《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載した車両の構成図である。
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して車両前方領域を走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離及び存在方向はコントローラ50へ出力される。なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
車速センサ20は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報から、自車両周囲の障害物状況、例えば自車両と各障害物との相対距離および相対速度といった障害物に対する走行状態を認識する。コントローラ50は、障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルを算出する。さらに、コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、以下のような制御を行う。
第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1は、アクセルペダル72の踏み込み操作の際に発生する反力および自車両に発生する制駆動力を制御することによって、運転者による自車両の加減速操作を補助し、運転者の運転操作を適切にアシストするものである。そこで、コントローラ50は、自車前方の障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて車両前後方向の反力制御量および制駆動力の補正量を算出する。コントローラ50は、算出した前後方向の反力制御量をアクセルペダル反力制御装置70へと出力し、制駆動力の補正量を駆動力制御装置73および制動力制御装置93にそれぞれ出力する。
アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から出力される反力制御量に応じて、アクセルペダル72のリンク機構に組み込まれたサーボモータ71で発生させるトルクを制御する。サーボモータ71は、アクセルペダル反力制御装置70からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル72を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。
アクセルペダルストロークセンサ74は、リンク機構を介してサーボモータ71の回転角に変換されたアクセルペダル72の踏み込み量(操作量)を検出する。アクセルペダルストロークセンサ74は、検出したアクセルペダル操作量をコントローラ50および駆動力制御装置73にそれぞれ出力する。ブレーキペダルストロークセンサ94は、ブレーキペダル92の踏み込み量(操作量)を検出する。ブレーキペダルストロークセンサ94は、検出したブレーキペダル操作量をコントローラ50および制動力制御装置93にそれぞれ出力する。
駆動力制御装置73は、エンジンへの制御指令を算出する。図3に、駆動力制御装置73における駆動力制御のブロック図を示す。図4に、アクセルペダル操作量SAとドライバ要求駆動力Fdaとの関係を定めた特性マップを示す。駆動力制御装置73は、図4に示すようなマップを用いて、アクセルペダル操作量SAに応じてドライバ要求駆動力Fdaを算出する。そして、駆動力制御装置73は、ドライバ要求駆動力Fdaに、後述する駆動力補正量Faを加えて目標駆動力を算出する。駆動力制御装置73のエンジンコントローラは、目標駆動力に従ってエンジンへの制御指令を算出する。
制動力制御装置93は、ブレーキ液圧指令を出力する。図5に、制動力制御装置93における制動力制御のブロック図を示す。図6に、ブレーキペダル操作量SBとドライバ要求制動力Fdbとの関係を定めた特性マップを示す。制動力制御装置93は、図6に示すようなマップを用いて、ブレーキペダル操作量SBに応じてドライバ要求制動力Fdbを算出する。そして、制動力制御装置93は、ドライバ要求制動力Fdbに、後述する制動力補正値Fbを加えて目標制動力を算出する。制動力制御装置93のブレーキ液圧コントローラは、目標制動力に従ってブレーキ液圧指令を出力する。ブレーキ液圧コントローラからの指令に応じて各車輪に設けられたブレーキ装置95が作動する。
図7に、コントローラ50の内部および周辺の構成を示すブロック図を示す。コントローラ50は、例えばCPUのソフトウェア形態により、障害物認識部51、リスクポテンシャル算出部52、アクセルペダル反力算出部53、制駆動力補正量算出部54、加減速意図検出部55、作動スケジュール変更部56、および制駆動力補正量変更部57を構成する。
障害物認識部51は、レーザレーダ10および車速センサ20から入力される検出値に基づいて自車両前方の障害物状況を認識する。リスクポテンシャル算出部52は、障害物認識部51で認識した障害物状況に基づいて、前方障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルRPを算出する。
アクセルペダル反力算出部53は、リスクポテンシャル算出部52で算出されたリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生させる操作反力の制御量を算出する。制駆動力補正量算出部54は、リスクポテンシャルRPに基づいて制駆動力制御における制駆動力補正量を算出する。加減速意図検出部55は、アクセルペダルストロークセンサ74およびブレーキペダルストロークセンサ94から入力されるアクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBに基づいて、自車両走行時における運転者の加減速意図を検出する。
制駆動力制御を実行する際には、制駆動力補正量算出部54で算出した制駆動力補正量を用い、予め設定された作動スケジュールに従って自車両に発生する駆動力および制動力を制御する。作動スケジュール変更部56は、この作動スケジュールを、加減速意図検出部55で検出した運転者の加減速意図に基づいて変更する。制駆動力補正量変更部57は、作動スケジュール変更部56で変更した作動スケジュールに従って制駆動力補正量を変更する。変更された制駆動力補正量は駆動力制御装置73および制動力制御装置93に出力される。
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図8を用いて詳細に説明する。図8は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS100で走行状態を読み込む。ここで、走行状態は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Xや存在方向、および車速センサ20によって検出される自車両の走行車速Vhを読み込む。
ステップS200では、ステップS100で読み込み、認識した走行状態データに基づいて、前方障害物の状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、コントローラ50のメモリに記憶されている自車両に対する障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS100で得られた現在の走行状態データとにより、現在の障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物が、自車両の前方にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
ステップS300では、自車両前方の障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルRPを算出する。リスクポテンシャル(Risk Potential)は、「潜在的なリスク/危急」を意味し、ここでは特に、自車両と自車両周囲に存在する障害物とが接近していくことにより増大するリスクの大きさを表す。したがって、リスクポテンシャルRPは、自車両と障害物とがどれほど近づいているか、すなわち自車両と障害物とが近づいている程度(接近度合)を表す物理量であるといえる。以下に、リスクポテンシャルRPの算出方法を説明する。
図9(a)に示すように、自車両100の前方に仮想的な弾性体300を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体300が前方障害物200、例えば先行車に当たって圧縮され、自車両100に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。ここで、前方障害物に対するリスクポテンシャルRPは、図9(b)に示すように仮想弾性体300が先行車200に当たって圧縮された場合のバネ力と定義する。リスクポテンシャルRPの算出方法を、図10のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS301で、ステップS200で認識された自車両前方の先行車と自車両との余裕時間TTC(Time To Contact)を算出する。余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量であり、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速Vhおよび相対車速Vr(=自車速−先行車の速度)が一定の場合に、何秒後に車間距離Xがゼロとなり自車両と先行車とが接触するかを示す値である。先行車に対する余裕時間TTCは、以下の(式1)で求められる。
TTC=X/Vr ・・・(式1)
余裕時間TTCの値が小さいほど、障害物への接触が緊迫し、障害物への接近度合が大きいことを意味している。例えば障害物への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどのドライバが減速行動を開始することが知られている。なお、自車両前方に障害物が存在しない場合は、余裕時間TTCは無限大となる。
