この発明における車両は、地上を走行する走行体であり、車両には乗用車、運搬車、トラック、バスなどが含まれる。また、車両には車輪が設けられており、車輪に駆動力源のトルクが伝達されて駆動力が発生するように構成されている。この駆動力源は、単数の駆動力源または複数の駆動力源のいずれでもよい。複数の駆動力源には、動力の発生原理が同じ駆動力源が複数設けられていること、または動力の発生原理が異なる駆動力源が複数設けられていること、の両方の意味が含まれる。このように、動力の発生原理が異なる駆動力源が複数設けられている車両がハイブリッド車である。さらに、単数の駆動力源を用いる場合、または、動力の発生原理が同じ駆動力源を複数用いる場合において、駆動力源としては、例えば、エンジン、電動機(電動モータ)、油圧モータなどのうち、いずれかを用いることが可能である。これに対して、動力の発生原理が異なる駆動力源を複数用いる場合、例えば、エンジン、電動機(電動モータ)、油圧モータなどのうち、2種類以上の駆動力源を用いることが可能である。
前記エンジンは、燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、エンジンとしては内燃機関、具体的には、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、LPGエンジンなど用いることが可能である。また、電動機は、電源から電力が供給されて動力を発生する駆動力源である。この電動機としては、電力を運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電力に変換する回生機能とを兼備したモータ・ジェネレータを用いることが可能である。また、電動機としては交流電動機または直流電動機のいずれを用いてもよく、例えば、三相交流型の電動機を用いることが可能である。油圧モータは、流体の運動エネルギを回転部材の運動エネルギに変換する装置である。この発明においては、車輪が懸架装置を介して車体により支持されており、車体と車輪とが鉛直方向、つまり車両の高さ方向に相対移動可能に構成されている。車体は、フレームを有する構造、またはフレームがない構造のいずれでもよい。
さらに、車両の前後方向で異なる位置に車輪が設けられている場合、前後方向で前方に配置されている車輪が前輪であり、前後方向で後方に配置されている車輪が後輪である。そして、この発明は、駆動力源のトルクを前輪および後輪の両方に伝達することが可能に構成された四輪駆動車、または、駆動力源のトルクを前輪または後輪のいずれか一方に伝達することが可能に構成された二輪駆動車のいずれにも適用可能である。さらにこの発明を四輪駆動車に用いる場合、前輪にトルクを伝達する電動機と、後輪にトルクを伝達する電動機とがそれぞれ別個に設けられた構成の車両でもよい。さらにまた、この発明においては、駆動力源から車輪に至るトルクの伝達経路に噛み合い機構が設けられている。この噛み合い機構には、軸線を中心とする円周方向の噛み合い力により、複数の回転要素同士の間でトルク伝達をおこなう機構が含まれる。噛み合い機構は、軸線を中心とする半径方向の深さを有する凹部、半径方向の高さを有する凸部により構成することが可能である。さらに、噛み合い機構は、軸線に沿った半径方向の深さを有する凹部、軸線に沿った方向の高さを有する凸部により構成することも可能である。
前記噛み合い機構には、歯車機構、スプライン結合、セレーション結合、キー結合などが含まれる。複数の回転要素同士の軸線は、同軸上に配置されていてもよいし、複数の回転要素の軸線同士が交差していてもよい。前記回転要素には、回転軸、ギヤ、コネクティングドラム、キャリヤ、プーリ、スプロケットなどが含まれる。上記歯車機構には、遊星歯車機構、選択式の歯車機構、常時噛み合い式の歯車機構などが含まれる。また、噛み合い機構を有する動力伝達装置の具体例としては、変速機、終減速機、差動装置、動力分配装置(トランスファ)、同期装置(シンクロナイザ)などが含まれる。前記変速機は、入力回転数と出力回転数との比である変速比を変更可能な伝動装置である。前記終減速機は、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路において、最も下流側に配置された減速機であり、入力回転数に対して出力回転数を低下させる伝動装置である。前記差動装置は、入力回転部材に対して2つの出力回転部材が動力伝達可能に接続されており、2つの出力回転部材同士の回転数差を許容する伝動装置である。前記同期装置は、入力回転部材と出力回転部材との回転数を一致させてから、動力伝達可能に2つの回転部材を連結する機構である。この発明において、要求駆動力には、加速要求に基づく駆動力と、減速要求(制動要求)に基づく駆動力(制動力)とが含まれる。この発明において、車両の前後方向における加速要求に基づいて、駆動力源から出力するべき第1トルクの符号は「正」であり、車両の前後方向における減速要求に基づいて、駆動力源から出力するべき第1トルクの符号は「負」である。また、請求項2に記載された「第1トルクの正負の符号と、仮の第3トルクの正負の符号とが異なると判断された場合に、第2トルクを相対的に小さくする補正をおこなう」とは、第1トルクの正負の符号と、仮の第3トルクの正負の符号とが同じである場合に選択される第2トルクよりも、相対的にトルクが低い、またはトルクの範囲が相対的に狭いことを意味する。つまり、具体的なトルクの値を意味するものではない。
