以下、本発明のいくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、循環部材に配置した指標を光学的に検知する限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
本発明は、中間転写ベルトや記録材搬送ベルトに沿って複数の画像形成ユニットを並列に配置したタンデム型の画像形成装置でも実施できる。
本実施形態では、トナー像の形成に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を付加して、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の構成、各電源、装置機器の詳細な制御内容等の一般的事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の模式的な説明図、図2は制御部の接続を説明するブロック図である。第1実施形態の画像形成装置100は、中間転写ベルト4を用いた電子写真方式のフルカラーレーザービームプリンタである。
図1に示すように、画像形成装置の一例である画像形成装置100は、像担持体の一例である中間転写ベルト4を備える。中間転写ベルト4は、周長(500)mmの無端状に形成されて、それぞれ回転体の一例である駆動ローラ6、二次転写内ローラ7、テンションローラ9、一次転写ローラ8に掛け渡して支持される。中間転写ベルト4は、駆動機構25に接続された駆動ローラ6に駆動されて図中左回り方向にプロセススピード(200)mm/秒の循環速度で循環する。中間転写ベルト4は、抵抗値や表面特性、厚さなどが厳密に管理された機能部材であるため、製造コスト、部品コストが高い。
中間転写ベルト4を挟んで一次転写ローラ8に対向する位置に感光ドラム3が配置される。感光ドラム3は、直径60mmのアルミニウム製シリンダの外周面に、有機光導電体層(OPC)を塗布して構成される。感光ドラム3は、軸方向の両端部をフランジによって回転自在に支持され、一方の端部に駆動機構25から駆動力を伝達して回転駆動される。感光ドラム3は、中間転写ベルト4の循環速度とほぼ等しい表面速度で図中右回り方向に回転する。
感光ドラム3の周囲には、一次帯電器22、露光装置1、ロータリ現像器10、一次転写ローラ8、ドラムクリーニング装置2が配置される。濃度検出センサ13は、感光ドラム3に形成される可視画像の濃度(色材量)を検出する。
一次帯電器22は、不図示のばね機構を用いて導電性ローラを感光ドラム3表面に当接させている。導電性ローラは、電源D3から交流成分を含む負極性の帯電電圧を印加されて、感光ドラム3の表面を一様な電位に帯電させる。
露光装置1(レーザースキャナ)は、画像信号に応じて半導体レーザー素子から出力させたレーザービームLBを回転ミラーで走査して、感光ドラム3の表面を軸方向に走査露光する。これにより、回転する感光ドラム3の表面には、各色の分解画像においてトナーが付着すべき部分の電位を低下させた静電像が形成される。
ロータリ現像器10は、全体を回転させて、イエロー現像器10a、マゼンタ現像器10b、シアン現像器10c、ブラック現像器10dをそれぞれ感光ドラム3との対向位置へ移動可能である。
イエロー現像器10aは、現像スリーブS4の円筒面に帯電したイエロートナーを担持させて、感光ドラム3と僅かな隙間を隔てて現像スリーブS4を回転させる。現像スリーブS4には、感光ドラム3の帯電電位と露光部電位との中間に設定した直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧が電源D4から印加される。これにより、感光ドラム3の露光部分にトナーが付着して反転現像されたイエロートナー像が形成される。マゼンタ現像器10b、シアン現像器10c、ブラック現像器10dは、それぞれマゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーを用いて、同様に各色トナー像を形成する。
一次転写ローラ8は、中間転写ベルト4を介して感光ドラム3に圧接して、感光ドラム3と中間転写ベルト4との間に一次転写部T1を形成する。一次転写ローラ8は、電源D1から正極性の直流電圧を印加されることにより、感光ドラム3の負極性のトナー像を引き付けて中間転写ベルト4に移動させる。一次転写部T1を通過して、感光ドラム3に残った転写残トナーは、ドラムクリーニング装置2によって除去される。
中間転写ベルト4の外周面に、二次転写外ローラ27とベルトクリーニング装置15とが配置される。二次転写外ローラ27は、駆動機構28によって、ベルトクリーニング装置15は、駆動機構26によって、それぞれ中間転写ベルト4に当接および離間が可能である。二次転写外ローラ27とベルトクリーニング装置15とを離間させた状態で、中間転写ベルト4には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ねて一次転写される。4色のトナー像が中間転写ベルト4に転写完了すると、二次転写外ローラ27を中間転写ベルト4に当接させて、4色のトナー像が記録材Pへ一括二次転写される。
二次転写外ローラ27は、中間転写ベルト4を介して二次転写内ローラ7に圧接して、二次転写外ローラ27と中間転写ベルト4との間に二次転写部T2を形成する。二次転写内ローラ7は、接地電位に接続され、二次転写外ローラ27は、電源D2に接続される。中間転写ベルト4に一次転写されたトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2に記録材Pが送り込まれる。
二次転写外ローラ27は、電源D2から正極性の直流電圧を印加されることにより、中間転写ベルト4の負極性のトナー像を記録材Pに移動させる。二次転写部T2を通過して、中間転写ベルト4に残った転写残トナーは、ベルトクリーニング装置15によって除去される。
図2に示すように、装置本体100Aは、制御部110によって制御される。制御部110は、表示インターフェース部111、画像データインターフェース部112、通信インターフェース部113、メイン制御CPU121、およびメカ制御CPU125を含む。メイン制御CPU121は、HDD、R0M、RAMを含むコンピュータで構成され、独立した演算回路としての画像処理部122、露光制御部123を備えている。メイン制御CPU121は、搭載された処理プログラムを用いて装置本体100Aの各部を統括的に制御するとともに、サブ制御ユニットとしてのメカ制御CPU125を制御する。
装置本体100Aの駆動部131は、モータ、クラッチ、ファン等であって、図1の駆動機構25、26、28等を作動させる。センサ部132は、温度センサ、湿度センサ、トナー残量検知センサ、記録材Pの位置検出センサ、HPセンサ5等である。
給紙制御部133は、図1のピックアップローラ30、分離ローラ33等を作動させて記録材Pの供給を制御する。高圧制御部134は、電源D1、D2、D3、D4を制御して、感光ドラム3の帯電量や一次転写ローラ8等の電圧を制御する。
画像データインターフェース部112は、PC(パーソナルコンピュータ)や他のコントローラなどから送信されてきた印刷対象データ(例:ページ記述言語により記述されたデータなど)を入力する。PDF形式やTiff形式などの画像データも入力する。画像処理部122は、入力された画像データから各分解色データを形成し、γ補正等を施して走査線に展開する。露光制御部123は、レーザーの露光量や発光時間を制御し、露光装置1のレーザー駆動信号を生成して、メイン制御CPU121の制御に従って露光装置1を作動させる。
表示インターフェース部111は、タッチパネル形式の表示/操作パネル108を通じた入出力を制御する。通信インターフェース部113は、ネットワークを通じてサービス拠点端末109に接続する。
図1に示すように、制御部110は、画像形成ジョブが入力されると、感光ドラム3の表面を一次帯電器22によって一様に帯電した後、HPセンサ5でHPマーク12を検知して露光を開始させる。露光装置1は、画像のイエロー分解色画像の画像信号で駆動されて感光ドラム3の表面に静電像を形成する。続いて、イエロー現像器10aが静電像にイエロートナーを付着させてイエロートナー像を現像する。イエロートナー像は、感光ドラム3の回転に伴って一次転写部T1へ搬送され、一次転写ローラ8を用いて中間転写ベルト4へ一次転写される。
中間転写ベルト4上のイエロートナー像が一周循環して重なるまでに、感光ドラム3には、同様な手順を用いてマゼンタトナー像が形成され、中間転写ベルト4のイエロートナー像上へ重ねて一次転写される。同様にして、感光ドラム3にシアントナー像が形成されて中間転写ベルト4のマゼンタトナー像上へ一次転写され、さらに、ブラックトナー像が形成されてシアントナー像上へ一次転写される。中間転写ベルト4上への各色のトナー像の重ね合わせは、HPセンサ5でHPマーク12を検知して制御される。