ステップS302では、ステップS301で算出した余裕時間TTCが閾値Thよりも小さいか否かを判定する。閾値Thは、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御および制駆動力制御を開始するか否かを判断するためのしきい値であり、予め適切な値を設定しておく。余裕時間TTCが制御開始を判断するために設定された閾値Thより小さい場合(TTC<Th)は、ステップS303へ進み、仮想弾性体300の長さを表す基準距離Lを算出する。基準距離Lは、閾値Thおよび自車両と障害物との相対距離Vrを用いて以下の(式2)から算出する。
L=Th×Vr ・・・(式2)
ステップS304では、ステップS303で算出した基準距離Lを用いて、以下の(式3)から、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。
RP=K・(L−X) ・・・(式3)
ここで、Kは仮想弾性体300のバネ定数である。これにより、自車両と障害物との車間距離Xが短くなり仮想弾性体300が圧縮されるほど、リスクポテンシャルRPが大きくなる。
ステップS302が否定判定されて余裕時間TTC≧Thの場合、すなわち図9(a)に示すように仮想弾性体300が先行車200に接触していない場合は、自車両と先行車との接触のリスクが低いと判断してステップS305へ進み、リスクポテンシャルRP=0とする。
このようにステップS300でリスクポテンシャルRPを算出した後、ステップS400へ進む。ステップS400では、ステップS300で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生させる操作反力の反力制御指令値FAを算出する。図11に、リスクポテンシャルRPとアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図11に示すように、リスクポテンシャルRPが大きいほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。リスクポテンシャルRPが所定の最大値RPmaxより大きい場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御指令値FAを最大値FAmaxに固定する。
ステップS500では、ステップS300で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、制駆動力補正量を算出する。ここでの処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS501で制駆動力補正量を算出するために用いる反発力Fcを、リスクポテンシャルRPに基づいて算出する。ここで、反発力Fcは、図9(a)(b)に示した仮想弾性体300の反発力として考えることができる。そこで、図13に示すような関係にしたがって、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど反発力Fcが大きくなるように反発力Fcを算出する。なお、リスクポテンシャルRPが所定値RPmを超えると、反発力Fcを最大値Fcmaxに固定する。
ステップS502では、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50には、図4と同様のマップが記憶されており、アクセルペダル操作量SAに基づいてドライバ要求駆動力Fdaを推定する。ステップS510では駆動力補正量Faおよび制動力補正量Fbをそれぞれ算出する。ここでの処理を図14のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS511で、ステップS501で算出した反発力FcとステップS502で推定したドライバ要求駆動力Fdaとの大小関係を比較する。Fda≧Fcの場合は、ステップS512へ進む。ステップS512では、駆動力補正量Faとして−Fcをセットし、ステップS513で制動力補正量Fbに0をセットする。
すなわち、Fda−Fc≧0であることから、駆動力Fdaを反発力Fcにより補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置73のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、運転者がアクセルペダル72を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動として運転者に感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動として運転者に感じられる。
一方、ステップS511が否定判定され、Fda<Fcの場合は、駆動力制御装置73のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS514へ進んで駆動力補正量Faに−Fdaをセットし、ステップS515で制動力補正量Fbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動として運転者には察知される。
図15に、駆動力および制動力の補正方法を説明する図を示す。図15の横軸はアクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBを示しており、原点0から右へ進むほどアクセルペダル操作量SAが大きく、左へ進むほどブレーキペダル操作量SBが大きいことを示している。図15の縦軸は駆動力および制動力を示し、原点0から上へ進むほど駆動力が大きく、下へ進むほど制動力が大きいことを示している。図15において、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fda、およびブレーキペダル操作量SBに応じた要求制動力Fdbをそれぞれ一点鎖線で示す。また、リスクポテンシャルRPに基づいて補正した駆動力および制動力を実線で示す。
アクセルペダル操作量SAが大きく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが反発力Fc以上の場合は、駆動力を補正量Faに応じて減少方向に補正する。一方、アクセルペダル操作量SAが小さく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが反発力Fcよりも小さい場合は、駆動力を発生しないような補正量Faを設定して駆動力を補正する。さらに、反発力Fcと要求駆動力Fdaとの差を補正量Fbとして設定する。これにより、アクセルペダル操作量SAに応じた緩制動を行う。
ブレーキペダル92が踏み込まれると、補正量Fbに基づいて制動力を増大方向に補正する。これにより、全体として車両の走行抵抗を補正量、すなわち仮想弾性体の反発力Fcに相当して増大させるように制駆動力の特性を補正している。
このように第1の実施の形態では、図15に示すように、リスクポテンシャルRPに応じた補正量Fa、Fbを用い、アクセルペダル操作量SAに応じた駆動力特性を減少方向に補正するとともに、ブレーキペダル操作量SBに応じた制動力特性を増加方向に補正する、基本的な制駆動力制御の作動スケジュールが予め設定されている。すなわち、基本的な作動スケジュールは、まず、駆動力制御を行い、駆動力制御のみではリスクポテンシャルRPに応じた目標減速度を得ることができない場合に、制動力制御を行うように設定されている。具体的には、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど大きな減速度を発生させるように、加速抑制、エンジンブレーキ、緩減速、減速、および運転者のブレーキペダル操作と自動ブレーキの組み合わせ、の順番で制御を行うように設定されている。
ステップS500で制駆動力補正量を算出した後、ステップS600へ進む。ステップS600では、アクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBに基づいて、運転者の加減速意図を検出する。ここでの処理を、図16のフローチャートを用いて説明する。
ステップS601で、アクセルペダルストロークセンサ74で検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込み、アクセルペダル操作速度dSを算出する。アクセルペダル操作速度dSは、例えばアクセルペダル操作量SAを時間微分することにより算出でき、アクセルペダル72が踏み込み方向に操作されている場合に正の値で表される。ステップS602では、ブレーキペダルストロークセンサ94で検出されるブレーキペダル操作量SBを読み込む。
ステップS603では、アクセルペダル操作量SAが0よりも大きいか否かを判定する。SA>0で、アクセルペダル72が踏み込まれている場合は、ステップS604へ進み、アクセルペダル操作速度dSが所定値dS1以上であるか否かを判定する。所定値dS1は、アクセルペダル操作速度dSから運転者の加速意図を判断するためのしきい値であり、予め適切な正の値を設定しておく。dS≧dS1の場合は、ステップS605へ進み、運転者の運転意図を加速意図と判断してフラグFlg=1を設定する。
ステップS604が否定判定されるとステップS606へ進み、アクセルペダル操作速度dSが所定値−dS2以上であるか否かを判定する。所定値−dS2は、アクセルペダル操作速度dSから運転者が現在の車速Vhを略一定に保とうとしているかを判断するためのしきい値であり、予め適切な負の値を設定しておく。dS≧−dS2の場合は、運転者が現在の車速Vhを略一定に保とうとしていると判断してフラグFlg=2を設定する。ここで、dS1>dS>−dS2で、現在の車速Vhを略一定に保とうとする運転者の運転意図を一定意図とする。
