JP5610114B2 - 複合部材、複合部材を具備した光造形システム - Google Patents

複合部材、複合部材を具備した光造形システム Download PDF

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Description

本発明は、多光子吸収材料(主として二光子吸収材料)に関し、詳しくは、表面プラズモン増強場を用いる構成により、これまでに無い高感度な薄膜またはバルクとして適用しやすい多光子吸収特性を利用した複合部材と、この複合部材を用いた三次元記録媒体(三次元メモリ等)、光制限素子、光造形システム(光造形用光硬化樹脂の硬化材料等)に関する。
二光子吸収現象を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能となるが、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では二光子吸収能が低いため、二光子吸収を誘起する励起光源としては高価な非常に高出力のレーザーが必要である。従って、小型で安価なレーザーを使って、二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、高効率の二光子吸収材料の開発が必須であると共にその増感技術が非常に重要である。
一方、光学的な原理による一光子吸収過程の増感方法として、金属表面に励起される表面プラズモン増強場を用い、微量な物質の光学的な評価測定を行う方法が知られている。例えば、金属微粒子により励起される表面プラズモン増強場を用いる測定方法についての技術が知られている。この技術は、観察測定領域が金属微粒子の周囲100nm以下の領域に限定され、粒子表面に吸着した試料を観察することにより高感度な観測を行うものである。
また、観察に適用する波長を選択するための技術として、球形コアセル構造による共鳴波長のチューニングについての技術が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術は、金属微粒子等、粒子の周囲に発生する表面プラズモン増強場を利用しているが、表面プラズモン増強場を発生する粒子は一光子吸収を増感するものであるのに加え、微粒子のみに適用範囲を限定しているために使用波長選択制に乏しく、実用上の適用範囲が限られるものとなっているという問題を有している。
更には、マイクロキャビティー中に配置された凝集ナノ粒子により、多光子課程を含む高感度観測法、すなわち、複数の微粒子間の局在プラズモン増強場を結びつけることで増強効果をより顕著にする手法が提案されている (例えば、下記特許文献2参照。)。
上記特許文献2に開示されている技術は、表面プラズモン増強場の発生手段である凝集ナノ粒子はマイクロキャビティーという閉ざされた微小空間内に配置されており、増強場の応用は限られたものとなるという問題を有している。
一方、近年においては、上述したような金属微粒子に代わる表面ブラズモン増強場の発生手段として、金ナノロッドを利用する技術についての研究がなされている。金ナノロッドは、アスペクト比を変えることにより、共鳴波長を変えられるという特性を有しており、530nm程度から近赤外(1100nm程度)までをカバーすることのできる材料である。この金ナノロッドの製造方法の一例として、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって作製する方法が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
上記特許文献3に開示されている技術によれば、波長のチューニングが可能な表面ブラズモン増強場発生手段においては励起波長選択の自由度は向上しているが、励起源と反応物質との配置についての課題を有している。
また、本出願人は二光子吸収材料と表面プラズモン増強場を発生させる金属微粒子または金ナノロッドを混合して、二光子増感を図り、これをデバイスに応用する技術を提案している。(例えば、下記特許文献4参照。)。
上記特許文献4に開示されている技術は優れた技術ではあるが、本来金属微粒子や金属ナノロッドは水系溶媒に分散して用いるのに対し、多光子吸収材料の多くは水には難溶であり、多光子吸収材料と金属微粒子または金属ナノロッドの混合薄膜または混合バルクを得るには微粒子またはロッドの有機溶媒中への均一分散という課題を残している。
また、少なくとも1つの膜スペーサ層により離隔された、金属粒子と蛍光を発することができる化合物を含むサンプル中における、蛍光を発することができる化合物の有無を検出もしくは測定する装置ならびに方法が提案されている(例えば、下記特許文献5参照。)。つまり、弱発光性化学種の放射減衰率を制御するに必要な特定の距離を与えることに関するものである。
上記特許文献5に開示されている技術は優れた技術ではあるが、一光子吸収を増感するものであり、多光子吸収の増感にはついては記載されていない。
光照射により、金属の表面に発生する表面プラズモン増強場(略「プラズモン増強場」)を生じさせる金属微粒子と多光子吸収材料により高い増感効果を得られれば、多光子吸収反応の反応閾値が下がると共に、集光点で反応を起こすことが可能であるため、これまでに無い様々な応用が可能となるため、例えば、三次元記録媒体、光制限素子、光造形システム(光造形用材料)、蛍光顕微鏡などへの応用などが具体的に注目されている。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition
Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねる。又は記録層を厚膜として光入射方向に対して何重にも記録再生を行える。従って、三次元記録媒体では従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
例えば、二光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体として、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(例えば、下記特許文献6、7参照。)、あるいは、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(例えば、下記特許文献8、9参照。)等が提案されている。
しかし、特許文献6、7、及び特許文献8、9においていずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。
さらに、特許文献8、9に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例は無かった。
また、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が提案されている(例えば、下記特許文献10、11参照。)。しかし、これらの提案では二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
なお、本出願人は下記特許文献12において、光照射による多光子吸収反応の増感を可能とする波長特性可変で、効率的励起源として用いることができる複合金属ナノ粒子を提案した。複合金属ナノ粒子は、形状異方性を有するコア粒子の表面に、光照射によりプラズモン増強場を発現する金属微小構造体を島状に離間して設けてなるものである。また、下記特許文献13において、形状異方性を持つコア粒子の表面に、プラズモン増強場の発現が可能な金属皮膜を被覆してなる複合金属ナノ粒子を提案した。
特表2001−513198号公報 特表2004−530867号公報 特開2005−68447号公報 特開2006−330683号公報 特表2005−524084号公報 特表2001−524245号公報 特表2000−512061号公報 特表2001−522119号公報 特表2001−508221号公報 特開平6−28672号公報 特開平6−118306号公報 特開2008−55570号公報 特開2008−58209号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明においては、多光子吸収反応の増感方法として、表面プラズモン増強場を用いる構成により、これまでに無い高感度な薄膜またはバルクとして適用しやすい多光子吸収特性を利用した複合部材とこれを応用した素材、デバイスに関する技術の提案を行うものである。すなわち、本発明の目的は、プラズモン増強を利用して多光子吸収材料を実用化レベルまで高感度化した複合部材と、この複合部材を具備した三次元記録媒体、光制限素子及び光造形システム、並びに光制限方法、多光子蛍光強度増強方法を提供するものである。
