JP4378919B2 - プラズマ放電処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は大気圧もしくはその近傍の圧力下で基材を処理するプラズマ放電処理する装置及び方法に関する。詳しくは、反射防止薄膜、赤外線反射薄膜、ダイアモンド薄膜、帯電防止薄膜、バリア薄膜等を有する機能性薄膜を有する光学フィルム、また基材の表面を改質し、接着性を高めることが出来るフィルムを製造するプラズマ放電処理装置及び方法に関する。更に詳細には、連続して基材を高周波高電圧で処理しても電極を汚すことなく、生産性に優れたプラズマ放電処理装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧下でプラズマ放電を発生させ、該プラズマ中にモノマーガスを導入することにより基材上に薄膜を形成する方法が特開昭63−138630号公報で提案されてから、かかる技術による基材上への様々な薄膜形成方法あるいは装置が提案されている。例えば、金属アルコキシド等の液体をバブリング等によりガス化(気化)して電極間の処理部に供給して、金属酸化物薄膜を形成することも提案されている(例えば、特開平6−330326号公報)が、処理部での基材が接触していない電極にもプラズマ処理に係わる汚れが付着して、プラズマ放電が不安定になったり、処理が進むに従い基材に付着する薄膜の品質のバラツキが出てきたり、また出来上がった製品に汚れが付着したりしていた。生産中にこのような状態になると、生産を一時中断して、電極等の清掃をし、更に生産を開始するための条件出しやウォームアップしてロス時間が多くなり益々生産効率が低下していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間に基材を配置し、反応ガス雰囲気下で高周波電圧を印加してプラズマ放電処理を行うことにより、基材上に良質の薄膜を形成することに成功した。更に、本発明者らは、基材を100kHzを超える高周波電圧を印加してプラズマ放電処理を行うことにより、より均一で、より良質の薄膜を迅速に薄膜を形成することに成功した。しかし、連続してプラズマ放電処理を長時間行うことにより、電極の汚れが目立つようになり、その結果薄膜の品質が劣化するという現象が見られるようになり、更に100kHzを超える高周波電圧を印加して処理することにより、連続して生産する際、電極の汚れが発生しはじめる時間が短くなるばかりでなく、汚れの程度はひどくなることが目立つようになり、汚れた電極をそのまま使用し続けると、基材への薄膜の形成性が著しく劣って来て、薄膜の品質の劣化、または膜厚のムラ、薄膜の強度が低下等の現象がはっきりとみられるようになった。また、汚れを清掃する回数が多くなり生産性が大きく低下することも課題となった。
【0004】
本発明の第1の目的は、大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間に基材を配置し、反応ガス雰囲気下でプラズマ放電処理を連続行って基材上に薄膜を形成する際、電極の汚れが発生しにくく、且つ薄膜の品質が良好で、長時間安定生産出来るプラズマ放電処理装置及び方法を提供することにあり、第2の目的は、100kHzを超える高周波電圧を印加しても、更に長時間安定生産出来、しかも電極の汚れもなく、形成された薄膜の品質も優れた、高品質高生産性に優れたプラズマ放電処理装置及び方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は下記の構成よりなる。
【0006】
(1) 第1電極と第2電極からなる対向電極、該対向電極に電圧を印加する印加手段、及び前記対向電極間に希ガス及び薄膜形成性の反応ガスを供給するガス供給手段を有するプラズマ放電処理装置を用い、大気圧もしくはその近傍の圧力下、前記印加手段により前記対向電極に電圧を印加することにより、前記反応ガスを励起して放電プラズマを発生させ、前記基材を該放電プラズマに晒して基材に薄膜を形成させるプラズマ放電処理方法であって、前記第1電極と前記第2電極の間隙を5mm以下、前記印加手段により前記対向電極へ印加する電圧を100kHzを越える高周波電圧とし、前記対向電極のうち、前記第1電極の放電面を覆うように前記基材を載置し、前記ガス供給手段から、前記反応ガスと前記希ガスとを、それぞれ層流として、かつ前記反応ガスが前記基材と接し前記希ガスが前記第2電極と接するように供給しながら、前記印加手段により前記対向電極に前記高周波電圧を印加して前記基材に薄膜を形成することを特徴とするプラズマ放電処理方法。
【0008】
(2) 前記第1電極がロール状回転電極であり、且つ前記第2電極が前記第1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定電極であることを特徴とする(1)記載のプラズマ放電処理方法。
【0009】
(3) 前記ガス供給手段は、前記第1電極と前記第2電極が対向する空間の前記基材入り口側に、前記第1電極側に開口する反応性ガスの導入ノズルと、前記第2電極側に開口する希ガスの導入ノズルを有し、これら導入ノズルの先端はブレードの刃状に形成されていることを特徴とする(1)または(2)記載のプラズマ放電処理方法。
【0010】
(4) 前記対向電極の少なくとも一方の電極が、金属母材の上に誘電体が被覆された構造を有することを特徴とする(1)から(3)の何れか1項に記載のプラズマ放電処理方法。
【0011】
(5) 前記誘電体の被覆がセラミックス溶射後、該セラミックスを無機質の封孔処理したものであることを特徴とする(1)から(4)の何れか1項に記載のプラズマ放電処理方法。
【0013】
