JP2006077147A - 保護フィルム用ポリエテルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 オリゴマーの析出が少ない、特に液晶偏光板やディスプレイ用等、光学用途に使用する保護フィルムに適したポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 下記式(1)および(2)を同時に満足する量のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステル層を有することを特徴とする保護フィルム用ポリエステルフィルム。
0<WTi≦20 …(1)
1≦W≦300 …(2)
(上記式中、WTiはポリエステル層中のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステル層中のリン元素含有量(ppm)を示す)
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、オリゴマーの析出が少ない、特に液晶偏光板やディスプレイ用等、光学用途に使用する保護フィルムに適したポリエステルフィルムに関するものである。
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において使用されている。しかし、その用途が多様化するにつれて、フィルムの加工条件や使用条件が多様化し、ポリエステルフィルムを加熱処理した際にフィルム表面に内部から滲出してきたオリゴマーが析出してしまうという問題が出てきている。フィルム表面へのオリゴマー析出が激しい場合、フィルムの加工時にオリゴマーが工程内に付着して汚染したり、高度な透明性が必要な用途に使用できなくなったりする等、種々の問題が生じている。
従来、オリゴマーの析出を防止する方法としては、固相重合により原料中に含まれるオリゴマーの低減を図ったり(特許文献1)、また、末端封鎖剤を用いてポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させたりすることなどが行われてきた。しかしながら、固相重合した原料であっても、フィルムの製造条件によっては、加熱によりオリゴマーが副生するなどの理由で効果が見られないなど、フィルム表面へのオリゴマーの析出防止を満足するところまでは至っていない。また、末端封止剤を用いた場合は、末端封止剤に起因する異物の発生、ポリマーの着色、固相重合性の悪化等の恐れがある。
従来、液晶偏光板用やブラウン管、PDP等のディスプレイ用等、光学用途の保護用に、ポリエステルフィルムが使用されているが、これらにおいてもフィルム特性に関しての要求が厳しくなってきている。例えば、保護フィルムとして使用する場合、フィルム表面のオリゴマー等の異物の存在により、外観上の不具合となる場合がある。
特開2003−119271号公報
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、オリゴマーの析出が少ない、特に液晶偏光板やディスプレイ用等、光学用途に使用する保護フィルムに適したポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、優れたフィルム特性を損なうことなく、保護フィルム用途に特に好適であるポリエステルフィルムを提供できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)および(2)を同時に満足する量のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステル層を有することを特徴とする保護フィルム用ポリエステルフィルムに存する。
0<WTi≦20 …(1)
1≦W≦300 …(2)
(上記式中、WTiはポリエステル層中のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステル層中のリン元素含有量(ppm)を示す)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で言うポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押し出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸したフィルムである。
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムの少なくとも一層中には、チタン化合物およびリン化合物の双方を含有する必要がある。本発明のフィルムの少なくとも一つの層中のチタン元素含有量は、20ppm以下である必要があり、好ましくは10ppm以下であり、下限は通常1ppmであるが、好ましくは2ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎると、ポリエステルを溶融押出する工程でオリゴマーが副生し、低オリゴマーで高度な透明性を有するフィルムを得ることができない。また、チタン元素を全く含まない場合、ポリエステル原料製造時の生産性が劣り、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない。一方、リン元素量は、1ppm以上であることが必要であり、好ましくは5ppm以上であり、上限は300ppm、好ましくは200ppm、さらに好ましくは100ppmである。上記したチタン化合物を特定量含有するとともに、リン化合物を含有させることにより、含有オリゴマーの低減に対して著しい効果を発揮できる。リン化合物の含有量が多すぎると、ゲル化が起こり、異物となってフィルムの品質を低下させる原因となることがある。本発明においては、チタン化合物、リン化合物を上記した範囲で含有する場合、オリゴマーの副生も防止でき、本発明の効果が高度に得られる。
また、上記チタン化合物およびリン化合物を含有する層中には、アンチモン元素を含まないことが好ましく、通常は100ppm以下、好ましくは60ppm以下、最も好ましくは実質的に含まない、すなわち10ppm以下である。アンチモン元素の量が多すぎると、溶融押出する際に上記リン化合物によって還元され、凝集して異物の原因となったり、フィルムが黒ずみ、透明性が損なわれたりする恐れがある。
本発明のポリエステルフィルム中、チタン化合物およびリン化合物を前述の範囲内で含む層を構成するポリエステルは、溶融重合反応で得られたものであってもよいが、溶融重合後、チップ化したポリエステルを固相重合して得られた原料を用いれば、原料中に含まれるオリゴマー量が低減できるので好ましく使用される。
本発明のポリエステルフィルム中、チタン化合物およびリン化合物を前述の範囲内で含む層中に含まれるオリゴマー量は、0.7重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。当該ポリエステル層中のオリゴマー量が少ない場合、本発明のポリエステルフィルム中に含まれるオリゴマー量の低減、また、フィルム表面へのオリゴマー析出防止効果が特に高度に発揮される。
本発明においては、通常のオリゴマー含有量のポリエステルからなる層の少なくとも片側の表面に、かかるオリゴマー含有量の少ないポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、かかる構造を有する場合、本発明で得られるオリゴマー析出の抑制効果を高度に発揮できる。
