以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施例及び参考例において同様な要素には同符号を付記し、重複する説明は適宜省略する。図1は実施形態の鍵盤装置の要部を概念的に示す側面図、図2は実施形態の鍵盤装置における鍵及びキーガイド部の配置例を示す要部斜視図である。なお、図1において図面の左側が演奏者側、図1の図面に垂直な方向が鍵並び方向であり、以下の説明において、鍵盤装置の「上下左右」は演奏時の演奏者側から見た正立状態における「上下左右」の意味とする。また、「前後方向(あるいは手前と奥)」を指す場合、演奏者側を「前、手前」、背面側を「後、奥」とする。
この鍵盤装置は例えば電子鍵盤楽器のものであり、鍵並び方向に併設された複数の白鍵10W,10W,…と黒鍵10B,10B,…を備えており、各白鍵10W及び黒鍵10Bは 、その後端部において鍵フレーム20上の鍵支持部20aにより回動支点Oを回動軸として回動自在に支持されている。また、鍵フレーム20には白鍵10Wのためのキーガイド部1W及び黒鍵10Bのためのキーガイド部1Bが配設されている。
白鍵10W及び黒鍵10Bは、いずれも樹脂成形された裏面に開口部を有する函状の形状となっており、それらの内側面を被ガイド部としてキーガイド部1W,1Bが白鍵10W及び黒鍵10Bをそれぞれガイドするものである。したがって、白鍵10W用のキーガイド部1Wも、黒鍵10B用のキーガイド部1Bの同様な構造とすることができるので、以下の説明では白鍵10Wを「鍵10」、キーガイド部1Wを「キーガイド部1」として白鍵を例に説明する。
鍵フレーム20の先端部には鍵10の押鍵時の下限を規制する下限ストッパDSが配設され、鍵フレーム20の裏面には鍵10の離鍵時の上限を規制する上限ストッパUSが配設されている。そして、押鍵時には鍵10の先端側裏面が下限ストッパDSに当接し、離鍵時には鍵10の裏面に形成されたストッパ当接片101が上限ストッパUSに当接する。なお、鍵フレーム20上には鍵10の押鍵及び離鍵を検出する図示しない鍵スイッチが配設されている。
図2に示すように、キーガイド部1はその上部に摺動部1a,1aを有しており、この摺動部1a,1aが鍵10の内側に配置されている。そして、鍵10の押離鍵時に、摺動部1a,1aが鍵10の内側面10a,10aと接触し、内側面10a,10aが摺動部1a,1aに対して摺動することにより、鍵10の回動がガイドされる。このように、キーガイド部1の摺動部1a,1aと鍵10の内側面10a,10aとの接触部分が「摺動接触部」を構成している。
なお、図1及び図2に示すキーガイド部1は鍵10との関係を概念的に図示したものであり、このキーガイド部1及び摺動部1aの具体例は以下の実施例及び参考例で説明する。また、以下の実施例及び参考例では主に1つの鍵10を例に説明するが、複数の白鍵10W,10W,…、複数の黒鍵10B,10B,…についても同様な構造である。
図3は鍵10とキーガイド部1の第1参考例を示す図であり、図1のA−A矢視図である。なお、図面をわかりやすくするために、断面の斜線は適宜省略してある。キーガイド部1は、鍵フレーム20上に立設定されたガイドブロック11を有しており、このガイドブロック11は硬質樹脂で形成されている。また、鍵フレーム20の裏面にはソレノイド等からなる駆動部12が配設されている。ガイドブロック11には、その中央下端から上部に向けて穿たれた立溝孔11aが形成されるとともに、この立溝孔11aの上部から両側に分かれた二股溝孔11b,11bが形成されている。また、二股溝孔11b,11bからガイドブロック11の両側には鍵10の内側面10a,10aに向けて開口する開口部11c,11cが形成されている。そして、この開口部11c,11c内に軟質エラストマー等の弾性体で形成された摺動部1a,1aが配設されている。また、立溝孔11a内には、鍵フレーム20の透孔20bを介してアクチュエータ12aが配設されている。このアクチュエータ12aは駆動部12によって駆動される。さらに、このアクチュエータ12aの先端と摺動部1a,1aとはワイヤー等の連結部材13で連結されている。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aが摺動部1a,1aに接触して摺動し、鍵10の回動がガイドされる。このとき、摺動部1a,1aは鍵10の回動に対する抵抗力を付与している。このように、キーガイド部1の摺動部1a,1aと鍵10の内側面10a,10aとが「摺動接触部」を構成している。
