JP5176075B2 - 封止用エポキシ樹脂成形材料及びこれを用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置 - Google Patents

封止用エポキシ樹脂成形材料及びこれを用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置 Download PDF

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Description

本発明は、封止用エポキシ樹脂成形材料及びこの封止用エポキシ樹脂成形材料用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置に関する。
従来から、トランジスタ、IC、LSI等の電子部品装置の素子封止の分野では、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。
近年は、自動車分野においても電子機器化が進んでいる。自動車用途の電子機器には、耐熱性等の信頼性において、パーソナルコンピュータ、家電等のいわゆる民生用途より一段と厳しい信頼性が求められることが多い。電子機器の耐熱性を高める為には、半導体パッケージを形成する封止用エポキシ樹脂成形材料のガラス転移点を高めることが望ましく、いわゆる多官能型樹脂が使用されることが多い。
近年はまた、電子機器の高速動作化、高集積化、高周波化等が進み、電気信号を減衰させてその信頼性を損なう、誘電損失の問題がクローズアップされるようになってきた。誘電損失を抑制するには、半導体パッケージ等の絶縁材料の低誘電化・低誘電正接化が必要であるが、前記多官能型樹脂は、官能基密度が高く、一般に高誘電化・高誘電正接化を招き易い為、高ガラス転移点と低誘電・低誘電損失の両立は困難なことが多い。
電子機器の低誘電・低誘電損失化については、例えば、特許文献1、2等、高ガラス転移点と低誘電・低誘電損失の両立化については、例えば、特許文献3などに、それぞれ報告がある。
さらに、最近の電子機器の特徴として、一般に小型・薄型化の傾向が見られ、成形方法も、従来の個片成形から、多くのパッケージを一括成形により封止、封止後に個々のパッケージ(個片)に切り分ける、いわゆるマップ成形方式が多く見られるようになった。
また、従来シリコーンゲルによる封止を行ってきた大型モジュールパッケージのトランスファ成形化の動きなども、一部に見られるようになってきた。これらマップ成形、シリコーンゲル封止分野のトランスファ成形では、封止用樹脂に高い流動性が求められることが多い。
一方、封止用エポキシ樹脂成形材料には、従来からデカブロムをはじめとするハロゲン化樹脂やアンチモン化合物が難燃剤として用いられていたが、近年、環境保護の観点からこれらの化合物に量規制の動きがあり、ノンハロゲン化(ノンブロム化)及びノンアンチモン化の要求が出てきている。またプラスチック封止ICの高温放置特性にブロム化合物が悪影響を及ぼすことが知られており、この観点からもブロム化樹脂量の低減が望まれている。
上述のように、多官能樹脂を用いることで高ガラス転移点を実現すると、一般に、低誘電・低誘電正接化が困難となる。上記特許文献中では、これらの特性の両立を図るべく、特定の構造を有する化合物を単独又は他成分と併用して用いることを提案している。
特開2003−212941号公報 特開2004−087637号公報 特開2002−249531号公報
しかし、前記特性と高流動性との両立、同じく難燃性等との両立等については、必ずしも充分な検討がなされていない。
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、高ガラス転移点と低誘電・低誘電正接化とを両立しながら、高流動性を実現、ハロゲン化樹脂やアンチモン化合物を事実上用いることなく良好な難燃性をも実現する、耐熱性などの信頼性や成形性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料及びこの封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、封止用エポキシ樹脂成形材料に、特定の構造を有するフェノール系硬化剤及び特定の構造を有する化合物を添加することにより上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)下記一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤、(C)無機充填剤、(D)シランカップリング剤及び(E)下記一般式(II)で表される化合物を含有してなることを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。
Figure 0005176075

(一般式(I)中、nは0又は正の整数を表す。それぞれのベンゼン環に結合する水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
Figure 0005176075

(一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭化水素骨格、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、mは1〜4、nは2以上の整数を表す。)
(2)(D)成分が、不飽和結合を有するシランカップリング剤である前記(1)記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(3)ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を含有しない、前記(1)又は(2)記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、高ガラス転移点でありながら耐熱性や低誘電・低誘電正接性等の信頼性、流動性、難燃性等に優れ、この封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてIC、LSI等の電子部品を封止すれば、耐熱性や低誘電・低誘電正接性等の信頼性、難燃性等に優れた電子部品装置を得ることができ、その工業的価値は大きい。
<封止用エポキシ樹脂成形材料>
以下、まず本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料について説明する。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、(A)エポキシ樹脂、(B)下記一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤、(C)無機充填剤、(D)シランカップリング剤及び(E)下記一般式(II)で表される化合物を含有してなることを特徴としている。
Figure 0005176075

