JP2007294220A - 透明導電膜を有する基材 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視領域での高い光透過性を有し、低抵抗で、かつ表面平滑性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子への適性を備えた透明導電膜を有する基材を提供する。
【解決手段】基材上に少なくとも1層の結晶化した透明導電膜を有し、該結晶化した透明導電膜の上に、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を含む塗布液をコーティングしたことを特徴とする透明導電膜を有する基材。
【選択図】図1

Description

本発明は、可視光域での光透過性に優れ、低抵抗で、かつ表面平滑性に優れた透明導電膜を有する基材に関するものである。
従来より低電気抵抗(低比抵抗値)で、高い可視光透過率の透明導電膜を有する物品、例えば、透明導電性フィルムは、液晶画像表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(以降、有機ELと略記する)画像表示装置、プラズマディスプレイパネル、電界放出型ディスプレイ等のフラットディスプレイの透明電極、太陽電池の透明電極、電子ペーパー、タッチパネル、電磁波シールド材、赤外線反射膜等多くの分野に利用されている。
特に、有機EL画像表示装置では、自発光で、かつ低消費電力であることから、液晶ディスプレイで用いられるバックライトや照明灯への適用が検討されている。しかしながら、発光面積が大きくなると、透明導電膜の抵抗値に起因する発光ムラが発生する。これを解決するためには、表面抵抗値として、30Ω/□以下、望ましくは10Ω/□以下の低抵抗な透明導電膜が必要とされる。一般に、透明導電膜の膜厚を厚くすると抵抗率は小さくなるが、その反面、可視光領域における光透過率が低下し、ディスプレイ用途として致命的な問題となる。
上記課題に対し、膜厚を厚くすることなく低抵抗化するには、例えば、錫をドープした酸化インジウム膜では、製膜する時の温度を150℃以上にすることで、結晶化が行え、低抵抗化と高い可視光透過率の両立は可能であるが、その反面、表面平滑性が劣化し、特に、有機EL素子では、電流リークという問題が発生し、使用に耐えないという課題を抱えている。
一方、透明導電膜としては、SnO2、In23、CdO、ZnO、SbドープSnO2、FドープSnO2、AlドープZnO、SnドープIn23等の酸化物またはドーパントによる複合酸化物膜がある。中でも、錫をドープした酸化インジウム(以降、ITOともいう)膜が、優れた電気特性とエッチングによる加工の容易さからもっとも広く使用されている。ITOのような透明導電膜は、主に、塗布に代表される湿式製膜法か、あるいは、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の真空製膜法によって形成されていた。真空蒸着法やスパッタリング法は、低抵抗な透明導電膜を得ることができ、工業的には、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて比抵抗値が10-4Ω・cmオーダーの優れた導電性を有するITO膜を得ることができる。
例えば、スパッタリング法により形成した金属薄膜と酸化物透明導電薄膜とを有する抵抗値の小さい積層型透明導電膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、これらの物理的製作法(PVD法)では、低抵抗品を得るためには、製膜時に200〜300℃に加熱(アニール処理)する必要があり、プラスチックフィルム上に、低抵抗の透明導電膜を形成することは困難である。例え、高価な耐熱基材を用い、製膜時の基材温度を200〜300℃にし、低抵抗を達成したとしても、表面平滑性が劣化し、有機EL等で使用するのは困難である。
また、ゾルゲル法(塗布法)は、被処理基材との接着性が低いだけでなく、得られた透明導電膜の電気特性もPVD法を用いた場合に比較すると劣っている。
また、熱CVD法は、気化した原材料あるいは原材料溶液を基材に吹きつけ、熱分解させることで膜を形成するものであり、装置が簡単で生産性に優れ、大面積の成膜が容易に行えるという利点があるが、通常、焼成時に400℃から500℃での高温処理を必要とするため使用する基材が限られてしまうという問題点を有していた。特に、プラスチックフィルム基材への成膜は困難であった。また製膜時の基材温度が高い為、表面平滑性が劣化し、有機EL等で使用するのは困難である。
本発明者等は、WO02/48428号や特開2004−68143号公報等により、大気圧プラズマ法を用いることで低抵抗化と高い可視光透過率の両立できることを提案した。しかしながら、更に高い表面平滑性が求められている。
一方、基板上に透明導電膜を形成する場合の高温での熱処理を不要とし、耐熱性の低いプラスチック基板にも形成でき、しかも簡易・迅速にオンデマンドのパターニングが可能な透明導電膜の製造方法として、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を、インクジェット法により基板に吐出させ、焼成して透明導電膜を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、コロイド分散物のナノ粒子サイズは重要な因子であり、通常導電性をコロイド分散物のコーティング膜だけで導電性を高めるには、粒子サイズは20nm以上必要となるが、この場合、表面平滑性が損なわれる。一方、表面平滑性が必要な場合は5nm以下の粒子サイズが必要となるが、この場合には、導電性が損なわれるため、両立する条件は困難である。
特開2005−93441号公報 特開2004−55363号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、可視領域での高い光透過性を有し、低抵抗で、かつ表面平滑性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子への適性を備えた透明導電膜を有する基材を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.基材上に少なくとも1層の結晶化した透明導電膜を有し、該結晶化した透明導電膜の上に、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を含む塗布液をコーティングしたことを特徴とする透明導電膜を有する基材。
2.前記結晶化した透明導電膜を構成する金属元素と、前記コロイド分散物が含有する前記金属化合物を構成する金属元素とが、同一であることを特徴とする前記1に記載の透明導電膜を有する基材。
3.前記ナノ粒子の平均粒子径は、0.3nm以上、5nm以下であることを特徴とする前記1または2に記載の透明導電膜を有する基材。
4.前記基材が、樹脂基材であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
5.前記樹脂基材が、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された25±0.5℃、90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10-4g/(m2・24h)以下であることを特徴とする前記4に記載の透明導電膜を有する基材。
6.前記ナノ粒子を構成する金属化合物の金属元素が、In、Ga、Al、Sn、Ge、Sb、Bi及びZnから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
7.前記結晶化した透明導電膜上に、前記コロイド分散物を含む塗布液をコーティングした後、該コーティングした表面が、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間にガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該ガスを励起ガスとし、該励起ガスに該コーティングした表面を晒すプラズマ処理が施されていることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
本発明により、可視領域での高い光透過性を有し、低抵抗で、かつ表面平滑性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子への適性を備えた透明導電膜を有する基材を提供することができた。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に少なくとも1層の結晶化した透明導電膜を有し、該結晶化した透明導電膜の上に、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を含む塗布液をコーティングしたことを特徴とする透明導電膜を有する基材により、可視領域での高い光透過性を有し、低抵抗で、かつ表面平滑性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子への適性を備えた透明導電膜を有する基材を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
以下、本発明の詳細について説明する。
《結晶化された透明導電膜》
本発明に係る透明導電膜としては、SnO2、In23、CdO、ZnO2、SnO2:Sb、SnO2:F、ZnO:AL、In23:Sn等の酸化物及びドーパントによる複合酸化物膜等が挙げられるが、本発明においては、透明導電膜の組成がITO(In23:Sn)、ZnO、IZO(In23:ZnO)またはFTO(F:In23)であることが好ましく、より好ましくはITO(In23:Sn)である。
また、本発明に係る透明導電膜としては、表面抵抗値が30Ω/□以下で、かつ波長が400nm以上、700nm以下の領域における平均光透過率が90%以上であることが好ましい。
本発明の透明導電膜を有する基材において、基材上に結晶化した透明導電膜を形成する方法としては、大別して、以下の2つの形成方法を挙げることができる。
