JP5155202B2 - 光学用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents

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本発明は光学用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、フラットパネルディスプレイの光学部材として用いられる光学用二軸延伸ポリエステルフィルムや、光学部材の製造工程または組立工程において光学部材を保護するために用いられる保護フィルムや離型フィルムとして用いられる光学用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
二軸延伸ポリエステルフィルムは優れた光学特性を持つため、光学用フィルムとして、フラットパネルディスプレイの部材である拡散板や、プリズムシートのベースフィルムとして、またタッチパネルの基材として、広く用いられている。
光学用途の中でも、高い視認性が要求されるフラットパネルディスプレイの部材の用途では、フィルムには高い透明性が必要となる。他方で、ディスプレイの大型化に伴い、部材のフィルムには、自重による変形を防ぐためにある程度の厚みが必要となった。
しかし、厚みを厚くすると、キャスティングドラムへの押出時に冷却が不足し、結晶が生成してヘーズが上昇する傾向が見られる。このため、ポリエステルフィルムでは、フィルムに自重による変形を防ぐに充分な厚みを持たせることと、フィルムのヘーズを抑制することを両立することは難しい。
特開2007−161937号公報 特開2008−195803号公報 WO2005/100440号公報
また、フラットパネルディスプレイの部材の用途においては、透明性と共に、フィルム自体に着色がないことも重要である。しかも、厚みの厚いフィルムでは、薄いフィルムに比べて、着色の影響が強く現れる。フィルムが着色しているとディスプレイに表示される映像に、部材の着色の影響が現れ、正確な色再現ができない。
ディスプレイの大型化に伴い、フィルムの自重による変形を抑制するために、従来よりも厚いフィルムが必要となってきているが、フィルムを厚くすると透明性が低下するのみならず、黄色味が強くなってしまう。
本発明は、フィルムの自重による変形を抑制するための充分な厚みを持ちながら、優れた透明性を併せ持ちかつ黄色味の少ない光学用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
すなわち本発明は、エステル交換法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(S)10〜90重量部と、直接重合法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(G)90〜10重量部とを溶融混練して得た、厚みが20〜400μm、ヘーズが1.0%以下であり、透過で測定したb値が0.60以下であり、ポリエステル(G)の固有粘度が、0.85〜1.50でありかつポリエステル(S)の固有粘度より0.05以上高いことを特徴とする、光学用二軸延伸ポリエステルフィルムである。
本発明によれば、フィルムの自重による変形を抑制するための充分な厚みを持ちながら、優れた透明性を併せ持ちかつ黄色味の少ない光学用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
[ポリエステル]
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、エステル交換法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(S)10〜90重量部と、直接重合法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(G)90〜10重量部とを溶融混練して得たポリエステル組成物からなる。
本発明では、エステル交換法により重合されたポリエステル(S)10〜90重量部と、直接重合法により重合されたポリエステル(G)90〜10重量部とを溶融混練することで、優れた透明性のフィルムを、ポリマー濾過時の濾過圧の上昇による生産性の低下を招来することなく得ることができる。
ポリエステル(S)は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステルである。主たる繰り返し単位とはポリエステルを構成する全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上の繰り返し単位をいう。ポリエステル(S)は共重合ポリエステルであってもよい。その場合、共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸を例示することができる。
ポリエステル(G)は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステルである。主たる繰り返し単位とはポリエステルを構成する全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上の繰り返し単位をいう。ポリエステル(S)は共重合ポリエステルであってもよい。その場合、共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸を例示することができる。
[フィルムの厚み]
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、機械的強度と生産性を両立するために20〜400μm、好ましくは50〜350μm、さらに好ましくは125〜300μmである。20μm未満であると機械的強度が不足し、400μmを超えると生産性が劣ることになる。
[フィルムのヘーズ]
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムのヘーズが1.0%以下、好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.2〜0.5である。ヘーズが1.0%を超えると透明性が低下し、光学用途として適さない。
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムの厚み188μmあたりのヘーズが、好ましくは0.4%以下、さらに好ましくは0.38%以下、さらに好ましくは0.35%以下、特に好ましくは0.30%以下である。この範囲のヘーズであることで特に優れた透明性を備え、光学用途に適したフィルム得ることができる。