一方、駆動部12によりアクチュエータ12aが上下に駆動され、その上下動は連結部材13を介して摺動部1a,1aに伝達される。これにより、摺動部1a,1aは鍵10の内側面10a,10aに向けて出没する。したがって、駆動部12によるアクチュエータ12aの上下駆動量を制御して、摺動部1a,1aと内側面10a,10aとの摺動時の接触圧を調整することができる。これにより、摺動部1a,1aが鍵10に対して付与する抵抗力を調整することができ、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。この駆動部12は「変更手段」を構成している。
図4はキーガイド部1の第2参考例を示す図であり、図1のA−A矢視図である。この参考例では、摺動部1a,1aが連結部1a1によって一体に形成され、この連結部1a1とアクチュエータ12aとの間にコイルバネ14が取り付けられている。この参考例では摺動部1a,1aと連結部1a1の一体部材が軟質エラストマー等の弾性体で形成されている。また、キーガイド部1の摺動部1a,1aと鍵10の内側面10a,10aとが「摺動接触部」を構成している。
そして、この第2参考例では、駆動部12でアクチュエータ12aを上下動すると、摺動部1a,1aが鍵10の内側面10a,10aに向けて出没する。したがって、駆動部12によるアクチュエータ12aの上下駆動量を制御して、摺動部1a,1aと内側面10a,10aとの摺動時の接触圧を調整することができる。これにより、摺動部1a,1aが鍵10に対して付与する抵抗力を調整することができ、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。さらに、コイルバネ14の弾性力により、鍵10の内側面10a,10aからの力の変化を緩やかに受けることができる。この駆動部12は「変更手段」を構成している。
図5はキーガイド部1の第3参考例を示す図である。図5(A) に示すように、この参考例のキーガイド部1は、鍵フレーム20上に回転自在に立設されたガイド軸21と、ガイド軸21の上端に固着された水平断面が楕円形状の楕円キーガイド22と、ガイド軸21の下部に連結固着され鍵フレーム20に平行に配置されたアーム23とで構成されとている。ガイド軸21とアーム23は金属等で形成され、楕円キーガイド22は軟質エラストマー等の弾性体で形成されている。そして、ガイド軸21の上部と楕円キーガイド22が鍵10の内側に配設されている。また、各鍵10,10,に対応するキーガイド部1,1,…の各アーム23,23,…の自由端23a,23a…は、鍵並び方向に全鍵分の長さを有する連接バー24に回動可能に連結されている。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aが楕円キーガイド22に接触して摺動し、鍵10の回動がガイドされる。すなわち、楕円キーガイド22と鍵10の内側面10a,10aとが「摺動接触部」を構成している。一方、連接バー24を左右(鍵並び方向)に移動すると、アーム23.23.…を介して、ガイド軸21及び楕円キーガイド22が垂直な回転軸L1の回りに回転する。なお、この回転軸L1は、鍵10の回動支点Oに対応する回動軸LOに対して直交する方向になっている。
図5(B) は楕円キーガイド22と鍵10の関係を示す図であり、実線で示す楕円キーガイド22はその楕円の長軸の方向が鍵10の長手方向に対して直角になっている状態(以下、「直角状態」という。)であり、二点鎖線で示す楕円キーガイド22は上記直角状態から角度θだけ回転した状態である。そして、直角状態では、楕円キーガイド22は鍵10の内側面10a,10aからの抗力を受けて楕円の長軸方向にわずかに圧縮されている。また、角度θだけ回転した状態では、楕円キーガイド22は内側面10a,10aに接触しているだけで、弾性回復した状態となっている。
すなわち、楕円キーガイド22は、直角状態から角度θの範囲の回転位相(回転角度)に対応した歪みを生じ、その歪みに応じた接触圧が得られる。また、楕円キーガイド22と内側面10a,10aとの接触面積も上記歪みに応じたものとなる。すなわち、楕円キーガイド22は鍵10の回動に対する抵抗力を付与しているが、連接レバー24により楕円キーガイド22の回転位相を調整し、鍵10に対して付与する抵抗力を調整することができる。したがって、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。なお、連接レバー24はは「変更手段」を構成している。
