JP5117679B2 - 多光子吸収材料を用いた色素材料、色素材料の製造方法、多光子吸収反応材料、多光子吸収反応材料の反応生成物、多光子吸収反応助剤、および色素溶液 - Google Patents
多光子吸収材料を用いた色素材料、色素材料の製造方法、多光子吸収反応材料、多光子吸収反応材料の反応生成物、多光子吸収反応助剤、および色素溶液 Download PDFInfo
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Description
すなわち、物質内部の、任意の所望の位置でのみ反応を起こすことが可能であり、更には、集光スポット中心部の光強度の高い部分でのみ光反応を起こすことが可能であるため、回折限界を超える加工記録への期待が高まっている。
このような問題を有していることから、多光子吸収反応の優れた特徴を活かしたアプリケーションの普及を図るためには、前記大型のパルスレーザを必要としない、例えば半導体レーザにより反応を誘起することが可能な高感度な多光子吸収材料の開発が不可欠であると言える。
例えば、表面プラズモン顕微鏡を適用する場合、高屈折率媒体上に成膜された金属薄膜上に配置された極薄い膜(表面プラズモン増強場は、表面から約100nm以下の限られた領域にのみ発生する)を試料として用いる技術についての提案がなされている(例えば、下記特許文献1参照。)。
また、観察に適用する波長を選択するための技術として、球形コアセル構造による共鳴波長のチューニングについての技術が知られている(例えば、下記特許文献2参照。)。
更には、マイクロキャビティー中に配置された凝集ナノ粒子により、多光子課程を含む高感度観測法についての開示もなされている(例えば、下記特許文献3参照。)。
金ナノロッドは、アスペクト比を変えることにより、共鳴波長を変えられるという特性を有しており、540nm程度から近赤外(1100nm程度)までをカバーすることのできる材料である。
この金ナノロッドの製造方法の一例として、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって作製する方法が開示されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
(1):金属表面に発生する表面プラズモン増強場を発生させる金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子と、多光子吸収材料とが、混合されており、前記微粒子の最表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする色素材料である。
(2):前記絶縁層が、無機材料からなることを特徴とする上記(1)に記載の色素材料である。
(3):前記絶縁層が、SiO 2 からなることを特徴とする上記(2)に記載の色素材料である。
(4):前記微粒子の表面に前記多光子吸収材料を析出させることにより、前記微粒子を被覆している絶縁層と多光子吸収材料とからなる多層構造を有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の色素材料である。
(5):前記絶縁層と多光子吸収材料とからなる多層構造を有する微粒子の表面に、更に絶縁層を形成したことを特徴とする上記(4)に記載の色素材料である。
(6):水及び油性溶媒と界面活性剤により形成したミセルを含み、前記微粒子がミセルの油性溶媒に含まれ、前記多光子吸収材料は非水溶性であり、且つ、前記ミセル中の前記微粒子の近傍に分散されていることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の色素材料である。
(7):前記金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子が異方性を持つことを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の色素材料である。
(8):前記金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子が金ナノロッドからなることを特徴とする上記(7)に記載の色素材料である。
(9):上記(3)に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、水、及び油性溶媒に界面活性剤を加えることによりミセルを形成し、当該ミセルにより、前記金属の微粒子を還元生成する工程後、前記金属の微粒子の均一分散状態において、シランカップリング剤を作用させ、コアセル構造を有する金属の微粒子を生成することを特徴とする色素材料の製造方法である。
(10):上記(6)に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、前記金属の微粒子の均一分散状態において、有機溶媒に溶解した非水溶性の多光子吸収材料を添加し、前記ミセル中の金属の微粒子近傍に多光子吸収材料を分散せしめるようにすることを特徴とする色素材料の製造方法である。
(11):上記(4)に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、前記金属の微粒子の均一分散状態における分散溶液において、前記油性溶媒を蒸発させ、前記金属の微粒子の表面に、多光子吸収材料を析出させ、金属の微粒子と多光子吸収材料との多層構造とすることを特徴とする色素材料の製造方法である。
(12):前記金属の微粒子と多光子吸収材料との多層構造において、表面にシランカップリング剤によるコーティングを行うことを特徴とする上記(11)に記載の色素材料の製造方法である。
(13):上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応材料である。
