JP5099811B2 - 自己組織化単分子膜作製装置とその利用 - Google Patents

自己組織化単分子膜作製装置とその利用 Download PDF

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Description

本発明は、被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製する装置および該単分子膜を作製する方法に関する。また本発明は、かかる方法により作製された自己組織化単分子膜を備える自己組織化単分子膜付き物品の製造方法に関する。
被処理物の表面に自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer,以下「SAM」ともいう。)を形成する材料が知られている。かかる材料(以下、「自己組織化単分子膜形成材料」または「SAM形成材料」ともいう。)を用いてSAMを形成する主な方法として、SAM形成材料を含む溶液に被処理物を浸漬する方法(液相法)がある。この種の方法によるSAM形成に関する従来技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。特許文献1および2には、前記SAM形成材料を含む溶液を構成する溶媒として、アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が例示されている。また、特許文献3には、該溶液を構成する溶媒として圧縮二酸化炭素を用いる技術が記載されている。
特開2001−152363号公報 特開2004−315461号公報 特開2002−327283号公報
一方、被処理物の表面にSAMを形成する他の方法として、被処理物にSAM形成材料を化学蒸着する方法(気相法またはCVD法と称されることもある。)が提案されている。この気相法は、SAM形成材料を効率よく利用することができる、液相法に比べて廃液量を低減し得るので環境への負荷が少ない、等の利点を有する。
従来の気相法によるSAM作製方法では、SAM形成材料を収容する原料容器と被処理物とをチャンバ内に同封して昇温することにより原料容器内に貯留されたSAM形成材料をその表面(液面)から徐々に揮発させ、該揮発により生じたSAM形成材料の蒸気を被処理物に供給することで(典型的には、チャンバ内を拡散した蒸気が被処理物に到達して該被処理物上に堆積することにより)SAMを形成していた。ここで、被処理物の表面により効率よくSAMを作製し得る方法および該方法によるSAM作製に適した装置が提供されれば有用である。
本発明は、被処理物の表面にSAMを効率よく作製することのできるSAM作製方法およびSAM作製装置の提供を目的とする。関連する他の目的は、かかる高品質のSAMを被処理物の表面に形成する表面処理方法を提供することである。また、かかる表面処理が施されたSAM付き物品の製造方法を提供することである。
本発明によると、被処理物の表面に自己組織化単分子膜(SAM)を作製する装置が提供される。その装置は、前記被処理物が導入されるチャンバを備える。また、該チャンバ内の空間に自己組織化単分子膜形成材料(SAM形成材料)を供給する膜形成材料供給手段(SAM供給手段)を備える。また、該チャンバ内を通して前記被処理物を搬送する被処理物搬送手段を備える。ここで、前記膜形成材料供給手段は、典型的な構成として、前記自己組織化単分子膜形成材料を含むミストを生成する霧化器を含む。該供給手段は、また、前記ミストを加熱する加熱器を含むことができる。そして、前記チャンバに導入された前記被処理物に、該チャンバ内の空間にある自己組織化単分子膜形成材料が付着するように構成されている。
かかる構成の装置によると、チャンバ内の空間に含まれる(典型的には、該空間に蒸気および/またはミストの形態で分散した態様で含まれる)SAM形成材料を、該空間(すなわち気相)から被処理物に供給して該被処理物に付着(堆積)させることができる。したがって、例えばSAM形成材料の溶液を満たした処理槽に被処理物を浸漬して該溶液(バルクの液相)から被処理物にSAM形成材料を供給するタイプの(すなわち、従来の一般的な液相法による)SAM作製装置に比べて、本発明に係るSAM作製装置によると、より高いSAM形成材料利用効率が実現され得る。このことは、例えば、SAMの作製コスト(被処理物の表面にSAMを形成する表面処理に要する処理コスト、あるいは被処理物の表面にSAMを有するSAM付き物品の製造コストとしても把握され得る。)を低減するという観点から有利である。また、SAMの作製時等における環境への負荷をより軽減し得るという利点を有する。
ここに開示されるSAM作製装置の好ましい一つの態様では、前記膜形成材料供給手段が、前記ミストを前記チャンバ内の空間に供給し、該チャンバ内で前記ミストを加熱し得るように構成されている。上記SAM作製装置は、典型的には、前記チャンバ内の温度(雰囲気温度)が前記SAM形成材料からSAMを形成するのに適した温度(通常は、少なくとも室温よりも高い温度、例えば凡そ40℃以上)となるように該雰囲気温度を制御して使用される。したがって、前記ミストを前記チャンバ内で加熱する態様によると、該チャンバ内を適切な雰囲気温度に維持するための加熱エネルギーを利用して該ミストを加熱することができるのでエネルギー効率がよい。また、装置の小型化または簡略化の観点からも有利である。
ここに開示されるいずれかのSAM作製装置は、前記チャンバ内に導入された前記被処理物を該チャンバ内において冷却する(例えば、前記被処理物が前記チャンバ内の雰囲気温度よりも低温に維持されるように該被処理物を冷却する)冷却器をさらに備えることができる。かかる態様の装置によると、より高品質のSAMが前記被処理物の表面に作製され得る。
ここに開示されるいずれかのSAM作製装置は、前記被処理物に真空紫外光(Vacuum Ultra Violet light;以下「VUV」ともいう。)を照射する真空紫外光照射手段をさらに備えることができる。該照射手段は、典型的には、前記被処理物に前記膜形成材料が付着する前に該被処理物にVUVを照射するように(換言すれば、まず前記被処理物にVUVを照射し、その後に前記膜形成材料が付着されるように)構成されている。かかる態様の装置によると、より高品質のSAMが前記被処理物の表面に作製され得る。
ここに開示されるいずれかのSAM作製装置は、前記膜形成材料の付着を終えた前記被処理物を加熱する加熱手段をさらに備えることができる。かかる態様の装置によると、より効率よくSAMを作製することができる。
ここに開示されるいずれかのSAM作製装置は、前記膜形成材料の膜形成反応を促進する触媒を前記被処理物に供給する触媒供給手段をさらに含むことができる。かかる態様の装置によると、より高いSAM作製効率が実現され得る。上記触媒供給手段を含むSAM作製装置は、前記膜形成材料が前記被処理物に付着する以前に該被処理物に前記触媒が付着するように構成されていることが好ましい。このことによって、上記触媒を用いることによる効果がより適切に発揮され得る。例えば、より高品質のSAMを安定して効率よく作製し得る装置が提供される。
なお、ここに開示されるいずれかの装置は、該装置と同様の構成により、自己組織化単分子膜の製造に限られず種々の用途の薄膜(例えば超撥水性膜)の製造装置として使用され得る。したがって、ここに開示される発明は、他の側面として、そのような薄膜製造装置(例えば撥水膜製造装置)を提供するものであり得る。
本発明によると、また、被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製する方法が提供される。その方法は、自己組織化単分子膜形成材料を含むミストを生成することを含む。また、該ミストを加熱して前記膜形成材料の少なくとも一部を気化させることを含む。また、その気化した膜形成材料を含む膜形成材料含有ガスを前記被処理物に供給して該膜形成材料を前記被処理物に付着させることを含む。
