JP5143159B2 - 単結晶の製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、炭化珪素(SiC)等の単結晶の製造方法および製造装置に関するものである。
炭化珪素(SiC)半導体は、熱的・化学的に優れた特性を有し、且つ、禁制帯幅が珪素(Si)半導体に比べ大きく電気的にも優れた特性を有する半導体材料として知られている。特に4H型のSiCは、電子移動度や飽和電子速度が大きなことから、パワーデバイス向けの半導体材料としての実用化が望まれている。
半導体としての単結晶を得る方法として、改良レイリー法(昇華法)が広く用いられている。現在、直径100mmまでのSiC基板が市販されているが、結晶欠陥密度が高いため、半導体の用途として用いるにはさらに結晶欠陥密度を下げる必要がある。また半導体装置の量産性を考えると、SiC単結晶の大口径化、長尺化が必要不可欠である。
昇華法によるSiC単結晶の製造は、SiC単結晶である種結晶(種基板)とSiC原料とを坩堝内に対向配置し、坩堝内を真空引き(排気)してアルゴン(Ar)等の不活性ガスで空気置換した後、坩堝を加熱して高温(約2400℃)にし、SiC原料を昇華させることによって行われる。このとき種結晶を原料より低温に保持することにより、原料が昇華したガス(原料ガス)が温度勾配に従って拡散し、種結晶の表面に到達してSiC単結晶のインゴットが成長する。
このときの坩堝の加熱方式としては、高周波による誘導加熱法が一般的である。誘導加熱法は、高周波により導電体中に発生する誘導電流によって、導電体が発熱することを利用したものである。このため坩堝の材質は、導電性を有し、且つ高温で耐え得ることが必要とされる。よって坩堝の材料としては、一般的にグラファイトが用いられている。
坩堝の形状としては、高周波誘導加熱による表皮効果に起因する温度不均一を無くすため、また加工を容易にするために円筒状のものが用いられる。さらに坩堝からの熱輻射を抑制して効率よく坩堝の加熱を行うために、坩堝の周囲は断熱材で覆われる(例えば、特許文献1)。この断熱材は、非導電性で、且つ約2400℃の高温で耐え得ることが必要とされ、一般的にグラファイト製の断熱材が用いられる。
得られる単結晶の質は、種結晶の質の他、成長時の原料と種結晶との温度差や、坩堝の径方向の温度勾配に大きく依存する。よって質の高い単結晶を得るためには、結晶成長時の坩堝の温度分布を精密に制御する必要がある。また質の高い単結晶を繰り返し安定して得るためには、温度分布の再現性を高くすることが必要である。SiC単結晶の成長では、2500℃付近の高温における温度分布を再現しなければならず、非常に高度な技術を要する。
温度分布の再現性を高くするためには、坩堝の周囲の断熱材による熱の遮断状態を一定に保つことが重要である。現在市販されているグラファイト断熱材としては、フェルト状断熱材と、フェルト状断熱材を成型加工した成型断熱材とがある。
また単結晶の歪みを抑制して高品質な単結晶を得るためには、坩堝内において種結晶の表面から成長する単結晶を多結晶と接触することなく独立して成長させる必要がある。そのためには坩堝内の径方向の温度勾配を高い精度で制御する必要がある。またそれを達成しやすくする技術として、原料ガスを種結晶に導くテーパー状のコーンガイドを用いる技術が知られている(例えば、特許文献2)。
特開2008−110907号公報 特開2007−204309号公報
例えば、特許文献1では、坩堝の表面全体にフェルト状断熱材を密着させている。昇華法では坩堝の底部が最も高温になり、その部分の断熱材が最も速く劣化する傾向にある。例えば1回の成長の途中で断熱材が劣化すると、単結晶の成長の過程で坩堝内の温度分布の変化が生じ、質が均一な単結晶が得られない。特に単結晶の大口径化、長尺化が進むと成長に時間が長く掛かるため、この問題は顕著になる。よって断熱材の劣化を防止することは、今後の重要な課題である。