記録材収納カセット17からピックアップローラ30、分離ローラ33を用いて記録材Pが1枚ずつ取り出され、レジストローラ34で待機する。レジストローラ34は、中間転写ベルト4上の4色のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ記録材Pを送り込む。二次転写部T2で中間転写ベルト4に重ねて挟持搬送される記録材Pへ4色のトナー像が一括二次転写される。
二次転写部T2を通過した記録材Pは、定着ユニット16に搬送されて、定着部T3で加熱・加圧を受けて、フルカラー画像を表面に定着され、排出ローラ20から積載トレイ23へ排出される。二次転写部T2を通過して中間転写ベルト4に残った転写残トナーは、中間転写ベルト4に当接させたベルトクリーニング装置15によって除去される。
<HPセンサとHPマーク>
図3はHPマークとHPセンサの配置の説明図、図4はHPセンサの構成の説明図、図5はHPセンサの制御を説明するブロック図である。図6はHPセンサの出力の説明図、図7はHPマークが消耗した際のHPセンサの出力の説明図である。
図3に示すように、駆動ローラ6、二次転写内ローラ7、一次転写ローラ8等に支持された中間転写ベルト4の内側面に、10mm角のHPマーク12が貼付されている。中間転写ベルト4の内側面は、黒色に着色したPI(ポリイミド)材料であり、HPマーク12は、白色に着色したポリエチレンフィルム材料である。
HPセンサ5は、中間転写ベルト4の内側面に対向して配置され、HPマーク12の白と中間転写ベルト4の黒との差を光学的に検出し、検出結果に応じて感光ドラム3の露光タイミングが制御される。
図4に示すように、中間転写ベルト4は紙面の奥側から手前側に向かって移動し、中間転写ベルト4の縁に対向させてHPセンサ5が配置される。HPセンサ5は、LED(発光ダイオード)等の発光部52で照射した中間転写ベルト4の内側面からの反射光を、PD(フォトディテクタ)等の受光部51で検知する。発光部52の光軸と受光部51の光軸との角度関係は、白と黒の検出であるため、正反射光ではなく乱反射光(散乱光とも言う)を受光する光学配置である。
図5に示すように、HPセンサ5の発光部52から中間転写ベルト4に照射された光Ioは、中間転写ベルト4の内側面で反射する。反射光Irは、受光部51で受光されて、受光部51から反射光量56が出力される。中間転写ベルト4の内側面の一部には、HPマーク12が配置されており、中間転写ベルト4の移動に伴ってHPセンサ5の対向部にHPマーク12が位置すると、反射光量56が変化する。
LED光量制御部53は、受光部51で計測された反射光Ioの反射光量56をモニタして、反射光Ioの光量をメイン制御CPU121に通知する。LED光量制御部53は、メイン制御CPU121が設定した発光強度55にて発光部52を作動させて照射光Ioを調整する。
メイン制御CPU121は、照射光Ioの発光強度55と反射光Irの反射光量56(測定値)とに基づいてHPマーク12の通過を検知し、感光ドラム(3:図1)への静電像の書き込みタイミングを制御する。
図2に示すように、メイン制御CPU121は、書き込みタイミングを判断して、メカ制御CPU125を介して駆動部131や高圧制御部134を動作させ、書き込み情報を供給する露光制御部123等にも動作指示を行う。
HPセンサ5がHPマーク12を検知すると、反射光量56は、図6に示すように変化する。中間転写ベルト4の内側面を検出している間、内側面は黒色であるため反射光量56は少なく、場所ごとの反射状態の差に応じて変動する。しかし、HPマーク12に差し掛かると、HPマーク12は白色であるため、反射光量56が急上昇して高くなる。
メイン制御CPU121では、反射光量56が所定値(閾値A)以上となった時刻Bを記憶する。メイン制御CPU121は、時刻Bからの経過時間をカウントし、所定時間Cを越えて閾値A以上の反射光量56が継続した場合をHPマーク12であると判断する。そして、メイン制御CPU121は、反射光量56が閾値A以下になった時刻Dで作像開始を指示する。
ここで、所定時間Cを用いてHPマーク12を判断する理由は、中間転写ベルト4の内側面に付着したごみや汚れからの反射光量56が閾値Aを越えても、所定時間Cを越えて継続することは有り得ないからである。つまり、ごみや汚れをHPマーク12と誤判断して、静電像の書き込みを開始しないためである。
しかし、中間転写ベルト4を長期間使用してHPマーク12が消耗すると、メイン制御CPU121は、HPマーク12の反射光量56から正しい作像開始タイミングを判別できなくなる可能性が高くなる。
例えば、HPマーク12の全面に汚れが付着して反射率が低下すると、図7に点線C3で示すように、正常時C1に比較して反射光量56のレベルが低下し、閾値Aを用いた判断自体が困難になる。反射光量56が閾値Aを超えることがなければ、メイン制御CPU121は、中間転写ベルト4の循環ごとに作像開始タイミングが取れず、作像不能エラーになってしまう。
例えば、HPマーク12のエッジに汚れや傷が付いた場合、図7に破線C2で示すように、白と黒の差がはっきりしないために、作像タイミングが正常時C1の状態からずれる。正常時C1に比較して反射光量56の立ち上がり、立ち下りのばらつきが大きくなり、メイン制御CPU121がHPマーク12を判別できても、立ち下りが前後すると、各色画像の重ね合わせ誤差が大きくなる。
そして、作像不能エラーや各色画像の重ね合わせ不良が発生すると、サービスマンは、HPマーク12を含む中間転写ベルト4の内側面を薄いエタノールで拭き掃除して汚れや付着物を除去していた。そして、薄いエタノールでは拭き取れない汚れや傷がある場合には、中間転写ベルト4自体には機能的に異常が無くても、中間転写ベルト4が交換されてしまう可能性があった。
<二層式HPマーク>
図8は上層と下層のHPマークの説明図、図9は二層式HPマークの構成の説明図、図10は一次転写ローラへHPマークが進入する状態の説明図、図11が一次転写ローラをHPマークが抜ける状態の説明図である。
図8に示すように、第1実施形態では、上層のHPマーク12bと下層のHPマーク12aとを有する。
下層のHPマーク12aに相当する光学的性質を持たせた上層のHPマーク12bは、下層のHPマーク12aに重ねて、中間転写ベルト4の循環に耐える付着強度を持たせて取り外し可能に配置される。
具体的には、下層のHPマーク12aは、中間転写ベルト4に貼り付けされ、上層のHPマーク12bは、下層のHPマーク12aに貼り付けされる。上層のHPマーク12bに対する貼り付け力は、少なくとも取り外す際に、下層のHPマーク12aの中間転写ベルト4に対する貼り付け力よりも小さい。
上層のHPマーク12bは、下層のHPマーク12aの上に複数層を重ねることも可能である。この場合、少なくとも取り外す際に、下層のHPマーク12aに近い層ほど下層面に対する貼り付け力が大きいことが望ましい。下層(新しいHPマーク)に影響を及ぼすことなく、上層(痛んだHPマーク)を剥がせるからである。
上層のHPマーク12bは、中間転写ベルト4の循環方向の後尾側(後端)での積層高さが、先頭側(先端)よりも小さい。ここで、積層高さとは、中間転写ベルト4に1枚のHPマーク12aが中間転写ベルト4に貼り付けられている場合には、HPマーク12a又は透明保護シート12b自体の厚さを示すものとする。
また、第2実施形態で詳しく説明するように、上層のHPマーク12bは、下層のHPマーク12aを見透かせる透明保護シート(12b)に置き換えることができる。いずれにせよ、上層を引き剥がすことにより、HPセンサ5によって検知されるHPマークの汚れや表面性を回復できる。
図9の(a)に示すように、中間転写ベルト4上には、下層のHPマーク12aと上層のHPマーク12bとを一体に貼付した重なりが貼付されている。
図9の(b)に示すように、中間転写ベルト4上には、下層のHPマーク12aと上層のHPマーク12bとが二層に重ねて貼付されている。そして、上層のHPマーク12bの汚れや損傷が著しくなると、上層のHPマーク12bをはがして、代わりに下層のHPマーク12aを利用する。汚れた上層のHPマーク12bを除去して、汚れていない下層のHPマーク12aを登場させることにより、中間転写ベルト4の取り外し、交換、調整等を伴うことなく、図7に示す正常時C1の反射光量(56:図3)が再現される。
HPマーク12a、12bは、中間転写ベルト4の内側面の一部として、図1に示す駆動ローラ6、二次転写内ローラ7、テンションローラ9、一次転写ローラ8に接触して移動する。
図10に示すように、これらのローラ(例えば一次転写ローラ8)へHPマーク12が進入する際には、HPマーク12の縁には、HPマーク12を中間転写ベルト4に圧着させる方向の力Fmが作用する。
