JP4360186B2 - 薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、熱CVD、プラズマCVD等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
この大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置では、図9に示すように、互いに対向する一対の電極101,102の間に、基材103を配置させて、不活性ガスの50圧力%以上をアルゴンガスとする組成の混合ガス雰囲気下で、両電極に電界を印加すれば、放電プラズマ104が発生することになって、混合ガスは活性化し基材103上に薄膜が形成されるようになっている。ここで、少なくとも一層分の製膜が予め施された基材103に対して、再度製膜を行う場合には、予め形成された膜105の端部付近で放電集中106が発生しやすく、製膜が不安定になる可能性が高かった。そこで、一対の電極のうち、一方の電極における長さ方向のインピーダンスを異ならせて、放電集中の発生を抑制することで、製膜の安定化を図る薄膜形成装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−319427号公報
しかしながら、特許文献1に記載されるような薄膜形成装置では、電極表面の誘電体の厚さを所定の位置で段差をもって変化させたり、電極間距離を所定の位置で角度をつけて(エッジ部を有して)広げている。このような形態では、インピーダンスが長さ方向において前記所定の位置で急激に変化し、変曲点を有しているものと推定するが、製膜条件によっては、前記所定の位置で放電集中が起こる場合もあることがわかった。製膜条件においても、混合ガスの組成によって起こりやすくなり、特に混合ガス中の希ガス量が少ない場合であることもわかった。
本発明の課題は、どのような製膜条件においても、放電集中をなくし、製膜を安定化させることである。
請求項1記載の発明は、
互いに放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを第1ガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記混合ガスを活性化し、基材を前記活性化した混合ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、導電性の金属母材から形成され、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極には、前記金属母材の表面に誘電体が被覆され、
前記誘電体の厚みが、前記放電空間から、前記放電空間に連続する非放電空間までに、前記誘電体表面における基材搬送方向とは直交する方向に対して曲率を持って増加するように、形成されていることを特徴としている。
請求項1記載の発明によれば、誘電体の厚みが、放電空間から非放電空間までに、前記直交する方向に対して曲率を持って増加しているので、放電空間から非放電空間までの前記直交する方向(誘電体の長さ方向)におけるインピーダンスの変曲点は屈折せずに滑らかに湾曲することになる。したがって、変曲点部分に放電集中が生じることを防止でき、不活性ガスの50圧力%以上をアルゴンガスとする組成の混合ガスや、これ以外の混合ガスであっても製膜を安定化させることが可能となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記放電空間から前記非放電空間までの前記直交する方向における厚みの変化度合いが、前記非放電空間に向けて前記厚みが厚くなるように、0.5mmよりも大きい曲率半径で変化していることを特徴としている。
本発明者による実験によって、放電空間から非放電空間までの前記直交する方向における厚みの変化度合いが、曲率半径で0.5mm以下であると、アーク放電が発生してしまい、安定した製膜が困難であることが分かった。このため、請求項2記載の発明のように、放電空間から非放電空間までの前記直交する方向(誘電体の長さ方向)における厚みの変化度合いが、0.5mmよりも大きい曲率半径で変化していれば、アーク放電の発生を確実に防止することができる。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
前記金属母材の端部は、前記直交する方向に対して曲率を持って細くなるように形成されていて、
前記誘電体は、当該表面が前記直交する方向に対して直線状となるように、前記金属母材を被覆していることを特徴としている。
請求項3記載の発明によれば、誘電体の表面が前記直交する方向に対して直線状となるように金属母材を被覆するとともに、金属母材の端部が前記直交する方向に対して曲率を持って細くなるように形成されているので、端部付近の誘電体の厚みは中央部と比較して厚くなる。つまり、電極自体の表面は長さ方向に直線状に形成されながらも、誘電体の厚みは長さ方向に対して曲率を持って厚くでき、結果として放電空間から非放電空間までのインピーダンスを長さ方向に対して滑らかに減少させることができる。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間に高周波電界を発生させることを特徴としている。
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。さらに、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
請求項5記載の発明は、
互いに放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを第1ガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記混合ガスを活性化し、基材を前記活性化した混合ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、導電性の金属母材から形成され、
前記一対の電極のうち、少なくとの一方の電極には、前記金属母材の表面に誘電体が被覆され、