(6) ロール状で回転する第1電極及び前記第1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定された第2電極を有する対向電極と、該対向電極に電圧を印加する印加手段と、前記対向電極間に、薄膜形成性の反応ガス及び希ガスを供給するガス供給手段とを有し、大気圧もしくはその近傍の圧力下、前記印加手段により、前記対向電極に電圧を印加することにより、前記反応ガスを励起して放電プラズマを発生させ、基材を該放電プラズマに晒して該基材の処理を行うプラズマ放電処理装置を用いて、前記第1電極と前記第2電極の間隙を5mm以下、前記印加手段により前記対向電極へ印加する電圧を100kHzを越える高周波電圧とし、前記基材を前記第1電極の回転と同期して移送させ、前記ガス供給手段から、前記第1電極に接して移送する基材面を前記反応ガスが覆うように、また前記第2電極面を前記希ガスが覆うように、前記反応ガスと前記希ガスとをそれぞれ層流として前記対向電極間に供給しながら、前記対向電極に前記印加手段により前記高周波電圧を印加し、移送する前記基材を発生した放電プラズマに晒し前記基材に薄膜を形成させることを特徴とするプラズマ放電処理方法。
【0015】
以下に、本発明を詳述する。
本発明でいう大気圧もしくはその近傍の圧力というのは、20〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには90〜110kPa、特に93〜104kPaが好ましい。
【0016】
本発明の大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理する装置及び方法について、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
図1は、本発明に有用な大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理する装置の一例を示すものである。図1においては、基材として長尺のフィルム状の基材を用いている。
【0018】
第1電極1と第2電極2の間隙(処理部)3を反応ガスG(ここでは図の関係上、後述のように層流として流れる反応ガスと希ガスを分けて記載されていない)の雰囲気とし、図示してないが元巻きから繰り出されて来る基材F、または前工程から搬送されて来る基材Fが、ガイドロール4に導かれ、第1電極1に巻き回されながら間隙(処理部)3を通過する際に、大気圧もしくはその近傍の圧力下プラズマ放電処理される。
【0019】
本発明において、対向電極の間隙(処理部)3は、本発明に好ましく使用し得る基材がフィルム状のものである場合、その厚さが1〜200μm程度のものが適切で、間隙は図1においては、第1電極に接触している基材の表面からではなく、厚さを持った基材の表面から第2電極の表面までをいうこととし、その間隙は5mm以下、好ましくは3mm以下、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0020】
放電プラズマの発生は高周波電源5から対向電極に電圧を印加することによって行われる。高周波電源5より第1電極1及び第2電極2に印加される電圧の値は適宜決定される。本発明において、対向電極間に電圧を印加する電源としては、特に限定はないが、市販品として、例えば、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を挙げることが出来る。このように、対向電極間には、50kHz〜150MHzの範囲に周波数を有する高周波電界を印加するのが本発明において好ましく、特に100kHzを超える高周波電界が、効果が高く、例えば薄膜形成速度を上げることが出来る。対向電極間に、100kHzを越えた高周波電圧で、1W/cm2以上の電力を供給し、反応ガスを励起してプラズマを発生させる。このようなハイパワーの電界を印加することによって、緻密で、膜厚均一性の高い高機能性の薄膜、または基材表面改質を、生産効率高く得ることが出来る。本発明において、対向電極間に印加する高周波電圧の周波数は、好ましくは150MHz以下である。また、高周波電圧の周波数としては、好ましくは200kHz以上、さらに好ましくは800kHz以上である。また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは1.2W/cm2以上であり、好ましくは50W/cm2以下、さらに好ましくは30W/cm2以下である。尚、対向電極における電圧の印加面積(/cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。対向電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わないが、本発明の効果を高く得るためには、連続したサイン波であることが好ましい。ここで電圧の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードとパルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用しても良いが連続モードの方がより緻密で良質な薄膜が得られる。
【0021】
本発明において、プラズマ放電処理を、外界と遮断しなくとも行うことが出来るが、好ましくは外界の空気を遮断することが好ましい。処理系が外界と遮断するには、容器を設けて遮断したり、ニップロールのような基材に同伴して来る空気を遮断する等の手段で行うことが出来る。基材同伴してくる空気を遮断する手段としては、ニップロールが有効であり、ガイドロール4に導かれた基材Fをニップロール6で圧力を掛けて基材Fを第1電極に押しつけ、同伴する空気を遮断することが出来る。搬送されてくる基材の同伴して来る空気を遮断する手段として、上記ニップロールだけでも充分であるが、更に同伴空気を遮断する手段としては、図1におけるプラズマ放電処理する装置の容器10内に基材が導入される前に、基材が同伴して来る空気を遮断するための予備室を設けることが好ましい。予備室は特開2000−072903公報に記載されている手段と同様なものを設置すればよい。処理部内の内圧が、該処理部と隣接する予備室の内圧より高いことが必要であり、好ましくは0.3Pa以上高いことである。このように処理部と予備室の間でも圧力差を設けることにより、外部空気の混入を防止し、反応ガスの有効使用が可能となり、処理効果も更に向上する。処理部に隣接して入口側に二つ以上、出口側に二つ以上予備室を設けた場合、その予備室と隣り合う予備室の間の差圧は、処理部に近い側の予備室の内圧が高く設定されることが好ましく、0.3Pa以上高く設定されることが好ましい。このように複数の予備室同士の間でも圧力差を設けることによって、外部空気の混入をより効率的に防止し、反応ガスの有効使用がより可能となり、処理効果も更に向上する。