図11に示すように、これらのローラ(例えば一次転写ローラ8)をHPマーク12が抜ける際には、HPマーク12の縁には、HPマーク12を中間転写ベルト4から引き剥がす方向の力Fhが作用する。従って、図9の(b)に示すように、上層のHPマーク12bの後端を下層のHPマーク12aの後端よりも外側へ拡張して、一次転写ローラ8が蹴り出す段差を小さくしている。
また、HPマーク12a、12bについては、十分な耐久性能を確保できるように、材料選定や試験内容について考慮する必要がある。耐久性の中でも、耐摩擦性、耐衝撃性、耐摩耗性、引張り性や粘着性に優れた材料および貼り付け方法であることが望ましい。
また、中間転写ベルト4に貼り付けされている下層のHPマーク12aは、上層のHPマーク12bをはがした際に一緒にはがれてしまわないだけの余分な貼り付け力を備えている必要がある。
しかし、上層のHPマーク12bは、上記の十分な耐久性を備えていることを前提として、はがし易い貼り付け力である必要がある。装置本体(100A:図1)の狭い空間に手を差し込んではがす際には、指先に大きな力を出せないからである。上層のHPマーク12bをはがした際に、中間転写ベルト4や周囲の機構に不必要な力をかけたり、中間転写ベルト4に折り目や擦り傷を形成したりしないためでもある。
また、上層のHPマーク12bは、はがした後に過剰な粘着痕を残さず、温度上昇や摩擦に伴って粘着剤がはみ出したり、ずれたりしないことが必要である。HPマーク12bは、中間転写ベルト4と上記ローラとの摩擦搬送力に負けない保持力が要求される。これらの結果を表1にまとめて示す。
上層のHPマーク12bの材料と下層のHPマーク12aの材料とは、表1に示す物性値の関係を満たすことが最適である。下層のHPマーク12aは、剥がす必要が無いため、なるべく剥がしにくく耐久性の高いものを選択すればよい。上層のHPマーク12bは、耐久性がある基材を用いて、剥がし易く、ずれない粘着剤を用いて貼り付けすればよい。
<各種測定方法の説明>
図12は粘着性およびはがし易さの試験方法の説明図、図13は引っ張り強度の試験方法の説明図、図14は貼り付け保持力の試験方法の説明図である。日本工業規格JIS Z 0237には、粘着テープ・粘着シートの剥がし易さ、引張性、接着性などの指標と、試験方法とが詳細に定義されている。以下の説明は、JIS Z 0237の規格に準拠しており、第1実施形態では、この規格に従ってHPマーク12a、12bの材料となる粘着シートの選定を行った。
図12に示すように、粘着シートの剥がし易さは「25mm幅における180度引き剥がし法」により評価した。2kg(幅45mm)のゴムライニングロールを一往復させて各種の粘着シートSaをステンレス板Paに圧着し、20分後に測定を行う。ステンレス板(SUS304)Paは、280番研磨紙で研磨して粗面にしておく。引き剥がし速度は300mm/分である。引きはがされた力Frを単位Nで測定すると、剥がし易さの単位はFr(N/25mm)となるので、この値に0.4を掛けてN/cmで表記する。
図13に示すように、粘着シートの引張性は、25mm幅の粘着シートSbをクランパPbで挟持して両端から引っ張り、破断する力Ftを単位Nで測定して、引張性Ft(N/cm)という単位で表記する。
図14に示すように、一定荷重による粘着面のずれ量を測定する粘着性試験を行って、粘着シートの保持力を評価した。2kgのゴムローラを一往復させてステンレス板Pcに粘着シートScを厚着し、20分後に荷重(1Kg)をかけて測定開始し、15分後までのずれ距離(mm)を測定した。ずれ距離が小さいほど保持力が強い。
なお、はがし易さの測定方法として180度の引き剥がし力を用いたが、JIS Z 0237には、90度、45度等の測定も規定され、180度に次いで90度のデータも各メーカーが提供している。よって、90度の引き剥がし力のデータを参考にして、粘着シートの材料選定を行ってもかまわない。
<HPマークの材質>
HPマーク12a、12bの材料として評価した各メーカーの粘着シート材料とその評価結果とを表2に示す。
表2中、材料1は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名Super10(登録商標)である。材料2は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名1350F(白)0.06mmである。材料3は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名1350F(白)0.08mmである。材料4は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名56である。
材料5は、日東電工社(登録商標)の商品名NO.31Dである。材料6は、日東電工社(登録商標)の商品名NO.31Bである。材料10は、日東電工社(登録商標)の商品名4430である。材料11は、日東電工社(登録商標)の商品名443である。
材料7は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名5421である。材料8は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名838である。材料9は、住友スリーエム社(登録商標)の商品名859である。
表2中、層厚、粘着層(厚さ)の単位はmmである。粘着力は、JIS規格に沿って測定されたステンレス板に対する粘着力(接着力)の測定値であって、メーカーから規格値として提供されている。一方、実測値は、本願発明者が中間転写ベルト4への貼り付けを想定して、同じ測定方法を用いてポリイミド(PI)樹脂に対する粘着力(接着力)を測定した値である。はく離は、粘着シートをはく離した後の中間転写ベルト4(ポリイミド表面)における粘着剤の残留状態である。
また、表3は、表2に示す材料1〜8を、中間転写ベルト4に貼り付けした材料4、材料5、材料9、材料11の上に重ねて貼り付けした際の粘着力を測定した結果である。
表3中、粘着力は、粘着力の実測値(N/cm)、耐久は耐久性、はく離ははく離性である。高温高湿度条件での長時間連続運転に対する耐久性ありは○、耐久性不十分は×と評価した。また、はく離性は、はく離時に中間転写ベルト(4:図1)に永久変形が発生しない場合を○、永久変形が発生した場合を×と評価している。
表3の組み合わせ中、粘着力が4.0N/cm未満であると、高温高湿度条件での長時間連続運転で粘着力が低下するとはがれ易くなり、耐久性を満足できない可能性がある。しかし、粘着力が10.0N/cmを越えると、引き剥がしの際に中間転写ベルト4を引っ張って波打ち等の永久変形を生じる可能性が高くなる。
表2及び表3の結果に基いて、下層のHPマーク12aは、基材がポリエステルであって、熱硬化型ゴム系の接着材が塗布されている材料4とした。そして、上層のHPマーク12bは、基材がエポキシフィルムであって、熱硬化型ゴム系の粘着材が塗布されている材料1とした。一般的に、ゴム系の粘着剤の方がアクリル系に比べ剥離し易いため、上層のHPマーク12bの粘着剤にはゴム系がふさわしいと判断した。
粘着シートの色は、必要な反射特性を確保するために、HPマーク12a、12bのどちらも白色である。しかし、中間転写ベルト4とのコントラストを十分に確保できるなら、黄色や明るい色でも使用可能である。
粘着シートの保持力は、HPマーク12a、12bともに0〜1mmが望ましい。耐久性を考慮すると、HPマーク12a、12bが中間転写ベルト4に対して強い保持力を有する必要がある。
粘着シートの粘着力(引き剥がすために必要な力)は、上層のHPマーク12bが下層のHPマーク12aよりも弱く選択する必要がある。上層のHPマーク12bと下層のHPマーク12aとの粘着力が近い場合や、逆転している場合には、上層のHPマーク12bをはがした際に、下層のHPマーク12aまではがれてしまう可能性があるからである。
なお、表2の粘着力は、JIS Z 0237に基づいて図12のステンレス板Paを用いて評価されている。そこで、本発明者は、上層のHPマーク12bについては、下層の基材であるポリフッ化ビニルに対する粘着力および保持力も確認した。また、下層のHPマーク12aについては、中間転写ベルト4の材料であるポリイミド(PI)に対する粘着力および保持力も確認した。
その結果、上層のHPマーク12bの粘着力<下層のHPマーク12aの粘着力の関係は保たれていた。表2から、下層のHPマーク12aの粘着力は6.6である。また、表3から、上層のHPマーク12bの粘着力は5である。保持力も上層のHPマーク12bは0.5mm、下層のHPマーク12aは1mmであった。
HPマーク12a、12bは、ある程度の伸縮性があることが望ましい。中間転写ベルト4は、ベルト状の構造をしており、伸び縮みを繰り返す。中間転写ベルト4の伸び縮みに追従してHPマーク12a、12bが伸縮することで、粘着層の負担が軽減され、HPマーク12a、12bにしわが発生したりしないで済む。中間転写ベルト4を支持するローラ径等にもよるが、±30%程度以上の伸縮率(上限は破断したときの伸び率)があれば問題ない。