前記誘電体の厚みが、前記放電空間から、前記放電空間に連続する非放電空間までに、前記誘電体表面における基材搬送方向とは直交する方向に対して曲率を持って増加するように、形成されていることを特徴としている。
請求項5記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間から前記非放電空間までの前記誘電体の前記直交する方向における厚みの変化度合いが、前記非放電空間に向けて前記厚みが厚くなるように、0.5mmよりも大きい曲率半径で変化していることを特徴としている。
請求項6記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の薄膜形成方法において、
前記金属母材の端部は、前記直交する方向に対して曲率を持って細くなるように形成されていて、
前記誘電体は、当該表面が前記直交する方向に対して直線状となるように、前記金属母材を被覆していることを特徴としている。
請求項7記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項8記載の発明は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間に高周波電界を発生させることを特徴としている。
請求項8記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項9記載の発明は、請求項5〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
記高周波電界が、前記一対の電極のうち、一方の前記電極による第1高周波電界及び他方の前記電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
請求項9記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、放電ガスとして窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
請求項10記載の発明は、請求項5〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極のうち、一方の前記電極はロール電極であり、当該表面に前記基材を密着させて搬送することを特徴としている。
請求項10記載の発明によれば、基材がロール電極の表面に密着されて搬送されるので、活性化された混合ガスに晒されて熱影響を受けたとしても均されるため、基材に皺やツレが発生することを防止でき、高品質な薄膜の形成が可能となる。
請求項11記載の発明は、請求項10記載の薄膜形成方法において、
前記一方の電極のうち、他方の前記電極は、前記ロール電極の周面に対向するように複数配置される棒状電極であることを特徴としている。
請求項11記載の発明によれば、ロール電極の周面に対向するように棒状電極が複数は位置された薄膜形成装置であっても、請求項10記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
請求項12記載の発明は、請求項5〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記混合ガスとは異なる異種ガスを前記非放電空間中に供給する第2ガス供給部を備えることを特徴としている。
ここで、非放電空間においては放電が生じないために、第1ガス供給部からの混合ガスが進入しても活性化されずに、基材上にパーティクル(微粒子)が形成されたり、品質の異なる薄膜が形成されたりするおそれがある。このため、請求項12記載の発明のように、第2ガス供給部が異種ガスを非放電空間中に供給すれば、第1ガス供給部からの混合ガスが非放電空間中に供給されることを防止できる。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の薄膜形成方法において、
前記第2ガス供給部は、前記異種ガスとして前記薄膜形成ガスを含まない未原料ガスを前記非放電空間中に供給することを特徴としている。
請求項13記載の発明によれば、第2ガス供給部が異種ガスとして未原料ガスを非放電空間中に供給しているので、パーティクルの原因でもある薄膜形成ガス中の原料が非放電空間中に進入することを確実に防止することができる。
請求項14記載の発明は、請求項12記載の薄膜形成方法において、
前記第2ガス供給部は、前記異種ガスとして希ガスを前記非放電空間中に供給することを特徴としている。
ここで、放電空間と非放電空間との境界部分では、放電が不安定なためにプラズマ放電からアーク放電に移行しやすい。アーク放電が発生すると安定した製膜が困難となる。このことから、請求項14記載の発明のように、第2ガス供給部が異種ガスとして希ガスを非放電空間に供給すれば、安定した放電が可能となり、アーク放電への移行を防止できる。
請求項15記載の発明は、請求項12〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記第2ガス供給部は、前記異種ガスを加熱して、前記非放電空間中に供給することを特徴としている。
請求項15記載の発明によれば、第2ガス供給部が異種ガスを加熱して非放電空間中に供給しているので、非放電空間中に配置された基材は加熱されることになる。放電空間と非放電空間とでは、放電時に温度差があるために、各空間に配置された基材の熱収縮差も大きくなってしまう。熱収縮差が大きければ基材にツレが発生しやすく好ましくない。しかしながら、上記したように、非放電空間中に配置された基材は加熱されているために、放電空間中に配置された基材との温度差を抑えて、熱収縮差も小さくすることができる。したがって、基材にツレが発生することを抑制できる。
請求項16記載の発明は、請求項12〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記第2ガス供給部は、前記第1ガス供給部から供給される前記混合ガスの流速よりも高速で、前記異種ガスを供給することを特徴としている。