〔結晶化された透明導電膜の形成方法1〕
本発明で用いる透明導電膜としては、ITO及びIZO等であり、その形成方法の一つとして、金属または酸化物ターゲットを用いる反応性スパッタ装置で直流マグネトロンスパッタリング装置や高周波マグネトロンスパッタリング装置及び直流に高周波のRFを重畳したマグネトロンスパッタリング装置を用いることができる。また、ターゲット同士を対向させる対向ターゲットスパッタも可能である。更に、酸化物ターゲットを陽極として配置し、それにプラズマビームを供給し、材料蒸発源を蒸発させることによる反応性蒸着法でも可能であり、またガスプラズマを利用して、蒸発粒子の一部をイオンもしくは励起粒子とし、活性化して蒸着するイオンプレーティング法も用いることができる。
図1は、本発明に係る透明導電膜の成膜装置の全体構造を概略的に説明する図である。
この成膜装置は、成膜室である真空容器110と、真空容器110中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン130と、真空容器110内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材150と、成膜の対象である基板Wを保持する基板保持部材WHを陽極部材150の上方で適宜移動させる搬送機構160とを備える。
プラズマガン130は、特開平9−194232号公報等に開示の圧力勾配型のプラズマガンであり、その本体部分は、真空容器110の側壁に設けられた筒状部112に装着されている。この本体部分は、陰極131によって一端が閉塞されたガラス管132からなる。ガラス管132内には、モリブデンMoで形成された円筒133が陰極131に固定されて同心に配置されており、この円筒133内には、LaB6で形成された円盤134とタンタルTaで形成されたパイプ135とが内蔵されている。ガラス管132の両端部のうち陰極131とは反対側の端部と、真空容器110に設けた筒状部112の端部との間には、第1及び第2中間電極141、142が同心で直列に配置されている。一方の第1中間電極141内には、プラズマビームPBを収束するための環状永久磁石144が内蔵されている。第2中間電極142内にも、プラズマビームPBを収束するための電磁石コイル145が内蔵されている。なお、筒状部112の周囲には、陰極131側で発生して第1及び第2中間電極141、142まで引き出されたプラズマビームPBを真空容器110内に導くステアリングコイル147が設けられている。
プラズマガン130の動作は、図示を省略するガン駆動装置によって制御されている。これにより、陰極131への給電をオン・オフしたりこれへの供給電圧等を調整することができ、さらに第1及び第2中間電極141、142、電磁石コイル145、及びステアリングコイル147への給電を調整することができる。つまり、真空容器110中に供給されるプラズマビームPBの強度や分布状態を制御することができるようになる。
なお、プラズマガン130の最も内心側に配置されるパイプ135は、プラズマビームPBのもととなる、Ar等の不活性ガスからなるキャリアガスをプラズマガン130ひいては真空容器110中に導入するためものであり、流量計193及び流量調節弁194を介して不活性ガス源190に接続されている。
真空容器110中の下部に配置された陽極部材150は、プラズマビームPBを下方に導く主陽極であるハース151と、その周囲に配置された環状の補助陽極152とからなる。
前者のハース151は、導電材料で形成されるとともに、接地された真空容器110に図示を省略する絶縁物を介して支持されている。このハース151は、陽極電源装置180によって適当な正電位に制御されており、プラズマガン130から出射したプラズマビームPBを下方に吸引する。なお、ハース151は、プラズマガン130からのプラズマビームPBが入射する中央部に、材料蒸発源である棒状の材料ロッド153が装填される貫通孔151aを有している。この材料ロッド153は、膜材料として、主成分であるZnOの粉末と3族元素の酸化物Al23とを混合した粉末を焼結して固めたものであり、プラズマビームPBからの電流によって加熱されて昇華し、基板上に亜鉛酸化物を主成分とする透明導電膜を形成するための材料蒸気を発生する。真空容器110下部に設けた材料供給装置158は、材料ロッド153を次々にハース151の貫通孔151aに装填するとともに、装填した材料ロッド153を徐々に上昇させる構造を有しており、材料ロッド153の上端が蒸発して消耗しても、この上端をハース151の凹部から常に一定量だけ突出させることができる。
後者の補助陽極152は、ハース151の周囲にこれと同心に配置された環状の容器により構成されている。この環状容器内には、フェライト等で形成された環状の永久磁石155と、これと同心に積層されたコイル156とが収納されている。これら永久磁石155及びコイル156は、磁場制御部材であり、ハース151の直上方にカスプ状磁場を形成する。これにより、ハース151に入射するプラズマビームPBの向き等を修正することができる。
補助陽極152内のコイル156は電磁石を構成し、陽極電源装置80から給電されて、永久磁石155により発生する中心側の磁界と同じ向きになるような付加的磁界を形成する。つまり、コイル156に供給する電流を変化させることで、ハース151に入射するプラズマビームPBの向きの微調整が可能になる。
補助陽極152の容器も、ハース151と同様に導電性材料で形成される。この補助陽極152は、ハース151に対して図示を省略する絶縁物を介して取り付けられている。陽極電源装置80から補助陽極152に印加する電圧変化させることによってハース151の上方の電界を補的に制御できる。すなわち、補助陽極152の電位をハース151と同じにすると、プラズマビームPBもこれに引き寄せられてハース151へのプラズマビームPBの供給が減少する。一方、補助陽極152の電位を真空容器110と同じ程度に下げると、プラズマビームPBがハース151に引き寄せられて材料ロッド153が加熱される。
搬送機構160は、基板保持手段として機能し、搬送路161内に水平方向に等間隔で配列されて基板保持部材WHの縁部を支持する複数のコロ162と、これらのコロ162を適当な速度で回転させて基板保持部材WHを一定速度で水平方向に移動させる駆動装置(図示を省略)とを備える。
酸素ガス供給装置171は、真空容器110に適当なタイミングで適当な量の酸素ガスを雰囲気ガスとして供給するためのガス供給手段である。酸素ガスを収容する酸素ガス源171aからの供給ラインは、流量調節弁171b及び流量計171cを介して真空容器110に接続されている。
窒素ガス供給装置172は、真空容器110に適当なタイミングで適当な量の窒素ガスを雰囲気ガスとして供給するためのガス供給手段である。窒素ガスを収容する窒素ガス源172aからの供給ラインは、流量調節弁172b及び流量計172cを介して真空容器110に接続されている。
不活性ガス供給装置173は、Ar等の不活性ガスからなる雰囲気ガスを真空容器110に適当なタイミングで適当量供給するためのものである。不活性ガス源190から分岐された雰囲気ガスは、ガス供給装置173の流量調節弁173b及び流量計173cを介して真空容器110に直接導入される。
なお、排気装置176は、排気ポンプ176bにより、真空ゲート176aを介して真空容器110内のガスを適宜排気する。また、真空圧測定器177は、真空容器110内の酸素ガス、Arガス等の分圧を計測することができ、この計測結果は、圧制御装置178によって監視されている。圧制御装置178は、真空圧測定器177の計測結果に基づいて、酸素ガス供給装置171、窒素ガス供給装置172、不活性ガス供給装置173、及び排気装置176の動作を制御して、真空容器110内の酸素ガス、窒素ガス、Arガス等の分圧を目標値に制御する。
以下、図1に示す成膜装置の動作について説明する。
この成膜装置による透明導電膜成膜時には、プラズマガン130の陰極131と真空容器110内のハース151との間で放電を生じさせ、これによりプラズマビームPBを生成する。このプラズマビームPBは、ステアリングコイル147と補助陽極152内の永久磁石155等とにより決定される磁界に案内されてハース151に到達する。ハース151の材料ロッド153は、プラズマビームPBからの電流により加熱され、材料ロッド153が昇華してここから膜材料の蒸気が出射する。この蒸気は、プラズマビームPBによりイオン化され、ハース151の電位に相当するエネルギーを持って基板Wの表面に付着して被膜を形成する。
また上記方法によれば、ビーム修正用の磁場制御部材である永久磁石155やコイル156によってハース151上方の磁場を調整することができるので、材料ロッド153から蒸発した蒸発粒子の飛行方向を制御することができ、ハース151上方におけるプラズマの活性度分布や基板W上の反応性分布に合せて基板W上の成膜速度分布を調整でき、広い面積にわたって均一な膜質の薄膜を得ることができる。この点についてより具体的に説明すると、上述した基板W上の反応性とは、金属蒸気が基板に到達後、酸素元素と反応して酸化物膜を生成する際の基板上での酸化反応の進行し易さを意味する。この反応性は、基板温度などの他に、酸素や金属元素の活性状態を左右するプラズマの活性度にも影響されると考えられる。例えば、プラズマの活性度が低く反応性が低くなりがちな基板Wの端部分などで成膜成長速度が遅くなるような成膜速度分布を採用すると、基板Wの端部分では反応性の低さを補うように時間をかけて酸素を十分に取り込んだ成膜が可能になる。つまり、基板Wの全体に亘って酸素の含有量がバランスしての膜質分布を均一にさせることができる。
図2は、本発明に有用なプラズマガンを用いたイオンプレーティング法(圧力勾配型プラズマガンを使用する活性化反応蒸着法)の装置概略図である。
図2に示す成膜装置は、真空チャンバー203と、真空チャンバー203の側壁に取り付けられた圧力勾配型プラズマガン204と、真空チャンバー203内の底部に配置したルツボ205と、真空チャンバー203内の上部に配置した基板支持ホルダー206によって構成されている。ルツボ205は、カーボン製のものを使用することが望ましい。
