JP2010197746A - 多光子吸収材料および反応助剤並びにそれらの製造方法 - Google Patents

多光子吸収材料および反応助剤並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラズモン増強場を発生する複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料、および多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤とそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により金ナノロッド表面に銀を異方成長させて複合金属ナノ粒子とし、該異方成長した銀被覆微粒子の持つ、より強い表面プラズモン増強場を利用して、高感度に多光子吸収材料を増感するか、あるいは多光子吸収材料の反応を助長する。このような複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料あるいは反応助剤を、例えば、三次元多層光メモリ、光造形用材料、二光子蛍光顕微鏡へ応用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、高感度かつ波長特性可変な多光子吸収材料および反応助剤に関し、詳しくは、複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料および多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子(形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆されたナノ粒子)からなる反応助剤、並びにそれらの製造方法に関する。
多光子吸収過程の一つである二光子吸収反応を用いると、二光子吸収反応の特徴である励起光強度の二乗に比例した吸収により反応が引き起こされるため、集光された光を用いることにより、集光点でのみ反応を起こすことが可能であることが知られている。すなわち、物質内部の、任意の所望の位置でのみ反応を起こすことが可能であり、更には、集光スポット中心部の光強度の高い部分でのみ光反応を起こすことが可能であるため、回折限界を超える記録への期待が高まっている。
しかしながら、二光子吸収反応に代表される多光子吸収反応の吸収断面積は極めて小さく、フェムト秒レーザ等のピーク出力の著しく高い、高価かつ大型のパルスレーザ光源での励起を行うことが必須の条件とされるという問題を有している。このような問題を有していることから、多光子吸収反応の優れた特徴を活かしたアプリケーションの普及を図るためには、前記大型のパルスレーザを必要としない、例えば、半導体レーザにより反応を誘起することが可能な、高感度な多光子吸収材料の開発が不可欠であると言える。
一方、光反応増強手段、いわゆる光反応を増強・増感する手法として、金属表面に励起される表面プラズモン増強場を用いる方法が知られている。例えば、微量の試料を高感度に検出する表面プラズモン顕微鏡を一例として説明する。
表面プラズモン増強場は、高屈折率媒体上に成膜された金属薄膜上の表面からたかだか数百nm以下の限られた領域にのみ発生する。この金属薄膜表面に極薄い膜試料を配置することで、表面プラズモン増強場により照射された励起光よりも強い光があたったのと同様の効果が得られ、光反応、蛍光の増強が得られることが知られている。
この増感配置法は、高感度な検出は可能であるが、増強場の空間分布は、金属薄膜の形状と励起光での照明可能範囲(金属薄膜を担持する光屈折率媒体の配置と形状に依存)に限られているために、応用は微量の試料を用いた特定の分野(高感度検出法)に限られている。例えば、代表的なプラズモン増強効果をもつ金属薄膜材料として銀を用いることが提案されている(特許文献1参照)。
金属薄膜に対し、金属微粒子により励起されるプラズモン増強場を用いる場合について見ると、金属微粒子表面に励起されるプラズモンは、特許文献1の場合よりも更に広がりが小さい局在プラズモン増強場である。その広がりは金属微粒子の周囲100nm以下の領域に限られている。そのため、粒子表面に吸着した試料を高感度に観測可能な微小プローブとして用いるか、若しくは、局在プラズモン増強場が微小な領域に閉じ込められた伝播しない光であることを利用して金属微粒子を試料近傍で移動することにより得られる信号と位置との関係から観察像を得る微小プローブ顕微鏡として用いられている。
前者(微小プローブ)の場合には、ガラス表面等に付着若しくは配列した金属微粒子表面に存在する試料からの蛍光等を、金属微粒子表面の局在プラズモン増強場により増強、観察している。後者(微小プローブ顕微鏡)の場合は、光の放射圧により微粒子を保持する光ピンセットの原理で微粒子を試料表面でスキャンする等の方法が用いられているが、何れも薄膜表面の分析技術と位置付けられている。
また、観察に用いる波長を選択するために、球形コアセル構造による共鳴波長のチューニングに関する手法が開示されている(特許文献2参照)。しかし、コアとセルの寸法比で共鳴波長が決まるため、特許文献2の手法では、共鳴波長の揃った粒子を再現性良く得ることは難しい。
さらには、複数の微粒子間の局在プラズモン増強場を結びつけることにより増強効果をより顕著とする目的から、凝集ナノ粒子を用いる方法が開示されている(特許文献3参照)。つまり、マイクロキャビティー中に凝集ナノ粒子を配置することにより、多光子課程を含む高感度観測を行っている。しかし、特許文献3の方法では、凝集粒子の凝集塊形状を制御することは難しく、凝集塊の散乱の影響が顕著であることから、マイクロキャビティー中など、微小領域での利用に限られている。
一方で、微小金属球に変わる表面ブラズモン増強場の発生手段として金ナノロッドがある。金ナノロッドは、アスペクト比を変えることによって共鳴波長を変えることができ、540nm程度から近赤外(1100nm程度)までをカバーすることのできる材料である。製造方法の一例として、界面活性剤を含む溶液中での電気化学的反応によって金属ナノロッドを製造することにより、再現性良く、共鳴波長の揃った粒子が得られることが開示されている(特許文献4参照)。
また、金ナノロッドの共鳴波長が揃った微粒子が再現よく得られる性質を利用して、金ナノロッドが発生する表面プラズモン増強場を、二光子吸収材料の増感手法として用いる技術が開示されている(特許文献5参照)。
また、より増強度の大きな表面プラズモン増強場を得るには、金に換えて銀のナノロッドを用いることが考えられる。例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)と硝酸銀の水溶液をマイクロ波加熱し、硝酸銀を熱分解することにより銀ナノロッドを得ることが報告されている(非特許文献1参照)。しかし、非特許文献1では微細な銀ナノロッドが得られてはいるが、球状の銀ナノ粒子の生成は抑制されてはおらず、共鳴波長のそろった銀ナノロッドを得るには至っていない。
また、ポリマー中に硝酸銀を分散し、一軸延伸後に熱分解により銀ナノロッドを析出させることが報告されている(非特許文献2参照)。しかし、非特許文献2の手法では一軸延伸により得られる異方性を持った細孔中に銀ナノロッドが析出するため、得られるロッドは大きく、生産性は低い。
さらには、金ナノロッドの成長後、成長溶液中に含まれる余分な界面活性剤を遠心分離で取り除き、硝酸銀を添加し、水酸化ナトリウムでアルカリ性として還元させることにより、金ナノロッドの表面に銀を異方成長させる技術が報告されている(非特許文献3参照)。
非特許文献3の方法によれば、金ナノロッドの表面に銀を異方成長させることはできるが、界面活性剤を分離するために遠心分離の工程が必要であること、硝酸銀はアルカリ性では、水酸化銀として沈殿しやすく、pHのコントロールが難しいことなど、未だ問題も多い。
プラズモン増強場を持つ金属ナノロッドを含む二光子吸収材料あるいは反応助剤を含む材料を用いることにより、二光子吸収反応の反応閾値を低減したり、あるいは集光点で反応を起こすことが可能であるため、例えば、光記録材料(三次元記録媒体)、光造形用材料、二光子吸収蛍光材料としての応用などが注目されている。