請求項16記載の発明によれば、第1ガス供給部から供給される混合ガスの流速よりも異種ガスの方が高速で供給されているので、より確実に放電を安定させることができる。
請求項17記載の発明は、請求項5〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記混合ガスには、窒素が50%を越えるように、前記薄膜形成ガス及び前記放電ガスが含有されていることを特徴としている。
請求項17記載の発明によれば、混合ガス中には窒素が50%含まれているので、他のガスを使用した場合よりも、比較的安価にすることができる。
本発明によれば、長さ方向におけるインピーダンスの変曲点は屈折せずに滑らかに湾曲しているために、変曲点部分に放電集中が生じることを防止でき、不活性ガスの50圧力%以上をアルゴンガスとする組成の混合ガスや、これ以外の混合ガスであっても製膜を安定化させることが可能となる。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表すの側面図である。
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示すように、シート状の基材2をその周面に密着させて搬送する支持電極10が回転自在に設けられている。
図2は支持電極10の概略構成を表す斜視図であり、図3は支持電極10の断面図である。支持電極10は、図2及び図3に示すように、導電性の金属母材11の表面に誘電体12が被覆されたロール電極であり、金属母材11は、略円柱形状の本体部111と、本体部111の両端から、本体部111よりも小さい外径で外方に向けて突出するホイール部112と、ホイール部112の両端中央から軸方向(長さ方向)に沿って延出する回転軸113とを有する形状に形成されている。本体部111及びホイール部112の端部114,115は、外方に向けて凸となる曲率を持って細くなるように形成されている。そして、金属母材11の内部、表面温度を調節するため、例えば、水やシリコンオイル等の温度調節用の媒体が循環できるように軸方向に沿う空洞116が形成されており、この空洞116には、図1に示すように、配管3を介して温度調節装置4が接続されている。
また、誘電体12は、薄膜形成装置1で使用される最大サイズの基材2を均一に密着させるために、その表面が最大サイズの基材2の軸方向の長さ(幅)よりも広範囲にわたって直線状となるように、金属母材11を被覆している。つまり、誘電体12の厚みは、金属母材11の本体部111の中央部分を覆う部分においては均一であるが、本体部111の両端部114から先端に向けて、その外形に沿って増加するようになっている。ここで誘電体12の誘電率は、その厚みに比例して変化するが、誘電率が所定値を越える厚みとなる部分においては放電が発生しないために、本体部111の中央部分を覆う誘電体12の厚みは、当該誘電体12の誘電率が所定値を越えない値に設定されている。さらに、本体部111の両端部114においては、その範囲内で誘電率が所定値を越える厚みになるように、その曲率が設定されている。
また、図1に示すように、支持電極10には、第1フィルタ17を介して第1電源18が接続されている。そして、支持電極10の周縁には、基材2を支持電極10の周面に密着させて搬送するために基材用搬送機構13と、基材2上に薄膜を形成するための複数の薄膜形成ユニット20が設けられている。
基材用搬送機構13には、基材2を支持電極10の周面に案内する第1ガイドローラ14及びニップローラ15と、前記周面に密着した基材2を剥がして、次行程まで案内する第2ガイドローラ16と、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持電極10を連動するように回転させる駆動源51(図7参照)とが設けられている。
薄膜形成ユニット20には、図1に示すように、一対の小電極21が、間隔aを空けて支持電極10の周面に対向するように配置されている。また、一対の小電極21の間には隙間bが設けられている。
図4は、小電極21を表す斜視図であり、小電極21は、導電性の金属母材211の表面に誘電体212が均一に被覆された棒状電極であり、この金属母材211の長さは、支持電極10における金属母材11の本体部111よりも長く設定されている。小電極21は内部が中空となっており、この中空部分213には、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分213に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節ができるようになっている。
そして、各薄膜形成ユニット20の小電極21には、図1に示すように、第2フィルタ22を介して第2電源23が接続されている。
図5は、ロール電極である支持電極10と小電極21との配置関係を表す断面図であり、この図5に示すように支持電極10と小電極21との間隔aのうち、誘電体12の厚みが所定値を越えない部分と対峙する空間においては放電空間Hとなり、この放電空間Hを成す小電極21及び支持電極10の対向する面をそれぞれ放電面10a,21aとする。そして、放電空間Hに連続する、放電空間H以外の空間は、放電の発生しない非放電空間となる。ここで、放電空間Hから非放電空間までの誘電体12の長さ方向における厚みの変化度合いは、非放電空間に向けて厚みが厚くなるように、0.5mmよりも大きい曲率半径に設定されている。なお、放電空間Hから非放電空間までの誘電体12の厚みの変化度合いとしては、3mm以上の曲率半径であることが好ましく、さらには10mm以上であるとより好ましい。このように、誘電体12の厚みが曲率を持って滑らか変化しているので、支持電極10と小電極21とに電界を印加した場合における間隔a内のインピーダンスは、放電空間Hから非放電空間までに、軸方向に対して曲率を持って減少することになる。
また、薄膜形成ユニット20には、一対の小電極21の隙間bに向けて複数種のガスを噴出するガス供給部24が、前記隙間bに対向するように配置されている。つまり、隙間bがガス供給部24から供給されたガスを、支持電極10上の基材2まで案内する流路となっている。
