JP2003166063A - プラズマ放電処理装置及びプラズマ放電処理方法 - Google Patents

プラズマ放電処理装置及びプラズマ放電処理方法

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JP2003166063A
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和浩 福田
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慶和 近藤
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Akira Nishiwaki
彰 西脇
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハイパワーの高周波電圧を印加しても、長時
間連続運転しても電極の汚れがなく、高品質安定生産が
可能な、大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極
間、反応ガス雰囲気内で基材のプラズマ放電処理装置及
び方法を提供する。 【解決手段】 大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向
電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理す
る装置を用いて、第1電極面を覆うように載置された基
材表面を薄膜形成性の反応ガスが覆うように、また第2
電極面を希ガスが覆うようにして、該反応ガス及び該希
ガスを層流としてそれぞれを対向電極間に供給して、基
材に薄膜を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は大気圧もしくはその
近傍の圧力下で基材を処理するプラズマ放電処理する装
置及び方法に関する。詳しくは、反射防止薄膜、赤外線
反射薄膜、ダイアモンド薄膜、帯電防止薄膜、バリア薄
膜等を有する機能性薄膜を有する光学フィルム、また基
材の表面を改質し、接着性を高めることが出来るフィル
ムを製造するプラズマ放電処理装置及び方法に関する。
更に詳細には、連続して基材を高周波高電圧で処理して
も電極を汚すことなく、生産性に優れたプラズマ放電処
理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大気圧下でプラズマ放電を発生させ、該
プラズマ中にモノマーガスを導入することにより基材上
に薄膜を形成する方法が特開昭63−138630号公
報で提案されてから、かかる技術による基材上への様々
な薄膜形成方法あるいは装置が提案されている。例え
ば、金属アルコキシド等の液体をバブリング等によりガ
ス化(気化)して電極間の処理部に供給して、金属酸化
物薄膜を形成することも提案されている(例えば、特開
平6−330326号公報)が、処理部での基材が接触
していない電極にもプラズマ処理に係わる汚れが付着し
て、プラズマ放電が不安定になったり、処理が進むに従
い基材に付着する薄膜の品質のバラツキが出てきたり、
また出来上がった製品に汚れが付着したりしていた。生
産中にこのような状態になると、生産を一時中断して、
電極等の清掃をし、更に生産を開始するための条件出し
やウォームアップしてロス時間が多くなり益々生産効率
が低下していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、大気圧
もしくはその近傍の圧力下、対向電極間に基材を配置
し、反応ガス雰囲気下で高周波電圧を印加してプラズマ
放電処理を行うことにより、基材上に良質の薄膜を形成
することに成功した。更に、本発明者らは、基材を10
0kHzを超える高周波電圧を印加してプラズマ放電処
理を行うことにより、より均一で、より良質の薄膜を迅
速に薄膜を形成することに成功した。しかし、連続して
プラズマ放電処理を長時間行うことにより、電極の汚れ
が目立つようになり、その結果薄膜の品質が劣化すると
いう現象が見られるようになり、更に100kHzを超
える高周波電圧を印加して処理することにより、連続し
て生産する際、電極の汚れが発生しはじめる時間が短く
なるばかりでなく、汚れの程度はひどくなることが目立
つようになり、汚れた電極をそのまま使用し続けると、
基材への薄膜の形成性が著しく劣って来て、薄膜の品質
の劣化、または膜厚のムラ、薄膜の強度が低下等の現象
がはっきりとみられるようになった。また、汚れを清掃
する回数が多くなり生産性が大きく低下することも課題
となった。
【0004】本発明の第1の目的は、大気圧もしくはそ
の近傍の圧力下、対向電極間に基材を配置し、反応ガス
雰囲気下でプラズマ放電処理を連続行って基材上に薄膜
を形成する際、電極の汚れが発生しにくく、且つ薄膜の
品質が良好で、長時間安定生産出来るプラズマ放電処理
装置及び方法を提供することにあり、第2の目的は、1
00kHzを超える高周波電圧を印加しても、更に長時
間安定生産出来、しかも電極の汚れもなく、形成された
薄膜の品質も優れた、高品質高生産性に優れたプラズマ
放電処理装置及び方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成より
なる。
【0006】(1) 少なくとも、対向電極、該電極に
電圧を印加する印加手段及び該電極間に希ガス及び薄膜
形成性の反応ガスを供給するガス供給手段を有し、大気
圧もしくはその近傍の圧力下、該印加手段により該電極
に電圧を印加することにより、該反応ガスを励起して放
電プラズマを発生させ、基材を該放電プラズマに晒して
該基材に薄膜を形成させるプラズマ放電処理装置におい
て、該電極のうち、第1電極の放電面を覆うように前記
基材が載置され、該ガス供給手段は、該反応ガスと該希
ガスとをそれぞれ層流として該第1電極及び第2電極の
間に供給するように構成されていることを特徴とするプ
ラズマ放電処理装置。
【0007】(2) 前記ガス供給手段が、前記反応ガ
スを前記第1電極を覆うように載置された前記基材と接
するように、また前記希ガスを前記第2電極と接するよ
うに供給するようになっていることを特徴とする(1)
に記載のプラズマ放電処理装置。
【0008】(3) 前記対向電極の少なくとも一方の
電極が、ロール状回転電極であることを特徴とする
(1)または(2)記載のプラズマ放電処理装置。
【0009】(4) 前記第1電極がロール状回転電極
であり、且つ前記第2電極が前記第1電極に対し概略平
行となる凹面を有する固定電極であることを特徴とする
(1)乃至(3)の何れか1項に記載のプラズマ放電処
理装置。
【0010】(5) 前記対向電極の少なくとも一方の
電極が、金属母材の上に誘電体が被覆された構造を有す
ることを特徴とする(1)乃至(4)の何れか1項に記
載のプラズマ放電処理装置。
【0011】(6) 前記誘電体の被覆がセラミックス
