JP5113969B2 - 歯肉縁上の粉末スプレー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯面の洗浄方法における微粉末の使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代の予防的治療を背景として、最近では、歯の硬質物質から硬質および軟質の沈着物を洗浄によって除去することが慣例となっている。歯垢(congrement)または歯石とも称される硬質沈着物を除去するために、適切な手動具で削り取るなどの機械的技術や、超音波処理チップの使用が、通常採用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
たとえばコーヒーまたはタバコの摂取に起因する、いわゆる軟質沈着物は、一般的には研磨ペーストまたは粉末/水混合物を用いるジェット洗浄により除去される。ジェット洗浄は、通常、重炭酸ナトリウム粉末を水に添加した混合物を用いて行われる。これには、ペーストで研磨することに比べ沈着物をずっと迅速に除去することができるという長所がある。しかしながら、欠点として、使用される粉末/水混合物が歯面に対して摩損性を示し、その結果、処理された歯の領域が粗面になる。したがって、更に処理ステップが必要で、研磨盤で再び歯面を平滑化しなければならない。さらに、粉末/水混合物のこの摩損性が、歯の硬質物質の剥落を引き起こし、繰り返し使用した場合、特に歯頚領域を敏感にする可能性がある。
【0004】
英国特許出願GB−A−1480594号には、研磨物質を含有する水ジェットで歯面を洗浄する方法が開示されている。好適であると記述される物質は、被覆されたまたは非被覆の有機または無機物質を含む。どの物質が実際に歯面を穏やかに且つ効果的に洗浄し得るかについての示唆を欠いている。
【0005】
これとは対照的に、独国特許出願第19910559号には、歯頚表面、すなわち歯肉縁下歯面の粉末ジェット洗浄用組成物の製造のための微粉末の使用が記載されている。
【0006】
言及された問題を回避する歯面洗浄用の粉末または粉末混合物を提供することが、本発明の目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本目的は、特許請求の範囲に記載の粉末および粉末混合物の使用を通じて達成される。
【0008】
本発明において使用する粉末または粉末混合物は、その粉末ジェット洗浄により生じる歯肉縁上歯面の摩損が、ジェット圧力4バール、且つ、歯面とジェットノズルとの間隔2.5mm以下で2分間ジェット洗浄を持続した9.6mm2の歯面を基準にして、0.10mm3以下、好ましくは0.08mm3以下、特に好ましくは0.05mm3以下であるようなものである。
【0009】
本発明により用いることができる粉末および粉末混合物は、密度がたとえば2.0g/cm3以下で、且つ/または45μm以下の平均粒径を有する。
【0010】
これらの性質を有する粉末は、歯肉縁上の歯の硬質物質または目に見える歯面に対し、公知の組成物で通常生じるような顕著な摩損をまったく呈しないにもかかわらず、良好な洗浄作用を示す。
【0011】
摩損性がとても低いので、歯の歯肉縁上硬質物質、特にエナメル質の摩損量は見出すのが不可能であるか、あるいは、歯科分野で慣用される複製組成物(たとえば、ESPE製のDimension(登録商標)Garant)を使用して光学顕微鏡下で圧痕を観察しても非常にわずかしか見出すことができない。
【0012】
結果として、続けて磨くステップは不要である。
【0013】
その上に、これらの粉末および粉末混合物は、短い間隔であっても、再生不能な歯の硬質物質を顕著に減らすことなく、繰り返し利用することができる。この間隔は、総計してわずか数日または数週間でよい。
【0014】
驚くべきことに、その粉末および粉末混合物は、たとえばニコチン、コーヒー、お茶または赤ワインの色素に由来する眼に見える歯の硬質物質の通常の汚れおよび変色だけでなく、見ることが困難または不可能な歯垢残留物、特に微生物由来の沈着物を除去するのにも使用ができることが見出された。