上記作製方法では、SAM形成材料を含むガス(典型的には、少なくともSAM形成材料の蒸気を含有するガスであり、該蒸気の他にSAM形成材料を含むミストを含有するガスであってもよい。)を被処理物に供給することで該膜形成材料(蒸気でもミストでもよい。)を該被処理物に付着(堆積)させる。したがって、該方法によると、バルクの液相から被処理物にSAM形成材料を供給するタイプのSAM作製方法(すなわち、従来の一般的な液相法)に比べて、より高いSAM形成材料利用効率が実現され得る。このことは、例えば、SAMの作製コスト等を低減する上で有利である。また、SAMの作製時等における環境への負荷がより軽減され得る。
ここに開示されるいずれかのSAM作製方法は、前記被処理物を冷却しつつ、該被処理物に前記膜形成材料含有ガスを供給する態様で好ましく実施することができる。かかる態様によると、より高品質のSAMを前記被処理物の表面に作製し得る。
ここに開示されるいずれかのSAM作製方法は、前記膜形成材料を付着させる前に前記被処理物に真空紫外光を供給することをさらに含む態様で好ましく実施することができる。かかる作製方法によると、より高品質のSAMを前記被処理物の表面に作製し得る。
ここに開示されるいずれかのSAM作製方法は、前記膜形成材料の付着完了後に前記被処理物を加熱することをさらに含む態様で好ましく実施され得る。かかる作製方法によると、より効率よくSAMを作製することができる。
ここに開示されるいずれかのSAM作製方法は、前記膜形成材料の膜形成反応を促進する触媒を前記被処理物に供給することをさらに含む態様で好ましく実施することができる。かかる態様の装置によると、より高いSAM作製効率が実現され得る。上記触媒の供給を含む作製方法において、前記被処理物への前記触媒の供給は、該被処理物に前記膜形成材料を付着させる以前に行われることが好ましい。このことによって、上記触媒を用いることによる効果がより適切に発揮され得る。例えば、より高品質のSAMを安定して効率よく作製することができる。
ここに開示されるいずれかのSAM作製方法において、前記被処理物への前記膜材料含有ガスの供給は、前記膜材料含有ガスが供給される箇所に対して前記被処理物を相対的に移動させつつ行うことができる。かかる態様の作製方法によると、より高いSAM作製効率が実現され得る。また、かかる態様の作製方法は、よりサイズの大きな(大面積および/または長尺の)被処理物へのSAM作製にも好ましく適用され得る。
なお、ここに開示されるいずれかのSAM作製方法は、他の観点として、被処理物の表面にSAMを作成する処理を行う方法(すなわち、被処理物の表面処理方法)として把握され得る。
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかのSAM作製装置を用いて被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製することを特徴とする、自己組織化単分子膜付き物品の製造方法が提供される。かかる製造方法によると、ここに開示されるいずれかのSAM作製装置を用いることから、SAM付き物品を効率よく製造することができる。
本発明によると、さらに、ここに開示されるいずれかのSAM作製方法によって被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製することを特徴とする、自己組織化単分子膜付き物品の製造方法が提供される。かかる製造方法によると、ここに開示されるいずれかのSAM作製方法を用いることから、SAM付き物品を効率よく製造することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、霧化器、加熱器、冷却器等の具体的構成、雰囲気温度の測定方法や制御方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示されるSAM作製装置またはSAM作製方法は、各種被処理物の表面にSAMを作製するための装置または方法として好適に採用され得る。上記被処理物(ワーク)の構成材料は、該被処理物にSAM形成材料が付着する(供給される)際の雰囲気温度(典型的にはチャンバ内の雰囲気温度、例えば凡そ40℃〜150℃程度)において全体として固体の状態を維持するものであればよく、特に限定されない。有機材料(紙、綿、麻、木材、ポリマー材料等)、無機材料(アルミナ、シリカ、炭化ケイ素等のセラミック、シリコン(Si)、各種ガラス等)、金属材料(銅、アルミニウム、ゲルマニウム等)、炭素材料(グラファイト、ダイアモンド等)のいずれも使用可能である。上記ポリマー材料は、各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であり得る。例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、アラミド(芳香族ポリアミド)、ポリイミド、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂等が好適なポリマー材料として挙げられる。実質的に一種類の材料から構成される被処理物であってもよく、二種以上の材料を含んで構成された被処理物であってもよい。
被処理物の形状は特に限定されない。ここに開示される装置または方法は、比較的厚みが小さい形状の被処理物に対して好ましく適用され得る。例えば、薄板状、シート状(フィルム状)、紐状、粒子状等の形状である。シート状の被処理物において、該シートは、表面に開口する空隙を実質的に含まないシート(PETフィルム、銅箔等)であってもよく、多数の細孔を含むシート(多孔質ポリエチレンフィルム、発泡ポリウレタンシート等)であってもよく、多数の繊維が集合して形成されたシート(各種材質の繊維からなる織布、不職布、紙等)であってもよい。他の形状の被処理物についても同様に、表面に開口する空隙(細孔、繊維の隙間等)を含んでもよく含まなくてもよい。なお、かかる空隙を含む被処理物では、該空隙に面する被処理物の表面もSAMの作製対象たる「表面」に包含され得る。ここに開示される装置または方法に適した被処理物として紙製のシートが例示される。他の好適例として樹脂製のシート(フィルム)が挙げられる。
ここに開示される技術において「自己組織化単分子膜(SAM)」とは、原料分子が被処理物の表面(固体と液体との界面または固体と気体との界面)に集合して自律的に組みあがる単分子膜(分子一層による膜)をいう。ただし、結果的に得られた膜の一部が意に反して(非意図的に)単分子膜となっていない場合(例えば二分子層になっている場合)であっても、少なくとも主としてSAMを作製する意図をもって本発明に係る装置または方法を適用することは、本発明の技術的範囲に含まれ得る。
また、ここに開示される技術において「自己組織化単分子膜形成材料」とは、被処理物の表面に自己組織化単分子膜を形成し得る材料をいう。かかる材料(SAM形成材料)は、典型的には、被処理物表面との化学結合等によって該被処理物に吸着可能な少なくとも一つの官能基(ヘッド基)と、それとは逆に被処理物の外方に向けて延びる少なくとも一つのテール基とを有する分子(原料分子)である。
SAM形成材料としては、例えば、シリコン(Si),チタン(Ti)等のコア原子に上記ヘッド基およびテール基が結合した構造の化合物を用いることができる。コア原子がシリコンである化合物(有機ケイ素化合物)が特に好ましい。
上記ヘッド基の好適例として、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン原子が挙げられる。これらのうちClおよびBrが好ましく、特にClが好ましい。上記ヘッド基の他の一つの好適例として、アルコキシ基(アルコキシシリル基等)が挙げられる。例えば、炭素数1〜4(より好ましくは炭素数1〜3)のアルコキシ基が好ましい。メトキシ基またはエトキシ基がさらに好ましく、通常はメトキシ基が最も好ましい。複数のヘッド基を有するSAM形成材料において、それらのヘッド基は同じであっても異なっていてもよいが、通常は複数の同じヘッド基を有する化合物が好ましい。好ましいSAM形成材料として、コア原子としてのシリコン原子に三つのハロゲン原子(例えばCl)と一つのテール基とが結合した構造の化合物(トリハロシラン類)が挙げられる。他の好適例として、コア原子としてのシリコン原子に三つのアルコキシ基と一つのテール基とが結合した構造の化合物(トリアルコキシシラン類)が挙げられる。
