JP5111041B2 - 電子写真現像用の磁性キャリア芯材およびその製造方法、磁性キャリア並びに電子写真現像剤 - Google Patents
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しかしながら、磁性キャリアの小粒径化に伴い、磁性キャリア粒子1個当たりの磁化が小さくなるため、現像スリーブ上での磁気的な拘束力が弱くなり、磁性キャリアが像担持体上へ飛散し易くなるという問題(所謂、キャリア飛散)が発生した。
本発明は、上述の状況の下でなされたものであり、電子写真の高画質化を保ちながらキャリア飛散を抑制した電子写真現像用の磁性キャリア芯材、磁性キャリア、および電子写真現像剤を提供しようとするものである。
そこで本発明者らは、キャリア飛散が発生する原因について、さらに研究を行い、SiO2を添加した磁性キャリア芯材の結晶構造に着目した。そして、当該研究の結果、キャリア飛散発生の原因が磁性キャリア粒子中における弱磁性部分の存在にあるとの知見に想到した。
ここで本発明者らは試行錯誤を重ね、MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記される電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、粉末XRDパターンにおいて、MnFe2O4相とSiO2相とが観測され、SiO2含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である磁性キャリア芯材に想到した。そして、当該磁性キャリア芯材を用いて製造した磁性キャリアがキャリア飛散を著しく低減することを見出し、本発明を完成した。
組成式:MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記されるソフトフェライトと、SiO 2 とからなる電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、
粉末XRDパターンにおいて、MnFe2O4相とSiO2相とが観測され、
SiO2含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、
前記Mn x Fe 3−x O 4 (但し、0≦x≦1.0)相の格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である、ことを特徴とする電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下、
前記磁性キャリア芯材の粒子内に存在するクローズドポアをも含む当該粒子の真密度が3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である、ことを特徴とする第1の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
平均粒子径が、15μm以上、80μm以下である、ことを特徴とする第1または第2の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材である。
Fe原料と、Mn原料と、SiO2とを混合して、一般式:MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記され、SiO2含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であるフェライトが生成するように成分調整されたスラリーを得る工程と、
当該スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、
当該造粒物を、窒素雰囲気下において1120℃以上、1240℃以下で加熱して焼成した後、酸素濃度を5000ppmとした窒素フロー雰囲気下において冷却することで、磁性相を有する焼成物を得る工程と、
得られた焼成物に解粒処理を行って粉末化し、その後に所定の粒度分布を持たせる工程と、を有することを特徴とする第1〜第3発明のいずれかに記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材の製造方法である。
第1〜第3の発明のいずれかに記載の電子写真現像剤用磁性キャリア芯材に、樹脂が充填、または、樹脂が充填かつ被覆されていることを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリアである。
第5の発明に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリアとトナーとを含むことを特徴とす
る電子写真現像剤である。
[磁性キャリア芯材の組成]
本発明に係る磁性キャリア芯材の組成はソフトフェライトであればよく、一般式MxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表されるものが好ましい。尤も、Mは、Fe、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Ni等の2価の金属から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。さらに近年の環境問題を考慮すると重金属を含まないものが好ましく、当該観点からは、Fe3O4で表されるマグネタイトや、MnxFe3−xO4で表されるマンガンフェライト、MgxFe3−xO4で表されるマグネシウムフェライトが好ましい。さらに、後述する磁気特性を実現する観点からは、MnxFe3−xO4で表されるマンガンフェライトが好ましい。
本発明に係る磁性キャリア芯材の結晶は、格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である。これは、格子定数が8.483Å以上の場合、磁性キャリア芯材の結晶の還元が適度であるので、酸素欠損が少なく、Siが結晶構造中へ固溶することがないので、磁化が低下せず好ましい、一方、格子定数が8.492Å以下の場合、磁性キャリア芯材の結晶中に未反応物や酸化した粒子が存在することがない為、磁化が低下せず好ましいとの本発明者らの知見によるものである。
本発明に係る磁性キャリア芯材の磁気特性は、1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下である。