図2は、この発明を車両1、具体的にはハイブリッド車に用いた場合を示す平面図、図3および図4は、車両1の模式的な側面図である。図2に示された車両1は、前輪2,3および後輪4,5に対して、駆動力源のトルクを伝達することが可能に構成された四輪駆動車である。そして、車両1においては、車体27の前部に、駆動力源としてのエンジン6およびモータ・ジェネレータ(MG1)7およびモータ・ジェネレータ(MG2)8が搭載されている。図3および図4では、車体27の左側部分が前部であり、車体27の右側部分が後部である。前記エンジン6およびモータ・ジェネレータ7,8は、いずれも前輪2,3に対して動力伝達可能に接続されている。前記エンジン6は、燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、ここではガソリンエンジンが用いられている場合について説明する。このエンジン6は、吸気装置、排気装置、燃料噴射装置、点火装置などを有する公知のものである。そして、エンジン6は、吸入空気量、燃料噴射量、点火時期などを制御することにより、エンジン出力、すなわち、エンジン回転数およびエンジントルクを制御することが可能である。
また、モータ・ジェネレータ7,8は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備した動力装置である。このモータ・ジェネレータ7,8としては、例えば三相交流型のものを用いることが可能であり、モータ・ジェネレータ7は、ケーシング(図示せず)に固定されたステータ(図示せず)と、回転可能なロータ(図示せず)とを有している。またモータ・ジェネレータ8は、ケーシング(図示せず)に固定されたステータ(図示せず)と、回転可能なロータ(図示せず)とを有している。また、モータ・ジェネレータ7,8との間で、インバータ12を介して電力の授受をおこなう電源9が設けられている。この電源9には、蓄電装置および発電機が含まれる。蓄電装置としては、二次電池、具体的にはバッテリまたはキャパシタを用いることが可能である。発電機としては、水素と酸素とを反応させて起電力を発生する燃料電池を用いることが可能である。以下、電源9としてバッテリを用いる場合を説明し、便宜上、電源9を「バッテリ9」と記す。なお、この実施例においては、モータ・ジェネレータ7とモータ・ジェネレータ8との間で、バッテリ9を経由することなく直接電力の授受をおこなうことが可能なように、電気回路が構成されていてもよい。
つぎに、前記エンジン6およびモータ・ジェネレータ7,8から前輪2,3に至る動力伝達経路の構成を説明する。この動力伝達経路には、動力分配装置13および減速機14および終減速機15が設けられている。まず、動力分配装置13は、エンジン6の動力をモータ・ジェネレータ7,8または前輪2,3に分配することの可能な装置である。この動力分配装置13は、相互に差動回転可能な3つの回転要素を有する。具体的に説明すると、動力分配装置13は、入力要素(図示せず)および反力要素(図示せず)および出力要素(図示せず)を有している。この動力分配装置13は、例えば、遊星機構により構成することができる。遊星機構としては、遊星歯車機構または遊星ローラ機構を用いることが可能である。この遊星歯車機構は、歯車同士の噛み合い力により動力伝達をおこなう伝動装置である。例えば、遊星歯車機構として、シングルピニオン型の遊星歯車機構を用いる場合、サンギヤおよびリングギヤを同軸上に配置し、サンギヤおよびリングギヤに噛合するキャリヤを設けることが可能である。そして、入力要素であるキャリヤが、エンジン6のクランクシャフトに接続され、反力要素であるサンギヤが、モータ・ジェネレータ7のロータに接続され、出力要素であるリングギヤが、減速機14の入力要素に接続される。これに対して、遊星ローラ機構は、トラクション油のせん断力により動力伝達をおこなう伝動装置である。このように構成された動力分配装置13においては、反力要素の回転数を制御することにより、入力要素と出力要素との間の変速比を無段階に制御することが可能である。つまり、動力分配装置13は無段変速機としての機能を兼備している。
