JP5157284B2 - 光増感型複合材料及び三次元メモリ材料と記録媒体、光制限材料と素子、光硬化材料と光造形システム、多光子蛍光顕微鏡用蛍光材料と装置 - Google Patents
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Description
従って、二光子吸収現象を利用し、小型で安価なレーザーを使って実用的な用途を実現するためには、高効率の二光子吸収化合物の開発が必須であると共にその増感技術が非常に重要である。
すなわち、表面プラズモン増強効果が利用可能な領域は、金属薄膜の形状と光学系の配置に依存し、3次元加工等のアプリケーションに応用することが困難であるという問題を有している。
この金ナノロッドの製造方法の一例として、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって作製する方法が提案されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
すなわち、本来金属微粒子や金属ナノロッドは水系溶媒に分散して用いるのに対し、多光子吸収材料の多くは水には難溶である。このため、多光子吸収材料と金属微粒子または金属ナノロッドの混合薄膜または混合バルクを得るには微粒子またはロッドを有機溶媒中へ均一に分散しなければならないという課題がある。
ところで、多光子吸収現象の一つである二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種で、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc
Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明(Science,281,1653 (1998))して以来、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。
誘起する化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに、例えば試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部のピンポイントを高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収および二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。
また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
一方、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。
Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価・簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらに、コンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍もの記録、いわゆるビット記録が可能であり、より高密度記録が可能である。このことから、三次元光記録媒体は、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
さらに、上記特許文献8、9に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に記載している例はない。
例えば、三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収して励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物の励起状態を利用して何らかの方法により二光子吸収光記録材料の光学特性の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料はこれまでほとんど開示されておらず、そのような材料または方式の構築が望まれていた。
すなわち、多光子吸収吸収の一つである二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
なお、以降、[多(二)光子吸収化合物]と表現することがあるが、これは、多光子吸収化合物、特に二光子吸収化合物であることを意味し、[多光子吸収化合物および/または二光子吸収化合物]を包含する。他の類似表現、例えば、[多(二)光子励起]等も同様の意味を有するものとする。
〔1〕:上記課題は、多光子励起波長に共鳴して表面プラズモン増強場を発生させる金属微粒子の表面に、多光子吸収可能な分子構造を持つ多光子吸収化合物が結合され、前記金属微粒子が、金ナノロッドであり、前記多光子吸収化合物が、下記構造式(2)〜(4)から選ばれるいずれかを含むことを特徴とする光増感型複合材料により解決される。
金ナノロッドは、そのアスペクト比R(長軸/短軸)を制御することによって可視光線から近赤外線までの任意の特定波長を吸収することが可能となり、波長選択性に優れている。そのため、使用波長に対して整合するように金ナノロッドの長軸/短軸を制御したものを用いればより一層の増感効率向上が図れる。
二光子吸収の遷移効率は印加する光電場の二乗に比例し、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部の電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こるため、空間分解能が著しく向上する。この二光子吸収の特性を利用することにより、例えば、光制限素子、光造形、多光子蛍光顕微鏡などへの応用が可能になる。