(一般式(I)中、nは0又は正の整数を表す。それぞれのベンゼン環に結合する水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
Figure 0005176075

(一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭化水素骨格、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、mは1〜4、nは2以上の整数を表す。)
以下に各成分について説明する。
[(A)エポキシ樹脂]
本発明では、(A)成分として、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されるエポキシ樹脂を、特に制限なく使用することが可能である。本発明に適用可能なエポキシ樹脂を例示すれば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル、アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ビフェニル・アラルキル樹脂のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、シクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、高ガラス転移点と低誘電・低誘電正接化の両立といった観点からは、(A)成分の少なくとも一部をオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とすることが好ましい。高ガラス転移点化の為には、150℃におけるICI粘度が0.5Pa・s以上のオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
本発明の効果である、高ガラス転移点、低誘電・低誘電正接化の両立を実現する手法として、例えば、(A)成分の70重量%を150℃におけるICI粘度が1.0Pa・sであるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とした上で、残りの30重量%をいわゆる多官能型エポキシ樹脂に分類されるトリフェノールメタン型エポキシ樹脂とするなどをその一例として例示することができる。
[(B)一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤]
本発明において、(B)硬化剤としては、特に、低誘電・低誘電正接化と難燃性との両立の観点から、下記一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤を単独又は併用して用いることが必要である。
Figure 0005176075

(一般式(I)中、nは0又は正の整数を表す。それぞれのベンゼン環に結合する水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
一般式(I)中、nで表される正の整数は、特に高流動性の実現の観点から、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5である。
また、ベンゼン環に結合する水素原子は、直鎖状、または分岐状の炭化水素基で置換されていても良いが、硬化物の高Tg化の観点からは、すべてが水素原子であることが好ましい。
具体的には、一般式(I)でn=1〜3を主成分とし、ベンゼン環側鎖がすべて水素原子である MEH−7851(明和化成株式会社製)等を市場で入手可能である。
一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤は、水酸基等親水性の官能基が相対的に少なく、低誘電・低誘電正接化の実現に有利である。
また、一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤は、いわゆる多環芳香族化合物である為、燃焼時にチャーを形成し易いなど、難燃性の点でも有利である。
本発明の効果である、低誘電・低誘電正接化と難燃性との両立の為には、一般式(I)で表される硬化剤を(B)成分の30重量%以上とすることが好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることが特に好ましい。一般式(I)で表される硬化剤が(B)成分の30重量%未満であると特に難燃性が不充分となる可能性がある。
一般式(I)で表される硬化剤としては、n=1〜10程度で、ベンゼン環の側鎖がすべて水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社製、商品名)などが市場で入手可能である。
本発明では、(B)成分として一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤の他に、封止用エポキシ樹脂成形材料に一般に使用されている硬化剤を、その発明の効果を失わない範囲において併用することができる。併用可能なフェノール系硬化剤として、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、前記フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂等を例示することが可能である。
本発明の効果である、高ガラス転移点と低誘電・低誘電正接化の両立を実現する手法として、例えば、(B)成分の70重量%を一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤とした上で、残りの30重量%を、いわゆる多官能型硬化剤であるトリフェノールメタン型フェノール樹脂とするなどをその一例として例示することができる。
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分の硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基数/硬化剤中の水酸基数の比は、特に、制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために0.5〜2の範囲に設定することが好ましく、0.6〜1.5がより好ましい。成形性や信頼性に優れる封止用エポキシ樹脂成形材料を得るためには0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
[(C)無機充填剤]
本発明では、線膨張係数低減、低吸湿化及び強度向上等の為に、(C)無機充填剤を配合することが必要である。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。
さらに、本発明の効果を失わない範囲で、難燃効果のある水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系無機質充填剤を添加してもよい。流動性や線膨張係数、低誘電・低誘電正接化といった観点からは、(C)成分の一部又は全部を結晶シリカ、溶融シリカ又は合成シリカとすることが好ましく、球状溶融シリカ、球状合成シリカを用いることがより好ましい。
難燃性、特に、Cuリードフレームを用いたパッケージにおける耐冷熱サイクル性の観点からは、(C)成分の配合量を成形材料全体の70〜90重量%とすることが好ましく、72〜88重量%とすることがより好ましく、75〜85重量%とすることが特に好ましい。(C)成分が70重量%未満であると難燃性や耐冷熱サイクル性が、90重量%を超えると耐冷熱サイクル性が、それぞれ不充分となる可能性がある。
また、(C)成分として、比表面積が3.0m/gの結晶シリカ又は溶融シリカ、合成シリカを用いると、難燃性の点で特に有利である。
[(D)シランカップリング剤]
本発明では、特に流動性の観点から、(D)シランカップリング剤を1種単独で、又は2種以上を併用して配合することが必要である。本発明では、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン等、封止用エポキシ樹脂成形材料に通常使用される従来公知のシランカップリング剤を使用することができるが、(D)成分の少なくとも一部を、ビニルシラン、メタクリルシラン等、不飽和結合を有するシランカップリング剤とすると、特に、流動性の点で効果的である。
ビニルシラン、メタクリルシラン等の不飽和結合を有するシランカップリング剤は、(A)成分や(B)成分と、一般式(II)で表される(E)成分との親和剤・分散剤としての役割を果たすものと思われる。
本発明に適用可能な不飽和結合を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等を例示することが可能であるが、これら以外のカップリング剤を適用してもよい。
前記カップリング剤は、例えばビニルトリメトキシシランを「Z−6300」(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)として、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを「Z−6030」(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)等として、市場で入手可能である。
(D)成分の添加量は、組成物全体の0.05〜1重量%とすることが好ましく、0.1〜0.8重量%とすることがより好ましく、0.2〜0.5重量%とすることが特に好ましい。(D)成分が0.05重量%未満であると流動性や耐湿信頼性などが、1重量%を超えると硬化性などの成形性が、それぞれ不充分となる可能性がある。
本発明では、(D)成分の一部又は全部を、不飽和結合を有するシランカップリング剤とすることが好ましいが、流動性や耐湿信頼性等を含む信頼性とのバランスの観点からは、(D)成分の10〜90重量%を、前記不飽和結合を有するシランカップリング剤とした上で、エポキシシランなど、(A)成分又は(B)成分と反応性を有するシランカップリング剤とすることが好ましい。
[(E)一般式(II)で表される化合物]
本発明では、特に低誘電・低誘電正接化の為に、(E)成分として、下記一般式(II)で表される化合物を添加することが必要である。(E)成分は、一般に有機過酸化物等の反応開始剤の存在下でラジカル重合を開始するが、前記反応開始剤が存在しない場合でも、高温下において緩やかに反応が進む。従って、反応開始剤を添加しない系では、特に良好な流動性を確保することが可能である。また、反応後に形成される硬化物は、アルキル基等鎖状炭化水素に対し、相対的に芳香環を多く含む為に、難燃性が良好となる。
Figure 0005176075