SAM形成材料の有するテール基は、例えば、置換されたまたは置換されていない脂肪族基または芳香族基(芳香族性を示す構造部分を有する基。典型的には、少なくとも一つの芳香環を含む基)であり得る。該脂肪族基の炭素数は例えば1〜30(より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは炭素数5〜30)であり得る。該芳香族基の炭素数は例えば5〜30(より好ましくは6〜30)であり得る。このような脂肪族基を構成する炭素原子(典型的には、該脂肪族基の主鎖を構成する炭素原子)の一部がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、イオウ原子等)で置き換えられていてもよく、また芳香族基を構成する炭素原子(典型的には、芳香環を構成する炭素原子)の一部がヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、イオウ原子等)で置き換えられていてもよい。
好ましいテール基の一例として、炭素数10以上(典型的には10〜30)の脂肪族基が挙げられる。この脂肪族基は飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。また、該脂肪族基は開鎖状であってもよく、少なくとも一部が非芳香族性の環(例えばシクロヘキシル環)を形成していてもよい。例えば、炭素数10〜30の直鎖状の脂肪族基(典型的には、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基等の炭化水素基)が好ましい。炭素数10〜30の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。そのようなテール基を有するSAM形成材料の具体例として、n−オクタデシルトリクロロシラン(以下、「OTS」と略記することがある。)、n−オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、かかる脂肪族基を構成する水素原子の一部または全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)に置き換えられた構造のテール基も好ましい。例えば、脂肪族基を構成する水素原子の過半数(例えば70個数%以上の水素原子)がフッ素原子に置き換えられたものが好適である。そのようなテール基を有するSAM形成材料の一具体例として、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリクロロシランが挙げられる。
好ましいテール基の他の一例として、少なくとも末端(コア原子とは反対側)に置換基を有する炭素数2以上(典型的には炭素数2〜9、例えば炭素数3〜6)の飽和または不飽和の脂肪族基が挙げられる。上記置換基は、例えば、置換されたまたは置換されていないアミノ基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、スルフォン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等であり得る。そのようなテール基を有するSAM形成材料の一具体例として、3−メルカプトプロピルトリクロロシランが挙げられる。
好ましいテール基の他の一例として、置換されたまたは置換されていない少なくとも一つの芳香環(典型的にはベンゼン環)を含む芳香族基が挙げられる。炭素数が5以上(典型的には5〜30)である芳香族基が好ましく、炭素数6〜20の芳香族基がより好ましい。上記テール基は、例えば、置換されたまたは置換されていないアリール基またはアルキルアリール基であり得る。このような芳香族基を構成する水素原子の一部または全部がハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)に置き換えられた構造のテール基も好ましい。また、かかる芳香族基はハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、炭素数1〜12程度の飽和または不飽和の置換されたまたは置換されていない炭化水素基(メチル基、エチル基、クロロメチル基等)、置換されていないアミノ基または置換されたアミノ基(例えばジメチルアミノ基等のような、モノまたはジアルキルアミノ基)、フルオロ基等を例示することができる。そのようなテール基を有するSAM形成材料の具体例として、p−アミノフェニルトリクロロシラン、p−クロロメチルフェニルトリクロロシラン等が挙げられる。
ここに開示されるSAM作製装置は、上記被処理物が導入されるチャンバ内の空間にSAM形成材料を供給するSAM供給手段を備える。該SAM供給手段は、SAM形成材料を含むミストを生成する霧化器と、そのミストを加熱する加熱器(ヒータ)とを含む。
上記霧化器の種類(ミストの発生方式等)は特に限定されない。例えば、液体に超音波振動を付与して該液体のミストを生成する方式の霧化器(超音波霧化器)を好ましく採用することができる。このような超音波霧化器の一つの典型的な構成は、上記ミストを生成するための原料として用いられる液体(すなわちSAM形成材料を含む液体。以下「原料液」ということもある。)を貯留する原料容器と、該容器内に上記原料液に接して配置される超音波振動子とを備える。例えば、上記原料容器の底部に上記超音波振動子が設置された態様の超音波霧化器を好ましく使用し得る。
上記原料容器は、上記原料容器に貯留された原料液の量(例えば、上記原料液の液面から上記容器の底面までの深さ)を検出する液量センサを備ることができる。ここに開示される装置は、例えば、上記原料容器内の原料液がミストとなって消費される(原料容器内から失われる)ことに伴う液量の減少を上記液量センサにより検出し、その減少量に応じて該容器に接続された原料液タンクから原料液が補給される構成とすることができる。
上記原料液としては、例えば、実質的にSAM形成材料のみからなる組成の原料液(二種以上のSAM形成材料の混合物であり得る。)を使用してもよく、該SAM形成材料に適当な溶媒(典型的には有機溶媒)を添加した組成の原料液を使用してもよい。上記溶媒としては、使用するSAM形成材料の種類に応じて、該材料と均一に混合し得る(溶解し得る)溶媒を適宜選択して用いることができる。例えば、沸点が凡そ80〜150℃の範囲にある溶媒を好ましく採用し得る。このようにSAM形成材料に溶媒を添加することにより、該SAM形成材料を含む原料液の流動性を調節する(典型的には粘度を低下させる)ことができる。このことによって、単位時間当たりのミスト生成量の増加、ミストの粒径の調節等(例えば小径化)等の効果が実現され得る。また、SAM形成材料の利用効率を高めることができる。SAM形成材料と溶媒との混合割合は特に限定されない。例えば、SAM形成材料の濃度が凡そ0.1mM(ミリモル)〜10mM程度となるように溶媒と混合した組成の原料液を用いることができる。
装置構成の簡略化や環境負荷の軽減等の観点から、実質的にSAM形成材料のみからなる組成の(したがって有機溶媒を実質的に含まない)原料液を好ましく使用することができる。かかる組成の原料液(すなわちSAM形成材料)を適当な温度(例えば凡そ40〜80℃程度)に加熱し、その加熱された状態の原料液に超音波振動を付与して該原料液を霧化(超音波霧化)してもよい。このようにSAM形成材料を適度に加熱することによって該材料の流動性を調節し(例えば粘度を低下させ)、これにより単位時間当たりのミスト生成量の増加、ミストの粒径の調節(例えば小径化)等の効果が実現され得る。かかる態様は、例えば、原料容器に貯留された原料液を加熱する加熱手段(原料ヒータ)を備えた構成の超音波霧化器を用いて好ましく実施することができる。なお、上記構成の超音波霧化器は、SAM形成材料に溶媒が添加された組成の原料液を霧化する態様でも好ましく使用することができ、同様の効果が実現され得る。