ステップS606が否定判定されると、ステップS608へ進み、所定速度以上でアクセルペダル72を戻す方向に操作しているので、運転者の運転意図をエンブレ意図と判断してフラグFlg=3を設定する。この場合、アクセルペダル72が踏み込まれているので実際にはエンジンブレーキが発生しない場合もあるが、アクセルペダル72を所定速度以上で戻し操作していることから、運転者はエンジンブレーキの発生を予測して車速Vhの低下を期待していると考えられる。そこで、dS<−dS2の場合にエンブレ意図と判断している。
ステップS603が否定判定され、アクセルペダル72が踏み込まれていない場合は、ステップS609へ進み、ブレーキペダル操作量SB=0であるか否かを判定する。SB=0でブレーキペダル92も踏み込まれていない場合は、ステップS610へ進み、運転者の運転意図を緩減速意図と判断してフラグFlg=4を設定する。この場合、ブレーキペダル92は踏み込まれていないので、運転者は積極的な減速操作を行っていない。ただし、アクセルペダル72も踏み込んでいないため、上述したエンブレ意図よりも大きな減速を期待していると考えられる。そこで、アクセルペダル72もブレーキペダル92も踏み込まれていない場合に緩減速意図と判断している。
ステップS609が否定判定され、ブレーキペダル92が踏み込まれている場合は、ステップS611へ進み、運転者の運転意図を減速意図と判断してフラグFlg=5を設定する。このように設定した加減速意図は、減速意図、緩減速意図、エンブレ意図、一定意図、および加速意図の順で、運転者が加速しようとする意図が強くなる。
このように、ステップS600で運転者の加減速意図を検出した後、ステップS700へ進む。ステップS700では、制駆動力制御の作動スケジュールを変更する。図17に、運転者の加減速意図と作動スケジュールとの関係を示す。第1の実施の形態においては、制駆動力制御における作動スケジュールを、加減速意図に応じて変更する。
具体的には、図17に示すように、運転者の運転意図が加速意図の場合は制駆動力制御を加速抑制までに制限する。一定意図の場合はエンブレ程度の減速度まで発生させる制御までに制限する。エンブレ意図の場合は、シフトダウン程度の減速度まで発生させる緩減速までに制限する。緩減速意図の場合は、減速制御までに制限する。減速意図の場合は、制限を設けずに、運転者のブレーキペダル操作に応じた制動力にリスクポテンシャルRPに応じた補正量を加えて制動力制御を行う。
作動スケジュール変更処理を、図18のフローチャートを用いて説明する。ステップS701では、ステップS600で検出された運転者の運転意図が加速意図(Flg=1)であるか否かを判定する。加速意図の場合はステップS702へ進み、加速抑制までを許可する作動スケジュールSchedule=1に設定する。ステップS701が否定判定されるとステップS703へ進み、一定意図(Flg=2)であるか否かを判定する。一定意図の場合はステップS704へ進み、エンブレ程度の減速までを許可する作動スケジュールSchedule=2に設定する。
ステップS703が否定判定されるとステップS705へ進み、エンブレ意図(Flg=3)であるか否かを判定する。エンブレ意図の場合はステップS706へ進み、緩減速制御までを許可する作動スケジュールSchedule=3に設定する。ステップS705が否定判定されるとステップS707へ進み、緩減速意図(Flg=4)であるか否かを判定する。緩減速意図の場合はステップS708へ進み、減速制御までを許可する作動スケジュールSchedule=4に設定する。ステップS707が否定判定されるとステップS709へ進み、全範囲の制駆動力制御を許可する作動スケジュールSchedule=5に設定する。
このようにステップS700で作動スケジュールを変更した後、ステップS800へ進む。ステップS800では、ステップS700で変更した作動スケジュールに従って、ステップS500で算出した制駆動力補正量Fa,Fbを変更する。ここでの処理を図19のフローチャートを用いて説明する。
ステップS801で作動スケジュールSchedule=1であるか否かを判定する。ステップS801が肯定判定されるとステップS810へ進み、加速抑制処理を行う。ステップS801が否定判定されるとステップS802へ進み、作動スケジュールSchedule=2であるか否かを判定する。ステップS802が肯定判定されるとステップS820へ進み、エンブレ処理を行う。
ステップS802が否定判定されるとステップS803へ進み、作動スケジュールSchedule=3であるか否かを判定する。ステップS803が肯定判定されるとステップS830へ進み、緩減速制御処理を行う。ステップS803が否定判定されるとステップS804へ進み、作動スケジュールSchedule=4であるか否かを判定する。ステップS804が肯定判定されるとステップS840へ進み、減速処理を行う。ステップS804が否定判定されるとステップS850へ進み、運転者によるブレーキ操作と制動力制御の加算処理を行う。
ステップS810における加速抑制処理、ステップS820におけるエンブレ処理、ステップS830における緩減速制御処理、ステップ840における減速制御処理、およびステップS850における加算処理について、以下に説明する。
まず、ステップS810における加速抑制処理について、図20のフローチャートを用いて説明する。ステップS811で走行抵抗F0を算出する。走行抵抗F0は、図21に従って自車速Vhに基づいて算出する。走行抵抗F0は自車速Vhが大きくなるほど大きくなる。なお、走行抵抗F0を自車両の加速度や車重等に基づいて別の方法により算出することもできる。
ステップS812では、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaに駆動力補正量Faを加算した値(Fda+Fa)が、ステップS811で算出した走行抵抗F0以上であるか否かを判定する。(Fda+Fa)≧F0の場合は、ステップS813へ進む。ステップS813では、変更後の駆動力補正量Fahosei=Faに設定する。(Fda+Fa)<F0の場合は、ステップS814へ進み、変更後の駆動力補正量Fahosei=(−Fda+F0)に設定する。つづくステップS815では、変更後の制動力補正量Fbhosei=0に設定する。
これにより、図22に示すようにリスクポテンシャルRPに応じた駆動力制御を行う際の駆動力の下限値が走行抵抗F0に相当する値に制限される。すなわち、駆動力を減少するように補正制御を行う場合でも、最低限、走行抵抗F0相当の駆動力は発生することになる。これにより、加速を抑制する制御が行われる。
つぎに、ステップS820におけるエンブレ処理について、図23のフローチャートを用いて説明する。ステップS821では、変更後の駆動力補正量Fahosei=Faに設定する。ステップS822では、変更後の制動力補正量Fbhosei=0に設定する。これにより、図22に示すように駆動力の下限値が0に設定され、駆動力を0まで低下させる制御を行うことができる。ただし、制動力は発生させない。これにより、エンジンブレーキ程度の減速度を発生させる制御が行われる。
ステップS830における緩減速制御処理について、図24のフローチャートを用いて説明する。ステップS831では、変更後の駆動力補正量Fahosei=Faに設定する。ステップS832では、制動力補正量Fbが所定値Fb0以上であるか否かを判定する。所定値Fb0は、シフトダウン相当の緩減速を発生させる制動力として予め適切な値を設定しておく。Fb≧Fb0の場合は、ステップS833へ進み、変更後の制動力補正量Fbhosei=Fb0に設定する。すなわち、制動力補正量Fbを所定値Fb0でリミットする。Fb<Fb0の場合は、ステップS834へ進み、変更後の制動力補正量Fbhosei=Fbに設定する。
これにより、リスクポテンシャルRPに応じた制動力制御を行う際の制動力は、ドライバ要求制動力Fdbに所定値Fb0を加えた値に制限される。すなわち、制動力を増大するように補正制御を行う場合でも、制動力の増加量は所定値Fb0に制限される。これにより、緩減速を発生させる制御が行われる。
つぎに、ステップS840における緩減速制御処理について、図25のフローチャートを用いて説明する。ステップS841では、変更後の駆動力補正量Fahosei=Faに設定する。ステップS842では、制動力補正量Fbが所定値Fb1以上であるか否かを判定する。所定値Fb1は、運転者が通常行うブレーキペダル操作による制動力の範囲内で、緩減速制御で用いた所定値Fb0よりも大きな値として予め適切な値を設定しておく。Fb≧Fb1の場合は、ステップS843へ進み、変更後の制動力補正量Fbhosei=Fb1に設定する。すなわち、制動力補正量Fbを所定値Fb1でリミットする。Fb<Fb1の場合は、ステップS844へ進み、変更後の制動力補正量Fbhosei=Fbに設定する。
これにより、リスクポテンシャルRPに応じた制動力制御を行う際の制動力はドライバ要求制動力Fdbに所定値Fb1を加えた値に制限される。すなわち、制動力を増大するように補正制御を行う場合でも、制動力の増加量は所定値Fb1に制限される。
最後に、ステップS850における加算処理について、図26のフローチャートを用いて説明する。ステップS851では、変更後の駆動力補正量Fahosei=Faに設定する。ステップS852では、変更後の制動力補正量Fbhosei=Fbに設定する。これにより、図22に示すようにリスクポテンシャルRPに応じた制動力制御を行う際に、運転者のブレーキペダル操作に応じた要求制動力FdbにリスクポテンシャルRPに応じた補正量Fbを加えた値が制動力として発生する。
このように、ステップS800で制駆動力補正量変更処理を行った後、ステップS900へ進む。ステップS900では、ステップS400で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置70へ出力する。アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。
