JP5177715B2 - バルブタイミング調整装置およびその組立方法 - Google Patents
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Description
第1ハウジングは、駆動軸または従動軸の一方とともに回転し、収容室が開口する開口面を有するカップ状を呈する。
ベーンロータは、第1ハウジングの内底面に摺動可能に収容室に収容され、駆動軸または従動軸の他方とともに回転する。ベーンロータは、第1ハウジングに対し所定角度範囲で相対回動可能な複数のベーン部を有し、ベーン部の回転方向の一方側に進角油圧室が形成され、ベーン部の回転方向の他方側に遅角油圧室が形成される。また、ベーンロータは、内底面と反対側の端面である基準端面が開口面に対し内底面側に位置する。
シールプレートは、内設調整ユニットの開口面側の端面に当接する板厚方向に弾性変形可能な弾性凸部を有し、内底面にベーンロータおよび内設調整ユニットを押圧する。
第2ハウジングは、収容室の開口を塞ぐように第1ハウジングに固定される。
ここで、内設調整ユニットは、第1ハウジングの開口面と内設調整ユニットの開口面側の端面との距離であるスラストクリアランスが最小となるように設定される枚数の内設調整プレートから構成される。
さらに、シールプレートの弾性凸部が内設調整ユニットの端面に当接し、内設調整ユニットがベーンロータの基準端面に当接することで、内部漏れシール性の確保に有利となる。
これにより、シールプレートを第1ハウジングに固定する構成と、第2ハウジングを第1ハウジングに固定する構成とを共通にすることができ、製造工数をさらに低減することができる。
請求項4に記載の発明によると、内設調整ユニットは、厚さの異なる2種類以上の内設調整プレートを組み合わせて構成されるため、スラストクリアランスの微調整に有利である。
シールプレートの弾性凸部の自由高さは、内設調整プレートの厚さ以上である。請求項1において内設調整プレートの枚数はスラストクリアランスを最小とするように設定されるため、スラストクリアランスは内設調整プレートの最小厚さよりも小さい。故に、自由高さはスラストクリアランスより大きい。これにより、スラストクリアランスがばらつきの最大値付近の値となる場合でも、弾性凸部は確実に内設調整ユニットの端面に当接して圧縮される。よって、シールプレートの弾性力により内部漏れシール性を確保することができる。
シールプレートが圧油導入路を有することで、圧力室に圧油が導入される。そのため、シールプレートの表裏に生じる圧力差によって、シールプレートが調整ユニット側に押圧され、内部漏れシール性をより向上させることができる。
その結果、オイルポンプのエネルギー効率が向上する。また、ベーンロータの相対回動の位相を高精度に制御でき、所望のバルブタイミングを高精度に得ることができる。
<1>第1ハウジングの収容室にベーンロータを収容する工程。
<2>バルブタイミング調整装置の個体毎に、ベーンロータの基準端面と第1ハウジングの開口面との距離であるマイナスギャップを測定し、マイナスギャップに応じて内設調整ユニットを構成する内設調整プレートの枚数を設定する工程。
<3>設定された内設調整プレートの枚数に基づいて内設調整ユニットをベーンロータの基準端面に当接させつつ収容室に収容する工程。
<4>シールプレートの弾性凸部を内設調整ユニットの開口面側の端面に当接させる工程。
<5>第2ハウジングを第1ハウジングに固定する工程。
これにより、請求項1〜6に記載のバルブタイミング調整装置を具体的に組み立てることができる。
すなわち、請求項1〜7に係るバルブタイミング調整装置およびその組立方法では、ベーンロータの基準端面が開口面に対し「内底面側」に位置する。そして、スラストクリアランスを調整するための「内設調整ユニット」が設けられる。
それに対し、請求項8〜14に係るバルブタイミング調整装置およびその組立方法では、ベーンロータの基準端面が開口面に対し「内底面と反対側」に位置する。そして、スラストクリアランスを調整するための「外設調整ユニット」が設けられる。
請求項8に記載のバルブタイミング調整装置は、第1ハウジング、ベーンロータ、外設調整ユニット、シールプレートおよび第2ハウジングを備える。
第1ハウジングは、駆動軸または従動軸の一方とともに回転し、収容室が開口する開口面を有するカップ状を呈する。
ベーンロータは、第1ハウジングの内底面に摺動可能に収容室に収容され、駆動軸または従動軸の他方とともに回転する。ベーンロータは、第1ハウジングに対し所定角度範囲で相対回動可能な複数のベーン部を有し、ベーン部の回転方向の一方側に進角油圧室が形成され、ベーン部の回転方向の他方側に遅角油圧室が形成される。また、ベーンロータは、内底面と反対側の端面である基準端面が開口面に対し内底面と反対側に位置する。