<HPマーク修復手順>
図22は中間転写ベルト組み立てのフローチャート、図23はHPマークの消耗度を評価する制御のフローチャート、図24はHPマーク検知不良時の修復のフローチャートである。図25はユーザーがHPマークを修復するシステムのフローチャートである。
なお、ここでは、第1実施形態におけるHPマーク修復手順を説明するが、第2実施形態〜第5実施形態においても同様な手順が適用されるものとし、重複する説明を省略する。
図1を参照して図9の(b)に示すように、制御部110は、HPセンサ5の出力に基づいて上層のHPマーク(又は透明保護シート)12bの光学的な損傷度を評価して、取り外し時期を判断する。制御部110は、上層のHPマーク(又は透明保護シート)12bの取り外し時期を、装置本体の一例である装置本体100Aの外部に向かって表示又は通信する。制御部110は、上層のHPマーク(又は透明保護シート)12bの取り外し完了が入力されると、取り外し後の最初の画像形成までに、HPセンサ5による下層のHPマーク12aの検知条件を再設定する。
図9を参照して図22に示すように、予め粘着剤が塗布された下層のHPマーク12aが準備される(S11)。下層のHPマーク12aの基材上には、上層のHPマーク12bを貼り付け、はく離ライナーと呼ばれるはく離紙を貼り合わせて加圧される(S12)。はく離ライナーは、上質紙にポリエチレンをラミネートし、シリコーンの剥離処理がなされている。上層のHPマーク12bは、図15に示すように、一部をマスキングして粘着剤を塗布され、マスキングテープを剥がしてストライプ状の粘着剤が塗布されていない部分12sを形成してある。
下層のHPマーク12aと上層のHPマーク12bとの積層材に、所定のサイズ(縦10mm×横14mm)に切断もしくは切り込みが入れられる。そして、剥離ライナーを剥がした上記サイズの1個を中間転写ベルト4の内側面の所定位置に貼り合わせる(S13)。ここまでが中間転写ベルトの製造工程フローである。
このように準備された中間転写ベルト4を図1に示す画像形成装置100の装置本体100Aに組み込んだ(S14)後に、HPマーク検知条件のイニシャライズ動作を行う(S15)。
図5を参照して図6に示すように、HPセンサ5によるHPマーク12の検知は、受光部51によって反射光量56の検知して閾値Aと比較し、閾値Aを越える時間を計測して制御される。そして、閾値Aを一定の値とすると、センサの個体差、中間転写ベルト4とHPセンサ5との距離、中間転写ベルト4の色のばらつき、HPマーク12の色のばらつき等の振れに弱くなる。そこで、これらの振れを補正するために、画像形成装置100ごと、中間転写ベルト4ごとにHPマーク検知条件のイニシャライズが必要である。
図1に示すように、画像形成装置100の設置時、若しくは、中間転写ベルト4を交換したとき、制御部110は、中間転写ベルト4を回転させてHPマーク12のセンシング動作を開始する。
図5に示すように、メイン制御CPU121は、HPマーク12の検出値によって光量を制御するようLED光量制御部53に指示を送る。第1実施形態では、受光部(PD)51の出力値が3Vになるように、発光部52の光量を制御する。光量調整が終わったHPセンサ5は、中間転写ベルトの内側面1周分の反射光量56の検出結果を、メイン制御CPU121に通知する。また、発光部52をOFFしたときの反射光量56のオフセット電圧分もメイン制御CPU121は記憶しておく。図6に示す閾値Aは、HPマーク12における反射光量56の平均値の40%の位置としている。
以上の動作で、メイン制御CPU121は、検知条件のイニシャライズに必要なHPマークの初期特性を不図示のRAMに記憶する。初期特性の例は、立ち上がり特性(中間転写ベルト4の平均反射光量からHPマーク12の平均反射光量に到達する時間)、HPマーク12の平均反射光量、閾値A、および反射光量56が閾値A以上となる時間である。また、中間転写ベルト4の内側面の反射光量56のセンシング結果、中間転写ベルト4の内側面の平均反射光量、および発光部52がOFFしているときの反射光量56も記憶される。以上の動作でイニシャライズ動作が終了する(S15)。
図1に示すように、出力枚数が多い画像形成装置100は、装置本体100A内の色材による汚れ、各種揮発物質の付着、放電生成物、ほこりやごみ等が、経時変化でHPマーク12に付着する。そして、付着が限度を越えると、上述したように、記録材P上での各色画像の位置ずれや作像不能のエラーを引き起す場合がある。そして、このような不具合を生じた場合には、図9に示すように、サービスマンが現場で上層のHPマーク12bを引き剥がして、下層のHPマーク12aを用いた画像形成に切り替える。HPマーク12a、12bの構成、引きはがす方法については、第1〜第5実施形態で説明するとおりである。
第1実施形態では、上記のような不具合の発生を未然に予測して、画像形成不良やエラーが実際に起こる前に、上層のHPマーク12bを引きはがす指示を行う。制御部110は、上述のイニシャライズ時と比較して、ある程度のHPマーク検出精度の低下が推測されると、図2に示す表示/操作パネル108およびサービス拠点端末109を通じて、サービスマンに修復措置を要求する。これにより、HPセンサ5が静電像の書き込みタイミングを発生できない場合に限ってエラーを表示する場合に比較して、エラーによる不測の機器停止が少なくなる。
図1を参照して図23に示すように、画像形成装置100の電源がONされると(S21のYES)、制御部110は、中間転写ベルト4を空転させてHPマーク12を検知する(S22)。そして、以下の判定に合致して、HPマーク検出精度の低下が推測されると、制御部110は、表示/操作パネル108に、クリーニング又は上層のHPマーク12bの引き剥がしを提案する(S31)。また、図2に示す通信インターフェース部113を通じて、外部のネットワーク通信路に接続し、サービス拠点端末109にも、同様な連絡を行う(S32)。併せてサービスマンの携帯電話を直接呼び出してもよい。
(1)中間転写ベルト4の内側面の反射光量56がイニシャライズ時と比較して30%以上も変化した場合(S23のYES)には、中間転写ベルト4の内側面の汚れや傷を確認させる。汚れや傷による反射光量の変化は、一般的には、減少する場合の方が多いが、上昇、減少の両方がある。
(2)HPマーク12の立ち上がり特性がイニシャライズ時と比較して20%以上も伸びた場合(S24のYES)には、HPマーク12及び中間転写ベルト4の内側面の汚れ具合や傷を確認させる。立ち上がり特性は、中間転写ベルト4の内側面の平均反射光量からHPマーク12の平均反射光量に到達する時間である。
(3)HPマーク12の平均反射光量がイニシャライズ時と比較して30%以上も低下した場合(S25のYES)には、HPマーク12の汚れや傷を確認させる。
(4)反射光量56が閾値Aを越える時間がイニシャライズ時と比較して20%以上も増減した場合(S26のYES)には、HPマーク12及び中間転写ベルト4の内側面の汚れ具合や傷を確認させる。
(5)中間転写ベルト4が1回転する間に、反射光量56が閾値Aを越えない場合(S27のYES)は、エラーを表示する。
ここで、(1)〜(5)の判定(S23〜S27)にかからなければ(S27のNO)、画像形成を実行する(S29)。その後、入力された画像形成ジョブが残っていれば(S30のYES)、画像形成を実行し(S29)、終了すると(S30のNO)シーケンスが終了する。
しかし、(1)〜(5)の判定(S23〜S27)にかかった場合、後続の画像形成は待機される。そして、サービス拠点から派遣されたサービスマンが、画像形成装置100の電源を落として、上層のHPマーク(又は透明保護シート)12bを剥がして、中間転写ベルト4を清掃する。
なお、上記(1)〜(4)の判定に合致した場合、深刻な画像不良や現実のエラー発生までには余裕があるため、表示/操作パネル108を通じて表示を解除すると、画像形成は可能となる。実際の修復作業は次回の定期点検時などでもかまわない。
しかし、上記(5)のエラーの判定に合致した場合、表示/操作パネル108を通じて表示を解除できず、サービスマンによる緊急訪問、緊急措置となる。
また、作業指示については、サービス拠点端末109への通報/処置システムが確立している場合には、ユーザーに表示しなくてもよい。サービスマンが表示/操作パネル108上で利用するサービスモードと呼ばれるメンテナンス画面への表示でもかまわない。サービスマンが持ち込んで装置本体100Aに接続するメンテナンス端末への表示でもかまわない。
しかし、通報/処置システムが確立していない場合には、ユーザーが事態を掌握してサービスマンに通報する他ないので、表示/操作パネル108を通じて、ユーザーに分り易く表示する必要がある。
