対し、大きい復元力を具備することとなり、接触帯電用帯電部材に圧縮永久歪が生じるのを抑制することができる。導電性弾性層中のカルサイト型の炭酸カルシウムの凝集体の含有量は、例えば、高分子弾性体100質量部に対して30〜150質量部とすることができる。
上記導電性弾性層の成形方法としては、上記の導電性弾性層の原料の高分子弾性体、導電剤、その他の配合剤を密閉型ミキサーで混合して、例えば、押し出し成形、射出成形、又は圧縮成形の方法により成形することが好ましい。導電性弾性層は、導電性支持体の上に直接成形しても、予め導電性弾性層として成形した成形体のチューブやシートを導電性支持体上に被覆形成させてもよい。導電性弾性層の作製後に表面を研磨して形状を整えることができる。
導電性弾性層を成形体として成形した場合は、必要に応じて導電性支持体と接着剤を介して接着してもよい。接着剤としては、導電性であることが好ましく、導電剤を熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂をバインダーとして、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系の接着剤に含有させたものを用いることができる。
[帯電部材]
本発明の帯電部材の形状としては、ブレード状、ベルト状等であってもよいが、ローラー状であることが好ましい。その一例として、図2の概略構成図に示すように、導電性支持体101、導電性弾性層102からなる導電性基体と、表面層103を備えたものを挙げることができる。
本発明の帯電部材は更に、導電性支持体と導電性弾性層間、導電性弾性層と表面層間に種々の機能を有する機能層を有していてもよい。
上記帯電部材の表面層の表面には、凝集体の含有に由来する凸部を有し、更に、凝集体の表面の微小な突起に由来する微小な凹凸部を有する。このような構成を有する帯電部材により、長期間に亘る反復使用によっても、汚れや、放電不良を抑制し、被帯電部材の均一な帯電を可能とする。その結果、本発明の帯電部材は帯電横スジ画像、帯電ムラ画像の発生を長期に亘って抑制することができ、耐久性に優れる。
[電子写真画像形成装置]
本発明の電子写真画像形成装置は、上記帯電部材と、該帯電部材に接触して配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする。その一実施形態を、図3の概略構成図を参照して以下に説明する。電子写真画像形成装置には、主として、電子写真感光体である感光体204、上記帯電部材である帯電ローラー201、露光手段204、接触反転現像方式の現像手段206、転写ローラー(転写手段)208が設けられる。更に、クリーナー207、帯電除去手段205、記録材に画像を熱定着する定着装置(図示せず)等が設けられる。
このような電子写真画像形成装置において、帯電ローラーに帯電バイアス印加電源202から、−1000V等の直流電圧を印加する。帯電ローラーは、矢印方向に所定のプロセススピードで回転駆動される感光体に所定の押圧力で押圧され、ニップ部を形成して接触回転する。ニップ部において上記帯電ローラーは表面層に形成される上記凝集体に起因する凸部により感光体間に空隙を生じさせ、この空隙の存在により感光体を一様に、例えば、暗部電位−400Vに帯電する。
次に露光手段、例えば、レーザービームスキャナー等により、感光体表面に画像情報に対応した露光を行い、露光部分を、例えば、明部電位−120Vに減衰させ、静電潜像を形成する。一方、感光体の帯電極性と同極性で、静電潜像より低い現像バイアス電圧、例えば−350Vに印加されたネガトナーをその周囲に膜状に形成した現像ローラーを感光体に対向して回転させ、感光体の静電潜像上にトナーを移動させ、トナー像として現像する。
転写ローラーが感光体に所定の押圧力により押圧されて転写ニップを形成する。この転写ニップに給紙装置から紙等の記録材210が供給され、その裏面から、トナーとは逆極性の転写電圧が転写ローラーを介して転写バイアス印加電源209から印加される。感光体と同周速度で転写ローラーが回転して、感光体上のトナー像が記録材上に静電転写される。
その後、記録材は感光体表面から分離され、記録材上のトナー像は、定着部の定着ローラーと加圧ローラー間において、熱と圧力により定着され、永久画像が形成された記録材が装置外へ排出される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この記録材が不図示の再循環搬送機構に導入されて、転写ニップ部へ再導入されるようになっている。