溶射後、該セラミックスを無機質の封孔処理したもので
あることを特徴とする(5)に記載のプラズマ放電処理
装置。
【0012】(7) (1)乃至(6)の何れか1項に
記載のプラズマ放電処理装置を用い、第1電極面を覆う
ように載置された基材表面を薄膜形成性の反応ガスが覆
うように、また第2電極面を希ガスが覆うようにして、
該反応ガス及び該希ガスを層流としてそれぞれを対向電
極間に供給して、基材に薄膜を形成させることを特徴と
するプラズマ放電処理方法。
【0013】(8) ロール状で回転する第1電極及び
前記第1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定さ
れた第2電極を有する対向電極と、該対向電極に電圧を
印加する印加手段と、該対向電極間に、薄膜形成性の反
応ガス及び希ガスを供給するガス供給手段とを有し、大
気圧もしくはその近傍の圧力下、該印加手段により、該
対向電極に電圧を印加することにより、該反応ガスを励
起して放電プラズマを発生させ、基材を該放電プラズマ
に晒して該基材の処理を行うプラズマ放電処理装置を用
いて、該基材を該第1電極の回転と同期して移送させ、
該ガス供給手段から、該第1電極に接して移送する基材
面を該反応ガスが覆うように、また第2電極面を該希ガ
スが覆うように、ガス供給手段から該反応ガスと該希ガ
スとをそれぞれ層流として該対向電極間に供給しなが
ら、該対向電極に印加手段により印加し、移送する該基
材を発生した放電プラズマに晒し基材に薄膜を形成させ
ることを特徴とするプラズマ放電処理方法。
【0014】(9) 対向電極に100kHzを越える
高周波電圧を印加して基材に薄膜を形成することを特徴
とする(7)または(8)に記載のプラズマ放電処理方
法。
【0015】以下に、本発明を詳述する。本発明でいう
大気圧もしくはその近傍の圧力というのは、20〜20
0kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好まし
く得るためには90〜110kPa、特に93〜104
kPaが好ましい。
【0016】本発明の大気圧もしくはその近傍の圧力
下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放
電処理する装置及び方法について、以下にその実施の形
態を図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定され
ない。
【0017】図1は、本発明に有用な大気圧もしくはそ
の近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材
をプラズマ放電処理する装置の一例を示すものである。
図1においては、基材として長尺のフィルム状の基材を
用いている。
【0018】第1電極1と第2電極2の間隙(処理部)
3を反応ガスG(ここでは図の関係上、後述のように層
流として流れる反応ガスと希ガスを分けて記載されてい
ない)の雰囲気とし、図示してないが元巻きから繰り出
されて来る基材F、または前工程から搬送されて来る基
材Fが、ガイドロール4に導かれ、第1電極1に巻き回
されながら間隙(処理部)3を通過する際に、大気圧も
しくはその近傍の圧力下プラズマ放電処理される。
【0019】本発明において、対向電極の間隙(処理
部)3は、本発明に好ましく使用し得る基材がフィルム
状のものである場合、その厚さが1〜200μm程度の
ものが適切で、間隙は図1においては、第1電極に接触
している基材の表面からではなく、厚さを持った基材の
表面から第2電極の表面までをいうこととし、その間隙
は5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは
0.5〜2mmである。
【0020】放電プラズマの発生は高周波電源5から対
向電極に電圧を印加することによって行われる。高周波
電源5より第1電極1及び第2電極2に印加される電圧
の値は適宜決定される。本発明において、対向電極間に
電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、市販
品として、例えば、神鋼電機製高周波電源(50kH
z)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、
100kHz)、パール工業製高周波電源(200kH
z)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パー
ル工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電
源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(2
7MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)
等を挙げることが出来る。このように、対向電極間に
は、50kHz〜150MHzの範囲に周波数を有する
高周波電界を印加するのが本発明において好ましく、特
に100kHzを超える高周波電界が、効果が高く、例
えば薄膜形成速度を上げることが出来る。対向電極間
に、100kHzを越えた高周波電圧で、1W/cm2
以上の電力を供給し、反応ガスを励起してプラズマを発
生させる。このようなハイパワーの電界を印加すること
によって、緻密で、膜厚均一性の高い高機能性の薄膜、
または基材表面改質を、生産効率高く得ることが出来
る。本発明において、対向電極間に印加する高周波電圧
の周波数は、好ましくは150MHz以下である。ま
た、高周波電圧の周波数としては、好ましくは200k
Hz以上、さらに好ましくは800kHz以上である。
また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは1.2
W/cm2以上であり、好ましくは50W/cm2以下、
さらに好ましくは30W/cm2以下である。尚、対向
電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起
こる範囲の面積のことを指す。対向電極間に印加する高
周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサ
イン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得る
ためには、連続したサイン波であることが好ましい。こ
こで電圧の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連
続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれ
るON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちら
を採用しても良いが連続モードの方がより緻密で良質な