一方、坩堝内の温度分布の再現性を高める手法としては、単結晶を何度か成長させる毎に断熱材を交換する方法が考えられる。形状・寸法の安定性の観点からは、成型断熱材を用いること有利であるが、成型断熱材はフェルト状断熱材に比べて高価であるため、それを頻繁に交換すると製造コストの上昇を招く。フェルト状断熱材を使用する場合であっても、フェルト状断熱材が極度に温度上昇すると成長の途中で断熱材が劣化して温度が一定に保てない、または、次の成長に再利用できない問題があった。
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、単結晶の製造において、単結晶の成長途中での断熱材の劣化を抑制することを第1の目的とし、坩堝内の温度分布の再現性を高めることを第2の目的とし、さらに製造コストの上昇を抑えることを第3の目的とする。
本実施の形態に係る単結晶の製造装置は、導電性の坩堝と、誘導加熱により前記坩堝を加熱する加熱手段と、前記坩堝の外周に近接して配設され、当該坩堝の外周を覆う導電性の炉芯管とを備え、前記炉芯管の固有抵抗は、前記坩堝の固有抵抗よりも高く、前記加熱手段により前記坩堝を加熱する際、前記炉芯管の下端が前記坩堝の底よりも低い位置となるものである。
本発明に係る単結晶の製造装置によれば、坩堝の底の外縁部における電流集中が抑制されるため、その部分の温度が過度に上昇することが防止される。それにより坩堝の周囲に設けられる断熱材が単結晶の成長途中で劣化することが抑制され、坩堝内の温度分布の再現性を高めることにより、高品質な単結晶を安定して得ることができる。
実施の形態1に係る単結晶の製造装置の構成を示す図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造装置における坩堝の断面図である。 実施の形態1に係る単結晶の製造装置の変更例を示す図である。 実施の形態3に係る単結晶の製造装置の構成を示す図である。 実施の形態4に係る単結晶の製造装置における載置台の構成図である。 実施の形態4の載置台に用いられるグラファイト板の上面図である。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る単結晶の製造装置の構成を示す図である。ここではその代表例として、SiC単結晶の製造装置を示す。図1の如く、当該製造装置は、坩堝10と、当該坩堝10を覆う炉芯管11とを備える。坩堝10および炉芯管11は、断熱性の載置台20上に載置されるが、坩堝10の底と載置台20との間には、非導電性のフェルト状断熱材22と黒鉛シート21(付着防止シート)とを介在させている。炉芯管11の側面および上面は、非導電性のフェルト状断熱材23,24によって覆われている。図示は省略するが、当該製造装置は、坩堝10を誘導加熱法によって加熱する加熱手段を備えている。
以下、坩堝10の底面に設けられたフェルト状断熱材22を「底部断熱材」、炉芯管11の側面に設けられたフェルト状断熱材23を「側部断熱材」、炉芯管11の上面に設けられたフェルト状断熱材24を「上部断熱材」と称する。これら底部断熱材22、側部断熱材23、上部断熱材24は、それぞれグラファイト製のフェルト状断熱材が複数枚重なって成る積層構造を有している。
坩堝10は、誘導加熱法によって加熱できるように、導電性を有する必要がある。本実施の形態では坩堝10はグラファイト製のものを用いている。図2は、坩堝10の構造の一例を示す断面図である。坩堝10は、SiCの原料102を収納するための原料収納容器101と、種結晶104が取り付けるための台座103aを有する蓋103とを備える。原料収納容器101の内側面には、原料102が昇華したガスを台座103aへと導くためのテーパー状ガイド105が設けられている。