(一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭化水素骨格、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、mは1〜4、nは2以上の整数を表す。)
一般式(II)中、Rによって表される炭化水素骨格は、n価の炭化水素基であり、直鎖状でも、分岐状でもよく、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、2〜3の炭化水素基がより好ましい。具体的には、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。炭素数が4以下であると、硬化物の高Tg化の点で有利である。
nは、2〜10が好ましく、2〜5がより好ましい。nが10以下であると、化合物の粘度が上昇しにくく、高流動性の実現の観点から有利である。
また、mが2以上の場合、それぞれのRは同じまたは、一部又は全てが異なる。硬化物の 高Tg化の観点からは、Rが水素であることが好ましい。
一般式(II)で表される化合物は、特開2002−249531号公報などに記載されているような、ハロゲノアルキルスチレンをグリニャール反応によって種々のハロゲン化物とカップリングする方法、Polymer Jurnal Vol.11,p163(1979)に記載されているような、側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼンオリゴマーの合成方法等により合成が可能である。
一般式(II)で表される化合物の中でも、特に流動性の観点からは、重量平均分子量が1000以下の化合物を用いることが好ましく、例えば1,3−クロロメチルビニルベンゼン、1,4−クロロメチルビニルベンゼン等よりグリニャール反応にて得られる、下記構造式(III)〜(V)で表される化合物を単独又は併用して用いる等の実施形態が例示可能である。
Figure 0005176075
Figure 0005176075
Figure 0005176075
本発明では、(E)成分の配合量を組成物全体の0.1〜10重量%とすることが好ましく、0.5〜8重量%とすることがより好ましく、1〜5重量%とすることが特に好ましい。(E)成分の配合量が0.1重量%未満であると低誘電・低誘電正接化の効果が、10重量%を超えると、弾性率の上昇や密着力の不足等から各種信頼性が、それぞれ不充分となる可能性がある。
[その他の成分]
(硬化促進剤)
本発明では、(A)〜(E)成分以外にも、(A)成分と(B)成分との架橋反応を促進する為に、硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂成形材料に通常使用される従来公知のリン系、窒素系等の硬化促進剤の使用が可能であり、これらを例示すれば、リン系硬化促進剤として、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、テトラフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等が、窒素系硬化促進剤として、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いても複数種を併用して用いても差し支えない。
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限はないが、(A)成分に対して0.1〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。0.1重量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、10重量%を超えると硬化速度が速すぎて未充填などにより良好な成形品を得ることが困難になる傾向がある。
(反応開始剤)
本発明では、また(A)〜(E)成分以外に、(E)成分の自己重合反応を促進する為に、反応開始剤を添加することができる。反応開始剤を例示すれば、ベンゾイン、ベンゾインメチルのようなベンゾイン系化合物、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのようなアセトフェノン系化合物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキシド等の有機過酸化物などのラジカル重合触媒、四フッ化ホウ素、六フッ化リン等を対アニオンとするジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩などのカチオン系触媒等を挙げることができる。
反応開始剤の添加量については特に制限はないが、一般式(II)で表される(E)成分に対し0.05〜10重量%が好ましい。0.05重量%未満では反応促進といった効果が不充分となる可能性が、10重量%を超えると過反応により流動特性が、それぞれ不充分となる可能性がある。
(重合禁止剤)
本発明では、また上記(E)成分の(自己重合反応)反応開始剤と共に、その反応を制御する為に、重合禁止剤を添加することができる。重合禁止剤を例示すれば、ハイドロキノン、トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類、芳香族ジオール類等を挙げることが可能である。
重合禁止剤の添加量は、その目的が達成できれば特に制限はないが、(E)成分に対し0.0005〜5重量%が好ましい。
(離型剤)