ステップS1000では、ステップS800で算出した変更後の駆動力補正量Fahosei、及び変更後の制動力補正量Fbhoseiをそれぞれ駆動力制御装置73、及び制動力制御装置93に出力する。駆動力制御装置73は、変更後の駆動力補正量Fahoseiと要求駆動力Fdaとから目標駆動力を算出し、算出した目標駆動力を発生するようにエンジンコントローラを制御する。また、制動力制御装置93は、変更後の制動力補正量Fbhoseiと要求制動力Fdbとから目標制動力を算出し、目標制動力を発生するようにブレーキ液圧コントローラを制御する。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両の前方に存在する障害物を検出し、障害物の検出結果に基づいて自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。そして、リスクポテンシャルRPに基づいて自車両に発生する制駆動力の制御量Fa,Fbを算出し、制駆動力制御量Fa,Fbに基づいて、予め設定された作動スケジュールにしたがって自車両の駆動力および制動力を制御する。車両用運転操作補助装置1のコントローラ50は、運転者の加減速意図を検出し、その検出結果に基づいて、制駆動力制御の作動スケジュールを変更する。これにより、自車両に発生する制駆動力の変化により障害物に対するリスクポテンシャルRPを運転者に伝達することができるとともに、運転者の加減速意図に基づいて制駆動力制御の作動スケジュールを変更するので、運転者の加減速意図を妨げることなく運転操作を適切な方向に促すことが可能となる。
(2)作動スケジュールは、リスクポテンシャルRPに応じて駆動力制御から制動力制御の順に制御を行うように設定されている。具体的には、アクセルペダル72が操作されている場合は、まずリスクポテンシャルRPに応じて駆動力制御のみを行い、リスクポテンシャルRPが大きくなると駆動力制御に加えて制動力制御を行うように作動スケジュールが設定されている。運転者が加速しようとしている意図が検出されると、コントローラ50は、駆動力制御のみを行うように作動スケジュールを変更する。これにより、運転者が加速しようとしている場合に、その意図に反してシステムにより自車両が減速してしまうことを防止できる。
(3)作動スケジュールは、リスクポテンシャルRPに応じて、加速抑制、エンジントルクダウン、緩減速、制動の順に制御を行うように設定されており、コントローラ50は、加減速意図に基づいて、運転者が加速しようとしている場合には加速抑制のみを行うようにし、加速しようとするする意図が小さくなるほど、加速抑制に、エンジントルクダウン、緩減速、制動の順で制御を加えるように作動スケジュールを変更する。具体的には、図17に示すように加速意図、一定意図、エンブレ意図、緩減速意図、減速意図の順に加速しようとする意図が小さくなるほど、加速抑制に、エンジントルクダウン、緩減速、制動の順で制御を加えるように作動スケジュールを変更する。ここで、エンブレ制御がエンジントルクダウンに相当し、ドライバブレーキ操作と制動制御の加算が制動に相当する。これにより、運転者が加速しようとしている場合に、その意図に反してシステムにより自車両が減速してしまうことを防止できるとともに、運転者が積極的に減速操作を行っている場合には、それを補助するように制動制御を行うことができる。
(4)コントローラ50は、運転者の加減速意図が、加速意図、車速一定意図、エンブレ意図、緩減速意図、および減速意図の何れであるかを検出する。これにより、運転者の加減速意図に応じてきめ細かな制駆動力制御の設定を行うことができる。
(5)車両用運転操作補助装置1は、運転者によるアクセルペダル操作量SAとブレーキペダル操作量SBを検出する。そして、コントローラ50においてアクセルペダル操作量SAとブレーキペダル操作量SBに基づいて、加減速意図を検出する。アクセルペダル72およびブレーキペダル92は、運転者が自車両を加速させたり減速させたりする場合に操作する運転操作機器であるので、これらの操作状態から加減速意図を検出することにより、運転者の運転操作から直接的に意図検出を行うことができる。
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
第2の実施の形態では、運転者の加減速意図に基づいて、リスクポテンシャルRPに応じてアクセルペダル72に発生させる操作反力も変更する。そこで、第2の実施の形態における車両用運転操作補助装置1のコントローラ50Aは、図27に示すように、障害物認識部51、リスクポテンシャル算出部52、アクセルペダル反力算出部53、制駆動力補正量算出部54、加減速意図検出部55、作動スケジュール変更部56、制駆動力補正量変更部57、およびアクセルペダル反力変更部58を備えている。
アクセルペダル反力変更部58は、アクセルペダル反力算出部53で算出した操作反力の制御指令値FAを、作動スケジュールに従って変更する。変更された反力制御指令値がアクセルペダル反力制御装置70へ出力される。
以下に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図28を用いて詳細に説明する。図28は、第2の実施の形態のコントローラ50Aにおける運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS100〜S800での処理は、図8に示したフローチャートにおける処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS860では、ステップS700で変更した作動スケジュールに従って、ステップS400で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAを変更する。ここでの処理を、図29のフローチャートを用いて説明する。ステップS861では、アクセルペダル反力制御指令値FAを変更するための反力変更ゲインGaを算出する。ここでの処理を図30のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS871で、作動Schedule=1であるか否かを判定する。作動Schedule=1の場合はステップS872へ進み、反力変更ゲインGa=Ga1を設定する。ステップS871が否定判定されるとステップS873へ進み、作動Schedule=2であるか否かを判定する。作動Schedule=2の場合はステップS874へ進み、反力変更ゲインGa=Ga2を設定する。ステップS873が否定判定されるとステップS875へ進み、反力変更ゲインGa=1に設定する。ここで、反力変更ゲインGaは、Ga1>Ga2>1となるように予め適切な値を設定しておく。
作動Schedule=1の場合、または作動Schedule=2の場合、すなわち運転者の運転意図が加速意図または一定意図の場合には、反力変更ゲインGaを1よりも大きな値Ga1、Ga2に設定することにより、アクセルペダル72に発生する操作反力を強調する。作動Schedule=1または2以外の場合、すなわち運転者の運転意図が車速Vhを低下させようとする意図である場合には、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力をそのまま発生させるように、反力変更ゲインGaを1に設定する。
ステップS876では、ステップS872、S874、またはS875で設定した反力変更ゲインGaが、反力変更ゲインGaの前回値Ga_zに所定の変化量ΔGaを加算した値よりも大きいか否かを判定する。Ga>(Ga_z+ΔGa)の場合は、ステップS877へ進み、反力変更ゲインGa=Ga_z+ΔGaに設定する。これにより、反力変更ゲインGaに変化率リミッタをかける。
ステップS876が否定判定され、Ga≦(Ga_z+ΔGa)の場合は、ステップS878へ進む。ステップS878では、反力変更ゲインGaが前回値Ga_zから所定の変化量ΔGaを減算した値よりも小さいか否かを判定する。Ga<(Ga_z−ΔGa)の場合は、ステップS879へ進み、反力変更ゲインGa=Ga_z−ΔGaに設定する。これにより、反力変更ゲインGaに変化率リミッタをかける。
ステップS878が否定判定されると、ステップS872、S874、またはS875で設定した反力変更ゲインGaをそのまま使用する。ステップS880では、ステップS872、S874、またはS875で設定した反力変更ゲインGaを、前回値Ga_zとして設定する。
このようにステップS861でアクセルペダル反力変更ゲインGaを算出した後、ステップS862へ進む。ステップS862では、ステップS400で算出したアクセルペダル反力制御指令値FAを、ステップS861で算出した反力変更ゲインGaを用いて変更する。変更後の反力制御指令値FAhoseiは、以下の(式4)で表される。
FAhosei=Ga×FA ・・・(式4)
これにより、運転者の運転意図が加速意図または一定意図の場合(作動Schedule=1,2)には、アクセルペダル反力制御指令値FAが増加するように補正され、アクセルペダル72に発生する操作反力が強調される。運転者の運転意図が加速意図または一定意図以外の場合(作動Schedule=1、2以外)、すなわち運転者が車速Vhを低下させようとしている場合には、リスクポテンシャルRPに応じた反力制御指令値FAをそのまま発生させる。
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50Aは、リスクポテンシャルRPに基づいて運転操作機器に発生する操作反力FAを算出し、変更された作動スケジュールに基づいて操作反力FAを補正する。そして、補正された操作反力FAhoseiを運転操作機器に発生させる。これにより、リスクポテンシャルRPを運転操作機器からの操作反力として運転者に伝達する場合に、制駆動力制御と連動した効果的な制御を行うことが可能となる。
(2)コントローラ50Aは、加速抑制のみを行うように作動スケジュールが変更されている場合に、操作反力を増加補正する。これにより、運転者の加速意図に対応して加速抑制のみを行うように制駆動力制御を制限した場合に、運転操作機器から発生する操作反力を強調し、運転者に与える違和感の低減と確実な情報伝達を両立することが可能となる。