例えば、金ナノロッドと二光子吸収材料を含む三次元光記録媒体(三次元多層光メモリ)の応用が期待される分野について見てみると、最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High DefinitionTelevision)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価・簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
上記のような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。
三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。
二光子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍もの記録、いわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能である。このことから、三次元光記録媒体は、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
例えば、二光子吸収材料を用いた三次元元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(例えば、特許文献6、7参照)、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(例えば、特許文献8、9参照)等が提案されている。
しかし、上記特許文献6、7ではいずれも具体的な二光子吸収材料の記載はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例でも、二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。
さらに、上記特許文献8、9に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はない。
また、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、および再生装置、読み出し方法等が提案されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない(例えば、特許文献10、11参照)。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、異方成長した銀被覆微粒子の持つ、より強い表面プラズモン増強場を利用して、高感度に多光子吸収材料を増感すること、および多光子吸収材料の反応を助長することが可能な機能性材料(プラズモン増強場を発生する複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料、および多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤)を提供するとともに、異方成長した銀被覆微粒子を再現性良く、簡略な工程により低コストに提供することを目的としている。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔12〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕:上記課題は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料において、
前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とする多光子吸収材料により解決される。
形状異方性の付与に最適な製法と、プラズモン増強機能の発現に最適な製法と材質が選択可能で、再現性良く幅広い金属の高アスペクト比ナノ粒子を得ることが出来る。即ち、幅広い波長域において利用可能な、近接場発生源が得られる。また、これを用いた高感度な多光子吸収材料および反応助剤が得られ、多光子過程を活かした様々な応用が可能となる。
〔2〕:上記〔1〕に記載の多光子吸収材料において、前記異方成長してなる銀の異方性が、前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致していることを特徴とする。
請求項1の発明の作用効果に加え、光反応を誘起する励起光の散乱を抑えながらより大きな増強度が得られる。従って、さらに効率的な光反応課程を提供することが可能となる
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の多光子吸収材料において、前記形状異方性を持つコア粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする。
容易に微細かつアスペクト比の揃った粒子が得られるという金ナノロッドの特徴により、大きな増強度を持つプラズモン増強場が安価に大量生産可能となる。また、この増強場を用いることで、高感度な多光子吸収過程を安価に提供することが可能となる。
〔4〕:上記〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の多光子吸収材料において、前記複合金属ナノ粒子の表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする。
絶縁層により多光子吸収材料と複合粒子が隔てられることにより、多光子吸収材料に吸収されたエネルギーが失活されることなく、反応に用いられ、高収率な反応系となる。従って、効率的な光反応課程を、より幅広い反応条件・応用製品に対して提供することが可能となる。
〔5〕:上記課題は、多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する反応助剤において、
前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、
前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とする反応助剤により解決される。
〔6〕:上記〔5〕に記載の反応助剤において、前記異方成長してなる銀の異方性が、前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致していることを特徴とする。
〔7〕:上記〔5〕または〔6〕に記載の反応助剤において、前記形状異方性を持つコア粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする。
〔8〕:上記〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載の反応助剤において、前記複合金属ナノ粒子の表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする。
〔9〕:上記課題は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料における該複合金属ナノ粒子の製造方法であって、
少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とする複合金属ナノ粒子の製造方法により解決される。
〔10〕:上記課題は、多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤における該反応助剤の製造方法であって、
前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、
少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とする反応助剤の製造方法により解決される。
