JP4341322B2 - 薄膜形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成装置に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
【0003】
この大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置としては、リモートプラズマ方式の薄膜形成装置が知られている。リモートプラズマ方式の薄膜形成装置には、放電ガスと薄膜形成ガスとの混合ガスを使用する混合ガス用薄膜形成装置(例えば特許文献1参照)や、放電ガスと薄膜形成ガスとをそれぞれ個別に使用する個別ガス用薄膜形成装置(例えば特許文献2参照)などがある。
【0004】
混合ガス用薄膜形成装置について図10を参照して説明すると、この混合ガス用薄膜形成装置100には、互いに対向し混合ガスの流路Xを形成する電極101、102と、この流路Xを臨むように基材103を支持する支持体104と、混合ガスを流路Xに噴射して基材103まで供給するガスノズル(図示省略)とが設けられている。つまり、この混合ガス用薄膜形成装置100では、支持体104に支持された基材103に対して、ガスノズルから混合ガスを噴射しながら両電極101、102に電界を印加すれば、流路X内で発生した放電プラズマが、基材103に向けて噴出されるようになっている。これによって、基材103は放電プラズマに晒され、基材103上に薄膜を形成することができる。
【0005】
一方、個別ガス用薄膜形成装置について図11を参照して説明すると、この個別ガス用薄膜形成装置110には、互いに対向して薄膜形成ガスの流路Yを形成する薄膜形成ガス用電極111、112と、これら薄膜形成ガス用電極111、112の各外側面に対向して、放電ガスの流路Zを形成する放電ガス用電極113、114とが設けられている。また、個別ガス用薄膜形成装置110には、各流路Y、Zを臨むように基材103を支持する支持体104と、薄膜形成ガスを流路Yに噴射して基材103上に供給する薄膜形成ガスノズル(図示省略)と、放電ガスを流路Zに噴射して基材103上に供給する放電ガスノズル(図示省略)とが設けられている。つまり、この個別ガス用薄膜形成装置110では、放電ガスノズル及び薄膜形成ガスノズルから放電ガスと薄膜形成ガスとを噴射しながら、薄膜形成ガス用電極111、112及び放電ガス用電極113、114に電界を印加すれば、流路Z内で発生した放電プラズマが、流路Yから噴射された薄膜形成ガスを基材103上で活性化するようになっている。これによって、基材103上に薄膜を形成することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−23579号公報
【特許文献2】
特開2003−49272号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、混合ガス用薄膜形成装置100においては、流路X内で放電プラズマが発生して、混合ガス中の薄膜形成ガスが活性化されるので、流路Xを形成する電極101、102の放電面は、活性化された薄膜形成ガスによって汚染されてしまう。放電面が汚染されると、安定した放電が行えなくなるために、品質の低下を誘発してしまう。
【0008】
一方、個別ガス用薄膜形成装置110においては、流路Y、Zによって薄膜形成ガスと放電ガスとがそれぞれ個別に基材103上まで案内されるので、薄膜形成ガス用電極111、112及び放電ガス用電極113,114の放電面は、混合ガス用薄膜形成装置100に比べて汚染されにくくなっている。しかしながら、薄膜形成ガスの活性化が各流路Y、Zの出口近辺で行われるために、出口近辺にあたる電極表面は、その活性化された薄膜形成ガスによって汚染されることになる。つまり、個別ガス用薄膜形成装置110においても、混合ガス用薄膜形成装置100に比べて汚染の進行度合いは低いものの、電極表面が汚染されてしまい、長期間使用すると安定した放電が行えなくなる。
【0009】
本発明の課題は、長期にわたって高品質な薄膜を形成できる薄膜形成装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明における薄膜形成装置は、
基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを前記基材に向けて供給する混合ガス供給部と、
前記支持部材に対向して配置され、前記混合ガス供給部から供給された前記混合ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して流路を形成するとともに、前記流路内を通過する前記混合ガスに対して高周波電界を発生させて、前記混合ガスを活性化させる一対の電極と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記電極の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴としている。
【0011】
請求項1記載の発明によれば、フィルム用搬送機構が、クリーニングフィルムを電極の表面に密着させて搬送するので、電極の表面はクリーニングフィルムによって覆われることになる。したがって、電極の表面が、活性化した混合ガスによって汚染されることを防止できる。
また、クリーニングフィルムはフィルム用搬送機構によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルムを新たなものに連続して交換することができる。このため、電極の表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
ここで、流路内は高周波電界の発生する放電空間となるために、流路を形成する電極の表面(放電面)は最も汚れが堆積しやすい。しかしながら、請求項1記載の発明のように、放電面がクリーニングフィルムによって覆われるようにすれば、放電面への汚れを抑制して、安定した放電プラズマを発生させることができる。したがって、基材のヘイズ(濁り)を抑えることができ、高品質な製膜が可能となる。
さらに、電極の放電面に位置したクリーニングフィルムに皺やツレが発生していると、放電空間内の均一性が乱れてしまい、不均一な製膜としまう。この皺やツレが発生する原因は、放電空間に支えのない状態で進入することにより、熱影響を受けて収縮してしまうことにある。しかしながら、この請求項1記載の発明であると、クリーニングフィルムは、電極の放電面と、前記放電面に連続する放電面以外の表面に密着されているために、前記放電面以外の表面によって支えられた状態で放電空間に進入する。これにより、クリーニングフィルムが熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、プラズマ空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
【0012】
請求項2記載の発明は、
基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを前記基材に向けて供給する混合ガス供給部と、
前記支持部材に対向して配置され、前記混合ガス供給部から供給された前記混合ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して流路を形成するとともに、前記流路内を通過する前記混合ガスに対して、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で高周波電界を発生させて、前記混合ガスを活性化させる一対の電極と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記電極の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記クリーニングフィルムの搬送方向の上流側には、前記クリーニングフィルムを加熱する加熱部材が設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、電極の放電面における上流側で加熱部材がクリーニングフィルムを加熱するので、電極の放電面に接触する以前にクリーニングフィルムを加熱することができる。このため、放電空間にクリーニングフィルムが進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、クリーニングフィルムに皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面は、他方の前記電極に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、電極の放電面が、他方の電極に向かって凸となる曲面に形成されているので、電極の放電面とクリーニングフィルムとの密着性を高めることができる。
【0022】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記一対の電極のそれぞれに対して設けられていることを特徴としている。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、フィルム用搬送機構が、一対の電極のそれぞれに対して設けられているので、より確実にクリーニングフィルムを各電極に密着させることができる。
【0024】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記クリーニングフィルムの全幅は、前記電極の放電面よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0025】