図6はキーガイド部1の第4参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、図示しない部材により鍵フレーム20に対して回動自在に軸支された軸部材31と、この軸部材31に取り付けられたロータリーガイド32とで構成されている。軸部材31は例えば鍵盤装置の端に設けられた回転操作子33に連結され、この回転操作子33の回転操作によりロータリーガイド32が回転する。図6(B) はロータリーガイド32の上面図である。ロータリーガイド32は軟質エラストマー等の弾性体で形成されている。また、このロータリーガイド32の側面32a,32aは互いに角度を成しており、周囲の一端の厚みが最大で、この一端と180度離間した他端の厚みが最小となっている。そして、ロータリーガイド32は側面32a,32aを鍵10の内側面10a,10aに接触するように配置され、軸部材31の回転軸L2の回りに回転可能となっている。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aがロータリーガイド32の側面32a,32aに接触して摺動し、鍵10の回動がガイドされる。このように、ロータリーガイド32の側面32a,32aと鍵10の内側面10a,10aとが「摺動接触部」を構成している。一方、ロータリーガイド32は鍵10の内側面10a,10aからの抗力を受けて回転軸L2方向にわずかに圧縮される。すなわち、ロータリーガイド32は、その回転位相θ(回転角度)に対応した歪みを生じ、その歪みに応じた接触圧が得られる。また、ロータリーガイド32と内側面10a,10aとの接触面積も上記歪みに応じたものとなる。すなわち、ロータリーガイド32は鍵10の回動に対する抵抗力を付与しているが、回転操作子33によりロータリーガイド32の回転位相を調整し、鍵10に対して付与する抵抗力を調整することができる。したがって、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。なお、ロータリーガイド32の回転軸L2と鍵10の回動支点Oに対応する回動軸LOとは互いに平行になっている。また、回転操作子33は「変更手段」を構成している。
図6(C) はロータリーガイドの他の参考例であり、このロータリーガイド32′は軟質エラストマー等の弾性体で形成されており、その側面に突起32a′,32a′,…が形成されている。このロータリーガイド32′も前記回転操作子33と同様な回転操作子により軸部材31′の回転軸L2の回りに回転可能とされ、鍵10の内側に配設される。そして、側面の複数の突起32a′,32a′,…でペアを構成し、突起32a′,32a′の頂点の間隔dを異ならせることで、回転位相θに応じて、ロータリーガイド32′の突起32a′,32a′と内側面10a,10aとの摺動時の接触圧を調整することができる。これにより、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。
なお、上記参考例のキーガイド1において、ロータリーガイド32(あるいは32′)は各鍵10にそれぞれ設けられている。そして、ロータリーガイド32(あるいは32′)は、各鍵10毎に独立に回転するものでもよいし、共通に回転するものでもよい。
図7はキーガイド部1の第5参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1はガイドブロック11を有している。また、鍵フレーム20の裏面には駆動部12を備えている。この駆動部12は第1参考例と略同様である。ガイドブロック11には、その中央下端から上端に向けて貫通する立溝孔11dが形成されるとともに、この立溝孔11dの上部に左右に貫通する横溝孔11e,11eが形成されている。また、横溝孔11e,11e内に軟質エラストマー等の弾性体で形成された摺動部41,41が配設されている。また、立溝孔11d内には、アクチュエータ12aの先端に取り付けられた直動カム42が配設されている。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aが摺動部41,41に接触して摺動し、鍵10の回動がガイドされる。このとき摺動部41,41は鍵10の回動に対する抵抗力を付与している。このように、摺動部41,41と鍵10の内側面10a,10aとが「摺動接触部」を構成している。一方、駆動部12によりアクチュエータ12aが上下に駆動され、その上端の直動カム42が上下する。これにより、直動カム42の側面により摺動部41,41は鍵10の内側面10a,10aに向けて出没する。したがって、駆動部12によるアクチュエータ12aの上下駆動量を制御して、摺動部41,41と内側面10a,10aとの摺動時の接触圧を調整することができる。これにより、摺動部41が鍵10に付与する抵抗力を調整でき、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。駆動部12、直動カム42は「変更手段」を構成している。