〔11〕:上記課題は、〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の多光子吸収材料において、前記多光子吸収材料に含有される複合金属ナノ粒子が、〔9〕に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする多光子吸収材料により解決される。
〔12〕:上記課題は、〔5〕乃至〔8〕のいずれかに記載の反応助剤において、前記反応助剤をなす複合金属ナノ粒子が、〔10〕に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする反応助剤により解決される。
本発明によれば、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子の持つより強い表面プラズモン増強場を利用して、高感度に多光子吸収材料(例えば、二光子吸収材料)を増感したり、多光子吸収材料(例えば、二光子吸収材料)の反応を助長したりすることができる。すなわち、従来に比較して、多光子吸収感度(例えば、二光子吸収感度)が高くなるため、高速で増感したり反応を助長することが可能になる。
また、多光子吸収材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も抑制することができる。励起光源として小型で安価なレーザ光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。応用分野として、例えば、三次元多層光メモリへの応用、光造形用材料への応用、二光子蛍光顕微鏡への応用などが挙げられる。
本発明における、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料における該複合金属ナノ粒子の製造方法、または多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤における該反応助剤(複合金属ナノ粒子)の製造方法によれば、高濃度の界面活性剤下に分散された金ナノロッド成長溶液中で、そのまま銀を金ナノロッドの特定の結晶面上に選択的に成長させることができ、半値幅の狭いプラズモン増強場が容易に、安定して得られる。
このような複合金属ナノ粒子は、励起光の散乱の影響を抑えたカップリング効率が高い局在プラズモン増強場を発現可能とするとともに、幅広い波長域に共鳴波長をチューニングすることができる光反応の増強手段としての機能を発揮することができる。本発明になる複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料を組み合せて用いれば、高感度な光反応過程を要する様々な反応の実現を安価な手段により解決することが可能となる。
本発明の複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料の三次元記録媒体への応用を説明するためのシステム概略図(a)および記録媒体の概略断面図(b)である。 本発明の複合金属ナノ粒子(反応助剤)を含有する多光子吸収材料の光造形用材料への応用を説明するための光造形システムを示す概念図である。 本発明の複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料の二光子励起レーザ走査顕微鏡(二光子蛍光顕微鏡)への応用を説明するための概念図である。 実施例1の銀異方性成長時における金ナノロッド分散液の吸光度変化を示す図である。 実施例1で作成した異方性銀被覆金ナノロッドの透過電子顕微鏡観察写真である。 実施例2の銀異方性成長時における金ナノロッド分散液の吸光度変化を示す図である。
前述のように本発明における多光子吸収材料は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料において、
前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とするものである(本発明〔1〕)。
また、本発明における反応助剤は、多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する反応助剤において、
前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、
前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とするものである(本発明〔5〕)。
すなわち、本発明においては、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料との組み合せによって本発明の課題が解決される。
以下、本発明の複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料、および多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤、のそれぞれを構成する複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料について併せて説明する。
前記本発明〔1〕および〔5〕では、形状異方性を持つコア粒子(例えば、金)の表面に銀を異方成長、すなわち、コア粒子の特定結晶面に特異に析出させる。
金属ナノ粒子の周りには、粒子の極近傍に局在した局在プラズモン増強場が発生する。その局在プラズモン増強場の増強度は、粒子の形状と金属の種類に依存する。例えば、増強効果の大きなナノ粒子として知られているものに、棒状の微粒子がある。棒状の金属微粒子の最も大きな増強度を示す波長は金属種とアスペクト比により決まる共鳴波長である。即ち、球形状の微粒子に始まって、アスペクト比が大きいほど長波長側に共鳴波長はシフトすると共に、球状の微粒子に比較し大きな増強度を示す。従って、所望の波長において高い増強効果を示す金属微粒子を得るには、材料金属とアスペクト比の選択が重要である。
このような目的に従来は、アスペクト比や粒子の大きさが揃い、かつ、高い増強度を示す材料として金ナノロッドが用いられてきた。また、比較的容易に所望のアスペクト比を選択的に得ることが可能なナノ粒子を、結晶成長の核として結晶成長を行うことで、再現性良く幅広い金属の高アスペクト比ナノ粒子を得ることを目的として、異種金属で被覆する(等方的な成長・析出)ことが検討されてきた。
しかし、被覆金属のプラズモン吸収が支配的になるには被覆金属の膜厚が厚い領域に限られ、コア粒子に比較し、可視域での散乱の大きな粒子となっていた。
これに対し、コア粒子の特定結晶面に特異に銀を析出させる(異方成長)ことにより、散乱の影響を抑制することができる。
本発明では、このような粒子を多光子吸収材料と混合することにより、等方的に析出した複合ナノ粒子による増感に比較し大きな多光子吸収過程の増感効果が得られることが明らかとなった。
尚、ここで述べる異方成長とは、コア粒子の特定結晶面に特異に銀を析出せせることを指すが、一面のみである必要は無く、また、特異に析出させた銀部位の効果を妨げない範囲であれば他の面にも薄く銀が析出していても、本構成の中に含むものとする。
本発明においては、形状異方性の付与に最適な製法と、プラズモン増強機能の発現に最適な製法と材質が選択可能であり、再現性良く幅広い金属の高アスペクト比ナノ粒子を得ることができる。即ち、幅広い波長域において利用可能な、近接場発生源が得られる。また、これを用いた高感度な多光子吸収材料および反応助剤が得られ、多光子過程を活かした様々な応用が可能となる。
前記〔1〕に記載の多光子吸収材料、または前記〔5〕に記載の反応助剤において、前記異方成長してなる銀の異方性が、前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致していることが好ましい。
すなわち、前記本発明〔1〕および〔5〕では、形状異方性を持つコア粒子(例えば、金)の表面(特定結晶面)に銀を特異に析出させ(異方成長)るものであるが、更に望ましくは、コア粒子の異方性の方位即ち長手方向に銀も同様に析出することが望ましい。