前記モータ・ジェネレータ8は、減速機14の入力要素に対して動力伝達可能に接続されている。この減速機14は、例えば、歯車伝動装置により構成することが可能である。また、減速機14は、巻き掛け伝動装置および歯車伝動装置を組み合わせて構成することも可能である。なお、モータ・ジェネレータ8と、減速機14の入力要素との間の動力伝達経路に、減速機14とは別の減速機(図示せず)を設けることも可能である。この減速機も、歯車式の減速機を用いることが可能である。また、減速機14の出力要素には、終減速機15の入力要素が接続されている。この終減速機15としては、歯車機構式のものを用いることが可能である。すなわち、終減速機15は、減速機14のピニオンギヤ(図示せず)に噛合するリングギヤ(図示せず)、リングギヤと一体回転するデフケース(図示せず)、デフケースに取り付けられたピニオンギヤ(図示せず)、ピニオンギヤ(図示せず)に取り付けられたサイドギヤ(図示せず)などを有する公知のものである。終減速機15の出力要素であるサイドギヤには、アクスルシャフト(ドライブシャフト)16,17を介在させて前輪2,3が接続されている。具体的には、アクスルシャフト16には前輪(右前輪)2が接続され、アクスルシャフト17には前輪(左前輪)3が接続されている。この終減速機15は、入力要素の回転数よりも出力要素の回転数を低くする減速機としての機能に加えて、2本のアクスルシャフト16,17の相対回転を許容する差動装置としての機能を兼備している。
さらに、車両1の前後方向における後部には、モータ・ジェネレータ18が搭載されている。このモータ・ジェネレータ18は、前述のモータ・ジェネレータ7,8と同様の構成および機能のものを用いることができる。そして、このモータ・ジェネレータ18には、前記インバータ12を介してバッテリ9が接続されている。すなわち、バッテリ9とモータ・ジェネレータ18との間で電力の授受が可能な電気回路が構成されている。また、モータ・ジェネレータ18は、ステータ(図示せず)およびロータ(図示せず)を有している。このロータにはアクスルシャフト(ドライブシャフト)19を介して後輪(右後輪)4が接続され、かつ、ロータにはアクスルシャフト(ドライブシャフト)20を介して後輪(左後輪)5が接続されている。なお、モータ・ジェネレータ18のロータからアクスルシャフト19,20に至るトルク伝達経路に、減速機(図示せず)を設けることも可能である。この減速機としては、例えば歯車機構式の減速機を用いることが可能である。この減速機により、モータ・ジェネレータ18の回転数に対して、アクスルシャフト19,20の回転数を低下させて、トルクを増幅することができる。
また、この発明において、図2および図3および図4に示すように、前輪2,3および後輪4,5は、懸架装置(サスペンション)30を介して車体27により支持されている。より具体的には、前輪2,3および後輪4,5が、4本共独立して車体27に対して上下動可能な独立懸架装置が用いられている。例えば、前輪2,3を支持する懸架装置30としては、ダブルウィッシュボーン型またはストラット型の懸架装置を用いることが可能である。これに対して、後輪4,5を支持する懸架装置30としては、ダブルウィッシュボーン型またはセミトレーリングアーム型の懸架装置を用いることがことが可能である。いずれの懸架装置30も、車両1の上下方向に伸縮するばね(図示せず)を有している。さらに、ブレーキペダルの操作により、各車輪に制動力を与える制動装置(図示せず)が設けられている。この制動装置は、マスターシリンダ、油圧回路、車輪毎に設けられたホイールシリンダなどを有している。
つぎに、車両1の制御系統を説明すると、車両1に搭載されたシステムを制御するコントローラとして電子制御装置21が設けられている。この電子制御装置21には、車速、エンジン回転数、バッテリ9の充電量、モータ・ジェネレータ7,8,18の回転数などの信号が入力される。さらに、電子制御装置21には、車体振動検知センサ22の信号、車輪振動検知センサ23の信号、加速要求発生装置24の操作信号、道路状況を検知する道路状況検知センサ25の信号、ナビゲーションシステム26の信号、減速要求発生装置28の操作信号などが入力される。車体振動検知センサ22は、車体の上下方向の振動、言い換えればバウンジングを検知するセンサである。この車体振動検知センサ22は、各車輪毎に設けられた懸架装置の上下方向のストロークの変化を別個に検知し、その検知結果に基づいて、車体の上下方向の振動を検知することが可能に構成されている。車輪振動検知センサ23は、車体に対する前輪2,3および後輪4,5の上下方向の振動を検知するセンサであり、各懸架装置30を構成するばねのばね上加速度に基づいて、車体27に対する前輪2,3および後輪4,5の上下方向の振動を検知するように構成されている。
また、加速要求発生装置24は、車両1の乗員の手または足により操作される装置である。この加速要求発生装置24の具体的な構造としては、レバー、ボタン、ノブ、スイッチ、液晶型のタッチパネル、ペダルなどが挙げられる。この実施例では、加速要求発生装置24として足により操作されるアクセルペダルが用いられているものとし、以下、便宜上「アクセルペダル24」と記す。さらに、減速要求発生装置28は、車両1の乗員の手または足により操作される装置である。この減速要求発生装置28の具体的な構造としては、レバー、ボタン、ノブ、スイッチ、液晶型のタッチパネル、ペダルなどが挙げられる。この実施例では、減速要求発生装置28として、足により操作されるブレーキペダルが用いられているものとし、以下、便宜上「ブレーキペダル28」と記す。さらに、道路状況検知センサ25は、例えば赤外線カメラにより構成されたものであり、路面の凹凸を検知するセンサである。さらに、ナビゲーションシステム26は、車両1の現在位置を検知する機能、車両1の目的地を入力する機能、車両1の目的地までの走行経路を検索または入力する機能、走行経路の状況および天候などを検知する機能、車両1の走行軌跡を記憶する機能などを有している。車両1の現在位置は、自律航法または電波航法により求めることが可能である。自律航法とは、車両1の現在位置を、車両1に取り付けられた外部記憶装置(CD−ROM、DVDなど)に記録された地図データを基にして、地磁気センサ、車輪の回転角度を検知する操舵角センサ、車輪の回転速度を検知する回転速度センサなどの信号により求めるものである。