圧力勾配型プラズマガン204には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いることが望ましい。圧力勾配型プラズマガン204は、Ta製のパイプ207とLaB6製の円盤208とで構成された複合陰極であり、Ta製のパイプ207の内部にArガス18を導入した際に加熱されたTa、LaB6から熱電子が放出され、プラズマビーム209を形成する。圧力勾配型プラズマガン204の内部は、真空チャンバー203より常に圧力が高く保たれており、高温に曝されたTaやLaB6が酸素などの反応性ガスによって劣化することを防ぐ構造になっている。
基板支持ホルダー206は、モーターにより回転する機構になっている。また、基板支ホルダー206の上部には、基板加熱用ヒーター210と温度計211が配置されている。基板加熱用ヒーター210は、成膜する基板202を所定温度に保持するために設けられるもので、温度計211の測定値をもとに基板加熱ヒーター210の出力を制御している。また、真空チャンバー203の側壁にはガス供給ノズル212が配置されており、このガス供給ノズル212には、マスフローコントローラを介して酸素ガス213が必要に応じて供給される。また、真空チャンバー203はコンダクタンスバルブ214を介して真空排気装置215に接続されており、真空チャンバー203に取り付けられた真空計216の測定値をもとに、コンダクタンスバルブ214の開度を調整して真空チャンバー3内が所定の圧力(真空度)に維持されるようになっている。
図2に示す成膜装置を用いて、次の手順で本発明に係るITO透明導電膜201を成膜することができる。
カーボンで製造されたルツボ205に、粒状のITO原料217を充填し、このルツボ205を真空チャンバー203の底部にセットする。ITO蒸発原料217は、ルツボに入れるため粒状であることが好ましいが、その形状を特に限定するものではない。
ITO透明導電膜を成膜する基板202は基板支持ホルダー206に取り付け、真空チャンバー203内を約2×10-4Paに排気する。この際、基板202を所定の温度に加熱して、表面に吸着したガスや内部から放出されるガスを除去する。排気後、マスフローコントローラーを用いて流量を制御(10〜40sccm)した放電用Arガス218を、圧力勾配型プラズマガン204を通して真空チャンバー203内に供給する。
次に、酸素ガス213をガス供給ノズル212から真空チャンバー203内に所定量供給するとともに、真空排気装置215と真空チャンバー203との間に配置されたコンダクタンスバルブ214の開口の程度を調整して、真空チャンバー203内を所定の圧力に調整する。酸素ガスの流量は、成膜速度、圧力勾配型プラズマガン204の出力、真空度、基板の温度、および放電圧力によって最適値を選ぶ。
次に、圧力勾配型プラズマガン204を作動させ、プラズマビーム209をルツボ205内のITO蒸発原料217に収束させ、原料が蒸発する温度に蒸発原料217を加熱する。プラズマビーム209をルツボ205中の蒸発原料217に集束させるために、集束コイル219や磁石220などを使用する。
プラズマビーム209によって加熱・蒸発したITO原料217と導入された酸素ガス213は、プラズマ雰囲気221によってイオン化される。イオン化したこれらの物質は、雰囲気中のプラズマのもつプラズマポテンシャルと、基板202のもつフローティングポテンシャルとの電位差によって基板202に向かって加速され、粒子は約20eVという大きなエネルギーをもって基板202の下表面に到達・堆積し、低抵抗で緻密な本発明のITO透明導電膜201が成膜される。
図3は、本発明に有用なスパッタ装置を示す概略図である。
図3の対向ターゲット式スパッタ装置としての特徴は、真空容器302内に間隔をおいて平行に対向配置された一対のターゲット301、301aと、これらターゲット301、301aのスパッタ面に対して垂直な方向に磁界を発生させる磁界発生手段310、310aと、前記ターゲット301、301aにより形成される空間305に面するようにターゲット301、301aの一側方に設けられ、且つ、表面に薄膜が被着される基板313を装着した基板ホルダー314とを備える対向ターゲット式スパッタ装置において、前記ターゲット301、301aの他側方には、前記空間305に面して該磁界空間5を略完全に遮蔽するように配置された補助ターゲット322と該補助ターゲット322のスパッタ面側にこれと間隔を保って設けられた網目状のグリッド電極323とを備えた補助スパッタ電極手段320が設けられている。
また、スパッタ方法としての特徴は、真空容器302内に間隔をおいて平行に対向配置された一対のターゲット301、301aをスパッタし、該ターゲット301、301aから飛散するスパッタ粒子を、ターゲット301、301aの一側方に配置された基板313の表面に被着させるスパッタ方法において、前記ターゲット301、301aの他側方に陰極の電圧が印加される補助ターゲット322とグリッド電極323とをを配置し、該補助ターゲット322をスパッタすることにより、該補助ターゲット322から飛散するスパッタ粒子と共に、グリッド電極323を透過して該補助ターゲット322に到達した前記ターゲット301、301aのスパッタ粒子を、再スパッタして前記基板313表面に被着させることにある。
この対向ターゲット式スパッタ装置及びスパッタ方法において、ターゲット301、301aがスパッタされると、該ターゲット301、301aよりスパッタ粒子が放出され、その一部は基板313方向に飛散して基板313表面に被着する。
一方、基板313と反対方向に飛散する粒子は、グリッド電極323を透過して補助ターゲット322に到達するが、該補助ターゲット322においてもスパッタされることから、補助ターゲット322の粒子と共に、基板313に到達した前記スパッタ粒子は基板313方向に飛散され該基板313に被着し、薄膜が形成される。
図4は、本発明に有用な透明導電膜製造装置の一つであるマグネトロンスパッタ装置の構成例を示す断面図である。
図4のマグネトロンスパッタ装置は、真空槽401からなり、この真空槽には、図示していないが、真空排気システム、基板搬送・搬出手段、スパッタガス供給源等が連通して設けられている。この真空槽401には、槽内に固定配置又は運動自在に配置された基板ホルダー402に支持される基板403と対向して、カソードとして機能するバッキングプレート404が設けられている。基板ホルダー402の背面には、図示していないが、基板温度を制御するためのヒータ等の加熱手段が設けられている。上記カソード404の基板側にはターゲット405が固定されており、また、カソード404の基板側と反対側には水路406が設けられ、カソードを水冷できるように構成されている。カソード404の背面には磁気回路407が設けられ、この磁気回路は、ポールピース407aに支持された永久磁石407bから構成され、カソードカバー408によって覆われている。この磁気回路407を構成する磁石407bは、マグネトロン放電における平行磁界を発生させるためのものであり、ターゲット405の表面の漏れ磁場が600G以上となるような平行磁界強度を有し、磁石407bとターゲット405との距離を変化させることにより調整される。
真空槽401にはまた、プラズマ放電用電源として、カソード404(ターゲット405)には直流電界を印加するための直流電源409及びこの直流電界に重畳できるように高周波電界を印加するための13.56MHz以上の高周波電源410が接続されている。この直流電源409は、高周波電界の流入を防ぐためのLCフィルタ411を介して、また、高周波電源410は、マッチングボックス412、LCフィルター411を介して、カソードカバー408ひいてはカソード404に接続されている。この場合、直流電源409のみで放電させたときに350V以下となるように、また、13.56MHz以上、好ましくは13.56〜40MHzの高周波電源を直流電源と重畳させることで250V以下になるように構成する。
上記したように構成した本発明の装置を用いて成膜すれば、基板/ターゲットの大型化、高速成膜の要求に伴って投入パワーを増加しても、透明導電膜用ターゲットを用いて、直流電界による放電に高周波電界を電力を変えて重畳印加してスパッタした場合、スパッタ電圧の低圧化が可能となり、異常放電を発生することなく、低抵抗の透明導電膜を作製することができる。
上記透明導電膜製造装置に配置したターゲットは、In−O、Sn−O、Zn−O、Cd−Sn−O、若しくはCd−In−Oを基本構成元素としてなる、又はこの基本元素にSn、Al、Zn、B及びSbから選ばれた少なくとも一種類のドナー元素を組み合わせてなる酸化物ターゲットである。このターゲットは酸化物の焼結体ターゲットでもよい。
本発明に係る透明導電膜の製造方法は、上記ターゲットを用いて、反応性スパッタ法により、真空槽401内に設けたターゲット405に対向して載置された基板403上に、磁気回路407でターゲット表面の漏れ磁場が600G以上の値の磁場強度を有するようにして、また、ターゲットに直流電界を印加するための直流電源409及びこの直流電界に重畳できるように高周波電界を印加するための13.56MHz以上の高周波電源410により、直流電源のみで放電させたときに350V以下となるようにかつ高周波電源を直流電源と重畳させることで250V以下になるようにして、さらに、上記重畳印加を高周波電源410を100Hzから300Hz未満までの逆数の周期で10%未満OFF状態としたパルス化に重畳して行って、In−O、Sn−O、Zn−O、Cd−Sn−O、又はCd−In−Oを基本構成元素としてなる、又はこの基本構成元素にSn、Al、Zn、B及びSbから選ばれた少なくとも一種類のドナー元素を組み合わせてなる酸化物透明導電膜を製造するものである。
上記何れの製法においても、ITOの場合は、基材の温度を150℃以上とするこで、透明導電膜の結晶化が行え、低抵抗化が達成される。
〔結晶化された透明導電膜の形成方法2〕
本発明に係る結晶化された透明導電膜の形成に用いることのできる他の形成方法(形成方法2)としては、大気圧プラズマ法を挙げることができる。
以下、大気圧プラズマ法による透明導電膜の形成方法について説明する。