炉芯管11も導電性を有するものであり、本実施の形態ではグラファイト製のものを用いている。炉芯管11は、坩堝10の側面に近接し、当該坩堝10の側方および上方を覆う形状を有している。炉芯管11の上面には、中央部に放熱用開口部11aが設けられる。また図1に示すように、本実施の形態では、炉芯管11の下端は、坩堝10底よりも低い位置にまで延びている。坩堝10の周囲が炉芯管11で覆われていると、炉芯管11の輻射によって断熱効果が向上するため、坩堝10を効率よく加熱することができる。坩堝10と炉芯管11とは接触してもよいが、取り扱いの便宜のため、坩堝10の外径と炉芯管11の内径とに寸法の差(例えば0.4mm程度)を設けるとよい。
ここで、昇華法による単結晶の成長においては、坩堝の底部を上部よりも高温に加熱する必要があるため、坩堝の底部に大きな誘導電流を生じさせる必要がある。本発明者は、シミュレーションにより、炉芯管を用いずに坩堝のみを誘導加熱を行った際、坩堝の底の外縁部に電流集中が生じ、その部分に局所的な温度上昇が生じる確認した。また実際に単結晶の成長を行ったとき、坩堝の外縁部のグラファイトが昇華し、その部分の角が落ちて丸くなったことからも、その部分で温度が上がり過ぎていることが推察できた。
本発明者は、図1のように坩堝10を炉芯管11で覆い、且つ、炉芯管11の下端を坩堝10底よりも低い位置にまで延ばすことで、坩堝10の底の外縁部での電界集中を抑制できることを見出した。これにより、坩堝10の底の外縁部の温度が過度に上昇するのを防止できる。それにより坩堝10の底に接する底部断熱材22の劣化を抑制することができる。なお、発明者は炉芯管11の下端が坩堝10の底と同じ高さの場合についても調査したが、その場合はこの効果は殆ど得られなかった。
炉芯管11の厚さは、誘導加熱における誘導電流の浸透深さよりも小さく、望ましくは3分の1以下とする。また炉芯管11の固有抵抗は、坩堝10の固有抵抗よりも高い方がよく、より好ましくは1200μΩcm〜1300μΩcmの範囲である。このように炉芯管11を薄く、また固有抵抗を高くすると、炉芯管11に発生する誘導電流の大きさが抑えられるので、炉芯管11温度が過度に上昇することが防止される。従って、炉芯管11側面の側部断熱材23、炉芯管11の上の上部断熱材24、並びに炉芯管11が載置された載置台20の劣化を防止できる効果が得られる。なお、誘導電流の大きさや浸透深さは、加熱手段の発振器の周波数に依存するため、炉芯管11の厚さおよび固有抵抗は、その周波数に応じて適宜調整するとよい。
本実施の形態では、載置台20として非導電性のグラファイト製の成型断熱材を用いている。載置台20は、最上部に位置し坩堝10と略同じ径の第1段部201と、その下に位置し第1段部201より径が大きい第2段部202と、さらにその下に位置し第2段部202よりも径が大きい第3段部203とから成る3段構造となっている。また、載置台20には、坩堝10の温度測定に使用される貫通孔20aが設けられている。坩堝10の誘導加熱を行う際は、図1のように、坩堝10は第1段部201の上面に載置され、第2段部202の上面に炉芯管11が載置される。これにより、炉芯管11の下端を坩堝10底よりも低い位置にした状態での誘導加熱が可能になる。
炉芯管11の下端を坩堝10底よりも低い位置にした状態で誘導加熱を行えば坩堝10の底の外縁部の温度上昇を抑制できるが、昇華法ではやはり坩堝10の底部を最も高温にする必要があるため、坩堝10の底に接する底部断熱材22の劣化は、側部断熱材23や上部断熱材24に比べると速い。そのため上部断熱材24は、比較的高い頻度で交換する必要がある。そのため本実施の形態では、底部断熱材22として安価なフェルト断熱材を採用しており、コストの上昇を抑えている。
上記のようにフェルト断熱材は形状・寸法が不安定であるが、底部断熱材22の下方に形状・寸法が安定した成型断熱材の載置台20を配置することによって、温度分布の再現性が低下するのを抑えている。