(14):上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応材料の反応生成物である。
(15):上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応助剤である。
(16):少なくとも上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の色素材料と、溶媒とにより構成されることを特徴とする色素溶液である。
また、金ナノロッドを適用することにより、アスペクト比の変更で可視光領域から近赤外領域までを容易にカバーすることが可能となり、幅広い多光子色素の吸収波長に合わせたさらなる効率的な増感が可能となった。
また、直接反応させるだけでなく、反応助剤として用いることにより、様々な反応を多光子過程により励起することが可能となった。
以下、本発明の多光子吸収材料の適用形態について具体的に説明する。
近年、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。
また、HDTV(High Definition Television)を考慮すれば、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。
更に、コンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
DVD±R等の従来公知の2次元光記録媒体は、記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度であり、今後の大容量化への要望に充分に応えることができないことが懸念されている。
三次元光記録媒体とは、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十〜何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。
二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体は、物理原理に基づいて何十〜何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であり、より高密度記録化が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体である。
さらに、これらの技術において、用いているフォトクロミック化合物は、可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に実用上の問題点を有しており、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えなかった。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レートを達成するために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
さらに、それらを用いた多(二)光子吸収三次元光記録材料、及び多(二)光子吸収三次元光記録方法及び再生方法を提供する。
上記基板としては、任意の天然、又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シート、又は板形態のものをいずれも適用できる。
好適なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等が挙げられる。
また、予めトラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものも適用できる。
なお、溶媒の蒸発除去は、加熱法、減圧法のいずれによって行ってもよい。
保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、またはセロファンフィルム等のプラスチック製のフィルム、または板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。
また、ガラス板を貼合わせてもよい。
また、保護層と感光膜の間、および/または基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。
更に、感光膜間の保護層(中間層)にもあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、本発明の三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、多(二)光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であってもよい。
三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図1(a)に示し、三次元記録媒体の概略断面図を図1(b)に示す。
記録用レーザ光源51(例えば、ハイパワーのパルスレーザ光源)から、記録レーザ光を、対物レンズ55により、三次元記録媒体10にフォーカスする。
フォーカスポイントでは、2光子吸収により記録が行われるが、フォーカスポイント以外では、先に述べたように光の照射パワーが低く、二乗効果により記録は行われない。即ち、選択的な記録が可能となる。
次に、再生方法であるが、再生用レーザ光源52(記録光ほどハイパワーではなく、半導体レーザも利用可能)からのレーザ光を、三次元媒体10にフォーカスする。
各層より信号光が発生するが、ピンホール53と検出器54より構成される点検出器で信号光を検出することにより、特定の層からの信号を共焦点顕微鏡の原理を用いて選択的に検出する。