典型的なものとしては、コア粒子の特定結晶面にロッド状の銀が析出することを指している。但し、完全な棒状のみを指すのではなく、プラズモンの共鳴が起こる特定の方位(異方性)を持つ粒子であることが重要である。
銀の異方性が前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致することにより、前記〔1〕、〔5〕で示した発明の作用効果に加え、光反応を誘起する励起光の散乱を抑えながらより大きな増強度が得られる。従って、さらに効率的な光反応課程を提供することが可能となる。
また、前記〔1〕に記載の多光子吸収材料、または前記〔5〕に記載の反応助剤において、前記形状異方性を持つコア粒子が、金ナノロッドであることが好ましい。
形状異方性を持つコア粒子として、金ナノロッドを用いることにより、アスペクト比のコントロールが容易で、かつ粒子形の揃った異方性超微粒子が得られる。これによって、例えば、所望の波長において高い増強効果を発現させることができる。すなわち、容易に微細かつアスペクト比の揃った粒子が得られるという金ナノロッドの特徴により、大きな増強度を持つプラズモン増強場が安価に大量生産可能となる。また、この増強場を用いることで、高感度な多光子吸収過程を安価に提供することが可能となる。
また、前記〔1〕に記載の多光子吸収材料、または前記〔5〕に記載の反応助剤において、前記複合金属ナノ粒子の表面が、絶縁層により被覆されていることが好ましい。
複合金属ナノ粒子が絶縁層により被覆されていることで、複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料とが隔てられ、多光子吸収材料に吸収されたエネルギーが失活されることなく反応に利用されるために高収率な反応系となる。従って、効率的な光反応課程を、より幅広い反応条件・応用製品に対して提供することが可能となる。
ここで述べる絶縁層は、例えば、シランカップリング剤の吸着膜のような、比較的薄い膜、場合に拠っては単一分子膜でもよく、また、金属の酸化膜等でも絶縁層として機能するものであればよい。但し、ここで述べる絶縁膜は、完全に絶縁する必要は無く、多光子吸収材料が吸収したエネルギーが複合金属ナノ粒子に吸収されることにより不活性化することを防ぐことが目的であるので、この目的に合っていれば本発明の構成の範囲内とする。
本発明の複合金属ナノ粒子の製造方法について説明する。
前述のように本発明〔9〕における複合金属ナノ粒子の製造方法は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料における該複合金属ナノ粒子の製造方法であって、少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とするものである。
また、本発明〔10〕における反応助剤(複合金属ナノ粒子)の製造方法は、多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤における該反応助剤の製造方法であって、前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とするものである。
本発明においては、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子と多光子吸収材料との組み合せによって本発明の課題が解決される。
すなわち、本発明によれば、高濃度の界面活性剤下に分散された金ナノロッド成長溶液中で、そのまま銀を金ナノロッドの特定の結晶面上に選択的に成長させることができ、また、半値幅の狭いプラズモン増強場が容易に得られる。従って、励起光の散乱の影響を抑えたカップリング効率が高い局在プラズモン増強場という利点と、幅広い波長域に共鳴波長をチューニング可能な光反応の増強手段と言う利点を併せ持っている。このような利点を有することから、複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料、あるいは多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤を用いれば、高感度な光反応過程を有する様々な反応においても、特殊で高価なレーザ照射装置等を必要とすることなく、安価に実現することが可能となる。
以下、本発明の複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料における該複合金属ナノ粒子の製造方法〔9〕、および多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤〔10〕における複合金属ナノ粒子の製造方法について併せて説明する。
本発明〔9〕および〔10〕において、複合金属ナノ粒子は、例えば、金ナノロッド分散液に、銀原料として硝酸銀、還元剤としてアスコルビン酸およびアミン類を添加して調製した成長溶液の還元反応により、金ナノロッド(コア粒子)表面に銀を異方成長して得られる。
金ナノロッドの分散液は、電解法、光還元法、化学還元法等何れの方法で作成したものでもよいが、銀原料として硝酸銀を添加するため、アルカリ性の分散液は予め中和する必要がある。銀原料を投入後、アスコルビン酸とアミン類を混合することにより、反応はゆっくり進む。典型的には数十分〜数時間後、析出反応が終了する。
還元剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ブチルアミン等アミン類が広く使用可能であるが、トリエチルアミンを用いることが望ましい。また、アミノシランやポリエチレンイミンなどアミノ基を持つ化合物の一部に不純物としてアミンを含有するものがあり、これらも適宜用いることが可能である。従って、ここで述べるアミン類とは、意図的に添加するもののほか、比較的少量の添加で反応が起こるため、原料不純物として含有するアミン類も含むものとする。尚、本方法では、特にCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)等分散剤の存在の影響は認められず、成長溶液から直接被覆反応を行うことが可能である。
尚、前記本発明の〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の多光子吸収材料において、前記多光子吸収材料に含有される複合金属ナノ粒子が、前記本発明の〔9〕に記載の製造方法により得られたものであることが望ましい。
また、前記本発明の〔5〕乃至〔8〕のいずれかに記載の反応助剤において、前記反応助剤をなす複合金属ナノ粒子が、前記本発明の〔10〕に記載の製造方法により得られたものであることが望ましい。
前述のような、プラズモン増強場を持つ複合金属ナノ粒子を含む多光子吸収材料あるいは反応助剤を含む材料が、安定な分散溶液および塗布或いはキャスティング可能な混合物として提供されることにより、多光子吸収反応の反応閾値が下がることで、これまでに無い様々な応用が可能となる。
以下応用につて例示するが、多光子吸収材料の代表例として主に二光子吸収材料を取り上げて説明する。
〔複合金属ナノ粒子を含有する二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用〕
先ず、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料(二光子吸収材料)の三次元記録媒体(三次元多層光メモリ)への応用について説明する。
背景技術で述べたように、非共鳴二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザ焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザが必要で、かつ記録時間も長くかかる。特に、三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる二光子吸収三次元光記録材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収材料(二光子吸収化合物)と、二光子吸収化合物の励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれていた。