シールプレートは、ベーンロータの基準端面に摺動可能に当接する板厚方向に弾性変形可能な弾性凸部を有し、内底面にベーンロータを押圧する。
第2ハウジングは、収容室の開口を塞ぐように第1ハウジングおよび外設調整ユニットに固定される。
ここで、外設調整ユニットは、外設調整ユニットのシールプレート側の端面とベーンロータの基準端面との距離であるスラストクリアランスが最小となるように設定される枚数の外設調整プレートから構成される。
さらに、シールプレートの弾性凸部がベーンロータの基準端面に当接することで、内部漏れシール性の確保に有利となる。
これにより、シールプレートを第1ハウジングおよび外設調整ユニットに固定する構成と、第2ハウジングを第1ハウジングおよび外設調整ユニットに固定する構成とを共通にすることができ、製造工数をさらに低減することができる。
請求項11に記載の発明によると、外設調整ユニットは、厚さの異なる2種類以上の外設調整プレートを組み合わせて構成されるため、スラストクリアランスの微調整に有利である。
シールプレートの弾性凸部の自由高さは、外設調整プレートの厚さ以上である。請求項8において外設調整プレートの枚数はスラストクリアランスを最小とするように設定されるため、スラストクリアランスは外設調整プレートの最小厚さよりも小さい。故に、自由高さはスラストクリアランスより大きい。これにより、スラストクリアランスがばらつきの最大値付近の値となる場合でも、弾性凸部は確実にベーンロータの基準端面に当接して圧縮される。よって、シールプレートの弾性力により内部漏れシール性を確保することができる。
<1>第1ハウジングの収容室にベーンロータを収容する工程。
<2>バルブタイミング調整装置の個体毎に、ベーンロータの基準端面と第1ハウジングの開口面との距離であるプラスギャップを測定し、プラスギャップに応じて外設調整ユニットを構成する外設調整プレートの枚数を設定する工程。
<3>設定された外設調整プレートの枚数に基づいて外設調整ユニットを開口面に当接させる工程。
<4>シールプレートの弾性凸部をベーンロータの基準端面に当接させる工程。
<5>第2ハウジングを第1ハウジングおよび外設調整ユニットに固定する工程。
これにより、請求項8〜13に記載のバルブタイミング調整装置を具体的に組み立てることができる。
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。バルブタイミング調整装置99は、図2に示すように、内燃機関96の吸気弁90側に適用され、クランクシャフト97と所定の位相差で吸気弁90を開閉する装置である。
ギア1はカムシャフト2に同軸に設置されている。排気弁ギア91はカムシャフト92に、駆動軸ギア98はクランクシャフト97に、それぞれ同軸に固定されている。カムシャフト2は吸気弁90を開閉し、カムシャフト92は排気弁93を開閉する。チェーン95がギア1、排気弁ギア91および駆動軸ギア98に巻き掛けられて周回することにより、クランクシャフト97の駆動力がギア1および排気弁ギア91に伝達され、これらが同期して回転する。
クランクシャフト97は、特許請求の範囲に記載の「駆動軸」に相当し、吸気弁90側のカムシャフト2は、特許請求の範囲に記載の「従動軸」に相当する。
バルブタイミング調整装置99は、「ハウジング部材」としてのギア1およびシューハウジング3に対するベーンロータ9の相対回動位置が変化することによりバルブタイミングを調整する。ここで、「進角させる」とはバルブタイミングを早めることをいい、「遅角させる」とはバルブタイミングを遅らせることをいう。図3および図4における反時計回り方向が「進角方向」であり、時計回り方向が「遅角方向」である。また、対象物の進角方向の側を「進角側」といい、対象物の遅角方向の側を「遅角側」という。
ギア1およびシューハウジング3は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「第2ハウジング」および「第1ハウジング」に相当する。
ギア1は、クランクシャフト97から駆動力を伝達されて回動する。ギア1は、中央部に、カムシャフト2が嵌合する軸受穴1aを有する。ギア1は、また、最遅角位置でのストッパピン70の位置に対応する位置に有底のストッパリング穴1b、及び、ねじ14が螺合しうるタップ穴1cを有する。
シュー部3a、3b、3cのそれぞれの周方向の間には中央壁部3dが形成される。中央壁部3dの断面は、ベーンロータ9のロータボディ部9dに対応する円弧状をなす。
またフロント部3eには、最遅角位置でのストッパピン70の位置に対応して大気開放穴3iが貫通している。