本発明において、大気圧プラズマ処理とは、大気圧または大気圧近傍の圧力下、対向する電極間にガスを供給し、前記電極間に高周波電界を発生させることによって前記ガスを励起ガスとし、前記励起ガスに、本発明に係る透明導電膜の形成材料を含有する液体を晒す処理のことである。これにより前記液体が活性化し、基材上で薄膜が形成される。
大気圧プラズマ処理に用いられる電極、電極間に供給されるガス、高周波電界の発生のさせ方等については、WO02/48428号や特開2004−68143号公報に記載のものを用いることができる。大気圧もしくはその近傍の圧力下の圧力とは、20〜110kPa程度であり、93〜104kPaが好ましい。
電極としては、金属母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。少なくとも対向する印加電極とアース電極の片側に誘電体を被覆すること、さらに好ましくは、対向する印加電極とアース電極の両方に誘電体を被覆することである。誘電体としては、比誘電率が6〜45の無機物であることが好ましく、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。
本発明において、電極間に供給するガスは、少なくとも放電ガスを含有する。放電ガスとは、電圧を印加することにより放電を起こすことのできるガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本発明において、放電ガスとして好ましいのは窒素である。放電ガスの50〜100体積%が窒素ガスであることが好ましい。このとき、放電ガスとして窒素以外の放電ガスとしては、希ガスを50体積%未満含有することが好ましい。また、放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
電極間に供給するガスは、上記放電ガス以外に、薄膜形成の反応を促進する添加ガスを含有してもよい。添加ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることができるが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量はガス全量に対して0.01〜5体積%含有させることが好ましく、それによって反応促進され、かつ、緻密で良質な薄膜を形成することができる。
電極間に供給するガスは、電圧を印加されることによって、それ自体は活性化して励起ガスとなる。そして、本発明に係る薄膜形成材料を含有する液体が、前記励起ガスに晒されると、前記液体は基材上で薄膜を形成できうる状態に変化すると推定される。
電極間に発生させる高周波電界は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。高周波電界の周波数は、好ましくは100〜150MHzである。
また、電極間に供給する電力密度は、好ましくは1.0W/cm2以上であり、上限値としては、好ましくは50W/cm2以下、さらに好ましくは20W/cm2以下である。
なお、電極間に供給するガスが放電ガスとして窒素を含有する場合は、大きい放電開始電界強度が必要となるため、2種類の高周波電界を重畳することが好ましい。このようにすることによって、放電ガスが窒素であっても、高密度なプラズマの発生が達成でき、良質な薄膜が得られ、高速に製膜でき、さらには、安価、かつ安全に運転でき、環境負荷の低減も達成できる。2種類の高周波電界は、以下の関係を満たすことで、安定な放電状態を維持することができる。
すなわち、第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たすことである。
ここで、第1の高周波電界の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることがでできる。下限は1kHz程度が望ましい。一方、第2の高周波電界の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2の高周波電界の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な薄膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
このように電極間に発生させた電界中に、基材に付与した薄膜形成材料を含有する液体もしくは基材に付与する前の前記液体を晒し、活性化して、基材上で薄膜化させる。
本発明に係る大気圧プラズマ装置の具体的内容については、後で述べる。
(透明導電膜形成材料を含有する液体)
本発明に適用できる透明導電膜形成材料としては、金属原子含有化合物が好ましい。金属原子含有化合物としては、金属塩、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることができる。
有機金属化合物としては、下記の一般式(I)で示すものが挙げられる。
一般式(I)
1 xMR2 y3 z
上記一般式(I)において、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。R2のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は18以下が好ましい。また直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。有機金属化合物の中では、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有するものが好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
本発明においては、透明導電膜形成材料としては、金属塩が最も好ましい。金属塩の中では、硝酸塩が好ましい。硝酸塩は高純度品が入手しやすく、また使用時の媒体として好ましい水に対する溶解度が高い。
本発明に係る透明導電膜の形成においては、透明導電膜の構成材料として錫をドープした酸化インジウム(ITO)を含有し、かつ銀元素を含有することが好ましい。この様な組成からなる透明導電膜形成において、透明導電膜形成材料としては、硝酸塩を用いることが好ましく、硝酸インジウム、硝酸錫及び硝酸銀を用いることが好ましい。また、その他の透明導電膜形成材料としては、硝酸亜鉛、硝酸ガリウム等が挙げられる。
本発明において、透明導電膜形成材料は、媒体としての液体に溶解または分散させて存在させるが、その中でも、溶解させる方法が好ましい。媒体としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒、水及びこれらの混合溶媒が使用できる。媒体としては水が好ましい。
本発明において、透明導電膜形成材料を含有する液体は、基材上に付与され、もしくは直接に電極間の電界中に供給される。
基材上に付与する場合は、ディッピング等の塗布方式により塗布膜として付与、もしくは噴霧等により液滴として付与するが、液滴として付与することが好ましい。また、直接電界中に供給する場合は、液滴として供給する。プラズマ反応性、生産性の観点から、液滴の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μm以下である。液滴の平均粒径の測定方法は、液滴群にレーザー光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから粒度分布を算出する方法が簡便であり、東日コンピュータアプリケーションズ株式会社のLDSA−1500A等が利用できる。
好ましい液滴の形成方法について以下に述べる。
図5は、透明導電膜形成材料を含有する液体を、基材上または直接に電極間の電界中に供給するのに好ましく用いられる液滴発生器システムの概略構成を示す図である。
液滴発生器システム512は、薄膜形成材料を含有する液体を貯留する原料貯留部、即ち加圧リザーバ514、質量流量制御装置515、及び液滴発生器516、加速システム518、電荷中和システム521より構成される。
ガスシステム572は、加圧ガス、好ましくは乾燥窒素または他の不活性ガスをライン534を介して加圧リザーバ514に、薄膜形成材料を含有する液体を加圧リザーバ514から質量流量制御装置515に圧送するのに十分な圧力で提供する。加圧リザーバ514は、バルブ541を開放することにより加圧される。加圧された加圧リザーバ514をライン535を介して質量流量制御装置515に連結し、質量流量制御装置515をライン536を介して液滴発生器516に連結する。この質量流量制御装置515は、液滴発生器516への薄膜形成材料を含有する液体の流れを約0.05〜1cm3/分まで制御できる。薄膜材料を含有する液体は、入口チューブ536を通って液滴発生器516に移動する。随意には、戻しチューブ537が、液滴状にならなかった、あるいは凝集した薄膜形成材料を含有する液体を液滴発生器516から加圧リザーバ514に戻す。本発明の好ましい実施例では、液滴状にならなかった凝集した薄膜形成材料を含有する液体の量は比較的少なく、即ち薄膜材料を含有する液体全体の約20%またはそれ以下であり、かくして凝集物は再使用されるのでなく、付着後に液滴発生器516をパージすることによって簡単に処分される。これにより、薄膜材料を含有する液体の粘度の増大といった潜在的問題をなくす。次いで、バルブ539及び540を開放し、加圧ガスをガスライン542を通して流し、液滴発生器516に送る。ライン542内のガス圧は、所定の圧力に自動的に調節される。好ましくは、この圧力は、2.76×105〜5.52×105Paであり、さらに好ましくは4.14×105Paである。好ましくは、ガスは、乾燥窒素等の不活性ガスと、容易にイオン化されるガス、好ましくは酸素または二酸化炭素、最も好ましくは酸素との混合物である。酸素を加え、液滴の電荷を高める。酸素は容易にイオン化し、ガス粒子が室温のガス中で連続的に衝突するため、電荷を液体液滴液滴に伝達するのを助ける。好ましくは、ガス中の酸素は1〜15容量%であり、最も好ましくは5〜10容量%である。好ましい実施例のプロセスでは、95%乾燥窒素及び5%酸素を使用した。
次に、バルブ547を開放し、液滴発生器516で発生された液滴を導管549を介して大気圧プラズマ処理装置のチャンバ520内の基材上へ供給することができる。