図24に示すように、画像形成装置100の現場を訪問したサービスマンは、表示/操作パネル108の上記表示を確認し(S41)、表示に従って作業する。上記(5)のエラー以外の作業指示を受けている場合、サービスマンは、中間転写ベルト4及びHPマーク12を目視にて確認する(S42)。そして、上層のHPマーク12bを引きはがすか、清掃で対応するかを判断する(S43)。
警告表示や深い傷等で継続使用が不可能な場合(S43の不可)、上層のHPマーク12bを引きはがす(S44)。しかし、注意表示や単なる汚れで継続使用が可能な場合(S43の可能)、アルコールを浸透させた不織布で中間転写ベルト4及びHPマーク12を拭き取り清掃する(S46)。拭き取っても汚れが落ちなければ(S43の不可)、上層のHPマーク12bを引きはがす(S44)。
上層のHPマーク12bを引き剥がした(S44)場合、上述した手順にてHPマーク検知条件のイニシャライズを実行する(S45)。上層のHPマーク12bと下層のHPマーク12aとでは、白色度や切断角度やエッジの特性、厚みが異なるため、図5に示すように、同じ発光強度55であっても反射光量56の検出結果が異なる。このため、HPマーク検知条件のイニシャライズは必要である。
しかし、中間転写ベルト4及びHPマーク12の清掃で修復した場合にはHPマーク検知条件のイニシャライズは実行しない。前回のイニシャライズで取得した検知条件を反復利用して画像形成を行う(図22)。
なお、第1実施形態では、専ら上層のHPマーク12bを用いる場合を説明したが、HPマーク12bの代わりに透明保護シート12bを使用する場合も、同様な作業と制御のシーケンスを適用できる。透明保護シート12bを使用する場合、上層のHPマーク12bを直接検知する場合と、透明保護シート12b越しに検知する場合とでは反射光量56の検出結果が異なる。従って、透明保護シート12bの引き剥がし後も、HPマーク検知条件のイニシャライズを実行する。
また、図23のフローでは、中間転写ベルト4が1回転する間に、反射光量56が閾値Aを越えない場合(S27)には、エラーを表示して、サービスマンへ対処を促していた。しかし、図25に示すように、中間転写ベルト4が1回転する間に、反射光量56が閾値Aを越えない場合(S27)に、HPマーク12b、若しくは、透明保護シート12bを剥がす旨を表示/操作パネル108に表示してもよい。これにより、ユーザーにHPマーク(又は透明保護シート)12bの剥がしを促すこともできる。
すなわち、第1実施形態では、表示/操作パネル108及びサービス拠点端末109に表示を行ってサービスマンを呼び出して修復作業を行わせた。しかし、同様な修復措置(清掃又は上層のHPマーク12bの引き剥がし)は、ユーザーが自ら行ってもよい。
また、HPマーク12の自動診断は行わず、サービスマンの定期点検中に、メンテナンス操作画面を操作して図23の診断プログラムを実行して、上記(1)〜(5)の判定結果を操作画面に表示させてもよい。定期的にHPマーク12の状況を調べて、必要ならその場で修復措置を行うようにサービスプログラムを組み立て、清掃と上層のHPマークの引き剥がしとのいずれを選択するかの判断を、サービスマンに委ねてもよい。
例えば、上記(3)の判定において変動率が20%である場合、30%以下なので判定にはかからないが、変動率が20%でもHPマーク12は、汚れや傷がある可能性が高い。このような場合、サービスマンは、自己判断によって、中間転写ベルト4および上層のHPマーク12bの清掃を行ってもよい。状況によっては、上層のHPマーク12bを引きはがす選択を行ってもよい。
また、自動判定に頼らない手動検査を実行してもよい。装置本体100Aから、むやみに中間転写ベルト4を引き出す必要がなくなるため、サービス作業時間は短縮することができる。通常時の画像形成装置100の立ち上がり時間も短縮できる。
そして、HPマーク12a、12bを積層させることで、上層のHPマーク12bに欠陥を生じた場合でも、上層のHPマーク12bを引き剥がして、正常な静電像書き込みタイミング信号が得られる。上層のHPマーク12bの劣化度を検出し、必要に応じて上層のHPマーク12b又は透明保護シート12bを引きはがすことで、HPマーク12の汚れや傷による画像欠陥やエラーを回避できる。比較的に高価な中間転写ベルト4を交換することなく、比較的に困難な中間転写ベルト4の取り付け/取り外しを行うことなく、正常な画像形成を再開できる。
また、上層のHPマーク12bの引き剥がし強さを下層よりも弱くすることで、サービスマンは、下層のHPマーク12aを損なうことなく、上層のHPマーク12bをはがし易い。上層のHPマーク12bには、粘着剤の未塗布部分があるため、引き剥がしの作業性が高められ、サービスマンがはがし易い。
これらにより、ランニングコストの安い、サービス性の良い画像形成装置100を提供できた。
<発明との対応>
第1実施形態では、像担持体の一例である中間転写ベルト4はトナー像を担持する。
トナー像形成手段の一例である感光ドラム3は、像担持体にトナー像を形成する。
検知手段の一例であるHPセンサ5は、像担持体に設けられるマークの一例であるHPマーク12aを光学的に検知する。
制御手段の一例である制御部110は、検知手段の検知結果に基づいて、トナー像形成手段を制御する。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bは、像担持体に設けられたマークの一例であるHPマーク12aに重なる様に像担持体に設けられ、像担持体から取り外し可能である。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bが像担持体に設けられている状態及び、取り外された状態にて、制御手段の一例である制御部110は、検知手段の検知結果に基づいてトナー像形成手段を制御可能である。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bが設けられる状態で検知光をマークに照射する場合の反射光量及び、検知シートの一例である上層のHPマーク12bが取り外された状態で検知光をマークに照射する場合の反射光量は、像担持体の表面へ検知光を照射した場合の反射光量よりも大きい。
マークの一例であるHPマーク12aは、像担持体に接着される。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bは、マークの一例であるHPマーク12aに接着される。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bの接着力は、マークの一例であるHPマーク12aの接着力よりも小さい。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bの循環方向(移動方向の一例)の先頭側における接着力は、後尾側の接着力よりも小さい。
手段の一例である制御部110は、図23に示すように、検知手段の検知結果に基づいて、検知シートの取り外し時期に関する情報を告知又は通信する。
<第1実施形態の変形例>
図15は変形例1のHPマークにおける上層のHPマークの平面図、図16は変形例2〜6のHPマークの断面図である。
図15に示すように、上層のHPマーク12b又は透明保護シート12bは、中間転写ベルト4の循環方向の後尾側(後端部)での貼り付け力が、他の部分よりも大きい。
上層のHPマーク(又は透明保護シート)12bは、中間転写ベルト4の循環方向の先頭側に、「中間転写ベルト4の循環方向に沿ったストライプ状の貼り付け力が弱い領域」の一例である粘着剤が塗布されていない部分12sを有する。循環方向の先頭側が後尾側(後端側)に比べて粘着剤塗布面積が少ないことが特徴である。
図8に示すように、第1実施形態では、HPマーク12a、12bの片面の全面に粘着剤が塗布されていた。図9の(b)に示すように、HPマーク12aの粘着剤は、中間転写ベルト4に粘着し、HPマーク12bの粘着剤は、HPマーク12aの全面とHPマーク12aからはみ出した部分の中間転写ベルト4とに粘着していた。
図8に示すように、HPマーク12a、12bの粘着剤は透明で、基材も透過しない白色シート材であるため、本来ならば目視でHPマーク12a、12bの粘着剤面は確認できない。
そこで、図15に示すように、変形例1では、上層のHPマーク12bの粘着剤が塗布されていない上面の先頭側に、目印12mを印刷して、粘着剤塗布面と白色検知面とを確実に区別させる。裏表を間違って貼付作業をしないためである。HPマーク12bの先頭側に目印を配置する理由は、後端のエッジを検知する反射光量(56:図5)の立ち下りに影響させないためである。
図9の(b)に示すように、下層のHPマーク12aは、上層のHPマーク12bの引き剥がしに抵抗する強い貼り付け力を全面で得る必要がある。しかし、上層のHPマーク12bの先頭側部分については、粘着力を小さくして引きはがす際の便宜を図ることが望ましい。図11に示すように、一次転写ローラ8によって引き剥がそうとする方向の力Fhが作用する領域は、上層のHPマーク12bの後端の縁に限られるからである。