【0022】
図1において、ニップロール6で第1電極に密着するように押しつけられ、そのまま基材Fは容器10の中に入る。容器10内には容器用ガス導入口7からの反応ガスGを満たし、更に間隙(処理部)3にも処理部用ガス導入口8から反応ガスを導入する。処理後のガスG’は排出口11から排出される。処理された基材F’はニップロール12を経て容器10を出て、ガイドロール13を経て、図示されていない巻き取り機に巻き取られるか、または次工程に搬送される。
【0023】
容器10はニップロール6と12、及び仕切板9と15で外界と遮断されている。容器はパイレックス(R)ガラス製やアルミ、または、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けたものでも良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとっても良い。電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。また、更に容器10の内側の間隙(処理部)3を対向電極の側面部、基材搬送部等の側面を囲むことによって安定した処理を行うことが出来好ましい。容器用ガス導入口7から容器10内に満たされた反応ガスGは容器排出口14から排出される。
【0024】
本発明において、処理部3内における反応ガスGは、第1電極1上の基材Fと第2電極2の間隙(処理部)3中では、基材面が反応ガスに覆われるように、また第2電極面が希ガスに覆われるようにそれぞれ層流として間隙(処理部)3を流して処理することが特徴である。
【0025】
本発明において、反応ガスとは、希ガスと反応性ガスを混合したものをいい、基材に対して薄膜形成性のガスをいう。希ガスが第2電極面を覆う場合、限りなく反応性ガスが極少ない希ガス100体積%に近い状態にある場合もある。
【0026】
第1電極に接触しながら移送し処理される基材面を覆う反応ガスと、第2電極側を覆う希ガスとが、それぞれのガスが層流をなしてそれぞれの面に接触するように覆うようにガス供給手段から別々に供給する。層流となるように供給しないと乱流が起こり、処理部内で反応ガスと希ガスが入り乱れ結果的に第2電極が汚れることになるので好ましくない。移送する基材と共にプラズマ放電を行いながら流れることが好ましい。
【0027】
本発明に係る層流として流れる反応ガスと希ガスについて、以下に図を用いて説明する。ここで、下記の図は曲面を有する対向電極を模式的に平板状の電極に置き換えて説明している。
【0028】
図2は、対向電極間を、反応ガスが基材面を、また希ガスが第2電極面を覆うように分かれて層流として流れている状態を示した図である。図2において、第1電極101上を接触しながら移送して処理される基材F面側を覆っている反応ガスGaと、第2電極2面側を覆っている希ガスGnとがそれぞれ層流となって流れてプラズマ処理されている状態を示している。
【0029】
本発明において、反応ガスと希ガスの対向電極間におけるガス層の状態は、反応ガスまたは希ガス何れかが、基材または第2電極の表面上をガス層が非常に薄い境膜のように覆っていてもよく、また基材面から第2電極面に向かって反応性ガスの濃度が徐々に薄くなる濃度勾配を有していてもよい。また第2電極面を覆っている希ガスは、ごく僅か反応性ガスが混合している希ガス100体積%に限りなく近い反応ガスの状態となっていてもよい。ここで境膜というのは、層の厚さが1μm以上、好ましくは10μm以上のものをいう。
【0030】
本発明において、反応ガスと希ガスとが層流として流れ、高周波電圧を印加してプラズマ放電処理を行っても、基材にはプラズマ処理が充分に行き届き、逆に、第2電極面は、全く汚れが付着しないか、付着しても連続運転に支障がない程度にしか付着せず、生産性の向上が達成出来る。
【0031】
次に、本発明の大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理する装置に使用する電極について説明する。
【0032】
本発明においては、移送する基材を処理するため、基材は回転する第1電極によりその回転と同期した速度で搬送されるのが好ましい。第1電極は、平板状の電極でも本発明に使用出来るが、基材と電極との間ですり傷を発生し易く、ロール状回転電極の方が好ましい。また、図1に示したように、本発明において、固定の第2電極2の形状は、図1のように、回転する第1電極1に対して概略平行となる凹面を有している。第2電極2は固定型のもので、第2電極の凹面の固定電極の円弧は、回転する第1電極1の円弧の長さとほぼ同等以下であれば、特に制限ないが、第1電極1の円周の10〜50%程度が好ましい。
【0033】
本発明に使用し得る電極は、金属母材とそれを覆う誘電体から構成されている。金属母材は、例えば回転する第1電極の場合は、円柱または円筒型が好ましい。
【0034】
図3はロール状の回転する第1電極の見取り図である。第1電極201は、図3のように金属母材202と誘電体203とから構成される。金属母材202は電極の温度を制御するジャケットタイプのものであることが好ましい。
【0035】
金属母材202の材料としては、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属を挙げることが出来、何れも好ましく使用し得るが、ステンレススティールが加工し易く、しかも安価であることから、本発明において好ましく用いられる。
【0036】