また本実施の形態では、底部断熱材22と載置台20との間に、黒鉛シート21(付着防止シート)を介在させている。坩堝10を加熱するときにフェルト断熱材の底部断熱材22と成型断熱材の載置台20とが接していると、その熱の影響で底部断熱材22が載置台20に付着するため、底部断熱材22の交換の際に載置台20の表面のコーティングが剥がれて載置台20の劣化が進むという問題が生じるが、両者の間に黒鉛シート21が介在することによりそれを防止できる。本実施の形態では黒鉛シートを用いたが、坩堝10の加熱時の熱に対する耐性があり、載置台20と底部断熱材22との付着を防止できる素材であれば、他のものを用いてもよい。
なお、黒鉛シート21および底部断熱材22には、載置台20の温度測定用貫通孔20aに対応する位置に開口が設けられている。
一方、側部断熱材23(フェルト状断熱材)は、坩堝10の側面のみならず、載置台20の第1段部20および第2段部202の側方にも巻きつけられる。つまり側部断熱材23の下端の位置(第3段部203の上面付近)は、炉芯管11の下端の位置(第2段部202の上面)よりもさらに低くなる。この構造により、炉芯管11の下端と第2段部202の上面の間から熱が漏れるのを側部断熱材23が防止することができる。
但し、載置台20の第3段部203の側面は、側部断熱材23を巻きつけずに露出させる。安定した形状を有する載置台20(成型断熱材)の側部が露出することにより、坩堝10が載置され側部断熱材23で巻かれた載置台20を運搬する際、運搬する者が保持し易くなる。
なお、図1においては、載置台20の第2段部202の径が炉芯管11の径より大きいため、側部断熱材23のフェルト状断熱材のうち内側の数枚は、第2段部202の側面に巻かれずに、その下端が炉芯管11の下端と揃った高さになっている。しかし図3のように、第2段部202の径を炉芯管11の径と略等しくして、側部断熱材23を構成するフェルト状断熱材の全てが第2段部202の側面にも巻き付けられる構成としてもよい。図3の構成では側部断熱材23を炉芯管11および載置台20に巻きつける作業は容易になるが、図1の構成に比べて、載置台20の第2段部202の径を高い精度で加工する必要が生じる点に留意すべきである。
炉芯管11の上面に設けられる上部断熱材24は、フェルト状断熱材を複数枚重ねた積層構造であり、炉芯管11の放熱用開口部11aに対応する位置が開口されている。上部断熱材24を構成するフェルト状断熱材の枚数や、放熱用開口部11aに対応する開口の大きさを調整することによって、坩堝10の縦方向および径方向の温度勾配を調整することができる。それにより、単結晶の成長速度やインゴットの形状を制御することができる。
例えば、上部断熱材24のフェルト断熱材の枚数を多くすると、炉芯管11から上方への放熱が小さくなるため縦方向の温度勾配は小さくなる。またそのとき炉芯管11からの放熱は中心部の放熱用開口部11aで集中的に起こるので、径方向の温度勾配は大きくなる。逆に、上部断熱材24のフェルト断熱材の枚数を少なくすると、炉芯管11の上方への放熱が大きくなるため縦方向の温度勾配は大きくなる。またそのとき炉芯管11の上面では放熱用開口部11a以外の部分からの放熱が大きくなるので、径方向の温度勾配は小さくなる。
ここで、本実施の形態に係る単結晶の製造装置を用いた、SiC単結晶の製造方法の具体例を説明する。
まず坩堝10を用意し、その蓋103の台座103aに種結晶104を取り付け、原料収納容器101の内部にSiCの原料102を充填し、さらに図2のようにテーパー状ガイド105を設置する。その後、黒鉛シート21および底部断熱材22を搭載した載置台20の上に、坩堝10と炉芯管11を設置する。そして炉芯管11の側面にフェルト状断熱材を巻いて側部断熱材23を形成し、炉芯管11の上面をフェルト状断熱材で覆って上部断熱材24を形成する。それにより、図1に示した構成が得られる。