図6は、ガス供給部24を表す斜視図である。図6に示すようにガス供給部24の先端部には、各ガスを噴出する複数の噴出口241、242、243が直線状に配列されている。つまり、これらの噴出口241、242、243は、ガス供給部24が隙間bに対向するように配置された際に小電極21の軸方向に沿って配列されて隙間bを臨むことになる。
ガス供給部24の後端部には、複数のガス管244、245、246が連結されていて、これらのガス管244、245、246には、ガス管244、245、246内部を流れるガスの流量や流速、温度などを調整するガス調整部247(図7参照)を介して、それぞれ異なるガスを貯留する複数のガスタンク(図示省略)が連結されている。複数のガスタンクのうち、中央のガス管245に連結されるガスタンクには、薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスが貯蔵されている。一方、複数のガスタンクのうち、両端のガス管244,246に連結されるガスタンクには、前述の混合ガスとは異なる異種ガスが貯蔵されている。また、ガス供給部24の内部には、各ガス管244,245,246から供給されたガスが、噴出口241,242,243に到達するまでに混ざらないように、仕切板248,249が設置されている。つまり、ガス供給部24には、混合ガスを放電空間Hに供給する第1ガス供給部と、異種ガスを非放電空間に供給する第2ガス供給部とが一体化されている。ここ異種ガスの供給範囲Sは、図6に示すように、支持電極10により支持された基材2のうち、放電空間Hからはみ出た部分を覆うように設定されていることが好ましい。
また、薄膜形成ユニット20には、図1に示すように、フィルム27を小電極21に密着させながら連続的若しくは間欠的に搬送するフィルム用搬送機構30が、各小電極21に対応するように設けられている。つまり小電極21は、フィルム27に覆われることにより、放電プラズマに晒されなくなり、小電極21に対する汚れを防止できる。
また、フィルム用搬送機構30は、フィルム27をガス供給部24に接触するように搬送しているので、ガス供給部24から放電空間までの空間は、フィルム27によって仕切られることになって、ガス供給部24から供給されるガスが流路外に流れることを防止できる。
薄膜形成装置1には、図7に示すように、各駆動部を制御する制御装置50が設けられている。制御装置50には、駆動源51、記憶部52、第1電源18、第2電源23、ガス調整部247、温度調節装置4,6、フィルム用搬送機構30が電気的に接続されている。なお、制御装置50には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置50は、記憶部52中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
次に、放電ガスについて説明する。
放電ガスは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできるガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。この場合、放電ガスの50〜100体積%が窒素であることが好ましく、さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用し、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。そして、薄膜形成ガスと混合して混合ガスとする場合に、その混合ガス中の窒素が50%を越えるように、放電ガス中の窒素量を設定することがコストの面で特に好ましい。
次に薄膜形成ガスについて説明する。
薄膜形成ガスとは、薄膜の原料を含有するガスのことであり、この原料としては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
また、添加ガスを混合する場合においては、添加ガスとして、例えば、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等が挙げられるが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量はガス全量に対して0.01〜5体積%含有させることが好ましく、それによって反応促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
次に異種ガスについて説明する。
異種ガスは、上記したように非放電空間に供給されるガスであるが、非放電空間中においては放電が発生しないために、ここに薄膜形成ガスが進入していると、薄膜の原料が基材2上にパーティクル(微粒子)として付着されたり、品質の異なる薄膜が形成されたりして好ましくない。このため、異種ガスにおいては薄膜形成ガスを含有しない未原料ガスを使用することが好ましい。
さらに、放電空間Hと非放電空間との境界部分では、放電が不安定なためにプラズマ放電からアーク放電に移行しやすい。アーク放電が発生すると安定した製膜が困難となる。このことから、例えばヘリウムガスなどの、放電を安定化する希ガスを異種ガスとして使用することが好ましい。
次に、基材2について説明する。基材2としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材2が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材2の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラスとしては、例えばガラス板やレンズ等、樹脂としては、例えば樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
樹脂からなる基材2の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
また、本発明に用いられる基材2は、厚さが10〜1000μm、より好ましくは40〜200μmのフィルム状のものが使用されている。
次に、支持電極10及び小電極21を形成する金属母材11,211及び誘電体12,212について説明する。