上述した第1及び第2の実施の形態では、運転者の加減速意図が加速意図、一定意図、エンブレ意図、緩減速意図、および減速意図のいずれであるかを検出した。ただし、これには限定されず、少なくとも加速しようとする意図があるか否かを検出するように構成することもできる。また、作動スケジュールを加速抑制、エンブレ、緩減速制御、減速制御、ドライバブレーキ操作と制動制御の加算の順に設定したが、少なくとも加速抑制およびドライバブレーキペダル操作と制動制御の加算を実施するように設定することもできる。
上述した第1および第2の実施の形態では、リスクポテンシャルRPに応じてアクセルペダル操作反力制御と制駆動力制御とを行うように構成したが、これには限定されず、リスクポテンシャルRPに応じて自車両に発生する制駆動力のみを制御することもできる。また、運転操作機器としてブレーキペダル92を用い、リスクポテンシャルRPに応じてブレーキペダル92に発生する操作反力を制御することも可能である。
上述した第1および第2の実施の形態においては、リスクポテンシャルRPとして余裕時間TTCに関連付けた仮想弾性体300の反発力を算出した。ただしこれには限定されず、自車両から障害物の現在位置までの到達時間を表す車間時間THW(=X/Vh)に関連付けた仮想弾性体を設定し、この反発力をリスクポテンシャルRPとして算出することもできる。また、余裕時間TTCに基づく反発力と車間時間THWに基づく反発力からセレクトハイによりリスクポテンシャルRPを算出することもできる。あるいは、車間時間THWの逆数の関数と余裕時間TTCの逆数の関数とを加算したり、これらからセレクトハイによりリスクポテンシャルRPを算出することもできる。
リスクポテンシャルRPと反力制御指令値FAとの関係は図11に示すものには限定されず、リスクポテンシャルRPが増加するほど反力制御指令値FAが増加するように設定することができる。
上述した第2の実施の形態においては、作動スケジュール変更部56からの信号に基づいてアクセルペダル反力制御指令値FAを補正するようにした。ただし、これには限定されず、加減速意図検出部55の検出結果に基づいてアクセルペダル反力制御指令値FAを補正するように構成することもできる。
以上説明した第1および第2の実施の形態においては、レーザレーダ10が障害物検出手段として機能し、リスクポテンシャル算出部52がリスクポテンシャル算出手段として機能し、制駆動力補正量算出部54、駆動力制御装置73および制動力制御装置93がが制駆動力制御量算出手段および制駆動力制御手段として機能し、加減速意図検出部55が加減速意図検出手段として機能し、作動スケジュール変更部56が作動スケジュール変更手段として機能することができる。また、アクセルペダル反力算出部53が操作反力算出手段として機能し、アクセルペダル反力変更部58が操作反力補正手段として機能し、アクセルペダル反力制御装置70が操作反力発生手段として機能することができる。さらに、アクセルペダルストロークセンサ74がアクセルペダル操作量検出手段として機能し、ブレーキペダルストロークセンサ94がブレーキペダル操作量検出手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、レーザレーダ10の代わりに例えば別方式のミリ波レーダを用いることも可能である。また、加減速意図検出手段として、アクセルペダル72の操作状態のみに基づいて加減速意図を検出するように構成することも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図31に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成を示すシステム図を示す。図31において、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
車両用運転操作補助装置3は、レーザレーダ10,車速センサ20,舵角センサ30,障害物検知装置40,コントローラ50B,アクセルペダル反力制御装置70,駆動力制御装置73,および制動力制御装置93等を備えている。
障害物検知装置40は、レーザレーダ10および車速センサ20の検出結果に基づいて前方障害物に関する情報を取得する。具体的には、障害物検知装置40は、レーザレーダ10からスキャニング周期毎またはスキャニング角ごとに出力される検出結果に基づいて、検出した物体の動きを判別するとともに、物体間の近接状態や動きの類似性等に基づいて、検出した物体が同一物体であるか異なる物体であるかを判別する。
そして、障害物検知装置40は、レーザレーダ10と車速センサ20からの信号に基づいて、自車両周囲の障害物情報、すなわち自車両と前方障害物との車間距離と相対速度、自車両に対する前方障害物の左右方向距離、および前方障害物の幅等を認識する。なお、障害物検知装置40は、複数の前方障害物を検知した場合は各障害物についての情報を取得する。障害物検知装置40は、取得した障害物情報をコントローラ50Bへ出力する。
舵角センサ30は、ステアリングコラムもしくはステアリングホイール付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50Bへ出力する。
コントローラ50Bは、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置3全体の制御を行う。コントローラ50Bは、車速センサ20から入力される自車速、および障害物検知装置40から入力される障害物情報から、自車両の走行状況を認識する。コントローラ50Bは、走行状況に基づいて前方障害物に対する自車両の接近度合を表す物理量であるリスクポテンシャルを算出する。
コントローラ50Bは、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、自車両に発生する制駆動力を制御するとともに、運転者が運転操作のために操作する運転操作機器に発生する操作反力を制御する。ここで、運転操作機器は、例えば運転者が自車両を加速したり減速したりするときに操作するアクセルペダル72である。なお、リスクポテンシャルに基づくアクセルペダル反力制御を行わない場合は、アクセルペダル72には例えばアクセルペダル操作量SAに応じた引っ張りバネ(不図示)のバネ力が反力として作用する。
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を説明する。まず、動作の概要を説明する。
コントローラ50Bは、運転者の加減速意図を検出し、検出した加減速意図、およびリスクポテンシャルに基づいて、自車両に発生する制駆動力の補正量、およびアクセルペダル72に発生させる反力制御量を調整する。具体的には、加減速意図に応じて制駆動力補正量と反力制御量とが連動して変化するように調整する。
第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を、図32を用いて詳細に説明する。図32は、第3の実施の形態のコントローラ50Bにおける運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS2010で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、舵角センサ30によって検出される自車両の操舵角δのデータを読み込む。ステップS2020では、アクセルペダルストロークセンサ74によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。ステップS2030では、レーダ装置10および車速センサ20の検出結果に従って障害物検知装置40で算出した複数の前方障害物に関する情報を読み込む。前方障害物に関する情報は、例えば各障害物までの前後方向の距離(車間距離)Dと、自車両に対する障害物の左右方向位置xおよび前後方向位置yである。
ステップS2040では、ステップS2010で読み込んだ自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、自車両の進路を推定する。以下に、予測進路の推定方法を図33および図34を用いて説明する。予測進路を推定するために、図33に示すように自車両が矢印方向に進行している場合の旋回半径Rを算出する。まず、自車両の旋回曲率ρ(1/m)を算出する。旋回曲率ρは、自車速Vhおよび操舵角δに基づいて、以下の(式5)で算出できる。
ρ=1/{L(1+A・Vh2)}×δ/N ・・・(式5)
ここで、L:自車両のホイールベース、A:車両に応じて定められたスタビリティファクタ(正の定数)、N:ステアリングギア比である。
旋回半径Rは、旋回曲率ρを用いて以下の(式6)で表される。
R=1/ρ ・・・(式6)
(式6)を用いて算出した旋回半径Rを用いることで、図33に示すように自車両の走行軌道を半径Rの円弧として予測することができる。そして、図34に示すように、旋回半径Rの円弧を中心線とした幅Twの領域を、自車両が走行するであろう予測進路として設定する。幅Twは、自車両の幅に基づいて予め適切に設定しておく。
ステップS2050では、障害物検知装置40によって検出され、ステップS2040で設定した自車両の予測進路内にあると判定した障害物のうち、自車両に最も近い物体を、前方障害物として選択する。この前方障害物は、以降の処理で自車両のリスクポテンシャルRPを算出する対象となる障害物である。
ステップS2060では、ステップS2050で前方障害物として選択した障害物について、自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。ここでの処理を、図35のフローチャートを用いて説明する。以降では、自車両前方を走行する先行車を前方障害物として説明する。まず、ステップS2061で、自車両と前方障害物との車間時間THWおよび余裕時間TTCを算出する。車間時間THWは、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す物理量であり、以下の(式7)から算出される。
THW=D/Vh ・・・(式7)