上記原料液の霧化は、霧化直後(生成直後)におけるミストの平均粒径(直径)が例えば凡そ500nm〜10μmとなるように行うことができる。通常は、該平均粒径が凡そ500nm〜3μmとなるように上記霧化を行うことが好ましい。ミストの平均粒径が上記範囲よりも大きすぎると、作製されるSAMの品質(例えば撥水性)が低下したり、該品質の安定性が不足しがちとなったりする場合がある。一方、上記範囲よりも小さすぎる平均粒径のミストは生成が困難である。このためSAMの作製効率が低下傾向となる場合がある。
なお、ここに開示される技術に用いられる霧化器は上述のような超音波霧化器に限定されず、本発明の目的に適うミストを生成し得る各種の霧化器を適宜採用することができる。例えば、従来公知のアトマイザー(霧吹き)を用いて原料液をスプレーすることによって該原料液をミスト化してもよい。
ここに開示される装置の一つの好ましい態様では、上記霧化器(典型的には超音波霧化器)により生成されるミストが上記チャンバ内の空間に直接供給されるように上記SAM形成材料供給手段が構成されている。例えば、上記霧化器がチャンバ内に収容されており上記原料容器の上端が該チャンバ内の空間に向けて開放された構成、上記霧化器が上記チャンバの外周に沿って取り付けられており該チャンバの外壁に設けられた貫通孔を通じて上記霧化器の上部が上記チャンバ内の空間に開放された構成、等であり得る。このような構成は、装置を小型化・簡略化する上で有利である。また、かかる構成によると、使用するSAM形成材料を効率よく(例えば、より短い経路で)被処理物に到達させることができる。したがって、より高いSAM形成材料利用効率が実現され得る。
ここに開示される装置の他の一つの好ましい態様では、上記霧化器(ミスト生成部)と上記チャンバとがSAM形成材料供給ダクトを介して連結されている。そして、該ダクト内に上記霧化器から上記チャンバに向かう気流(SAM形成材料の蒸気を含むガス流であり得る。)を生じさせ得るように上記SAM形成材料供給手段が構成されている。このことによって、上記霧化器により生成したミストを該気流に乗せて上記チャンバ側へと適切に送り出すことができる。かかる構成の装置は、ミストの生成条件(粒径、発生量等)、上記チャンバ内へのSAM形成材料(該材料のミストおよび/または蒸気であり得る。)の供給条件等を、より詳細にコントロールするのに適している。また、かかる構成の装置によると、上記ミスト生成条件、チャンバ内への供給条件、使用する霧化器の態様等を、より広い範囲から適宜選択することができる。なお、上記ダクト内に気流を生じさせる具体的な手段および該手段を実現するための具体的な装置構成としては、従来公知の各種手段および構成を適宜採用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
上記SAM形成材料供給手段は、原料液から生成したミストが気流に乗って該原料液の液面付近から運び去られるように(例えば、該ミストが液面付近から吹き払われるように)構成されていてもよい。このことによって新たなミストの生成を助けることができ、単位時間当たりのミスト発生量を増加させることができる。また、該ミストの発生量をより的確に制御することができる。かかる構成は、上記霧化器により生成されるミストが上記チャンバ内の空間に直接供給されるタイプの装置および上記霧化器と上記チャンバとがダクトを介して連結されるタイプの装置のいずれにおいても好ましく採用され得る。上記原料液の液面付近からミストを運び去るための気流を生じさせる具体的な手段および該手段を実現するための具体的な装置構成としては、従来公知の各種手段および構成を適宜採用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。霧化器とチャンバとがダクトを介して連結されるタイプの装置では、上記ダクト内に気流を生じさせる手段を、上記原料液の液面付近からミストを運び去る気流を生じさせる手段としても利用し得る。
ここに開示される装置を構成するSAM材料供給手段は、また、上記ミスト(実質的にSAM形成材料からなるミストであり得る。)を加熱する加熱器を含む。該加熱器は、霧化器により発生したミストが被処理物に至るまでの間に該ミストを加熱し得るように設けられていればよい。好ましい一つの態様では、上記加熱器が、霧化器から直接または上記ダクトを経て上記チャンバ内の空間に供給された前記ミストを該チャンバ内で加熱し得るように設けられている。上記加熱によって上記ミストに含まれるSAM形成材料の少なくとも一部を気化させる。該ミストに含まれるSAM形成材料の実質的に全部が気化するように上記加熱を行ってもよい。
ここに開示される装置は、上記チャンバ内の空間にあるSAM形成材料が該チャンバ内に導入された被処理物に付着するように構成されている。該被着物に付着する上記SAM形成材料は、該材料を含むミスト(微小液滴)であってもよく、該材料の蒸気であってもよく、該ミストと該蒸気とが混在していてもよい。ここに開示される技術は、製造効率およびエネルギー効率の観点から、SAM形成材料のミストと蒸気とが混在した状態で該材料を被処理物に付着させる態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される装置は、上記チャンバ内を通して被処理物を搬送する被処理物搬送手段を備える。該搬送手段の構成は特に限定されず、上記被処理物が上記チャンバ内を通過するように(典型的には、上記チャンバの一端に設けられた入口から搬入され、多端に設けられた出口から搬出されるように)該被処理物を搬送し得るように構成されていればよい。例えば、図1に示すように被処理物Wを台車42に載置する態様、図3または図5に示すように送りロール464を用いる態様、被処理物をベルトコンベアに載せて搬送する態様、被処理物を気流で浮かせた状態(フローティング)で搬送する態様、等の従来公知の搬送手段を適宜採用することができる。
上記被処理物の搬送パターンは特に限定されない。例えば該被処理物を一定の速度で連続的に搬送してもよく、あるいは該被処理物を間欠的に(例えば、あらかじめ設定された所定のタイミングで止まったり動いたりするように)搬送してもよい。
被処理物にSAM形成材料(該材料のミストおよび/または蒸気)を付着させる際の雰囲気温度(典型的には上記チャンバ内の温度)は、該SAM形成材料が被処理物に適切に供給され得る温度であればよく、特に限定されない。例えば、従来の気相法によるSAM形成と同程度の雰囲気温度を採用することができる。好ましい雰囲気温度は、使用するSAM形成材料によっても異なり得るが、通常は、該雰囲気温度を少なくとも凡そ40℃以上とすることが適当であり、凡そ80℃〜200℃とすることが好ましく、凡そ100℃〜180℃(例えば凡そ100℃〜150℃)とすることがより好ましい。また、被処理物にSAM形成材料を付着させる際の雰囲気圧力は特に限定されず、例えば従来の気相法によるSAM形成と同程度の雰囲気圧力を採用することができる。操作の容易性や、装置構成を簡略化し得ること等の観点から、通常は大気圧程度の雰囲気圧力を好ましく採用することができる。ここに開示される装置または方法は、雰囲気圧力の意図的な制御を行わない態様で使用または実施され得る。
ここに開示される方法の一つの好ましい態様では、被処理物(典型的には、該被処理物のうち少なくともSAMが形成される表面)が雰囲気温度よりも低い温度に維持されるように該被処理物を意図的に(強制的に)冷却しつつ、該被処理物にSAM形成材料を付着させる。また、ここに開示される装置は、前記チャンバ内に導入された前記被処理物を該チャンバ内において冷却し得るように構成された冷却器を含み得る。このように雰囲気温度よりも低温に冷却された被処理物にSAM形成材料を付着させることによって、より品質のよいSAMが作製され得る。例えば、被処理物が前記雰囲気温度よりも凡そ60℃以上低い温度に維持されるように上記冷却を行うとよい。