薄膜が得られる。
【0021】本発明において、プラズマ放電処理を、外
界と遮断しなくとも行うことが出来るが、好ましくは外
界の空気を遮断することが好ましい。処理系が外界と遮
断するには、容器を設けて遮断したり、ニップロールの
ような基材に同伴して来る空気を遮断する等の手段で行
うことが出来る。基材同伴してくる空気を遮断する手段
としては、ニップロールが有効であり、ガイドロール4
に導かれた基材Fをニップロール6で圧力を掛けて基材
Fを第1電極に押しつけ、同伴する空気を遮断すること
が出来る。搬送されてくる基材の同伴して来る空気を遮
断する手段として、上記ニップロールだけでも充分であ
るが、更に同伴空気を遮断する手段としては、図1にお
けるプラズマ放電処理する装置の容器10内に基材が導
入される前に、基材が同伴して来る空気を遮断するため
の予備室を設けることが好ましい。予備室は特開200
0−072903公報に記載されている手段と同様なも
のを設置すればよい。処理部内の内圧が、該処理部と隣
接する予備室の内圧より高いことが必要であり、好まし
くは0.3Pa以上高いことである。このように処理部
と予備室の間でも圧力差を設けることにより、外部空気
の混入を防止し、反応ガスの有効使用が可能となり、処
理効果も更に向上する。処理部に隣接して入口側に二つ
以上、出口側に二つ以上予備室を設けた場合、その予備
室と隣り合う予備室の間の差圧は、処理部に近い側の予
備室の内圧が高く設定されることが好ましく、0.3P
a以上高く設定されることが好ましい。このように複数
の予備室同士の間でも圧力差を設けることによって、外
部空気の混入をより効率的に防止し、反応ガスの有効使
用がより可能となり、処理効果も更に向上する。
【0022】図1において、ニップロール6で第1電極
に密着するように押しつけられ、そのまま基材Fは容器
10の中に入る。容器10内には容器用ガス導入口7か
らの反応ガスGを満たし、更に間隙(処理部)3にも処
理部用ガス導入口8から反応ガスを導入する。処理後の
ガスG’は排出口11から排出される。処理された基材
F’はニップロール12を経て容器10を出て、ガイド
ロール13を経て、図示されていない巻き取り機に巻き
取られるか、または次工程に搬送される。
【0023】容器10はニップロール6と12、及び仕
切板9と15で外界と遮断されている。容器はパイレッ
クス(R)ガラス製やアルミ、または、ステンレスステ
ィールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付け
たものでも良く、該金属フレームにセラミックス溶射を
行い絶縁性をとっても良い。電極との絶縁がとれれば金
属製を用いることも可能である。また、更に容器10の
内側の間隙(処理部)3を対向電極の側面部、基材搬送
部等の側面を囲むことによって安定した処理を行うこと
が出来好ましい。容器用ガス導入口7から容器10内に
満たされた反応ガスGは容器排出口14から排出され
る。
【0024】本発明において、処理部3内における反応
ガスGは、第1電極1上の基材Fと第2電極2の間隙
(処理部)3中では、基材面が反応ガスに覆われるよう
に、また第2電極面が希ガスに覆われるようにそれぞれ
層流として間隙(処理部)3を流して処理することが特
徴である。
【0025】本発明において、反応ガスとは、希ガスと
反応性ガスを混合したものをいい、基材に対して薄膜形
成性のガスをいう。希ガスが第2電極面を覆う場合、限
りなく反応性ガスが極少ない希ガス100体積%に近い
状態にある場合もある。
【0026】第1電極に接触しながら移送し処理される
基材面を覆う反応ガスと、第2電極側を覆う希ガスと
が、それぞれのガスが層流をなしてそれぞれの面に接触
するように覆うようにガス供給手段から別々に供給す
る。層流となるように供給しないと乱流が起こり、処理
部内で反応ガスと希ガスが入り乱れ結果的に第2電極が
汚れることになるので好ましくない。移送する基材と共
にプラズマ放電を行いながら流れることが好ましい。
【0027】本発明に係る層流として流れる反応ガスと
希ガスについて、以下に図を用いて説明する。ここで、
下記の図は曲面を有する対向電極を模式的に平板状の電
極に置き換えて説明している。
【0028】図2は、対向電極間を、反応ガスが基材面
を、また希ガスが第2電極面を覆うように分かれて層流
として流れている状態を示した図である。図2におい
て、第1電極101上を接触しながら移送して処理され
る基材F面側を覆っている反応ガスGaと、第2電極2
面側を覆っている希ガスGnとがそれぞれ層流となって
流れてプラズマ処理されている状態を示している。
【0029】本発明において、反応ガスと希ガスの対向
電極間におけるガス層の状態は、反応ガスまたは希ガス
何れかが、基材または第2電極の表面上をガス層が非常
に薄い境膜のように覆っていてもよく、また基材面から
第2電極面に向かって反応性ガスの濃度が徐々に薄くな
る濃度勾配を有していてもよい。また第2電極面を覆っ
ている希ガス、ごく僅か反応性ガスが混合している10
0体積%に限りなく近い反応ガスの状態となっていても
よい。ここで境膜というのは、層の厚さが1μm以上、
好ましくは10μm以上のものをいう。
【0030】本発明において、反応ガスと希ガスとが層
流として流れ、高周波電圧を印加してプラズマ放電処理
を行っても、基材にはプラズマ処理が充分に行き届き、
逆に、第2電極面は、全く汚れが付着しないか、付着し
ても連続運転に支障がない程度にしか付着せず、生産性
の向上が達成出来る。
【0031】次に、本発明の大気圧もしくはその近傍の
圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズ
マ放電処理する装置に使用する電極について説明する。
【0032】本発明においては、移送する基材を処理す
るため、基材は回転する第1電極によりその回転と同期
した速度で搬送されるのが好ましい。第1電極は、平板
状の電極でも本発明に使用出来るが、基材と電極との間
ですり傷を発生し易く、ロール状回転電極の方が好まし
い。また、図1に示したように、本発明において、固定
の第2電極2の形状は、図1のように、回転する第1電
極1に対して概略平行となる凹面を有している。第2電
極2は固定型のもので、第2電極の凹面の固定電極の円
弧は、回転する第1電極1の円弧の長さとほぼ同等以下
であれば、特に制限ないが、第1電極1の円周の10〜
50%程度が好ましい。
【0033】本発明に使用し得る電極は、金属母材とそ
れを覆う誘電体から構成されている。金属母材は、例え
ば回転する第1電極の場合は、円柱または円筒型が好ま
しい。
【0034】図3はロール状の回転する第1電極の見取
り図である。第1電極201は、図3のように金属母材
202と誘電体203とから構成される。金属母材20
2は電極の温度を制御するジャケットタイプのものであ
ることが好ましい。
【0035】金属母材202の材料としては、銀、白