なお、本発明において、「多光子吸収材料」は主に「二光子吸収材料」を指し、以降「多光子吸収材料」を「多(二)光子吸収材料」あるいは「二光子吸収材料」と記載することがある。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔3〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕:上記課題は、光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、多光子吸収材料を含む多光子吸収材料含有体とが、所望の多光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する1つのスペーサ膜を介して一体に複合構成され、前記金属微粒子含有体、前記多光子吸収材料含有体及び前記スペーサ膜がそれぞれ層構造からなり、金属微粒子含有層と多光子吸収材料含有層が前記スペーサ膜を介して積層され、前記スペーサ膜が、ZnS・SiO2を含み、且つ、膜厚が多光子吸収強度を増強するように選ばれ、前記金属微粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする複合部材により解決される。
〔2〕:上記〔1〕に記載の複合部材において、前記多光子吸収材料が、下記構造式(1)または下記構造式(2)で表される二光子吸収材料であることを特徴とする。
〔3〕:上記課題は、〔1〕または〔2〕に記載の複合材料を用いたことを特徴とする光造形システムにより解決される。
本発明の複合部材によれば、光照射により、金属の表面に発生する表面プラズモン増強場(略「プラズモン増強場」)を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、多(二)光子吸収材料を含む多(二)光子吸収含有体とが、少なくとも1つのスペーサ膜により所望の多光子吸収強度に制御されるように(特に、多光子吸収強度が増強されるように)調整された厚さで離隔されて複合構成されているため、多(二)光子吸収材料の効果的な増感が実現でき、光子吸収の遷移効率を向上することが可能となった。
本発明の複合構成された複合部材は、金属微粒子含有層と多光子吸収含有層が少なくとも1つのスペーサ層を介して積層され複合構成(薄膜)とすること、あるいは、金属微粒子含有核(コア粒子)の表面に多光子吸収含有被膜が少なくとも1つのスペーサ被膜を介して被覆され複合構成(バルク)とすることができ、それぞれ高感度であり、これらの薄膜またはバルクは、小型で安価なレーザーにより増感できるため、実用性が高く、各種材料素材、デバイスなどに適用できる。これら材料を用いることによって発揮される超高密度、超精密、高分解等の特徴を利用すれば、例えば、三次元記録媒体、光制限素子及び光造形システムなどの実現が可能である。また、光化学療法用材料などの用途や、発光素子などの有機エレクトロニクス用素子としても有用である。
前述のように本発明における複合部材は、光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、多光子吸収材料を含む多光子吸収材料含有体とが、所望の多光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する少なくとも1つのスペーサ膜を介して一体に複合構成されたことを特徴とするものである。
ここで、前記金属微粒子含有体、前記多光子吸収材料含有体及び前記スペーサ膜がそれぞれ層構造からなり、金属微粒子含有層と多光子吸収材料含有層が少なくとも1つのスペーサ層を介して積層され複合構成(以降「薄膜」と記載することがある。)されてもよい。
あるいは、前記金属微粒子含有体が核(コア粒子)構造で、前記多光子吸収材料含有体及び前記スペーサ膜がそれぞれ被膜構造からなり、金属微粒子含有核の表面に多光子吸収材料含有被膜が少なくとも1つのスペーサ被膜を介して被覆され複合構成(以降「バルク」と記載することがある。)されてもよい。
二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起する事が可能な材料で、この時励起に用いた光子の約2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。ところで、二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種で、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc
Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進むようになった。
しかしながらこのような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて極めて低くく、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常に使用されるレーザー光強度では殆ど無視され、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、観察されることが確認されている。
二光子吸収の遷移効率は印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部の電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部のピンポイントのみでしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。
さらに、二光子吸収を誘起する場合には、化合物の線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが可能である。化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部のピンポイントを高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収及び二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
二光子吸収材料としてはこれまでに多数の無機材料が見出されてきた。ところが無機物においては、所望の二光子吸収特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。
従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積は、200(GM:×10-50cm4・s・molecule-1・photon-1)未満のものが殆どで工業的な実用化には至っていない。
本発明の複合部材は、光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、二光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体が、スペーサ膜により離隔されて一体化した複合構成からなるものである。すなわち、スペーサ膜の膜厚調整により、所望の多光子吸収強度となるように制御されている(特に、二光子吸収強度を増強するように膜厚調整される)。
本発明の膜厚調整されたスペーサ膜を介在させた複合構成により、二光子吸収材料の二光子吸収強度が効果的に増強され、二光子吸収材料を実用化レベルまで高感度化することができる。これによって、本発明の構成からなる複合部材は、これまでに無い高感度な「薄膜」または「バルク」として用いることが可能であり、各種の素材、デバイスに適用できる。なお、スペーサ膜を介在させない場合には、例えば、消光(quenching)などの現象が生じて二光子吸収強度が低減される。