図8はキーガイド部1の実施例を示す図である。この実施例のキーガイド部1は、鍵フレーム20に沿って鍵長手方向に移動可能に配設された基部51と、基部51上に立設されたフレーム部52と、該フレーム52の両側に取り付けられた軟質エラストマー等の弾性体で形成された摺動部53,53とで構成されている。基部51とフレーム部52は例えば硬質樹脂等で一体に形成されている。鍵フレーム20の裏面にはガイド移動部54を備えている。このガイド移動部54は、基部51に連結されアーム54aとモータ54bとを有し、アーム54aの後端部にはラック54a1が形成されている。そして、このラック54a1はモータ54bの駆動軸に取り付けられたピ二オン54b1に歯合されている。
鍵10の内側面10a,10aの前部の間隔は、鍵10の先端から後端に向かうに従って広がるように構成されており、この傾斜部分はガイド幅が変化する鍵側ガイド部10a1,10a1を構成している。なお、図8(A) ではこの傾斜の角度を誇張して図示してある。そして、キーガイド部1の上部すなわち、2つの摺動部53,53の部分は、この摺動部53,53を鍵並び方向に向けて鍵10の鍵側ガイド部10a1,10a1の間に配置されている。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その鍵側ガイド部10a1,10a1が摺動部53,53に接触して摺動し、鍵10の回動がガイドされる。このとき摺動部53,53は鍵10の回動に対する抵抗力を付与している。このように、摺動部53,53と鍵10の鍵側ガイド部10a1,10a1とが「摺動接触部」を構成している。一方、モータ54bの回転力は、ピ二オン54b1、ラック54a1及びアーム54aを介してキーガイド部1(基部51)に伝達され、モータ54bの正逆回転により、キーガイド部1が前後(鍵10の長手方向前後)移動する。
これにより、摺動部53,53は鍵10の鍵側ガイド部10a1,10a1に接触しながら、前後に摺動ずる。このとき、摺動部53,53の接触位置における鍵側ガイド部10a1,10a1の間隔すなわちガイド幅が、キーガイド部1と鍵10の回動支点Oとの距離に応じて変化する。したがって、モータ54bの駆動量によりキーガイド部1の位置を制御することで、摺動部53,53と鍵側ガイド部10a1,10a1との摺動時の接触圧を調整することができる。これにより、摺動部53が鍵10に付与する抵抗力を調整でき、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。ガイド移動部54は「変更手段」を構成している。
図9はキーガイド部1の第6参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、鍵フレーム20上に立設定されたガイドブロック61と可動ガイド62とで構成されており、このガイドブロック61及び可動ガイド62は硬質樹脂等で形成されている。また、鍵フレーム20の裏面にはたソレノイド等からなる駆動部63が配設され、この駆動部63のアクチュエータ63aに可動ガイド62が連結されている。
ガイドブロック61はその上端部の両側に突出する摺動部61a,61aを有し、可動ガイド62はガイドブロック61の両側を挟む摺動板621,621を有している。また、鍵10の内側面10a,10aには潤滑剤64,64が塗布されている。そして、ガイドブロック61の摺動部61a,61aと、摺動板621,621の表面である摺動面621a,621aは、潤滑剤64,64を介在させて鍵10の内側面10a,10aに接触している。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aが摺動面621a,621aと摺動部61a,61aに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤64を介してガイドされる。このように、潤滑剤64,64を介して接触している摺動面621a,621aと内側面10a,10aとの接触部分が「摺動接触部」を構成し、その面積が「有効接触面積」である。
一方、駆動部63によりアクチュエータ63aが上下に駆動され、可動ガイド62が上下に移動すると、摺動板621,621が上下に移動して摺動接触部の接触部分の高さdが変化する。すなわち摺動接触部の有効接触面積が変化し、この有効接触面積に応じて可動ガイド62及び潤滑剤64が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、駆動部63によるアクチュエータ63aの上下駆動量を制御して、鍵10に対するガイド時の粘性抵抗を調整することができる。これにより、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。駆動部63は「変更手段」を構成している。