請求項6記載の発明によれば、クリーニングフィルムの全幅が、電極の放電面よりも大きくなるように設定されているので、電極はクリーニングフィルムによって放電面以上の範囲が覆われることになる。このため放電プラズマに晒されることをさらに抑えて、電極に対する汚れを防止できる。さらに、クリーニングフィルムエッジが放電空間内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
【0026】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記混合ガス供給部の少なくとも一部に接触させてから、前記流路を形成する前記電極の表面まで搬送することを特徴としている。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、クリーニングフィルムが、混合ガス供給部の少なくとも一部に接触されてから、流路を形成する電極の表面まで搬送されるので、混合ガス供給部から流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、混合ガスが流路外に流れることを防止できる。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち、一方の前記電極による第1高周波電界及び他方の前記電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0029】
請求項8記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0030】
請求項9記載の発明における薄膜形成装置は、
基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガスを前記基材に向けて供給する薄膜形成ガス供給部と、
放電ガスを前記基材に向けて供給する放電ガス供給部と、
前記放電ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記放電ガス供給部から供給された前記放電ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して放電ガス用流路を形成するとともに、前記放電ガス用流路内を通過する前記放電ガスに対して高周波電界を発生させて、前記放電ガスを放電プラズマにする一対の放電ガス用電極と、
前記薄膜形成ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記薄膜形成ガス供給部から供給された前記薄膜供給ガスを前記放電ガス用流路の出口付近まで案内するように、互いに対向して薄膜形成ガス用流路を形成する少なくとも一対の流路形成部材と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記放電ガス用電極及び流路形成部材の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス用電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴としている。
【0031】
請求項9記載の発明によれば、フィルム用搬送機構が、クリーニングフィルムを放電ガス用電極及び流路形成部材の表面に密着させて搬送するので、放電ガス用電極及び流路形成部材の表面はクリーニングフィルムによって覆われることになる。したがって、放電ガス用電極及び流路形成部材の表面が、活性化した薄膜形成ガスによって汚染されることを防止できる。
また、クリーニングフィルムはフィルム用搬送機構によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルムを新たなものに連続して交換することができる。このため、電極の表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
ここで、放電ガス用流路内は高周波電界の発生する放電空間となるために、当該流路を形成する放電ガス用電極の表面(放電面)は最も汚れが堆積しやすい。しかしながら、請求項9記載の発明のように、放電面がクリーニングフィルムによって覆われるようにすれば、放電面への汚れを抑制して、安定した放電プラズマを発生させることができる。したがって、基材のヘイズ(濁り)を抑えることができ、高品質な製膜が可能となる。
さらに、放電ガス用電極の放電面に位置したクリーニングフィルムに皺やツレが発生していると、上記した電極の場合と同様に、放電空間内の均一性が乱れてしまい、不均一な製膜としまう。この皺やツレが発生する原因は、放電空間に支えのない状態で進入することにより、熱影響を受けて収縮してしまうことにある。しかしながら、この請求項9記載の発明であると、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0032】
請求項10記載の発明における薄膜形成装置は、
基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガスを前記基材に向けて供給する薄膜形成ガス供給部と、
放電ガスを前記基材に向けて供給する放電ガス供給部と、
前記放電ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記放電ガス供給部から供給された前記放電ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して放電ガス用流路を形成するとともに、前記放電ガス用流路内を通過する前記放電ガスに対して大気圧又は大気圧近傍の圧力下で高周波電界を発生させて、前記放電ガスを放電プラズマにする一対の放電ガス用電極と、
前記薄膜形成ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記薄膜形成ガス供給部から供給された前記薄膜供給ガスを前記放電ガス用流路の出口付近まで案内するように、互いに対向して薄膜形成ガス用流路を形成する少なくとも一対の流路形成部材と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記放電ガス用電極及び流路形成部材の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス用電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴としている。
【0033】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0038】
請求項11記載の発明は、請求項9又は10記載の薄膜形成装置において、
前記放電ガス用電極の放電面に対して、前記クリーニングフィルムの搬送方向の上流側には、前記クリーニングフィルムを加熱する加熱部材が設けられていることを特徴としている。
【0039】
請求項11記載の発明によれば、放電ガス用電極の放電面における上流側で加熱部材がクリーニングフィルムを加熱するので、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0040】
請求項12記載の発明は、請求項9〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記放電ガス用電極の放電面は、他方の前記放電ガス用電極に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0041】
請求項12記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0042】
請求項13記載の発明は、請求項9〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記薄膜形成ガス用流路を形成する前記流路形成部材の表面は、他方の前記流路形成部材に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0043】
請求項13記載の発明によれば、薄膜形成ガス用流路を形成する流路形成部材の表面は、他方の流路形成部材の表面に向かって凸となる曲面に形成されているので、薄膜形成ガス用流路内においても、クリーニングフィルムと流路形成部材の表面との密着性を高めることができる。
【0044】
請求項14記載の発明は、請求項9〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記放電ガス用電極及び前記流路形成部材のそれぞれに対して設けられていることを特徴としている。
【0045】
請求項14記載の発明によれば、フィルム用搬送機構が、放電ガス用電極及び流路形成部材のそれぞれに対して設けられているので、より確実にクリーニングフィルムを放電ガス用電極及び流路形成部材に密着させることができる。
【0046】
請求項15記載の発明は、請求項9〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記クリーニングフィルムの全幅は、前記放電ガス用電極の放電面よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0047】