【0015】
好ましい程度に小さい平均粒径のために、歯面が歯間領域であっても洗浄可能である。
【0016】
粉末ジェット洗浄処理の高い効力が得られるのは、たとえば、実際の洗浄ステップの前に、歯質の歯垢残留物、特に目に見えない歯垢残留物を検査する時である。そのような歯質上の沈着物は、通常、従来の歯の洗浄法では除去されない。
【0017】
そのような沈着物は、独国特許出願第19926728号に記載されているように、たとえば適当な印象材を使用することにより検出することができる。
【0018】
当該独国出願に記載されている変形性、治療可能および/または皮膜形成性の担体物質は、部位特異的および物質特異的な口腔診断のために診断上利用できる添加剤を含み、濃度としてはたとえば0.0001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。診断用添加剤の例は、染料指示薬、抗体、および酵素を含む。これらは所望によりマイクロカプセル化されて存在していてもよい。
【0019】
好適な印象材は、たとえば、ポリエーテルを基盤としたもの、シリコーンを基盤としたもの、親水コロイドを基盤としたもの、またはアルギネートを基盤としたものを含む。
【0020】
本発明を以下に具体的に説明する。
【0021】
本発明における使用に好適な粉末および粉末混合物は、特に、歯科分野の従来の粉末ジェット装置を使って移送することが可能な粉末および混合物である。
【0022】
本発明における使用に好適なすべての粉末に共通する特徴は、それらが一般に、歯肉縁上歯の洗浄にこれまで用いられてきた粉末および粉末混合物よりも低い密度を有することである。
【0023】
その上、好ましいことにそれらは45μm以下の小さな平均粒径を有する。
【0024】
また0.05μm〜60μmの粒子分布を有する粉末も好ましく、0.1μm〜40μmの粒子分布を有する粉末が特に好ましい。
【0025】
当然のことながら、少なくとも2つの粉末を含む粉末混合物もまた記載した発明の目的に好適である。その場合、混合比は原則任意であるが、2つの粉末を使用する場合、混合する粉末質量に基づいて好ましくは1:10〜10:1の範囲である。
【0026】
歯面の洗浄剤として使用する前に、粉末を非常に微細に分割された形で存在する物質とさらに混合することも有利である。これは、得られた粉末混合物を従来の粉末ジェット装置でより効果的に且つより速く移送することができるという効果を有する。
【0027】
これらの物質は、慣例的には0.01〜5.0重量%、好ましくは0.5〜1重量%の量で添加される。
【0028】
非常に微細に分割された形で存在する前記粉末の例は、酸化ホウ素、シリカゲル、高分散シリカ、好ましくはオルガノシランでシラン化されたもの、たとえば、トリメチルシリル基を含有するシリカを含む。
【0029】
微粉末は、好ましくは約0.07μmの平均粒系、特に好ましくは約0.02μmの平均粒径を有する。
【0030】
他にも微細に分割された物質を混合することも考えられ、例として過ホウ酸塩(過ホウ酸ナトリウムなど)のような漂白剤、フッ化ナトリウムのようなフッ化物供与物質、アルチカイン(articaine)またはリドカインのような鎮痛剤、クロルヘキシジンまたはトリクロサンのような殺菌剤、クエン酸またはアスコルビン酸のような香料がある。
【0031】
主に毒性学的に問題がなく、および/または生体内と生体外の両方で容易に生分解する粉末および粉末混合物を使用することが好ましい。
【0032】
歯肉縁上歯面の洗浄に特に好適な粉末は、アミノ酸、糖、有機酸およびそれらの塩、具体的にはアルカリ金属塩(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム、ストロンチウム)またはアンモニウム塩のような、天然に産する有機物質である。しかしながら、無機物質もまた好適であり、但し、歯肉縁上歯の硬質物質に対して所望の低い摩損性を呈し、且つ、好ましくは記載されている密度および粒径を有することを条件とする。