先行車に対する余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量であり、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速Vhおよび相対車速Vrが一定の場合に、何秒後に車間距離Dがゼロとなり自車両と先行車両とが接触するかを示す値である。なお、相対速度VrはVr=(自車速−先行車速)であり、自車速が先行車速よりも低い場合はVr=0とする。障害物に対する余裕時間TTCは、以下の(式8)で求められる。
TTC=D/Vr ・・・(式8)
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどのドライバが減速行動を開始することが知られている。車間時間THWおよび余裕時間TTCが小さいほど自車両と先行車とが近づいていることを表す。
ここでは、車間時間THWに関連づけた仮想弾性体、および余裕時間TTCに関連づけた仮想弾性体を自車両と前方障害物との間に設定したモデルを想定し、それぞれの仮想弾性体による反発力を、車間時間THWに基づくリスクポテンシャルRP_THWおよび余裕時間TTCに基づくリスクポテンシャルRP_TTCとして算出する。
ステップS2062で、車間時間THWをしきい値TH_THWと比較する。車間時間THWが制御開始を判断するためのしきい値TH_THWより小さい場合(THW<TH_THW)は、ステップS2063へ進む。ステップS2063では、自車速Vhと車間時間THWを用いて、以下の(式9)から車間時間THWに基づくリスクポテンシャルRP_THWを算出する。
RP_THW=K_THW×(TH_THW−THW)×Vh ・・・(式9)
(式9)においてK_THWは車間時間THWに関連付けた仮想弾性体のばね定数であり、TH_THW・Vhは仮想弾性体の長さに相当する。
ステップS2062でTHW≧TH_THWと判定された場合は、ステップS2064へ進んでリスクポテンシャルRP_THW=0にする。
ステップS2065では、余裕時間TTCをしきい値TH_TTCと比較する。余裕時間TTCが制御開始を判断するためのしきい値TH_TTCより小さい場合(TTC<TH_TTC)は、ステップS2066へ進む。ステップS2066では、相対速度Vrと余裕時間TTCを用いて、以下の(式10)から余裕時間TTCに基づくリスクポテンシャルRP_TTCを算出する。
RP_TTC=K_TTC×(TH_TTC−TTC)×Vr ・・・(式10)
(式10)においてK_TTCは余裕時間TTCに関連付けた仮想弾性体のばね定数であり、TH_TTC・Vrは仮想弾性体の長さに相当する。
ステップS2065でTTC≧TH_TTCと判定された場合は、ステップS2067へ進んでリスクポテンシャルRP_TTC=0にする。
つづくステップS2068では、ステップS2063またはS2064で算出した車間時間THWに基づくリスクポテンシャルRP_THWと、ステップS2066またはS2067で算出した余裕時間TTCに基づくリスクポテンシャルRP_TTCのうち、大きい方の値をリスクポテンシャルRPとして選択する。
このようにステップS2060でリスクポテンシャルRPを算出した後、ステップS2070へ進む。ステップS2070では、ステップS2060で算出した前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPに基づいて、目標制駆動力およびアクセルペダル反力制御指令値を算出する際に用いる制御反発力Fcを算出する。そこで、上述した図13に示すような関係にしたがって、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど反発力Fcが大きくなるように反発力Fcを算出する。
つづくステップS2080では、アクセルペダル操作量SAに基づいて、運転者の加減速意図を検出する。ここでの処理を、図36のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS2081で、アクセルペダル72が踏み込まれているか否かを判定する。具体的には、ステップS2020で読み込んだアクセルペダル操作量SAが所定値TH_0よりも大きい場合に、アクセルペダル72の踏み込み操作ありと判定する。所定値TH_0は、0%に誤差相当の値を加えた値として予め適切に設定しておく。踏み込み操作なしと判定されるとステップS2082へ進み、アクセルペダル72が解放されており運転者が減速しようとしていると判断し、加減速意図フラグSTをST4(減速意図)に設定する。
ステップS2081でアクセルペダル72の踏み込み操作ありと判定されると、ステップS2083へ進み、アクセルペダル72が踏増し操作されているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル72の操作速度が所定値dTH_1よりも大きい場合に、アクセルペダル72が踏増しされていると判定する。アクセルペダル操作速度は、例えばアクセルペダル操作量SAを時間微分することにより算出でき、踏み込み方向に操作されている場合に正の値で表される。所定値dTH_1は、誤差分を考慮してアクセルペダル72が踏増しされていると判断できる正の値として予め適切に設定しておく。
アクセルペダル72が踏増しされていると判定されると、ステップS2084へ進み、運転者が加速しようとしている判断し、加減速意図フラグSTをST1(加速意図)に設定する。
ステップS2083でアクセルペダル72が踏み増しされていないと判定されると、ステップS2085へ進み、アクセルペダル72が戻し方向に操作されているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダル操作速度が所定値−dTH_1よりも小さい場合、すなわち所定値−dTH_1よりも速い速度で戻し操作されている場合に、アクセルペダル72が戻し方向に操作されていると判定する。アクセルペダル72が戻し方向に操作されていると判定されると、ステップS2086へ進み、加減速意図フラグSTをST3(エンブレ意図)に設定する。ここで、エンブレ意図とは、運転者はアクセルペダル72を踏み込んでいるが加速しようとする意図は無く、エンブレ程度の弱めの減速を行おうとする意図を意味する。
ステップS2085でアクセルペダル72の戻し操作なしと判定されると、ステップS2087へ進む。ステップS2087では、アクセルペダル72を保持して自車速Vhを略一定に保持しようとしていると判断し、加減速意図フラグSTをST2(一定速度意図)に設定する。
このように、ステップS2080で加減速意図検出処理を行った後、ステップS2090へ進む。ステップS2090では、ステップS2060で算出したリスクポテンシャルRPに基づく制駆動力制御と操作反力制御を、ステップS2080で検出した運転者の加減速意図に基づいて調整するための処理を行う。具体的には、運転者の加減速意図に基づいて制駆動力制御の制御量と操作反力制御の制御量とが連動して変化するように、ステップS2070で算出した制御反発力Fcを調整する。ここでの処理を、図37のフローチャートを用いて説明する。
ステップS2091では、ステップS2070で算出した制御反発力Fcが0よりも大きいか否かを判定する。Fc>0でリスクポテンシャルRPに応じた制駆動力制御および操作反力制御を実行する場合は、ステップS2092へ進む。ステップS2092では、ステップS2080で検出した加減速度意図フラグSTがST1(加速意図)であるか否かを判定する。ST=ST1の場合は、ステップS2093へ進む。
ステップS2093では、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50Bには、図4と同様のマップが記憶されており、アクセルペダル操作量SAに基づいてドライバ要求駆動力Fdaを推定する。ステップS2094では、走行抵抗FRを算出する。走行抵抗FRは、駆動力推定値から(加速度/車重)を減算することにより算出することができる。加速度は、自車速Vhを時間微分することによって得られる。また、加速度センサを設けて検出することも可能である。
ステップS2095では、制御反発力Fc,ドライバ要求駆動力Fdaおよび走行抵抗FRを用いて、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を算出する。具体的には、リスクポテンシャルRPに基づいて算出した制御反発力Fcを、(Fda−FR)でリミットする。すなわち、Fc≦(Fda−FR)の場合は、ステップS2070で算出した制御反発力Fcをそのまま制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1として用い、Fc>(Fda−FR)の場合は、Fc1=(Fda−FR)に制限する。
ステップS2092が否定判定されると、ステップS2096へ進む。ステップS2096では、加減速意図フラグSTがST3(エンブレ意図)またはST4(減速意図)であるか否かを判定する。STがST3,ST4以外、すなわち、ST=ST2(一定速度意図)の場合は、ステップS2097へ進み、アクセルペダル操作量SAに基づいてドライバ要求駆動力Fdaを推定する。
ステップS2098では、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を算出する。具体的には、リスクポテンシャルRPに基づいて算出した制御反発力Fcを、ドライバ要求駆動力Fdaでリミットする。すなわち、Fc≦Fdaの場合は、ステップS2070で算出した制御反発力Fcをそのまま制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1として用い、Fc>Fdaの場合は、Fc1=Fdaに制限する。ステップS2096が肯定判定され、をST=ST3(エンブレ意図)またはST=ST4(減速意図)の場合は、ステップS2099へ進み、ステップS2070で算出した制御反発力Fcをそのまま制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1として用いる。
つづくステップS2100では、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を用いて、反力制御量算出用の制御反発力Fc2を算出する。反力制御量算出用の制御反発力Fc2は、以下の(式11)を用いて算出できる。