以下、複合部材の構成材料について説明する。
[金属微粒子、金ナノロッド]
金属微粒子に光を照射するとプラズモン吸収と呼ばれる共鳴吸収現象が生じる。例えば、球状の金属微粒子が水に分散した金コロイドは530nm付近に単一吸収を有し、鮮やかな赤色を呈する。これらの球状金属微粒子は、赤色の着色剤としてステンドグラス等に使用されている。一方、金属微粒子のうちの一種である金ナノロッドは、棒状の金微粒子であり、そのアスペクト比(長軸/短軸の値:R)を制御することにより、可視光線から近赤外線までの任意の特定波長を吸収することが可能な非常にユニークな材料として注目されている。アスペクト比が大きい程、その吸収(共鳴)波長は長波長側にシフトする。そのアスペクト比に対する吸収(共鳴)スペクトルを図1に示す。
金ナノロッドは波長選択性に優れている。すなわち、光学デバイスにおける使用波長に吸収(共鳴)波長を整合化することで、よりいっそうの増感効率向上が図れる材料である。また、プラズモン増強場を発生させる微粒子は、励起光中では独立のプラズモン増強場を発生させるが、微粒子が近接すると増強場に重なりを生じるばかりではなく、微粒子の間隙部にさらに大きなプラズモン増強場が発生する。このような大きなプラズモン増強場は二つの微粒子が近接した略二両体や微粒子凝集体に顕著に発生する。本発明においては略二両体を含む小規模凝集体の状態をとることで、散乱による光利用効率の損失を抑え、より大きな増強効果が得られるエンハンス層としての機能を見いだした。
また、金ナノロッドは上述のごとく、アスペクト比により共鳴(吸収波長)を制御できるもので、例えば、780nmの光を用いて光学デバイスに応用するのであれば、図1のごとくアスペクト比(R)は3.5付近のものが理論上、増感効率が最も良い訳であるが、本発明は二光子吸収という使用光に対する透明な特性を利用するものであり、吸収量があまり大きくなりすぎると、場合によっては二光子特性を相殺してしまうことになる。使用波長に対する透明性を重視するなら、使用波長における金ナノロッドの吸収量を5%以下、好ましくは1%以下にするとよく、使用波長に対する透明性がさほど重要でない場合、使用波長における金ナノロッドの吸収量30%以下好ましくは20%以下とするとよい。
本発明に用いる金属粒子は、球状、楕円状、もしくは他のどんな形状をとることもできる。この金属粒子は、コロイドもしくはコロイドの組合せ、合金または2種以上の金属の組合せとして懸濁することができる。また、この金属粒子は、薄膜としての担体表面に配置するか、表面に沈着させて微細な島状体を形成することができる。この表面は金属性もしくは非金属性とすることができる。さらに、金属粒子は、ポリマー、ゲル、接着剤、酸化物、SiO2、または生物由来物質で被覆することができる。被覆物の例には、表面もしくは他の分子への金属粒子の結合を増強する物質が含まれる。金属粒子は、非金属粒子上に形成もしくは被覆した金属の層とすることができる。金属粒子は、好ましくは貴金属、最も好ましくは銀、さらに好ましくは金であるが、表面において化学的に還元することができる。担体表面の例としては、ガラスもしくは石英が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
金属の例としては、レニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、銅、オスミウム、イリジウム、プラチナおよび金が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属粒子または金属膜は公知であり、既知の方法により作製することができ、例えば、米国出願第10/073,625号公報に記載の方法を用いることができる。
コロイドは、クエン酸還元金属による懸濁液として調製することができる。好ましい金属は銀および金である。この場合も、金は、より短い波長で吸収を示すため、避けることがある。しかしながら、金コロイドは、より長い波長の赤色およびNIR蛍光体に対して用いることができる。
このコロイドのサイズおよび均一性については、入手可能な金属粒子の光学的性質およびコロイドの光学的性質に対する界面化学の効果に関する多数の刊行物によって確認することができる。例えば、クレルビッグ・ユー(Krelbig U.)、ガーツ・エム(Gartz M.)、ヒルガー・エー(Hilger A.)、「Mie振動:物理的および化学的クラスタ界面特性のセンサー(Mie resonances:Sensors for physical and chemical cluster interface properties)」ベリッヒテ・デア・ブンセン−ゲゼルシャフト−フィジカル・ケミストリー(Ber.Bunsenges.Phys.Chem.)、101(11)、p1593−1604(1997年)参照。
[二光子吸収材料含有体]
本発明の複合部材における光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体は、前述のように複合部材が「薄膜」では、二光子吸収材料そのものの層形態(層構造)でも、二光子吸収材料を樹脂等で分散混合した層形態(層構造)でもよい。
また、本発明の複合部材における光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体は、前述のように複合部材が「バルク」では、二光子吸収材料そのものの被膜形態(被膜構造)でも、二光子吸収材料を樹脂等で分散混合した被膜形態(被膜構造)でもよい。
なお、複合部材が「バルク」状である場合には、前述のように金属微粒子含有体は核(コア粒子)構造である。
後述の光造形に応用する場合、本発明の複合部材が紫外線硬化樹脂等の光硬化樹脂に分散されていることが必要で、その場合の二光子吸収材料の厚みに関しては特に制約はなく、所望する造形物の大きさに依存する。光硬化樹脂が流動性の高い性質であれば、キャビティ内に複合部材(例えば、「バルク」または「薄膜」)を配置しておき、光照射後に未露光部を洗い流すことでより高感度化された光造形法を構築することが可能である。また、光制限素子に応用する場合も厳密な厚みの制限はない。一方、三次元多層メモリに適用する場合、その厚みは上述の通りである。
[金属微粒子(ナノロッド)含有体]
次に、本発明の複合部材における金属微粒子を含む金属微粒子含有体は、前述のように複合部材が「薄膜」では、金属微粒子層形態(層構造)であり、一方、複合部材が「バルク」では、核形態[核(コア粒子)構造]である。
すなわち、金属微粒子含有体は、金属微粒子または金ナノロッドを含む層、あるいは核(コア粒子)である。例えば、金や銀を特定の条件で水系溶媒に分散させ(球状の微粒子としてコロイド分散させる)て得ることも可能であるし、球状と形状異方性を有した微粒子との混合として得ることも可能である。特に金に関しては、金ナノロッドが微粒子の大半を占める形状のコロイド液を得ることもできるし、ナノロッドと球状微粒子との混合体として得ることも可能である。
二光子吸収特性を増強させるための金属微粒子含有体は、前述のように「層構造」あるいは「核(コア粒子)構造」である。例えば、微粒子(またはナノロッド)が表面に1粒子が二次元的に敷き詰められた単一層であってもよいし、一部に凝集状態を有した層でもよいし、微粒子が幾層にも積み重なったバルク層となっていてもよいし、樹脂等のバインダーに分散混合された形態でもよい。その厚みは10nm〜500μm程度の範囲で適用が可能である。
これらの増感効果としては微粒子(またはナノロッド)が表面に1粒子が二次元的に敷き詰められた単一層や一部に凝集状態を有した層、とりわけ、二光子吸収材料を含有する層との界面に凝集している形態が増感効率を高めることが可能で、より望ましい形態である。
これは上述した通り、微粒子やナノロッドは使用レーザー波長に吸収を有していたり、微粒子の光散乱の影響により使用レーザーに対して透過性の高い二光子吸収特性を利用するということと相反する。従って、使用波長における金属微粒子、ナノロッドの吸収、散乱の影響をできる限り低い構成、濃度、配置での高効率な増感が好ましく、表面に一層のみであるものや、微粒子、ナノロッドを感光層界面に局在化させた光散乱の影響がが少ないものでの増感が望ましい。また、微粒子、ナノロッドが局在化した構成であれば、粒子間の局在プラズモン共鳴による増感も可能であり高効率増感に寄与する。