以下、さらに詳細に説明する。電圧を加えて液滴に電気フィルタを掛けるか、あるいは液滴を帯電させるためのいずれかを行うため、またはこの両方を行うことができる。液滴発生器システム512に加えられる電圧は、電力発生器559によって所定電圧に自動制御される。同様に、帯電させた粒子を、電源564から電気ケーブル566を介して加えられた電圧によって、大気圧プラズマ処理装置のチャンバ520内で加速する。加速電圧は、電源564を介して自動制御される。随意であるが、電荷中和器システム521が、基板に付着する液滴粒子とは逆の電荷に帯電させた粒子を発生する。電荷中和器システム、イオン化粒子源569を含む。供給バルブ555Aを開放した後、ガスシステム555のバルブ555Bをコンピューター制御し、イオン化粒子源569及びガスライン556を通るガス流を発生し、イオン化粒子をチャンバ内に導入し、このチャンバでイオン化粒子を基板に差し向ける。またガスシステム555を使用して乾燥窒素を基板の下側に差し向け、薄膜材料を含有する液体が基板の下側に付着しないようにしてもよい。ガスシステム555は、さらに、追加の乾燥窒素または他の不活性ガスをチャンバ520にガスライン556を介して入れるように制御できる。これは、圧力を所望のレベルに維持するのに必要な場合に行われる。液滴の装入を補助するために必要である場合には、追加の酸素または二酸化炭素を加えることもできる。
以上のように液滴を生成することで、図6に示す非常に粒径の小さい微粒子の液滴を生成することができる。
図6は、液滴の粒度分布の一例を示すグラフであり、図6の(A)は従来型の噴霧器を用いた場合の液滴の粒度分布で、図6の(B)は図5に示す液滴発生器システムを用いた場合の液滴の粒度分布である。
(大気圧プラズマ処理装置)
次に、本発明に係る結晶化された透明導電膜の形成に用いられる大気圧プラズマ処理装置について、図7〜図10を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、これらに限られるものではない。
本発明においては、1)透明導電膜を、薄膜形成材料を含有する液体を基材上にコーティングした後、大気圧プラズマ処理して薄膜を形成する薄膜形成方法により形成されたものであって、該大気圧プラズマ処理が、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間にガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該ガスを励起ガスとし、該励起ガスに該液体を晒す処理、また、2)透明導電膜を、薄膜形成材料を含有する液体を大気圧プラズマ処理し、該大気圧プラズマ処理した液体を基材上に付与して薄膜を形成する薄膜形成方法により形成されたものであって、該大気圧プラズマ処理が、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間にガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該ガスを励起ガスとし、該励起ガスに該液体を晒す処理であることを特徴とする薄膜形成方法により透明導電膜を形成することにより、優れた表面抵抗値及び平均光透過率を有し、低抵抗で、かつ大面積の有機EL素子への適性を備えた透明導電膜を得ることができる。
更に、大気圧プラズマ処理を用いた透明導電膜の形成においては、薄膜形成材料として金属原子含有化合物を用いること、更に金属原子含有化合物が硝酸塩であること、液体が水を含有すること、励起させるガスが、窒素と、少なくとも酸素または水素とを含有すること、液体を液滴として基材上に付与すること、液滴の平均粒径を5μm以下、より好ましくは1μm以下とすることにより、本発明の目的効果をより奏することができる。
以下、薄膜形成材料を含有する液体の付与装置及び大気圧プラズマ処理装置について説明する。
図7は、薄膜形成材料を含有する液体を液滴として基材上に付与もしくは電極間に供給する手段として用いることのできる超音波噴霧器の概略図である。これにより微小液滴(液滴)を形成することができる。図7中、701は超音波噴霧器、711は窒素ガスを導入する導入管、712は液滴原料としての薄膜形成材料を含有する液体Lを貯留する原料貯留部、713は超音波発生部、714は超音波発生部713に接続された電源、715は発生した液滴を放出する放出管である。導入管711から原料貯留部712に窒素ガスを導入し、かつ、電源714をONすることにより超音波発生部713から超音波を発生させると、液滴が発生する。このようにして発生した液滴は、放出管715を通って超音波噴霧器1外へ放出され、図示しない大気圧プラズマ装置の適宜の場所において液滴が噴霧されることになる。
図8は、超音波噴霧器を備えた枚葉式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。
図8中、801は図7と同様の超音波噴霧器である。超音波噴霧器801から下部方向に噴霧された液滴は、噴霧空間Aで基材S上に付与されることになる。821は固定された第1電極、822は基材Sを支持し、図中白矢の方向に反復運動することが可能な第2電極である。第1電極21と第2電極822とは所定のギャップを有して対向して設けられ、このギャップが放電空間Dを構成する。第1電極821と第2電極822は、それぞれ負荷であるフィルタ827Aまたは827Bと、さらにマッチングボックス826Aまたは826Bと、さらに高周波電源825Aまたは825Bと接続され、接地されている。フィルタは、異なる2種類の高周波電界を前記放電空間で重畳するため、互いの電源に互いの高周波が影響を与えないために挿入するものである。また、マッチングボックスは、高周波電源のエネルギーを有効に利用するため、負荷の持つリアクタンス成分をキャンセルし、インピーダンスを補正するために挿入している。
高周波電源825Aにより発生させる第1の高周波電界及び高周波電源825Bにより発生させる第2の高周波電界は、次の関係を満たす。第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、かつ、前記第1の高周波電界の強さV1、前記第2の高周波電界の強さV2及び放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たす。前述したように、この関係を満たす2種類の高周波電界を重畳することで、放電開始電界強度が大きい窒素等のガスを用いた場合でも、安定して高密度な放電状態を達成することができ、質の高い製膜を行うことができる。
例えば、第1の高周波電界としては周波数100kHzの高周波を、それと対向する第2の高周波電界としては周波数13.56MHzの高周波を用いる。そして、電極間には、窒素ガスに対し酸素ガス0.1体積%、水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電空間を形成させる。
ガラス等の基材Sは、第2電極822上に載置され、噴霧空間Aと放電空間Dとの間を反復移動する。噴霧空間Aでは薄膜形成材料を含有した液体の液滴が基材S上に付与される。放電空間Dでは、窒素等の放電ガスが供給され、2種類の高周波電界が重畳され、高密度なプラズマが発生しており、ここに液滴が付与された基材Sが晒される。これを繰り返すことによって薄膜が形成される。
図9は、超音波噴霧器を備えたロール式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。図9中、参照符号で図8と同一であるものは、図8で説明した部材と同じである。図9において、Sはプラスチックフイルム等の長尺の基材である。基材Sは第2電極であるロール電極822Rの周囲に巻回され図中の矢印の方向に搬送されている。超音波噴霧器801から噴霧される薄膜形成材料を含有する液滴は、噴霧空間Aにおいて、基材S上に付与される。その後、第1電極821と第2電極822Rとの間で形成される放電空間Dを、液滴が付与された基材Sが通過すると、薄膜が形成される。
図10は、本発明に用いることのできる別のタイプの大気圧プラズマ処理装置の概略図である。図10において、大気圧プラズマ処理装置30は、二つの電源を有する電界印加手段40、ガス・液滴供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
ロール電極(第1電極)35と複数の角筒型電極(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32に、ガス・液滴供給手段50から供給された薄膜形成材料を含有する微小液滴(液滴)と放電ガスである窒素の混合物3が供給され、ここで活性化されて、基材F上に堆積して薄膜を形成する。
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型電極(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型電極(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1フィルタ43が設置されており、第1フィルタ43は第1電源41から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源42からの電流をアースして、第2電源42から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型電極(第2電極)36と第2電源42との間には、第2フィルタ44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源41からの電流をアースして、第1電源41から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型電極36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10〜100mA/cm2、さらに好ましくは20〜100mA/cm2である。
ガス・液滴供給手段50において、ガス・液滴発生装置51で発生させたガス・液滴MGは、流量を制御して給気口52より大気圧プラズマ処理容器31内に導入する。