一方、電波航法とは、車両1の外部(地上、道路、宇宙空間など)に存在する外部設備と、車両1に搭載された受信機との間で信号の授受をおこない、地図上に置ける車両1の現在位置を検知するものである。電波航法では、GPS(グローバル・ポジショニング・システム:人工衛星)の電波(信号)、地上に設置されたビーコンまたはサインポストから発信される電波(信号)を受信して、車両1の現在位置を検知する。このようにして、地図上における車両1の現在位置を検知することにより、車両1の走行経路の前方の道路状況、具体的には、カーブ、路面の凹凸、登坂路、降坂路、砂利道、山道、路面の摩擦係数などを検知することができる。
つぎに、車両1で実行可能な制御の一例を説明する。まず、車両1の前後方向における加速要求が発生した場合の制御を説明する。この場合、車速および加速要求の程度に基づいて、車両1における要求駆動力が求められる。前記加速要求の程度は、アクセルペダル24の操作状態、具体的にはアクセルペダル24の踏み込み量(アクセル開度)、アクセルペダル24の踏み込み速度などに基づいて判断される。また、要求駆動力に基づいて、エンジン6の目標出力およびモータ・ジェネレータ7,8,18の目標出力が求められる。そして、エンジン6の実際の出力を目標出力に近づける場合に用いるマップが、電子制御装置21に記憶されている。このマップは、エンジン6の燃費を最適に制御するための最適燃費線に基づいて、目標エンジン回転数および目標エンジントルクを定めたマップである。そして、前記エンジンの実際の出力を目標出力に近づけるにあたり、マップに示された目標エンジン回転数および目標エンジントルクが用いられる。そして、エンジン6の実際の回転数を目標エンジン回転数に近づけるために、前記動力分配装置13の変速比が制御される。
具体的には、エンジントルクが、動力分配装置13の入力要素に伝達されて、モータ・ジェネレータ7によりエンジントルクの反力を受け持つにあたり、モータ・ジェネレータ7の回転数を制御することにより、エンジン6の実際の回転数を目標エンジン回転数に近づけることが可能である。また、エンジン6の実際の回転数の制御と並行して、エンジン6の実際のトルクを目標エンジントルクに近づけるように、エンジン6の吸入空気量、点火時期、燃料噴射量のうち、少なくとも1つの事項が制御される。このようにして、動力分配装置13の変速比を無段階に制御するにあたり、エンジントルクの反力を受け持つモータ・ジェネレータ7が正回転する場合は、モータ・ジェネレータ7が回生制御される。すなわち、エンジン6の動力の一部がモータ・ジェネレータ7で電力に変換され、その電力がインバータ12を経由してバッテリ9に充電される。これに対して、エンジントルクの反力を受け持つモータ・ジェネレータ7が逆回転する場合は、モータ・ジェネレータ7が力行制御される。すなわち、バッテリ9の電力がインバータ12を経由してモータ・ジェネレータ7に供給され、モータ・ジェネレータ7が電動機として駆動される。このようにして、エンジン6の動力が動力分配装置13を経由して減速機14に伝達される。
一方、要求駆動力に対応する動力の一部を、モータ・ジェネレータ8により負担する場合は、バッテリ9の電力がインバータ12を経由してモータ・ジェネレータ8に供給され、モータ・ジェネレータ8が電動機として駆動される。このようにして、減速機14に入力されたトルクが、アクスルシャフト16,17を経由して前輪2,3にそれぞれ伝達され、前輪2,3で駆動力が発生する。さらに、要求駆動力に対応する動力の一部を、モータ・ジェネレータ18により負担する場合は、バッテリ9の電力がインバータ12を経由してモータ・ジェネレータ18に供給され、モータ・ジェネレータ18が電動機として駆動する。そして、モータ・ジェネレータ18のトルクがアクスルシャフト19,20を経由して後輪4,5にそれぞれ伝達され、後輪4,5で駆動力が発生する。なお、エンジン6を停止または空転させて、モータ・ジェネレータ8,18の少なくとも一方を力行制御させることも可能である。