金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属
を挙げることが出来、何れも好ましく使用し得るが、ス
テンレススティールが加工し易く、しかも安価であるこ
とから、本発明において好ましく用いられる。
【0036】誘電体203は、金属母材202の外周面
に、ライニングすることにより無機質的性質の誘電体を
被覆したもの、また、金属母材202に対しセラミック
ス溶射した後、無機質的性質の物質により封孔処理した
誘電体により構成するのが好ましい。誘電体のライニン
グ材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、
リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸
塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等
を用いることが出来、この中でもホウ酸塩系ガラスが加
工し易く好ましい。また、誘電体の溶射に用いるセラミ
ックスとしては、アルミナが良く、封孔材としては酸化
珪素が好ましい。特にアルコキシシラン系封孔材をゾル
ゲル反応させて無機質化させるものが好ましく用いられ
る(特願2000−377044)。
【0037】図4は第2電極の一例を見取り図として示
したものである。図4に示した第2電極211は図3の
第1電極201に対応した凹面を有している。この第2
電極211の金属母材212の上に誘電体213を被覆
することが好ましい。金属母材212及び誘電体213
の材質は上記第1電極のものと同様である。
【0038】本発明のプラズマ放電処理装置の処理部に
反応ガスと希ガスを層流として供給する手段は、処理部
の入り口の直ぐ手前に希ガスと反応ガスを別に導入口か
ら重ねて吹き出すようになっている。
【0039】図5は希ガスと反応ガスを層流として処理
部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例
を示す図である。図5において、反応ガスGaは処理部
用ガス導入口310から導入ノズル311を通して処理
部303へ反応ガスGaを層流として導入し、第1電極
301に接触しながら移送している基材F表面を反応ガ
スGaが覆うように基材Fと共に流れ、処理後のガス
G'として排出口330から排出される。一方希ガスG
nは処理部用ガス導入口320から導入ノズル321を
通して処理部303へ希ガスGnが層流として導入し、
第2電極302の面を希ガスGnが覆うように第2電極
2面に沿って流れ、排出口330から処理後のガスG'
として排出される。導入ノズル311及び321の先端
はブレードの刃のようになっていることが好ましい。排
出口330では若干減圧になっていて、層流ガスが乱れ
ない程度に吸引するのが好ましい。312及び322は
ガスの通路である。305は高周波電源である。
【0040】図6は希ガスと反応ガスを層流として処理
部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例
を示す図である。図5と図6の異なっているところは、
導入ノズル311及び321が丸みを持っているもの
で、図6の方がガスがより層流となり易く好ましい形態
である。上記図5及び6は希ガスと反応ガスの2層の例
であるが、3層あるいは濃度傾斜をもった層流の場合に
おいては三つ以上の導入口及び導入ノズルを有すること
によって達成される。
【0041】本発明において、導入ノズルの開口部分の
開口幅は、処理部内での基材面と第2電極面との間隙を
希ガスと反応ガスがどのような比で分けるかによって決
める。この場合流速をそれぞれ同じとすることが望まし
い。ガスの流速は、基材側では基材の移送速度と同等程
度でよいが、第2電極側では第2電極面の境界で流速が
0になるため基材速度、つまり基材側のガスの流速より
も若干早い方が望ましい。このように移送する基材側、
ガス層とガス層の間、また停止している第2電極面それ
ぞれガスが乱流にならないように調節して流速をコント
ロールすることが望ましい。
【0042】本発明において、基材の移送速度は、0〜
100m/分が好ましく、より好ましくは0.5〜50
m/分である。0というのは、基材が動かない、つまり
定形のシートまたは板状のもの、または立体的な形のも
のなど静止した状態でプラズマ放電をおこなってもよ
い。
【0043】本発明において、希ガスと反応ガスをそれ
ぞれ層流として流すには、それぞれのガスを等速で同じ
方向に流すこと、基材の移送速度と同じにすること、基
材が速い場合は第2電極側のガスの流速を基材側の流速
より速くすること等実際に適合した方法をとることが好
ましい。
【0044】上述のように層流にすることにより、基材
表面には反応性ガスが常に流れており、また、プラズマ
放電により基材表面を改質または基材表面に薄膜を形成
させることが出来る。反対に第2電極面には希ガスで覆
われていることで、長時間プラズマ放電処理しても反応
性ガスからの生成物がほとんど蓄積せず、汚れることが
ない。
【0045】本発明のプラズマ放電処理する際、基材が
帯電することやそれに伴うゴミ付着等を引き起こすこと
もあるが、以下の解決手段により、特に問題とはならな
い。例えば、除電手段としては、通常のブロアー式、接
触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と基材
を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置と、
その後正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システ
ム(特開平7−263173号)を用いることも好まし
い。またこのときの支持体帯電量は±500V以下が好
ましい。また除電処理後のゴミ除去手段としては、非接
触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置(特開平7−6
0211号)等が好ましいが、これに限定される訳では
ない。
【0046】ここで、反応ガスについて説明する。上述
のように、反応ガスは、希ガスと反応性ガスを混合して
含有しており、その他に、必要に応じて反応性ガスを気
化するのに使用する有機溶媒も微量混合することがあ
る。
【0047】本発明において希ガスは、周期表の第18
属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、ク
リプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来る
が、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、ア
ルゴンが好ましく用いられ、特に比較的安価なアルゴン
ガスが好ましい。反応ガス中の希ガスの濃度は、90.