金属母材11,211と誘電体12,212と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属母材11,211と誘電体12,212との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、(1)金属母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、(2)金属母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、(3)金属母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、(4)金属母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、(5)金属母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、(6)金属母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、(7)金属母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、(8)金属母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)および(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
そして、金属母材11,211は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属母材11,211をチタンまたはチタン合金とし、誘電体12,212を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
本発明に有用な電極の金属母材11,211は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属母材11,211としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体12,212との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
一方、誘電体12,212の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体12,212が好ましい。
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体12,212の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体12,212の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の作用について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置50は、ガス調整部247を制御して、各ガス供給部24から混合ガス及び異種ガスを噴出させて、一対の小電極21の隙間bを介して、間隔aに混合ガス及び異種ガスを供給させる。ここで、ガス調整部247は、放電を安定させるために、異種ガスを加熱し、かつ混合ガスの流速よりも高速となるように、混合ガス及び異種ガスの流量や流速、温度を調整している。
間隔aに混合ガス及び異種ガスが充満すると、制御装置50は、駆動源51を制御して、第1ガイドローラ14、第2ガイドローラ16及び支持電極10を回転させて、基材2を支持電極10の周面に密着させて搬送させるとともに、フィルム用搬送機構30を制御して、フィルム27を小電極21の表面に密着させて搬送させる。
基材2の搬送が開始されると、制御装置50は、第1電源18及び第2電源23をONにする。これにより、支持電極10には、第1電源18からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加される。一方、小電極21には第2電源23からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
そして、電流I1,I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
このように、支持電極10による第1高周波電界及び小電極21による第2高周波電界が発生されると、放電空間Hには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、放電ガスと反応し放電プラズマが発生する。
この放電プラズマによって薄膜形成ガスが活性化される。支持電極10により支持された基材2は、活性化された薄膜形成ガスに晒されることになって、基材2上には薄膜が形成されることになる。
ここで、プラズマ放電処理中の基材2の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成が変化する場合もあるので、薄膜形成中においても、温度調節装置4によって温度制御された媒体を支持電極10内に循環させて、支持電極10の表面温度を制御し、基材2の温度を適宜調節することが好ましい。ここで、温度調節装置4は、基材2が所定の性能を発揮できる温度となるように、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節している。一方、温度調節装置6においても、温度調節用の媒体を20℃〜300℃、好ましくは80℃〜100℃に温度調節する。ただし、下限温度としては、使用する放電ガスの気化条件温度を下回らないように前記媒体を温度調節しなければならない。
そして、薄膜が形成された基材2は、ガイドローラ16を介して次行程まで搬送される。
以上のように、本実施形態の薄膜形成装置1によれば、放電空間Hから非放電空間までの誘電体12の厚さが、軸方向(長さ方向)に対して曲率を持って増加しているので、長さ方向におけるインピーダンスの変曲点は屈折せずに滑らかに湾曲することになる。したがって、変曲点部分に放電集中が生じることを防止でき、不活性ガスの50圧力%以上をアルゴンガスとする組成の混合ガスや、これ以外の混合ガスであっても製膜を安定化させることが可能となる。