つぎに、車両1の前後方向における減速要求が発生した場合、つまり、ブレーキペダル28が踏み込まれた場合、あるいはアクセルペダル24が戻された場合の制御を説明する。この場合は、モータ・ジェネレータ8またはモータ・ジェネレータ18のうち、少なくとも一方を発電機として機能させることが可能である。すなわち、前輪2,3の動力が減速機14を経由してモータ・ジェネレータ18に伝達されて、モータ・ジェネレータ18で回生制御をおこない、発生した電力をインバータ12を経由させてバッテリ9に充電することができる。また、後輪4,5の動力によりモータ・ジェネレータ18で回生制御をおこない、発生した電力をインバータ12を経由させてバッテリ9に充電することができる。このようにして、前輪2,3または後輪4,5に対して回生制動力を与えることができる。なお、減速要求に対応する制動力を、制動装置(図示せず)の制動力により負担することもできる。さらに、前記モータ・ジェネレータ7が力行制御されてエンジントルクの反力を受け持つ場合、エンジン6の動力の一部をモータ・ジェネレータ8に伝達して回生制御をおこない、発生した電力をモータ・ジェネレータ7に供給することも可能である。さらにまた、車両1の前後方向における減速要求が発生した場合は、前輪2,3の動力が減速機14および動力分配装置13を経由してエンジン6に伝達され、エンジンブレーキ力が発生する。
さらに、車両1の上下方向における振動を抑制する制御について説明する。ここでは、便宜上、モータ・ジェネレータ8,18のトルクを制御することにより、車両1の上下方向における振動を抑制する場合を採り上げる。まず、車両1で加速要求が発生している場合について説明する。例えば、車体振動センサ22により検知されるばね上変位量が、電子制御装置21に予め記憶されている閾値よりも多くなった場合に、車体27にバウンジングが発生したと判断し、車体振動センサ22により検知されるばね上変位量が、電子制御装置21に予め記憶されている閾値以下である場合は、車体27にバウンジングが発生していないと判断するように、電子制御装置21に制御プログラムが格納されている。より具体的には、ばね上変位量が正である場合に、車体27が上昇するバウンジングであると判断し、ばね上変位量が負である場合に、車体27が下降上昇するバウンジングであると判断する。
そして、車体27が上昇するバウンジングが発生する場合は、つぎのような制御により、車体27のバウンジングを抑制することができる。具体的には、図3に示すように、要求駆動力に基づいて前輪2,3で発生する駆動力に対して、制振のための駆動力ΔF1が追加されるように、モータ・ジェネレータ8のトルクが制御される。つまり、前輪2,3の駆動力が増加する。また、要求駆動力に基づいて後輪4,5で発生する駆動力に対して、制振のための制動力ΔF2が付加されるように、モータ・ジェネレータ18のトルクが制御される。つまり、後輪4,5の駆動力が低下する。このようにして、車両1の前後方向において相互に逆向きであり、かつ、離れる向きの力が発生すると、車体27に対して下向きの力が発生し車体27の上動が抑制される。
これに対して、車体27が下降するバウンジングが発生する場合は、つぎのような制御により、車体27のバウンジングを抑制することができる。図4に示すように、要求駆動力に基づいて前輪2,3で駆動力が発生する場合に、制振のための制動力ΔF2が前輪2,3に与えられるように、モータ・ジェネレータ8のトルクが制御される。つまり、前輪2,3の駆動力が低下する。また、要求駆動力に基づいて後輪4,5で駆動力が発生している場合に、制振のための駆動力ΔF1が付加されるように、モータ・ジェネレータ18のトルクが制御される。つまり、後輪4,5の駆動力が増加する。このようにして、車両1の前後方向において相互に逆向きであり、かつ、近づく向きの力が発生すると、車体27に対して上向きの力が発生し車体27の下降が抑制される。
つぎに、前輪2,3および後輪4,5が車体27に対して上下方向に振動する場合の制御を説明する。まず、前輪2,3が路面の凸部に乗り上げて衝撃を受けたときは、前輪2,3の接地荷重が高くなる。そこで、図3に示すように、要求駆動力に対応して前輪2,3で発生する駆動力に対して、駆動力ΔF1を追加するように、モータ・ジェネレータ8のトルクを制御する。つまり、前輪2,3で発生する駆動力が高められる。この制御により、前輪2,3と道路との接地面に作用する上向きの力により、前輪2,3が押し上げられるため、前輪2,3が凸部に追従しながら上動できるようになる。このようにして、前輪2,3の接地荷重が低減されて、その接地性が向上する。一方、後輪4,5が路面の凸部に乗り上げて衝撃を受けたときは、後輪4,5の接地荷重が高くなる。そこで、要求駆動力に対応して後輪4,5で発生する駆動力に対して、制動力ΔF2を与えるようにモータ・ジェネレータ18のトルクを制御する。つまり、後輪4,5で生じる駆動力が低下する。この制御により、後輪4,5と道路との接地面に作用する上向きの力により、後輪4,5が押し上げられるため、後輪4,5が凸部に追従しながら上動できるようになる。このようにして、後輪4,5の接地荷重が低減されて、その接地性が向上する。
これとは逆に、前輪2,3が路面の凸部から凹部に移行することにより、前輪2,3が車体に対して下降する場合の制御を説明する。この場合は、図4に示すように、要求駆動力に対応して前輪2,3で発生するトルクに対して、制動力ΔF2を与えるように、モータ・ジェネレータ8のトルクを制御する。つまり、前輪2,3で発生する駆動力が低下する。この制御により、前輪2,3に対して下向きの力が与えられるため、前輪2,3が凹部に追従しながら下降できるようになる。このようにして、前輪2,3の接地荷重が増加されて、その接地性が向上する。一方、後輪4,5が路面の凸部から凹部に移行することにより、後輪4,5が車体27に対して下降する場合の制御を説明する。この場合は、要求駆動力に対応して後輪4,5で発生する駆動力に対して、駆動力ΔF1を与えるように、モータ・ジェネレータ18のトルクを制御する。つまり、後輪4,5で発生する駆動力が高まる。この制御により、後輪4,5に対して下向きの力が与えられるため、後輪4,5が凹部に追従しながら下降できるようになる。