[スペーサー膜]
本発明の複合部材におけるスペーサー膜は、前述のように複合部材が「薄膜」では、層形態(層構造)であり、一方、複合部材が「バルク」では、被膜形態(被膜構造)である。
なお、複合部材が「バルク」状である場合には、前述のように金属微粒子含有体は核(コア粒子)構造である。
近傍の伝導性金属表面が1光子蛍光発振双極子に反応して発光率、即ち、内因性放射減衰率、及び放出放射線の空間分布を変化させるとの文献が急激に現れつつある。この効果は蛍光体付近の光子モード密度(photonic
mode density)の変化によるものと、理論家は説明している。金属表面のラマン・シグナルが103〜108倍増強され得ることは表面増強ラマン散乱(SERS)として公知であるが、さらに強い増強が見られたとの報告も出現している。また、近傍に金属の膜、島状体もしくは粒子を存在させることにより、蛍光体の発光特性を変化させることもできると報告されている。
また、近傍金属で、最も周知の効果は、蛍光の消光(quenching)である。金属表面から50Å以内の蛍光体の発光は、ほぼ完全に消光される。この効果は、エバネッセント波励起を利用した蛍光顕微鏡で用いられている。
そこで、本発明の対象としたのは、二光子吸収化合物の増感と金属間距離の相互作用である。特に二光子吸収化合物の増感に関する報告はこれまでにない。
金属粒子の表面への結合は、ガラスまたはポリマー担体上に、シアニド(CN)、アミン(NH2)もしくはチオール(SH)などの官能化学基を付けることによって行うことができる。金属コロイドは、このような高親和性の表面に自然に結合することが知られている。
例えば、フリーマン・アール・ジー(Freeman R.G.)、グラバール・ケー・シー(Grabar K.C.)、アリソン・ケー・ジェイ(Allison K.J.)、ブライト・アール・エム(Bright R.M.)、デービス・ジェイ・エー(Davis J.A.)、ガスリー・エー・ピー(Guthrie A.P.)、ホンマー・エム・ビー(Hommer M.B.)、ジャクソン・エム・エー(Jackson M.A.)、スミス・ピー・シー(Smith P.C.)、ウォルター・ディ・ジー(Walter D.G.)、ナタン・エム・ジェイ(Natan M.J.)、「自己集合金属コロイド単層:SERS担体へのアプローチ(Self−assembled metal colloid monolayers:An approach to SERS substrates)」、サイエンス(Science)、2671、p1629−1632(1995年);グラバール・ケー・シー(Grabar K.C.)、フリーマン・アール・ジー(Freeman R.G.)、ホンマー・エム・ビー(Hommer M.B.)、ナタン・エム・ジェイ(Natan M.J.)、「Auコロイド単層の調製および性質決定(Preparation and characterization of Au colloid monolayers)」、アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、67、p735−743(1995年)参照。
本発明においては、金属粒子の所望の距離への配置は、スペーサ膜を用いることによって達成することができた。
本発明におけるスペーサ膜としては、例えば、ポリマーからなる膜(ポリマー膜)、酸化物からなる膜(酸化物膜)、ラングミュア−ブロジェット法により形成された膜(ラングミュア−ブロジェット膜)などが用いられる。以下に一例を示す。
(1)ポリマー膜 :
光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、二光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体との所望の間隔(例えば、金属−蛍光体間の所望の間隔)は、ポリマー膜(所望の多光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する)を用いることにより達成することができる。
ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドンが挙げられるが、これに限定されるものではない。ポリマー膜の厚さは、吸光度測定および偏光解析法、タリステップ法を用いて求めることができる。
ポリマー膜の1つのタイプは、スピンコートしたポリマー膜である。すなわち、スピンコート法による膜形成技術を用いることにより、種々の金属微粒子含有体表面に10nm超からのさまざまな厚さでポリマー膜を容易に被覆することができる。つまり、被覆はスピンコータを用いて実施することができ、ポリマー濃度(粘度)及びスピン速度を変化させることにより表面の厚さを均一にすることができる。
また同時に、スピンコート法を用いることにより、面倒な真空系を使う必要がないことから、生産性の向上、低コスト化が可能である。また、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドンは水に対する溶解性が高く好適に用いられる。水溶性樹脂は金属微粒子層に影響を与えないので好適である。
(2)酸化物膜 :
光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、二光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体との所望の間隔(例えば、金属−蛍光体間の所望の間隔)は、酸化物膜(所望の二光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する)を用いることにより達成することができる。
スペーサ膜は、酸化物で形成した単層もしくは多重層とすることができる。この酸化物層は、蒸着などの沈着技術により形成することができる。酸化物層は、好ましくは酸化ケイ素(シリカ)、より好ましくはSiO2や、ZnS・SiO2である。
SiO2の蒸着は、種々の担体への沈着を制御するための確立された技術である。エドワーズ(Edwards)蒸着モジュールでは、既知の厚さおよび質量の銀島状体膜を沈着させると同時にこのシステム(デューアル・トラフ)の真空度を壊すことなくSiO2の不活性スペーサ層を沈着させることができる。これにより、金属に対するどのような酸化作用の可能性も最小限に抑えることができる。また、蒸着を利用して孔の内部を銀で被覆することも可能である。これは、マトリクスI作製の代替的な方法となり、ウェット・シルバー・ケミストリーの必要性を少なくすると思われる。また、成膜には蒸着法の他、スパッタリング法を用いることができる。SiO2を含有する膜をスパッタリング法で成膜する優位性は、厚さ、サブミクロンの膜を均一に成膜できる点である。
(3)ラングミュア−ブロジェット膜 :
光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、二光子吸収材料を含む二光子吸収材料含有体との所望の間隔(例えば、金属−蛍光体間の所望の間隔)は、ラングミュア−ブロジェット膜(所望の多光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する)を用いることにより達成することができる。
上記所望の間隔は、ラングミュア−ブロジェット法により形成された脂肪酸からなるスペーサ膜(ラングミュア−ブロジェット膜)を用いることにより達成することができる。
脂肪酸としては、自然源からの濃縮留分もしくは分画など、あるいは合成アルキルカルボン酸を用いることができる。脂肪酸の例としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、オレイン酸(C18)、リノール酸(C18)、リノレン酸(C18)、リシノール酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ガドリック酸(C20)、ベヘン酸(C22)、及びエルカ酸(C22)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。偶数炭素鎖長の脂肪酸を例示として示したが、奇数の脂肪酸も使用することができる。