誘電体203は、金属母材202の外周面に、ライニングすることにより無機質的性質の誘電体を被覆したもの、また、金属母材202に対しセラミックス溶射した後、無機質的性質の物質により封孔処理した誘電体により構成するのが好ましい。誘電体のライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等を用いることが出来、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易く好ましい。また、誘電体の溶射に用いるセラミックスとしては、アルミナが良く、封孔材としては酸化珪素が好ましい。特にアルコキシシラン系封孔材をゾルゲル反応させて無機質化させるものが好ましく用いられる(特願2000−377044)。
【0037】
図4は第2電極の一例を見取り図として示したものである。図4に示した第2電極211は図3の第1電極201に対応した凹面を有している。この第2電極211の金属母材212の上に誘電体213を被覆することが好ましい。金属母材212及び誘電体213の材質は上記第1電極のものと同様である。
【0038】
本発明のプラズマ放電処理装置の処理部に反応ガスと希ガスを層流として供給する手段は、処理部の入り口の直ぐ手前に希ガスと反応ガスを別に導入口から重ねて吹き出すようになっている。
【0039】
図5は希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。図5において、反応ガスGaは処理部用ガス導入口310から導入ノズル311を通して処理部303へ反応ガスGaを層流として導入し、第1電極301に接触しながら移送している基材F表面を反応ガスGaが覆うように基材Fと共に流れ、処理後のガスG'として排出口330から排出される。一方希ガスGnは処理部用ガス導入口320から導入ノズル321を通して処理部303へ希ガスGnが層流として導入し、第2電極302の面を希ガスGnが覆うように第2電極2面に沿って流れ、排出口330から処理後のガスG'として排出される。導入ノズル311及び321の先端はブレードの刃のようになっていることが好ましい。排出口330では若干減圧になっていて、層流ガスが乱れない程度に吸引するのが好ましい。312及び322はガスの通路である。305は高周波電源である。
【0040】
図6は希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。図5と図6の異なっているところは、導入ノズル311及び321が丸みを持っているもので、図6の方がガスがより層流となり易く好ましい形態である。上記図5及び6は希ガスと反応ガスの2層の例であるが、3層あるいは濃度傾斜をもった層流の場合においては三つ以上の導入口及び導入ノズルを有することによって達成される。
【0041】
本発明において、導入ノズルの開口部分の開口幅は、処理部内での基材面と第2電極面との間隙を希ガスと反応ガスがどのような比で分けるかによって決める。この場合流速をそれぞれ同じとすることが望ましい。ガスの流速は、基材側では基材の移送速度と同等程度でよいが、第2電極側では第2電極面の境界で流速が0になるため基材速度、つまり基材側のガスの流速よりも若干早い方が望ましい。このように移送する基材側、ガス層とガス層の間、また停止している第2電極面それぞれガスが乱流にならないように調節して流速をコントロールすることが望ましい。
【0042】
本発明において、基材の移送速度は、0〜100m/分が好ましく、より好ましくは0.5〜50m/分である。0というのは、基材が動かない、つまり定形のシートまたは板状のもの、または立体的な形のものなど静止した状態でプラズマ放電をおこなってもよい。
【0043】
本発明において、希ガスと反応ガスをそれぞれ層流として流すには、それぞれのガスを等速で同じ方向に流すこと、基材の移送速度と同じにすること、基材が速い場合は第2電極側のガスの流速を基材側の流速より速くすること等実際に適合した方法をとることが好ましい。
【0044】
上述のように層流にすることにより、基材表面には反応性ガスが常に流れており、また、プラズマ放電により基材表面を改質または基材表面に薄膜を形成させることが出来る。反対に第2電極面には希ガスで覆われていることで、長時間プラズマ放電処理しても反応性ガスからの生成物がほとんど蓄積せず、汚れることがない。
【0045】
本発明のプラズマ放電処理する際、基材が帯電することやそれに伴うゴミ付着等を引き起こすこともあるが、以下の解決手段により、特に問題とはならない。例えば、除電手段としては、通常のブロアー式、接触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と基材を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置と、その後正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システム(特開平7−263173号)を用いることも好ましい。またこのときの支持体帯電量は±500V以下が好ましい。また除電処理後のゴミ除去手段としては、非接触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置(特開平7−60211号)等が好ましいが、これに限定される訳ではない。
【0046】
ここで、反応ガスについて説明する。
上述のように、反応ガスは、希ガスと反応性ガスを混合して含有しており、その他に、必要に応じて反応性ガスを気化するのに使用する有機溶媒も微量混合することがある。
【0047】
本発明において希ガスは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来るが、本発明に記載の効果を得るためには、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に比較的安価なアルゴンガスが好ましい。反応ガス中の希ガスの濃度は、90.0〜99.9体積%である。
【0048】