炉芯管11は厚さ3mmのグラファイトで構成した。黒鉛シート21は厚さ0.4mm程度で柔軟性のあるものを用いた。底部断熱材22は厚さ7mmのフェルト状断熱材を3枚重ねて構成し、側部断熱材23は厚さ7mmのフェルト状断熱材を4枚重ねて構成した。上部断熱材24は厚さ7mmのフェルト状断熱材を14枚重ねて構成したが、その枚数は成長させる結晶に合わせて調整する。
そして、坩堝10が載置された載置台20を炉の中に設置し、炉内の圧力を10-4Pa台まで真空引き(排気)する。そして炉内にアルゴン等の不活性ガスを充填し、炉内の圧力を800hPaに保つ。炉内の圧力を800hPaを保持したまま、誘導加熱により坩堝10の温度をSiCの成長温度(坩堝10内の底部の温度が2225℃、上部の温度が2100℃)にまで加熱する。加熱手段の発振器の周波数は10kHzとした。この場合、誘導電流の浸透深さは1.7cmと計算できる。
続いて、坩堝10の温度を維持したまま、炉内の圧力をSiCの成長圧力(3.7hPa)まで減圧する。炉内の圧力が成長圧力に達すると種結晶104上でSiC単結晶の成長が開始する。
所定の成長時間(約50時間とした)の経過後、炉内にアルゴンを充填して、炉内の圧力を800hPaに上昇させる。そして炉内圧力を800hPaに保持したまま、坩堝10の温度を時間をかけて(約10時間とした)室温まで下げ、成長したSiC単結晶を坩堝10から取り出す。
本発明者が、直径40mmの種結晶104を用いて上記の条件でSiC単結晶の製造を行った結果、高さ35mm、直径50mmのSiC単結晶が得られた。得られたSiC単結晶の質を、X線回折によるロッキングカーブ測定により評価したところ、半値幅は20秒以下となり、高品質な単結晶が得られたことが確認できた。
以上のように本実施の形態に係る単結晶の製造装置によれば、炉芯管11の下端を坩堝10の底よりも低い位置にした状態で、坩堝10の誘導加熱が行われるので、坩堝10の底の外縁部における電流集中を抑制でき、その部分の過度な温度上昇を防止できる。よって結晶成長の途中での底部断熱材22の劣化を防止でき、高品質な単結晶を得ることができる。
また炉芯管11の固有抵抗を坩堝10の固有抵抗よりも高くし、さらに炉芯管11の厚さを誘導加熱における誘導電流の浸透深さより薄く(望ましくは3分の1以下)することにより、炉芯管11の発熱が抑えられ、側部断熱材23、上部断熱材24、載置台20の劣化を抑制できる。
さらに、劣化の速い底部断熱材22として安価なフェルト状断熱材を用いることにより、温度分布の再現性を維持するために底部断熱材22の交換を行うことによるコスト上昇が抑えられる。フェルト状断熱材の底部断熱材22は形状・寸法が不安定であるが、その下に成型断熱材の載置台20を配置することにより、温度分布の再現性を高く維持できる。またフェルト状断熱材の底部断熱材22と成型断熱材の載置台20との間に、黒鉛シート21を介在させたことにより、載置台20と底部断熱材22との付着を防止でき、底部断熱材22の交換が容易になると共に、載置台20の保護にも役立つ。
また、載置台20が図1のような3段構造を有するので、炉芯管11の下端が坩堝10の底よりも低い位置とした状態で、坩堝10および炉芯管11を載置台20上に載置することができる。そして側部断熱材23を、炉芯管11が載置される第2段部202にも巻きつけることにより、炉芯管11と第2段部202との間からの熱の漏れを抑制できる。また第3段部203の部分を外部に露出させることにより、運搬時の取り扱いが容易になる。
なお、本発明の適用は、SiC単結晶の製造に限定されるものでなく、例えばAlNやGaNなど、約2000℃以上の高温(断熱材の劣化が懸念される温度)で成長を行う単結晶の製造に広く適用可能である。
<実施の形態2>
上記したように、炉芯管11の上面を覆う上部断熱材24を複数枚のフェルト状断熱材で構成することにより、その枚数により坩堝10内の温度勾配を調整して、単結晶の成長速度やインゴットの形状の制御を行うことができる。本発明者は、上部断熱材24に用いるフェルト状断熱材の枚数が8枚の場合と18枚の場合とで比較した。