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の光増感型複合材料において、前記結合されている形態が、金属微粒子の表面に結合する部位と多光子吸収化合物に結合する部位とを有する連結基を介してなることを特徴とする。
本発明の三次元メモリ材料および三次元記録媒体によれば、民生用途における大容量記録媒体(例えば、50GB以上、好ましくは100GB以上)、あるいは業務用途におけるさらに大容量記録媒体(1TB程度あるいはそれ以上)等に要求される超高密度、超高容量記録に対応することができる。
本発明の光制限材料および光制限素子によれば、光信号によって光信号を制御(変調、スイッチング等の光制御)することが可能となり、光通信や光情報処理において光の利点である広帯域性や高速性が十分に生かされる。
本発明の光硬化材料および光造形システムによれば、 回折限界をこえる加工分解能、超高速造形、三次元加工、高い歩留りなどの特徴が生かされて、任意の三次元加工物を光硬化性樹脂液内において自在に形成することができ、大量生産への適用も可能である。
本発明の多光子蛍光顕微鏡用蛍光材料および多光子蛍光顕微鏡装置によれば、二光子吸収の非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができ、工業用途ばかりではなく、生体系の細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができる。
ここで、前記多光子励起波長が二光子励起波長であり、前記多光子吸収化合物が二光子吸収化合物であることが好ましい。
また、前記結合されている形態が、金属微粒子の表面に結合する部位と多光子吸収化合物に結合する部位とを有する連結基を介してなることが好ましい。また、前記多光子吸収化合物が、金属微粒子の表面に結合する部位と多光子吸収化合物に結合する部位とを有する連結基の該多光子吸収化合物に結合する部位に予め結合された分子構造を有するものであることが好ましい。そして、前記連結基がアルキレン基であることが好適である。
図1(a)において、符号61aは金属微粒子(ナノロッド)、62は連結基、63は多光子吸収化合物、61bは金属微粒子(粒状)を示す。なお、63の多光子吸収化合物は、前述の、多(二)光子吸収化合物と同義である。図6(a)、(b)ではロッド形状と六角形形状の金属微粒子の例を示したが、本発明の多(二)光子励起波長に吸収を有する金属微粒子であれば上記の限りではない。
つまり、金属微粒子の表面に連結された多(二)光子吸収化合物の分子が金属微粒子の表面を、界面活性剤の形態と同様に取り巻いた構造となっている。
これにより、金属微粒子から発するプラズモン増強場に近接させ、かつ、多(二)光子吸収材料との距離を高精度に制御可能とすることができ、高効率な増感効果が得られる。また、一般的に多(二)光子吸収化合物は疎水性であり、有機溶媒への親和性が高く、上記複合材料は溶剤塗工法での塗膜が可能な構成となっている。
例えば、球状の金微粒子が水に分散した金コロイドは530nm付近に単一吸収を有し、鮮やかな赤色を呈する。このような球状金属微粒子は、赤色の着色剤としてステンドグラス等に使用されている。
そのアスペクト比をパラメータにした場合の波長(λ)に対する共鳴(吸収)スペクトルの関係及びアスペクト比(R)と波長(λmax)の関係を図2に示す。
以降、「多(二)光子吸収化合物」を「多(二)光子吸収材料」と称することがある。
すなわち、本発明においては、連結基の鎖長を制御することが可能であり、プラズモン増強場の利用効率を最も高めた距離関係に多(二)光子吸収材料を配置することが可能な光増感型複合材料、いわゆる高効率多(二)光子増感型複合材料となっている。
本発明の構成からなる連結基の鎖長が制御された光増感型複合材料の場合には、単純に多(二)光子吸収材料と金属微粒子を混合して多(二)光子増強を得る場合よりも確実に、効率よく増感できるメリットがある。
その理由としては、金属微粒子の周りを取り囲む多(二)光子吸収材料の部位は多い方が望ましく、そのためには、立体障害性から多(二)光子吸収材料の部位の結合数が減少してしまう分岐のアルキル基よりも、立体障害性の小さい直鎖のアルキル基の方が結合数は多く、プラズモン増強効率が高まることにある。
同様の理由から連結基にアリール基等の芳香族系部位が含まれているものよりも直鎖アルキル基の方がより好ましい。分岐の少ないアルキレン基、三重結合を含む置換基等は直鎖アルキル基と同様の効果が期待できる。しかしながら、原料の調達、合成法上、生産性まで考慮するとやはり、直鎖アルキル基が最も好ましい形態である。
金ナノロッドと二光子吸収材料とを混合して増感させることが知られている(例えば、特開2006−330683号公報)が、この構成ではフィルムにした場合にいくつかの二光子吸収材料と金ナノロッドが接触(付着)している状態、いわゆる単に接しているだけであり、本発明で定義する結合されているものとは異なる状態である。単に接している状態の場合には、フィルムを有機溶媒等で洗い落とせば、二光子吸収材料と金ナノロッド(金属微粒子)が容易に分離してしまう。
これに対して本発明の光増感型複合材料の場合には、有機溶媒等で洗い落としても、多(二)光子吸収材料と金属微粒子のほとんどの結合がはずれることはなく分離しない。
分散剤の代表例としては、例えば、特開2005−68447号公報に記載されているようなアルキルアンモニウム塩が挙げられる。具体例としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラへきしるアンモニウムブロミド等が挙げられる。また、アルキルチオール等も分散剤として使用可能である。