また、誘電体12の表面が軸方向に対して直線状となるように金属母材11を被覆するとともに、金属母材11の本体部111の両端部114が軸方向に対して曲率を持って細くなるように形成されているので、両端部114付近の誘電体12の厚みは中央部と比較して厚くなる。つまり、電極自体の表面は軸方向に直線状に形成されながらも、誘電体12の厚みは軸方向に対して曲率を持って厚くでき、結果として放電空間Hから非放電空間までの誘電体12の厚さを軸方向に対して曲率を持って増加させることができる。
また、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、放電ガスとして窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
さらに、支持電極10がロール電極であることから、その表面に密着される基材2は、活性化された混合ガスに晒されて熱影響を受けたとしても均されるため、基材2に皺やツレが発生することを防止でき、高品質な薄膜の形成が可能となる。
また、ガス供給部24が異種ガスを加熱して非放電空間中に供給しているので、非放電空間中に配置された基材2は加熱されることになる。放電空間Hと非放電空間とでは、放電時に温度差があるために、各空間に配置された基材2の熱収縮差も大きくなってしまう。熱収縮差が大きければ基材2にツレが発生しやすく好ましくない。しかしながら、上記したように、非放電空間中に配置された基材2は加熱されているために、放電空間H中に配置された基材2との温度差を抑えて、熱収縮差も小さくすることができる。したがって、基材にツレが発生することを抑制できる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、本実施形態では、支持電極10及び小電極21の間を放電空間Hにし、基材2上に薄膜を形成するダイレクトプラズマ方式について例示したが、支持電極10に支持された基材2に対して、活性化したガスを噴出することにより薄膜を形成するリモートプラズマ方式であっても適用可能である。
また、本実施形態では、支持電極10の誘電体12の厚みを、放電空間Hから非放電空間までに、軸方向に対して曲率を持って増加させているが、小電極21の誘電体212の厚みを軸方向に変化させた場合においても、これが可能である。例えば、図8に示すように、支持電極10Aの金属母材11Aは、略円柱形状の本体部111Aと、本体部111Aの両端中央から軸方向に沿って延出する回転軸113Aとを有する形状に形成されている。この金属母材11Aの本体部111Aは、誘電体12Aによって均一な厚さで被覆されている。
一方、小電極21Aは、支持電極10Aにおける金属母材11Aの本体部111Aよりも短くなるように形成されている。小電極21Aの金属母材211Aは、棒状に形成されていて、その両端部は、外方に向けて凸となる曲率を持って細くなるように形成されている。そして、金属母材211Aは、誘電体212Aによってその表面が直線状となるように被覆されているために、端部付近においては誘電体212Aの厚みは、軸方向に沿って増加するようになっている。このため、支持電極10及び小電極21に電界を印加すると、放電空間Hから非放電空間までのインピーダンスが、軸方向に対して滑らかに減少することになる。
つまり、放電空間Hから非放電空間までの誘電体の厚みを、軸方向に対して曲率を持って増加させるのであれば、互いに放電面10a,21aが対向された支持電極10及び小電極21の少なくとも一方を如何様に形成してもよい。
また、本実施形態では、支持電極10及び小電極21の間隔aの両端部に非放電空間が位置する場合を例示して説明したが、これ以外の場所に非放電空間が配置される場合においても、放電空間から非放電空間までの誘電体の厚さが、軸方向に曲率を持って増加するように、支持電極若しくは小電極21を形成することが好ましい。
さらに、本実施形態では、支持電極10及び小電極21として、金属簿材11,211に誘電体12,212が被膜された電極を例示しているが、誘電体は、支持電極及び小電極のうち、少なくとも一方の金属簿材を被覆していればよい。
本実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す側面図である。 図1の薄膜形成装置に備わる支持電極を表す斜視図である。 図2の支持電極を表す断面図である。 図1の薄膜形成装置に備わる小電極を表す斜視図である。 図2の支持電極と図4の小電極との位置関係を表す断面図である。 図1の薄膜形成装置に備わるガス供給部を表す斜視図である。 図1の薄膜形成装置の主制御部分を表すブロック図である。 図5の支持電極及び小電極の変形例を表す断面図である。 従来の薄膜形成装置に備わる支持電極と小電極との位置関係を表す断面図である。
符号の説明
1 薄膜形成装置
2 基材
10 支持電極(電極)
11 金属母材
12 誘電体
21 小電極(電極)
24 ガス供給部24(第1ガス供給部、第2ガス供給部)

Claims (17)

  1. 互いに放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを第1ガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記混合ガスを活性化し、基材を前記活性化した混合ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置において、
    前記一対の電極は、導電性の金属母材から形成され、
    前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極には、前記金属母材の表面に誘電体が被覆され、
    前記誘電体の厚みが、前記放電空間から、前記放電空間に連続する非放電空間までに、前記誘電体表面における基材搬送方向とは直交する方向に対して曲率を持って増加するように、形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 請求項1記載の薄膜形成装置において、