これらのヘーズを達成するためには、エステル交換法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(S)10〜90重量部と、直接重合法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(G)90〜10重量部とを溶融混練した組成物をフィルムの原料として用い、しかも、滑剤としての粒子を実質的に含有しない組成物を原料として用いればよい。なお、実質的に含有しないとは、含有量が、ポリエステフィルムの全重量を基準に、例えば0.1重量%以下である。
[固有粘度]
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムに用いるポリエステル(G)の固有粘度は0.85〜1.50であり、かつポリエステル(S)の固有粘度より0.05以上高いことが必要である。固有粘度がこの条件を満足することで、フィルムの着色を抑制し、透明度の高いフィルムを得ることができる。
ポリエステル(G)の固有粘度は、ポリエステル(S)の固有粘度より、好ましくは0.05〜0.5dl/g、さらに好ましくは0.1〜0.4dl/g、特に好ましくは0.1〜0.3dl/g高い。固有粘度の差をこの範囲とすることで、優れた強度を備えながら、均一な溶融混練を行うことができ、厚み斑の少ないフィルムを得ることができる。
[フィルムのb値]
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、透過で測定したb値が0.60以下である。b値が0.60を超えると、フィルムの黄色味目立ち、ディスプレイ用部材として用いたときに正確な色再現ができない。
[製造方法]
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルは、公知の方法により製造することができる。
ポリエステル(S)は、例えばテレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ−ルを留去してエステル交換反応させた後、減圧下に重縮合反応を行いポリエステルを得る、エステル交換法により製造することができる。エステル交換反応触媒としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトの化合物を用いることができる。重縮合反応触媒として、アンチモン化合物を用いることが好ましい。アンチモン化合物として、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモンを用いることができる。エステル交換法によりポリエステルを製造する場合は、重縮合反応前にエステル交換反応触媒を失活させる目的で、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸といったリン化合物が通常は添加されるが、リン元素のポリエチレンテレフタレート中での含有量が20〜100ppmであることがポリエステルの熱安定性の点から好ましい。
また、ポリエステル(G)は、例えばテレフタル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去してエステル化した後、減圧下に重縮合反応を行う直接エステル化法により製造することができる。重縮合反応触媒として、ゲルマニウム化合物を用いることが好ましい。ゲルマニウム化合物として、例えば二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウムを例示することができる。
いずれの方式においても、エステル化反応またはエステル交換反応は、1段階で行ってもよく、多段階に分けて行ってもよい。溶融重縮合反応も1段階で行ってもよく、多段階に分けて行ってもよい。
ポリエステルの固有粘度を特に高くする必要がある場合には、さらに固相重合を行ってもよい。固相重合前に結晶化を促進するために、溶融重合ポリエステルのペレットに吸湿させたあと加熱結晶化させてもよく、水蒸気を直接ポリエステルのペレットに吹きつけて加熱結晶化させてもよい。溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行ってもよく、連続式反応装置で行ってもよい。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様に、回分式装置や連続式装置で行うことができる。溶融重縮合と固相重合は連続で行ってもよく、分割して行ってもよい。固相重合に供するポリエステルのペレットの形状は、シリンダー型、角型、球状、扁平な板状のいずれでもよい。平均粒径は通常1.0〜5.0mmである。
本発明に用いられるポリエステルのうち、固有粘度の高いものは、溶融重合後これをペレット化し、さらに固相重合することによって得ることができる。固相重合は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、次のように行うとよい。まず、固相重合に供する溶融重縮合で得たポリエステルを、不活性ガス下または減圧下、あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で、1〜5時間加熱して、予備結晶化する。次いで、不活性ガス雰囲気下または減圧下にて、190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。固相重合後、必要に応じて減圧下または不活性ガス雰囲気下において、約150℃の温度から50℃以下の温度に冷却する。
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、エステル交換法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(S)のペレット10〜90重量部と、直接重合法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(G)のペレット90〜10重量部とを140〜180℃で2〜5時間乾燥後、押出機ホッパーに投入し、溶融温度250〜300℃で溶融混練して押出し、キャスティングドラム上で急冷して未延伸フィルムを得る。このようにして得られた未延伸フィルムを77〜85℃で予熱し、さらにIRヒーターにて加熱して縦方向に3.0〜3.6倍に延伸する。続いてテンターに供給し、130〜140℃にて横方向に3.0〜3.7倍に延伸する。得られた二軸配向フィルムを200〜250℃の温度で5秒間から10分間熱固定して得ることができる。
二軸延伸の方法としては、未延伸ポリエステルフィルムを、長手方向あるいは幅方向に
延伸し、続いて先の延伸方向と直行する方向の延伸を行う逐次二軸延伸や、長手方向と幅
方向に一度に延伸する同時二軸延伸などの方法を用いることができる。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。なお、物性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
(1)ヘーズ
(1−1)ヘーズ