金属微粒子の多(二)光子励起波長における吸収量を制御するあたり、金属微粒子に連結されていない多(二)光子吸収材料か、もしくは多(二)光子吸収材料に連結されていない金属微粒子を混合することも可能である。もちろん、金属微粒子に連結されている多(二)光子吸収材料骨格と同一骨格の多(二)光子吸収材料であってもそうでなくともよいし、多(二)光子吸収材料に連結されていない金属微粒子の形状も、金属微粒子の表面に多光子吸収材料が結合された複合材料中心の金属微粒子の形状と同一であっても異なっていてもよい。
この分散液の溶媒を乾燥して粉体化すれば光増感型複合材料が得られ、この複合材料を有機溶媒中に再分散して従来の塗工法により膜化すれば、様々な材料、デバイス、エレクトロニクス素子等に応用可能である。
なお、上記形状の金属微粒子に関しては、例えば、「プラズモンナノ材料の設計と応用技術」(山田淳監修、シエムシー出版、P18−P22)に記載されている。
金属微粒子、例えば金ナノロッドと多(二)光子吸収材料が連結された本発明の光増感型複合材料を含む光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストし、次いで、通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらにより、多(二)光子吸収光記録材料とすることができる。
また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
塗布の際に使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図3(a)に、記録媒体の概略断面図を図3(b)に示す。
図3中(b)の記録媒体においては、平らな支持体(基板1)に本発明の多(二)光子吸収化合、例えば、二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に多層に積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。図3(b)では5層しか示していないが、50層程度あるいはそれ以上積層されても構わない。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、図示はしないがカード状、テープ状、ドラム状の積層媒体等が挙げられる。
次に、本発明の光増感型複合材料の具体的な適用例として、光制限材料および光制限素子への応用について説明する。
光通信や光情報処理において、情報等の信号を光で搬送するためには、変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし、電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。
この要求に応えるものとして本発明の光増感型複合材料、いわゆる多(二)光子吸収機能材料を光制限材料に用いて所定の構成に加工して光学素子を作製することができる。本発明の多(二)光子吸収機能材料を用いた光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を変調し、これによって、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における光スイッチなどに応用するものである。
図5の概略図に示す多(二)光子光造形法のための装置(光造形システム)に沿って光造形を説明する。
光硬化樹脂に対して透明性を有する近赤外パルスレーザー光源1からの光をミラースキャナー5に通した後、レンズを用いて、本発明の光増感型複合材料を含有する光硬化性樹脂液9中に集光させ、レーザースポットを走査して多光子吸収(例えば、二光子吸収)を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させ、任意の三次元構造を形成することができる。このような光造形システムを用いた多(二)光子マイクロ光造形方法により、微細で超精密な三次元構造体が形成できる。
すなわち、本発明における金属微粒子の表面に多光子吸収化合物が結合されている光増感型複合材料、いわゆる高感度型複合多光子吸収材料を含有させることにより、多(二)光子吸収効率が一段と向上する構成となっている。
(1)回折限界をこえる加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(2)超高速造形:二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
(3)三次元加工:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来の方法では、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になるという問題点があったが、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(4)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
(5)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
原料の主成分は、例えば、オリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光増感型複合材料、光重合開始剤である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられる。光を照射すると、光増感型複合材料がこれを二光子吸収し、光増感型複合材料を介して重合開始剤に反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基を活性化して連鎖的重合反応を起こし三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。なお、光照射により直接重合開始剤に反応種が発生するものもありうるが光増感型複合材料を介するものが高感度で深部においても超精密な三次元加工を可能とすることができる。
これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で、多(二)光子吸収特性を有する光増感型複合材料(重合開始剤)により活性化して重合するものは本発明における多(二)光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂がよく用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
特に、光源から発光されるパルスレーザー光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザー光の照射に際して、多(二)光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
なお、感光性高分子膜の表面に、パルスレーザー光をマスクを介さずに干渉露光させる手法としては、例えば、特開2005−134873号公報に記載されている例が挙げられる。
多光子蛍光顕微鏡装置〔多(二)光子励起レーザー走査顕微鏡〕とは、近赤外パルスレーザーを標本面上に集光し走査させて、そこでの多(二)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。図6の概略図に、二光子励起レーザー走査顕微鏡の基本構成を示す。
標本面をレーザービームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器7などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピュータでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザービームを走査してもよく、あるいはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させてもよい。
この場合の走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させるものである。このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
従って、本発明によれば、高感度な多(二)光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。
0.18mol/l臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液を70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、0.1mol/l硝酸銀水溶液を1.2ml混合して撹拌した。これに0.24mol/l塩化金酸水溶液を0.3ml加えた後、0.1mol/lアスコルビン酸水溶液を0.3ml加えて塩化金酸溶液の色が消失したことを確認した。その後、この液をシャーレに移して低圧水銀灯による波長254nmの紫外線を20分照射することで、吸収ピーク波長が約800nmにある金ナノロッド分散液が得られた。この分散液を遠心分離器により金ナノロッド成分を分離、沈降させた。この上澄み液を除いて、さらに水を加えて遠心分離器にかける工程を複数回繰り返して、余剰の分散剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを除いた。
0.18mol/l臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液を70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、0.1mol/l硝酸銀水溶液を1.0ml混合して撹拌した。これに0.24mol/l塩化金酸水溶液を0.3ml加えた後、0.1mol/lアスコルビン酸水溶液を0.3ml加えて塩化金酸溶液の色が消失したことを確認した。その後、この液をシャーレに移して低圧水銀灯による波長254nmの紫外線を20分照射することで、吸収ピーク波長が約760nmにある金ナノロッド分散液が得られた。この分散液を遠心分離器により金ナノロッド成分を分離、沈降させた。この上澄み液を除いて、さらに水を加えて遠心分離器にかける工程を複数回繰り返して、余剰の分散剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを除いた。
0.18mol/l臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液を70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、0.1mol/l硝酸銀水溶液を1.5ml混合して撹拌した。これに0.24mol/l塩化金酸水溶液を0.3ml加えた後、0.1mol/lアスコルビン酸水溶液を0.3ml加えて塩化金酸溶液の色が消失したことを確認した。その後、この液をシャーレに移して低圧水銀灯による波長254nmの紫外線を20分照射することで、吸収ピーク波長が約840nmにある金ナノロッド分散液が得られた。この分散液を遠心分離器により金ナノロッド成分を分離、沈降させた。この上澄み液を除いて、さらに水を加えて遠心分離器にかける工程を複数回繰り返して、余剰の分散剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを除いた。