0〜99.9体積%である。
【0048】本発明のプラズマ放電処理装置を用いて、
本発明のプラズマ放電処理方法によって基材表面に薄膜
を形成するもので、反応性ガスに金属化合物等を使用す
れば金属化合物の薄膜が形成され、また基材の表面改質
を行う場合には、有機化合物や水素等を使用することに
より基材表面の性質、例えば親水性化、あるいは疎水性
化薄膜を形成することが出来るが、好ましいプラズマ放
電処理は金属化合物薄膜形成である。これらの処理に使
用する反応ガスは、一部で共通するところがあるが、下
記のごとく分けられて使用される。
【0049】本発明において、基材の表面に金属化合物
等薄膜を形成する反応性ガスとしては、有機金属化合物
を使用する場合、例えば、金属として、例えば、Li、
Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、
Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Z
n、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、
Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、H
f、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、
Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Y
b、Lu等を挙げる出来、これらの金属が有機金属化合
物としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアル
キル基、フルオロアルコキシ基、アセチルアセトン、ア
セチル酢酸、ベンゾイルアセトン、アクリロイルアセト
ン、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアミン
等の有機金属化合物(有機金属錯化合物も含む)を挙げ
ることが出来る。有機金属化合物以外に、金属酸化物、
金属ハロゲン化物、金属窒化物等を挙げることが出来
る。これらの反応性ガスを使用することにより、機能性
の薄膜を形成させることが出来る。機能性薄膜として
は、例えば、反射防止膜、電極膜、誘電体保護膜、透明
導電性膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、磁気記録
膜、超導電膜、太陽電池膜、反射膜、選択性吸収膜、選
択性透過膜、シャドーマスク、耐摩耗性膜、耐食性膜、
耐熱膜、潤滑膜、装飾膜等を挙げることが出来る。
【0050】上記金属化合物等を例示すると、珪素化合
物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲ
ン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物
としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチル
シラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラ
ン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラ
ン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラ
ン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセ
トアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルト
リエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素
水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素
化ジシラン等を挙げることが出来る。フッ素と珪素が一
つの化合物としては、例えば、テトラ(トリフルオロメ
チル)シラン、テトラ(ペンタフルオロエチル)シラ
ン、テトラ(セプタフルオロプロピル)シラン、ジメチ
ルジ(トリフルオロメチル)シラン、ジエチルジ(ペン
タフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロメト
キシ)シラン、テトラ(ペンタフルオロエトキシ)シラ
ン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、パー
フルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ビニルト
リ(トリフルオロメチル)シラン、トリパーフルオロメ
チルアクリロイルオキシシラン等のフルオロシラン化合
物を挙げることが出来、これらの珪素金属化合物から形
成された薄膜は反射防止膜の低屈折率膜として有用であ
る。また重合性のシランモノマーのオリゴマーも使用出
来る。後述の表面改質の項で述べるようなフッ素化合
物、珪素化合物、フルオロシラン化合物を適宜2種以上
混合して使用してもよい。上記のようなフッ素化合物及
び珪素化合物の混合ガス、またフルオロシラン化合物を
用いることによって、表面エネルギーを低くし、撥水性
も兼ね備えたより優れた防汚膜を得ることが出来る。
【0051】チタン化合物をしては、有機チタン化合
物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有
機チタン化合物としては、例えば、トリエチルチタン、
トリメチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチ
ルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチ
タン、テトラブチルチタン、トリエトキシチタン、トリ
メトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブト
キシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポ
キシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエト
キシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、テトラ
ジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジアセトアセト
ナート、エチルチタントリアセトアセトナート等、チタ
ン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン
水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロ
チタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、チ
タン金属化合物が薄膜として形成されることにより、反
射防止膜の高屈折率膜に有用である。
【0052】錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素
化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物として
は、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸
ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル
錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチ
ルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチ
ル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジ
エトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブ
トキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、
エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセト
ナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化
合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等
を挙げることが出来、何れも本発明において、好ましく
用いることが出来る。また、これらの反応性ガスを2種
以上同時に混合して使用してもよい。なお、このように
して、形成された酸化錫層は反射防止膜の他に、表面比
抵抗値を1012Ω/cm2以下に下げることが出来るた
め、帯電防止膜、透明導電膜としても有用である。
【0053】亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜
鉛、ジエチル亜鉛、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ
亜鉛、ジアセトアセトナート、塩化亜鉛等を挙げること
が出来、形成された薄膜は蛍光薄膜に有用である。
【0054】インジウム化合物としては、例えば、トリ
エトキシインジウム、エチルジエトキシインジウム、ジ
エチルインジウームアセトアセトナート等を挙げること
が出来、形成された薄膜は透明導電膜や、選択的透過膜
に有用である。
【0055】銀化合物としては、例えば、エトキシ銀、
銀アセトアセトナート等を挙げることが出来、形成され
た薄膜は反射膜に有用である。
【0056】アルミニウム化合物としては、トリメチル
アルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロ
ピルアルミニウム、アルミニウムトリアセトアセトナー
ト等を挙げることが出来、形成された薄膜は磁気記録薄
膜等に有用である。
【0057】銅化合物としては、例えば、ジエトキシ
銅、銅ジアセトアセトナート、エトキシ銅アセトアセト
ナート等を挙げることが出来、形成された薄膜として
は、反射膜などに有用である。
【0058】上記の金属化合物としては、金属アルコキ
シド等の有機金属化合物が好ましく、腐食性、有害ガス
の発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金
属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記化合
物が常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であって
も構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出
来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射
等の手段により気化させて使用される。有機金属化合物
を加熱により気化して用いる場合、金属テトラエトキシ
ド、金属テトライソプロポキシドなどの常温で液体で、
沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止
膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシド
は、溶媒によって希釈して使用されても良く、この場
合、希ガス中へ加熱気化して反応ガスに使用すればよ
い。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及
びこれらの混合溶媒が使用出来る。この希ガス中への気
化する装置として、リンラック(株)製の気化装置を用
いることが出来る。反応ガス中の反応性ガスの濃度は、
0.01〜10.0体積%が好ましく、より好ましくは
0.01〜1体積%である。
【0059】また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化
水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択さ
れる成分を0.01〜5体積%含有させることにより、
反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成するこ
とが出来る。
【0060】表面改質には、基材表面を親水性化する場
合とより疎水性化する場合とがある。親水性化に対して
は、例えば、水蒸気、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、
窒素、一酸化窒素、二酸化窒素等を挙げることが出来
る。また疎水性化に対しては、例えば、メタン、エタ
ン、プロパン、ブタン、ヘキサン、トルエン、キシレ
ン、ベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、プロパ
ン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、
エチレン、ブテン、ペンテン等の不飽和脂肪族炭化水
素、また有機フッ素化合物として、テトラフルオロメタ
ン、ヘキサフルオロエタン、テトラフルオロエチレン、
ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタ
ン、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラ
フルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、クロロ
トリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロ
ロテトラフルオロシクロブタン、テトラフルオロメタ
ン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレ
ン、オクタフルオロシクロブタン、ジフルオロメタン、
テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、ト
リフルオロプロピレン、ヘキサフルオロアセトン等を挙
げることが出来る。
【0061】また、若干の条件によって、親水性化にな
ったり疎水性化になったりする化合物としては、トリフ
ルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフル
オロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプ
ロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセト
ン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を挙げるこ
とが出来る。
【0062】これらの化合物をプラズマ放電することに
よって、表面を親水性化した基材は、例えば、ハロゲン
化銀写真感光材料の支持体として使用出来、ゼラチン等
の水溶性バインダーを含有する層を強固に接着すること
が出来る(例えば、特開2000−072903公
報)。また表面を疎水性化した基材は、例えば、熱現像
ハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることが
出来、有機溶媒溶解系のバインダーを強固に接着するこ
とが出来る(例えば、特願2000−066778)。
【0063】本発明の基材は特に限定はないが、高分子
フィルムまたはシート状ののものが好ましく、セルロー
ストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネー
ト等のセルロースエステルフィルム、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステ
ルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シンジオタク
ティックポリスチレンフィルム、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン等のオレフィンフィルム、紙とポリオレフィン
フィルムとの貼り合わせシート、フィラーを含有するポ
リオレフィンシート、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ノ