図示しないノックピンにより位置決めしてギア1とシューハウジング3の間にシールプレート50を挟み、3本のねじ14をねじ穴3hに通してタップ穴1cに締め込むことにより、ギア1とシューハウジング3とは同軸に締結される。
(b)シュー部3bとべーン部9bとロータボディ部9dとに囲まれる空間において、ベーン部9bの進角側の空間は遅角油圧室81を形成し、ベーン部9bの遅角側の空間は進角油圧室84を形成する。
(c)シュー部3cとべーン部9cとロータボディ部9dとに囲まれる空間において、ベーン部9cの進角側の空間は遅角油圧室82を形成し、ベーン部9cの遅角側の空間は進角油圧室85を形成する。
ロータボディ部9dの外周部およびベーン部9a、9b、9cの外周部には、それぞれ、シューハウジング3の内壁面に面しラジアルクリアランスからの内部漏れを防止するためのシール部材7が、板ばね8に付勢される状態で設置される。一方、スラストクリアランスからの内部漏れシールに関する構成については後述する。
リアインロー部9fの内径にはカムシャフト2の先端部2aの外径が嵌合する。また、リアインロー部9fの底面は、平面度、及び、中心軸に対する直角度が精度良く形成される。これにより、カムシャフト2の先端面とリアインロー部9fの底面とが精度良く面接触し、接触面からの油漏れを防止できる。
センターボルト15は、センターワッシャ5、ベーンロータ9の貫通穴9e、カムシャフト2の油路穴2bを貫通し、タップ穴2cに所定の締付トルクで締め込まれる。このときセンターボルト15の頭部座面がセンターワッシャ5のザグリ底面に当接し、その摩擦により緩みが防止される。これにより、カムシャフト2とベーンロータ9とが同軸に締結される。
図7は、軸Zの方向に分解した内部漏れシール性に関する主要部品の構成を示す分解断面図である。
シューハウジング3は、開口面Soの平面度、及び、開口面Soから内底面Sbまでの深さDsの平行度が精度良く形成される。また、ベーンロータ9は、「内底面Sb側の端面Svf」から「開口面So側の端面である基準端面Svr」までの厚さTvの平行度が精度良く形成される。
内設調整ユニット601は、1枚以上の内設調整プレート60から構成される。図7では、1枚の内設調整プレート60を実線で示し、他の1枚の内設調整プレート60を破線で示している。破線で示される内設調整プレートは、無くてもよく、あるいは、2枚以上が積層されてもよいことを意味する。
シールプレート50は、周縁部がシューハウジング3とギア1とに挟持される。
Gm=Ds−Tv≧tp ・・・(式1)
したがって、マイナスギャップGmに対し、最低1枚の内設調整プレート60を設置可能である。図8に示す実施例では、3枚の内設調整プレート60が積層して設置される。最もベーンロータ9側の内設調整プレート60の端面は、ベーンロータ9の基準端面Svrに当接する。基準端面Svrと反対側の内設調整プレート60の端面は、「内設調整ユニット601の端面Sp」を構成する。第1実施形態では、開口面Soと内設調整ユニット601の端面Spとの距離がスラストクリアランスCtとなる。
バルブタイミング調整装置99の組立工程において、個体毎に、シューハウジング3およびベーンロータ9の寸法からマイナスギャップGmを測定する。そして、マイナスギャップGmに応じて、内設調整ユニット601の端面Spが開口面Soに対して内底面Sb側に位置し、かつ、スラストクリアランスCtが最小となるように内設調整プレート60の枚数nを設定する。
n・tp≦Gm<(n+1)・tp ・・・(式2)
また、スラストクリアランスCtは、式3のように定義される。
Ct=Gm−n・tp ・・・(式3)
式2の各辺からn・tpを引くと、式4のように、スラストクリアランスCtは厚さtpより小さい正の値を取ることが導かれる。
0≦Ct<tp ・・・(式4)
シールプレート50の中央には、カムシャフト2の先端部2aに嵌合するための嵌合穴52が設けられている。また、ギア1およびシューハウジング3の各位置に対応して、ねじ14を通す貫通穴51、回転方向の位置決めをするための位置決め切り欠き54a、位置決め穴54bが設けられている。なお、以下のシールプレート50の説明で「各穴」というときには、位置決め切り欠き54aを含むものとする。これらの各穴を用い、シールプレート50は、シューハウジング3とギア1との間に挟持される。
シールプレート50の弾性凸部55および各穴を除く部分が基面部59である。基面部59は、特許請求の範囲に記載の「耳部」に相当し、シューハウジング3とギア1とに挟持固定される。
なお、図5、図6では、内設調整プレート60およびシールプレート50の厚さ方向を誇張しており、1枚の内設調整プレート60が内設調整ユニット601を構成する場合を示している。また、図5、図6は、シュー部3a、3b、3cを代表してシュー部3cの断面を示す。