この単層の厚さはよく特徴付けることができるが、偏光解析法を用いてさらにこの脂肪酸層の厚さを確認することができる。偏光解析法では、表面からの反射時の直線偏光の偏光位相差を測定する。ラングミュア−ブロジェット膜の優位性は、分子間距離単位でスペーサー層の間隔を制御できる点である。数または数十オングストロームの制御に向いている。
〔三次元記録媒体(三次元多層光記録媒体:三次元多層光メモリ)への応用〕
前述のように、非共鳴二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。特に、三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料または方式の構築が望まれていた。
本発明の複合部材は、三次元記録媒体の構成部材に適用することができる。例えば、基板平面上に記録層が形成され、入射光により該層平面の平行方向及び垂直方向に記録再生が可能な三次元記録媒体の構成部材とすることができる。
本発明の三次元記録媒体における二光子吸収材料含有体は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストし、次いで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それらによって二光子吸収材料含有層とすることができる。
全く同様な方法で、スペーサ層、及び光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子または金ナノロッドを含む金属微粒子含有層の形成が可能である。
つまり、二光子吸収材料を含む層と、金属微粒子または金ナノロッドを含む層とを、少なくとも1つのスペーサ層により離隔して一体化(積層)させ、各々を離隔接合させることにより二光子吸収特性を増強させる。金属微粒子含有層(記録層)における微粒子または金ナノロッドは、図示はしないが、記録層の上方、下方の少なくともいずれか一方にあれば本発明の構成要件を満足するものである。
ここで、「基板」とは、任意の天然または合成支持体、好適には柔軟性または剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎または静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板には予め、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。上記層形成に使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
さらに、上記記録層(二光子吸収材料含有層)の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布・形成してもよい。あるいはガラス板を貼合わせてもよい。
また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にも予め、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。もちろんこの中間層や粘着層に本発明の構成要素であるプラズモン増強場を発現する微粒子やロッドが分散混合されていてもよいし、中間層、粘着層表面に該金属微粒子層が形成されていてもよい。
上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、本発明の三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収特性(例えば、二光子吸収色素特性)から深さ方向の三次元記録が可能である。
以下、三次元多層光記録媒体(三次元多層光メモリ)の好ましい実施形態(具体例)を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。
図2の概略図に、本発明における三次元多層光メモリの記録/再生のシステム構成(a)と記録媒体の構成断面(b)を示す。
図2に示す三次元記録媒体(10)においては、平らな支持体(基板A)(1)に本発明の二光子吸収材料(二光子吸収化合物)を用いた記録層(11)と、クロストーク防止用の中間層(保護層)(12)が交互に(図2では5層程度しか示していないが)50層程度(あるいはそれ以上)ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層(11)の厚さは0.01〜0.5μm、中間層(12)の厚さは0.1〜5μmが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の大容量光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/あるいは反射型)により、基板A(1)と同様の基板B(保護層)(2)、あるいは高反射率材料からなる反射層(2)が構成される。
記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、あるいは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/深さ方向単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
また、図示はしないが、中間層が存在しないバルク状の記録層でも深さ方向へのいわゆるホログラム方式ページデータとして一括記録再生とすることで記録再生の転送レートを高速化できる。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、図示はしないがカード状、テープ状、ドラム状の積層媒体等が挙げられる。
〔光造形システム(光造形用材料、光造形用材料を用いた光造形装置への応用〕
本発明の複合部材は、光造形システムに応用することができ、例えば、光造形用二光子光硬化性樹脂における二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として適用することができる。
光造形用二光子光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化する特性を持った樹脂のことである。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応して重合が開始される。その後、これらの間で連鎖的重合反応を起し三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては反応性が良好であること、硬化時の堆積収縮が小さいこと、硬化後の機械特性が優れる事が重要になっている。
本発明の複合部材における二光子吸収材料は、上記要求を満たす二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として有用であり、従来に比べ二光子吸収感度が高いため高速造形が可能となり、また二光子吸収現象を利用するため、微細で三次元的な造形を実現することができる。
本発明においては、光増感材料として利用する本発明の二光子吸収材料を紫外線硬化樹脂等に分散させて感光物固体を形成し、この感光物固体の所望の個所に光照射を行うことで、照射光の焦点付近のみに硬化反応を起こさせ、超精密三次元造形物を形成する。
図3は、本発明の複合材料(二光子吸収材料含有)を用いて光造形を行う場合の光造形装置の一例を示す概念図である。
光源21からのパルスレーザー光を可動形式のミラー22及び集光レンズ23を介し本発明の複合材料(二光子吸収材料含有)24に集光すると、集光点近傍のみに光子密度の高い領域が形成される。このとき、ビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定のため、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ二光子吸収の発生の高い領域が形成される。集光点は可動形式のミラー22や可動ステージ25(ガルバノミラー及びZステージ)を制御することで光硬化樹脂液内において自由に変化させることができるため、任意の位置にナノメートルオーダーの精度で樹脂を局所的に硬化することができ、所望の三次元加工物を容易に形成することができる。