このように被処理物を雰囲気温度よりも低温に冷却するための具体的な方法または装置構成は特に限定されない。例えば、内蔵された冷却器等により上記雰囲気温度よりも低温に維持された部材(後述する搬送経路、送りロール等)に被処理物を接触させることにより該被処理物を冷却する態様を好ましく採用することができる。
ここに開示されるSAM作製方法(ここに開示される装置を用いてSAMを作製する方法であり得る。)では、上述のような各種材質(例えば、紙、ポリマー材料等)から主として構成される被処理物をそのまま(特に前処理を行うことなく)使用することができる。また、必要に応じて(例えば、被処理物の材質、表面状態、使用するSAM形成材料の種類、目的とするSAMの品質等に応じて)適切な前処理を施した被処理物を好ましく使用することができる。該前処理は、被処理物の表面を洗浄する処理、被処理物の表面を高度に(好ましくは原子レベルで)平坦化する処理、被処理物の表面に微細な凹凸を形成する処理、被処理物の表面に官能基(典型的にはSAM形成材料の吸着に適した官能基、例えば水酸基)を導入する処理、被処理物の表面を改質する処理(例えば、被処理物表面に酸化膜を形成する処理)等から選択される一種または二種以上を含み得る。かかる前処理が施された被処理物を用いることにより、該被処理物の表面に高品質のSAMをより適切に作製することができる。
ここに開示される技術では、上記前処理として、被処理物に紫外光(波長が100nm〜380nmの範囲にある紫外線)を照射する処理を好ましく採用することができる。該照射に真空紫外光(波長が100nm〜200nmの範囲にある紫外線;VUV)を用いて処理することがより好ましい。上記VUV処理は、酸素(典型的には酸素分子(O2))を含む雰囲気下で被処理物にVUVを照射する処理であり得る。例えば、常圧(大気圧)あるいは減圧(例えば凡そ1Pa〜1500Pa、好ましくは凡そ10Pa〜1000Pa)の大気中で被処理物にVUVを照射することによって、該被処理物の表面に水酸基を適切に導入することができる。また、被処理物の表面を適切に洗浄することができる。これらによって、被処理物の表面をSAMの形成により適した状態とすることができる。上記VUV照射は、エキシマランプ、H2ランプ等の光源を備えた従来公知のVUV照射装置を使用して実施することができる。
上述のように被処理物にVUVを照射する処理を行うために、ここに開示されるいずれかのSAM作製装置は、VUV照射装置(照射手段)を具備する構成とすることができる。このVUV照射手段は、上記チャンバの内部に配置されていてもよく、上記チャンバの外部に設けられていてもよい。ここに開示される装置は、上記VUV照射装置を経由して被処理物がチャンバ内に導入されるように構成されたものであり得る。あるいは、あらかじめVUV照射を行った被処理物を別途チャンバ導入用の搬送手段に供して運用されるように構成された装置であってもよい。
ここに開示される装置は、SAM形成材料の膜形成反応を促進する触媒を被処理物に供給する触媒供給手段を備えることができる。かかる膜形成反応は、SAM形成材料と被処理物(例えば該被処理物の表面にある水酸基等の官能基)との間に化学結合を形成する反応、SAM形成材料相互の間に化学結合を形成する反応(例えば脱水縮合反応)等であり得る。ここに開示される方法は、かかる触媒を被処理物に供給することを含む態様で好ましく実施することができる。上記触媒としては、例えば、SAM形成材料の(特にヘッド基の)加水分解および/または縮合反応を促進する触媒が好ましく使用され得る。加水分解反応を促進する触媒としては、かかる機能を発揮し得ることが知られている各種の金属アルコキシドを用いることができる。具体例としては、テトラキストリメチルシロキシチタニウム(Ti(OSi(OCH334)、テトラエトキシチタン(Ti(OC254)、チタニウムイソプロポキシド(Ti(OC374)、ニオブエトキシド(Nb(OC255)、テトラメトキシジルコニウム(Zr(OCH34)、テトラエトキシジルコニウム(Zr(OC254)、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC255)、アルミニウムエトキシド(Al(OC253)、ジメトキシマグネシウム(Mg(OCH32)、リチウムターシャリーブトキシド(LiOC(CH33)等が挙げられる。膜形成反応促進触媒として使用し得る材料の他の例としては、有機または無機の酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸)、有機または無機の塩基(例えばアンモニア)等が挙げられる。
このような触媒を被処理物に供給する(付着させる)方法は特に限定されない。例えば、該触媒を含む溶液のミスト(実質的に該触媒のみからなるミストであってもよい。)を被処理物に付着させる方法、該触媒を含む溶液を被処理物に塗布する方法、該触媒の蒸気に被処理物を曝露する方法、等を適宜採用することができる。
かかる触媒は、遅くとも被処理物上においてSAM形成材料の膜形成反応が完了するよりも前に該被処理物に供給されることによって、上記膜形成反応の進行を促進する機能を発揮し得る。ここに開示される技術では、被処理物にSAM形成材料を供給する(付着させる)とほぼ同時またはそれよりも前に、該被処理物に触媒を供給する(付着させる)ことが好ましい。このことによって、例えば、後述するSAM作製例で使用したn−オクタデシルトリクロロシランをSAM形成材料として、接触角が凡そ90°以上(典型的には凡そ90〜110°)のSAM付き物品(サンプル)を得ることができる。被処理物にSAM形成材料を付着させる前に該該被処理物に触媒を付着させることがより好ましい。このように少なくとも一部の触媒が被処理物に付着した状態でSAM形成材料を供給することによって、より良好な効果が実現され得る。例えば、より高品質の(使用するSAMの種類に応じた性質がより適切に発揮された)SAMを安定して作製することができる。例えば、n−オクタデシルトリクロロシランをSAM形成材料として、接触角が凡そ100°以上(典型的には凡そ100〜110°)、さらには105°以上(典型的には凡そ105〜110°)のSAM付き物品(サンプル)を得ることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に関するいくつかの実施形態を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
<例1>
本発明に係るSAM作成装置の一構成例を図1および図2に示す。このSAM作製装置1は、チャンバ(反応室)10と、該チャンバ内の空間11にSAM形成材料を供給するSAM形成材料供給手段20と、該チャンバ内を通る所定の搬送経路に沿って被処理物Wを搬送するように構成された被処理物搬送手段40と、該チャンバの上流側に配置されたVUV照射装置50と、該チャンバの下流側に配置されたヒータ60と、を備える。
被処理物搬送手段40は、VUV照射装置50、チャンバ10およびヒータ60を経由して延びる搬送経路41と、図示しない牽引機構により搬送経路41に沿って牽引(移動)されるように構成された台車42とを含む。搬送経路41のうちチャンバ10の下方に位置する部分には冷却器(例えば水冷式チラー)18が内蔵されている。この冷却器18を作動させることにより、チャンバ10の底部(搬送経路41の表面)を該チャンバ内の雰囲気温度よりも低温に維持することができる。チャンバ10の底部を構成する搬送経路41の表面は、熱伝導性のよい材料、例えばアルミニウム、銅等の金属材料により構成されている。