本発明のプラズマ放電処理装置を用いて、本発明のプラズマ放電処理方法によって基材表面に薄膜を形成するもので、反応性ガスに金属化合物等を使用すれば金属化合物の薄膜が形成され、また基材の表面改質を行う場合には、有機化合物や水素等を使用することにより基材表面の性質、例えば親水性化、あるいは疎水性化薄膜を形成することが出来るが、好ましいプラズマ放電処理は金属化合物薄膜形成である。これらの処理に使用する反応ガスは、一部で共通するところがあるが、下記のごとく分けられて使用される。
【0049】
本発明において、基材の表面に金属化合物等薄膜を形成する反応性ガスとしては、有機金属化合物を使用する場合、例えば、金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げる出来、これらの金属が有機金属化合物としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アセチルアセトン、アセチル酢酸、ベンゾイルアセトン、アクリロイルアセトン、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルアミン等の有機金属化合物(有機金属錯化合物も含む)を挙げることが出来る。有機金属化合物以外に、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物等を挙げることが出来る。これらの反応性ガスを使用することにより、機能性の薄膜を形成させることが出来る。機能性薄膜としては、例えば、反射防止膜、電極膜、誘電体保護膜、透明導電性膜、エレクトロクロミック膜、蛍光膜、磁気記録膜、超導電膜、太陽電池膜、反射膜、選択性吸収膜、選択性透過膜、シャドーマスク、耐摩耗性膜、耐食性膜、耐熱膜、潤滑膜、装飾膜等を挙げることが出来る。
【0050】
上記金属化合物等を例示すると、珪素化合物としては、有機珪素化合物、珪素水素化合物、ハロゲン化珪素化合物等を挙げることが出来、有機珪素化合物としては、例えば、テトラエチルシラン、テトラメチルシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルシランジアセトアセトナート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等、珪素水素化合物としては、テトラ水素化シラン、ヘキサ水素化ジシラン等を挙げることが出来る。フッ素と珪素が一つの化合物としては、例えば、テトラ(トリフルオロメチル)シラン、テトラ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(セプタフルオロプロピル)シラン、ジメチルジ(トリフルオロメチル)シラン、ジエチルジ(ペンタフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロメトキシ)シラン、テトラ(ペンタフルオロエトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、ビニルトリ(トリフルオロメチル)シラン、トリパーフルオロメチルアクリロイルオキシシラン等のフルオロシラン化合物を挙げることが出来、これらの珪素金属化合物から形成された薄膜は反射防止膜の低屈折率膜として有用である。また重合性のシランモノマーのオリゴマーも使用出来る。後述の表面改質の項で述べるようなフッ素化合物、珪素化合物、フルオロシラン化合物を適宜2種以上混合して使用してもよい。上記のようなフッ素化合物及び珪素化合物の混合ガス、またフルオロシラン化合物を用いることによって、表面エネルギーを低くし、撥水性も兼ね備えたより優れた防汚膜を得ることが出来る。
【0051】
チタン化合物をしては、有機チタン化合物、チタン水素化合物、ハロゲン化チタン等があり、有機チタン化合物としては、例えば、トリエチルチタン、トリメチルチタン、トリイソプロピルチタン、トリブチルチタン、テトラエチルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラブチルチタン、トリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリイソプロポキシチタン、トリブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルジメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタン、テトラジメチルアミノチタン、ジメチルチタンジアセトアセトナート、エチルチタントリアセトアセトナート等、チタン水素化合物としてはモノチタン水素化合物、ジチタン水素化合物等、ハロゲン化チタンとしては、トリクロロチタン、テトラクロロチタン等を挙げることが出来、チタン金属化合物が薄膜として形成されることにより、反射防止膜の高屈折率膜に有用である。
【0052】
錫化合物としては、有機錫化合物、錫水素化合物、ハロゲン化錫等であり、有機錫化合物としては、例えば、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等を挙げることが出来、何れも本発明において、好ましく用いることが出来る。また、これらの反応性ガスを2種以上同時に混合して使用してもよい。なお、このようにして、形成された酸化錫層は反射防止膜の他に、表面比抵抗値を1012Ω/cm2以下に下げることが出来るため、帯電防止膜、透明導電膜としても有用である。
【0053】
亜鉛化合物としては、例えば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジエトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛、ジアセトアセトナート、塩化亜鉛等を挙げることが出来、形成された薄膜は蛍光薄膜に有用である。
【0054】
インジウム化合物としては、例えば、トリエトキシインジウム、エチルジエトキシインジウム、ジエチルインジウームアセトアセトナート等を挙げることが出来、形成された薄膜は透明導電膜や、選択的透過膜に有用である。
【0055】
銀化合物としては、例えば、エトキシ銀、銀アセトアセトナート等を挙げることが出来、形成された薄膜は反射膜に有用である。