また、弾性凸部55aの上面部56には、ストッパピン70の相対回動範囲に対応するストッパピン逃がし穴57が設けられる。
Ct<tp≦He ・・・(式5)
組付状態では、シールプレート50の弾性凸部55が圧縮され内設調整ユニット601の端面Spに当接する。このときのたわみδは、式6で表されるように正の値を取る。
δ=He−Ct>0 ・・・(式6)
たわみδがゼロより大きいため、弾性力によるシール性が得られる。
なお、圧油導入路53の形状は丸穴に限定されず長穴などであってもよい。また、一つの進角油圧室あたり圧油導入路53を2つ以上設けてもよい。
ストッパピン70は、ベーン9aのギア1側の端面に設けられる有底のブッシュ穴71に収容される。ブッシュ穴71の底には、最遅角位置でフロント部3eの大気開放穴3iに連通する穴が設けられる。
ギア1のストッパリング穴1bには、ストッパリング74が嵌入されている。ストッパリング74の内径は、開口部より奥が小径となるテーパ状に形成されている。ストッパピン70の先端部外径は、ストッパリング74の内径のテーパ角度とほぼ同角度のテーパ形状に形成されており、ストッパリング74に嵌合可能である。
ブッシュ穴71の底部とストッパピン70の間にはスプリング72が挿着され、ストッパピン70をストッパリング74側に付勢している。
ガイドブッシュ73はブッシュ穴71に嵌入されており、ストッパピン70の軸方向の一部の外径がガイドブッシュ73の軸方向の一部の内径に嵌合して、軸方向の移動が案内される。
ストッパピン70の先端部、ストッパリング74、及び、ストッパリング穴1bの底部に囲まれる空間に油圧室24が形成される。また、進角主油路39から油圧室24に圧油を導入するための連通孔26が設けられる。
ストッパピン70がストッパリング74から抜け出ると、ベーンロータ9はギア1と連結を解除され、最遅角位置から最進角位置の角度範囲内で相対回動可能となる。
ロータボディ部9dのリアインロー部9fの底面には環状油路29が設けられる。環状油路29はカムシャフト2の先端面と当接し、カムシャフト2の内部で導入油路28を経由して遅角主油路38と連通する。また、ロータボディ部9dの内部で環状油路29と遅角分配路30、31、32とが連通する。遅角分配路30は遅角油圧室80と連通し、遅角分配路31は遅角油圧室81と連通し、遅角分配路32は遅角油圧室82と連通する。
なお、環状油路29の代わりに、導入油路28と遅角分配路30、31、32とを個々に連通する油路が設けられてもよい。
切替バルブ49は、下記(イ)〜(ハ)の3モードを切り替えることができる。
(イ)圧送油路47と遅角主油路38とを連通し、排出油路48と進角主油路39とを連通する逆送モード49a
(ロ)いずれの連通をも遮断する停止モード49b
(ハ)圧送油路47と進角主油路39とを連通し、排出油路48と遅角主油路38とを連通する正送モード49c
次にバルブタイミング調整装置99の作動を説明する。ここで、進角方向への作動を「進角作動」、遅角方向への作動を「遅角作動」という。
(I)図3に示すように、エンジン始動時ポンプ46からの圧油が遅角油圧室80、81、82、進角油圧室83、84、85のいずれにもまだ導入されていない初期状態では、ベーンロータ9は最遅角位置にある。
ストッパピン70はスプリング72の付勢力によりストッパリング74に嵌合しており、ベーンロータ9はストッパピン70によりギア1と連結されている。
油圧室24の油圧が先端部に作用するので、ストッパピン70はスプリング72の付勢力に抗してブッシュ穴71の底部側に押し込まれ、ベーンロータ9とギア1との連結が解除された状態となる。
進角油圧室83、84、85の油圧がそれぞれベーン部9a、9b、9cの遅角側の側面に作用するため、ベーンロータ9は進角方向へ相対回動する。そして、図4に示すように、最大時、最進角位置まで相対回動しうる。
圧力室86の油圧は、弾性凸部55の反対側である遅角油圧室80、81、82の油圧より高いため、弾性凸部55の表裏に圧力差が生じる。その結果、弾性凸部55が内設調整ユニット601に強く押し付けられ、内設調整ユニット601がベーン部9a、9b、9cに強く押し付けられる。図中、矢印Fがこの力を表現している。したがって、進角油圧室83、84、85と遅角油圧室80、81、82との間の内部漏れシール性が確保される。
油圧室23の油圧が、受圧溝部の前側の溝側面に作用するので、ストッパピン70はスプリング72の付勢力に抗してブッシュ穴71の底部側に押し込まれ、ストッパリング74から完全に抜け出た状態、すなわち、ベーンロータ9とギア1との連結が解除された状態が維持される。
遅角油圧室80、81、82の油圧がそれぞれベーン部9a、9b、9cの進角側の側面に作用するため、ベーンロータ9は遅角方向へ相対回動する。そして、図3に示すように、最大時、最遅角位置まで相対回動しうる。