    前記放電空間から前記非放電空間までの前記直交する方向における厚みの変化度合いが、前記非放電空間に向けて前記厚みが厚くなるように、0.5mmよりも大きい曲率半径で変化していることを特徴とする薄膜形成装置。
  3. 請求項1又は2記載の薄膜形成装置において、
    前記金属母材の端部は、前記直交する方向に対して曲率を持って細くなるように形成されていて、
    前記誘電体は、当該表面が前記直交する方向に対して直線状となるように、前記金属母材を被覆していることを特徴とする薄膜形成装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
    前記一対の電極は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成装置。
  5. 互いに放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガス及び放電ガスを含有する混合ガスを第1ガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記混合ガスを活性化し、基材を前記活性化した混合ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
    前記一対の電極は、導電性の金属母材から形成され、
    前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極には、前記金属母材の表面に誘電体が被覆され、
    前記誘電体の厚みが、前記放電空間から、前記放電空間に連続する非放電空間までに、前記誘電体表面における基材搬送方向とは直交する方向に対して曲率を持って増加するように、形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
  6. 請求項5記載の薄膜形成方法において、
    前記放電空間から前記非放電空間までの前記直交する方向における厚みの変化度合いが、前記非放電空間に向けて前記厚みが厚くなるように、0.5mmよりも大きい曲率半径で変化していることを特徴とする薄膜形成方法。
  7. 請求項5又は6記載の薄膜形成方法において、
    前記金属母材の端部は、前記直交する方向に対して曲率を持って細くなるように形成されていて、
    前記誘電体は、当該表面が前記直交する方向に対して直線状となるように、前記金属母材を被覆していることを特徴とする薄膜形成方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記一対の電極は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成方法。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    記高周波電界が、前記一対の電極のうち、一方の前記電極による第1高周波電界及び他方の前記電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
    前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
    前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
    V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成方法。
  10. 請求項5〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記一対の電極のうち、一方の前記電極はロール電極であり、当該表面に前記基材を密着させて搬送することを特徴とする薄膜形成方法。
  11. 請求項10記載の薄膜形成方法において、
    前記一方の電極のうち、他方の前記電極は、前記ロール電極の周面に対向するように複数配置される棒状電極であることを特徴とする薄膜形成方法。
  12. 請求項5〜11のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記混合ガスとは異なる異種ガスを前記非放電空間中に供給する第2ガス供給部を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
  13. 請求項12記載の薄膜形成方法において、
    前記第2ガス供給部は、前記異種ガスとして前記薄膜形成ガスを含まない未原料ガスを前記非放電空間中に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
  14. 請求項12記載の薄膜形成方法において、
    前記第2ガス供給部は、前記異種ガスとして希ガスを前記非放電空間中に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
  15. 請求項12〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記第2供給部は、前記異種ガスを加熱して、前記非放電空間中に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
  16. 請求項12〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記第2ガス供給部は、前記第1ガス供給部から供給される前記混合ガスの流速よりも高速で、前記異種ガスを供給することを特徴とする薄膜形成方法。
  17. 請求項5〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
    前記混合ガスには、窒素が50%を越えるように、前記薄膜形成ガス及び前記放電ガスが含有されていることを特徴とする薄膜形成方法。
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