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されてくるか、または前工程から搬送されてきて、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されてくる空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型電極36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型電極(第2電極)36との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
放電処理済みの処理排液滴G′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型電極(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69は大気圧プラズマ処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
図10に示した各角筒型電極36は、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
対向する第1電極及び第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
大気圧プラズマ処理容器31はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。
大気圧プラズマ処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることができ、何れも使用することができる。
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ処理装置に採用することが好ましい。
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成液滴に与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、さらなる均一高密度プラズマを生成でき、さらなる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
上記方法においても、ITOの場合は、基材温度を150℃以上とすることで、基材の温度を150℃以上とするこで、透明導電膜の結晶化が行え、低抵抗化が達成される。
《基材》
次いで、本発明に用いられる基材について説明する。
本発明に用いられる基材としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。形態的には平面形状、立体形状でもよく、平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルム等を挙げることができる。材質的には、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等さまざまなものを使用できる。具体的には、ガラスとしては、ガラス板やレンズ等、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることができるが、特に、基材が樹脂基材であることが好ましく、更には、該樹脂基材は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された25±0.5℃、90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10-4g/(m2・24h)以下となるようなバリア加工が施されていることが好ましい。
樹脂フィルムは、本発明に係る大気圧プラズマ処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることができる。
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。さらに、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、さらには縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することができるものを得ることができる。
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが光学素子に好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカミノルタタックKC4UX(コニカミノルタオプト社製)等が有用である。
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用できる。またこれら樹脂フィルムの薄膜側に防眩層、クリアハードコート層、バリア層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
また、本発明に用いられる基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。
《金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を含む塗布液》
本発明に係るナノ粒子は、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から構成されることを特徴とする。本発明に係るナノ粒子は、組成の異なるナノ粒子の混合物であってもよく、また、一つの粒子中に異なる組成の複数の金属化合物を含有していてもよい。また、本発明において金属化合物とは、金属原子(単体)を含有しているものも包含する。
本発明に係るナノ粒子の平均粒径は、概ね0.2nm以上、20nm以下である。平均粒径が1nm未満であると、粒子が不安定であり塗布、乾燥中に合一が起こりやすく、一方、20nmを超えると粒子を結晶化させるのに大きなエネルギーを要する。更に、本発明に係るナノ粒子の平均粒径としては、0.3nm以上、5.0nmであることが、本発明の目的効果をより発揮できる観点から好ましい。また、ナノ粒子の変動係数としては30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下の単分散粒子である。なお、ナノ粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)やX線回折(XD)によって測定することができる。
本発明において、ナノ粒子を構成する金属化合物の金属原子としては、In、Ga、Al、Sn、Ge、Sb、Bi及びZnから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、更には、上記金属原子群から二つを選択することが好ましく、特に好ましくは、InとSn、InとZn、SbとSn、またはZnとGaの組み合わせであり、これらの組み合わせを採ることにより、透明性と導電性が両立できる。具体的には、SnをドープしたIn化合物、ZnをドープしたIn化合物、SbをドープしたSn化合物、GaをドープしたZn化合物などが好ましい。これらの組み合わせで、ドーパントである金属原子の割合は1〜30原子%が好ましく、より好ましくは2〜20原子%である。また、上記二つの金属原子は、一方がコア部、他方がシェル部に偏在した化合物としてナノ粒子を構成していても良い。
また、本発明においては、前述の結晶化した透明導電膜を構成する金属元素と、コロイド分散物が含有する金属化合物を構成する金属元素とが、同一であることが、本発明の目的効果をより発揮できる観点から好ましい。
本発明において金属化合物ナノ粒子は、上記金属化合物以外の金属原子を含有してもよく、必要に応じて価数0の金属原子を含有してもよい。価数0の金属原子としては、特に限定されないが、酸化されにくく安定性の高いAu、Ag、Pt、Pdが特に好ましい。価数0の金属原子は、ナノ粒子中に均一に存在しても、コア部もしくはシェル部に偏在していてもよい。また、金属化合物ナノ粒子とは別個の金属ナノ粒子としてコロイド分散物中に存在していてもよい。
本発明に係るナノ粒子は、液相法や気相法により合成することができ、以下に液相法の合成例を記す。
金属水酸化物ナノ粒子や金属炭酸塩ナノ粒子は、該金属のハロゲン化物や硫酸塩、硝酸塩などの無機塩または酢酸塩、蓚酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩などを水やアルコール類などの親水性溶媒に溶解し、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸グアニジン、アンモニア水などのアルカリを作用させることにより得られる。合成条件は化合物種によって異なり広く設定できるが、温度は−20〜95℃、反応時間は10秒〜3時間、pHは3〜11が望ましい。金属酸化物ナノ粒子は、上記金属水酸化物ナノ粒子や金属炭酸塩ナノ粒子を加熱脱水することにより得ることができる。
価数0の金属ナノ粒子は、可溶性の該金属塩をテトラヒドロホウ酸塩、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホスフィン酸塩等の無機還元剤や、アミン系もしくはジオール系化合物等の有機還元剤を用いて還元することにより得ることができる。
気相法の例としては、原料固体をルツボに入れ、高周波誘導加熱方式により加熱し金属蒸気を発生させて、He、Arなどのガス分子との衝突により急冷させて微粒子化するガス中蒸発法やマイクロ波プラズマCVD法を用いて金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。また、噴霧熱分解法などで合成することもできる。反応の収率はICPなどによる化学分析で、各粒子の組成比はFE−TEMなどの高分解TEMなどにより確認できる。このナノ粒子の結晶はX線回折(XD)や電子線回折(ED)により確認することができる。