すなわち、本発明の形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する高感度な二光子吸収材料を用いることにより、その二光子吸収を利用して記録を行った後、記録材料に光を照射してその発光強度の違いを検出するか、または、屈折率変化による反射率の変化を検出することにより再生することが可能である。つまり、本発明の異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する高感度な二光子吸収材料を用いることによって、二光子吸収光記録再生方法、およびそのような記録再生が可能な二光子吸収光記録材料を提供することができる。さらに、それらを用いた二光子吸収三次元光記録材料、ならびに二光子吸収三次元光記録方法および再生方法を提供することができる。
本発明の複合金属ナノ粒子を含有する高感度な二光子吸収材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基板にラミネートすることもでき、それら成形方法により二光子吸収光記録材料とすることができる。
ここで、「基板」とは、任意の天然または合成支持体、好適には柔軟性または剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在することができるものを意味する。
基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎または静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板には予めトラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
上記成形方法において塗布の際に使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
さらに、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、あるいは押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。
また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と感光膜の間および/または、基材と感光膜の間に、気密性を高めるために粘着剤または液状物質を存在させてもよい。さらに感光膜間の保護層(中間層)にも予めトラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
前述のような二光子吸収光記録材料を多層として構成することにより、三次元記録媒体(三次元多層光記録媒体)が提供される。
上述した三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
上述した二光子吸収光記録材料の任意の層に焦点を合わせ、記録再生を実施することで、三次元記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくとも、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
以下、三次元多層光記録媒体(三次元多層光メモリ)の好ましい実施形態として具体例を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面および膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。
三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図1(a)に、記録媒体の概略断面図を図1(b)に示す。
図1(a)のシステム概略図に沿って記録方法の概要を説明する。記録用レーザ光源1(例えば、ハイパワーのパルスレーザ光源)からの記録用レーザ光13を対物レンズ5により三次元記録媒体6中にフォーカスする。フォーカスポイントでは、二光子吸収により記録が行われるが、フォーカスポイント以外では、先に述べたように光の照射パワーが低く、二乗効果により記録は行われない。すなわち、選択的な記録が可能となる。
次に、再生方法であるが、再生用レーザ光源2(記録光ほどハイパワーではなく、半導体レーザも利用可能)からの光を、三次元媒体中にフォーカスする。各層より信号光が発生するが、ピンホール3と検出器4より構成される点検出器で信号光を検出することにより、特定の層からの信号を共焦点顕微鏡の原理を用いて選択的に検出する。以上のような構成により、三次元記録再生は機能する。
図1(b)の三次元記録媒体6においては、平らな支持体である基板A(7)に二光子吸収光材料(本発明の複合金属ナノ粒子を含有する高感度な二光子吸収材料を含有する)を用いた記録層10と、クロストーク防止用の中間層(保護層)12が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。記録層の厚さは0.01〜0.5μm、中間層の厚さは0.1μm〜5μmが好ましく、この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。さらにデータの再生方法(透過/あるいは反射型)により、基板A(7)と同様の基板B又は高反射率材料からなる反射層(8)が構成される。
上記三次元多層光メモリの記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、あるいは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録および再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が考えられる。
〔複合金属ナノ粒子を含有する二光子吸収材料を用いた光造形用材料への応用〕
次に、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子(反応助剤)を含有する多光子吸収材料(二光子吸収材料)の光造形用材料への応用について説明する。
図2の概念図に示す二光子光造形法のための装置(光造形システム)を参照して光造形用材料を用いた光造形について説明する。
図2に示す装置では、光硬化性樹脂液9に対して透明性を有する近赤外パルスレーザ光の光源1からの光をミラースキャナー5を通した後、レンズを用いて光硬化性樹脂液9中に集光させ、レーザスポットを走査し、二光子吸収を誘起することによって焦点近傍のみにおいて樹脂を硬化させ、任意の三次元構造を形成するように構成されている。つまり、二光子光造形法(二光子マイクロ光造形方法)により光造形される。
ここで、光硬化性樹脂液9は、本発明の複合金属ナノ粒子(反応助剤)と二光子吸収材料(重合開始剤あるいは光増感剤等)を含む高感度な二光子光造形用光硬化性樹脂である。尚、二光子光造形用光硬化性樹脂とは、後述のように、光を照射することで二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化する樹脂である。
詳しくは、パルスレーザ光をレンズで集光して、集光点近傍にフォトンの密度の高い領域を形成する。このときビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定なので、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は、光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ、二光子吸収の発生の高い領域が形成される。