図10はキーガイド部1の第7参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、図示しない部材により鍵フレーム20に対して回動自在に軸支された軸部材65と、この軸部材65に取り付けられたロータリーガイド66とで構成されている。軸部材65は例えば鍵盤装置の端に設けられた回転操作子65aに連結され、この回転操作子65aの回転操作によりロータリーガイド66が回転する。また、鍵10の内側面10a,10aには潤滑剤67,67が塗布されている。ロータリーガイド66は扇形の形状であり、円弧状の外周の縁は肉厚の突条となりり、その表面である摺動面66a,66aは、潤滑剤67,67を介在させて鍵10の内側面10a,10aに接触している。この潤滑剤67,67を介して接触している摺動面66a,66aと内側面10a,10aとの接触部分が「摺動接触部S」でありその面積が「有効接触面積」である。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10a,10aがロータリーガイド66の摺動面66a,66aに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤67を介してガイドされる。一方、回転操作子65aによりロータリーガイド66を回転する。これにより、図10(B) ,(C) に示すように、ロータリーガイド66の回転位相θ(回転角度)に応じて摺動接触部Sの有効接触面積が変化し、この有効接触面積に応じてロータリーガイド66と潤滑剤67が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ロータリーガイド66の回転位相を調整し、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。なお、ロータリーガイド66の回転軸L3と鍵10の回動支点Oに対応する回動軸LOとは互いに平行になっている。また、回転操作子65aは「変更手段」を構成している。
図11はロータリーガイドの他の参考例であり、このロータリーガイド66′は波頭型の形状であり、鍵フレームに対して回動自在に軸支された軸部材65′に取り付けられている。また、このロータリーガイド66′は、その側面の全面が摺動面66a′となっている。そして、この摺動面66a′は、潤滑剤67′を介在させて鍵10の内側面10aに接触している。この潤滑剤67′を介して接触している摺動面66a′と内側面10aとの接触部分が「摺動接触部S」でありその面積が「有効接触面積」である。
このロータリーガイド66′も前記回転操作子65aと同様な回転操作子により軸部材65′の回転軸L3の回りに回転可能とされている。そして、図11(B) に示すように、ロータリーガイド66′の回転位相θに応じて、摺動接触部Sの有効接触面積が変化し、この有効接触面積に応じてロータリーガイド66′と潤滑剤67′が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ロータリーガイド66′の回転角度を調整し、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。
図12はキーガイド部1の第8参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、図示しない部材により鍵フレームに対して回動自在に軸支された軸部材71と、この軸部材71に取り付けられたロータリーガイド72とで構成されている。軸部材71は前記回転操作子65aと同様な回転操作子に連結され、この回転操作子の回転操作によりロータリーガイド72が回転する。そして、このロータリーガイド72は鍵10の内側に配設されている。