本発明においては、フィルムを180℃で10分間加熱処理したときの、フィルム表面へのオリゴマー析出量が、通常5.0mg/m以下であり、好ましくは3.0mg/m以下、さらに好ましくは1.0mg/m以下である。また、本発明においては、フィルムにメチルエチルケトンを塗布して乾燥し、180℃で10分間熱処理した後のフィルム表面のオリゴマー量が5.0mg/m以下であり、好ましくは3.0mg/m以下、さらに好ましくは1.0mg/m以下である。ここでいうオリゴマー量とは、後述する方法で測定した環状三量体量(ポリエステル起因オリゴマー)を指す。フィルム表面でのオリゴマー析出量が5.0mg/mを超える場合は、フィルムヘーズの悪化や、塗布工程内でフィルムと接触する搬送ロールにオリゴマーが付着堆積する等の問題が発生する。
本発明のフィルムを180℃で60分間熱処理した後のフィルムヘーズ(H)と熱処理前のフィルムヘーズ(H0)の差(ΔH)は、好ましくは5.0%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下、特に好ましくは1.0%以下である。ΔHが5.0%を超える場合は、高度な透明性を必要とする分野には使用できないなど、用途が限定されてしまう恐れがある。
本発明で得られるポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。また、必要に応じ、フィルムの滑り性や耐摩耗性を改良する目的などのために、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを配合することもできる。
フィルム中に配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンおよび特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。そしてその含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.5重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれることがある。
ポリエステルフィルム中に含有される粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、通常0.02〜5μm、好ましくは0.02〜3μm、さらに好ましくは0.02〜2μmの範囲である。粒径が0.02μm未満の場合には、フィルム表面が平坦化し、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。また、粒径が5μmを超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて、フィルムの透明性が損なわれることがある。一方、フィルムの透明性を向上させるため、2層以上の積層フィルムとした場合、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか1層であり、もちろん表裏両層に粒子を配合することも考えられる。
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
本発明のフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で有れば特に限定されるものではないが、保護フィルムとして使用するに際し、適度な腰の強さを保有できるという点で、24μm以上、好ましくは30μm以上である。
本発明が積層フィルムとして製膜された場合、チタン元素およびリン元素を含む層は少なくとも最外層にあることが好ましく、どちらか片側、両最外層、また内層にも概層がある場合が考えられる。
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されない。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換により、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHT重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
本発明で使用するポリエステルの極限粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45から0.80、さらに好ましくは0.50〜0.70の範囲である。極限粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷がかかったり、製造コストがかかったりする等の問題が生じる場合がある。
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。
本発明によれば、保護フィルム用ポリエステルフィルムとして、液晶偏光板やディスプレイ用等、光学用途に使用する保護フィルム等、各種の用途に対応することができ、オリゴマーの析出が極力少なく、透明性に優れた、特に好適なポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50)
(株)島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
(3)ポリエステルフィルム層中のオリゴマー(環状三量体)含有量
所定量のポリエステル層をクロロホルム/1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(混合比:3/2)混合溶液に溶解した後、クロロホルム/メタノール(混合比:2/1)で再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液中の溶媒を、エバポレータを用いて蒸発させ、得られた析出物を所定量のDMFに溶解させた。得られたDMFを、液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエステル中に含まれるオリゴマー(環状三量体)量を求め、この値を測定に用いたポリエステル量で割って、ポリエステルフィルム中に含まれるオリゴマー(環状三量体)量とした。液体クロマトグラフィーで求めるオリゴマー(環状三量体)量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を秤量し、秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
(4)溶剤処理後のフィルム表面オリゴマー量
ポリエステルフィルム表面にメチルエチルケトンを塗布し、窒素雰囲気下、120℃の熱風循環オーブンにて1分間乾燥した後、このフィルムを窒素雰囲気下、180℃の熱風循環オーブンにてポリエステルフィルムを10分間処理した。熱処理後のポリエステルフィルムの表面をDMFと3分間接触させ、表面に析出したオリゴマーを溶解させた。かかる操作は、例えばポリオレフィン等合成樹脂製食品容器包装等に関する自主基準において、溶出試験の中の片面溶出法に用いる溶出用器具に記載されている方法が採用できる。次いで得られたDMFを必要に応じて希釈等の方法で濃度を調整し、液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m)とした。DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を秤量し、秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