このように、パルスレーザ光をレンズによって集光させ二光子吸収を誘起することで、集光点近傍に光吸収を限定し、ピンポイント的に樹脂を硬化させることが可能となる。集光点はZステージ6とガルバノミラーによって光硬化樹脂液内を自由に移動させることができるため、光硬化性樹脂液内において目的とする三次元加工物(光造形物10)を自在に形成することができる。
なお、図2において、符号3は透過光量を時間的にコントロールするシャッター、符号4はNDフィルター、符号7は集光手段としてのレンズ、符号8はコンピュータを示す。
二光子光造形法の特徴としては、以下の項目が挙げられる。
(1)回折限界をこえる加工分解能:二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(2)超高速造形:二光子吸収を利用した場合、焦点以外の領域では、光硬化性樹脂が原理的にも硬化しない。このため照射させる光強度を大きくし、ビームのスキャン速度を速くすることができる。このため、造形速度を約10倍向上することができる。
(3)三次元加工:光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって、焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来の方法(SIH)では、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(4)高い歩留り:従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行うのでこうした問題は解消される。
(5)大量生産への適用:超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
前述のように、二光子光造形用光硬化性樹脂とは、本発明の複合金属ナノ粒子を含有する高感度な二光子吸収材料であり、光を照射することによって二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化するという特性を持った樹脂である。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。
光を照射すると、複合金属ナノ粒子の表面にプラズモン増強場が発生し、このプラズモン増強場で増強された照射光を、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接、または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応し、重合を開始させる。その後これらの間で連鎖的重合反応を起こし三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては(a)反応性が良好であること、(b)硬化時の堆積収縮が小さいこと、(c)硬化後の機械特性が優れていること、等が重要である。
これらの特性は本手法においても同様に重要であり、そのため、積層式立体造形用に開発された樹脂で二光子吸収特性を有するものは、本手法の二光子光造形用光硬化性樹脂としても使用できる。その具体的な例としては、アクリレート系およびエポキシ系の光硬化性樹脂が良く用いられ、特にウレタンアクリレート系の光硬化性樹脂が好ましい。
本発明における光造形に関する技術としては、例えば、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する感光性高分子膜の表面に、パルスレーザ光を、マスクを介さずに干渉露光させる手法が適用できる。この場合のパルスレーザ光としては、前記感光性高分子膜中の複合金属ナノ粒子のプラズモン増強場効果とそれによる励起作用を介して感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザ光であることが重要である。
従って、パルスレーザ光としては、感光性高分子の種類、または、感光性高分子における感光性機能を発揮する基又は部位の種類などに応じて、その波長領域を適宜選択することができる。特に、光源から発光されるパルスレーザ光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、パルスレーザ光の照射に際して、多光子吸収過程を利用することにより、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させることが可能となる。
尚、感光性高分子膜の表面に、パルスレーザ光をマスクを介さずに干渉露光させる手法としては、例えば、特開2005−134873号公報に記載されている例が挙げられる。
具体的には、光源から発光されるパルスレーザ光を集光して、集光されたパルスレーザ光を照射すると、多光子の吸収(例えば、二光子の吸収、三光子の吸収、四光子の吸収、五光子の吸収など)が生じ、これによって光源から発光されるパルスレーザ光の波長が、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域でなくても、感光性高分子膜には、高分子膜中の前記複合金属ナノ粒子のプラズモン増強場効果とそれによる励起作用を介して実質的に感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域のパルスレーザ光が照射されたことになる。
このように、干渉露光するパルスレーザ光は、実質的に、感光性高分子膜に感光性機能を発揮させる波長領域となるパルスレーザ光であればよく、照射条件などにより、その波長を適宜選択することができる。例えば、前記の本発明複合金属ナノ粒子を含有する高効率二光子吸収材料を光増感材料とし、紫外線硬化樹脂等に分散して感光物固体とし、この感光物固体の二光子吸収能を利用して焦点スポットのみが硬化する特性を利用した超精密三次元造形物を得ることが可能となる。
本発明における二光子吸収材料としては、前述のように二光子吸収重合開始剤や二光子吸収光増感材料が挙げられ、複合金属ナノ粒子を含有することにより、従来の二光子吸収材料(二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料)に比較して、二光子吸収感度が高いため、高速造形が可能で、励起光源としても小型で安価なレーザ光源が使用できるため、大量生産可能な実用用途への展開が可能となる。
〔複合金属ナノ粒子を含有する二光子吸収材料を用いた二光子蛍光顕微鏡への応用〕
次に、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する二光子吸収材料の二光子蛍光顕微鏡への応用について説明する。
二光子励起レーザ走査顕微鏡(二光子蛍光顕微鏡)とは、近赤外パルスレーザを標本面上に集光して走査させ、そこでの二光子吸収により励起されて発生する蛍光を検出することにより像を得る顕微鏡である。図3の概念図に、二光子励起レーザ走査顕微鏡(二光子蛍光顕微鏡)の基本構成を示す。
図3の二光子蛍光顕微鏡は、近赤外域波長のサブピコ秒の単色コヒーレント光パルスを発するレーザ光源1と、レーザ光源からの光束を所望の大きさに変える光束変換光学系2と、光束変換光学系で変換された光束を対物レンズの像面に集光し走査させる走査光学系3と、集光された上記変換光束を標本面5上に投影する対物レンズ系4と、光検出器7を備えている。
パルスレーザ光をダイクロイックミラー6を経て、光束変換光学系、対物レンズ系により集光して、標本面で焦点を結ばせることにより、標本内にある二光子吸収蛍光材料(前記複合金属ナノ粒子を含有する二光子吸収材料)に二光子吸収を起生させ、誘起された蛍光を生じさせる。標本面をレーザビームで走査し、各場所での蛍光強度を光検出器7などの光検出装置で検出して、得られた位置情報に基づいて、コンピュータでプロットすることにより、三次元蛍光像が得られる。走査機構としては、例えば、ガルバノミラーなどの可動ミラーを用いてレーザビームを走査してもよく、あるいはステージ上に置かれた二光子吸収材料を含む標本を移動させてもよい。