請求項15記載の発明によれば、クリーニングフィルムの全幅が、放電ガス用電極の放電面よりも大きくなるように設定されているので、放電ガス用電極はクリーニングフィルムによって放電面以上の範囲が覆われることになる。このため放電プラズマに晒されることをさらに抑えて、放電ガス用電極に対する汚れを防止できる。さらに、クリーニングフィルムエッジが放電空間内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
【0048】
請求項16記載の発明は、請求項9〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス供給部の少なくとも一部に接触させ、前記放電ガス用流路を形成する前記放電ガス用電極の表面まで搬送することを特徴としている。
【0049】
請求項16記載の発明によれば、クリーニングフィルムが、放電ガス供給部の少なくとも一部に接触されて、放電ガス用流路を形成する放電ガス用電極の表面まで搬送されるので、放電ガス供給部から放電ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、放電ガスが放電ガス用流路外に流れることを防止できる。
【0050】
請求項17記載の発明は、請求項9〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記薄膜形成ガス供給部の少なくとも一部に接触させ、前記薄膜形成ガス用流路を形成する前記放電ガス用電極及び前記流路形成部材の表面まで搬送することを特徴としている。
【0051】
請求項17記載の発明によれば、クリーニングフィルムが薄膜形成ガス供給部の少なくとも一部に接触されて、薄膜形成ガス用流路を形成する放電ガス用電極及び流路形成部材の表面まで搬送されるので、薄膜形成ガス供給部から薄膜形成ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、薄膜形成ガスが薄膜形成ガス用流路外に流れることを防止できる。
【0052】
請求項18記載の発明は、請求項9〜17のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の前記放電ガス用電極のうち少なくとも1つの前記放電ガス用電極が、前記一対の流路形成部材のうち、1つの前記流路形成部材として機能することを特徴としている。
【0053】
請求項18記載の発明によれば、一対の放電ガス用電極のうち少なくとも1つの放電ガス用電極が、一対の流路形成部材のうち、1つの流路形成部材として機能するので、部品数を削減することができる。
【0054】
請求項19記載の発明は、請求項9〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の放電ガス用電極のうち、一方の前記放電ガス用電極による第1高周波電界及び他方の前記放電ガス用電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0055】
請求項19記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0056】
請求項20記載の発明は、請求項1〜19のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持部材は、電極からなることを特徴としている。
【0057】
請求項20記載の発明によれば、支持部材が電極であるために、支持部材及び電極の間隔と、支持部材及び放電ガス用電極の間隔とを放電空間にすることができ、放電空間をさらに広くすることができる。したがって、より高品質な薄膜を形成することができる。
【0058】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照しつつ本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表すの側面図である。
【0059】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによってガスを活性化し、その活性化したガスに基材を晒して、基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示すように、シート状の基材2をその周面に密着させて搬送するロール形状の支持部材10が回転自在に設けられている。
【0060】
支持部材10の内部には、表面温度を調節するため、例えば、水やシリコンオイル等の温度調節用の媒体が循環できるようになっており、この循環部分には、図1に示すように、配管3を介して温度調節装置4が接続されている。また、支持部材10の周縁には、基材2を支持部材10の周面に密着させて搬送するために基材用搬送機構13と、基材2上に薄膜を形成するための複数の薄膜形成ユニット20が設けられている。
【0061】
基材用搬送機構13には、基材2を支持部材10の周面に案内する第1ガイドローラ14及びニップローラ15と、前記周面に密着した基材2を剥がして、次行程まで案内する第2ガイドローラ16と、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持部材10を連動するように回転させる駆動源51(図6参照)とが設けられている。
【0062】
図2は薄膜形成ユニット20の側面図であり、図3は薄膜形成ユニット20の正面図である。薄膜形成ユニット20には、支持部材10の周面に間隔aを空けて対向する一対の小電極(電極)21A、21Bが配置されている。また、これら一対の小電極21A、21Bは、互いに隙間bを空けて配置されている。この隙間bが放電空間Bであり、放電空間Bを成す小電極21A、21Bの対向する面をそれぞれ放電面21a、21bとする。
【0063】
図4は、小電極21A、21Bを表す斜視図であり、小電極21A、21Bは導電性の金属質母材211の表面に誘電体212が被覆された四角柱状電極である。この小電極21A、21Bの角部215は円弧状に形成されている。つまり、小電極21A、21Bの四面は角部215を介して連続していることから、放電面21a、21b及び放電面21a、21b以外の表面も連続することになる。小電極21A、21Bは内部が中空となっており、この中空部分213には、図1に示すように、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分213に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節ができるようになっている。そして、各薄膜形成ユニット20の小電極21A、21Bには、フィルタ22を介して電源23が接続されている。
【0064】
また、薄膜形成ユニット20には、図2に示すように、一対の小電極21A、21Bの隙間bに向けてガスを噴出するガス供給部(混合ガス供給部)24が、前記隙間bに対向するように配置されている。つまり、隙間bがガス供給部24から供給されたガスを、支持部材10上の基材2まで案内する流路として機能するようになっている。ガス供給部24には、内部にガス流路が形成されたノズル本体部25と、ノズル本体部25から流路に向けて突出し、ガス流路に連通してガスを噴出するガス噴出部26とが設けられている。
【0065】
また、薄膜形成ユニット20には、小電極21A、21Bの汚れを防止するクリーニングフィルム27を小電極21A、21Bに密着させながら連続的若しくは間欠的に搬送するフィルム用搬送機構30が、各小電極21A、21Bに応じて設けられている。このフィルム用搬送機構30には、ガス供給部24の近傍で、クリーニングフィルム27を案内する第1フィルム用ガイドローラ31が設けられている。この第1フィルム用ガイドローラ31の上流側には、図示しないクリーニングフィルム27の巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム27の元巻が設けられている。
【0066】
また、ガス供給部24に対して、第1フィルム用ガイドローラ31よりも遠方には、第2フィルム用ガイドローラ32を介してクリーニングフィルム27を巻き取る巻取部29(図6参照)が設けられている。ここで、図5は、図3におけるP−P断面を表す断面図であるが、小電極21A、21Bの放電面21a、21bの大きさは、金属質母材211の大きさに対応している。そしてクリーニングフィルム27は少なくとも金属質母材211の全幅よりも大きく設定されていれば、確実に放電面21a、21bを覆うことができる。このように、小電極21A、21Bが、クリーニングフィルム27に覆われると、放電プラズマに晒されなくなり、小電極21A、21Bに対する汚れを防止できる。また、クリーニングフィルム27のエッジが放電空間B内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
【0067】
また、薄膜形成ユニット20には、クリーニングフィルム27が放電面21a、21bに接触する際に生じるツレや皺を防止するために、小電極21A、21Bの放電面21a、21bに対してクリーニングフィルム27の搬送方向の上流側に、クリーニングフィルム27を加熱する加熱部材28が設けられている。
【0068】