上述したような装置構成及び操作により、三次元記録再生は機能する。
上述したような構造であれば、従来公知のCD、DVDと同様のディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。
記録ビット3の形成時には、単一ビーム(図中、レーザ光L)を用い、フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用する。
また再生時には、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いてもよい。
記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
二光子吸収材料を適用した二光子光造形法に適用する装置の概略図を図2に示す。
以下においては、近赤外パルスレーザ光源21からレーザ光を、ミラースキャナー25を通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂29中に集光させレーザスポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させて任意の三次元構造を形成する二光子マイクロ光造形方法を行う。
しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。
このように、パルスレーザ光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイント的に樹脂を硬化させることが可能となる。
集光点はZステージ26と、ガルバノミラーによって光硬化樹脂液29内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液29内において目的とする三次元加工物を自在に形成することができる。
(a)回折限界をこえる加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(b)超高速造形:二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
(c)三次元加工:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(d)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
(e)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
主成分は、オリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。
オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。
更に、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。
レーザ光を照射すると、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合が開始される。
その後、これらの間で連鎖的重合反応を起こし、三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
特に、積層式立体造形においては、(1)反応性が良好であること、(2)硬化時の堆積収縮が小さいこと、(3)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。
これらの特性は、本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。
その具体的な例としては、アクリレート系及びエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
これは、感光性高分子膜の表面に、パルスレーザ光を、マスクを介さずに干渉露光させるものである。
前記パルスレーザ光としては、前記感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域の光であることが重要とされている。
従って、パルスレーザ光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類等に応じて、その波長領域を適宜選択することができる。
特に、光源から発光されるパルスレーザ光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザ光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
具体的には、光源から発光されるパルスレーザ光を集光して、集光されたパルスレーザ光を照射すると、多光子の吸収(例えば二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これにより光源から発光されるパルスレーザ光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザ光が照射されたことになる。
このように、干渉露光するパルスレーザ光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザ光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。
例えば、本発明に係る二光子吸収材料を光増感材料とし、紫外線硬化樹脂等に分散し、感光物固体とし、この感光物固体の二光子吸収能を利用して焦点スポットのみが硬化する特性を利用した超精密三次元造形物を得ることが可能となる。