気相法や噴霧熱分解法で合成したナノ粒子は、適当な分散媒に分散させることによりコロイド分散液を得ることができる。液相法で合成したナノ粒子は既にコロイド分散液となっているのでそのまま用いてもよいし、未反応物や副生成物を除去したり、濃度を調整するために、濃縮、精製、希釈、脱塩等の種々の処理を施してもよい。前記の分散媒としては水、アルコール類、グリコール類などがあげられる。
コロイド分散液中には、吸着性化合物(分散剤)または界面活性剤等の有機化合物を含有させるのが好ましい。吸着性化合物および界面活性剤は、コロイド粒子の表面に吸着等し、コロイド粒子を表面修飾することにより、コロイド分散液の安定性向上に寄与する。コロイドは親水性であっても疎水性であってもよい。前記吸着性化合物としては、−SH、−CN、−NH2、−SO2OH、−SOOH、−OPO(OH)2、−COOHを含有する化合物などが有効であり、これらのうち−SHまたは−COOH含有化合物が好ましい。親水性コロイドの場合には、親水性基(例えば、−SO3Mや−COOM(Mは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム分子等を表す))を有する吸着性化合物を使用するのが好ましい。また、アニオン性界面活性剤(例えば、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸やドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、ノニオン性界面活性剤(例えばポリアルキルグリコールのアルキルエステルやアルキルフェニルエーテル等)、フッ素系界面活性剤、親水性高分子(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン等)をコロイド分散液中に含有させるのも好ましい。
コロイド分散液は、吸着性化合物等の有機化合物の他にも、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、可塑剤、高分子バインダー、カーボンナノ粒子、色素等の各種添加剤を目的に応じて添加し、物性調整したのち、インクジェット用のインクとして用いるのが好ましい。コロイド分散液の電気伝導度は1,000μS/cm以下であるのが好ましく、100μS/cm以下であるのがより好ましい。また、粘度は1〜20mPa・sであるのが好ましい。
(コロイド分散物含有塗膜の表面処理)
本発明においては、結晶化した透明導電膜上に、コロイド分散物を含む塗布液をコーティングした後、該コーティングした表面が、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間にガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該ガスを励起ガスとし、該励起ガスに該コーティングした表面を晒すプラズマ処理が施されているが好ましい。
本発明のコロイド分散物を含む塗膜の表面処理方法としては、紫外線照射やエキシマレーザー照射やコロナ処理及びプラズマ処理を挙げることができ、特に、前述の透明導電膜の形成に用いるのと同様の大気圧プラズマ処理を用いることが、処理効率も高く、真空装置不要であり、好ましく用いられる。
また、結晶化した透明導電膜上へのコロイド分散物含有塗布液のコーティング方法としては、ディップコーティング法やスピンコーティング法及びスライドコーティング法・押出しコーティング法・スプレーコーティング法等、特に限定されるものでは無いが、表面平滑性の為にコーティング後、塗布液をレベリングさせる必要性がある。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《透明導電膜を有する基材の作製》
〔試料1の作製〕
(透明導電膜形成材料を含有する液体の調製)
硝酸インジウム0.05mol%、硝酸錫0.02mol%含む水溶液を調製した。
(液滴の生成)
図7に示す超音波噴霧器1を用いて、25℃の上記調製した透明導電膜形成材料を含有する液体(液滴原料)から液滴を生成した。なお、超音波噴霧器の周波数は2MHzで、窒素ガスは流量10L/min、温度80℃とした。
(基材への液滴噴霧、プラズマの形成)
図9に示す大気圧プラズマ処理装置を用いて、供給口に+1kVの直流電界を印加し、上記液滴を基材S(ポリエーテルスルフォンフィルム)に吹き付けた。図9の大気圧プラズマ処理装置は、基材Sを保持する電極22Rに周波数100kHzの高周波電源を接続し、それと対向する棒状電極21に13.56MHzの高周波電源を接続するとともに電源本体と電極間には、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを接続している。また、マッチングボックスと電極との間には、ともに互いの電流が流れ込まないようにフィルターを設置している。放電空間Dに窒素ガスに対し酸素ガス0.1体積%、水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電を形成した。プラズマガスに晒される部分は、噴霧空間Aの下流に位置するため、噴霧直後、噴霧された液滴はプラズマガスに曝されることになる。
なお、周波数100kHzの高周波電源の出力密度は3W/cm2で、13.56MHzの高周波電源の出力密度は5W/cm2とした。
この透明導電膜形成方法は、基材上に透明導電膜形成材料を含有する液体を付与し、該液体を大気圧プラズマ処理する方法である。
なお、製膜中の基材Sを保持する電極22Rは、150℃に維持し保温した。
以上のようにして、膜厚が100nmの薄膜1を形成した。
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、図9の大気圧プラズマ処理装置に代えて、図10に示す大気圧プラズマ処理装置30を用いた以外は同様にして、膜厚が100nmの試料2を作製した。
なお、ロール電極35に周波数100kHzの高周波電源を接続し、それと対向する各筒型電極36に13.56MHzの高周波電源を接続するとともに電源本体と電極間には、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを接続している。またマッチングボックスと電極との間には、ともに互いの電流が流れ込まないようにフィルターを設置しいる。そして、電極間に窒素ガスに対し酸素ガス0.1体積%、水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電を形成した。この処理装置では、透明導電膜形成材料を含有する液滴3が大気圧プラズマ処理されてプラズマガス32となり、これが基材上に付与されて透明導電膜を形成する。
なお、100kHzの高周波電源の出力密度は3W/cm2で、13.56MHzの高周波電源の出力密度は5W/cm2とした。
この透明導電膜形成方法は、透明導電膜形成材料を含有する液体を大気圧プラズマ処理し、大気圧プラズマ処理した液体を基材上に付与する方法である。
ここでも、製膜中の基材Sを保持する電極35は、150℃に維持し保温した。
〔試料3の作製〕
図11に記載のスパッタ装置を用いて、試料3を作製した。
図11において、スパッタ装置600は、酸化物透明導電薄膜を成膜するスパッタ室601と、金属薄膜を成膜するスパッタ室602とを有している。スパッタ室601、602の間はバルブ632で仕切られており、各スパッタ室601、602の両側は、バルブ631、633がそれぞれ設けられ、大気が侵入しないように構成されている。
また、スパッタ室601、602には、それぞれバルブ641、642を介して真空ポンプ651、652が接続されており、各バルブ631〜633を閉じて、バルブ641、642を開け、各真空ポンプ651、652を起動すると個別に真空排気できるように構成されている。
スパッタ室601内の底面に、マグネトロンカソード606を配置し、このマグネトロンカソード606上に、酸化物透明導電薄膜の材料としてITO焼結体ターゲット(In23、10質量%のSnO2を含有)が、その裏面に配置された磁石によって、表面の水平磁場強度が約1000Oeになるように設けた。また、このスパッタ室601内の天井には、キャリアー613が水平移動可能に設け、キャリアー613に基板を取り付けて、その成膜面がITO焼結体ターゲットに対して平行に向くように配置した。
キャリアー613に透明な基板612を取り付け、スパッタ室601を真空排気して高真空状態とした後、スパッタ室601に設けられたノズル608から、マスフローコントローラーで流量制御されたArガスとO2ガスとを0.67Paの圧力まで導入し、前記マグネトロンカソード606に接続された直流電源671を起動して、前記ITO焼結体ターゲットのスパッタリングを開始した。
このスパッタリングの際に、キャリアー613を動かして基板612をITOターゲット上で等速度で通過させて、酸化物透明導電薄膜であるITO膜を所定膜厚で形成した。ここでも基材温度は、150℃とした。
〔試料4〜6の作製〕
上記作製した試料1〜3を用いて、各透明導電膜上に下記のコロイド分散物含有塗布液1をスピンコーティングし、試料4〜6を作製した。なお、コーティング膜厚は、乾燥後で10nmとした。
(コロイド分散物含有塗布液1)
塩化インジウム(III)2.00g、塩化すず(II)0.19gおよびL−酒石酸4.05gを、除酸素水100mlに溶解させ十分攪拌し、A−1液を調製した。また、エチレングリコール10gおよび炭酸水素アンモニウム7.5gを除酸素水100mlに溶解させてB−1液を調製した。更に、テトラヒドロホウ酸ナトリウム2.88gを除酸素水20mlに溶解してC−1液を調製した。アルゴンボックス内(室温)で、300mlの三つ口フラスコにA−1液とB−1液を入れ混合した。溶液のpHは7.5であった。この混合溶液にC−1液を添加した後、三つ口フラスコを恒温槽に移して60℃に昇温させると還元が始まり、溶液は透明から茶褐色へと変化した。反応は60℃で60分間行い、終了後自然冷却で室温まで降温させた。
窒素雰囲気下で遠心分離、水−メタノール混合溶媒(予め除酸素したもの)による洗浄操作を、電気伝導度が50μS/cm以下になるまで繰り返した。沈殿物にアセチルアセトン4gおよびシクロヘキサノール14gを添加し、再分散させてコロイド分散液(粘度10mPa・s)を調製し、これをコロイド分散物含有塗布液1とした。この時、コロイド分散物含有塗布液1が含有するナノ粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡で観察した結果、平均粒径は3nmであった。