そこで、図15に示すように、変形例1では、先頭側から全長の80%ほどの領域には、循環方向に沿ったストライプ状の粘着剤が塗布されていない部分12sを形成している。HPマーク12bは、HPマーク12aからはがせることが必須条件であるため、先頭側からHPマーク12bをはがし易くするための工夫である。サービスマンは、はがす必要があるときに、未塗布の部分を手かピンセットでつまんでHPマーク12bをはがせばよい。上述した目印12mは、引きはがす際に、HPマーク12bと中間転写ベルト4との間隔にピンセットの先端を挿入する側を示す案内も兼ねている。
ストライプ状の粘着剤が塗布されていない部分12sを形成することで、粘着剤が同程度の粘着力であっても、HPマーク12bとHPマーク12aとに必要な貼り付け力差を確保できる。HPマーク12bのHPマーク12aに対する貼り付け力をHPマーク12aの中間転写ベルト4に対する貼り付け力に対して相対的に低くして、HPマーク12bだけを確実に引きはがすことが可能になる。従って、HPマーク12bの粘着剤とHPマーク12aの粘着剤との選択肢が増える。
粘着剤の塗布密度によって貼り付け力差を確保する方法は、図15に示すストライプ状の糊付けパターンには限らない。ドット状、メッシュ状、リング状、升目状等の糊付けパターンを採用してもよい。
同一の粘着剤を用いて、粘着剤に混合する添加物の有無、種類、含有量差によって、HPマーク12bとHPマーク12aとの間の必要な貼り付け力差を確保してもよい。
HPマーク12bは、一部分がはがれ易くなっていれば、貼り付け力が強くてもその部分を起点にして容易にひきはがせるので、各種ローラに踏まれたとしても巻き込むことのないように、搬送方向の先頭側の隅に粘着剤の未塗布部分を設けてもよい。例えば、HPマーク12bの基材面積を14mm2とし、未塗布部分の面積を基材面積の5%程度としてもよい。未塗布部分の配置と大きさは、粘着剤と基材、接着面の材質、HPマークにかかる圧力、摩擦力等に応じて最適化すればよい。上記の粘着シートの組み合わせで実験した際は、5%の未塗布領域があっても、一次転写ローラ8等に巻き付くことはなく、その他の問題も生じなかった。
図16の(a)に示すように、変形例2では、下層のHPマーク12aと上層のHPマーク12bとは二層構造の粘着シートを一体に打ち抜いて等しい大きさに形成している。そして、上層のHPマーク12bの先頭側と後端側とに面取りを形成してある。先頭側の面取りは、一次転写ローラ8等の乗り上げを円滑にするためである(図10参照)。後端側の面取りは一次転写ローラ8等を抜ける際の引きはがす方向の力Fhを軽減するためである。
図16の(b)に示すように、変形例3では、下層のHPマーク12aは、印刷または埋め込みによって中間転写ベルト4に一体化して形成してある。
図16の(c)に示すように、変形例4では、下層のHPマーク12aの先頭側と後端側との両方にはみ出して上層のHPマーク12bが貼り付けされている。
図16の(d)に示すように、変形例5では、下層のHPマーク12aにおいて露光開始タイミングを発生する肝心の後端部のみに重ねて上層のHPマーク12bが配置される。
図16の(e)に示すように、変形例6では、下層のHPマーク12aにおいて露光開始タイミングを発生する肝心の後端縁を含む先頭側と後端側との領域に重ねて上層のHPマーク12bが配置される。
ところで、表2を参照して評価した各種の粘着シートは、上述した材料4(HPマーク12a)と材料1(HPマーク12b)との組み合わせ以外にも、実用的な耐久性を備えた組み合わせが確認されている。下層のHPマーク12aの粘着シート材を材料4、5、9、11とした場合の、上層のHPマーク12bの粘着シート材の評価結果を表4に示す。
また、表5は、表2に示す材料1〜8を、中間転写ベルト4に貼り付けした材料4、材料5、材料9、材料11の上に重ねて貼り付けした際の粘着力を測定した結果である。
表5中、粘着力は、後述する測定方法を用いた粘着力の実測値(N/cm)、耐久は耐久性、はく離ははく離性である。高温長時間の連続運転に対する耐久性ありは○、耐久性不十分は×と評価した。また、はく離性は、はく離時に中間転写ベルト(4:図1)に永久変形が発生しない場合を○、永久変形が発生した場合を×と評価している。
表5の組み合わせ中、粘着力が4.0N/cm未満であると、高温高湿度条件での長時間連続運転で粘着力が低下するとはがれ易くなり、耐久性を満足できない可能性がある。しかし、粘着力が10.0N/cmを越えると、引き剥がしの際に中間転写ベルト4を引っ張って波打ち等の永久変形を生じる可能性が高くなる。
従って、第1実施形態の限られた条件下では、粘着力が4〜10N/cmの範囲が適正である。
また、材料11(HPマーク12a)と材料1(HPマーク12b)との組み合わせについても、HPマーク12bの引き剥がし性と耐久性能とが満足された。
また、材料11(HPマーク12a)と材料4(HPマーク12b)との組み合わせについても、HPマーク12bの引き剥がし性と耐久性能とが満足された。
また、材料11(HPマーク12a)と材料8(HPマーク12b)との組み合わせについても、HPマーク12bの引き剥がし性と耐久性能とが満足された。
ここまで、図1に示すHPマーク12は、図9に示すように、上層のHPマーク12bと下層のHPマーク12aとの二層構造として説明した。しかし、以下のような関係になっていれば、三層構造、四層構造として、上層から1層づつを引き剥がして、2回、3回、HPマーク12の光学的性質を再生できるようにしてもよい。
ただし、HPマーク12の全体の厚みが増すため、一次転写ローラ8等が段差(厚さ)に乗り上げる際のショックが大きくなる。このため、第1実施形態においては、三層構造、四層構造とした場合でも全体の厚みは300μmまでとすることが望ましい。また、一次転写ローラ8等を抜ける際に段差を持ち上げる力も大きくなるため、耐久性にも十分な考慮と確認とを行う。
また、上層から1層づつ引きはがすためには、中間転写ベルト4に近い層ほど下層面に対する貼り付け力が大きい必要がある。例えば三層構造の場合、
(1)最上層の粘着力<中間層の粘着力<下層の粘着力
(2)各層の保持力(荷重ずれ量)=0〜1mm
の関係を満たさなければならない。
例えば、マークの一例であるHPマーク12aに2枚のHPマーク12bを重ねて貼り付けした場合、第1検知シートの一例である下層のHPマーク12bは、マークに重なる様に設けられる。第2検知シートの一例である上層のHPマーク12bは、第1検知シートのマークに接触する面の反対の面に接着される。第2検知シートの一例である上層のHPマーク12bの接着力は、第1検知シートの接着力よりも小さい。
なお、上記の関係は、各層の引き剥がし作業の時点で、各層に関して満たされていればよく、初期〜運転中は耐久性のある強固な貼り付けが望ましい。つまり、後述するように、加熱処理や紫外線照射処理によって、上記の関係が満たされてもよい。この場合、最上層については紫外線照射、中間層は加熱という具合に、別々の前処理を適用して上記の関係が満たされてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態の画像形成装置は、図1〜図16を参照して説明した第1実施形態において、白色不透明な上層のHPマーク12bが透明保護シートに置き換えられる。それ以外は第1実施形態と同様に構成されるので、図1〜図16を参照して第2実施形態を説明し、各図中、HPマーク12bは、符号同一で透明保護シート12bと読み替えるものとする。
第1実施形態では、下層の白色不透明のHPマーク12aの上に上層の白色不透明のHPマーク12bを重ねて貼付する構成とした。しかし、図9の(b)に示すように、下層のHPマーク12aの上に、透明保護部材の一例である透明保護シート12bを重ねて貼付して、透明保護シート12bを引きはがす構成を採用してもよい。
透明保護シート12bが汚れたり擦過傷で不透明になったりしてHPマーク12aを正常に検知できなくなった場合に、古くなった透明保護シート12bを引き剥がして、下層の白色のHPマーク12aを露出させる。露出したHPマーク12aは、透明保護シート12bでHPマーク12aを覆った新品状態の中間転写ベルト4の場合よりも一段と高い反射率と、一段とコントラストの高い後端縁とで露光開始タイミングを検知できる。
第1実施形態の表2、表3で説明した材料を含めて、各種粘着シート材の多くは、白色不透明材料としても、透明材料としても入手が可能である。ただし、透明保護シート12bの粘着シート材は、粘着剤層を含めた全体の透過率が90%以上ある透明材料が望ましい。
第1実施形態で説明したように、粘着力の関係が以下の関係を満たしていれば、透明保護シート12bとして必要な引き剥がし性と耐久性とを両立できる。
(1)透明保護シート12bの粘着力<下層のHPマーク12aの粘着力