本発明では、また成形時の金型からの円滑な離型性を確保する為に、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸系ワックス、ステアリン酸エステル、モンタン酸エステル等の高級脂肪酸エステル系ワックス、ポリエチレンワックス等や封止用エポキシ樹脂成形材料に用いられる従来公知の離型剤を用いることができる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料においては、特に、耐熱性の観点から、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤や、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤のいずれをも、実質的に含まないことが好ましい。ここで、「ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を実質的に含まない」 とは、各成分が組成物全体に対して900ppm(0.09重量%)以下であることを指す。
本発明では、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で上記ハロゲン系難燃剤やアンチモン系難燃剤以外の難燃剤を添加することが可能である。添加可能な難燃剤については特に制限はないが、例えばトリフェニルホスフィンオキサイドなどの有機リン系化合物の例示が可能である。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、ICなどの半導体素子の耐湿性、耐熱性(耐高温放置性)を向上させる観点から、陰イオン交換体を添加することもできる。
本発明に適用可能な陰イオン交換体については特に制限はないが、例えばハイドロタルサイトなどが例示可能である。
陰イオン交換体の添加量についても特に制限はないが、(A)成分のエポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。配合量が0.1重量%未満ではイオン性不純物の捕捉が不十分になる傾向があり、30重量%を超えた場合それ以下に比べて効果に大差がないため経済的に不利である。
さらに、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等及びこれらの誘導体、アントラニル酸、没食子酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アミノフェノール、キノリン等及びこれらの誘導体、脂肪族酸アミド化合物、ジチオカルバミン酸塩、チアジアゾール誘導体等の接着促進剤などを必要に応じて配合することができる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、各種有機溶剤に溶かして液状封止用エポキシ樹脂成形材料として使用することもでき、この液状封止用エポキシ樹脂成形材料を板又はフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応が余り進まないような条件で有機溶剤を飛散させることによって得られるシート又はフィルム状の封止用エポキシ樹脂成形材料として使用することもできる。
<電子部品装置>
本発明の電子部品装置は、既述の本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置であって、当該電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子などの素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止した、電子部品装置などが挙げられる。
このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッドなど素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、配線板接続用の端子を形成した有機基板に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。またプリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は有効に使用できる。
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。封止用エポキシ樹脂成形材料が常温で液状又はペースト状の場合は、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
また、素子を直接樹脂封止する一般的な封止方法ばかりではなく、素子に直接電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料が接触しない形態である中空パッケージの方式もあり、中空パッケージ用の封止用エポキシ樹脂成形材料としても好適に使用できる。
[実施例1〜8及び比較例1〜6]
(A)成分のエポキシ樹脂として、エポキシ当量200、軟化点75℃、150℃におけるICI粘度が1.0Pa・sであるオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名EPICLON N500P−10)、エポキシ当量170、軟化点60℃のトリフェノールメタン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名エピコート 1032H60)を準備した。
(B)成分の硬化剤として水酸基当量200、軟化点65℃、下記構造式で表される硬化剤1(ビフェニル・アラルキル型フェノール樹脂、明和化成株式会社製、商品名MEH−7851)、水酸基当量103、軟化点80℃のトリフェノールメタン型フェノール樹脂(硬化剤2、明和化成株式会社製、商品名MEH−7500−3S)を準備した。
Figure 0005176075