また、このように作製される造形物の一例として、光導波路が挙げられる。図4は、本発明における光導波路の一例を概念的に示す斜視図である。
図4の光導波路(40)において、符号41は光ファイバ、42は光ファイバアレイを示す。
近年、大容量アーカイブ用途の記録媒体が求められる一方で、ユビキタスネットワークの実現に向けた光ファイバ通信の開発による情報伝送の高速化及び大容量化も求められている。その一つに、WDM(波長多重通信)と呼ばれる波長の異なる光の不干渉性を利用した大容量伝送技術が知られているが、そのWDMにおいては、特定の波長の光信号を合波或いは分波する素子が不可欠であり、そのための素子として光導波路が用いられている。光導波路においては、素子内部にある特定の屈折率分布などを形成させることで、電気回路中を電子が流れるように光信号をその分布に沿って導くことができる。このような波長による屈折率変化を利用する光導波路構造は、図3に示す光造形装置を用い、本発明の二光子吸収材料を含む薄膜、または本発明の二光子吸収材料を光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光造形することで形成することができる。
なお、公知文献(特開2005−134873号公報)においてパルスレーザー光を感光性高分子膜の表面にマスクを介さず干渉露光させる手法が開示されている。公知技術においてレーザー光は、感光性高分子膜の感光性機能を発揮させる波長成分をもった光からなり、感光性高分子の種類、または感光性高分子の感光性機能を有する基または部位に応じて選択されている。また、光導波路に関する公知文献としては、光屈折率材料に光を照射して形成される光導波路(特開平08−320422号公報)をはじめ、特開2004−277416号公報、特開平11−167036号公報、特開2005−257741号公報等で開示されている。
従来に比べて、本発明の複合部材を利用した光造形物の特徴は以下のようである。
〔i〕回折限界を超える加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、焦点以外の領域では光硬化性樹脂が硬化しない。このため照射光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
〔ii〕超高速造形:本発明の複合部材を用いて加工される造形物においては、従来に比べ、二光子吸収感度が高いため、ビームのスキャン速度を速くすることができる。
〔iii〕三次元加工性:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
〔iv〕高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うため、こうした問題が解消される。
〔v〕大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
〔複合部材を用いた光制限素子への応用〕
本発明の複合部材は、光制限素子に応用することができる。すなわち、制御光により信号光の光透過強度または光の進路を制限する素子の構成部材として適用することができる。
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するためには変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度(>10
ps)が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。
本発明の複合部材を適用し、加工・作製して光学素子とすれば、例えば、光を照射することによって透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を引き起こすことが可能となる。
このような機能を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を直接光で変調することにより、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における高速光スイッチなどに応用することが可能であり、前記要求に応えることができる。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度においてはるかに優れた素子(<1ps)を提供することができ、また高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
下記に、一光子吸収を利用した光スイッチと本発明における二光子吸収を利用した光スイッチの特徴について記載する。
〔一光子吸収/過飽和吸収を利用した光スイッチ例、及び問題点〕
[利用できる現象]
・SHB(スペクトル ホール バーニング)
・励起し吸収
・ISBT(サブバンド間遷移)
・QCSE(量子閉じ込めシャタルク効果)
[問題点]
・超高速応答を得るのが難しい
・素子作製(組成、構造)が複雑
・対応波長域が狭いことが多い→波長選択制が狭い
・偏波依存性が大きい系が多い
〔二光子吸収を利用した光スイッチの利点〕
[利用できる現象]
・二光子吸収の非線形性利点
・原理的に超高速応答
・素子作製(組成、構造)が容易
・対応波長域が広い→波長選択制が広い
・偏波依存性がない
<吸収特性の変化の応用例>
図5は、本発明の複合部材における二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例を示す概略構成図である。
光学素子(光制御素子)(60)として、保護層(61)で狭持された本発明の複合部材よりなる二光子吸収材料の形態を示すが、この構成が本発明を限定するものではない。制御光(62)及び信号光(63)から入射したレーザー光は、集光装置により集光され、制御光の強度が極めて強い場合のみ光学素子により吸収され、一光子励起波長の透過率が変化する。二光子吸収の非線形性に伴う透過率の変化を利用することにより、信号光を制御光の強弱で光スイッチが可能となる。図5において、符号64はカラーフィルター、65は検出器を示す。
図6は、本発明の複合部材における二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長(λ1)の信号光と二光子励起し得る波長(λ2)の制御光により二光子励起させる全光スイッチングする光制御素子の動作例を示す説明図である。制御光及び信号光であるレーザー光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光制限素子に集光され、制御光がoffの場合は信号光がそのまま出力され、制御光がonの場合は信号光と共に二光子吸収され出力は無くなる。制御光のon/offにより、信号光の光スイッチが可能となる。
<屈折率の変化の応用例>
図7は、本発明の複合部材における二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、出力光の光路を光スイッチングする光制御素子の一例を示す斜視図である。
制御光及び信号光から入射したレーザー光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光導波路の分岐路部位に集光され、制御光の強度が極めて強い場合のみ光導波路の分岐路部位により吸収され、その部位の屈折率が変化する。二光子吸収による光導波路の分岐路部位の屈折率変化、信号光の光導波路の屈折率、および出力光の光導波路の屈折率を調整することにより出力光の光路を切り替えることが出来る。二光子吸収の非線形性に伴う屈折率の変化を利用することにより、光導波路の光路の光スイッチングが可能となる。
本光制限素子の公知文献として特開平8−320422号公報が挙げられる。これによると光照射により屈折率が変化する光屈折率材料に、その屈折率が変化する波長の光を照射してフォーカシングを行い、屈折率分布を形成する光導波路として開示されている。すなわち、本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として配置し、ひとつの波長(λ1)の光で励起状態に励起され、さらにその状態から他の波長(λ2)の光で他の状態に励起されるこにより波長による屈折率変化分布を利用した光導波路の設計が可能となる。また、二光子吸収材料はその多くが蛍光を有するものが多く、光デバイスの一方の出射端またはその近傍に蛍光物質を配置し、他方から励起光(λ1)を出射させ、励起光と蛍光(λ2)で屈折率分布を形成することもできる。この場合、通常蛍光の方が励起光より弱いので、感度は蛍光の波長において大きくすることが望ましい。蛍光物質としては、蛍光色素を光硬化性物質や種々の樹脂等に分散させたものなどが例示される。