フィルムについてJIS K7361に準じ、ヘーズ測定器(日本電色工業社製の商品名「NDH―2000」)を用いて測定した。二軸延伸ポリエステルフィルムの任意の3点について全光線透過率(%)と散乱光透過率(%)を求めた。これら3点の平均値をそれぞれ全光線透過率Tt(%)と散乱光透過率Td(%)とした。これらの数値から、へーズ(Td/Tt×100(%))を算出した。
(1−2)188μmあたりのヘーズ
フィルム単位厚み(1μm)あたりのヘーズを算出し、これを188倍することで求めた。まず、フィルム1枚について、フィルム2枚を密着して重ねた積層体について、およびフィルム3枚を密着して重ねた積層体について、上記(1−1)の方法でヘーズを測定した。つぎに、x軸をフィルムまたは積層体の厚み(μm)、y軸をそのフィルムまたは積層体のヘーズ(%)として、厚み(μm)とヘーズ(%)との関係をグラフにプロットし、得られた直線の傾きからフィルム単位厚み(1μm)あたりのヘーズ(%)を算出した。例えば、フィルム1枚の厚みが50μmである場合、プロットされる点(x,y)は、(50μm,50μmのフィルムのヘーズ)、(100μm,50μmのフィルム2枚を密着して重ねた厚み100μmの積層体のヘーズ)、(150μm,50μmのフィルム3枚を密着して重ねた厚み150μmの積層体のヘーズ)の3点となる。なお、プロットされた点が直線にのらないときは、各点からの距離が最小となるように直線を引く。
(2)b
カラー測定器(日本電色工業社製の商品名「SZ−Σ90」)を用いて測定した。フィルム上の任意の3点について、透過法で測定し、平均をとった。
(3)固有粘度(dl/g)
p−クロロフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒(p−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=40重量%:60重量%)を溶媒として用い、35℃で測定した。
[参考例1]ポリエステル1の重合(エステル交換 三酸化アンチモン触媒)
ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール200重量部、酢酸マンガン四水塩0.03重量部を反応容器に仕込み、エステル交換反応を実施した。続いて、トリフェニルホスホノアセテート0.02重量部、三酸化アンチモン0.01重量部を添加し、その後、3時間減圧下で297℃まで昇温して、重縮合反応を行い、固有粘度が0.61dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートをポリエステル1と称する。
[参考例2]ポリエステル2の重合(直接重合 二酸化ゲルマニウム)
ジメチレンテレフタレート100重量部とエチレングリコール65重量部を常温でスラリー化し、加圧下でエステル化反応を行い、リン化合物0.02重量部、二酸化ゲルマニウム0.01重量部を添加した。次いで290℃まで昇温して、重縮合反応を行い、低分子量のポリエステルを得た。得られたポリエステルを210℃、18時間固相重合を行い、固有粘度が0.86dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートをポリエステル2と称する。
[参考例3]ポリエステル3の重合(直接重合 二酸化ゲルマニウム)
参考例2において、固相重合時間を18時間から12時間に変更する以外は参考例2と同様にして、固有粘度0.77dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートをポリエステル3と称する。
[参考例4]ポリエステル4の重合(エステル交換 二酸化ゲルマニウム)
参考例1において、重縮合反応の触媒として用いた三酸化アンチモンの代わりに二酸化ゲルマニウムを用いた以外は参考例1と同様にして、固有粘度が0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。これを18時間固相重合を行い、固有粘度0.86dl/gのポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートをポリエステル4と称する。
[実施例1]
上記のポリエステル1のペレットとポリエステル2のペレットとを重量比で68:32の割合で混合し、この混合物を160℃で3時間乾燥後、押出機ホッパーに投入し、溶融温度270℃で溶融し、溶融押出し、キャスティングドラム上で急冷して未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを82〜84℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.2倍に延伸した。続いてテンターに供給し、138℃にて横方向に3.5倍に延伸して得られた二軸延伸フィルムを242℃の温度で5秒間熱固定し、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1にまとめる。
[比較例1]
実施例1においてポリエステル2をポリエステル3に変更した以外は実施例1と同様の条件で、溶融押出、二軸延伸および熱固定して、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1にまとめる。
[比較例2]
実施例1においてポリエステル2をポリエステル4に変更した以外は実施例1と同様の条件で、溶融押出、二軸延伸および熱固定して、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1にまとめる。
Figure 0005155202
本発明の光学用二軸延伸ポリエステルフィルムは、光学用フィルムや光学用フィルムの表面保護材として用いることができる。なお、光学用フィルムとして、フラットパネルディスプレイに用いられる、プリズムシートを例示することができる。また、光学用フィルムの表面保護材として、フラットパネルディスプレイに用いられる偏光板を組み立て工程で保護するために用いられる保護材を例示することができる。

Claims (2)

  1. エステル交換法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(S)10〜90重量部と、直接重合法により重合されたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(G)90〜10重量部とを溶融混練して得た、厚みが20〜400μm、ヘーズが1.0%以下であり、透過で測定したb値が0.60以下であり、ポリエステル(G)の固有粘度が、0.85〜1.50でありかつポリエステル(S)の固有粘度より0.05以上高いことを特徴とする、光学用二軸延伸ポリエステルフィルム。
  2. ヘーズが厚み188μmあたり0.30%以下である、請求項1記載の光学用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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