次に、第1実施形態のバルブタイミング調整装置99の効果を説明する。
(1)バルブタイミング調整装置99の個体毎に、収容室4の深さDsからベーンロータの厚さTvを差し引いたマイナスギャップGmの値に応じて、1枚以上の内設調整プレート60からなる内設調整ユニット601を設けて摺動クリアランスを調整する。このとき、内設調整ユニット601の端面Spが開口面Soに対して内底面Sb側に位置し、かつ、スラストクリアランスCtが最小となるように内設調整プレート60の枚数nが決められる。したがって、スラストクリアランスCtは、内設調整プレート60の厚さtpよりも小さくなる。
これにより、スラスト方向の寸法ばらつきを抑えるための精密加工が必要でなくなり、製造工数を低減することができる。その結果、製造コストを低減することができる。
(3)シールプレート50の弾性凸部55の自由高さHeは、内設調整プレート60の厚さtp以上であり、したがってスラストクリアランスCtより大きい。これにより、スラストクリアランスCtがばらつきの最大値付近の値となる場合でも、弾性凸部55は確実に内設調整ユニット601の端面Spに当接して圧縮される。よって、シールプレート50の弾性力により内部漏れシール性を確保することができる。
その結果、オイルポンプのエネルギー効率が向上する。また、ベーンロータ9の相対回動の位相を高精度に制御でき、所望のバルブタイミングを高精度に得ることができる。
第2実施形態による内設調整ユニット602について図12を参照して説明する。
図12に示すように、内設調整ユニット602は、厚さの異なる2枚以上の内設調整プレート611、612を積層して構成され、ベーンロータ9の基準端面Svrに摺動可能に当接する。第1内設調整プレート611および第2内設調整プレート612は、厚さ以外は、第1実施形態の内設調整プレート60と同様である。
図12に示す実施例では、2枚の第1内設調整プレート611および1枚の第2内設調整プレート612が積層されている。また、第2内設調整プレート612の厚さtp2は、第1内設調整プレート611の厚さtp1よりも薄く設けられている。この場合、第2内設調整プレート612の厚さtp2は、「内設調整プレートの最小厚さtpmin」に相当する。
例えば、ベーンロータ9の基準端面Svrに第1内設調整プレート611を優先して最大枚数だけ積層させた後、第1内設調整プレート611の端面から開口面Soまでの残りのマイナスギャップが厚さtp2以上であれば、第2内設調整プレート612をさらに積層することで、スラストクリアランスCtを最小とするように微調整することができる。
この場合、第1実施形態の式4は、式7のように書き替えられる。
0≦Ct<tpmin ・・・(式7)
Ct<tpmin≦He ・・・(式8)
(2)内設調整ユニット602は、厚さの異なる2種類の内設調整プレート611、612から構成されるため、クリアランスの微調整に有利である。
また、第1実施形態の効果(4)、(5)と同様の効果を奏する。
次に、本発明の第3実施形態を図13〜図16に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態に対し、シューハウジング3の収容室4の深さDsとベーンロータ9の厚さTvとの大小関係が異なる。また、それに対応して、スラストクリアランスCtを調整するための調整ユニットの構成が異なる。具体的には、「内設調整ユニット」に代えて、「外設調整ユニット」が用いられる。
なお、シールプレート50等の上記以外の構成については、第1実施形態と実質的に同一である。実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
外設調整ユニット606は、1枚以上の外設調整プレート65から構成される。図13では、1枚の外設調整プレート65を実線で示し、他の1枚の外設調整プレート65を破線で示している。破線で示される外設調整プレートは、無くてもよく、あるいは、2枚以上が積層されてもよいことを意味する。
シールプレート50は、周縁部が外設調整ユニット606とギア1とに挟持される。
Gp=Tv−Ds≧tq ・・・(式9)
したがって、プラスギャップGpに対し、最低1枚の外設調整プレート65を設置可能である。図14に示す実施例では、2枚の外設調整プレート65が積層して設置される。最も開口面So側の外設調整プレート65の端面は、開口面Soに当接する。開口面Soと反対側の外設調整プレート65の端面は、「外設調整ユニット606の端面Sq」を構成する。第3実施形態では、外設調整ユニット606の端面Sqとベーンロータ9の基準端面Svrとの距離がスラストクリアランスCtとなる。