台車42は、その全体が熱伝導性のよい材料(例えば、アルミニウム、銅等の金属材料)から構成されており、図2に示すように、被処理物Wが載置される支持台422と、該支持台の両脇に配置された車輪426とを有する。支持台422の下面と車輪426の下端とはほぼ同じ高さである。したがって支持台422の下面は搬送経路41の表面に接触または近接している。このことによって、台車42の熱を搬送経路41へと良好に逃す(放熱する)ことができる。換言すれば、搬送経路41への伝熱によって台車42から熱を奪い、該台車42を良好に冷却することができる。なお、図2には被処理物Wを支持台422の上面に直接載置した例を示しているが、例えばクリップ等の固定手段により被処理物Wを板状のトレイに止め、そのトレイを支持台422の上面に載置するようにしてもよい。上記トレイとしては、アルミニウム等の熱伝導性のよい材料から構成されたもの(例えばアルミニウム板)を好ましく用いることができる。
チャンバ10には、搬送経路41に沿って、台車42(被処理物W)が搬入される入口12と、台車42(被処理物W)が搬出される出口14とが形成されている。入口12および出口14の上部には、これら入口12および出口14にエアカーテンを形成するエア噴出機15がそれぞれ配置されている。該エアカーテンによってチャンバ10の開口部をシールすることにより、SAM形成材料のミストまたは蒸気がチャンバ10の内部から外部に散逸することを防止して該材料の利用効率を高めることができる。
チャンバ10の内部には、SAM形成材料供給手段20を構成する複数の超音波霧化器22が配置(収容)されている。各霧化器22の上端はチャンバ内の空間11に開放されている。これらの霧化器22のうち少なくとも一つにSAM形成材料を含む原料液(好ましくは、実質的にSAM形成材料からなる原料液)を供給して該霧化器を作動させると、SAM形成材料を含むミストMが生成し、霧化器22の上端から空間11に供給される。この霧化器22には、該霧化器に貯留される原料液を加熱可能な原料ヒータ(図示せず)が具備されている。
また、チャンバ10の壁面にはヒータ(例えばシースヒータ)24が設置されている。このヒータ24を作動させることにより、チャンバ10内の雰囲気温度を調節するとともに、該チャンバ内の空間にある上記ミストMを加熱してその少なくとも一部を気化させることができる。
本例に係る装置1は、SAM形成材料の膜形成反応を促進する触媒をチャンバ10内の空間に供給する触媒供給手段70を備えることができる。該触媒供給手段70の構成要素として、チャンバ10内に配置された複数の霧化器22のうち少なくとも一つを触媒霧化器72として使用することができる。例えば、上記膜形成反応を(典型的には加水分解反応)を促進する触媒または該触媒を含む溶液を該霧化器72に供給して該霧化器を作動させる。これにより上記触媒を含むミストが生成し、霧化器72の上端から空間11に供給される。この場合、相対的に入口12側(上流側)にある一以上の霧化器22を触媒の霧化に使用し、相対的に出口14側(下流側)にある一以上の霧化器22をSAM形成材料の霧化に使用するとよい。これにより、チャンバ10内において被処理物Wが触媒濃度の高い部分を通過し、次いでSAM形成材料の濃度が高い部分を通過するように該被処理物Wを搬送することができる。かかる作製方法(装置の運転方法)によると、より高品質のSAMを安定して形成し得る。
かかる構成のSAM作製装置1を用いて、例えば以下のようにして被処理物Wの表面にSAMを形成することができる。すなわち、被処理物Wがセットされた台車42を搬送経路41の上流側端(VUV照射装置よりも上流側)に用意する。そして、あらかじめ設定した所定の速度で台車42を搬送経路41の下流側(図1の右方向)へと連続的に移動させて(牽引して)VUV照射装置50に導入する。このVUV照射装置50は、台車42の移動方向と略直交するスリット状の範囲にVUVを照射し得るように構成されている。したがって、台車42が搬送経路41の下流側に移動するにつれて、被処理物Wの表面にその前方から後方(図1中の右から左)へと順にVUVが照射される。
一方、チャンバ10内は、あらかじめ設定された適切な雰囲気温度、例えば40℃〜150℃程度の温度に調整されている。また、チャンバ10の底部にある搬送経路41は、冷却器18を作動させることにより、室温と同程度またはそれ以下の表面温度(例えば凡そ10〜30℃)に維持されている。そして、チャンバ10内の空間11には、霧化器22により生成したSAM形成材料のミストおよび触媒のミストならびにそれらの気化物(蒸気)が充満している。ここで、上述のように、上流側にある一以上の霧化器22を触媒の霧化に使用し、下流側にある一以上の霧化器22をSAM形成材料の霧化に使用することによって、チャンバ内空間11は、触媒濃度(該空間の体積当たりに含まれる触媒のモル数または質量をいい、ミストであるか蒸気であるかを問わない。)についてはチャンバ10の入口側のほうが高く、SAM形成材料の濃度(該空間の体積当たりに含まれるSAM形成材料のモル数または質量をいい、ミストであるか蒸気であるかを問わない。)については出口側のほうが高い状態に維持されている。
VUV照射装置50を通過した台車42は、引き続き下流側に牽引されて、あらかじめ設定した所定の速度(VUV照射装置50を通過するときと同じ速度であってもよく異なる速度であってもよい。)でチャンバ10の入口12から該チャンバ内へと進入し、該チャンバ内を出口14側へと通過する。このように台車42が入口側から出口側へと移動する間に、まず被処理物Wに主として触媒を付着させ、次いで主としてSAM形成材料を付着させることができる。このとき、チャンバ10内の雰囲気温度と該チャンバの底部にある搬送経路41の表面温度との温度差によってチャンバ10内に生じる下降気流を利用して、チャンバ内の空間11にあるSAM形成材料および/または触媒を被処理物Wの表面に効率よく導くことができる。
チャンバ10を通り抜けることでSAM形成材料の付着を終えた被処理物Wは、台車42をさらに下流側に牽引することによってヒータ(例えば温風ヒータ)60へと導入される。該ヒータを通過させることにより被処理物Wを加熱し、SAM形成材料の膜形成反応をさらに進行させることができる。また、該膜形成反応により生じた副生成物(脱水縮合により生じた水等)を除去することができる。このようにして、被処理物Wの表面に高品質のSAMを効率よく作製することができる。換言すれば、表面に高品質のSAMを有するSAM付き物品を効率よく製造することができる。
本例に係る構成の装置1を用いて紙(被処理物)の表面にSAMを作製した。SAM形成材料としては、CH3(CH217SiCl3で表されるn−オクタデシルトリクロロシラン(東京化成工業株式会社製、以下「OTS」と略記する。)を使用した。また、触媒(加水分解触媒)としては、テトラキストリメチルシロキシチタニウム(Ti(OSi(OCH334)を使用した。
すなわち、A3サイズの上質紙(被処理物)Wを用意し、該紙の長辺方向が搬送経路41と一致する向きで台車42の上面にセットした。その台車42を10〜50mm/秒の速度(S1)で牽引してVUV照射装置50に通過させた。これにより、大気圧の室温下において、エキシマランプ(株式会社エム・ディ・エキシマ製品、型式「MEUTA−1−330」、波長λ=172nm、照射エネルギー密度50mW/cm2)から生じる真空紫外線光(VUV)に被処理物Wを曝露した。このとき、ランプから被処理物Wの表面までの距離は約5mmとした。かかるVUV照射処理を行うことにより、被処理物Wを洗浄するとともに、該被処理物Wの表面に水酸基を導入した。
本作製例では、チャンバ10内の雰囲気温度を凡そ40℃とし、チャンバ10の底部における搬送経路41の表面温度を凡そ20℃とした。チャンバ10内に配置された複数の超音波霧化器22(ここでは、被処理物の搬送方向に5個、該方向と直交する方向に3個の合計15個の霧化器22を備える装置を使用した。)のうち出口に近い側から6個(2列)の霧化器22の原料容器にOTSを入れた。そして、上記原料ヒータを用いて該原料容器内のOTSを凡そ50〜60℃に加温し、その加温された状態にあるOTSに超音波振動を付与してOTSのミストを生成した。また、上記15個の超音波霧化器22のうち最も入口側の中央にある1個の霧化器22(触媒霧化器72)の原料容器に上記触媒を入れ、その触媒に超音波振動を付与して該触媒のミストを生成した。