つまり、クリーニングフィルム27は、フィルム用搬送機構30によって、巻出ローラから引き出された後、第1フィルム用ガイドローラ31に案内されて、ガス供給部24のノズル本体部25の周縁に接触した後に、加熱部材28の表面に接触して加熱されてから、小電極21A、21Bの角部215を介して放電面21a、21bに接触し、その後、第2フィルム用ガイドローラ32に案内されて、巻取部29で巻き取られるようになっている。この際、角部215が円弧状に形成されているので、クリーニングフィルム27が前記放電面21a以外の表面(角部215表面)から放電面21a、21bまで移動する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送させることができる。なお、本実施形態では、小電極21A、21Bの放電面21a、21bが平面であるが、この放電面21a、21bを、他方の放電面21a、21bに向かって凸となる曲面に形成してもよい。こうした場合、小電極21A、21Bの放電面21a、21bとクリーニングフィルム27との密着性をさらに高めることができる。
【0069】
そして、上記のように、クリーニングフィルム27とノズル本体部25とが接触しているので、ガス供給部24から放電空間Bまでの空間は、クリーニングフィルム27によって仕切られることになって、ガスが流路外に流れることを防止できる。
【0070】
ここで、クリーニングフィルム27が小電極21A、21Bに密着していない場合においては、上記のように小電極21A、21Bの表面が放電面21a、21bとなるが、クリーニングフィルム27が小電極21A、21Bに密着している場合には、前記放電面21a、21bに密着するクリーニングフィルム27の表面が放電面になる。したがって、クリーニングフィルム27が小電極21A、21Bに密着している場合には、放電空間Bはクリーニングフィルム27の表面より形成されることになる。
【0071】
薄膜形成装置1には、図6に示すように、各駆動部を制御する制御装置50が設けられている。制御装置50には、駆動源51、記憶部52、電源23、ガス供給部24、加熱部材28、温度調節装置4、6、巻取部29が電気的に接続されている。なお、制御装置50には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置50は、記憶部52中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0072】
次に、放電空間Bに供給されるガスについて説明する。
放電空間Bに供給されるガスは、少なくとも放電ガス及び薄膜形成ガスを含有する混合ガスである。なお、これら以外にも添加ガスを加えてもよい。いずれの場合においても、放電ガスの量は、放電空間Bに供給する全ガス量に対して、90〜99.99体積%であることが好ましい。
【0073】
放電ガスとは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできるガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。この場合、放電ガスの50〜100体積%が窒素であることが好ましく、さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用し、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。
【0074】
薄膜形成ガスとしては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0075】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
【0076】
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0077】
また、添加ガスを混合する場合においては、添加ガスとして、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等が挙げられるが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量はガス全量に対して0.01〜5体積%含有させることが好ましく、それによって反応促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
【0078】
次に、基材2について説明する。基材2としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材2が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材2の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラスとしては、例えばガラス板やレンズ等、樹脂としては、例えば樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
【0079】
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて製膜することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0080】
樹脂からなる基材2の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0081】
また、本発明に用いられる基材2は、厚さが10〜1000μm、より好ましくは40〜200μmのフィルム状のものが使用されている。
【0082】
次に、クリーニングフィルム27について説明する。
クリーニングフィルム27は、例えば樹脂フィルム、紙、布、不織布等から形成されている。樹脂としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。そして、さらに好ましくは、安価で生産性に優れるポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びPETを主体とする樹脂フィルムである。また本発明に用いられるクリーニングフィルム27は、厚みが10〜1000μm、より好ましくは20〜100μmのフイルム状のものが使用されている。また、また材質に求められる性質としては、大気圧プラズマ処理を行っている最中は非常に高温となるために、耐熱性すなわち熱的寸法安定性に優れたものがよい。さらに熱的寸法安定性を向上させるためにアニール処理等を施したものがより好ましい。
【0083】
次に、小電極21A、21Bを形成する金属質母材211及び誘電体212について説明する。
金属質母材211と誘電体212と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材211と誘電体212との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0084】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記1)または2)および5)〜8)が好ましく、特に1)が好ましい。
【0085】
そして、金属質母材211は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材211をチタンまたはチタン合金とし、誘電体212を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0086】
本発明に有用な電極の金属質母材211は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材211としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体212との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0087】
一方、誘電体212の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体212が好ましい。
【0088】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体212の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体212の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0089】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1で薄膜形成を行った際の作用について説明しながら、薄膜形成に対して好適な各種条件について説明する。
【0090】
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置50は、各ガス供給部24からガスを噴出させて、放電空間Bにガスを供給させる。この際、ガス供給部24から噴出されたガスは、クリーニングフィルム27により仕切られた空間を介して、一対の小電極21A、21Bにより形成された放電空間Bにまで至る。
【0091】
そして、放電空間Bにガスが供給されると、制御装置50は、駆動源51を制御して、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持部材10を回転させて、基材2を支持部材10の周面に密着させて搬送させるとともに、巻取部29を制御して、クリーニングフィルム27を小電極21A、21Bに表面に密着させて搬送させる。ここでクリーニングフィルム27の搬送速度が、20mm/min〜200m/minとなるように、巻取部29の巻取速度を制御することが好ましい。また、小電極21A、21Bにおけるクリーニングフィルム27の張力は、クリーニングフィルム27の材質や厚みが異なることによりその適正値が変動するが、例えばクリーニングフィルム27の材質をPET、厚みを38μmとした場合には、張力の適正値は25gf/mm〜75gf/mmである。張力が25gf/mm未満であるとクリーニングフィルム27は小電極21A、21Bから浮いてしまい、75gf/mmより大きければ、装置の大型化を招くとともに局部的な伸びが顕在化しツレが発生してしまう。