図16に示すように、シールプレート50は、外設調整ユニット606の端面Sqに当接し、外設調整ユニット606とギア1との間に挟持される。
バルブタイミング調整装置99の組立工程において、個体毎に、シューハウジング3およびベーンロータ9の寸法からプラスギャップGpを測定する。そして、プラスギャップGpに応じて、外設調整ユニット606の端面Sqがベーンロータ9の基準端面Svrに対して内底面Sbと反対側に位置し、かつ、スラストクリアランスCtが最小となるように外設調整プレート65の枚数nを設定する。
(n−1)・tq<Gp≦n・tq ・・・(式10)
また、スラストクリアランスCtは、式11のように定義される。
Ct=n・tq−Gp・・・(式11)
式10の各辺からn・tqを引くと、式12aのようになる。
−tq<−Ct≦0 ・・・(式12b)
さらに式12bの各辺を−1倍すると、式12bのように、スラストクリアランスCtは厚さtqより小さい正の値を取ることが導かれる。
0≦Ct<tq ・・・(式12b)
Ct<tq≦He ・・・(式13)
組付状態では、シールプレート50の弾性凸部55が圧縮され外設調整ユニット606の端面Sqに当接する。このときのたわみδは、第1実施形態と同じ式6が適用される。
δ=He−Ct>0 ・・・(式6)
たわみδがゼロより大きいため、弾性力によるシール性が得られる。
(1)バルブタイミング調整装置99の個体毎に、ベーンロータの厚さTvから収容室4の深さDsを差し引いたプラスギャップGpの値に応じて、1枚以上の外設調整プレート65からなる外設調整ユニット606を設けて摺動クリアランスを調整する。このとき、外設調整ユニット606の端面Sqがベーンロータ9の基準端面Svrに対して内底面Sbと反対側に位置し、かつ、スラストクリアランスCtが最小となるように外設調整プレート65の枚数nが決められる。したがって、スラストクリアランスCtは、外設調整プレート65の厚さtqよりも小さくなる。
これにより、スラスト方向の寸法ばらつきを抑えるための精密加工が必要でなくなり、製造工数を低減することができる。その結果、製造コストを低減することができる。
(3)シールプレート50の弾性凸部55の自由高さHeは、外設調整プレート65の厚さtq以上であり、したがってスラストクリアランスCtより大きい。これにより、スラストクリアランスCtがばらつきの最大値付近の値となる場合でも、弾性凸部55は確実に外設調整ユニット606の端面Sqに当接して圧縮される。よって、シールプレート50の弾性力により内部漏れシール性を確保することができる。
その他、第3実施形態は、第1実施形態の効果(4)、(5)と同様の効果を奏する。
第4実施形態による外設調整ユニット607について図17を参照して説明する。
図17に示すように、外設調整ユニット607は、厚さの異なる2枚以上の外設調整プレート661、662を積層して構成され、開口面Soに当接する。第1外設調整プレート661および第2外設調整プレート662は、厚さ以外は、第3実施形態の外設調整プレート65と同様である。
図17に示す実施例では、1枚の第1外設調整プレート661および1枚の第2外設調整プレート662が積層されている。また、第2外設調整プレート662の厚さtq2は、第1外設調整プレート661の厚さtq1よりも薄く設けられている。この場合、第2外設調整プレート662の厚さtq2は、「外設調整プレートの最小厚さtqmin」に相当する。
例えば、開口面Soに第1外設調整プレート661を優先して最大枚数だけ積層させた後、第1外設調整プレート661の端面からベーンロータ9の基準端面Svrまでの残りのプラスギャップが厚さtq2以下であれば、第2外設調整プレート662をさらに積層することで、スラストクリアランスCtを最小とするように微調整することができる。
この場合、第3実施形態の式12bは、式14のように書き替えられる。
0≦Ct<tqmin ・・・(式14)
Ct<tqmin≦He ・・・(式15)
(2)外設調整ユニット607は、厚さの異なる2種類の外設調整プレート661、662から構成されるため、クリアランスの微調整に有利である。
その他、第1〜第3実施形態の効果(4)、(5)と同様の効果を奏する。
(ア)バルブタイミング調整装置は、吸気弁90側に限らず、排気弁93側に適用されてもよい。この場合、排気弁93側のカムシャフト92が特許請求の範囲に記載の「従動軸」に相当し、上記実施形態と逆の位相制御が行われる。すなわち、初期状態が最進角位置、最大作動状態が最遅角位置となり、シールプレートの圧油導入路は、遅角油圧室と圧力室とを連通するように設けられる。
(ウ)上記実施形態では、シールプレート50は、シューハウジング3とギア1とに挟持固定されるが、シールプレートは、ギアと別にシューハウジングに固定されてもよい。