従来の二光子吸収材料(二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料)に比較し、二光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザ光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。
先ず、多(二)光子励起レーザ走査顕微鏡とは、近赤外パルスレーザを標本面上に集光し走査させて、そこでの多(二)光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。以下、具体例として、二光子励起レーザ走査顕微鏡について説明する。
この二光子励起レーザ走査顕微鏡40は、近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザ光源41と、レーザ光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系42と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系43と、集光された上記変換光束を標本面45上に投影する対物レンズ系44と、ダイクロイックミラー46と、光検出器47を備えている。
標本面45をレーザ光で走査し、各場所での蛍光強度を光検出器47で検出し、得られた位置情報に基づいて、所定のコンピュータでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。
走査機構としては、例えば、ガルバノミラー等の可動ミラーを用いてレーザ光を走査しても良く、あるいはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させても良い。
加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
これは、走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザ照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。
このような構成とすることにより、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。
このような二光子光学素子は、上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。
本発明の多(二)光子吸収材料は、従来の二光子吸収蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収特性を発揮する。
従って本発明材料は高感度であるため、照射光の強度を過度に高くすることが必要なくなり、材料の劣化、破壊を抑制でき、耐久性の向上が図られ、更には材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができた。
本発明の金ナノロッドは、水、及び油性溶媒に界面活性剤を加えることによりミセルを形成し、当該ミセルにより、金ナノロッドを還元生成する工程後、前記金ナノロッドの均一分散状態において、シランカップリング剤を作用させて作製されるものとし、コアセル構造を有しているものとする。
これらの微粒子は、可視から近赤外領域に吸収を持つ粒子が再現性良く得られる。
また、後述のように、微粒子をミセル中で還元生成し、水と混合する油性溶媒に溶解した色素を加えることで、安定した微粒子分散色素溶液を得ている。
個々の工程について、技術思想を説明する。
本発明においては、水および油性溶媒に界面活性剤を加えて形成されたミセル中で、金ナノロッドを還元生成し、金ナノロッドを得るものとし、金ナノロッド生成後の均一分散状態においてシランカップリング剤を作用させてコアセル構造とする点に特徴を有している。
このうち、金属等、導電性部質の極近傍にある分子においては、光吸収により得たエネルギーが、金属に受容されることにより緩和される失活課程が顕著となる。
この失活課程の確率を下げるため、本発明においては、絶縁層として、SiO2膜を形成するべく、シランカップリング剤を用いることとした。
なお、ここで述べる金ナノロッドの生成後の均一分散状態とは、工程上の生成直後のことだけではなく、金ナノロッドの単離後に、本手法を用いる目的でミセル構造により、広く一般のナノ粒子が分離された状態を作り出した場合も、実質的に同じであることは明らかである。
この工程は、金ナノロッドのコアセル構造を作製した後であるので、金ナノロッドはミセル構造の油性溶媒側にあり、またSiO2の膜で覆われた状態となっている。
有機溶媒に溶解した非水溶性色素を添加すると、ミセル構造の中に取り込まれることで分散し、結果として金ナノロッドの近傍のみに色素が分散した構造を容易に構成することができる。
なお、ここで述べる色素とは、金ナノロッドのプラズモン増強場に光反応を示すものを示しており、染料や顔料といった色材のみを指すものではない。
従って、この定義に従えば、重合開始剤のような、光反応を示すものも含むものとする。
また、重合開始剤により重合するモノマーやオリゴマー等が同時に含まれていても良い。
なお、ここで述べる析出とは、溶媒からの過飽和による析出のみを指すものではない。
即ち、ナノロッドを取り囲む油性溶媒が蒸発することにより、ミセル内部の物質が液相から固相に変わることを広く含むものとする。
従って、油性溶媒中にバインダー樹脂等が含まれている場合等においても、溶媒の蒸発により、ナノロッドを取り囲む樹脂皮膜中に色素が分散しているような構成も本発明の構成に含まれるものとする。
ここで、シランカップリング剤を作用させる際には、任意の溶媒で希釈したシランカップリング剤を直接作用させる以外にも、油性溶媒を添加することにより再度ミセル構造を形成せしめ、油性溶媒に希釈したシランカップリング剤を作用させるようにしてもよい。