上記金ナノロッド合成例1で得た水系金ナノロッド10mlにPHが8〜9になるようにアンモニア水を適量加えた。次に、100mmolのメルカプトスクシニックアシッド水溶液10mlを加えて撹拌した。撹拌を続けながら500mmolのテトラオクチルアンモニウムブロマイド、トルエン溶液を5ml加えて約30分間、激しく撹拌した。反応液をトルエンで抽出して、ごく少量溶媒を残し、留去して濾取、乾燥することで有機溶媒分散型の金ナノロッドが得られた。
金ナノロッド合成例1で得た水系金ナノロッドの代わりに、金ナノロッド合成例2で得た水系金ナノロッドを用いたこと以外は上記有機溶媒分散置換処理例1と全く同様の操作により有機溶媒分散型の金ナノロッドが得られた。
金ナノロッド合成例1で得た水系金ナノロッドの代わりに、金ナノロッド合成例3で得た水系金ナノロッドを用いたこと以外は上記有機溶媒分散置換処理例1と全く同様の操作により有機溶媒分散型の金ナノロッドが得られた。
上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例1で得られた有機溶媒分散型金ナノロッド5mgを塩化メチレン250mlに加え、次いで下記構造式(1)で示される二光子吸収材料200mgを加えて室温で激しく30時間撹拌した。撹拌を停止した後、有機層の溶媒を留去してさらに真空乾燥することで、金ナノロッド表面に連結基を介して二光子吸収材料が結合し、金ナノロッド表面を取り巻いている光増感型複合材料を得た。
上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例3で得られた有機溶媒分散型金ナノロッド5mgを塩化メチレン250mlに加え、次いで下記構造式(2)で示される二光子吸収材料300mg加えて室温で激しく24時間撹拌した。撹拌を停止した後、有機層の溶媒を留去してさらに真空乾燥することで、金ナノロッド表面に連結基を介して二光子吸収材料が結合し、金ナノロッド表面を取り巻いている光増感型複合材料を得た。
上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例2で得られた有機溶媒分散型金ナノロッド5mgを塩化メチレン250mlに加え、次いで下記構造式(3)で示される二光子吸収材料350mg加えて室温で激しく30時間撹拌した。撹拌を停止した後、有機層の溶媒を留去してさらに真空乾燥することで、金ナノロッド表面に連結基を介して二光子吸収材料が結合し、金ナノロッド表面を取り巻いている光増感型複合材料を得た。
上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例1で得られた有機溶媒分散型金ナノロッド5mgを塩化メチレン250mlに加え、次いで下記構造式(4)で示される二光子吸収材料350mg加えて室温で激しく30時間撹拌した。撹拌を停止した後、有機層の溶媒を留去してさらに真空乾燥することで、金ナノロッド表面に連結基を介して二光子吸収材料が結合し、金ナノロッド表面を取り巻いている光増感型複合材料を得た。
水30mlに塩化金酸0.37gを加え、次いでテトラオクチルアンモニウムブロミド2.187gとトルエン80ml混合液を加えて2時間撹拌した。さらに、1−ドデカンチオール0.2gを加えて1時間撹拌した。次にNaBH40.378gを水20mlに溶解した液を滴下して2時間撹拌した。この反応物を分液ロートを用いて水で数回洗浄した後、有機層の溶媒を留去することで粒径20〜50nmの球状金微粒子を得た。
上記球状金微粒子5mgを塩化メチレン150mlに再分散させ、前記構造式式(1)で示される二光子吸収材料20mgを加えて室温で激しく24時間撹拌した。撹拌を停止して溶媒を留去して、さらに真空乾燥することで、球状金微粒子を二光子吸収材料が取り巻く複合材料を得た。なお、この複合材料には使用光である近赤外域での共鳴吸収が無く、いわゆる多光子励起波長に共鳴しないものであることを確認した。本発明の複合材料の場合には多光子励起波長に共鳴することが必要である。
複合型二光子吸収材料製法例1で得られた金ナノロッド/二光子吸収材料からなる光増感型複合材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
複合型二光子吸収材料製法例2で得られた金ナノロッド/二光子吸収材料からなる光増感型複合材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
複合型二光子吸収材料製法例3で得られた金ナノロッド/二光子吸収材料からなる光増感型複合材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
複合型二光子吸収材料製法例4で得られた金ナノロッド/二光子吸収材料からなる光増感型複合材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
下記構造式(5)で示される二光子吸収材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
下記構造式(6)で示される二光子吸収材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
下記構造式(7)で示される二光子吸収材料をクロロホルムに溶解して、上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例2で得られた粉体を少量づつ加えて、金ナノロッドの760nmの吸収量と下記構造式(7)で示される二光子吸収材料の吸収最大ピーク比が実施例3での760nmと二光子吸収材料の吸収最大ピーク比が同一となるように調整して溶液を調整した。この溶液を石英基板上にスピンコートしておおよそ膜厚が100nmとなるようにサンプル調整した。