また、図12(B) に示すように、鍵10の内側面10aには潤滑剤73が塗布されている。ロータリーガイド72は扇形の形状であり、その側面部分に段差をなす円弧状の段差部72aを有し、この段差部72aにより鍵10の内側面10aに接触する摺動面72bが形成されている。そして、この摺動面72bは、潤滑剤73を介在させて鍵10の内側面10aに接触している。この潤滑剤73を介して接触している摺動面72bと内側面10aとの接触部分が「摺動接触部」でありその面積が「有効接触面積」である。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10aがロータリーガイド72の摺動面72bに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤73を介してガイドされる。一方、回転操作子によりロータリーガイド72を回転すと、図12(B) に示すように、ロータリーガイド72の回転位相θ(回転角度)に応じて、ロータリーガイド72の段差部72aの位置が変化する。この段差部72aは摺動接触部とそれ以外の部分との境界線Bとなり、この境界線Bが移動することにより摺動接触部の有効接触面積が増減する。すなわち、この有効接触面積に応じてロータリーガイド72と潤滑剤73が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ロータリーガイド72の回転位相を調整し、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。
図13はキーガイド部1の第9参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、鍵フレーム20上に配置されたスライドガイド74で構成されており、このスライドガイド74は硬質樹脂等で形成されている。また、鍵フレーム20の裏面にはソレノイド等からなる駆動部75が配設されている。そして、スライドガイド74は駆動部75のアクチュエータ75aに取り付けられ、このスライドガイド74は鍵10の内側に配設されている。
また、鍵10の内側面10aには潤滑剤76が塗布されている。スライドガイド74は、その側面部分に段差をなす山形の段差部74aを有しており、この段差部74aにより鍵10の内側面10aに接触する摺動面74bが形成されている。そして、この摺動面74bは、潤滑剤76を介在させて鍵10の内側面10aに接触している。この潤滑剤76を介して接触している摺動面74bと内側面10aとの接触部分が「摺動接触部」でありその面積が「有効接触面積」である。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、その内側面10aがスライドガイド74の摺動面74bに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤76を介してガイドされる。一方、駆動部75によりスライドガイド74は上下に駆動され、段差部74aの上下位置が変化する。この段差部74aは摺動接触部とそれ以外の部分との境界線Bとなり、この境界線Bが上下移動することにより摺動接触部の有効接触面積が増減する。すなわち、この有効接触面積に応じてスライドガイド74と潤滑剤76が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、駆動部75によるアクチュエータ75aの上下駆動量を制御して、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。駆動部75は「変更手段」を構成している。
図14はキーガイド部1の第10参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、鍵フレーム20に沿って鍵長手方向に移動可能に配設された基部81と、基部81上に立設されたスライドガイド82とで構成されている。基部81とスライドガイド82は例えば硬質樹脂等で一体に形成されている。また、鍵フレーム20の裏面にはソレノイド等のガイド移動部83を備えている。そして、このガイド移動部83のアクチュエータ83aに基部81が取り付けられている。
鍵10の内側面10a,10aのうち、黒鍵を配置するための段部10B(図14(B) )に対応する位置には、内側面10a,10aのさらに内側に出っ張るように鍵側ガイド部10a2,10a2が形成されている。これにより、鍵側ガイド部10a2,10a2の対向間隔である幅寸法に段差をなす段差部10a3,10a3が形成されている。そして、スライドガイド82が、この鍵側ガイド部10a2,10a2の間に配置されており、このスライドガイド82における鍵側ガイド部10a2との接触面は摺動面82aとなっている。また、図14(A) に示すように、鍵側ガイド部10a2,10a2の部分には潤滑剤84が塗布されている。そして、スライドガイド82の摺動面82aは、潤滑剤84を介在させて鍵側ガイド部10a2に接触している。この潤滑剤84を介して接触している摺動面82aと鍵側ガイド部10a2との接触部分が「摺動接触部」でありその面積が「有効接触面積」である。ガイド移動部83は「変更手段」を構成している。