1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上あることで、当該磁性キャリア芯材の磁気的拘束力が確保出来、キャリア飛散を抑止出来る。一方、1000Oeにおける磁化σ1kが350emu/ml以下であることで、磁気ブラシの穂立ちがソフトになり、高画質を得ることができるので好ましい。
磁化σ1k(emu/ml)=σ1k(emu/g)×粒子密度(g/ml)
当該SiO2添加により、本発明に係る磁性キャリア芯材の粒子密度は3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である。
本発明に関する磁性キャリア芯材の粒子密度が3.5g/ml以上あることで、過剰のSiO2による粒子密度の低下、および、磁化の低下を防げるので好ましい。
一方、磁性キャリア芯材の粒子密度が4.8g/ml以下であることで、粒子密度が高いことによるキャリアに加えられる遠心力を低減でき、さらに磁気ブラシの穂立ちがソフトになり、高画質を得ることができるので好ましい。
本発明に係る磁性キャリア芯材は、平均粒子径が15μm以上、80μm以下である。本発明に係る磁性キャリア芯材の平均粒子径が15μm以上あることで、1粒子あたりに必要な磁化を得ることができ、キャリア飛散の発生を抑止出来る。また、平均粒子径が80μm以下であることで、所望の画像を得る事が出来る。
本発明に係る磁性キャリア芯材に対するキャリア飛散の測定方法について説明する。
磁性キャリア芯材試料のキャリア飛散の測定は、直径50mm、表面磁力1000Gaussの磁気ドラムに磁性キャリア芯材の体積が750mlとなるように試料を充填して仕込む(但し、充填する芯材の重量(g)=750(ml)×芯材の見かけ密度(g/ml))。次に磁気ドラムを270rpmで30分間回転させた後、当該磁気ドラムから飛散した磁性キャリア芯材粒子を回収し、その重量を測定した。そして、仕込み量に対し、飛散した磁性キャリア芯材粒子の割合を算定しキャリア飛散量とした。
本発明に係る磁性キャリア芯材、磁性キャリア、電子写真現像剤は、例えば、以下に説明する製造方法によって製造することが出来る。
《原料》
Fe供給源としては金属Fe、Fe3O4、Fe2O3が好適に使用できる。Mn供給源として金属Mn、MnO2、Mn2O3、Mn3O4、MnCO3が好適に使用できる。SiO2として結晶シリカが好適に使用できる。そして、これらの原料の配合比を、マンガンフェライトの目的組成と一致させて秤量し混合して、金属原料混合物を得る。
尚、結晶シリカとは、XRDパターンにおいて2θ=30〜32°に最大ピーク強度を有するSiO2原料を指す。
上記の原料を秤量した後、これらを媒体液中で混合撹拌することによってスラリー化する。スラリー化の前に、必要に応じて、原料混合物に乾式で粉砕処理を加えてもよい。原料粉と媒体液の混合比は、スラリーの固形分濃度が50〜90質量%になるようにすることが望ましい。媒体液は、水にバインダー、分散剤等を添加したものを用意する。その他、潤滑剤や、焼結促進剤として、リンやホウ酸等を添加することができる。混合攪拌して得られたスラリーに対し、さらに湿式粉砕を施すことが好ましい。
上記スラリーを噴霧乾燥機に導入することによって造粒を行う。これにより、概ね、径が10〜200μmの粒子を含む造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は、磁性キャリア芯材の最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、大きすぎる粒子や微粉を除去することにより粒度調整しておくことが望ましい。
次に、造粒粉を1000〜1290℃に加熱した炉に投入して、マンガンフェライトを合成するための一般的な手法で焼成することにより生成させる。また、焼成の際には、炉内の酸素濃度を制御して焼成を行う。炉内の酸素濃度の制御は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス、または、これらの不活性ガスと酸素との混合ガスを炉内にフローさせることにより達成可能である。
図1〜図3は、いずれも縦軸に磁化、横軸に焼成温度をとったグラフで、図1は添加Si濃度4.3wt%、図2は添加Si濃度7.6wt%、図3は添加Si濃度12.4wt%のときのものである。図1〜図3から明らかなように、いずれのSi濃度においても、高い磁化を得ることの出来る温度範囲があることが判明した。これは、当該温度範囲より焼成温度が低いと、フェライトの合成が不十分となる為、一方、当該温度範囲より焼成温度が高いと、過剰還元が起き、ウスタイト相の生成やSiの固溶が発生する為ではないかと考えられる。
結局のところ、磁性キャリアとして求められる密度から、磁性キャリア芯材に添加すべきSi濃度を決定し、当該Si濃度に適した焼結温度を検討すれば良い。
焼成工程の次の段階である冷却工程について説明する。
本発明者らは、焼成によってマンガンフェライトを生成した後の冷却工程において、当該マンガンフェライトの酸化が起こることによっても、磁化が低下するとの知見に想到した。
そこで、当該冷却工程において、当該焼成物であるマンガンフェライトを、酸素濃度5000ppmに調整した窒素フロー雰囲気下において冷却を行った。この結果、マンガンフェライトの磁化の低下を抑止することが出来た。
得られた焼成物に対し、ハンマーミル、ボールミル等により解粒処理を行い、その後に篩分級を行うことにより、目的とする粒度分布を持たせることで、本発明に係る磁性キャリア芯材を得た。
本発明に係るキャリア芯材を、シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で充填、または、充填かつ被覆し、帯電性の付与および耐久性の向上させることで、本発明に係る磁性キャリアを得ることが出来る。当該シリコーン系樹脂等の充填方法、被覆方法は、公知の手法により行えば良い。
本発明に係る磁性キャリアと適宜なトナーとを混合することで、本発明に係る電子写真現像剤を得ることが出来る。本発明に係る磁性キャリアは、十分な磁化と適宜な密度とを有するので、本発明に係る電子写真現像剤は、高性能な電子写真現像機やMFPにおいても、安定して良好な画質特性を発揮できる。
Fe2O310kg、Mn3O43.6kg、SiO22.7kgを純水5kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤60gを添加して混合物とした。当該混合物を湿式ボールミルにより粉砕処理し、Fe2O3とMn3O4とSiO2との混合スラリーを得た。原料の混合比は、Fe2O3とMn3O4とは、前述のフェライトの組成式MnxFe3−xO4において、x=0.82となるよう算出したものである。SiO2量は、製造を目論んでいるフェライト中にSi換算で7.6wt%含有されるように算出したものである。