硬化剤1は、nは0又は正の整数の混合物で、主成分はn=2〜4のものである。
(C)成分として平均粒径25μm、比表面積1.5m/gの溶融球状シリカ(電気化学工業株式会社製、商品名FB−950)と平均粒径0.5μm、比表面積6.5m/gの合成球状シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名SO−25R)の9/1(重量比)混合品を準備した。
(D)成分として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(D1成分、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名Z−6040)、メチルトリメトキシシラン(D2成分、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名Z−6366)、ビニルトリメトキシシラン(D3成分、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名Z−6300)及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(D4成分、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名Z−6030)を準備した。
(E)成分として下記構造式(III)〜(V)で表される化合物の混合物、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン及び(E)成分の反応開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン(日本油脂株式会社製、商品名パーヘキサC−40(純度40%)を準備した。なお、本(E)成分における構造式(III)〜(V)で表される化合物の混合比(重量比)は、1:1:1である。
Figure 0005176075
Figure 0005176075
Figure 0005176075
離型剤として酸化型ポリエチレンワックス、着色剤としてカーボンブラック及び難燃剤としてトリフェニルホスフィンオキサイドを準備した。
次に、上記で準備した各材料を、それぞれ表1及び表2に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、各実施例及び各比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を作製した。
Figure 0005176075
Figure 0005176075
上記で作製した各実施例及び各比較例の封止用エポキシ樹脂成形材料を、次の各試験により評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
なお、封止用エポキシ樹脂成形材料の成形は、トランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また後硬化は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー(流動性・充填性の指標)
EMMI−1−66に順じてスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)ガラス転移点
JIS K 7197に従い、上記の成形及び後硬化をして得た硬化物を試験片に用い、TMA(Thermal Mechanical Analysis)によりガラス転移点を求めた。試験片サイズは4×4×20mm、測定時の測定温度領域は室温(25℃)より250℃、昇温速度は5℃/分とした。ガラス転移点は、40〜80℃の領域より延長される線と200〜240℃より延長される線の交点より求めた。
(3)難燃性
94UL規格に従い、後硬化後の試験片厚み1/8inchでの試験を行い、燃焼性の判定を行った。
(4)誘電率・誘電正接
JIS K 6911に準拠し、周波数1MHzにおける誘電率・誘電正接を求めた。測定装置は HEWLETT PACKARD社製「4275A MULTI−FREQUENCY LCR METER」を用いた。
Figure 0005176075
Figure 0005176075
表3及び表4に示されるように、(E)成分を含まない比較例1〜5は、スパイラルフローが短く(流動性が高く)、誘電正接の値も大きい。カップリング剤として(D3)成分や(D4)成分を含む比較例2,3及び5は難燃性にも劣ることが明らかである。また(E)成分を含んでいても、(B)成分として「硬化剤1」を含まない比較例6も、やはり難燃性に劣ることが明らかである。
これに対し、(B)成分及び(E)成分を含む実施例1〜8は、流動性に優れ、高いガラス転移点を実現しながら、難燃性や低誘電・低誘電正接といった電子部品装置の信頼性に関する特性にも優れることがわかる。また(D)成分として(D3)成分や(D4)成分を含む実施例2〜4、6〜8は、特に流動性に優れることが明らかである。

Claims (4)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)下記一般式(I)で表されるフェノール系硬化剤、(C)無機充填剤、(D)シランカップリング剤及び(E)下記一般式(II)で表される化合物を含有してなる封止用エポキシ樹脂成形材料であって、
    前記(E)成分の配合量が成形材料全体の0.1〜10重量%であることを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。
    Figure 0005176075
    (一般式(I)中、nは0又は正の整数を表す。それぞれのベンゼン環に結合する水素原子は炭化水素基で置換されていてもよい。)
    Figure 0005176075
    (一般式(II)中、Rは置換基を有してもよい炭化水素骨格、Rは水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、mは1〜4、nは2以上の整数を表す。)
  2. (D)成分が、不飽和結合を有するシランカップリング剤である請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
  3. ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系難燃剤を含有しない、請求項1又は2に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて封止された素子を備えてなる電子部品装置。
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