下記構造式(8)で示される二光子吸収材料をクロロホルムに溶解して、上記金ナノロッド有機溶媒分散置換処理例1で得られた粉体を少量づつ加えて、金ナノロッドの800nmの吸収量と下記構造式(8)で示される二光子吸収材料の吸収最大ピーク比が実施例4での800nmと二光子材料の吸収最大ピーク比が同一となるように調整して溶液を調整した。この溶液を石英基板上にスピンコートしておおよそ膜厚が100nmとなるようにサンプル調整した。
複合型二光子吸収材料製法例5で得られた球状金微粒子/二光子吸収材料からなる複合材料をクロロホルムに溶解し、石英基板上に膜厚がおおよそ100nmとなるようにスピンコートして薄膜サンプルを得た。
[二光子吸収時の蛍光光量の評価方法]
測定システム概略図を図7に示す。
本発明の光増感型複合材料構成では、サンプルの二光子吸収量を直接測定することは、プラズモン増強場を発生させる微粒子による励起光の吸収と散乱があるため容易ではない。そこで、本発明の評価では、二光子吸収材料に蛍光発光を有する二光子吸収材料を用いた。各々のサンプルが二光子吸収により発せられる蛍光光量を相対比較することによって、二光子吸収の増強度を測定した。
なお、蛍光強度の評価は実施例1と比較例1(表1)〜実施例4と比較例4(表4)で比較を実施した。すなわち、表1においては比較例1のサンプルの蛍光強度を1とした場合の相対値である。以下同様に実施例2〜4、比較例2〜4を相対比較した評価結果(表2)〜(表4)である。
また、比較例5(球状金微粒子/二光子連結型複合材料:但し、使用二光子励起波長域の波長に共鳴(吸収)を示さないもの)と本発明での使用二光子励起波長域の波長に共鳴(吸収)を示す光増感型複合材料(実施例1)の差異を確認する実験結果を下記表5に示す。
また、表5より、連結複合材料であっても使用光波長に共鳴(吸収)する本発明の場合には、共鳴(吸収)のない比較例に比べて大きい増強効果のあることが確認できた。
61a 金属微粒子(ナノロッド)
62 連結基
63 多光子吸収化合物
61b 金属微粒子(粒状)
(図4)
41 光制限素子
42 保護層
43 制御光
44 信号光
45 カラーフィルター
46 検出器
(図5)
1近赤外パルスレーザー光源
3過光量を時間的にコントロールするシャッター
4NDフィルター
5ミラースキャナー
6Zステージ
7集光手段としてのレンズ
8 コンピュータ
9 光硬化性樹脂液
10 光造形物
(図6)
1レーザー光源
2 光束変換光学系
3 走査光学系
4 対物レンズ系
5標本面
6ダイクロイックミラー
7 光検出器
(図7)
71 フェムト秒 レーザー
72 アッテネーター
73 グランレーザープリズム
74 ダイクロイックミラー
75 赤外カットガラスフィルター
76 ビーム遮蔽版
Claims (13)
- 多光子励起波長に共鳴して表面プラズモン増強場を発生させる金属微粒子の表面に、多光子吸収可能な分子構造を持つ多光子吸収化合物が結合され、
前記金属微粒子が、金ナノロッドであり、
前記多光子吸収化合物が、下記構造式(2)〜(4)から選ばれるいずれかを含むことを特徴とする光増感型複合材料。
- 前記多光子励起波長が二光子励起波長であり、前記多光子吸収化合物が二光子吸収化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光増感型複合材料。
- 前記結合されている形態が、金属微粒子の表面に結合する部位と多光子吸収化合物に結合する部位とを有する連結基を介してなることを特徴とする請求項1または2に記載の光増感型複合材料。
- 前記多光子吸収化合物が、前記連結基の多光子吸収化合物に結合する部位に予め結合された分子構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光増感型複合材料。
- 前記連結基がアルキレン基であることを特徴とする請求項3または4に記載の光増感型複合材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を含有する層平面に対して垂直方向から入射される光により、該層平面の深さ方向に記録再生可能なことを特徴とする三次元メモリ材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を含有することを特徴とする光制限材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を含有することを特徴とする光硬化材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を含有することを特徴とする多光子蛍光顕微鏡用蛍光材料。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を含有する層平面を具備し、前記層平面に対して垂直方向から入射される光により、該層平面の深さ方向に記録再生可能なことを特徴とする三次元記録媒体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を用いたことを特徴とする光制限素子。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を用いたことを特徴とする光造形システム。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光増感型複合材料を用いたことを特徴とする多光子蛍光顕微鏡装置。
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