上記VUV照射処理を終えた被処理物Wを、上記状態にあるチャンバ10内に10〜100mm/秒の速度(S2)で通過させ、次いでヒータ60から供給される30〜60℃の温風に曝露した。このようにして上質紙の表面に撥水性のSAMを作製した。
なお、上質紙のように通気性を有するシート状の被処理物(紙、布等)では、本例のように主として該被処理物の一方の面側からSAM形成材料が供給される態様によっても、該被処理物に含まれる空隙を通じて該被処理物の全体にSAM形成材料を行き渡らせることが可能である。
VUV照射処理を行う際の被処理物Wの搬送速度(S1)およびチャンバを通過させる際の被処理物Wの搬送速度(S2)を上記範囲で異ならせて上質紙の表面にSAMを作製した。それらのSAM付き上質紙(サンプル)について、25℃の雰囲気下で蒸留水の静的接触角を液滴法(液滴直径約2mm)により測定した。この接触角測定には、協和界面科学株式会社製の接触角測定装置(型式「CA−X150」)を使用した。その結果、上記範囲のS1およびS2の組み合わせにより得られたサンプルはいずれも上記接触角が105°〜110°の範囲にあった。また、上記範囲ではS1および/またはS2を大きくすることによる接触角の低下傾向はみられなかった。例えば、S1=50mm/秒、S2=100mm/秒の条件で作製したサンプルの接触角は108°であった(図7参照)。
なお、OTSに由来するSAMの接触角の理論値は110°程度だといわれている。実際、OTSを用いて一般的な液相法によりほぼ理想的に形成されたSAMの接触角は通常110°程度である。これらの接触角の値は上記サンプルの接触角とほぼ同等である。すなわち、上記作製例によると、使用したSAM形成材料の種類に応じた性質がよく発揮された高品質のSAMを効率よく作製することができた。
また、理想的に形成されたSAMの水滴接触角は、一般に、該SAMの作製に使用する原料(SAM形成材料)の末端官能基(テール基の末端部分)に依存する。撥水性の高いSAM(ひいては撥水性の高いSAM付き物品)の作製を目的とする場合には、末端官能基がフルオロ基、メチル基、メチレン基等の表面エネルギーの小さい基であるSAM作成材料を好ましく使用することができる。例えば、末端官能基がメチル基であるSAM形成材料を用いて理想的に形成されたSAMの接触角は概ね100〜110°程度であり得る。また、末端官能基がフルオロ基であるSAM形成材料を用いて理想的に形成されたSAMの接触角は概ね凡そ115〜125°程度であり得る。
<例2>
本発明に係るSAM作成装置の他の構成例を図3に示す。なお、以下の図面において、例1に係るSAM作成装置と同様の機能を果たす部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図3に示すSAM作製装置2は、枚葉状の被処理物を台車42にセットして該台車ごと搬送する例1に係る装置1とは異なり(図1参照)、長尺シート状の被処理物(以下、単に「シート」ともいう。)をチャンバ10内に連続的に通過させるのに適した態様の被処理物搬送手段40を備える。その搬送手段40は、巻出ロール462から巻き出されたシート(被処理物W)がVUV照射装置50に導入され(本例に係る装置2では、シートの両側、すなわち一面側および他面側からVUVが照射されるようにVUV照射装置50が配置されている。)、次いでチャンバ10に導入されて該チャンバ内に配置された複数の送りロール464を経由する間にチャンバ内の空間11にあるSAM形成材料が上記シートの両面側から該シートに付着するように構成されている。そして、チャンバ10を通過したシートが引き続きヒータ60に導入されて該シートの両面側から加熱(例えば温風が供給)された後、該シートが巻取ロールに巻き取られるように構成されている。かかる構成の装置2によると、長尺シート状の被処理物(例えば連続紙)の表面に連続して効率よくSAMを作製することができる。
なお、送りロール464は、該ロール464の表面温度をチャンバ10内の雰囲気温度よりも低温に維持し得るように構成されていてもよい。かかる構成の装置によると、送りロール464と被処理物W(シート)との間の伝熱を利用して、該ロール464に掛け渡されたシートをチャンバ10内において冷却することができる。また、送りロール464の数、サイズ、配置等は図3に示されたものに限定されず、目的に応じて種々変形した態様で実施することができる。
<例3>
本発明に係るSAM作成装置のさらに他の構成例の要部を図4に示す。本例は、霧化器(ミスト生成部)とチャンバとがSAM形成材料供給ダクトを介して連結された装置の一例である。すなわち、図4に示すSAM作製装置3では、超音波霧化器22とチャンバ10とがダクト28を介して連結されている。この霧化器22は、原料液Lを貯留する原料容器224と、その原料容器内に収容された超音波振動子226と、原料容器224の外周に配置(例えば、該容器の外壁に内蔵)された原料ヒータ228とを備える。この原料ヒータ228は、必要に応じて、容器224内に貯留された原料液Lを適当な温度に加熱(例えば凡そ40〜80℃程度に加熱)し得るように構成されている。このように原料液Lが加熱された状態で超音波振動子226を振動させることにより、原料液Lから効率よくミストMを生成することができる。原料容器224の上端はダクト28内に開放されており、これにより原料液Lから生じたミストMをダクト28内に導入することができる。ダクト28の内部には、図示しない動力源に接続された一または二以上のファン26が設けられている。このファン26を回転駆動することによりダクト28内に霧化器22からチャンバ10に向かう気流を生じさせ、該気流に乗せてミストMをチャンバ10側へと効率よく搬送することができる。かかる構成の装置によると、生成するミストMの大きさ(平均粒径)、該ミストMの生成レート(ひいてはチャンバ10へのミストMの供給レート)等をより適切にコントロールすることができる。また、上記気流に乗せてミストMを強制的に搬送するので、チャンバ10内にミストMを迅速にかつ安定して供給することができる。例えば、チャンバ10内に導入された被処理物(例えば、図1と同様に搬送経路41に沿って移動する台車42に載置されて入口12からチャンバ10内に導入された被処理物)の表面に向けてミストMが層流で吹き付けられるように上記気流をコントロールすることが可能である。
なお、上記気流を生じさせる手段はファン26に限定されず、例えば、従来公知の各種態様のブロア(送風機)を適宜採用することができる。また、ダクト28内にあるミストMを加熱する加熱器を備えた構成とし、該ミストMの少なくとも一部を気化させてもよい。例えば、原料液Lから生成したミストMがダクト28を通じてチャンバ10に供給されるまでの間に該ミストMを実質的に完全に気化する(したがってSAM形成材料の蒸気のみがチャンバ10内に供給され、ミストは供給されない)態様であってもよい。かかる態様のSAM作製方法も、本発明により提供されるSAM作製方法の概念に包含され得る。
また、本例に係る装置3は、例1に係る装置1または例2に係る装置2と同様に、VUV照射装置50および/またはヒータ60を備える構成とすることができる。
<例4>
本発明に係るSAM作成装置のさらに他の構成例の要部を図5に示す。本例に係る装置4では、被処理物にSAM形成材料を付着させるチャンバ10の上流側に隣接して、被処理物に触媒Cを付着させる触媒付与チャンバ80が設けられている。触媒Cは、図示しない触媒霧化器と、該霧化器と触媒付与チャンバ80とを連結する触媒供給ダクト78とを含む触媒供給手段70によってチャンバ80内に導入される。この装置4は、触媒付与チャンバ80に導入された触媒が、該触媒付与チャンバ内に導入された被処理物(ここでは、長尺シート状の被処理物Wが複数の送りロール464によって図5の左から右へと送られる例を示している。)に付着するように構成されている。なお、符号82は、被処理物を触媒付与チャンバ80内に搬入する入口を示している。該チャンバ80の出口はチャンバ10の入口と共有されている。