尚、図4は、縦軸に磁性キャリア芯材の磁性特性として1000Oeにおける磁化σ1kをとり、横軸に磁性キャリア芯材の格子定数をとったグラフである。図6は、磁性キャリア芯材のXRDパターンを示すグラフである。後述する図5、図7も同様のグラフである。
焼成において焼成温度を1125℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例2に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例3に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1175℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例4に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例5に係る磁性キャリア芯材を得た。
Fe2O3を10kg、Mn3O4を3.6kg、SiO2を5.4kg、とし、焼成において焼成温度を1120℃とした以外は、実施例15と同様の条件で操作を行い、実施例6に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例7に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1200℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例8に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、実施例9に係る磁性キャリア芯材を得た。
Fe2O3を10kg、Mn3O4を3.6kg、SiO2を1.4kgとし、焼成において焼成温度を1120℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、実施例10に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1150℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例11に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1200℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例12に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1240℃とした以外は、実施例10と同様の条件で操作を行い、実施例13に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1300℃とした以外は、実施例1と同様の条件で操作を行い、比較例1に係る磁性キャリア芯材を得た。
焼成において焼成温度を1300℃とした以外は、実施例6と同様の条件で操作を行い、比較例2に係る磁性キャリア芯材を得た。
実施例1〜13および比較例1、2に係る磁性キャリア芯材の格子定数、磁化、キャリア飛散量を表1に示す。尚、キャリア飛散量は、仕込み量に対するキャリア飛散量の割合を示す。
また、図4に格子定数と磁化の関係について示し、図5〜7に実施例1〜13および比較例1、2に係る磁性キャリア芯材のXRDパターンを示した。
一方、比較例1〜2に係る磁性キャリア芯材では格子定数が8.483〜8.492Åの範囲外であり、磁化が低下していることが判明した。その結果、表1からわかるように、比較例1、2に係る磁性キャリア芯材ではキャリア飛散量が増加した。
Claims (6)
- 組成式:MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記されるソフトフェライトと、SiO 2 とからなる電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材であって、
粉末XRDパターンにおいて、MnFe2O4相とSiO2相とが観測され、
SiO2含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であり、
前記Mn x Fe 3−x O 4 (但し、0≦x≦1.0)相の格子定数が8.483Å以上、8.492Å以下である、ことを特徴とする電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。 - 1000Oeにおける磁化σ1kが150emu/ml以上、350emu/ml以下、
前記磁性キャリア芯材の粒子内に存在するクローズドポアをも含む当該粒子の真密度が3.5g/ml以上、4.8g/ml以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。 - 平均粒子径が、15μm以上、80μm以下である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材。
- Fe原料と、Mn原料と、SiO2とを混合して、一般式:MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記され、SiO2含有量がSi換算で4wt%以上、15wt%以下であるフェライトが生成するように成分調整されたスラリーを得る工程と、
当該スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、
当該造粒物を、窒素雰囲気下において1120℃以上、1240℃以下で加熱して焼成した後、酸素濃度を5000ppmとした窒素フロー雰囲気下において冷却することで、磁性相を有する焼成物を得る工程と、
得られた焼成物に解粒処理を行って粉末化し、その後に所定の粒度分布を持たせる工程と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真現像剤用の磁性キャリア芯材の製造方法。 - 請求項1〜3に記載の電子写真現像剤用磁性キャリア芯材に、樹脂が充填、または、樹脂が充填かつ被覆されていることを特徴とする電子写真現像用の磁性キャリア。
- 請求項5に記載の電子写真現像剤用の磁性キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤。
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