(2)透明保護シート12bの粘着力=4〜10(N/cm)
(3)保持力=0〜1(mm)
下層のHPマーク12aの粘着シート材を表2の材料4とした場合、透明保護シート12bの粘着シート材としては、4.0≦粘着力<6.6のものが候補となる。例えば、材料1の住友スリーエム社(登録商標)の商品名Super10(登録商標)の総厚150μmは上記関係を満足している。
<発明との対応>
透明シートの一例である透明保護シート12bは、検知手段の検知光が透過可能であって、マークに重なる様に像担持体に設けられ、像担持体から取り外し可能である。
透明シートの一例である透明保護シート12bが像担持体に設けられている状態及び、取り外された状態にて、制御手段の一例である制御部110は、検知手段の検知結果に基づいてトナー像形成手段を制御可能である。
透明シートの一例である透明保護シート12bが設けられる状態で検知光をマークに照射する場合の反射光量及び、透明シートの一例である透明保護シート12bが取り外されている状態で検知光をマークに照射する場合の反射光量は、像担持体の表面へ検知光を照射した場合の反射光量よりも大きい。
マークの一例であるHPマーク12aは、像担持体に接着される。
透明シートの一例である透明保護シート12bは、マークに接着される。
透明シートの一例である透明保護シート12bの接着力は、マークの一例であるHPマーク12aの接着力よりも小さい。
例えば、マークの一例であるHPマーク12aに2枚の透明保護シート12bを重ねて貼り付けした場合、第1透明シートの一例である下層の透明保護シート12bは、マークに重なる様に設けられる。第2透明シートの一例である上層の透明保護シート12bは、第1透明シートのマークに接触する面の反対の面に接着される。第2透明シートの一例である上層の透明保護シート12bの接着力は、第1透明シートの接着力よりも小さい。
<第3実施形態>
図17は加熱はく離型の上層のHPマークの加熱機構の説明図、図18は加熱治具の説明図である。第3実施形態の画像形成装置は、図1〜図16を参照して説明した第1実施形態において、上層のHPマーク12bの粘着剤が加熱によって粘着力を喪失するホットメルト型接着剤に置き換えられる。それ以外は第1実施形態と同様に構成されるので、図1〜図16を参照して第3実施形態を説明し、図中、HPマーク12bは、符号同一でホットメルト型接着剤の仕様に読み替える。
上層のHPマーク12b又は透明保護シート12bは、紫外線照射又は加熱によって貼り付け力が低下する貼り付け剤を用いて貼り付けされている。
取り外し補助手段の一例である加熱装置60は、中間転写ベルト4のHPマーク12が通過する位置に配置される。加熱装置60は、上層のHPマーク12b又は透明保護シート12bに対して加熱を行う。
第1実施形態では、通常の温度湿度の運転環境、通常の修理作業環境、通常の照明環境にて、「上層のHPマーク12bの粘着力<下層のHPマーク12aの粘着力」の関係が満たされている。しかし、上層のHPマーク12bの引き剥がし前に加熱を行うことで、上記関係が満たされてもよい。実際に引きはがす時点で上記関係が満たされていれば、上層のHPマーク12bの引き剥がしに支障が無いからである。
加熱によって粘着力が低下する粘着剤は、加熱を行うまでは、はがし易い性質が不要である。ホットメルト型接着剤は、通常環境では引き剥がしにくく、温度が上がったときにはがれ易くなる材料特性を利用して、上層のHPマーク12bをはがし易くする。第1実施形態との差は、粘着剤の熱特性にあるので、ホットメルト型接着剤について詳しく説明する。
貼り付け剤を接着成分(エラストマー)で分類すると、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、その他に分類できる。第1実施形態で説明したように、アクリル系がもっとも貼り付け力が強く、ゴム系とシリコーン系は同等とされる。また、貼り付け剤の塗布時の形態で分類すると、溶剤型、エマルジョン型、ホットメルト型、熱延展型、照射無溶剤型、水溶液型等に分類される。
加熱はく離型の上層のHPマーク12b(又は透明保護シート12b)に使用した貼り付け剤は、ホットメルト型接着剤である。ホットメルト型接着剤は、日本工業規格JISK2351に規定されているように、高温では粘度が下がり、ダイコーターと呼ばれる均一塗工機を利用して20μm程度の暑さに均一に塗布できる。塗布して冷却される前の粘着状態で下層のHPマーク12aに重ねて接着して冷却すれば、常温では保持力の高い粘着剤としての性能を発揮する。
そして、下層のHPマーク12aに接着した状態で上層のHPマーク12bを加熱して所定の軟化点温度を越えて温度上昇させると、粘着剤としての効力を失い、下層のHPマーク12aからはがれ易くなる。このため、下層のHPマーク12aから上層のHPマーク12bを容易に引きはがすことができる。
また、軟化点温度が高い材料を用いて下層のHPマーク12aを中間転写ベルト4に接着し、軟化点温度が低い材料を用いて上層のHPマーク12bを下層のHPマーク12aに接着してもよい。JISK2351にこのような軟化点温度の異なる接着剤が規定されている。そして、両者の軟化点温度の中間温度に加熱することで、上層のHPマーク12bを下層のHPマーク12aから容易に引きはがすことができる。
第3実施形態で使用したホットメルト型接着剤の主材料は、松村石油研究所(登録商標)社製のモレスコメルトPB−60(登録商標)であって、その軟化点温度は92℃である。図1に示す画像形成装置100の中間転写ベルト4が受ける最大雰囲気温度は55度Cであり、通常の画像形成中は粘着力(12〜14N/cm)を保持している。
図17に示すように、装置本体100Aには、定着ユニット16の排気熱を利用した加熱装置60が設置されている。取り外し補助手段の一例である加熱装置60は、透明シート又は検知シートの接着力を低下させる。加熱装置60は、通常時、ダクト61およびファン62を通じて外部へ排気されている定着ユニット16の排気を弁65で切り替えて、ファン64によりダクト63から吐出させる。
上層のHPマーク12bを引きはがす際には、サービスマンは、タッチパネル形式の表示/操作パネル108にHPマーク12b除去を指令入力する。制御部110は、この操作に応答して、HPマーク12a、12bをダクト63に位置決め停止させ、弁65を切り替えてファン64を作動させる。そして、加熱開始から所定時間が経過すると、表示/操作パネル108を通じて引き剥がし可能を表示する。
定着ユニット16の加熱部の温度は180度程度であり、排気熱を集中させたファン64、ダクト63のエアフロー構成にて、HPマーク12bの位置では80度Cから100度C程度に達する。ただし、通常は、ファン64、ダクト63を排気が通過していないため、ファン64の送風開始後、しばらくの間は周りの部材によって温度が吸収されてしまう。このため1分程度は加熱を待つ必要がある。
モレスコメルトPB−60(登録商標)を接着剤として使用したHPマーク12b(又は透明保護シート12b)は、軟化温度Tgを割り込んだ後も、10秒程度は引き剥がし粘着力が0.5N/cm以下に低下している。この間に、サービスマンは上層のHPマーク12bを引きはがす。
以上の構成により、通常動作時は粘着力が強くて耐久性に優れる一方、引きはがす必要があるときは加熱によってはがし易く、サービス性の良い上層のHPマーク12b(又は透明保護シート12b)を提供できた。
なお、温度における粘着力差は、ホットメルト型接着剤でなくても持っている性質である。モレスコメルトPB−60(登録商標)はあくまでも一例であり、他の材料でもかまわない。主剤の軟化点温度Tgを参考にして粘着剤を作成し、基材と接着対象とを異ならせて温度別接着力を実測すれば、加熱装置60を用いて引き剥がし作業が可能なホットメルト型接着剤や粘着剤の組み合わせに到達可能である。雰囲気温度や定着温度は、画像形成装置ごとに異なるため、上記温度条件下での実施に限定されるべきものではない。
また、図17の加熱装置60を備えていない画像形成装置においても、加熱はく離型の上層のHPマーク12b(又は透明保護シート12b)を採用することができる。ドライヤ、ホットジェット装置、加熱ヒータ等の作業機械を現場に持ち込んで同様な加熱はく離作業を行うことができる。
また、図18に示すような取り外し補助手段の一例である加熱治具を図1に示す画像形成装置100に備え付けていてもよい。この場合、HPマーク12bに定着ユニット16の排気熱を送風するエアフロー構成が不要である。図18に示すように、加熱治具70は、断熱効果があるゴムでできたグリップ72と、定着ユニット16等にも使用されるシリコーンゴムで作成されたゴムパット73とを、プラスチック棒71で接続して構成される。加熱治具70は、非常に簡単な構成であって、サービスマンは、グリップ72を持ってゴムパット73を図1に示す定着ユニット16の加熱部に押し当てる。これにより、定着ユニット16の熱をゴムパット73に移し、熱したゴムパット73を、図17に示す上層のHPマーク12b(又は透明保護シート12b)に押し当てて、ホットメルト型接着剤を軟化させる。そして、接着剤の軟化を確認後、サービスマンは上層のHPマーク12bを引きはがす。加熱治具70は、画像形成装置100に組み込まれても良いし、サービスマンごとに持っていてもかまわない。