【0033】
グリシン、尿素、フタル酸水素カリウムおよび/またはグルコン酸カリウムが特に有利である
【0034】
所要により、粉末は表面被覆されたものであってもよい。好適な表面被覆剤は、次の物質を含む:デンプン、アルギネート、コラーゲン(ゼラチン)、ヒドロゲル、ポリアンヒドリド、ポリエステル、ポリイミノカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン。
【0035】
好適な粉末混合物は、たとえば、アミノ酸および糖および/または有機酸の混合物で、好ましくはグリシンと尿素との混合物である。
【0036】
望ましい密度および高い純度を有する好適な商業上慣用される無毒の粉末は、通常、最初にボールミルまたはメノウディスクミルで所望の粒径に粉砕され、そして篩い分けされる。
【0037】
記載した密度の値は、製造業者により定められた密度値に対応し、および/または、一般の参考資料から得られる。粒径は粒度計を用いて決定した。
【0038】
続いて、所要により、さらに微細に分割された物質を混合し、その後、所要によりさらに粉砕して篩い分けを行う。
【0039】
得られた粉末混合物は、商業上慣用される粉末ジェット装置に導入され、通常、水ジェットを利用して、歯肉縁上歯面に噴射される。
【0040】
しかしながら、記載の粉末または粉末混合物を、口外にある歯冠、前装および/または橋義歯のような歯科材料の(ジェット)洗浄に使用することも考えられる。
【0041】
本発明における記載された粉末および粉末混合物は、好ましくは、まず第一に、独国特許出願第19926728号に記載されているように、診断系、例えばいわゆる診断用印象材を歯列の陰型印象の調製に使用するような方法で用いられる。
【0042】
この印象に基づいて、望まれない沈着物、特に肉眼で見えない沈着物がある領域を決めることが可能であり、例としては、歯垢残留物および/または歯質に有害な微生物分解産物がある。
【0043】
しかしながら、たとえば蛍光染料を用いて望まれない沈着物を着色し検出することに基づいて他の診断系を適用することも考えられる。この種の他の診断系については、たとえば、独国特許出願DE−A−4200741および独国特許出願DE−A −2913415に記載されている。
【0044】
この後に、好ましくは記載の粉末および粉末混合物を用いて、歯の硬質面を洗浄する。
【0045】
最後に、例えばいわゆる診断用印象材を用いて、洗浄の結果を再び検査することができる。
【0046】
洗浄がうまくいかなかった場合、所要により、歯の硬質物質に顕著な損傷を与えることなく、記載した粉末および粉末混合物を用いて、さらにすぐ歯の硬質物質を洗浄することができる。
【0047】
実施例を参照しながら本発明を以下にさらに具体的に説明する。
【0048】
【実施例】
ウシの歯の調製および測定手順
各試験について、新しく採取したウシの歯3つを使用し、そのエナメル質領域は、脱イオン水によるすすぎ洗浄の後に研磨紙で処理することにより、表面を平滑化された。こうして調製した歯を埋没材(Permagum(登録商標)、ESPE,Seefeld)に固定し、直径3.5mmの円形孔を有する金属板で覆った。続いて、ジェット圧力4.0バール、且つ、歯根面とジェットノズルとの間隔2.3mmの条件で粉末ジェット装置(Airflow(登録商標)、EMS,Munich)を用い、2分間、エナメル質の露出領域を対応する粉末または粉末混合物の噴射にさらした。各試験について、おのおの最大まで充填された粉末タンクを使用した。装置は「粉末最大量」および「水半分量」の設定で操作された。
【0049】
除去されたエナメル質の体積を決定するために、ジェット洗浄された表面を印象材(Dimension(登録商標)Garant,ESPE,Seefeld)によって複製した。得られた除去体積の陰型は、半楕円体形で、光学顕微鏡(Zeiss立体顕微鏡、倍率40〜64倍)下で軸に沿って測定され、これらのデータを以下の式から除去体積を計算するのに用いた。