トナー像の転写後、感光体上の転写残トナーはクリーナ−で感光体上から除去、回収される。また、感光体は帯電除去手段により除電光が照射され、残留する潜像が消去され、次の画像形成を待機する。更に、感光体に転写残トナー等が残留している場合であっても、次の画像形成において、帯電ローラーが感光体に接触帯電を行うと共に、感光体表面から転写残トナーを掻き取り、感光体を均一に帯電する。
尚、クリーナーと帯電除去手段はその配置を前後交換することもできる。また、上記構成部材は2つ以上を組み合わせて一体化し、電子写真装置本体に着脱自在に構成したプロセスカートリッジとして用いることもできる。
以下に、本発明の帯電部材を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
[導電性弾性層の作製]
以下の材料を80℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した。
高分子弾性体:エピクロルヒドリン23mol%/エチレンオキサイド73mol%/アリルグリシジルエーテル4mol%の3元共重合体ゴム 100質量部
イオン導電剤:ジメチル-ヒドロキシエチル-オクチルアンモニウムパークロレート 2質量部
充填剤:カーボンブラック(トーカブラックシーストSO:東海カーボン(株))5質量部
酸化亜鉛 5質量部
ステアリン酸亜鉛 1質量部
老化防止剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール) 0.5質量部
エステル系可塑剤(ポリサイザーP202:大日本インキ工業(株)) 5質量部
炭酸カルシウム(ナノックス#30:丸尾カルシウム(株)) 90質量部。
更に、加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール2質量部及び加硫剤としてイオウ2質量部を加えて、更に15分間オープンロールで混練して、原料コンパウンドを作製した。
このコンパウンドを、ゴム押し出し機を使用して、熱硬化性接着剤(メタロックU−20)を塗布した直径6mm、長さ250mmの円柱形の導電性支持体(鋼製、表面はニッケルメッキ)の周囲にローラー状になるように成形した。これを電気オーブン中で160℃で2時間、加硫及び接着剤を硬化した。その後、ゴム部分の両端部を突っ切り、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径11.9mm、中央部直径12.0mmのクラウン形状の弾体層を有する弾性ローラー(導電性基体)を得た。
[表面層の作製]
塗料用材料として、ポリオール濃度17%の希釈液、導電性粒子、酸化チタン粒子、変性ジメチルシリコーンオイル、イソシアネート混合液、カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムの凝集体を用意した。
ポリオール濃度17%の希釈液は、ラクトン変性アクリルポリオール(プラクセルDC2016:ダイセル化学工業(株))、MIBK(メチルイソブチルケトン)を混合して調製した。そして、588.2質量部(ラクトン変性アクリルポリオ−ル固形分100質量部相当)を用いた。
導電性粒子は以下のように調製した。金属酸化物系粒子としてシリカ粒子(平均粒子径15nm、体積抵抗率1.8×1012Ω・cm)7.0kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン140gを、エッジランナーを稼動させながら添加した。588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で30分間、攪拌速度22rpmで混合攪拌を行った。次に、カーボンブラック粒子(粒子径28nm、体積抵抗率1.0×102Ω・cm)7.0kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間、攪拌速度22rpmで混合攪拌を行った。メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて80℃で60分間乾燥を行い、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を50質量部用いた。