ルボルネン樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィル
ム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィル
ム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フ
ィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミ
ドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、
ポリメチルメタクリレートフィルム等を挙げることが出
来る。これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使
用することも出来る。ゼオネックス(日本ゼオン(株)
製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販
品を使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、
ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスル
フォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶
液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延
伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来
る。基材としては、これに限定されるものではない。
【0064】上記基材の中でも、基材表面に薄膜を形成
された光学フィルム用には、セルロースエステルフィル
ムが等方性から特に有用で、画像表示装置に用いられ
る。セルロースエステルフィルムは市販のものが使用出
来る。例えばコニカタックが好ましく用いられる。ま
た、基材表面が改質されたハロゲン化銀写真感光材料用
の支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、
ポリエチレンナフタレートフィルムが有用である。
【0065】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】 実施例1 〔プラズマ放電処理による薄膜形成〕 〈基材の作製〉 《セルローストリアセテートフィルム(80μm)の作製》 (ドープの調製) セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.87) 85kg メチレンクロライド 290L エタノール 25L アエロジル200V(日本アエロジル(株)製、シリカ微粒子) 0.12kg チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、紫外線吸収剤) 0.5kg チヌビン109(同上) 0.5kg チヌビン326(同上) 0.3kg フタル酸ジシクロヘキシル 10kg (セルローストリアセテートフィルムの製膜) 30℃に温度調整したドープをダイに導入し、ダイスリ
ットからドープを無限移行する無端の金属支持体走行す
る無端のステンレススティールベルト上に均一に流延し
た。ステンレススティールベルトの流延部は裏面から3
5℃の温水で加熱した。流延後、支持体上のドープ膜
(ステンレススティールベルトに流延以降はウェブとい
うことにする)に44℃の温風をあてて乾燥させ、流延
から90秒後に剥離残留溶媒量を80質量%として剥離
した。剥離部のステンレススティールベルトの温度は1
1℃とした。剥離されたウェブは、50℃に設定された
第1乾燥ゾーンを1分間搬送させた後、第2乾燥ゾーン
はテンター乾燥装置を用い、85℃に設定して幅手方向
に1.06倍に延伸を行い、30秒間搬送させた。更に
120℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送さ
せて、乾燥を行い、膜厚80μmのセルロースエステル
フィルムを得た。なお、フィルム巻き取り時の残留溶媒
量は何れも0.01質量%未満であった。残留溶媒量は
次式のように表される。
【0067】残留溶媒量(質量%)={(M−N)/
N}×100ここで、Mは工程中、ウェブの任意時点で
の質量、NはMのものを110℃、3時間で乾燥させた
時の質量である。
【0068】上記セルローストリアセテートフィルムの
片面に下記のバック層(BC層と略すことがある)及び
クリアハードコート層(CHC層と略すことがある)を
塗設し、下記プラズマ放電処理に供した。
【0069】《BC層の塗設》後述のCHC層の塗設前
に、下記のBC層塗布組成物を上記セルローストリアセ
テートフィルムの片面に、ウェット膜厚14μmとなる
ようにグラビアコーターで塗布し、乾燥温度85℃にて
乾燥させてBC層を塗設した。
【0070】 (BC層塗布組成物) アセトン 30質量部 酢酸エチル 45質量部 イソプロピルアルコール 10質量部 セルロースジアセテート 0.5質量部 アエロジル200V 0.1質量部 《CHC層の塗設》BC層を塗設したセルローストリア
セテートフィルムのBC層側の反対面に下記のCHC層
塗布組成物をウェット膜厚で13μmとなるようにグラ
ビアコーターで塗布し、次いで85℃に設定された乾燥
部で乾燥した後、115mJ/cm 2の照射強度で紫外
線照射し、乾燥膜厚で5μmの中心線平均表面粗さ(R
a)12nmのCHC層を設け、基材を得た。
【0071】 (CHC層塗布組成物) ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部 ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部 プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部 メチルエチルケトン 75質量部 〈反応ガス及び希ガス〉 《反応ガスGa組成》 希ガス:アルゴンガス 97.7体積% 反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(リンテック製気化器により アルゴンガス中に気化) 0.3体積% 反応性ガス:水素ガス 2体積% 《希ガスGn組成》 希ガス:アルゴンガス 100体積% 〈高周波電源〉下記高周波電源を使用し表1に記載した
ように試料1〜6を得た。
【0072】 1:神鋼電機製(50kHz) 2:ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モー
ドで使用、100kHz) 3:パール工業製高周波電源(200kHz) 4:パール工業製高周波電源(800kHz) 5:日本電子製高周波電源(13.56MHz) 6:パール工業製高周波電源(27MHz) 〈試料の作製〉図6に記載のプラズマ放電処理装置を用
いて、長尺の上記基材のCHC層の上に、下記反応ガス
及び希ガスを使用し、反応ガスGaを基材面側を覆うよ
うに、また希ガスGnを第2電極側を覆うようにそれぞ
れ層流として、間隙が1mmの対向電極間に反応ガスG
aと希ガスGnをそれぞれ等量(1:1)で流し、基材
を20m/分で移送しながら上記高周波電源を表1のよ
うに代えて24時間プラズマ放電処理を連続運転し、薄
膜を形成させ、試料1〜6を得た。
【0073】比較例1 対向電極間に反応ガスGaだけを流した以外は実施例1
と同様に行い、試料7〜12を得た。
【0074】〔評価〕24時間連続プラズマ放電処理後
の下記の第2電極面の汚れ、薄膜の膜強度、及び薄膜の
膜厚変動の評価を行った。
【0075】〈第2電極の汚れの評価〉 A:全く汚れが観察されない B:何となくうっすらと膜のようなものが観察される
が、ハッキリと汚れとは見えない C:薄膜のような汚れがうっすらと観察される D:汚れがハッキリと観察される E:多くの汚れが観察される。
【0076】〈薄膜の膜強度評価〉試料の薄膜面に、1
cm2角にスティールウールを貼り付けたすり傷試験用
プローブのスティールウールのある側を置き、スティー
ルウールの無い側に250gの加重を載せ、プローブを
10往復させてすり傷をつけ、下記のごとく、すり傷の
評価を行った。
