JP4259220B2 - 金属ナノロッド製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は金属ナノロッドを電解法で製造する場合に、球状粒子が少なくロッド状粒子の割合が多い製造方法に関する。より具体的には、金属ナノロッドを電解法で製造する場合に用いる溶液組成に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属ナノロッドを製造する方法として電気化学的方法が従来知られている。この方法は、例えば超音波振動装置の上に電解槽を設け、電解槽内に白金板等の陰極と目的金属の陽極とを配設した電解装置を用い、界面活性剤を含む水溶液を用いて電解することによって金属ナノロッドを合成析出させる方法である。この界面活性剤として、第四級アンモニウム塩であるCH3(CH2)15N+(CH3)3Br-(ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド:CTAB)を用いる方法知られている。
【0003】
具体的には上記界面活性剤として以下の混合溶液が用いられている。
(イ) CTABと〔(CH3)(CH2)11〕4N+Br-(テトラドデシルアンモニウムブロミド)の混合溶液
(ロ) CTABと〔(CH3)(CH2)9〕4N+Br-(テトラデシルアンモニウムブロミド)の混合溶液
(ハ) CTABと〔(CH3)(CH2)7〕4N+Br-(テトラオクチルアンモニウムブロミド)の混合溶液
しかし、従来の製造方法は球状粒子の割合が多いと云う問題があり、ロッド状粒子の生成割合が多い製造方法が検討されていた。
【非特許文献1】
Yu-Ying Yu,Ser-Sing Chang,Chien-Liang Lee and C.R.Chris Wang,J.Phys.Chem. B,(1997),101,6661
【非特許文献2】
Ser-Sing Chang,Chao-Wen Shih,Cheng-Dah Chen,Wei-Chen Lai and C.R.Chris Wang,Langmuir,(1999),15,701
【0004】
【発明の開示】
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、従来の製造方法における上記問題を解決したものであり、球状粒子の割合が少なく、ロッド状粒子の生成割合が高い製造方法を提供する。
【0005】
〔課題を解決する手段〕
本発明によれば、以下の構成からなる金属ナノロッドの製造方法が提供される。
〔1〕 界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によってロッド状の金属微粒子(以下、金属ナノロッドと云う)を製造する方法において、下記化学式(I)で表される界面活性剤と、下記化学式(II)で表される界面活性剤を含む水溶液を用いることを特徴とする金属ナノロッドの製造方法。
[(CH2)nCH3]2N+(CH3)2Br- (nは1以上の整数)…(I)
[(CH3)(CH2)m]4N+Br- (mは1以上の整数)… (II)
〔2〕 界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって金属ナノロッドを製造する方法において、上記(I)で表される界面活性剤と、上記(II)で表される界面活性剤と、下記化学式(III)で表されるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む水溶液を用いる上記[1]に記載する金属ナノロッドの製造方法。
CH3(CH2)15N+(CH3)3Br- …(III)
〔3〕上記[1]または上記[2]の何れかの製造方法において、化学式(I)のnが7以上〜17以下であり、化学式(II)のmが1以上〜15以下である製造方法。
【0006】
〔発明効果〕
本発明の製造方法によれば、界面活性剤を含む溶液中で電気化学的反応によって金属ナノロッドを製造する場合に、球状金属微粒子が少なくロッド状金属微粒子の割合が多い金属微粒子を効率よく製造することができる。
【0007】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の製造方法は、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によってロッド状の金属微粒子(金属ナノロッド)を製造する方法において、下記化学式(I)で表される界面活性剤を含む水溶液を用いることを特徴とする方法である。
[(CH2)nCH3]2N+(CH3)2Br- (nは1以上の整数)…(I)
【0008】
上記化学式(I)で表される界面活性剤としては、式(I)のnが7以上〜17以下のものが好ましい。例えば、[(CH2)11CH3]2N+(CH3)2Br-(DDAB:ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド)などが好ましい。
【0009】
金属ナノロッドの電解溶液に添加する界面活性剤としては、上記(I)で表される界面活性剤と共に下記化学式(II)で表される界面活性剤を含む水溶液を用いると良い。上記(I)の界面活性剤と下記(II)の界面活性剤とを併用することによってロッド状粒子の生成割合を高めることができる。
[(CH3)(CH2)m]4N+Br- (mは1以上の整数)…(II)