酸化チタン粒子は以下のように調製した。針状ルチル型酸化チタン粒子(平均粒径15nm、縦:横=3:1)、体積抵抗率5.2×1010Ω・cm)1000g、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシラン110g、溶媒としてトルエン3000gを配合してスラリーを調製した。このスラリーを、攪拌機で30分間混合した後、有効内容積の80%が平均粒子径0.8mmのガラスビーズで充填されたビスコミルに供給し、温度35±5℃で湿式解砕処理を行った。湿式解砕処理して得たスラリーをニーダーを用いて減圧蒸留(バス温度:110℃、製品温度:30〜60℃、減圧度:約100Torr)してトルエンを除去した後、120℃で2時間表面処理剤の焼付け処理を行った。焼付け処理後の粒子を室温まで冷却した後、ピンミルを用いて粉砕し酸化チタン粒子を得た。得られた酸化チタン粒子を30質量部用いた。
変性ジメチルシリコーンオイル(SH28PA:東レ・ダウコーニング製)0.08部を用意した。
イソシアネート混合液はヘキサメチレンジイソシアネートブタノンオキシムブロック体(デュラネートTPA−B80E:旭化成工業製)とイソホロンジイソシアネートブタノンオキシムブロック体(ベスタナートB1370:テグサ・ヒュルズ製)を混合調製した。混合割合は7:3とし、80.14質量部を用いた。
カルサイト型の、紡錘形の炭酸カルシウムの凝集体を以下のように作製した。水酸化カルシウムを水に懸濁して50質量%の石灰乳を調整し、コーレスミキサー(高速インペラー分散機)で分散した後、40質量%に希釈した。25℃における粘度を測定したところ(B型粘度計60rpm)2500cpであった。この石灰乳を濃度100g/Lになるように水に分散した希釈石灰乳を、15℃に調整し、ガス分散撹拌型反応器(以下反応器R‐1という。)に30L仕込んだ。二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを9.1Nm3/hr(水酸化カルシウム1モル当り、3.0モル/hr)で吹き込み、カルシウムを炭酸化率85%まで反応させた。得られた一次反応液を温度20℃に調整し、ガス吹き込み撹拌型反応器(以下反応器R‐2という。)に1.5L仕込み、二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを6.0Nm3/hrで吹き込み反応させた。反応と同時に20℃に調整した上記希釈石灰乳28.5Lを反応液のpHが12〜12.5に保持されるように連続的に添加した。この際のガス量は混合スラリーのカルシウム1モル当り2.0モル/hrであり、一次反応液と上記希釈石灰乳のカルシウム全量のモル比は1:19であった。更に二酸化炭素含有ガスの吹き込みを続け、反応液のpHが7付近になったところでガスの吹き込みを停止した。反応生成物を走査型電子顕微鏡で観察すると、平均長径0.80μm、平均短径0.30μm、アスペクト比2.7の紡錘形粒子が凝集した、平均粒子径が9.20μmの炭酸カルシウム凝集体が認められた。炭酸カルシウムはフィルタープレスを用いて脱水し、乾燥、粉砕、分級を行い粉体とし、8.16質量部(ラクトン変性アクリルポリオ−ル固形分100質量部に対して30部相当)を用いた。
用意した物質を用いて、以下の2工程の分散工程により塗料を調製した。まず、ポリオール濃度17%の希釈液、導電性粒子、酸化チタン粒子、変性ジメチルシリコーンオイル、イソシアネート混合液を混合した。次いで、これを、平均粒子径0.8mmのガラスビーズ200gと共に450mlのガラス瓶にいれ、ペイントシェイカー分散機により72時間分散した。
次に、この分散液に、用意した炭酸カルシウム凝集体を加え、更に5分間分散して表面層形成用塗料を調製した。
この表面層形成用塗料をディッピンク法により弾性ローラーの導電性弾性層上に塗工し、30分間風乾した後、160℃で120分間乾燥して、帯電ローラーを得た。
[画像形成]
作製した帯電ローラーを、図3に示す構成の電子写真画像形成装置に、直径24mmの電子写真感光体ドラムに、一端で0.5kg重、両端で合計1kg重のバネによる押し圧力で当接させて装着した。常温常湿23℃、53%RH環境、低温低湿15℃/10%RH環境においてハーフトーン画像を出力した。帯電部材には直流電圧のみ−1000Vを印加した。トナーは平均粒径5.0μmの重合トナーを用いた。電子写真感光体ドラムは、HPColorLaserJet3000(ヒューレットパッカード社製)のモノクロ(ブラック)カートリッジに搭載の感光体ドラムを使用した。1枚画像を出力すると電子写真画像形成装置の回転を停止させた後、また画像形成動作を再開するという動作を繰り返し(E文字1%印字画像を間欠耐久)、50000枚の画像出力耐久試験を行った。耐久試験中はプロセススピードを250mm/sに設定し、耐久試験中、1枚目、10000枚目、30000枚目、及び50000枚目の出力画像を対象とした。得られた出力画像を以下の基準により、汚れ起因、放電不良起因の画像について評価した。結果を表1に示す。