【0056】
アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、アルミニウムトリアセトアセトナート等を挙げることが出来、形成された薄膜は磁気記録薄膜等に有用である。
【0057】
銅化合物としては、例えば、ジエトキシ銅、銅ジアセトアセトナート、エトキシ銅アセトアセトナート等を挙げることが出来、形成された薄膜としては、反射膜などに有用である。
【0058】
上記の金属化合物としては、金属アルコキシド等の有機金属化合物が好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記化合物が常温常圧で、気体、液体、固体何れの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。有機金属化合物を加熱により気化して用いる場合、金属テトラエトキシド、金属テトライソプロポキシドなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、この場合、希ガス中へ加熱気化して反応ガスに使用すればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。この希ガス中への気化する装置として、リンラック(株)製の気化装置を用いることが出来る。反応ガス中の反応性ガスの濃度は、0.01〜10.0体積%が好ましく、より好ましくは0.01〜1体積%である。
【0059】
また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜5体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0060】
表面改質には、基材表面を親水性化する場合とより疎水性化する場合とがある。親水性化に対しては、例えば、水蒸気、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、一酸化窒素、二酸化窒素等を挙げることが出来る。また疎水性化に対しては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレン、ブテン、ペンテン等の不飽和脂肪族炭化水素、また有機フッ素化合物として、テトラフルオロメタン、ヘキサフルオロエタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロシクロブタン、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、オクタフルオロシクロブタン、ジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロアセトン等を挙げることが出来る。
【0061】
また、若干の条件によって、親水性化になったり疎水性化になったりする化合物としては、トリフルオロメタノール、ペンタフルオロエタノール等のフルオロアルコール、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等のフッ素化脂肪酸、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素化ケトン等の有機フッ素化合物を挙げることが出来る。
【0062】
これらの化合物をプラズマ放電することによって、表面を親水性化した基材は、例えば、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体として使用出来、ゼラチン等の水溶性バインダーを含有する層を強固に接着することが出来る(例えば、特開2000−072903公報)。また表面を疎水性化した基材は、例えば、熱現像ハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることが出来、有機溶媒溶解系のバインダーを強固に接着することが出来る(例えば、特願2000−066778)。
【0063】
本発明の基材は特に限定はないが、高分子フィルムまたはシート状のものが好ましく、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シンジオタクティックポリスチレンフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィンフィルム、紙とポリオレフィンフィルムとの貼り合わせシート、フィラーを含有するポリオレフィンシート、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等を挙げることが出来る。これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することも出来る。ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を使用することが出来る。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。基材としては、これに限定されるものではない。
【0064】
上記基材の中でも、基材表面に薄膜を形成された光学フィルム用には、セルロースエステルフィルムが等方性から特に有用で、画像表示装置に用いられる。セルロースエステルフィルムは市販のものが使用出来る。例えばコニカタックが好ましく用いられる。また、基材表面が改質されたハロゲン化銀写真感光材料用の支持体には、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが有用である。
【0065】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例1
〔プラズマ放電処理による薄膜形成〕
〈基材の作製〉
《セルローストリアセテートフィルム(80μm)の作製》
(ドープの調製)
セルローストリアセテート(アセチル基置換度2.87) 85kg
メチレンクロライド 290L
エタノール 25L