〔複合部材を用いた二光子励起蛍光検出方法、装置への応用〕
本発明の複合部材(二光子吸収材料含有)を用いることによって二光子励起蛍光検出方法や、装置へ応用することができる。
二光子励起蛍光検出法とは、二光子蛍光材料を結合させて標識した被分析物を含む試料に、近赤外のパルスレーザーを集光しながら走査し、被分析物が二光子励起されたときに発生する蛍光を検出することで三次元的に像を得る検出方法のことである。図8の構成図にそのような光検出デバイスの一例として、二光子励起蛍光顕微鏡の基本構成を示した。
図8の装置は、近赤外域波長のサブピコ秒単色コヒーレントパルスを発生する光源51から、レーザー光を発生させ、ダイクロイックミラー52を経て、集光装置53により集光し、本発明の二光子吸収材料を結合させた被分析物を含む試料54中で焦点を結ばせることより、二光子蛍光を発生させる。試料上でレーザー光を操作し、各場所の蛍光強度を光検出器56で検出し、蛍光強度と得られた位置情報とをコンピューター上でプロットすることで、三次元蛍光像を得ることができる。この場合、該顕微鏡には所望の集光位置をレーザービームで走査するための走査機構が備えられており、例えば、可動または固定ステージ55に置かれた試料を移動させてもよく、あるいは可動ミラー(ガルバノミラーなど)を用いてレーザービームを走査してもよい。このような構成をとる二光子励起蛍光顕微鏡は光軸方向に高分解能の像を得ることができるが、共焦点ピンホール板を用いることで、面内、光軸方向共にさらに分解能を上げることができる。
このように用いられる二光子蛍光材料は、被分析物の染色、または被分析物に分散させることで使用することができ、工業用途のみならず、生体細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができる。また生体適合性のポリマーと混合することで光線力学的治療法(PDT)における光感受性材料として用いることも可能である。
二光子励起蛍光顕微鏡に関する公知文献としては、例えば、走査型蛍光顕微鏡に関するものが挙げられる(特開平9−230246号公報参照。)。本文献による走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。、
このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。
本発明の複合部材は二光子励起レーザー走査顕微鏡をはじめとする二光子励起蛍光を検出する装置への適用が可能である。しかも、従来の二光子励起蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収(発光)特性を発揮する。従って、本発明によれば、高感度な二光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。同様に、生体への適用(光線力学療法など)をする場合でも、照射する光の強度を下げることができるため、生体へのダメージが低減可能となる。
<光線力学療法>
光線力学療法(Photodynamic Therapy : PDT)は、ヒト医学においてはすでに一部の早期悪性腫瘍に対して臨床応用が行われている治療法である。
光感受性物質(二光子吸収材料)を腫瘍細胞や腫瘍組織内の新生血管の内皮細胞内に取り込ませて、患部にレーザー光が照射されることにより、活性酸素を発生させる。この活性酸素により、腫瘍細胞や組織が傷害を受けて腫瘍が消失すると考えられている。
PDTは、この光線力学的反応を利用した治療法であり、PDTはそれ自身毒性が低い光感受性物質と低出力のレーザー光を使用するため、生体への負担が少ないのが特徴である。また、この光感受性物質が二光子吸収材料であって用いる光の波長が生体を透過する程度の長波長である場合、生体への負担はなお一層低減される。治療法としては腫瘍の画像診断を行い、腫瘍の位置と大きさを確認する。腫瘍全体にレーザー光を照射できるように、CT画像をもとにして腫瘍にファイバーを設置し、レーザー光を照射する。
外科的療法では身体を切開してさらに腫瘍を手術によって摘出するため、身体の機能や形態を損なってしまうことがあるが、PDTの場合、可能な限り正常組織を温存して治療できるメリットがある。
以下に、施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。なお、以下に示す実施例1〜30のうち、実施例1〜14は本発明の範囲に属しない参考例に相当する試験例である。また、実施例15〜30のうち、金ナノロッドを用いないものは本発明の範囲に属しない参考例に相当する試験例である。
(実施例1)
厚み1mmのガラス基板上に、大日本塗料株式会社製金ナノロッド(0.5wt%、トルエン溶液、高精製)を2000rpmで15秒間スピンコートし、波長415nmにおける吸光度が0.13程度となる金ナノロッド層を成膜した。
その金ナノロッド層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
次に、下記構造式(1)で示される二光子吸収色素(1)をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例2)
トルエン300mlに硝酸銀10gとオレイルアミン(85%)37.1gを加え、1時間撹拌した。次いで、アスコルビン酸15.6gを加えて3時間撹拌した。これにアセトン300mlを加え、デカンテーションにて上澄み液を除き、沈降物に含有されている溶媒を留去することで粒径10〜30nmの球状銀微粒子を得た。これをテトラヒドロフランに再分散させ、厚み1mmのガラス基板状に銀微粒子膜厚が20〜60nmとなるようにスピンコートした。これを60℃のオーブンで在留溶媒を除き、室温まで冷却した。
その銀微粒子層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例3)
水30mlに塩化金酸0.37gを加え、次いで、テトラオクチルアンモニウムブロミド2.187gとトルエン80ml混合液を加えて2時間撹拌した。さらに1−ドデカンチオール0.2gを加えて1時間撹拌した。次に、NaBH0.378gを水20mlに溶解した液を滴下して2時間撹拌した。この反応物を分液ロートを用いて水で数回洗浄した後、有機層の溶媒を留去することで粒径20〜50nmの球状金微粒子を得た。これをテトラヒドロフランに再分散させ、厚み1mmのガラス基板状に金微粒子膜厚が40〜100nmとなるようにスピンコートした。これを60℃のオーブンで在留溶媒を除き、室温まで冷却した。
その金微粒子層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例4)
0.18mol/l臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液を70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、0.1mol/l硝酸銀水溶液を1.3ml混合して撹拌した。これに0.24mol/l塩化金酸水溶液を0.3ml加えた後、0.1mol/lアスコルビン酸水溶液を0.3ml加えて塩化金酸溶液の色が消失したことを確認した。その後、この液をシャーレに移して低圧水銀灯による波長254nmの紫外線を20分照射することで、吸収波長に約830nmにある金ナノロッド分散液が得られた。
遠心分離器によりこの分散液中の金ナノロッド成分を沈降させた。この上澄み液を除いて、さらに水を加えて遠心分離器にかけるという工程を複数回繰り返して、余剰の分散剤臭化セチルトリメチルアンモニウムを除いた。こうして得られた金ナノロッド分散液を厚み1mmのガラス基板状に滴下して自然乾燥させたところ金ナノロッド膜厚が40〜80nmとなった。その金ナノロッド層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例5)