【0092】
基材2の搬送が開始されると、制御装置50は、電源23をONにする。これにより、小電極21Aには、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加される。一方、小電極21Bには、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0093】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0094】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0095】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0096】
このように、小電極21Aに第1高周波電界が発生され、小電極21Bに第2高周波電界が発生されると、放電空間Bには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。放電プラズマは、図2に示すように、ガス供給部24からの噴出力によって放電空間Bから基材2に向けて噴出される。放電プラズマが発生する空間をプラズマ空間Hといい、上述の噴出力により小電極21A、21Bの放電面21a、21bから下方に向けてはみ出すとともに、放電面21a、21bから上方に向けてもはみ出すことになる。しかしながら、クリーニングフィルム27が、小電極21A、21Bの放電面21a、21bに密着する前に、小電極21A、21Bの放電面21a、21bに連続する放電面21a、21b以外の表面(角部215の表面)に密着されるために、このクリーニングフィルム27は、前記放電面21a、21b以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間Hに進入する。これにより、クリーニングフィルム27が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。さらに、放電空間Bを形成する小電極21A、21Bの放電面21a、21bには、常にクリーニングフィルム27が密着することになり、その放電面21a、21bが活性化したガスにより汚染されることを防止している。
【0097】
さらに、支持部材10及び小電極21A、21Bは、それぞれ温度調節装置4、6によってその表面温度が制御され、かつ加熱部材28においてもその表面温度が制御されているために、基材2及びクリーニングフィルム27がプラズマ空間Hに進入する以前に予め連続的に加熱されることとなる。このため、プラズマ空間Hに基材2及びクリーニングフィルム27が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材2及びクリーニングフィルム27に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。なお、連続的に加熱しなくても段階的に加熱してもよい。
【0098】
そして、基材2が、小電極21A、21Bから下方にはみ出したプラズマ空間H内を通過することで、基材2上には薄膜が形成される。プラズマ放電処理中の基材2の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成が変化する場合もあるので、薄膜形成中においても、温度調節装置4によって温度制御された媒体を支持部材10内に循環させて、支持部材10の表面温度を制御し、基材2の温度を適宜調節することが好ましい。ここで、温度調節装置4は、基材2が所定の性能を発揮できる温度となるように、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節している。一方、温度調節装置6においても、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節する。ただし、下限温度としては、使用するガスの気化条件温度を下回らないように前記媒体を温度調節しなければならない。
そして、薄膜が形成された基材2は、ガイドローラ16を介して次行程まで搬送される。
【0099】
以上のように、本実施形態の薄膜形成装置1によれば、フィルム用搬送機構30が、クリーニングフィルム27を小電極21A、21Bの放電面21a、21bに密着するように搬送するので、小電極21A、21Bにおいてはクリーニングフィルム27の密着により、その表面が覆われることになる。したがって、小電極21A、21Bの放電面21a、21bが活性化されたガスにより汚染されることを防止できる。また、クリーニングフィルム27はフィルム用搬送機構30によって搬送されるので、小電極21A、21Bの放電面21a、21bに密着するクリーニングフィルム27を新たなものに連続して交換することができる。
また、フィルム用搬送機構30が、小電極21A、21B毎に設けられているので、小電極21A、21B毎にクリーニングフィルム27を搬送することにより、各小電極21A、21Bに対する汚れを防止できる。
そして、クリーニングフィルム27が小電極21A、21Bの放電面21a、21b及び放電面21a、21b以外の表面に密着しているので、薄膜形成ガスを流さず放電ガスのみを放電空間Bに流した場合においては、小電極21A、21Bを保護することができる。
さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0100】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る薄膜形成装置について、図7を用いて説明する。上述した第1の実施の形態における薄膜形成装置1では、ガスとして混合ガスを使用した場合を例示して説明したが、本実施形態では、薄膜形成ガスと放電ガスとをそれぞれ個別に基材に向けて供給して、基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置1Aを例示して説明する。なお、以下の説明において、第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1と共通の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0101】
図7は、薄膜形成装置1Aに備わる薄膜形成ユニット60を表す側面図である。薄膜形成ユニット60には、薄膜形成ガスを基材2に向けて供給する薄膜形成ガス供給部61が設けられている。また、薄膜形成ユニット60には、薄膜形成ガス供給部61の側方に配置されて、放電ガスを基材2に向けて供給する2つの放電ガス供給部62が設けられている。
【0102】
これら薄膜形成ガス供給部61及び放電ガス供給部62と支持部材10との間には、薄膜形成ガス供給部61から供給された薄膜形成ガスを基材2まで案内する一対の第1電極63A、63Bが設けられている。この第1電極63A、63Bには、第1フィルタを介して第1電源が接続されている。第1電極63A、63Bは、上記した小電極21A、21Bと同様に導電性の金属質母材の表面に誘電体が被覆されて、三角柱形状に形成されている。そして、第1電極63A、63Bは、互いに斜辺面63C、63Dを外側に向けて隙間Cを空けるように対向している。この隙間Cを形成する面を対向面63E、63Fとし、隙間Cが薄膜形成ガス供給部61から噴出される薄膜形成ガスを支持部材10上の基材2まで案内する薄膜形成ガス用流路となっている。つまり、第1電極63A、63Bが、互いに対向して薄膜形成流路を形成する流路形成部材として機能する。
【0103】
第1電極63A、63Bにおける薄膜形成ガス用流路の反対側には、放電ガス供給部62から供給された放電ガスを基材2まで案内するための第2電極64A、64Bが設けられている。この第2電極64A、64Bには、第2フィルタを介して第2電源が接続されている。第2電極64A、64Bは、上記した第1電極63A、63Bと同様に導電性の金属質母材の表面に誘電体が被覆されて、角部が円弧状の略三角柱形状に形成されている。そして、第2電極64A、64Bは、その斜辺面64C、64Dと、第1電極63A、63Bの斜辺面63C、63Dとが隙間Dを空けて対向し、かつ底面64E、64Dと、支持部材10の表面とが間隔Eを空けて対向するように配置されている。ここで隙間Dが放電ガス供給部62から噴出される薄膜形成ガスを支持部材10上の基材2まで案内する放電ガス用流路となっている。つまり、第1電極63A及び第2電極64Aと、第1電極63B及び第2電極64Bとが、互いに対向して放電ガス用流路を形成する放電ガス用電極として機能している。
そして、この放電ガス用流路を形成する第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの斜辺面63C、63D、64C、64Dは、放電面として機能するために、この放電ガス用流路が放電空間Fを兼ね、放電プラズマを発生するようになっている。そして、放電ガス用流路と薄膜形成ガス用流路とは、出口付近で合流するようになっているために、放電空間Fで発生した放電プラズマが薄膜形成ガスを活性化して、基材2上に薄膜を形成するようになっている。
【0104】