フェルト状断熱材の枚数が8枚の場合は、坩堝10内の縦方向の温度勾配(([坩堝の下部温度]−[坩堝の上部温度])/[坩堝の高さ])は、7.83℃/cmとなり、原料102と種結晶104の温度差が大きくなり過ぎた。その結果得られた単結晶は、X線回折によるロッキングカーブ測定での半値幅が60秒前後となり、高い品質とは言えないものであった。
一方、フェルト状断熱材の枚数が18枚の場合は、坩堝10内の縦方向の温度勾配は6.45℃/cmであった。その結果得られた単結晶は、X線回折によるロッキングカーブ測定での半値幅が20秒以下となり、高い品質のものであった。
どちらの場合も、テーパー状ガイド105を備えた坩堝10を用いたが、テーパー状ガイド105の表面に成長した結晶は殆ど見られず、種結晶104の表面からのみ結晶成長し、単結晶部が独立して成長したことが確認できた。
なお、坩堝10内の縦方向の温度勾配が小さくなると成長速度が低下するが、坩堝10の底部の温度を高く設定することにより、成長速度を高めることができる。上の例で成長速度が0.7mm/hを得ることができる坩堝10の底部の温度は、上部断熱材24のフェルト状断熱材が8枚の場合は2185℃であったが、18枚のときはそれを2210℃に高める必要があった。その場合、どちらも50時間で高さ35mm程のインゴットが得られた。
<実施の形態3>
図4は、実施の形態3に係る単結晶の製造装置の構成を示す図である。本実施の形態では載置台20を、坩堝10と略同じ径の第1段部201と、それよりも径が大きい第2段部202とから成る2段構成としたものである。また側部断熱材23は、炉芯管11と載置台20の全体に巻かれており、側部断熱材23の下端は載置台20の底と同じ高さになっている。
図4の構成では、形状の安定した側部断熱材23の側面が露出されないため、坩堝10を載置台20に載置して側部断熱材23を巻いた状態での運搬が困難になるが、載置台20の形状が単純になるので、載置台20の加工が容易になるという効果が得られる。また図4の構成でも、断熱材の劣化を抑制する効果や断熱性能は、実施の形態1と同様に得られることは明らかである。
<実施の形態4>
以上の実施の形態では、坩堝10を載置するための載置台20の素材として、フェルト状断熱材を成型加工した成型断熱材を用いたが、充分な耐熱性と形状・寸法の安定性を具備するものであれば、他の素材を用いてもよい。
図5は、実施の形態4に係る載置台20の構成図である。当該載置台20は、グラファイト板204(板状断熱材)とグラファイト製のフェルト状断熱材205とを交互に積み重ね、それらをグラファイト製のボルト206およびナット207を用いて固定したものである。この載置台20も、温度測定用貫通孔20aを有している。図5では実施の形態1と同様の3段構造の載置台20を示しているが、実施の形態3のような2段構造としてもよい。
フェルト状断熱材205だけでは形状・寸法が安定しないが、それをフェルト状断熱材205で挟持して固定することにより、安定した形状・寸法の載置台20が得られる。そのため少なくとも載置台20の最上部と底部にはグラファイト板204が用いられる。グラファイト板204は、坩堝10や炉芯管11と同様の硬い材質がよいが、誘導加熱により発熱させる必要は無いので、炉芯管11以上に固有抵抗が高いものを用いることが好ましい。
図6は、グラファイト板204の構成例を示す上面図である。グラファイト板204には、ボルト206を通すための開口部204aと、温度測定用貫通孔20aに対応する開口部204bとが設けられる。またその外周部には、径方向に切り込まれたスリット204cが形成されている。スリット204cは、坩堝10の誘導加熱の際にグラファイト板204に発生する誘導電流が低減させるように機能する。
グラファイト板204およびフェルト状断熱材205は、成型断熱材に比べて安価なため、それらを用いてグラファイト板204を構成することによって、製造コストの削減が期待できる。