<第4実施形態>
図19は紫外線軟化型接着剤の説明図、図20は紫外線照射機構の説明図である。第4実施形態の画像形成装置は、図1〜図16を参照して説明した第2実施形態において、透明保護シート12bの粘着シート材が紫外線照射によって粘着力を喪失するUV剥離型テープに置き換えられる。それ以外は第2実施形態と同様であるので、図1〜図16を参照して第4実施形態を説明する。図1〜図16中、HPマーク12bは、符号同一でUV剥離型テープ仕様のものに読み替える。
第4実施形態では、透明保護シート12bの引き剥がし前に紫外線照射を行うことで、「透明保護シート12bの粘着力<下層のHPマーク12aの粘着力」の関係が形成される。透明保護シート12bを引きはがす時点で上記関係が満たされていれば、透明保護シート12bの引き剥がしに支障が無いからである。また、引き剥がした透明保護シート12bは捨てる前提なので、紫外線照射を通じて分子構造が変化して貼り付け力が非可逆的かつ劇的に低下するUV剥離型テープを利用できるからである。
第4実施形態では、下層のHPマーク12aに重ねて配置された透明保護シート12bに、半導体露光装置のダイシングテープなどに使用されるUV剥離型テープを使用した。UV剥離テープは、紫外線を一定時間照射すると粘着力が極めて低くなる粘着剤を使用しており、具体的には、スリオンテック(登録商標)社製のUV剥離型テープNo.636020(商品名)を使用した。
図19に示すように、このUV剥離型テープは、総厚0.11mmで、通常時の粘着力は 4.2N/cmであるが、強度:100mW/cm2以下、照射量:1000mJ/cm2以下のUVを照射することで、粘着力が0.2N/cmまで低下する。
図20に示すように、図17で説明した引き剥がし作業位置に、紫外線照射用光源80を配置してある。取り外し補助手段の一例である紫外線照射用光源80は、透明シート又は検知シートの接着力を低下させる。紫外線照射用光源80は、日亜化学工業(登録商標)社製、I−LED NCCU033(商品名)を発光素子として使用している。紫外線照射用光源80の発光強度のターゲットを50mW/cm2、はく離時の照射量のターゲットを500mJ/cm2とすると、10秒の照射時間で粘着力を低下させることができ、作業性時間的に問題ない。
Jは放射エネルギー、Wは放射束(放射パワー)、sは時間(sec:秒)のとき、
J=W×s
という関係が成り立つからである。
サービスマンが表示/操作パネル108に透明保護シート12b除去を指令入力すると、制御部110は、紫外線照射用光源80を10秒間作動させて停止させ、表示/操作パネル108を通じて引き剥がし可能を表示する。
なお、取り外し補助手段の一例であるUVを照射できる装置を現場へ持ち込んだり、取り外し補助手段の一例であるUVライトで照らしながら透明保護シート12bを引き剥がしたりしてもよい。
また、透明保護シート12bに関しては、スリオンテック(登録商標)社以外にも、ソマール(登録商標)社、積水化学工業(登録商標)社等も紫外線照射によって剥離する粘着シート材を開発している。例えば、後者ではセルファ(商品名)がある。
<第5実施形態>
図21ははく離補助部材の使用方法の説明図である。第5実施形態の画像形成装置は、図1〜図16を参照して説明した第1実施形態において、上層のHPマーク12bの引き剥がしに際してはく離補助部材が使用される。
図15に示す変形例1では、上層のHPマーク12bの一部に粘着剤の未塗布領域を形成して、特別な工具が無くても手で引きはがせる構成にした。中間転写ベルト4は、循環して湾曲と延伸とを繰り返し、一次転写ローラ8等による踏みつけと搬送とを受けるため、はく離用のタブを設けることはできないからである。
しかし、変形例1のHPマーク12bは、製造工程が複雑でありコストアップもあることから、第5実施形態では、引き剥がし作業時に、はく離用のタブ(はく離補助部材)を取り付ける構成とした。
図21に示すように、上層のHPマーク12bは、全領域に均等に粘着剤が塗布されて下層のHPマーク(12a:図9)および中間転写ベルト4に貼り付けされている。サービスマンは、上層のHPマーク12bの引き剥がしに際して、HPマーク12bの後端の隅にはく離補助部材12cを貼り付けする。そして、はく離補助部材12cの隅12pを指で持ち上げて、HPマーク12bを引きはがす。
はく離補助部材12cは、HPマーク12bよりも粘着力が強い粘着シート材で、HPマーク12bをまたぐように中間転写ベルト4にも貼り付けされる。このとき、隅12pに関しては左手の指で保持し、その他の部分を右手の指で加圧する。加圧が終了すると、隅12pを持ち上げて、ゆっくりとした速度(300mm/分程度)ではく離補助部材12cを引きはがす。引きはがす際には、中間転写ベルト4に折り目や皺が発生しないよう細心の注意を払う。作業手順は、装置本体(100A:図1)の扉の裏側、操作画面などに表示してある。
HPマーク12bに対するはく離補助部材12cの粘着力は10N/cm以上と高いが、はく離補助部材12cの粘着剤は、中間転写ベルト4のポリイミド材料に対しては付着しにくいものを選択してある。このため、HPマーク12bの引き剥がしに際して中間転写ベルト4は損傷したり汚れたりしない。例えば、住友スリーエム(登録商標)社製のポリエステルテープNo.859(商品名)は粘着力が19.6N/cmという性能を有してポリイミド材料には付着しないため、はく離補助部材12cとして利用可能である。
<記録材搬送体を採用した実施形態>
第1〜第5実施形態では、図1に示されるように、中間転写ベルト4の内側面にHPマーク12を配置した実施形態について説明した。
しかし、本発明は、中間転写ベルトを含む中間転写体を搭載した画像形成装置での実施には限定されない。特許文献2に示される記録材搬送ベルトを含む記録材搬送体の表目にHPマークを配置した画像形成装置でも、HPマークにはく離可能なHPマークや透明保護シートを重ねて貼付してもよい。同様に、記録材搬送体を取り外し、交換することなく、HPマークの光学的性質を回復させて、正常なタイミングで画像形成を行うことができるからである。
記録材搬送ベルトに沿って複数の感光ドラムを配置したタンデム型フルカラー画像形成装置では、像担持体の一例である感光ドラムは、トナー像を担持する。
トナー像形成手段の一例である一次帯電装置、露光装置、現像装置は、像担持体にトナー像を形成する。
記録材搬送ベルトの一例である記録材搬送ベルトは、記録材を担持する。
転写手段の一例である転写装置は、像担持体上のトナー像を、記録材担持体に担持される記録材へ転写する。
検知手段の一例である反射光検知センサは、記録材担持体に設けられるマークを光学的に検知する。
制御手段の一例である制御部は、検知手段の検知結果に基づいて、トナー像形成手段を制御する。
透明シートの一例である透明保護シート12bは、検知手段の検知光が透過可能であって、マークに重なる様に記録材搬送体に設けられる。
透明シートの一例である透明保護シート12bは、記録材搬送体から取り外し可能である。
透明シートの一例である透明保護シート12bが記録材搬送体に設けられている状態及び、取り外された状態にて、制御手段は、検知手段の検知結果に基づいて制御可能である。
透明保護シート12bを上層のHPマーク12bに置き換えた同様な画像形成装置では、検知シートの一例である上層のHPマーク12bは、それ自身がマークを備え、記録材搬送体に設けられたマークに重なる様に設けられる。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bは、記録材搬送体から取り外し可能である。
検知シートの一例である上層のHPマーク12bが記録材搬送体に設けられている状態及び、取り外された状態にて、制御手段は、検知手段の検知結果に基づいて制御可能である。
<その他の変形例>
HPマークは、中間転写体や記録材搬送体の内側面に配置される実施形態には限定されない。回転体と接触して傷や汚れの付着を起こす場所、例えば中間転写体や記録材搬送体の外側面にHPマークを配置してもよい。
重ねて貼付した指標部材や透明保護部材を引き剥がして光学的性質を回復させる指標としては、HPマークには限定されない。光学的に検知される限りにおいて、エンコーダパターン、番地パターン、光学センサのキャリブレーションパターン等でもよい。
指標は、白色には限定されず、中間転写体や記録材搬送体の表面との光学的コントラストを形成できる限りにおいて、赤外線領域、紫外線領域での反射率差、鏡面、模様、バーコード、濃淡パターン、全周に渡る長い目盛りパターン等でもよい。