これら第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bは、内部が中空になっており、この中空部分には、図1に示すように、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節ができるようになっている。
【0105】
また、薄膜形成ユニット60には、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bにクリーニングフィルム27を密着させながら連続的若しくは間欠的に搬送するフィルム用搬送機構70が、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bのそれぞれに設けられている。各フィルム用搬送機構70には、搬送方向の上流側に巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム27の元巻が設けられ、下流側に巻取部29が設けられている。
【0106】
これらフィルム用搬送機構70のうち、第1電極63A、63Bを担当するフィルム用搬送機構70は、クリーニングフィルム27を、薄膜形成ガス供給部61に接触させてから、第1電極63A、63Bの対向面63E、63Fを介して斜辺面63C、63Dに密着させ、その後放電ガス供給部62に接触させるように搬送している。これにより、クリーニングフィルム27は、斜辺面63C、63Dに進入する以前に、対向面63E、63Fによって加熱されるため、急激な温度変化によるツレや皺を防止できるようになっている。そして、上記のように、クリーニングフィルム27と薄膜形成ガス供給部61とが接触しているので、薄膜形成ガス供給部61から薄膜形成ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルム27によって仕切られることになって、ガスが薄膜形成ガス用流路外に流れることを防止できる。
【0107】
一方、第2電極64A、64Bを担当するフィルム用搬送機構70は、クリーニングフィルム27を、第2電極64A、64Bの底面64E、64Fを介して斜辺面64C、64Dに密着させてから、放電ガス供給部62に接触させるように搬送している。これにより、クリーニングフィルム27は、斜辺面64C、64Dに進入する以前に、底面64E、64Fによって加熱されるため、急激な温度変化によるツレや皺を防止できるようになっている。そして、上記のように、クリーニングフィルム27と放電ガス供給部62とが接触しているので、放電ガス供給部62から放電ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルム27によって仕切られることになって、ガスが放電ガス用流路外に流れることを防止できる。
【0108】
また、クリーニングフィルム27の搬送時においては、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの角部が円弧状に形成されているので、クリーニングフィルム27が斜辺面63C、63D、64C、64D以外の表面(対向面63E、63F及び底面64E、64F)から斜辺面63C、63D、64C、64Dに進入する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送させることができる。なお、本実施形態では、斜辺面63C、63D、64C、64Dが平面であるが、この斜辺面63C、63D、64C、64Dを、対向する他方の斜辺面63C、63D、64C、64Dに向かって凸となる曲面に形成してもよい。さらに、対向面63E、63Fにおいても、他方の対向面に向かって凸となる曲面に形成してもよい。こうした場合、斜辺面63C、63D、64C、64D、対向面63E、63Fとクリーニングフィルム27との密着性をさらに高めることができる。
【0109】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1Aで薄膜形成を行った際の作用について説明しながら、薄膜形成に対して好適な各種条件について説明する。
【0110】
先ず、薄膜形成の開始に伴って、放電ガス供給部62が放電ガスを噴出して、クリーニングフィルム27により仕切られた空間を介して放電空間Fに放電ガスを供給する。この際、薄膜形成ガス供給部61も薄膜形成ガスを噴射して、クリーニングフィルム27によって仕切られて空間を介して薄膜形成ガス用流路に薄膜形成ガスを供給する。
【0111】
そして、放電空間Fに放電ガスが供給されると、各フィルム用搬送機構70がクリーニングフィルム27を搬送し、支持部材10が基材2を搬送する。基材2の搬送が開始されると、第1電源及び第2電源がONとなる。これにより、第1電極63A、63Bには、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加される。一方、第2電極64A、64Bには、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0112】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0113】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0114】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0115】
このように、第1電極63A、63Bに第1高周波電界が発生され、第2電極64A、64Bに第2高周波電界が発生されると、放電空間Fには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。放電プラズマは、放電ガス供給部62からの噴出力によって放電空間Fから基材2に向けて噴出される。この際、薄膜形成ガス供給部61から噴出されて、薄膜形成ガス用流路を介して基材2に供給された薄膜形成ガスは、放電プラズマに晒されて活性化する。これにより、基材2上には活性化された薄膜形成ガスが噴射されて、薄膜が形成される。
【0116】
ここで、活性化した薄膜形成ガスは、薄膜形成ガス用流路及び放電ガス用流路の出口近傍で発生して、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの表面を汚す可能性があるが、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの表面にはクリーニングフィルム27が密着しているために、直接汚染されることは防止されている。
【0117】
以上のように、第2の実施の形態の薄膜形成装置1Aによれば、フィルム用搬送機構70が、クリーニングフィルム27を第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの表面に密着させて搬送するので、第1電極63A、63B及び前記第2電極64A、64Bの表面はクリーニングフィルム27によって覆われることになる。したがって、第1電極63A、63B及び前記第2電極64A、64Bの表面が、活性化した薄膜形成ガスによって汚染されることを防止できる。ここで、薄膜形成ガス用流路内は高周波電界の発生する放電空間Fとなるために、当該流路を形成する第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bの斜辺面63C、63D、64C、64Dは最も汚れが堆積しやすい。しかしながら、この斜辺面63C、63D、64C、64Dがクリーニングフィルム27によって覆われるようにすれば、斜辺面63C、63D、64C、64Dへの汚れを抑制して、安定した放電プラズマを発生させることができる。したがって、基材のヘイズ(濁り)を抑えることができ、高品質な製膜が可能となる。
また、クリーニングフィルム27はフィルム用搬送機構70によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルム27を新たなものに連続して交換することができる。このため、電極の表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
【0118】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、第2の実施の形態では、第1電極63A、63Bが流路形成部材として機能する場合を例示しているが、流路形成部材は薄膜形成ガス供給部から供給された薄膜形成ガスを放電ガス用流路の出口付近にまで案内できるのであれば、電極でなくてもよい。例えば、図8に示すように、第1電極63とほぼ同等の全幅長を有する板80を、第1電極63Aに対して間隔Gを空けて配置すれば、この間隔Gが薄膜形成ガス用流路となる。すなわち板80及び第1電極63が流路形成部材として機能することになる。このように、一対の放電ガス用電極のうち、少なくとも1つの放電ガス電極が、流路形成部材として機能すれば、部品点数を削減することができる。また、非電極で少なくとも一対の流路形成部材を互いに間隔を空けて対向させ、この間隔が放電ガス用流路の出口付近に至るように配置することにより薄膜形成ガス用流路を形成してもよい。
【0119】
また、第2の実施の形態では、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bが、本発明におけるクリーニングフィルム27を加熱する加熱部材として機能しているが、斜辺面63C、63D、64C、64Dに対して、クリーニングフィルム27の搬送方向の上流側で加熱できるのであれば、如何なるものでもよく、これ以外にも例えば、第1電極63A、63B及び第2電極64A、64Bに対して、クリーニングフィルム27の搬送方向の上流側に、加熱専用の部材を配置することが挙げられる。