(オ)ベーンロータ9と共に回転する回転軸は、内燃機関96の従動軸であるカムシャフト2、92に限らず、駆動軸であるクランクシャフト97であってもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施することができる。
2 ・・・カムシャフト(従動軸)、
3 ・・・シューハウジング(第1ハウジング)、
3a、3b、3c ・・・シュー部、
4 ・・・収容室、
9 ・・・ベーンロータ、
9a、9b、9c ・・・ベーン部、
50 ・・・シールプレート、
53 ・・・圧油導入路、
55 ・・・弾性凸部、
59 ・・・基面部(耳部)、
601、602 ・・・内設調整ユニット、
606、607 ・・・外設調整ユニット、
60、611、612・・・内設調整プレート、
65、661、662・・・外設調整プレート、
80、81、82 ・・・遅角油圧室、
83、84、85 ・・・進角油圧室、
86 ・・・圧力室、
90 ・・・吸気弁、
93 ・・・排気弁、
97 ・・・クランクシャフト(駆動軸)、
99 ・・・バルブタイミング調整装置、
Ds ・・・(収容室の)深さ
Tv ・・・(ベーンロータの)厚さ,
Sb ・・・(第1ハウジングの)内底面、
So ・・・(第1ハウジングの)開口面、
Sp ・・・(内設調整ユニットの)端面、
Sq ・・・(外設調整ユニットの)端面、
Svf ・・・(ベーンロータの)内底面側の端面、
Svr ・・・(ベーンロータの)基準端面、
Ct ・・・スラストクリアランス、
Gm ・・・マイナスギャップ、
Gp ・・・プラスギャップ、
tp、tp1、tp2・・・(内設調整プレートの)厚さ、
tq、tq1、tq2・・・(外設調整プレートの)厚さ、
He ・・・(シールプレートの)自由高さ。
Claims (14)
- 駆動軸から従動軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、吸気弁および排気弁の少なくともいずれか一方を開閉するバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転し、収容室が開口する開口面を有するカップ状の第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの内底面に摺動可能に前記収容室に収容され、前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記第1ハウジングに対し所定角度範囲で相対回動可能な複数のベーン部を有し、前記ベーン部の回転方向の一方側に進角油圧室が形成され、前記ベーン部の回転方向の他方側に遅角油圧室が形成され、前記内底面と反対側の端面である基準端面が前記開口面に対し前記内底面側に位置するベーンロータと、
1枚以上の内設調整プレートが積層されて構成され、前記ベーンロータの前記基準端面に摺動可能に当接する内設調整ユニットと、
前記内設調整ユニットの前記開口面側の端面に当接する板厚方向に弾性変形可能な弾性凸部を有し、前記内底面に前記ベーンロータおよび前記内設調整ユニットを押圧するシールプレートと、
前記収容室の開口を塞ぐように前記第1ハウジングに固定される第2ハウジングと、
を備え、
前記内設調整ユニットは、前記第1ハウジングの前記開口面と前記内設調整ユニットの前記開口面側の端面との距離であるスラストクリアランスが最小となるように設定される枚数の前記内設調整プレートから構成されることを特徴とするバルブタイミング調整装置。 - 前記シールプレートは、前記弾性凸部の径方向外側に耳部を有し、当該耳部が前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとに挟持固定されることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記内設調整ユニットは、厚さが1種類の前記内設調整プレートから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記内設調整ユニットは、厚さの異なる2種類以上の前記内設調整プレートを組み合わせて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記シールプレートは、前記弾性凸部の自由高さが前記内設調整プレートの最小厚さ以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記シールプレートは、前記進角油圧室あるいは前記遅角油圧室のいずれか一方と、前記シールプレートと前記第2ハウジングとの間に形成される圧力室とを連通する圧油導入路を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置の組立方法であって、