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、鍵側ガイド部10a2がスライドガイド82の摺動面82aに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤84を介してガイドされる。一方、ガイド移動部83によりスライドガイド82は鍵長手方向に移動する。このとき、鍵側ガイド部10a2の段差部10a3が摺動接触部とそれ以外の部分との境界線Bとなり、スライドガイド82に対するこの境界線Bの位置が変化する。すなわち、スライドガイド82の境界線B内への潜入具合で摺動接触部の有効接触面積が増減し、この有効接触面積に応じてスライドガイド82と潤滑剤84が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ガイド移動部83による鍵長手方向の駆動量を制御して、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。
図15はキーガイド部1の第11参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、鍵10に元々存在する段差部すなわちストッパ当接片101を利用したものである。キーガイド部1はスライドガイド91を有し、このスライドガイド91をストッパ当接片101に接触させている。このストッパ当接片101の後方側縁は段差部101aとなっている。また、スライドガイド91はアクチュエータ92aを介してガイド移動部92に連結されている。ストッパ当接片101にはには潤滑剤93が塗布されている。そして、スライドガイド91におけるストッパ当接片101との接触面は摺動面91aとされ、潤滑剤93を介して接触している摺動面91aとストッパ当接片101との接触部分が「摺動接触部」でありその面積が「有効接触面積」である。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、ストッパ当接片101がスライドガイド91の摺動面91aに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤93を介してガイドされる。一方、ガイド移動部92によりスライドガイド91は鍵長手方向に移動する。このとき、ストッパ当接片101の段差部101aが摺動接触部とそれ以外の部分との境界線Bとなり、スライドガイド91に対するこの境界線Bの位置が変化する。すなわち、スライドガイド91の境界線B内への潜入具合で摺動接触部の有効接触面積が増減し、この有効接触面積に応じてスライドガイド91と潤滑剤93が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ガイド移動部92による鍵長手方向の駆動量を制御して、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。ガイド移動部92は「変更手段」を構成している。
図16はキーガイド部1の第12参考例を示す図である。この参考例のキーガイド部1は、鍵10に元々存在する段差部すなわち鍵10の黒鍵を配置するための段部10Bを利用したものである。キーガイド部1はスライドガイド94を有し、このスライドガイド94を、段部10Bに対応する位置で、鍵10の内側面10a,10aの間に配設したものである。すなわち、段部10Bの内側の面は段差部10B1となっており、スライドガイド94の段差部10B1側の面は摺動面94aとなっている。この摺動面94aは、段差部10B1側の内側面10aと面接触している。また、スライドガイド94は、他方の内側面10aとは突条94bにより接触している。さらに、内側面10a,10aのスライドガイド94に接触する部分には潤滑剤95が塗布されている。そして、潤滑剤95を介して接触している摺動面94aと内側面10aとの接触部分が「摺動接触部」でありその面積が「有効接触面積」である。
以上の構成により、鍵10の押離鍵時には、内側面10a,10aがスライドガイド94の摺動面94aに接触して摺動し、鍵10の回動が潤滑剤95を介してガイドされる。一方、前記ガイド移動部92と同様なガイド移動部によりスライドガイド94は鍵長手方向に移動する。このとき、内側面10aの段差部10B1が摺動接触部とそれ以外の部分との境界線Bとなり、スライドガイド94に対するこの境界線Bの位置が変化する。すなわち、スライドガイド94の境界線B内への潜入具合で摺動接触部の有効接触面積が増減し、この有効接触面積に応じてスライドガイド94と潤滑剤95が鍵10に与える粘性抵抗が変化する。したがって、ガイド移動部による鍵長手方向の駆動量を制御して、鍵10の押鍵時のタッチ感を変更設定することができる。