【0120】
また、第1及び第2の実施の形態では、支持部材10には電界が印加されていないが、支持部材として電極を使用することも可能である。このように支持部材として用いられる電極としては、例えば図9に示されるロール状電極が挙げられる。ロール状電極10Aは、導電性の金属母材11Aの表面に誘電体12Aが被覆されて形成されている。ここで金属母材11A及び誘電体12Aは、小電極21、22の金属母材211及び誘電体212と同様の材料を用いることが好ましい。また、ロール状電極10Aは接地されて、電機の流れが確保されている。このように、支持部材として電極を使用すれば、支持部材及び小電極21A、21Bの間隔aと、支持部材10及び第2電極64A、64Bの間隔Eとを放電空間にすることができ、放電空間をさらに広くすることができる。したがって、より高品質な薄膜を形成することができる。
【0121】
【実施例】
[電極]
支持部材10Aは、直径1000mmのロール形状でチタン合金T64製の金属支持部材であり、小電極21A、21Bは、40mm×40mmの略角柱形状であるチタン合金T64製の電極である。各小電極21A、21Bが対向する面には大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ容赦膜が被覆された後に、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液が塗布乾燥されている。さらに、紫外線照射により硬化され封孔処理が施されている。その後被覆された誘電体表面を研磨し、平滑にしてRmax5μmとなるように加工されている。
ここで、小電極21A、21Bは、放電面21a、21bの曲率がR20mm〜R2000mmの範囲に、角部215の曲率がR1mm〜R20mmの範囲に収まるように誘電体が被覆されている。なお、角部215の曲率において好ましい範囲は、R3mm〜R8mmである。具体的に本実施例における小電極21A、21Bは、放電面21a、21bの曲率がR500mm、角部215の曲率がR5mmとなるように、誘電体が被覆されている。
【0122】
[薄膜形成装置]
上記実施形態における薄膜形成装置1を使用し、上記で作成した支持部材10A及び小電極21A、21Bの間隔aを1mmとなるように両者を配置した。ここで、ガスの組成は、放電ガス(窒素)が97.9体積%、薄膜形成ガス(テトライソプロポキシチタン)が0.1体積%、添加ガス(水素)が2.0体積%である。また、基材2としては、コニカタックKC8UXが使用され、クリーニングフィルム27としては、三菱化学ポリエステルフィルム社製若しくは帝人デュポンフィルム社製のPETフィルムが使用されている。そして、放電開始電界強度IVを3.7kV/mmとし、小電極21Aにおける第1高周波電界の周波数ω1を5kHz、電界強度V1を12kV/mmとし、小電極21Bにおける第2高周波電界の周波数ω2を800kHz、電界強度V2を1.2kV/mmとして製膜を行った。
【0123】
比較例として、従来技術で例示した薄膜形成装置を使用して、実施例と同様の基材、ガスを用いて薄膜形成を行った。
複数回薄膜形成を繰り返した後、実施例と比較例の両者により形成された薄膜を比較すると、実施例では、メンテナンスフリーであっても電極表面に汚れがなく、基材に対してもヘイズが発生していないが、比較例では電極表面に汚れがあるために基材にヘイズが発生してしまっていた。
【0124】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、電極の表面はクリーニングフィルムによって覆われることになる。したがって、電極の表面が、活性化した混合ガスによって汚染されることを防止できる。
また、クリーニングフィルムはフィルム用搬送機構によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルムを新たなものに連続して交換することができる。このため、電極の表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
また、放電面への汚れを抑制して、安定した放電プラズマを発生させることができる。したがって、基材のヘイズ(濁り)を抑えることができ、高品質な製膜が可能となる。
また、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、プラズマ空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0126】
請求項3記載の発明によれば、電極の放電面に接触する以前にクリーニングフィルムを加熱することができる。このため、放電空間にクリーニングフィルムが進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、クリーニングフィルムに皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。
請求項4記載の発明によれば、電極の放電面とクリーニングフィルムとの密着性を高めることができる。
請求項5記載の発明によれば、より確実にクリーニングフィルムを各電極に密着させることができる。
請求項6記載の発明によれば、電極はクリーニングフィルムによって放電面以上の範囲が覆われることになる。このため放電プラズマに晒されることをさらに抑えて、電極に対する汚れを防止できる。さらに、クリーニングフィルムエッジが放電空間内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
請求項7記載の発明によれば、混合ガス供給部から流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、混合ガスが流路外に流れることを防止できる。
請求項8記載の発明によれば、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0127】
請求項9記載の発明によれば、放電ガス用電極及び流路形成部材の表面はクリーニングフィルムによって覆われることになる。したがって、放電ガス用電極及び流路形成部材の表面が、活性化した薄膜形成ガスによって汚染されることを防止できる。
また、クリーニングフィルムはフィルム用搬送機構によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルムを新たなものに連続して交換することができる。このため、電極の表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
また、放電面への汚れを抑制して、安定した放電プラズマを発生させることができる。したがって、基材のヘイズ(濁り)を抑えることができ、高品質な製膜が可能となる。
また、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、プラズマ空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0128】
請求項11記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項12記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
請求項13記載の発明によれば、薄膜形成ガス用流路内においても、クリーニングフィルムと流路形成部材の表面との密着性を高めることができる。
【0129】
請求項14記載の発明によれば、より確実にクリーニングフィルムを放電ガス用電極及び流路形成部材に密着させることができる。
請求項15記載の発明によれば、放電ガス用電極はクリーニングフィルムによって放電面以上の範囲が覆われることになる。このため放電プラズマに晒されることをさらに抑えて、放電ガス用電極に対する汚れを防止できる。さらに、クリーニングフィルムエッジが放電空間内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
請求項16記載の発明によれば、放電ガス供給部から放電ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、放電ガスが放電ガス用流路外に流れることを防止できる。
請求項17記載の発明によれば、薄膜形成ガス供給部から薄膜形成ガス用流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、薄膜形成ガスが薄膜形成ガス用流路外に流れることを防止できる。
請求項18記載の発明によれば、一対の放電ガス用電極のうち少なくとも1つの放電ガス用電極が、一対の流路形成部材のうち、1つの流路形成部材として機能するので、部品数を削減することができる。
請求項19記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を奏することができる。
【0130】
請求項20記載の発明によれば、支持部材が電極であるために、支持部材及び電極の間隔と、支持部材及び放電ガス用電極の間隔とを放電空間にすることができ、放電空間をさらに広くすることができる。したがって、より高品質な薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側面図である。
【図2】図1の薄膜形成装置に備わる薄膜形成ユニットを表す正面図である。
【図3】図2の薄膜形成ユニットを表す側面図である。
【図4】図2の薄膜形成ユニットに備わる小電極を表す斜視図である。