Fc2=Fc×Fc/Fc1 ・・・(式11)
このように、制御反発力Fc2は、制御反発力Fc1が小さくなるほど大きくなり、制御反発力Fc1が大きくなるほど小さくなる。すなわち、反力制御量算出用の制御反発力Fc2の大きさは、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1に連動して変化する。
ステップS2101では、ステップS2100で算出した反力制御量算出用の制御反発力Fc2にリミットをかける。具体的には、反力制御量算出用の制御反発力Fc2をリスクポテンシャルRPに基づく制御反発力Fcの2倍程度の値で制限する。ステップS2091が否定判定され、Fc=0の場合は、ステップS2102へ進んで制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1=0,反力制御量算出用の制御反発力Fc2=0に設定する。
このように、ステップS2090で制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2とを算出した後、ステップS2110へ進む。ステップS2110では、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を用いて、制駆動力制御を行うための駆動力補正量Faおよび制動力補正量Fbをそれぞれ算出する。ここでの処理を、図38のフローチャートを用いて説明する。
ステップS2111では、アクセルペダル操作量SAに基づいてドライバ要求駆動力Fdaを推定する。ステップS2112では、ステップS2090で算出した制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1とステップS2111で推定したドライバ要求駆動力Fdaとの大小関係を比較する。Fda≧Fc1の場合は、ステップS2113へ進む。ステップS2113では、駆動力補正量Faとして−Fc1をセットし、ステップS2114で制動力補正量Fbに0をセットする。
すなわち、Fda−Fc1≧0であることから、駆動力Fdaを制御反発力Fc1により補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置73のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、運転者がアクセルペダル72を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動として運転者に感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動として運転者に感じられる。
一方、ステップS2112が否定判定され、Fda<Fc1の場合は、駆動力制御装置73のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS2115へ進んで駆動力補正量Faに−Fdaをセットし、ステップS2116で制動力補正量Fbとして、補正量の不足分(Fc1−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動として運転者には察知される。
ステップS2117では、ステップS2113またはS2115で算出した駆動力補正量Fa、及びステップS2114またはS2116で算出した制動力補正量Dbをそれぞれ駆動力制御装置73、及び制動力制御装置93に出力する。駆動力制御装置73は、コントローラ50Bからの指令に応じてエンジントルクを制御する。制動力制御装置93は、コントローラ50Bからの指令に応じてブレーキ液圧を制御する。
このように、ステップS2110で駆動力補正量Faと制動力補正量Fbをそれぞれ算出、出力した後、ステップS2120へ進む。ステップS2110では、ステップS2090で算出した反力制御量算出用の制御反発力Fc2に基づいて、アクセルペダル72に発生させる操作反力の制御量、すなわちアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。図39に、制御反発力Fc2とアクセルペダル反力制御指令値FAとの関係を示す。図39に示すように、制御反発力Fc2が大きくなるほどアクセルペダル反力制御指令値FAが大きくなる。
コントローラ50Bは、制御反発力Fc2に基づいて算出したアクセルペダル反力制御指令値FAを、アクセルペダル反力制御装置70へ出力する。アクセルペダル反力制御装置70は、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に、コントローラ50Bから入力される指令値に応じた反力を付加するようにアクセルペダル反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
以上説明した第3の実施の形態の作用を、図40および図41(a)〜(h)を用いて説明する。図40は、リスクポテンシャルRP、加減速意図、制駆動力制御、および操作反力制御の関係を概念的に示したものである。図40において、連動制御処理を行わない場合の制駆動力制御と操作反力制御との関係を破線で示す。連動制御処理を行わない場合は、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど制駆動力制御の制御量と操作反力制御の制御量がともに大きくなる。
連動制御処理が行うことにより、加速意図が検出された場合は制駆動力制御に対して操作反力制御の作動が強くなる。反対に、減速意図が検出された場合は操作反力制御に対して制駆動力制御の作動を強くする。
図41(a)〜(h)は、アクセルペダル操作量SA,意図検出判定結果(加減速意図フラグST)、ドライバ要求駆動力Fda、制御反発力Fc,制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1,反力制御量算出用の制御反発力Fc2,制駆動力補正量Fa,Fb,および反力制御指令値FAの時間変化の一例をそれぞれ示す。
アクセルペダル操作量SAは、時間t1まで一定で、その後踏み込まれ、時間t3から徐々に減少している。これに応じてドライバ要求駆動力Fdaも増減している。時間t1までは、運転者の加減速意図として一定速度意図(ST2)が検出されており、制御反発力Fc1は、ドライバ要求駆動力Fdaを上限として制御反発力Fcに基づいて算出される。これにより、自車両にはエンブレ程度の弱めの減速度が発生する。ただし、制動制御は行われない。制御反発力Fc2は、制御反発力Fc1が制限された代わりに増加するように調整されており、運転者はリスクポテンシャルRPの存在をアクセルペダル72を介して連続的に知覚することができる。
時間t1以降、アクセルペダル72が踏み込まれると、加減速意図として加速意図(ST1)が検出される。制御反発力Fc1は(Fda−FR)を上限として制御反発力Fcに基づいて算出される。これにより、運転者の加速意図に応じて自車両は走行抵抗FRに抗して加速を行うことが可能となる。これと連動して、制御反発力Fc2は増加方向に調整され、運転者はリスクポテンシャルRPの存在をアクセルペダル72を介して連続して知覚することができる。
時間t2でアクセルペダル操作量SAが変動しなくなると、加減速意図として一定速度意図(ST2)が検出される。これにより、駆動力補正量Faは0まで低下する。時間t3以降、アクセルペダル72が戻し方向に操作されると、加減速意図としてエンブレ意図(ST3)が検出される。この場合、制御反発力Fcがそのまま制御反発力Fc1、Fc2として用いられる。これにより、制御反発力Fc1がドライバ要求駆動力Fdaよりも大きい場合は、自車両に減速度が発生する。
時間t4でアクセルペダル72が解放されると、加減速意図として減速意図(ST4)が検出される。この場合、制御反発力Fcがそのまま制御反発力Fc1、Fc2として用いられるので、自車両には減速度が発生する。
このように以上説明した第3の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置3は、自車両の前方に存在する障害物を検出し、障害物の検出結果に基づいて自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。そして、リスクポテンシャルRPに基づいて自車両に発生する制駆動力の制御量Fa,Fbを算出するとともに、運転操作機器に発生する操作反力の反力制御量FAを算出する。そして、算出した制駆動力補正量(制駆動力制御量)Fa,Fbに基づいて自車両の駆動力および制動力を制御し、算出した反力制御指令値(反力制御量)FAを運転操作機器に発生させる。ここで、運転操作機器はたとえばアクセルペダル72である。コントローラ50Bは、運転者の加減速意図を検出し、その検出結果とリスクポテンシャルRPに基づいて、自車両の駆動力および制動力と、運転操作機器に発生される操作反力とを連動制御する。これにより、制駆動力と操作反力とを連動して制御することができ、制駆動力の変化と操作反力の変化とを補完し合って、運転者に与える違和感を低減した制御を実現することが可能となる。
(2)加減速意図検出処理で検出する加減速意図は、運転者の加速意図および減速意図を含むので、運転操作に関する運転者の意図を検出することができる。
(3)コントローラ50Bは、加減速意図の検出結果に応じて、制駆動力制御量Fa,Fbと反力制御量FAとを修正する。これにより、リスクポテンシャルRPに応じて算出される制駆動力制御量Fa,Fbと反力制御量FAとを加減速意図に応じて適切に修正できる。
(4)制駆動力制御量Fa,Fbは、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど、駆動力が小さく、もしくは制動力が大きくなるように算出され、反力制御量FAは、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど運転操作機器に発生する操作反力が大きくなるように算出される。これにより、自車両のリスクポテンシャルRPが大きくなっていることを自車両からの減速感および運転操作機器からの操作反力の大きさとして運転者に直感的に知覚させることができる。