ランク1:画像欠陥が認められない
ランク2:スジ状、ポチ状の画像が僅かに認められる
ランク3:スジ状、ポチ状の画像が軽微に発生しているが実使用上問題ない
ランク4:スジ状、ポチ状の画像が発生しており、画像品質が劣る。
[実施例2]
炭酸カルシウム粉体を以下のように作成した。
実施例1と同様に調製した一次反応液を前記反応器R‐2に5L仕込み、二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを6.0Nm3/hrで吹き込み反応させた。反応と同時に22℃に調整した希釈石灰乳25Lを反応液のpHが12〜12.5に保持されるように連続的に添加した。この際のガス量は混合スラリーのカルシウム1モル当り2.0モル/hrであり、一次反応液と上記希釈石灰乳のカルシウム全量のモル比は1:5であった。更に二酸化炭素含有ガスの吹き込みを続け、反応液のpHが7付近になったところでガスの吹き込みを停止した。反応生成物を走査型電子顕微鏡で観察すると、平均長径0.70μm、平均短径0.25μm、アスペクト比2.8の紡錘形の炭酸カルシウムが凝集した、平均粒子径が4.98μmの炭酸カルシウム凝集体が認められた。炭酸カルシウムはフィルタープレスを用いて脱水し、乾燥、粉砕、分級を行い、粉体とした。
得られた炭酸カルシウム粉体を用いた以外は実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
炭酸カルシウム粉体を以下のように作成した。
実施例1と同様に調製した一次反応液を前記反応器R‐2に15L仕込み、二酸化炭素濃度30容量%の二酸化炭素含有ガスを4.5Nm3/hrで吹き込み反応させた。反応と同時に26℃に調整した希釈石灰乳15Lを反応液のpHが12〜12.5に保持されるように連続的に添加した。この際のガス量は混合スラリーのカルシウム1モル当り1.5モル/hrであり、一次反応液と希釈石灰乳のカルシウム全量のモル比は1:1であった。更に二酸化炭素含有ガスの吹き込みを続け、反応液のpHが7付近になったところでガスの吹き込みを停止した。反応生成物を走査型電子顕微鏡で観察すると、平均長径0.6μm、平均短径0.22μm、アスペクト比2.7の紡錘形の炭酸カルシウムが凝集した、平均粒子径が3.12μmの炭酸カルシウム凝集体が認められた。炭酸カルシウムはフィルタープレスを用いて脱水し、乾燥、粉砕、分級を行い、粉体とした。
得られた炭酸カルシウム粉体を用いた以外は実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
炭酸カルシウム粉体として、実施例1で調製した炭酸カルシウム粉体4質量部と、シルバーW(白石化学工業株式会社製)4質量部とを用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
導電性粒子を、導電性酸化スズ(ジェムコ製)150質量部に変更した以外は実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
ポリオール濃度17%の希釈液、イソシアネート混合液に替えて、トレジンF30K(ナガセケムテックス製)をメタノールで固形分濃度5%に希釈した液を用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
炭酸カルシウム粉体として、シルバーW(白石化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。低温低湿環境において30000枚出力後、画像品質が明らかに実用に堪えられないものとなったため、耐久試験を途中で中止した。結果を表1に示す。
[比較例2]
炭酸カルシウム粉体として、スーパーS(丸尾カルシウム株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
炭酸カルシウム粉体として、架橋タイプアクリル粒子(MR50G:綜研化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
炭酸カルシウム粉体として、合成ハイドロタルサイト(DHT−4A:協和化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様に帯電ローラーを作製し、その評価を行った。低温低湿環境において30000枚出力後、画像品質が明らかに実用に堪えられないものとなったため、耐久試験を途中で中止した。結果を表1に示す。
結果より、本発明の帯電部材は、被帯電部材の安定した帯電を行うことができることが分かった。