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製、シリカ微粒子)0.12kg
チヌビン171(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、紫外線吸収剤)0.5kg
チヌビン109(同上) 0.5kg
チヌビン326(同上) 0.3kg
フタル酸ジシクロヘキシル 10kg
(セルローストリアセテートフィルムの製膜)
30℃に温度調整したドープをダイに導入し、ダイスリットからドープを無限移行する無端の金属支持体走行する無端のステンレススティールベルト上に均一に流延した。ステンレススティールベルトの流延部は裏面から35℃の温水で加熱した。流延後、支持体上のドープ膜(ステンレススティールベルトに流延以降はウェブということにする)に44℃の温風をあてて乾燥させ、流延から90秒後に剥離残留溶媒量を80質量%として剥離した。剥離部のステンレススティールベルトの温度は11℃とした。剥離されたウェブは、50℃に設定された第1乾燥ゾーンを1分間搬送させた後、第2乾燥ゾーンはテンター乾燥装置を用い、85℃に設定して幅手方向に1.06倍に延伸を行い、30秒間搬送させた。更に120℃に設定された第3乾燥ゾーンで20分間搬送させて、乾燥を行い、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムを得た。なお、フィルム巻き取り時の残留溶媒量は何れも0.01質量%未満であった。残留溶媒量は次式のように表される。
【0067】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100ここで、Mは工程中、ウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃、3時間で乾燥させた時の質量である。
【0068】
上記セルローストリアセテートフィルムの片面に下記のバック層(BC層と略すことがある)及びクリアハードコート層(CHC層と略すことがある)を塗設し、下記プラズマ放電処理に供した。
【0069】
《BC層の塗設》
後述のCHC層の塗設前に、下記のBC層塗布組成物を上記セルローストリアセテートフィルムの片面に、ウェット膜厚14μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥温度85℃にて乾燥させてBC層を塗設した。
【0070】
(BC層塗布組成物)
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
セルロースジアセテート 0.5質量部
アエロジル200V 0.1質量部
《CHC層の塗設》
BC層を塗設したセルローストリアセテートフィルムのBC層側の反対面に下記のCHC層塗布組成物をウェット膜厚で13μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、次いで85℃に設定された乾燥部で乾燥した後、115mJ/cm2の照射強度で紫外線照射し、乾燥膜厚で5μmの中心線平均表面粗さ(Ra)12nmのCHC層を設け、基材を得た。
【0071】
(CHC層塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 75質量部
メチルエチルケトン 75質量部
〈反応ガス及び希ガス〉
《反応ガスGa組成》
希ガス:アルゴンガス 97.7体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(リンテック製気化器によりアルゴンガス中に気化) 0.3体積%
反応性ガス:水素ガス 2体積%
《希ガスGn組成》
希ガス:アルゴンガス 100体積%
〈高周波電源〉
下記高周波電源を使用し表1に記載したように試料1〜6を得た。
【0072】
1:神鋼電機製(50kHz)
2:ハイデン研究所製インパルス高周波電源(連続モードで使用、100kHz)
3:パール工業製高周波電源(200kHz)
4:パール工業製高周波電源(800kHz)
5:日本電子製高周波電源(13.56MHz)
6:パール工業製高周波電源(27MHz)
〈試料の作製〉
図6に記載のプラズマ放電処理装置を用いて、長尺の上記基材のCHC層の上に、下記反応ガス及び希ガスを使用し、反応ガスGaを基材面側を覆うように、また希ガスGnを第2電極側を覆うようにそれぞれ層流として、間隙が1mmの対向電極間に反応ガスGaと希ガスGnをそれぞれ等量(1:1)で流し、基材を20m/分で移送しながら上記高周波電源を表1のように代えて24時間プラズマ放電処理を連続運転し、薄膜を形成させ、試料1〜6を得た。
【0073】
比較例1
対向電極間に反応ガスGaだけを流した以外は実施例1と同様に行い、試料7〜12を得た。
【0074】
〔評価〕
24時間連続プラズマ放電処理後の下記の第2電極面の汚れ、薄膜の膜強度、及び薄膜の膜厚変動の評価を行った。
【0075】
〈第2電極の汚れの評価〉
A:全く汚れが観察されない
B:何となくうっすらと膜のようなものが観察されるが、ハッキリと汚れとは見えない
C:薄膜のような汚れがうっすらと観察される
D:汚れがハッキリと観察される
E:多くの汚れが観察される。
【0076】
〈薄膜の膜強度評価〉
試料の薄膜面に、1cm2角にスティールウールを貼り付けたすり傷試験用プローブのスティールウールのある側を置き、スティールウールの無い側に250gの加重を載せ、プローブを10往復させてすり傷をつけ、下記のごとく、すり傷の評価を行った。
【0077】
A:全くすり傷がなかった
B:1〜2本のすり傷があった
C:3〜5本のすり傷があった
D:6〜20本のすり傷があった
E:21本h以上のすり傷があった。
【0078】
〈薄膜の膜厚変動の評価〉
形成した薄膜の膜厚の分布を、分光光度計U−400型(日立製作所製)を用いて、5°正反射条件にて反射スペクトルの測定を行い、反射のピーク値をとる波長より算出した。測定は10cm幅、2mm間隔で行い、その変動の割合を下記の基準で評価した。
【0079】
A:0〜1%
B:2〜7%