(5)コントローラ50Bは、運転者が加速しようとする意図が強くなるほど、駆動力の減少量もしくは制動力の増加量が小さくなるように制駆動力制御量Fa,Fbを修正する。ここで、加減速意図は、減速意図、エンブレ意図、一定速度意図、加速意図の順で運転者が加速しようとする意図が強くなる。運転者が加速しようとしている場合に、制駆動力制御量Fa,Fbが減少方向に調整されるので、運転者の加速意図を妨げることがなく、運転者は意図に応じた加速を得ることができる。
(6)コントローラ50Bは、運転者が加速しようとする意図が強くなるほど、制駆動力制御量Fa,Fbに対する反力制御量FAの大きさを大きくする。加速意図が検出されている場合、制駆動力制御量Fa,Fbは減少方向に調整されるため、反力制御量FAを反対に大きくすることにより、運転者にリスクポテンシャルRPが存在することを確実に知覚させることができる。
(7)コントローラ50Bは、運転者が減速しようとする意図が強くなるほど、駆動力の減少量もしくは制動力の増加量が大きくなるように制駆動力制御量Fa,Fbを修正する。ここで、加減速意図は、加速意図、一定速度意図、エンブレ意図、減速意図の順で運転者が減速しようとする意図が強くなる。運転者が減速しようとしている場合に、制駆動力制御量Fa,Fbが増加方向に調整されるので、運転者の減速操作を補助することができる。
(8)コントローラ50Bは、運転者が減速しようとする意図が強くなるほど、制駆動力制御量Fa,Fbに対する反力制御量FAの大きさを小さくする。減速意図が検出されている場合、制駆動力制御量Fa,Fbは増加方向に調整されるため、反力制御量FAを反対に小さくすることにより、制駆動力制御と操作反力制御のバランスをとって運転者に与える違和感を低減することができる。
(9)コントローラ50Bは、運転者の加速意図が検出された場合に、自車速が低下しないように制駆動力制御量Fa,Fbを修正する。これにより、運転者の加速意図を妨げることがなく、運転者は意図に応じた加速を得ることができる。
(10)コントローラ50Bは、運転者の減速意図が検出されなかった場合、制動力が増加しないように制駆動力制御量Fa,Fbを修正する。具体的には、一定速度意図(ST2)あるいは加速意図(ST1)が検出された場合には、制動力補正量Fb=0とする。これにより、運転者が減速しないような意図をもって運転操作を行っている場合に運転者の意図を妨げることがない。
(11)コントローラ50Bは、加減速意図の検出結果に応じて制駆動力制御量Fa,Fbを修正した後、修正した制駆動力制御量Fa,Fbを用いて反力制御量FAを修正する。具体的には、リスクポテンシャルRPと加減速意図に基づいて制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を算出し、制御反発力Fc1を用いて反力制御量算出用の制御反発力Fc2を算出する。これにより、制駆動力制御に連動した操作反力制御を行うことができる。
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図31に示した第3の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第3の実施の形態との相違点を主に説明する。
第4の実施の形態では、加減速意図に基づいて制駆動力制御と操作反力制御とを連動させるような補正係数α、βを設定し、補正係数α、βを用いて制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2をそれぞれ算出する。この処理を、図42を用いて説明する。この処理は、図32のフローチャートのステップS2090で実行される。
ステップS2201では、ステップS2070で算出した制御反発力Fcが0よりも大きいか否かを判定する。Fc>0でリスクポテンシャルRPに応じた制駆動力制御および操作反力制御を実行する場合は、ステップS2202へ進む。ステップS2202では、ステップS2080で検出した加減速意図に基づいて補正係数α、βを設定する。図43に、加減速意図と補正係数α、βとの関係を示す。
加速意図(ST1)が検出された場合は、α=α1、β=β1、一定速度意図(ST2)が検出された場合は、α=α2、β=β2、エンブレ意図(ST3)が検出された場合は、α=α3、β=β3、減速意図(ST4)が検出された場合は、α=α4、β=β4とする。ここで、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を算出するための補正係数α1〜α4は、次の(式12)を満たすように予め適切に設定される。
1≧α4≧α3≧α2≧α1≧0 ・・・(式12)
例えば、α1=0.2、α2=0.6、α3=1.0、α4=1.0とする。
反力制御量算出用の制御反発力Fc2を算出するための補正係数β1〜β4は、次の(式13)を満たすように予め適切に設定される。
β4≦β3≦β2≦β1 ・・・(式13)
例えば、β1=2、β2=1.6、β3=1.0、β4=1.0とする。なお、補正係数βは、補正係数αの逆数(1/α)をαの1〜2倍程度の範囲に制限した値となるように設定する。
ステップS2203では、ステップS2070で算出した制御反発力Fcに、ステップS2202で加減速意図に応じて設定した補正係数αを乗算することにより、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1を算出する。制御反発力Fc1は、以下の(式14)で表される。
Fc1=Fc×α ・・(式14)
ステップS2204では、ステップS2070で算出した制御反発力Fcに、ステップS2202で加減速意図に応じて設定した補正係数βを乗算することにより、反力制御量算出用の制御反発力Fc2を算出する。制御反発力Fc2は、以下の(式15)で表される。
Fc2=Fc×β ・・(式15)
ステップS2201が否定判定されるとステップS2205へ進み、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1=0、反力制御量算出用の制御反発力Fc2=0とする。このように、ステップS2090で制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2とを算出した後、ステップS2110の処理へ進む。
このように、加減速意図に基づいて設定した補正係数α、βを用いて制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2を算出することによっても、上述した第3の実施の形態と同様の効果を奏することができる。補正係数α、βを予め適切な値に設定しておくことにより、Fc1,Fc2の算出を容易に行うことができる。
補正係数α、βは、上述した(式12)(式13)をそれぞれ満たす範囲内で、例えば以下のように設定することもできる。
図44に示すように、 加速意図(ST1)が検出された場合は、α1=0.2、β1=2、一定速度意図(ST2)が検出された場合は、α2=0.6、β2=1.6、エンブレ意図(ST3)が検出された場合は、α3=0.8、β3=1.2、減速意図(ST4)が検出された場合は、α4=1.0、β4=1.0とする。このように、エンブレ意図(ST3)と減速意図(ST4)で補正係数α、βを細かく変化させる設定とすることにより、より滑らかな動作とすることが可能となる。
図45に示すように、 加速意図(ST1)が検出された場合は、α1=0.0、β1=2、一定速度意図(ST2)が検出された場合は、α2=0.6、β2=1.0、エンブレ意図(ST3)が検出された場合は、α3=0.8、β3=1.0、減速意図(ST4)が検出された場合は、α4=1.0、β4=1.0とする。このように、加速意図(ST1)が検出され、補正係数α=0としたときのみ補正係数βを1よりも大きく設定する。これにより、加速意図が検出されたことにより制駆動力制御が行われない状態を運転者に明確に知覚させることが可能となる。
なお、上述した第3及び第4の実施の形態では、リスクポテンシャルRPに基づいて算出した制御反発力Fcから、制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2とを算出した。ただし、Fc1,Fc2の算出方法はこれには限定されず、リスクポテンシャルRPを用いて制駆動力補正量算出用のリスクポテンシャルRP1と反力制御量算出用のリスクポテンシャルRP2を算出し、RP1,RP2を用いて制駆動力補正量算出用の制御反発力Fc1と反力制御量算出用の制御反発力Fc2をそれぞれ算出することもできる。あるいは、制御反発力Fc1,Fc2を算出することなく、リスクポテンシャルRP1,RP2から直接、制駆動力補正量Fa,Fb、および反力制御指令値FAを算出することもできる。
以上説明した第3および第4の実施の形態においては、レーザレーダ10が障害物検出手段として機能し、コントローラ50Bで実行される処理のうち、リスクポテンシャル算出処理がリスクポテンシャル算出手段として機能し、制駆動力補正量算出処理が制駆動力制御量算出手段として機能し、反力算出処理が操作反力算出手段として機能し、加減速意図検出処理が加減速意図検出手段として機能し、連動制御処理が連動制御手段として機能することができる。また、駆動力制御装置73および制動力制御装置93が制駆動力制御手段として機能し、アクセルペダル制御装置70が操作反力発生手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、レーザレーダ10の代わりに例えば別方式のミリ波レーダを用いることも可能である。また、加減速意図検出手段として、一定速度意図とエンブレ意図は省略し、加速意図と減速意図のみを検出するように構成したり、アクセルペダル72とブレーキペダル92の操作状態に基づいて加減速意図を検出するように構成することも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。