かかる構成の装置4によると、被処理物に触媒を付与するタイミングとSAM形成材料を付与するタイミングとを精度よく(順序よく)コントロールすることができる。このことによって、より高品質のSAMを作製することができる。また、より安定した品質のSAMを作製することができる。また、触媒付与チャンバ80を分割したことによりチャンバ10の容積をより小さくすることが可能となるので、SAM形成材料の利用効率をより高めることができる。
なお、本例に係る装置4は、例1に係る装置1または例2に係る装置2と同様に、VUV照射装置50および/またはヒータ60を備える構成とすることができる。
<例5>
本発明に係るSAM作成装置のさらに他の構成例の要部を図6に示す。この図6は、本例に係る装置5を構成するチャンバの内部の様子を示している。該チャンバ内を通過する被処理物W(ここでは、長尺シート状の被処理物Wが図6の上から下へと送られる例を示している。)の両側には、SAM形成材料を含むSAM形成材料含有ガス(典型的には少なくとも該SAM形成材料の蒸気を含むガスであり、さらに該SAM形成材料を含有する原料液のミストを含んでもよい。)を該被処理物に供給し得るように構成されたSAM形成材料供給ダクト28が配置されている。ダクト28の先端部(ノズル部)282では該ダクトの開口径が絞られており、このことによってダクト28内のガス流速を高め、被処理物Wの表面近傍に開口するダクト28の先端から被処理物Wの表面に向けて上記SAM形成材料含有ガスを吹き付けることができる。例えば、SAM形成材料の蒸気およびミストを含有するガスを被処理物Wの表面に層流で吹き付けることが好ましい。
なお、本例に係る装置5は、例1に係る装置1または例2に係る装置2と同様に、VUV照射装置50および/またはヒータ60を備える構成とすることができる。
また、図6に示される例では、長尺シート状の被処理物Wを上から下へと連続的に送ることによって、ダクト28の先端からのSAM形成材料含有ガスが被処理物Wの長手方向の各部に順次供給される。この変形例として、被処理物Wの位置を固定し、該被処理物Wに沿ってダクト28を例えば下から上に移動させつつ該ダクト28の先端からSAM形成材料含有ガスを吹き付けることによっても、被処理物Wの長手方向の各部にSAM形成材料含有ガスを順次供給することができる。あるいは、被処理物Wおよびダクト28の双方を移動させることによってそれらの相対位置を変更しつつSAM形成材料含有ガスが供給されるような態様としてもよい。
例1に係るSAM作製装置の概略構成を模式的に示す説明図である。 図1のII−II線断面図である。 例2に係るSAM作製装置の概略構成を模式的に示す説明図である。 例3に係るSAM作製装置の要部を模式的に示す説明図である。 例4に係るSAM作製装置の要部を模式的に示す説明図である。 例5に係るSAM作製装置の要部を模式的に示す説明図である。 例1に係るSAM作製装置を用いて得られたサンプルの水滴接触角を示す光学顕微鏡写真である。
符号の説明
1〜5:自己組織化単分子膜製造装置
10:チャンバ
11:チャンバ内空間
18:冷却器
22:超音波霧化器(霧化器)
24:ヒータ(加熱器)
28:膜形成材料供給ダクト
42:台車
464:送りロール
50:VUV照射装置(VUV照射手段)
60:温風ヒータ(加熱手段)

Claims (15)

  1. 被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製する装置であって、
    前記被処理物が導入されるチャンバと、
    該チャンバ内の空間に自己組織化単分子膜形成材料を供給する膜形成材料供給手段と、
    該チャンバ内を通して前記被処理物を搬送する被処理物搬送手段と、
    を備え、
    ここで、前記膜形成材料供給手段は前記自己組織化単分子膜形成材料を含むミストを生成する霧化器と該ミストを加熱する加熱器とを含み、前記チャンバに導入された前記被処理物に該チャンバ内の空間にある自己組織化単分子膜形成材料が付着するように構成されており
    前記チャンバ内に導入された前記被処理物を該チャンバ内において冷却する冷却器をさらに備える、自己組織化単分子膜の作製装置。
  2. 前記膜形成材料供給手段は、前記ミストを前記チャンバ内の空間に供給し、該チャンバ内で前記ミストを加熱するように構成されている、請求項1に記載の装置。
  3. 前記被処理物に真空紫外光を照射する真空紫外光照射手段をさらに備え、
    該照射手段は、前記被処理物に前記膜形成材料が付着する前に該被処理物に真空紫外光を照射するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
  4. 前記膜形成材料の付着を終えた前記被処理物を加熱する加熱手段をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記膜形成材料の膜形成反応を促進する触媒を前記被処理物に供給する触媒供給手段をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記膜形成材料が前記被処理物に付着する以前に該被処理物に前記触媒が付着するように構成されている、請求項5に記載の装置。
  7. 被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製する方法であって:
    被処理物をチャンバに導入すること;
    自己組織化単分子膜形成材料を含むミストを生成し、該ミストを加熱して前記膜形成材料の少なくとも一部を気化させること;および、
    その気化した膜形成材料を含む膜形成材料含有ガスを、前記チャンバ内の前記被処理物に供給して、雰囲気温度よりも低温に冷却された前記被処理物に前記膜形成材料を付着させること;
    を包含する、自己組織化単分子膜の作製方法。
  8. 被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製する方法であって:
    自己組織化単分子膜形成材料を含むミストを生成すること;
    該ミストを加熱して前記膜形成材料の少なくとも一部を気化させること;および、
    その気化した膜形成材料を含む膜形成材料含有ガスを、前記被処理物を冷却しつつ該被処理物に供給して、前記膜形成材料を前記被処理物に付着させること;
    を含む、自己組織化単分子膜の作製方法。
  9. 前記膜形成材料を付着させる前に前記被処理物に真空紫外光を供給することをさらに含む、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記膜形成材料の付着完了後に前記被処理物を加熱することをさらに含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記膜形成材料の膜形成反応を促進する触媒を前記被処理物に供給することをさらに含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記被処理物への前記触媒の供給は、該被処理物に前記膜形成材料を付着させる以前に行われる、請求項11に記載の方法。
  13. 前記被処理物への前記膜材料含有ガスの供給は、前記膜材料含有ガスが供給される箇所に対して前記被処理物を相対的に移動させつつ行われる、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1から6のいずれか一項に記載の装置を用いて被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製することを特徴とする、自己組織化単分子膜付き物品の製造方法。
  15. 請求項7から13のいずれか一項に記載の方法によって被処理物の表面に自己組織化単分子膜を作製することを特徴とする、自己組織化単分子膜付き物品の製造方法。
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