【0010】
上記化学式(II)で表される界面活性剤は、式(II)のmが1以上〜15以下であるものが好ましい。例えば、テトラヘキシルアンモニウムブロミド(TC6AB)、テトラオクチルアンモニウムブロミド(TC8AB)などが好ましい。
【0011】
金属ナノロッドの電解溶液に添加する界面活性剤としては、上記(I)で表される界面活性剤、および上記化学式(II)で表される界面活性剤と共に、下記化学式(III)で表されるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を含む水溶液を用いると良い。これら3種の界面活性剤を併用することによってロッド状粒子の生成割合をさらに高めることができる。
CH3(CH2)15N+(CH3)3Br- …(III)
【0012】
上記電解溶液にはアセトンなどのケトン類およびシクロヘキサンを添加したものを用いることができる。これらを添加した溶液を用いることによって効率よくロッド状金属微粒子を生成することができる。
【0013】
本発明の電解は図1に示す構造の電解装置を用いて行うと良い。図示する電解装置は超音波装置10と反応槽12を有しており、超音波装置10の水槽11の中に反応槽12が設置されており、反応槽12のなかに陽極1、陰極2が設けられている。さらに陰極2の側方には電圧をかけない金属板3が電極に並設されている。陽極1には目的の金属種の板を用い、陰極2および金属板3の金属種は陽極1に応じて選択すればよい。例えば、金の微粒子を製造する場合には陽極1に金板を用い、陰極2に白金板またはステンレス板、金属板3に銀板を用いると良い。
【0014】
上記電解装置において、陽極1に電圧をかけると陽極1から金属イオンが溶出され、陰極2で還元される。陰極2の表面で還元された金属イオンはクラスターを形成し、このクラスターが次第に成長して陰極2から離れる。この離れたクラスターは電解液中の界面活性剤等の影響によって一方向の成長が促され、ロッド状金属微粒子が生成される。この電解時に超音波を照射することによって、陽極1および陰極2が振動を受け、陽極1から金属イオンが溶出され易くなり、また陰極2からクラスターが剥離し易くなると考えられる。また、陰極2の側方に設けた金属板3からはこの金属板3を構成する原子がイオンとして溶出し、ロッド状金属微粒子の生成を助ける。
【0015】
以上の製造方法によれば、球状金属微粒子が少なくロッド状金属微粒子の割合が多い金属微粒子を得ることができる。従って、この金属微粒子は球状金属微粒子に起因する吸光ピークが小さく、ロッド状金属微粒子に起因する吸光ピークが高い。例えば、上記製造方法によって得た金微粒子は、球状金微粒子に起因する530nm波長付近の吸光ピークが小さく、ロッド状金微粒子に起因する530nmより長波長側の特定波長に対する吸光ピークが大きい。因みに、この長波長側の吸収波長はロッド状金微粒子のアスペクト比等によって定まるので、このアスペクト比を調整することによって吸収波長を設定することができる。
【0016】
本発明の金属微粒子は、これをガラス材、樹脂材に含有させて用いることができる。また、この金属微粒子を含有する塗料組成物として用いることができる。さらに、例えば、近赤外光域に対して吸収を有するロッド状金微粒子を分散させた光学フィルターは近赤外光の吸収効果に優れており、また電磁波遮蔽材としても用いることができる。この他に本発明の金属微粒子を線状配列、平面状配列、または3次元に配列させることによって形成した金属微粒子の集合体は集積回路の配線材として利用することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。なお、各実施例において、CTABはMERCK社製品、それ以外の界面活性剤は関東化学社製品を用いた。
【0018】
〔実施例1〕
蒸留水100gに、界面活性剤(I)〔(CH2)11CH3)2N+(CH3)2Br-:ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)〕を濃度が0.04mol/Lになるように溶解させ、更に、これに界面活性剤(II)〔(CH3)(CH2)5)4N+Br-:テトラヘキシルアンモニウムブロミド(TC6AB)〕を濃度が0.009mol/Lになるように加えた水溶液を調製した。この水溶液にアセトン1.1g、シクロヘキサン0.8gを添加したものを電解液として用い、図1の電解装置によって電解を行った。陽極1には純度99.9%以上の金板を用い、陰極2にはステンレス板(SUS304)を用いた、電解は20mAの定電流を240分間通電することにより行った。この電解によって得た金微粒子水分散液について、分光スペクトル(日本分光社製:V570)による吸光ピークとその強度を測定し、また高分解能TEM(フィリップス社製CM20)によって粒子形状を観察した。この結果を表1に示した。
【0019】
〔実施例2〕