このようにして、後輪4,5の接地荷重が増加されて、その接地性が向上する。なお、車体27の上下方向における振動を抑制する制御(第1の振動抑制制御)、または車輪の上下方向における振動を抑制する制御(第2の振動抑制制御)は、いずれか一方の制御が実行され、同時に(並行して)両方の制御が実行されることはない。このように、車両1において加速要求が発生しており、モータ・ジェネレータ8,18が電動機として駆動されている際に、車両1の振動を抑制する場合は、加速要求に基づいて求められたモータ・ジェネレータ8,18の力行トルク(正トルク)に対して、振動を抑制するためのトルクが加算または減算される。
一方、車両1において減速要求が発生している場合に、車両1の上下方向における振動を抑制する制御をおこなうことも可能である。具体的に説明すると、車両1において減速要求が発生し、モータ・ジェネレータ8,18で回生制御がおこなわれている際に、車両1の上下方向における振動を抑制する場合は、減速要求に基づいてモータ・ジェネレータ8,18で発生している回生制動トルク(負のトルク)に対して、振動を抑制するためのトルクを加算または減算する制御がおこなわれる。なお、車体27の振動量、または各車輪の振動量に対して、モータ・ジェネレータから出力するべきトルク(制振トルク)は、あらかじめマップ化されて電子制御装置21に記憶されている。
ところで、モータ・ジェネレータ8から前輪2,3に至る動力伝達経路には、減速機14および終減速機15が設けられており、この減速機14および終減速機15を構成する歯車同士の噛み合い部分には、バックラッシが形成されている。ここで、前述のように加速要求または減速要求に基づいて求められているモータ・ジェネレータ8の第1トルクに対して、振動を抑制するための第2トルクを加算または減算して最終的な第3トルクを求めると、その最終的な第3トルクが零ニュートンメートルを境界として、正のトルクと負のトルクとに交互に切り替えられる場合がある。すると、歯車同士の噛み合い部分で異音、つまり、衝撃音、ガタ打ち音が発生する可能性がある。
そこで、この実施例では、モータ・ジェネレータのトルクを制御して、車両1の上下方向における振動を抑制する場合に、そのモータ・ジェネレータから車輪に至る動力伝達経路で、歯車同士の噛み合い部分で異音が発生することを抑制する制御を実行する。この異音発生を抑制する制御例の概略を、図1の制御系により説明する。この図1では、モータ・ジェネレータ8のトルク制御を便宜上、除外している。まず、車速およびアクセル開度に基づいて要求駆動力が求められ、その要求駆動力に基づいて駆動トルク(要求トルク)が求められる(ステップS1)。この駆動トルクには、エンジントルクおよびモータ・ジェネレータ8,18のトルクが全て含まれている。なお、電子制御装置21にはステップS1の処理をおこなうために予めマップが記憶されている。このステップS1についで、求められた駆動トルクを緩変化させる処理(なまし処理)がおこなわれる(ステップS2)。この緩変化処理は、駆動トルクの急激な変化によるドライバビリティ低下を抑制するための処理である。具体的には、駆動力が急激に変化してショックが発生することを防止すること、異音が発生することを防止することなどである。このステップS2についで、緩変化処理が施された駆動トルクから、エンジン6により負担するトルク(エンジン直達トルク)が減算され、その残りがモータ・ジェネレータ8の基準トルク(ベースMG2トルク)として算出される(ステップS3)。この基準トルクが、前述した第1トルクに相当する。
一方、車両1の上下方向の振動を抑制するためのモータ・ジェネレータ8のトルク、つまり、制振トルクが求められる(ステップS4)。このステップS4の処理は前述した通りであり、この制振トルクが前述した第2トルクである。このステップS4についで、制振トルクに上限および下限を設定する処理をおこなう(ステップS5)。この上限および下限は、制振トルクが加算または減算されることで生じる不都合を回避するために設定される。この上限とは、モータ・ジェネレータ8で加算できる制振トルクの最大値である。また、下限とは、モータ・ジェネレータ8により減算できる制振トルクの最大値である。
この下限および上限は、例えば、バッテリ9の充電量により決定することが可能である。具体的には、バッテリ9の充電量が相対的に多い場合は、バッテリ9の充電量が相対的に少ない場合に比べて、下限の絶対値が相対的に小さく設定できる。これに対して、バッテリ9の充電量が相対的に多い場合は、バッテリ9の充電量が相対的に少ない場合に比べて、上限の絶対値が相対的に大きく設定できる。このように、バッテリ9の充電量に基づいて上限および下限を設定することにより、バッテリ9の放電または過充電という不都合を回避できる。なお、この下限および上限は、バッテリ9の充電量の変化に応じて変更してもよいし、予め固定値として決定しておいてもよい。上記の下限および上限は、実験的、またはシミュレーションにより求められて電子制御装置21に記憶されている。