なお、実施例2および実施例4は、本発明の範囲に属しない参考例に相当する試験例である。
以下の工程においては、光還元法を用いた金ナノロッドを作製し、さらにシランカップリング剤によって金ナノロッド表面へSiO2膜を形成する。
更に、塩化金酸溶液:0.24mol/lを2mlを加えた後、アスコルビン酸水溶液:0.1mol/lを0.3ml加え、塩化金酸溶液の色が消えたことを確認する。
その後、直径100mmのシャーレーに混合用液を移し254nmの紫外線を低圧水銀ランプ(アズワン社製、SUV-16)により照射した。
20分間照射することにより、吸収の中心波長が830nmの金ナノロッド分散液が得られた。
この工程により、SiO2薄膜の形成された金ナノロッドが得られた。
上記実施例1と同様の手法により金ナノロッド分散液を得た。
SiO2薄膜を形成する工程を経ることなく、前記金ナノロッド分散液2mlを取り分け、実施例1と同一の、前記式(1)に示す2光子吸収蛍光色素のアセトン飽和溶液:0.5mlを加えて攪拌し、SiO2薄膜が無い金ナノロッドと色素の混合溶液を得た。
下記の工程においては、光還元法を用いた球形金微粒子を作製し、さらにシランカップリング剤によって球形金微粒子表面へSiO2薄膜を形成する。
原料溶液として、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液:0.18mol/lを70ml、シクロヘキサン:0.36ml、アセトン:1mlを加えた後、マグネットスターラーにより攪拌した。硝酸銀水溶液は実施例1および2と異なり、球形粒子を得ようとしているので加えなかった。
更に、塩化金酸溶液:0.24mol/lを1mlを加えた後、アスコルビン酸水溶液:0.1mol/lを0.1.5ml加え、塩化金酸溶液の色が消えたことを確認する。
その後、直径100mmのシャーレーに混合用液を移し254nmの紫外線を低圧水銀ランプ(アズワン社製、SUV-16)により照射した。
20分間照射することにより、吸収の中心波長が530nmの球形金微粒子がミセル中に分散した分散液が得られた。
上記のようにして得られた金ナノロッド分散液に、(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシランのエタノール溶液5vol%を1ml加え、80℃で2時間加熱処理し、球形金微粒子金表面にSiO2薄膜を形成した。
上述した工程により、SiO2薄膜が形成された球形金微粒子が得られた。
上述した実施例3と同様の手法により、球形金微粒子分散液を作製した。
SiO2薄膜を形成する工程を経ずに、前記金ナノロッド分散液2mlを取り分け、実施例3と同一の上記式(2)に示す2光子吸収蛍光色素のdimethyl sulphoxid(DMSO)溶液3mmol/l:0.5mlを加え攪拌し、SiO2薄膜の無い球形金微粒子と色素の混合溶液が作製された。
ナノロッドの出発原料溶液、即ち、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液:0.18mol/lを70ml、シクロヘキサン:0.36ml、アセトン:1mlの混合溶液を2ml取り、前記式(1)、(2)の2種類の2光子吸収蛍光色素溶液0.5mlをそれぞれ加え攪拌した溶液2種を得た。
上述した実施例1、2と同様に上記式(1)に示した色素を混合した溶液を〔比較例1〕とし、実施例3、4と同様に上記式(2)に示す色素を混合した溶液を〔比較例2〕とした。
これらの溶液は、ミセル中の油性溶媒中に、それぞれの2光子吸収蛍光色素が局在して分散した溶液となっている。
なお、前記2種の色素は水には不溶である。
赤外線フェムト秒レーザー、スペクトラフィジックス社製MaiTaiを用いて、上記〔実施例1〕と〔比較例1〕における、各々の混合溶液中のそれぞれ集光点を結び、2光子励起の蛍光を測定した。
励起光強度と2光子蛍光強度との相関関係について下記図4に示す。
なお、光学セルから約8mm内側の点に焦点を結んでいる。
それぞれの溶液で励起光強度が2倍となると、蛍光強度が2倍となる2乗効果が観測され、2光子吸収蛍光であることが確認された。
〔実施例1〕の金ナノロッドを含有する色素溶液においては、測定の結果、金ナノロッドを含有しない〔比較例2〕に比して、約8倍の蛍光強度が観測された。
これにより、SiO2薄膜付き金ナノロッドによるバルク溶液の2光子蛍光の増強効果が確認された。
上述したような測定と同様の手法により、上記〔比較例1〕との比較測定を〔実施例2〕のSiO2薄膜の無い金ナノロッド、色素混合溶液について行った。
測定結果を図5に示す。
〔実施例2〕で作製した溶液においても、励起光強度が2倍となると、蛍光強度が2倍となる2乗効果が観測され、2光子吸収蛍光であることが確認された。〔比較例1〕に比して、約4倍の蛍光強度が観測された。これにより、SiO2薄膜の無い金ナノロッドによるバルク溶液の2光子蛍光の増強効果が確認された。
光パラメトリック増幅器、スペクトラフィジックス社製、OPA-800から出力される波長560nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数1kHzのフェムト秒パルスを用い、測定を行った。
光パラメトリック増幅器のポンピング光として、スペクトラフィジックス社製フェムト秒レーザー、Tsunami、同社製 Nd:YLFレーザEvolutionにより駆動される同社製 Spitfire 増幅器の出力を用いた。
光学セルの配置等は、上記測定1、2と同様とした。
前記〔実施例3〕と〔比較例2〕の測定結果を図6に示す。
これによると、それぞれの溶液で励起光強度が2倍となると、蛍光強度が2倍となる2乗効果が観測され、2光子吸収蛍光であることが確認された。