【図5】図2のP−P断面を表す断面図である。
【図6】図1の薄膜形成装置の主制御部分を表すブロック図である。
【図7】第2の実施の形態に係る薄膜形成装置に備わる薄膜形成ユニットを表す側面図である。
【図8】図7の薄膜形成ユニットの変形例を表す側面図である。
【図9】図1の薄膜形成装置に備わる支持部材の変形例を表す斜視図である。
【図10】従来の混合ガス用薄膜形成装置の概略構成を表す側面図である。
【図11】従来の個別ガス用薄膜形成装置の概略構成を表す側面図である。
【符号の説明】
1 薄膜形成装置
2 基材
10 支持部材
21A、21B 小電極(電極)
21a、21b 放電面
24 ガス供給部(混合ガス供給部)
27 クリーニングフィルム
28 加熱部材
30 フィルム用搬送機構
61 薄膜形成ガス供給部
62 放電ガス供給部
63A、63B 第1電極(流路形成部材、放電ガス用電極)
63C、63D 斜辺面(放電面)
64A、64B 第2電極(放電ガス用電極)
64C、64D 斜辺面(放電面)
70 フィルム用搬送機構
Claims (20)
- 基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを前記基材に向けて供給する混合ガス供給部と、
前記支持部材に対向して配置され、前記混合ガス供給部から供給された前記混合ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して流路を形成するとともに、前記流路内を通過する前記混合ガスに対して高周波電界を発生させて、前記混合ガスを活性化させる一対の電極と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記電極の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを前記基材に向けて供給する混合ガス供給部と、
前記支持部材に対向して配置され、前記混合ガス供給部から供給された前記混合ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して流路を形成するとともに、前記流路内を通過する前記混合ガスに対して、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で高周波電界を発生させて、前記混合ガスを活性化させる一対の電極と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記電極の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1又は2に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記クリーニングフィルムの搬送方向の上流側には、前記クリーニングフィルムを加熱する加熱部材が設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面は、他方の前記電極に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記一対の電極のそれぞれに対して設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記クリーニングフィルムの全幅は、前記電極の放電面よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記混合ガス供給部の少なくとも一部に接触させてから、前記流路を形成する前記電極の表面まで搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち、一方の前記電極による第1高周波電界及び他方の前記電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。 - 基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガスを前記基材に向けて供給する薄膜形成ガス供給部と、
放電ガスを前記基材に向けて供給する放電ガス供給部と、
前記放電ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記放電ガス供給部から供給された前記放電ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して放電ガス用流路を形成するとともに、前記放電ガス用流路内を通過する前記放電ガスに対して高周波電界を発生させて、前記放電ガスを放電プラズマにする一対の放電ガス用電極と、
前記薄膜形成ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記薄膜形成ガス供給部から供給された前記薄膜供給ガスを前記放電ガス用流路の出口付近まで案内するように、互いに対向して薄膜形成ガス用流路を形成する少なくとも一対の流路形成部材と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記放電ガス用電極及び流路形成部材の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス用電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 基材を支持する支持部材と、
薄膜形成ガスを前記基材に向けて供給する薄膜形成ガス供給部と、
放電ガスを前記基材に向けて供給する放電ガス供給部と、
前記放電ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記放電ガス供給部から供給された前記放電ガスを前記基材まで案内するように、互いに対向して放電ガス用流路を形成するとともに、前記放電ガス用流路内を通過する前記放電ガスに対して大気圧又は大気圧近傍の圧力下で高周波電界を発生させて、前記放電ガスを放電プラズマにする一対の放電ガス用電極と、
前記薄膜形成ガス供給部及び前記支持部材の間に配置され、前記薄膜形成ガス供給部から供給された前記薄膜供給ガスを前記放電ガス用流路の出口付近まで案内するように、互いに対向して薄膜形成ガス用流路を形成する少なくとも一対の流路形成部材と、
汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、前記放電ガス用電極及び流路形成部材の表面に密着させて搬送するフィルム用搬送機構とを備え、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス用電極の放電面と、前記放電面に連続する前記放電面以外の表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9又は10に記載の薄膜形成装置において、
前記放電ガス用電極の放電面に対して、前記クリーニングフィルムの搬送方向の上流側には、前記クリーニングフィルムを加熱する加熱部材が設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記放電ガス用電極の放電面は、他方の前記放電ガス用電極に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記薄膜形成ガス用流路を形成する前記流路形成部材の表面は、他方の前記流路形成部材に向かって凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記放電ガス用電極及び前記流路形成部材のそれぞれに対して設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記クリーニングフィルムの全幅は、前記放電ガス用電極の放電面よりも大きくなるように設定されていることを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記放電ガス供給部の少なくとも一部に接触させ、前記放電ガス用流路を形成する前記放電ガス用電極の表面まで搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記フィルム用搬送機構は、前記クリーニングフィルムを前記薄膜形成ガス供給部の少なくとも一部に接触させ、前記薄膜形成ガス用流路を形成する前記流路形成部材の表面まで搬送することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜17のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の前記放電ガス用電極のうち少なくとも1つの前記放電ガス用電極が、前記一対の流路形成部材のうち、1つの前記流路形成部材として機能することを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項9〜18のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の放電ガス用電極のうち、一方の前記放電ガス用電極による第1高周波電界及び他方の前記放電ガス用電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。 - 請求項1〜19のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持部材は、電極からなることを特徴とする薄膜形成装置。
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