前記第1ハウジングの前記収容室に前記ベーンロータを収容する工程と、
バルブタイミング調整装置の個体毎に、前記ベーンロータの前記基準端面と前記第1ハウジングの前記開口面との距離であるマイナスギャップを測定し、前記マイナスギャップに応じて、前記内設調整ユニットを構成する前記内設調整プレートの枚数を設定する工程と、
設定された前記内設調整プレートの枚数に基づいて前記内設調整ユニットを前記ベーンロータの前記基準端面に当接させつつ前記収容室に収容する工程と、
前記シールプレートの前記弾性凸部を前記内設調整ユニットの前記開口面側の端面に当接させる工程と、
前記第2ハウジングを前記第1ハウジングに固定する工程と、
を含むことを特徴とするバルブタイミング調整装置の組立方法。 - 駆動軸から従動軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、吸気弁および排気弁の少なくともいずれか一方を開閉するバルブタイミングを変更可能なバルブタイミング調整装置であって、
前記駆動軸または前記従動軸の一方とともに回転し、収容室が開口する開口面を有するカップ状の第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの内底面に摺動可能に前記収容室に収容され、前記駆動軸または前記従動軸の他方とともに回転し、前記第1ハウジングに対し所定角度範囲で相対回動可能な複数のベーン部を有し、前記ベーン部の回転方向の一方側に進角油圧室が形成され、前記ベーン部の回転方向の他方側に遅角油圧室が形成され、前記内底面と反対側の端面である基準端面が前記開口面に対し前記内底面と反対側に位置するベーンロータと、
1枚以上の外設調整プレートが積層されて構成され、前記ベーンロータの径方向外側で前記開口面に当接する外設調整ユニットと、
前記ベーンロータの前記基準端面に摺動可能に当接する板厚方向に弾性変形可能な弾性凸部を有し、前記内底面に前記ベーンロータを押圧するシールプレートと、
前記収容室の開口を塞ぐように前記第1ハウジングおよび前記外設調整ユニットに固定される第2ハウジングと、
を備え、
前記外設調整ユニットは、前記外設調整ユニットの前記シールプレート側の端面と前記ベーンロータの前記基準端面との距離であるスラストクリアランスが最小となるように設定される枚数の前記外設調整プレートから構成されることを特徴とするバルブタイミング調整装置。 - 前記シールプレートは、前記弾性凸部の径方向外側に耳部を有し、当該耳部が前記外設調整ユニットと前記第2ハウジングとに挟持固定されることを特徴とする請求項8に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記外設調整ユニットは、厚さが1種類の前記外設調整プレートから構成されることを特徴とする請求項8または9に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記外設調整ユニットは、厚さの異なる2種類以上の前記外設調整プレートを組み合わせて構成されることを特徴とする請求項8または9に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記シールプレートは、前記弾性凸部の自由高さが前記外設調整プレートの最小厚さ以上であることを特徴とする請求項10または11に記載のバルブタイミング調整装置。
- 前記シールプレートは、前記進角油圧室あるいは前記遅角油圧室のいずれか一方と、前記シールプレートと前記第2ハウジングとの間に形成される圧力室とを連通する圧油導入路を有することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
- 請求項8〜13のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置の組立方法であって、
前記第1ハウジングの前記収容室に前記ベーンロータを収容する工程と、
バルブタイミング調整装置の個体毎に、前記ベーンロータの前記基準端面と前記第1ハウジングの前記開口面との距離であるプラスギャップを測定し、前記プラスギャップに応じて、前記外設調整ユニットを構成する前記外設調整プレートの枚数を設定する工程と、
設定された前記外設調整プレートの枚数に基づいて前記外設調整ユニットを前記開口面に当接させる工程と、
前記シールプレートの前記弾性凸部を前記ベーンロータの前記基準端面に当接させる工程と、
前記第2ハウジングを前記第1ハウジングおよび前記外設調整ユニットに固定する工程と、
を含むことを特徴とするバルブタイミング調整装置の組立方法。
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