このような構成により、二光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素は、標本を該蛍光色素で染色するか、または標本に該蛍光色素を分散させることにより使用され、工業用途のみならず、生体系の細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができることから、高い二光子吸収断面積を持つ化合物が望まれている。
光子蛍光顕微鏡としては、例えば、特開平9−230246号公報に記載されている例が挙げられる。
この場合の走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザ照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。このような二光子光学素子は上述の光制御素子と全く同様に本発明の高い二光子吸収能を有した材料、薄膜、もしくは光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光学素子として用いることが可能である。
本発明の二光子吸収材料は、二光子励起レーザ走査顕微鏡用の二光子吸収蛍光材料として用いることが出来る。従来の二光子吸収蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収特性を発揮する。従って、本発明によれば、高感度な二光子吸収材料が得られるだけでなく、材料に照射する光の強度を強くする必要がなくなり、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。
実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、各実施例は本発明の構成の一例であり、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、以下に示す光還元法手法により、金ナノロッドを作成した後にその表面に銀を被覆して複合金属ナノ粒子を作成した。
〔金ナノロッド分散液の作成〕
原料溶液としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液0.18(mol/l)70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、硝酸銀水溶液0.01(mol/l)1.5mlを加えマグネットスターラーにより攪拌した。更に、塩化金酸溶液0.024(mol/l)2mlを加えた後、アスコルビン酸水溶液0.1(mol/l)0.4mlを加え、塩化金酸溶液の色が消えたことを確認した。
次に、直径100mmのシャーレーに混合用液を移し、254nmの紫外線を低圧水銀ランプ(アズワン社製、SUV−16)により約20分照射した。この工程により、金ナノロッドの安定な分散液が完成した。透過電子顕微鏡による観測の結果、得られた金ナノロッドの平均的な粒子形状は、長径50nm、短径12nmであり、形状異方性を持つ粒子であることが確認された。
尚、本例では光還元法により合成した金ナノロッドを示したが、電解法、種粒子からの成長など各種合成法による金ナノロッドが使用可能なのは言うまでも無い。また、成長条件を変えることにより、粒子形状、例えば、長径の異なる金ナノロッドを容易に得ることが可能である。
〔金ナノロッドの表面に銀を被覆した複合金属ナノ粒子1の作成〕
上記完成した金ナノロッド分散液6mlに、硝酸銀水溶液0.1(mol/l)50μl、ポリエチレンイミン(平均分子量600)20μlを加え、攪拌した。約2時間後、金ナノロッド分散液の吸光度(図4参照)変化(スペクトルシフト)が観察され、金ナノロッド表面に銀が異方成長して被覆(異方性銀被覆)されていることを確認した。
本実施例では、金ナノロッドの合成段階で、還元剤としてアスコルビン酸を用いており、追加投入することなく反応が進行した。また、アミン類の代わりに、アミノ基を持つ材料の不純物として存在するアミン類を用いた。
[評価1]
上記で作成した異方性銀被覆金ナノロッドの透過電子顕微鏡観察を行った。
観察結果を図5の透過電子顕微鏡写真に示す。図5から明らかなように金ナノロッド表面に、異方性を持った銀が析出し被覆していることが確認された。尚、図5において、形状異方性を持つ各粒子が複合金属ナノ粒子であり、略、濃色部分が銀であり、明色部分が金ナノロッドの表面である。
(実施例2)
先ず、以下に示す化学還元法により、金ナノロッドを作成した後にその表面に銀を被覆して複合金属ナノ粒子を作成した。
〔金ナノロッド分散液の作成〕
原料溶液としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液0.18(mol/l)70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、硝酸銀水溶液0.01(mol/l)1.5mlを加えマグネットスターラーにより攪拌した。更に、塩化金酸溶液0.024(mol/l)2mlを加えた後、水素化硼素ナトリウム水溶液0.01(mol/l)0.4ml、トリエチルアミン0.02mlを加えた後、攪拌を停止し、48時間静置し、金ナノロッド分散液が完成した。
実施例1と同様にして、得られた金ナノロッドの平均的な粒子形状を透過電子顕微鏡により観測した結果、形状異方性を持つ粒子であることが確認された。
〔金ナノロッドの表面に銀を被覆した複合金属ナノ粒子2の作成〕
上記完成した金ナノロッド分散液6mlに、硝酸銀水溶液0.1(mol/l)50μl、ブチルアミン20μl、アスコルビン酸水溶液0.1(mol/l)20μlを加え、攪拌した。約2時間後、金ナノロッド分散液の吸光度(図6参照)変化(スペクトルシフト)が観察され、金ナノロッド表面に銀が異方成長して被覆(異方性銀被覆)されていることを確認した。
[評価1]
上記で作成した異方性銀被覆金ナノロッドの透過電子顕微鏡観察を行った結果、実施例1と同様に金ナノロッド表面に、異方性を持った銀が析出し被覆していることが確認された。
[評価2]
上記で作成した異方性銀被覆金ナノロッド(銀被覆複合ナノ粒子2)と二光子蛍光色素を混合した評価溶液(分散液)を調製して二光子蛍光測定を行った。二光子蛍光の増強度を下記表1に示す。
<評価溶液の調製>
銀被覆複合ナノ粒子2分散液2mlに、界面活性剤であるドデカンチオールのアセトン溶液1vol%、4mlを加え攪拌し、更にシクロヘキサン4mlを加え攪拌後静置した。銀被覆複合ナノ粒子1はシクロヘキサン中に安定に分散した。これと下記構造式(1)で表される二光子蛍光色素を混合して評価溶液を調製した。
<二光子蛍光測定>
銀被覆複合ナノ粒子2と二光子蛍光色素の混合分散液を光路長1mmの光学セルに入れ、測定試料とした。
二光子励起光源には赤外線フェムト秒レーザ、スペクトラフィジックス社製MaiTai(波長780nm)を用い、焦点距離100mmの集光レンズで混合溶液中にそれぞれ集光点を結び、二光子励起の蛍光を測定した。
それぞれの溶液で励起光強度が2倍となると蛍光強度が4倍となる2乗効果が観測され、二光子吸収蛍光であることが確認された。
銀被覆複合ナノ粒子1と二光子蛍光色素の混合分散液について、二光子蛍光の増強度を下記表1に示す(励起光強度は、平均出力80mWである)。
尚、増強度の評価は、後述の比較例1に示した二光子蛍光色素溶液との比較を基準としている。評価における記号の意味は次のようである。
◎:著しく増強効果が認められたもの
○:増強効果が認められたもの
△:基準溶液と同程度の蛍光強度を示したもの。
(比較例1)
〔金ナノロッド分散液の作成〕
原料溶液としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)水溶液0.18(mol/l)70ml、シクロヘキサン0.36ml、アセトン1ml、硝酸銀水溶液0.01(mol/l)1.5mlを加えマグネットスターラーにより攪拌した。更に、塩化金酸溶液0.024(mol/l)2mlを加えた後、水素化硼素ナトリウム水溶液0.01(mol/l)0.4ml、トリエチルアミン0.02mlを加えた後、攪拌を停止し、48時間静置し、金ナノロッド分散液が完成した。