(5)フィルムヘーズ(H)
窒素雰囲気下、180℃のオーブンで60分間放置し、熱処理を行ったポリエステルフィルムをJIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより、フィルムの濁度(H)を測定した。前述の熱処理前後のフィルムヘーズの差(ΔH)については、(H)から、熱処理前のポリエステルフィルムの濁度(H0)を差し引いて求めた。
(6)フィルム中金属元素およびリン元素量の定量
蛍光X線分析装置((株)島津製作所社製型式「XRF−1500」を用いて、下記表1に示す条件下で、フィルムFP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。なお、本方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
Figure 2006077147
<ポリエステル(A0)および(A1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が0.06重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(A0)を得た。極限粘度は0.55であった。得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、極限粘度0.65のポリエステル(A1)を得た。
<ポリエステル(B1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、二酸化ゲルマニウム加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(B1)のチップを得た。ポリエステル(B1)の極限粘度は0.63であった。
<フィルムの製造>
ポリエステル(A1)チップおよび、ポリエステル(B1)チップをそれぞれ95重量部、5重量部の割合でブレンドした原料を、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、83℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行い、厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中のオリゴマー量は0.64重量%、アンチモン、チタン、リン元素含有量は、それぞれ0ppm(検出下限値以下)、5ppm、50ppmであった。以下、各実施例、比較例にて得られたフィルム中のオリゴマー量、アンチモン、チタン、リン元素含有量は下記表2にまとめて示す。
実施例1において、得られたポリエステル(A0)チップを、ポリエステル(A1)チップと同様な方法で、固相重合の時間を変えることにより、極限粘度0.67のポリエステル(A2)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(A1)チップの代わりに、ポリエステル(A2)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、得られたポリエステル(A0)チップを、ポリエステル(A1)チップと同様な方法で、固相重合の時間を変えることにより、極限粘度0.68のポリエステル(A3)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(A1)チップの代わりに、ポリエステル(A3)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
実施例1において、使用したポリエステル(A1)チップおよびポリエステル(B1)チップを95重量部、5重量部の割合でブレンドした原料の代わりに、ポリエステル(A1)チップのみを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
実施例3において、使用したポリエステル(A1)チップの代わりに、ポリエステル(A2)チップを用いた以外は、実施例3と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
(比較例1)
ポリエステル(B1)の製造において、正リン酸の添加量を変えた以外は、概製造法と同様の方法で極限粘度0.62のポリエステル(B2)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(A1)チップ、ポリエステル(B1)チップの代わりに、ポリエステル(A2)チップおよびポリエステル(B2)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムにおいては、ゲル化物が原因と思われる異物が発生し、フィルムの品質としてやや劣るものであったため、限定された高度な用途には使用できないというレベルであった。
(比較例2)
ポリエステル(A0)の製造において、テトラブトキシチタネートの添加量を変えた以外は、概製造法と同様の方法で極限粘度0.56のポリエステル(A3)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(A1)チップの代わりに、ポリエステル(A3)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
(比較例3)
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、平均粒子径2.5μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が0.06重量%となるように添加し三酸化アンチモンを加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。この、ポリエステルの極限粘度は0.63であった。得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、極限粘度0.67のポリエステル(C)を得た。
ポリエステル(C)を、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、83℃で縦方向に3.7倍延伸した後、テンターに導き、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行い、厚さ38μmのポリエステルフィルムを得た。
Figure 2006077147
Figure 2006077147
本発明のフィルムは、例えば液晶偏光板やディスプレイ用等、光学用途に使用する保護フィルムとして好適に利用することができる。

Claims (1)

  1. 下記式(1)および(2)を同時に満足する量のチタン化合物およびリン化合物を含むポリエステル層を有することを特徴とする保護フィルム用ポリエステルフィルム。
    0<WTi≦20 …(1)
    1≦W≦300 …(2)
    (上記式中、WTiはポリエステル層中のチタン元素含有量(ppm)、Wはポリエステル層中のリン元素含有量(ppm)を示す)
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