除去体積=2/3πa*B*C
【0050】
除去体積の計算用の半楕円体を図1に示す。
【0051】
実施例I:粉末混合物I
100gのグリシン(Fluka,Deisenhofen)をメノウディスクミル中で3分間粉砕してから、40μmの篩に通して乾式で篩い分けた。次に、こうして得られた粉末を0.36gのHDK−H−2000(Degussa,Hanau)と混合し、この混合物を60μmの篩で再び篩い分けた。
【0052】
実施例 II :粉末混合物 II
100gのD−グルコン酸カリウム(Fluka,Deisenhofen)をメノウディスクミル中で4分間粉砕してから、40μmの篩に通して乾式で篩い分けた。次に、こうして得られた粉末を0.63gのHDK−H−2000(Degussa,Hanau)と混合し、この混合物を60μmの篩に通して再び篩い分けた。
【0053】
実施例 III :粉末混合物 III
100gのアスコルビン酸ナトリウム(Fluka,Deisenhofen)をメノウディスクミル中で1分間粉砕してから、40μmの篩に通して乾式で篩い分けた。次に、こうして得られた粉末を0.9gのHDK−H−2000(Degussa,Hanau)と混合し、この混合物を60μmの篩に通して再び篩い分けた。
【0054】
参照例I:
100gの炭酸水素ナトリウム(fluka,Deisenhofen)をメノウディスクミル中で2.5分間粉砕してから、40μmの篩に通して乾式で篩い分けた。次に、こうして得られた粉末を0.19gのHDK−H−2000(Degussa,Hanau)と混合し、この混合物を60μmの篩に通して再び篩い分けた。
【0055】
参照例 II
100gのAir−Flow粉末(EMS)を製造業者により供給されたままで使用した。
【0056】
こうして得られた粉末混合物I〜VIならびに参照粉末IおよびIIを粉末ジェット装置(Airflow(登録商標),EMS,Munich)に導入して、上述のように使用した。摩損した歯質の量はそれぞれ表1で見ることができる。
【0057】
表1:使用した粉末混合物、その密度および平均粒径の関数としてのウシ歯根象牙質の摩損体積。
【0058】
【表1】
Figure 0005113969
【0059】
表1のそれぞれに記載された体積値は、決定された体積の合計を測定した歯の数で割ることにより与えられる。

Claims (8)

  1. 歯肉縁上歯面の粉末ジェット洗浄用組成物の製造のための微粉末および/または粉末混合物の使用であって、前記粉末が45μm以下の平均粒径及び2.0g/cm3以下の密度を有し、ジェット圧力4バール、且つ、歯面とジェットノズルとの間隔2.5mm以下で2分間ジェット洗浄し続けた9.6mm2の歯面を基準にして、粉末ジェット洗浄により生じる歯肉縁上歯面の摩損が0.10mm3以下であり、
    前記微粉末または粉末混合物が、アミノ酸、有機酸およびそれらの塩から選ばれる、微粉末および/または粉末混合物の使用。
  2. 前記粉末および粉末混合物がジェット圧力装置により適用される、請求項1に記載の微粉末および/または粉末混合物の使用。
  3. さらに微粒子状物質が前記粉末または粉末混合物に混合される、請求項1または2に記載の微粉末および/または粉末混合物の使用。
  4. 前記微粒子状物質が、酸化ホウ素、シリカゲルおよび/またはシリカから選ばれる、請求項3に記載の微粉末および/または粉末混合物の使用。
  5. 前記微粒子状物質がシラン化されている、請求項4に記載の微粉末および/または粉末混合物の使用。
  6. 請求項1〜に記載の粉末および/または粉末混合物と、所望により歯の硬質面上の汚物および/または沈着物を検出するための系とを含む歯面洗浄用のキット。
  7. 前記系が印象材を含む、請求項に記載のキット。
  8. 請求項1〜に記載の粉末および/または粉末混合物を含むジェット圧力装置。
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