また図5の例では、載置台20をグラファイト板204とフェルト状断熱材205のみから成る積層構造としたが、それらの間に黒鉛シート(付着防止シート)を介在させてもよい。その場合、グラファイト板204とフェルト状断熱材205との付着が防止されるため、載置台20が劣化したときその一部分だけを交換することが可能になり、さらなる製造コストの削減が期待できる。
10 坩堝、11 炉芯管、20 載置台、21 黒鉛シート、22 底部断熱材、23 側部断熱材、24 上部断熱材、101 原料収納容器、102 原料、103 蓋、104 種結晶、105 テーパー状ガイド、204 グラファイト板、205 フェルト状断熱材、206 ボルト、207 ナット。

Claims (11)

  1. 導電性の坩堝と、
    誘導加熱により前記坩堝を加熱する加熱手段と、
    前記坩堝の外周に近接して配設され、当該坩堝の外周を覆う導電性の炉芯管とを備え、
    前記炉芯管の固有抵抗は、前記坩堝の固有抵抗よりも高く、
    前記加熱手段により前記坩堝を加熱する際、前記炉芯管の下端が前記坩堝の底よりも低い位置となる
    ことを特徴とする単結晶の製造装置。
  2. 前記炉芯管の固有抵抗は、1200μΩcm〜1300μΩcmの範囲内である
    請求項1記載の単結晶の製造装置。
  3. 導電性の坩堝と、
    誘導加熱により前記坩堝を加熱する加熱手段と、
    前記坩堝の外周に近接して配設され、当該坩堝の外周を覆う導電性の炉芯管とを備え、
    前記炉芯管の厚さは、前記誘導加熱における誘導電流の浸透深さの3分の1以下であり、
    前記加熱手段により前記坩堝を加熱する際、前記炉芯管の下端が前記坩堝の底よりも低い位置となる
    ことを特徴とする単結晶の製造装置。
  4. 坩堝が載置される断熱性の載置台と、
    フェルト状断熱材から成り、前記坩堝の底と前記載置台との間に介在する底部断熱材とをさらに備える
    請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の単結晶の製造装置。
  5. 前記載置台と前記底部断熱材との間に介在し、前記坩堝を加熱したときの熱による前記載置台と前記底部断熱材との付着を防止する付着防止シートをさらに備える
    請求項4記載の単結晶の製造装置。
  6. 前記載置台は、
    フェルト状断熱材を成型して成る成型断熱材である
    請求項4または請求項5記載の単結晶の製造装置。
  7. 前記載置台は、
    フェルト状断熱材と板状断熱材とを交互に積み重ねて固定したものである
    請求項4から請求項6のいずれか1つに記載の単結晶の製造装置。
  8. 前記載置台は、
    前記フェルト状断熱材と板状断熱材との間に介在し、前記坩堝を加熱したときの熱による前記フェルト状断熱材と板状断熱材との付着を防止する付着防止シートをさらに備える
    請求項7記載の単結晶の製造装置。
  9. 前記載置台は、
    上面に前記坩堝が載置される第1段部と、
    前記第1段部の下に位置し、当該第1段部のより径が大きく、上面に前記炉芯管が載置される第2段部とを含む
    請求項4から請求項8のいずれか1つに記載の単結晶の製造装置。
  10. フェルト状断熱材から成り、前記炉芯管、前記第1および第2段部の側方を覆う側部断熱材をさらに備える
    請求項9記載の単結晶の製造装置。
  11. 前記載置台は、
    前記第2段部の下に位置し、当該第2段部のより径が大きい第3段部をさらに含み、
    側部断熱材は、前記第3段部の側方を覆わないように設置される
    請求項10記載の単結晶の製造装置。
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