このようにして、上限および下限が設定された制振トルクを、前記基準トルクに加算する処理、および基準トルクから減算する処理をおこない、モータ・ジェネレータ8の最終的な第3トルクが求められ(ステップS6)、この制御ルーチンを終了する。なお、図1の制御例において、ステップS3を実行するタイミングと、ステップS4,S5を実行するタイミングとの前後関係は問われない。すなわち、ステップS3を実行するタイミングと、ステップS4,S5を実行するタイミングとが同じでもよいし、ステップS3を実行した後、ステップS4,S5を実行してもよいし、ステップS3を実行する前に、ステップS4,S5を実行してもよい。
上記のステップS6では、第1のサブルーチンないし第3のサブルーチンのいずれか1つを選択することができる。まず、第1のサブルーチンの例を、図5のタイムチャートに基づいて説明する。この図5には、緩変化処理が施される前の駆動トルクA1と、基準トルクB1とが示されている。この基準トルクB1は、緩変化処理が施された駆動トルクA1からエンジン直達トルクを減算して求めた値である。また、基準トルクB1に対して、予め定められた幅T1を有する上限C1および下限C2が示されている。この上限C1および下限C2は同じ幅T1である。この図5において、上限C1とは、正のトルクにおいて基準トルクB1よりも大きい値、または負のトルクにおいて基準トルクB1よりも小さい値である。これに対して、下限C2とは、正のトルクにおいて基準トルクB1よりも小さい値、または負のトルクにおいて基準トルクB1よりも大きい値である。また、下限C2と上限C1との間に、ステップS4で求められる制振トルクD1が示されている。さらに、時刻t2以前では、基準トルクB1が正のトルク(力行トルク)であり、時刻t2で零ニュートンとなり、時刻t2以降は基準トルクB1が負のトルク(回生トルク)となっている。さらに、時刻t2よりも前の時刻t1以前では、上限C1および下限C2が、共に正のトルクとなっている。
これに対して、時刻t1の前後では、下限C2が正のトルクから負のトルクに切り替わることとなる。さらに、時刻t1から、時刻t2よりも後の時刻t3の間は、上限C1が正のトルクとなり、下限C2が負のトルクとなる。これに対して、時刻t3の前後では、上限C1が正のトルクから負のトルクに切り替わる。このため、図5に示されたように、基準トルクB1が変化するとすれば、その基準トルクB1に対して制振トルクD1を加算、または基準トルクB1から制振トルクD1を減算して、仮の第3トルクを求めると、その仮の第3トルクが零ニュートンメートルを境として、正と負とで交互に切り替わる可能性がある。そこで、ステップS6に進んで実行される第1のサブルーチンでは、時刻t1から時刻t3の間、上限および下限が設定された制振トルクD1を、前記基準トルクB1に加算する処理、および基準トルクB1から制振トルクD1を減算する処理を禁止する。言い換えれば、第1のサブルーチンでは、ステップS3で求められた基準トルクB1を、モータ・ジェネレータ8の最終的な第3トルクとして取り扱う処理がおこなわれる。
つぎに、ステップS6で実行可能な第2のサブルーチン例を図6のタイムチャートに基づいて説明する。図6においても、図5と同じパラメータの経時変化が示されている。この図6のタイムチャートにおいて、時刻t1以前および時刻t3以降では、基準トルクB1の絶対値が、基準トルクB1から上限C1または下限C2までのトルクの幅T1を越えている。したがって、第2のサブルーチンにおいて、時刻t1以前および時刻t3以降では、基準トルクB1に制振トルクを加算する制御、および基準トルクB1から制振トルクを減算する制御をおこない、モータ・ジェネレータ8の最終的な第3トルクが求められる。
一方、図6のタイムチャートにおいて、時刻t1から時刻t2の間は、基準トルクB1の絶対値が、基準トルクB1から下限C2までのトルクの幅T1以下となる。また、時刻t2から時刻t3の間は、基準トルクB1の絶対値が、基準トルクB1から上限C2までのトルクの幅T1以下となる。このため基準トルクB1に制振トルクD1を加算または減算して、仮の第3トルクを求めると、仮の第3トルクが零ニュートンメートルを境として、正と負とで交互に切り替わる可能性がある。そこで、第2のサブルーチンが選択された場合、時刻t1から時刻t3までの間は、上限C1′および下限C2′の幅を、時刻t1以前および時刻t3以降における上限C1および下限C2の幅よりも相対的に小さく(狭く)設定している。そして、時刻t1ないし時刻t3の間は、基準トルクD1に対して、相対的に狭められた範囲で制振トルクD1を加算または減算されて、モータ・ジェネレータ8の最終的な第3トルクを求める処理をおこなう。