蒸留水100gに、界面活性剤(III)〔CH3(CH2)15N+(CH3)3Br-:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)〕を濃度が0.04mol/Lになるように溶解させると共に、界面活性剤(I)〔(CH2)11CH3)2N+(CH3)2Br-:ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)〕を濃度が0.04mol/Lになるように溶解させ、これに更に界面活性剤(II)〔(CH3)(CH2)5)4N+Br-:テトラヘキシルアンモニウムブロミド(TC6AB)〕を濃度が0.009mol/Lになるように加えた水溶液を調製した。この水溶液にアセトン1.1g、シクロヘキサン0.8gを添加したものを電解液として用い、図1の電解装置によって電解を行った。陽極1には純度99.9%以上の金板を用い、陰極2にはステンレス板(SUS304)を用いた。電解は20mAの定電流を240分間通電することにより行った。この電解によって得た金微粒子水分散液について、分光スペクトル(日本分光社製:V570)による吸光ピークとその強度を測定し、また高分解能TEM(フィリップス社製CM20)によって粒子形状を観察した。この結果を表1に示した。
【0020】
〔比較例1〕
蒸留水100ggに界面活性剤(III)〔CH3(CH2)15N+(CH3)3Br-:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)〕を濃度が0.08mol/Lになるように溶解させ、更に、これに界面活性剤(II)〔(CH3)(CH2)5)4N+Br-:テトラヘキシルアンモニウムブロミド(TC6AB)〕を濃度が0.009mol/Lになるように加えた水溶液を調製した。この水溶液にアセトン1.1g、シクロヘキサン0.8gを添加したものを電解液として用い、図1の電解装置によって電解を行った。陽極1には純度99.9%以上の金板を用い、陰極2にはステンレス(SUS304)板を用いた。電解は20mAの定電流を240分間通電することにより行った。この電解によって得た金微粒子水分散液について、分光スペクトル(日本分光社製:V570)による吸光ピークとその強度を測定し、また高分解能TEM(フィリップス社製CM20)によって粒子形状を観察した。この結果を表1に示した。
【0021】
〔比較例2〕
蒸留水100gに界面活性剤(III)〔CH3(CH2)15N+(CH3)3Br-:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド (CTAB)〕を濃度が0.08mol/Lになるように溶解させ、さらに界面活性剤(II)〔(CH3)(CH2)11)4N+Br-:テトラドデシルアンモニウムブロミド(TC12AB)〕を濃度が0.0054mol/Lになるように加えた水溶液を調製した。この水溶液にアセトン1.1g、シクロヘキサン0.8gを添加したものを電解液として用い、図1の電解装置によって電解を行った。陽極1には純度99.9%以上の金板を用い、陰極2にはステンレス(SUS304)板を用いた。電解は20mAの定電流を240分間通電することにより行った。この電解によって得た金微粒子水分散液について、分光スペクトル(日本分光社製:V570)による吸光ピークとその強度を測定し、また高分解能TEM(フィリップス社製CM20)によって粒子形状を観察した。この結果を表1示した。
【0022】
【表1】
【0023】
本発明の製造方法によれば、化学式(I)で表される界面活性剤と化学式(II)で表される界面活性剤の二種類、またはさらにCTABを加えた三種類の界面活性剤を含む溶液中で金属イオンを電気化学的に還元することによって、球状金属微粒子が少なくロッド状金属微粒子の割合が多い金属微粒子を効率よく製造することができる。この金属微粒子は球状金属微粒子よりもロッド状金属微粒子が多いので長波長側の吸光ピークの強度比が大きい。また、このロッド状金属微粒子に起因する吸収波長は粒子のアスペクト比によって制御することができるので、ロッド状金属微粒子の持つ吸収波長を選択できる性質を効果的に利用することができ、任意の波長の光だけを選択的に吸収させることができる。さらに金属粒子であるので電磁遮蔽効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法に用いる電解装置の概略図
【符号の説明】
1−陽極、2−陰極、3−金属板、10−超音波装置、11−水槽、12−反応槽
Claims (3)
- 界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によってロッド状の金属微粒子(以下、金属ナノロッドと云う)を製造する方法において、下記化学式(I)で表される界面活性剤と、下記化学式(II)で表される界面活性剤を含む水溶液を用いることを特徴とする金属ナノロッドの製造方法。
[(CH2)nCH3]2N+(CH3)2Br- (nは1以上の整数)…(I)
[(CH3)(CH2)m]4N+Br- (mは1以上の整数)… (II) - 界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって金属ナノロッドを製造する方法において、上記(I)で表される界面活性剤と、上記(II)で表される界面活性剤と、下記化学式(III)で表されるヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含む水溶液を用いる請求項1に記載する金属ナノロッドの製造方法。
CH3(CH2)15N+(CH3)3Br- …(III) - 請求項1または請求項2の何れかの製造方法において、化学式(I)のnが7以上〜17以下であり、化学式(II)のmが1以上〜15以下である製造方法。
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