C:8〜20%
D:21〜60%
E:61〜100%
プラズマ放電処理した第2電極の汚れ、薄膜の膜強度及び薄膜の膜厚変動の評価の結果を下記表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
(結果)
基材面を反応ガスが覆うように、また第2電極面を希ガスが覆うように分けて対向電極間に層流として流してプラズマ放電処理した本発明は、24時間の連続運転にも拘わらず第2電極の汚れもなく、薄膜の品質が良好であった。また100kHzを超えて高周波電圧を掛けても全く汚れはなかった。これに対して対向電極間にガスを分けずに反応ガスだけを流した比較例は、第2電極の汚れがひどく、出来上がった薄膜の品質も劣化していた。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理しても、電極への成膜汚れを防止することが可能となり、高メンテナンス性・連続生産性、高品質の薄膜を基材上に形成することが出来るようになり、工業生産性が飛躍的に向上し、更には製品の品質向上が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用な大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向電極間の反応ガス雰囲気内で基材をプラズマ放電処理する装置の一例を示すものである。
【図2】対向電極間を、反応ガスが基材面を、また希ガスが第2電極面を覆うように分かれて層流として流ている状態を示した図である。
【図3】ロール状の回転する第1電極の見取り図である。
【図4】第2電極の一例を見取り図として示したものである。
【図5】希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【図6】希ガスと反応ガスを層流として処理部に導入する手段を有するプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、101、201、301 第1電極
2、102、211、302 第2電極
3、103、303 間隙(処理部)
4、13 ガイドロール
5、105、305 高周波電源
6、12 ニップロール
7 容器用ガス導入口
8、310、320 処理部用ガス導入口
9、15 仕切板
10 容器
11、330 排出口
14 容器排出口
202 金属母材
203 誘電体
312、322 ガスの通路
311、321 導入ノズル
Ga 反応ガス
Gn 希ガス
G ' 処理後のガス
F 基材
Claims (6)
- 第1電極と第2電極からなる対向電極、該対向電極に電圧を印加する印加手段、及び前記対向電極間に希ガス及び薄膜形成性の反応ガスを供給するガス供給手段を有するプラズマ放電処理装置を用い、大気圧もしくはその近傍の圧力下、前記印加手段により前記対向電極に電圧を印加することにより、前記反応ガスを励起して放電プラズマを発生させ、前記基材を該放電プラズマに晒して基材に薄膜を形成させるプラズマ放電処理方法であって、
前記第1電極と前記第2電極の間隙を5mm以下、前記印加手段により前記対向電極へ印加する電圧を100kHzを越える高周波電圧とし、
前記対向電極のうち、前記第1電極の放電面を覆うように前記基材を載置し、前記ガス供給手段から、前記反応ガスと前記希ガスとを、それぞれ層流として、かつ前記反応ガスが前記基材と接し前記希ガスが前記第2電極と接するように供給しながら、前記印加手段により前記対向電極に前記高周波電圧を印加して前記基材に薄膜を形成することを特徴とするプラズマ放電処理方法。 - 前記第1電極がロール状回転電極であり、且つ前記第2電極が前記第1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定電極であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ放電処理方法。
- 前記ガス供給手段は、第1電極と第2電極が対向する空間の前記基材入り口側に、第1電極側に開口する反応性ガスの導入ノズルと、第2電極側に開口する希ガスの導入ノズルを有し、これら導入ノズルの先端はブレードの刃状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ放電処理方法。
- 前記対向電極の少なくとも一方の電極が、金属母材の上に誘電体が被覆された構造を有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のプラズマ放電処理方法。
- 前記誘電体の被覆がセラミックス溶射後、該セラミックスを無機質の封孔処理したものであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のプラズマ放電処理方法。
- ロール状で回転する第1電極及び前記第1電極に対し概略平行となる凹面を有する固定された第2電極を有する対向電極と、該対向電極に電圧を印加する印加手段と、前記対向電極間に、薄膜形成性の反応ガス及び希ガスを供給するガス供給手段とを有し、大気圧もしくはその近傍の圧力下、前記印加手段により、前記対向電極に電圧を印加することにより、前記反応ガスを励起して放電プラズマを発生させ、基材を該放電プラズマに晒して該基材の処理を行うプラズマ放電処理装置を用いて、
前記第1電極と前記第2電極の間隙を5mm以下、前記印加手段により前記対向電極へ印加する電圧を100kHzを越える高周波電圧とし、
前記基材を前記第1電極の回転と同期して移送させ、前記ガス供給手段から、前記第1電極に接して移送する基材面を前記反応ガスが覆うように、また前記第2電極面を前記希ガスが覆うように、前記反応ガスと前記希ガスとをそれぞれ層流として前記対向電極間に供給しながら、前記対向電極に前記印加手段により前記高周波電圧を印加し、移送する前記基材を発生した放電プラズマに晒し前記基材に薄膜を形成させることを特徴とするプラズマ放電処理方法。
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