〔試料7〜9の作製〕
上記作製した試料4〜6の各表面に、大気圧プラズマにより表面処理を行った。大気圧プラズマ条件は、図12に示すジェット型のプラズマ処理装置を使用した。
図12の大気圧プラズマ処理装置は、対向する電極11に周波数100kHzの高周波電源を接続し、それと対向する棒状電極12に13.56MHzの高周波電源を接続するとともに電源本体と電極間には、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを接続している。また、マッチングボックスと電極との間には、ともに互いの電流が流れ込まないようにフィルターを設置している。放電空間Dに窒素ガスに対し酸素ガス0.1体積%、水素ガス1体積%の混合ガスを導入し放電を形成した。
なお、周波数100kHzの高周波電源の出力密度は3W/cm2で、13.56MHzの高周波電源の出力密度は5W/cm2とした。
〔試料10の作製〕
基材(ポリエーテルスルフォンフィルム)上へ直接、前記コロイド分散物含有塗布液1をスピンコーティングした。このときのコーティング膜厚は、乾燥後で110nmとした。次いで、上記試料7〜9の作製と同様に、その表面に大気圧プラズマ処理を施して、試料10を作製した。
〔試料11の作製〕
上記試料10の作製において、大気圧プラズマ処理を下記のレーザー照射処理に変更した以外は同様にして、試料11を作製した。
ここで行ったレーザー照射処理は、窒素雰囲気下で308nm、300Hz、照射面積300×0.4mmのXeClエキシマレーザー装置(JSW社製)を用いて走査方式により100mj/cm2の照射エネルギーで、パルス幅20ナノ秒で20パルス照射した。
《試料の特性値の測定》
以上の様にして作製した各試料について、下記の方法に従って、各特性値の測定を行った。
(表面比抵抗値の測定)
各試料の表面抵抗値(Ω/□)を、JIS−R−1637に従い、四端子法により測定した。具体的には、測定器として三菱化学製のロレスタ−GP、MCP−T600を用いて求めた。
(平均透過率の測定)
本発明でいう平均光透過率(%)を、JIS R 1635に準じ、日立製作所製の分光光度計1U−4000型を用いて測定した。具体的には、400nmから700nmの波長で、5nm毎に、各波長における透過率(%)を60点測定した。次いで、各波長の透過率の平均値を求め、これを平均光透過率とした。
(最大高さRmaxの測定)
各試料表面の最大高さRmax(nm)を、JIS B601に準じて求めた。Rmax(nm)は、断面曲線を基準長さLを抜き取った部分の最大高さを求めて表わすもので、本発明では、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、下記の方法に準じて求めた。
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)は、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。測定領域2μm角を、1(or2)視野、走査周波数1Hzで測定した。
最大高さ(Rmax)は、得られた粗さ曲線から、測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分のボトムとピークの差で表す。
透明導電膜の最大高さRmaxは、本発明の目的効果をより発揮できる観点から、10nm以下であることが好ましい。
以上により得られた結果を、表1に示す。
Figure 2007294220
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明の方法に従って作製した透明導電膜を有する基材は、比較例に対し、低抵抗で、光透過性に優れ、かつ表面平滑性に優れていることが分かる。
すなわち、本発明の方法に従って作製した透明導電膜を有する基材4〜9は、高収率で良質な薄膜が形成されることを確認することができた。一方、比較の方法に従って作製した試料1〜3は、表面平滑性が低い結果となった。また、比較の形成方法で作製した薄膜10、11は、表面平滑性は高いが、表面比抵抗値が高い結果となった。
実施例2
《透明導電膜を有する基材の作製》
〔試料12〜16の作製〕
実施例1に記載の試料9の作製において、透明導電膜状に付与するコロイド分散物含有塗布液1中のナノ粒子の平均粒径を、表2に記載のように変更した以外は同様にして、試料12〜16を作製した。
《試料の特性値の測定》
以上の様にして作製した各試料について、実施例1に記載の方法と同様にして、表面比抵抗値、平均透過率及び最大高さRmaxの測定を行い、得られた結果を表2に示す。
Figure 2007294220
表2に記載の結果より明らかなように、平均粒径が0.4〜3.0のナノ粒子を用いることにより、表面比抵抗値と最大高さRmaxの両立が更に図られていることが分かる。
本発明に係る透明導電膜の成膜装置の全体構造の一例を示す概略図である。 本発明に有用なプラズマガンを用いたイオンプレーティング法(圧力勾配型プラズマガンを使用する活性化反応蒸着法)の一例を示す装置概略図である。 本発明に有用なスパッタ装置の一例を示す概略図である。 本発明に有用な透明導電膜製造装置の構成例を示す断面図である。 透明導電膜形成材料を含有する液体を、基材上または直接に電極間の電界中に供給するのに好ましく用いられる液滴発生器システムの概略構成を示す図である。 液滴の粒度分布の一例を示すグラフである。 薄膜形成材料を含有する液体を液滴として基材上に付与もしくは電極間に供給する手段として用いることのできる超音波噴霧器の概略図である。 超音波噴霧器を備えた枚葉式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。 超音波噴霧器を備えたロール式の大気圧プラズマ処理装置の概略図である。 本発明に用いることのできる別のタイプの大気圧プラズマ処理装置の概略図である。 実施例で、透明導電膜形成に用いたスパッタ装置を示す概略図である。 実施例で用いたジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を示した概略図である。
符号の説明
10 プラズマ放電処理装置
11、41 第1電極
12、42 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
30 プラズマ放電処理室
31 大気圧プラズマ処理容器
32 放電空間
36 角筒型電極
40 電界印加手段
43 第1フィルタ
44 第2フィルタ
50 ガス・液滴供給手段
51 ガス・液滴発生装置
52 給気口
53 排気口
60 電極温度調節手段
64 ガイドロール
65 ニップロール
68、69 仕切板
A 噴霧空間
M ガス・液滴
F、S 基材
G′ 処理排液滴
110 真空容器
130 プラズマガン
180 陽極電源装置
PB プラズマビーム
W 基板
201 ITO透明導電膜
202 基板
203 真空チャンバー
204 圧力勾配型プラズマガン
209 プラズマビーム
214 コンダクタンスバルブ
215 真空排気装置
217 ITO蒸発原料
221 プラズマ雰囲気
301、301a ターゲット
302 真空容器
313 基板
323 グリッド電極
403 基板
404 カソード
405 ターゲット
409 直流電源
410 高周波電源
701 超音波噴霧器
712 原料貯留部
713 超音波発生部
821 第1電極
822、832 第2電極
822R、835 ロール回転電極
825A、825B 高周波電源
826A、826B マッチングボックス
827A、827B フィルタ
830 大気圧プラズマ処理装置

Claims (7)

  1. 基材上に少なくとも1層の結晶化した透明導電膜を有し、該結晶化した透明導電膜の上に、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属化合物から構成されるナノ粒子を含有するコロイド分散物を含む塗布液をコーティングしたことを特徴とする透明導電膜を有する基材。
  2. 前記結晶化した透明導電膜を構成する金属元素と、前記コロイド分散物が含有する前記金属化合物を構成する金属元素とが、同一であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜を有する基材。
  3. 前記ナノ粒子の平均粒子径は、0.3nm以上、5nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電膜を有する基材。
  4. 前記基材が、樹脂基材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
  5. 前記樹脂基材が、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された25±0.5℃、90±2%RHにおける水蒸気透過度が1×10-4g/(m2・24h)以下であることを特徴とする請求項4に記載の透明導電膜を有する基材。
  6. 前記ナノ粒子を構成する金属化合物の金属元素が、In、Ga、Al、Sn、Ge、Sb、Bi及びZnから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
  7. 前記結晶化した透明導電膜上に、前記コロイド分散物を含む塗布液をコーティングした後、該コーティングした表面が、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、対向する電極間にガスを供給し、該電極間に高周波電界を発生させることによって該ガスを励起ガスとし、該励起ガスに該コーティングした表面を晒すプラズマ処理が施されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜を有する基材。
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