つぎに、第3のサブルーチンについて説明する。この第3のサブルーチンにおいても、時刻t1以前および時刻t3以降は、第1のサブルーチンと同じ処理がおこなわれる。また、第3のサブルーチンが選択された場合、時刻t1から時刻t2までの間は、基準トルクB1に加算する制振トルクD1の幅を上限C1の幅T1内で設定し、かつ、基準トルクB1から減算する制振トルクD1の幅を、基準トルクB1から下限C2の幅T1内で相対的に小さくする。これに対して、時刻t2から時刻t3までの間は、基準トルクB1から減算する制振トルクD1の幅を下限C2の幅T1内で設定し、かつ、基準トルクB1に加算する制振トルクD1の幅を、基準トルクB1から上限C1の幅T1内で相対的に小さくする。このように、第3のサブルーチンが選択された場合、時刻t1から時刻t3までの間は、基準トルクB1に加算されるトルクの幅と、基準トルクB1から減算されるトルクの幅とが異なる。
このように、ステップS6において、第1のサブルーチンないし第3のサブルーチンのいずれが選択された場合でも、制振トルクD1が、零ニュートンメートルを境界として、正のトルクと負のトルクとで行き来することを防止できる。したがって、モータ・ジェネレータ8のトルクを制御して車両1の上下方向における振動を抑制する場合に、歯車同士の噛み合い部分で異音が発生することを回避できる。なお、モータ・ジェネレータ18から後輪4,5に至る経路に歯車の噛み合い部分が設けられている場合、歯車の噛み合い部分で異音が生じないように、モータ・ジェネレータ18のトルクを、図1および図5および図6で説明した制御例と同じ原理で制御することも可能である。
また、この具体例においては、エンジン6から前輪2,3に伝達されるトルクを制御することにより、車両1が上下方向に振動することを抑制することも可能である。例えば、要求駆動力に基づいて目標エンジントルクを求め、その目標エンジントルクに制振トルクを加算する制御、または目標エンジントルクから制振トルクを減算する制御をおこない、最終的なエンジントルクを求めることとなる。そして、最終的なエンジントルクが正のトルクである場合、吸入空気量、燃料噴射量、点火時期などを制御することにより、歯車同士の噛み合い部分における異音を抑制可能である。また、最終的なエンジントルクが負のトルクである場合、吸入空気量を調整してエンジンブレーキ力を制御すれば、動力分配装置13を構成する歯車同士の噛み合い部分、減速機15を構成する歯車同士の噛み合い部分、終減速機15を構成する歯車同士の噛み合い部分における異音を抑制可能である。なお、図5および図6のタイムチャートは、基本トルクB1が正のトルクから負のトルクに切り替わる場合を示しているが、図1の制御例は、基本トルクB1が負のトルクから正のトルクに切り替わるときに、最終的なトルクが、正のトルクと負のトルクとを交互に行き来することを防止することも可能である。
さらに、この発明は、左右の前輪および左右の後輪に対して、4機のモータ・ジェネレータがそれぞれ別個に動力伝達可能に設けられた構成のパワートレーン、すなわち、いわゆるインホイールモータ式の四輪駆動車においても適用可能である。この車両は、エンジンが設けられていない電気自動車である。そして、各モータ・ジェネレータから車輪に至る動力伝達経路に、歯車機構を有する減速機が用いられている場合に、この具体例の原理を用いて、4機のモータ・ジェネレータのトルクを別個に制御すれば、各モータのトルクを別個に制御して、車両の上下方向における振動を抑制する場合に、減速機を構成する歯車同士の噛み合い部分で異音が発生することを防止できる。さらに、この発明は、駆動力源としてモータ・ジェネレータが設けられており、エンジンが設けられていない車両(電気自動車)にも適用可能である。この場合、モータ・ジェネレータのトルクが、前輪または後輪のいずれか一方に伝達されるように構成された二輪駆動車においても適用可能である。このモータ・ジェネレータのトルクが、変速機および最終減速機を経由して車輪に伝達されるように構成されている場合、変速機または最終減速機を構成する歯車の噛み合い部分で、異音が発生することを防止できる。
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1ないしステップS6が、この発明におけるトルク算出手段に相当し、ステップS6が、符号判断手段およびトルク補正手段に相当する。また、懸架装置30が、この発明における懸架装置に相当し、車体27が、この発明における車体に相当する。前輪2,3および後輪4,5が、この発明における車輪に相当し、エンジン6およびモータ・ジェネレータ8,18が、この発明における駆動力源に相当し、動力分配装置13および減速機14および終減速機15に設けられた歯車同士の噛み合い部分が、この発明における噛み合い機構に相当する。また、ステップS3で求められる基本トルクB1が、この発明における第1トルクに相当し、ステップS4で求められる制振トルクD1が、この発明における第2トルクに相当し、ステップS6で求められる最終的なトルクが、この発明における第3トルクに相当する。
1…車両、2,3…前輪、 4,5…後輪、 8,18…モータ・ジェネレータ、 13…動力分配装置、 14…減速機、 15…最終減速機、 27…車体、 30…懸架装置。