〔金ナノロッドの表面に銀を被覆した複合金属ナノ粒子の作成〕
上記完成した金ナノロッド分散液6mlに、硝酸銀水溶液0.1(mol/l)50μl、ブチルアミン20μl、アスコルビン酸水溶液0.1(mol/l)20μlを加え、攪拌した。約2時間後、金ナノロッド分散液の吸光度(図6参照)変化(スペクトルシフト)が観察され、金ナノロッド表面に銀が異方成長して被覆(異方性銀被覆)されていることを確認した。
実施例2と同じ条件で作成した金ナノロッド分散液を用いて、以下の条件で金ナノロッド表面に銀の析出を試みた。
すなわち、実施例2と同じ条件で作成した金ナノロッド分散液6mlに、硝酸銀水溶液0.1(mol/l)50μl、ブチルアミン20μl、水素化硼素ナトリウム0.01(mol/l)100μlを加え、攪拌した。約2時間後、実施例2と同様に金ナノロッド分散液の吸光度変化を調べたところ、金ナノロッド分散液のスペクトル変化は認められなかった。
本例において用いた水素化硼素ナトリウムは、実施例で用いたアスコルビン酸より一般に還元力が強いにもかかわらず銀の析出は認められなかった(透過電子顕微鏡観察)。
[評価2]
上記で作成した銀が被覆されていない金ナノロッドと前記二光子蛍光色素を混合した評価溶液(分散液)を調製し、実施例2の二光子蛍光測定と同様にして評価を行った。二光子蛍光の増強度を下記表1に示す。
このことから、本発明におけるアスコルビン酸とアミン類の組み合わせが、金ナノロッド表面に銀を異方成長させる際に極めて有効であることが示された。
(実施例3)
実施例2で作成した異方性銀被覆金ナノロッド分散液3mlに、3−アミノプロピルエチルジエトキシシランのアセトン溶液5vol%、0.5mlを加え、80℃で2時間加熱処理し、異方性銀被覆金ナノロッド表面にSiO2皮膜を形成した(絶縁層により被覆された銀被覆複合ナノ粒子3)。
[評価2]
上記で作成した絶縁層により被覆された銀被覆複合ナノ粒子3と前記二光子蛍光色素を混合した評価溶液(分散液)を調製し、実施例2の二光子蛍光測定と同様にして評価を行った。二光子蛍光の増強度を下記表1に示す。
(比較例2)
実施例1の光還元法と同様に作成した金ナノロッドをそのまま用い(金ナノロッド表面に銀を被覆しないもの)、この金ナノロッドと前記二光子蛍光色素を混合した評価溶液(分散液)を調製して実施例1と同様にして二光子蛍光測定を行ったところ、増強度に顕著な効果は認められなかった。
前記実施例から、ほぼ共鳴波長の同じ金ナノロッドを用いて二光子励起蛍光光量を比較することにより、異方成長させた銀被覆された複合ナノ粒子により、大きなプラスモン増強効果が確認された。また、銀被覆複合ナノ粒子の表面に絶縁層を設けることにより、さらに大きな増強度を示すことが確認された。
本発明によれば、異方成長した銀被覆微粒子の持つより強い表面プラズモン増強場を利用して、高感度に多光子吸収材料を増感したり、多光子吸収材料の反応を助長したりすることができ、各種応用分野、例えば、三次元多層光メモリへの応用、光造形用材料への応用、二光子蛍光顕微鏡への応用などに適用できる。しかも、小型で安価なレーザ光源が使用できるという利点がある。
(図1の符号)
1 記録用レーザ光源
2 再生用レーザ光源
3 ピンホール
4 検出器
5 対物レンズ
6 三次元記録媒体
7 基板A
8 基板B又は反射層
9 記録ビット
10 記録層
11 多層ディスク
12 中間層
13 記録用レーザ光
(図2の符号)
1 光硬化樹脂に対して透明性を有する近赤外パルスレーザ光の光源
3 過光量を時間的にコントロールするシャッター
4 NDフィルター
5 ミラースキャナー
6 Zステージ
7 集光手段としてのレンズ
8 コンピュータ
9 光硬化性樹脂液
10 光造形物
(図3の符号)
1 レーザ光源
2 光束変換光学系
3 走査光学系
4 対物レンズ系
5 標本面
6 ダイクロイックミラー
7 光検出器
特開2004−156911号公報 特表2001−513198号公報 特表2004−530869号公報 特開2005−068447号公報 特開2006−330683号公報 特表2001−524245号公報 特表2000−512061号公報 特表2001−522119号公報 特表2001−508221号公報 特開平6−28672号公報 特開平6−118306号公報
ナノ学会第2回大会、2P037 材料科学会ポリマー系ナノコンポジット分科会公演予稿集5(1),PP5−8 Langmuir,2008,24,3465−3470

Claims (12)

  1. 形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料において、
    前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とする多光子吸収材料。
  2. 前記異方成長してなる銀の異方性が、前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致していることを特徴とする請求項1に記載の多光子吸収材料。
  3. 前記形状異方性を持つコア粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする請求項1または2に記載の多光子吸収材料。
  4. 前記複合金属ナノ粒子の表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多光子吸収材料。
  5. 多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する反応助剤において、
    前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する金属が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、
    前記複合金属ナノ粒子の被覆金属が、前記形状異方性を持つコア粒子の表面に異方成長してなる銀であることを特徴とする反応助剤。
  6. 前記異方成長してなる銀の異方性が、前記形状異方性を持つコア粒子の方位と一致していることを特徴とする請求項5に記載の反応助剤。
  7. 前記形状異方性を持つコア粒子が、金ナノロッドであることを特徴とする請求項5または6に記載の反応助剤。
  8. 前記複合金属ナノ粒子の表面が、絶縁層により被覆されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の反応助剤。
  9. 形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子を含有する多光子吸収材料における該複合金属ナノ粒子の製造方法であって、
    少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とする複合金属ナノ粒子の製造方法。
  10. 多光子吸収材料に含有されて該多光子吸収材料の反応を助長する複合金属ナノ粒子からなる反応助剤における該反応助剤の製造方法であって、
    前記反応助剤は、形状異方性を持つコア粒子の表面にプラズモン増強場を発生する異方成長してなる銀が被覆された複合金属ナノ粒子からなり、
    少なくとも金ナノロッド、硝酸銀、アスコルビン酸およびアミン類を含む成長溶液の還元反応により、前記金ナノロッド表面に銀を異方成長させることを特徴とする反応助剤の製造方法。
  11. 請求項1乃至4のいずれかに記載の多光子吸収材料において、前記多光子吸収材料に含有される複合金属ナノ粒子が、請求項9に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする多光子吸収材料。
  12. 請求項5乃至8のいずれかに記載の反応助剤において、前記反応助剤をなす複合金属ナノ粒子が、請求項10に記載の製造方法により得られたものであることを特徴とする反応助剤。
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