〔実施例3〕の球形金微粒子を含有する色素溶液においては、測定の結果、球形金微粒子を含有しない〔比較例2〕に比して、約2倍の蛍光強度が観測された。
これにより、SiO2薄膜の形成された球形金微粒子によるバルク溶液の2光子蛍光の増強効果が確認された。
同様に〔比較例2〕との比較測定を、〔実施例4〕のSiO2薄膜の無い球形金微粒子、色素混合溶液について行った。
測定結果を図7に示す。
〔実施例4〕の溶液においても、励起光強度が2倍となると、蛍光強度が2倍となる2乗効果が観測され、2光子吸収蛍光であることが確認された。
〔比較例2〕に比して、約1.5倍の蛍光強度が観測された。
これにより、SiO2薄膜の無い球形金微粒子によるバルク溶液の2光子蛍光の増強効果が確認された。
上記〔実施例1〕と〔比較例1〕の、それぞれの溶液の吸光スペクトルについて測定した。
測定結果を図8に示す。
図8に示すように、〔実施例1〕の金ナノロッドを含有する色素溶液においては、金ナノロッドを含有しない〔比較例1〕との比較から、色素の吸収に加え、金ナノロッドによる吸収が800nm付近に存在し、波長780nmの2光子励起用光源の照射光を効率的に吸収・増強し、2光子吸収反応に結びつけたことが推察される。
本実施例は本発明の思想によるその他の構成を制限するものではない。
2 基板(反射膜)
3 記録ビット
10 三次元記録媒体
11 記録層
12 中間層
21 光源
23 シャッタ
24 NDフィルター
25 ミラースキャナー
26 Zステージ
27 レンズ
28 コンピュータ
29 光硬化性樹脂液
30 光造形物
40 二光子励起レーザ走査顕微鏡
41 レーザ光源
42 光束変換光学系
43 走査光学系
44 対物レンズ系
45 標本面
46 ダイクロイックミラー
47 光検出器
51 記録用レーザ光源
52 再生用レーザ光源
53 ピンホール
54 検出器
55 対物レンズ
Claims (16)
- 金属表面に発生する表面プラズモン増強場を発生させる金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子と、多光子吸収材料とが、混合されており、前記微粒子の最表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする色素材料。
- 前記絶縁層が、無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の色素材料。
- 前記絶縁層が、SiO 2 からなることを特徴とする請求項2に記載の色素材料。
- 前記微粒子の表面に前記多光子吸収材料を析出させることにより、前記微粒子を被覆している絶縁層と多光子吸収材料とからなる多層構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の色素材料。
- 前記絶縁層と多光子吸収材料とからなる多層構造を有する微粒子の表面に、更に絶縁層を形成したことを特徴とする請求項4に記載の色素材料。
- 水及び油性溶媒と界面活性剤により形成したミセルを含み、前記微粒子がミセルの油性溶媒に含まれ、
前記多光子吸収材料は非水溶性であり、且つ、前記ミセル中の前記微粒子の近傍に分散されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の色素材料。 - 前記金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子が異方性を持つことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の色素材料。
- 前記金属の微粒子、若しくは金属で少なくとも一部を被覆された微粒子が金ナノロッドからなることを特徴とする請求項7に記載の色素材料。
- 請求項3に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、
水、及び油性溶媒に界面活性剤を加えることによりミセルを形成し、当該ミセルにより、前記金属の微粒子を還元生成する工程後、
前記金属の微粒子の均一分散状態において、シランカップリング剤を作用させ、コアセル構造を有する金属の微粒子を生成することを特徴とする色素材料の製造方法。 - 請求項6に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、
前記金属の微粒子の均一分散状態において、有機溶媒に溶解した非水溶性の多光子吸収材料を添加し、前記ミセル中の金属の微粒子近傍に多光子吸収材料を分散せしめるようにすることを特徴とする色素材料の製造方法。 - 請求項4に記載の色素材料を製造する色素材料の製造方法であって、
前記金属の微粒子の均一分散状態における分散溶液において、前記油性溶媒を蒸発させ、前記金属の微粒子の表面に、多光子吸収材料を析出させ、金属の微粒子と多光子吸収材料との多層構造とすることを特徴とする色素材料の製造方法。 - 前記金属の微粒子と多光子吸収材料との多層構造において、表面にシランカップリング剤によるコーティングを行うことを特徴とする請求項11に記載の色素材料の製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応材料。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応材料の反応生成物。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の色素材料を用いたことを特徴とする多光子吸収反応助剤。
- 少なくとも請求項1乃至8のいずれかに記載の色素材料と、溶媒とにより構成されることを特徴とする色素溶液。
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