【0077】 A:全くすり傷がなかった B:1〜2本のすり傷があった C:3〜5本のすり傷があった D:6〜20本のすり傷があった E:21本h以上のすり傷があった。
【0078】〈薄膜の膜厚変動の評価〉形成した薄膜の
膜厚の分布を、分光光度計U−400型(日立製作所
製)を用いて、5°正反射条件にて反射スペクトルの測
定を行い、反射のピーク値をとる波長より算出した。測
定は10cm幅、2mm間隔で行い、その変動の割合を
下記の基準で評価した。
【0079】 A:0〜1% B:2〜7% C:8〜20% D:21〜60% E:61〜100% プラズマ放電処理した第2電極の汚れ、薄膜の膜強度及
び薄膜の膜厚変動の評価の結果を下記表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】(結果)基材面を反応ガスが覆うように、
また第2電極面を希ガスが覆うように分けて対向電極間
に層流として流してプラズマ放電処理した本発明は、2
4時間の連続運転にも拘わらず第2電極の汚れもなく、
薄膜の品質が良好であった。また100kHzを超えて
高周波電圧を掛けても全く汚れはなかった。これに対し
て対向電極間にガスを分けずに反応ガスだけを流した比
較例は、第2電極の汚れがひどく、出来上がった薄膜の
品質も劣化していた。
【0082】
【発明の効果】本発明により、大気圧もしくはその近傍
の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラ
ズマ放電処理しても、電極への成膜汚れを防止すること
が可能となり、高メンテナンス性・連続生産性、高品質
の薄膜を基材上に形成することが出来るようになり、工
業生産性が飛躍的に向上し、更には製品の品質向上が出
来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な大気圧もしくはその近傍の圧力
下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放
電処理する装置の一例を示すものである。
【図2】対向電極間を、反応ガスが基材面を、また希ガ
スが第2電極面を覆うように分かれて層流として流てい
る状態を示した図である。
【図3】ロール状の回転する第1電極の見取り図であ
る。
【図4】第2電極の一例を見取り図として示したもので
ある。
【図5】希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入す
る手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図で
ある。
【図6】希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入す
る手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図で
ある。
【符号の説明】
1、101、201、301 第1電極 2、102、211、302 第2電極 3、103、303 間隙(処理部) 4、13 ガイドロール 5、105、305 高周波電源 6、12 ニップロール 7 容器用ガス導入口 8、310、320 処理部用ガス導入口 9、15 仕切板 10 容器 11、330 排出口 14 容器排出口 202 金属母材 203 誘電体 312、322 ガスの通路 311、321 導入ノズル Ga 反応ガス Gn 希ガス G ' 処理後のガス F 基材
フロントページの続き (72)発明者 大石 清 東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会 社内 (72)発明者 西脇 彰 東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会 社内 Fターム(参考) 4K030 AA06 AA17 BA29 CA07 CA12 CA17 EA05 EA08 FA03 GA05 JA09 JA18 KA16 KA18 KA30 KA47

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、対向電極、該電極に電圧を
    印加する印加手段及び該電極間に希ガス及び薄膜形成性
    の反応ガスを供給するガス供給手段を有し、大気圧もし
    くはその近傍の圧力下、該印加手段により該電極に電圧
    を印加することにより、該反応ガスを励起して放電プラ
    ズマを発生させ、基材を該放電プラズマに晒して該基材
    に薄膜を形成させるプラズマ放電処理装置において、該
    電極のうち、第1電極の放電面を覆うように前記基材が
    載置され、該ガス供給手段は、該反応ガスと該希ガスと
    をそれぞれ層流として該第1電極及び第2電極の間に供
    給するように構成されていることを特徴とするプラズマ
    放電処理装置。
  2. 【請求項2】 前記ガス供給手段が、前記反応ガスを前
    記第1電極を覆うように載置された前記基材と接するよ
    うに、また前記希ガスを前記第2電極と接するように供
    給するようになっていることを特徴とする請求項1に記
    載のプラズマ放電処理装置。
  3. 【請求項3】 前記対向電極の少なくとも一方の電極
    が、ロール状回転電極であることを特徴とする請求項1
    または2記載のプラズマ放電処理装置。
  4. 【請求項4】 前記第1電極がロール状回転電極であ
    り、且つ前記第2電極が前記第1電極に対し概略平行と
    なる凹面を有する固定電極であることを特徴とする請求
    項1乃至3の何れか1項に記載のプラズマ放電処理装
    置。
  5. 【請求項5】 前記対向電極の少なくとも一方の電極
    が、金属母材の上に誘電体が被覆された構造を有するこ
    とを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプ
    ラズマ放電処理装置。
  6. 【請求項6】 前記誘電体の被覆がセラミックス溶射
    後、該セラミックスを無機質の封孔処理したものである
    ことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ放電処理装
    置。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6の何れか1項に記載のプ
    ラズマ放電処理装置を用い、第1電極面を覆うように載
    置された基材表面を薄膜形成性の反応ガスが覆うよう
    に、また第2電極面を希ガスが覆うようにして、該反応
    ガス及び該希ガスを層流としてそれぞれを対向電極間に
    供給して、基材に薄膜を形成させることを特徴とするプ
    ラズマ放電処理方法。
  8. 【請求項8】 ロール状で回転する第1電極及び前記第
    1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定された第
    2電極を有する対向電極と、該対向電極に電圧を印加す
    る印加手段と、該対向電極間に、薄膜形成性の反応ガス
    及び希ガスを供給するガス供給手段とを有し、大気圧も
    しくはその近傍の圧力下、該印加手段により、該対向電
    極に電圧を印加することにより、該反応ガスを励起して
    放電プラズマを発生させ、基材を該放電プラズマに晒し
    て該基材の処理を行うプラズマ放電処理装置を用いて、
    該基材を該第1電極の回転と同期して移送させ、該ガス
    供給手段から、該第1電極に接して移送する基材面を該
    反応ガスが覆うように、また第2電極面を該希ガスが覆
    うように、ガス供給手段から該反応ガスと該希ガスとを
    それぞれ層流として該対向電極間に供給しながら、該対
    向電極に印加手段により印加し、移送する該基材を発生
    した放電プラズマに晒し基材に薄膜を形成させることを
    特徴とするプラズマ放電処理方法。
  9. 【請求項9】 対向電極に100kHzを越える高周波
    電圧を印加して基材に薄膜を形成することを特徴とする
    請求項7または8に記載のプラズマ放電処理方法。
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