厚み1mmのガラス基板上に(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシランの5%エタノール溶液をスピンコートした。これを80℃で2時間加熱処理してガラス表面をシランカップリング処理した。このガラスの処理面を実施例2で得た銀微粒子テトラヒドロフランに分散液に浸して、引き上げ、これを60℃のオーブンで余剰溶媒を除去して銀微粒子がガラス表面上に略1粒子ずつ2次元的に敷き詰めらた微粒子層を得た。AMF観察により微粒子は均一に敷き詰められている部分と微粒子が局所的に凝集している部分とが混在している形態であることを確認した。その金銀微粒子層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例6)
実施例5と全く同様のシランカップリング処理をしたガラス基板処理面を実施例4で得られた金ナノロッド分散液に浸して、引き上げ、これを60℃のオーブンで余剰溶媒を除去して金ナノロッドがガラス表面上に略1粒子ずつ2次元的に敷き詰めらた微粒子層を得た。AMF観察により微粒子は均一に敷き詰められている部分と微粒子が局所的に凝集している部分とが混在している形態であることを確認した。
その金ナノロッド層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例7)
実施例6で得られた金ナノロッド分散液1gを1重量%ポリエチレンイミン0.4gと混合した。これに5重量%ポリメタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体のDMF溶液2gを混合した。これを減圧することで数mlまで濃縮する。この濃縮液を厚み1mmのガラス基板上に滴下して、90℃のオーブンで溶剤乾燥させてポリマーに金ナノロッドが分散された膜を250nmの厚みで得た。
この金ナノロッド分散ポリマー層上に、クラレ社製PVAポバール224の5wt%水溶液を1500rpmでスピンコートすることによりスペーサー層を積層した。
このスペーサー層上に前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を2,2,3,3,−テトラフルオロ−1−プロパノールに溶解した液で膜厚が100nmとなるようにスピンコートして積層型サンプルを得た。
(実施例8〜14)
実施例1〜7における前記構造式(1)で示される二光子吸収色素を下記構造式(2)で示される二光子吸収色素に代えた以外はそれぞれ全く同様に作成して積層型サンプルを得た。
(実施例15〜29)
実施例1〜14におけるスペーサ層をZnS・SiO2をスパッタ法により膜厚30nmに成膜した以外はそれぞれ全く同様に作成して積層型サンプルを得た。
(比較例1〜29)
実施例1〜29におけるスペーサ層を除いた以外はそれぞれ全く同様に作成して積層型サンプルを得た。
[二光子吸収時の蛍光光量の評価方法]
蛍光光量の評価に用いた測定システムの概略図を図9に示す。
本発明の構成では、サンプルの二光子吸収量を直接測定することは、プラズモン増強場を発生させる微粒子による励起光の吸収と散乱があるため容易ではない。そこで、本発明の評価では、二光子吸収材料に蛍光発光を有する二光子吸収材料を用い、各々のサンプルが二光子吸収により発せられる蛍光光量を相対比較することによって、二光子吸収の増強度を測定した。
励起光には、赤外線フェムト秒レーザー、スペクトラフィジックス社製MaiTai(繰り返し周波数80MHz、パルス幅100fs、測定波長780nm、平均照射パワー50mW)を用いている。出力を調整するため、1/2λ板とグランレーザープリズムよりなるアッテネータ-を通し、1/4λ板により円偏光とし、焦点距離100mmの平凸レンズで試料上に集光し、焦点距離40mmのカップリングレンズで蛍光を集め、概略平行光とする。ダイクロイックミラーで励起光を取り除いた後、焦点距離100mmの平凸レンズで検出用フォトダイオード上に概略集光する。フォトダイオードの手前には赤外線カットガラスフィルターが設置されている。
評価結果を下記表1に示す。なお、蛍光強度の評価値は、各実施例の番号に対応する各比較例の蛍光強度を1とした相対値である。
表1から、本発明の金属微粒子含有体(金属微粒子を含む層)と二光子吸収材料含有体(二光子吸収材料を含む層)とをスペーサ膜(スペーサ層)で隔離して一体化することにより二光子吸収特性を増強できることが明らかとなった。さらに金属微粒子含有層はポリマー中に分散するよりも二光子吸収材料含有層と離隔接触面積が大きい方が増感効率は向上し、さらに離隔接触している微粒子が凝集している方がより一層の増強効果が認められた。
(実施例30)
実施例15において、スパッタ時間を変えることによりZnS・SiO2の膜厚を変えた。その様子を図10に示す。
図10よりわかるように、スペーサー層の膜厚により強度が異なる。本発明では蛍光強度が増強する膜厚を適宜選択する必要がある。
上記評価結果からわかるように、本発明の複合部材は、スペーサ膜によって多光子吸収強度が効果的に増強されるため、小型で安価なレーザーによる増感を可能とすることができ、実用性が高い。このため、超高密度、超精密、高分解等の特徴を生かした三次元記録媒体、光制限素子及び光造形システムなどの実現が可能である。
金ナノロッドのアスペクト比に対する吸収(共鳴)スペクトルを示す図である。 本発明における三次元多層光メモリの記録/再生のシステム構成(a)と記録媒体の構成断面(b)を示す概略図である。 本発明における複合材料(二光子吸収材料含有)を用いて光造形を行う場合の光造形装置の一例を示す概念図である。 本発明における光導波路の一例を概念的に示す斜視図である。 本発明における光制御素子の一例を示す概略構成図である。 本発明における光制御素子の動作例を示す説明図である。 本発明における光制御素子の一例を示す斜視図である。 本発明における二光子励起蛍光顕微鏡の基本構成を示す概略図である。 本発明の実施例における蛍光光量の評価に用いた測定システムを示す概略図である。 本発明の実施例30において得られたスペーサー層(ZnS・SiO2)の膜厚と蛍光強度の関係を示す図である。
符号の説明
(図2の符号)
L 記録用レーザー光
1 基板A
2 基板B(反射層)
3 記録ビット
6 ピンホール
7 検出器
10 三次元記録媒体
11 記録層
12 中間層
13 記録用レーザー光源
14 読み出し用レーザー光源(再生用レーザー光源)
(図3の符号)
21 光源
22 可動形式のミラー
23 集光レンズ
24 複合材料(二光子吸収材料含有)
25 可動ステージ(ガルバノミラー及びZステージ)
(図4の符号)
40 光導波路
41 光ファイバ、
42 光ファイバアレイ
(図5の符号)
60 光学素子(光制御素子)
61 保護層
62 制御光
63 信号光
64 カラーフィルター
65 検出器
(図8の符号)
51 光源
52 ダイクロイックミラー
53 集光装置
54 試料
55 可動または固定ステージ
56 光検出器

Claims (3)

  1. 光照射によりプラズモン増強場を発生させる金属微粒子を含む金属微粒子含有体と、多光子吸収材料を含む多光子吸収材料含有体とが、所望の多光子吸収強度に制御されるように調整された厚さを有する1つのスペーサ膜を介して一体に複合構成され、
    前記金属微粒子含有体、前記多光子吸収材料含有体及び前記スペーサ膜がそれぞれ層構造からなり、金属微粒子含有層と多光子吸収材料含有層が前記スペーサ膜を介して積層され、
    前記スペーサ膜が、ZnS・SiO2を含み、且つ、膜厚が多光子吸収強度を増強するように選ばれ、
    前記金属微粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする複合部材。
  2. 前記多光子吸収材料が、下記構造式(1)または下記構造式(2)で表される二光子吸収材料であることを特徴とする請求項1に記載の複合部材。
  3. 請求項1または2に記載の複合材料を用いたことを特徴とする光造形システム。
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