《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載した車両の構成図である。
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して車両前方領域を走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、前方車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、複数の前方車までの車間距離とその存在方向を検出する。検出した車間距離及び存在方向はコントローラ50へ出力される。なお、本実施の形態において、前方物体の存在方向は、自車両に対する相対角度として表すことができる。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
車速センサ20は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20から入力される自車速と、レーザレーダ10から入力される距離情報から、自車両周囲の障害物状況、例えば自車両と各障害物との相対距離および相対速度といった障害物に対する走行状態を認識する。コントローラ50は、障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルを算出する。さらに、コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、以下のような制御を行う。
第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1は、アクセルペダル72の踏み込み操作の際に発生する反力および自車両に発生する制駆動力を制御することによって、運転者による自車両の加減速操作を補助し、運転者の運転操作を適切にアシストするものである。そこで、コントローラ50は、自車前方の障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて車両前後方向の反力制御量および制駆動力の補正量を算出する。コントローラ50は、算出した前後方向の反力制御量をアクセルペダル反力制御装置70へと出力し、制駆動力の補正量を駆動力制御装置73および制動力制御装置93にそれぞれ出力する。
アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から出力される反力制御量に応じて、アクセルペダル72のリンク機構に組み込まれたサーボモータ71で発生させるトルクを制御する。サーボモータ71は、アクセルペダル反力制御装置70からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル72を操作する際に発生する踏力を任意に制御することができる。
アクセルペダルストロークセンサ74は、リンク機構を介してサーボモータ71の回転角に変換されたアクセルペダル72の踏み込み量(操作量)を検出する。アクセルペダルストロークセンサ74は、検出したアクセルペダル操作量をコントローラ50および駆動力制御装置73にそれぞれ出力する。ブレーキペダルストロークセンサ94は、ブレーキペダル92の踏み込み量(操作量)を検出する。ブレーキペダルストロークセンサ94は、検出したブレーキペダル操作量をコントローラ50および制動力制御装置93にそれぞれ出力する。
駆動力制御装置73は、エンジンへの制御指令を算出する。図3に、駆動力制御装置73における駆動力制御のブロック図を示す。図4に、アクセルペダル操作量SAとドライバ要求駆動力Fdaとの関係を定めた特性マップを示す。駆動力制御装置73は、図4に示すようなマップを用いて、アクセルペダル操作量SAに応じてドライバ要求駆動力Fdaを算出する。そして、駆動力制御装置73は、ドライバ要求駆動力Fdaに、後述する駆動力補正量ΔDaを加えて目標駆動力を算出する。駆動力制御装置73のエンジンコントローラは、目標駆動力に従ってエンジンへの制御指令を算出する。
制動力制御装置93は、ブレーキ液圧指令を出力する。図5に、制動力制御装置93における制動力制御のブロック図を示す。図6に、ブレーキペダル操作量SBとドライバ要求制動力Fdbとの関係を定めた特性マップを示す。制動力制御装置93は、図6に示すようなマップを用いて、ブレーキペダル操作量SBに応じてドライバ要求制動力Fdbを算出する。そして、制動力制御装置93は、ドライバ要求制動力Fdbに、後述する制動力補正値ΔDbを加えて目標制動力を算出する。制動力制御装置93のブレーキ液圧コントローラは、目標制動力に従ってブレーキ液圧指令を出力する。ブレーキ液圧コントローラからの指令に応じて各車輪に設けられたブレーキ装置95が作動する。
図7に、コントローラ50の内部および周辺の構成を示すブロック図を示す。コントローラ50は、例えばCPUのソフトウェア形態により、障害物認識部50a、リスクポテンシャル算出部50b、反力算出部50c、反発力算出部50d、ドライバ操作検出部50e、反力リミット部50f、反発力リミット部50g、優先度決定部50h、反力選択部50i、反発力選択部50j、および制駆動力補正量算出部50kを構成する。
障害物認識部50aは、レーザレーダ10および車速センサ20から入力される検出値に基づいて自車両前方の障害物状況を認識する。リスクポテンシャル算出部50bは、障害物認識部50aで認識した障害物状況に基づいて、前方障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルRPを算出する。
反力算出部50cは、リスクポテンシャル算出部50bで算出されたリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生させる操作反力の制御量を算出する。反発力算出部50dは、リスクポテンシャルRPに基づいて、制駆動力補正量を算出する際の基準となる反発力を算出する。ドライバ操作検出部50eは、アクセルペダルストロークセンサ74の検出値を読み込み、運転者によるアクセルペダル72の操作状態を検出する。
反力リミット部50fは、アクセルペダル72の操作状態に基づいて、反力算出部50cで算出した反力制御量をリミットするためのリミット値を算出する。反発力リミット部50gは、アクセルペダル72の操作状態に基づいて、反発力算出部50dで算出した反発力Fcをリミットするためのリミット値を算出する。
優先度決定部50hは、反力リミット部50fで算出したリミット値および反発力リミット部50gで算出したリミット値について、それぞれ優先度を決定する。ここでは、リスクポテンシャルRPの伝達と、アクセルペダル操作を行うという運転者の意思のいずれを優先した制御を行うかを決定するために、優先度、すなわち、優先順位を決定する。
反力選択部50iは、優先度決定部50hで決定した優先度に従って、反力リミット値50fの算出結果から、アクセルペダル操作反力を制御するための反力指令値FAを選択する。反発力選択部50jは、優先度決定部50hで決定した優先度に従って、反発力リミット値50gの算出結果から、制駆動力補正量の算出に用いる制御用反発力Fcを選択する。制駆動力補正量算出部50kは、反発力選択部50jで選択した制御用反発力Fcに基づいて、自車両に発生させる制駆動力の補正量を算出する。
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図8を用いて詳細に説明する。図8は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
まず、ステップS100で走行状態を読み込む。ここで、走行状態は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Xや存在方向と、車速センサ20によって検出される自車両の走行車速Vhを読み込む。また、アクセルペダルストロークセンサ74およびブレーキペダルストロークセンサ94で検出されるアクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBも読み込む。
ステップS200では、ステップS100で読み込み、認識した走行状態データに基づいて、前方障害物の状況を認識する。ここでは、前回の処理周期以前に検出され、コントローラ50のメモリに記憶されている自車両に対する障害物の相対位置やその移動方向・移動速度と、ステップS100で得られた現在の走行状態データとにより、現在の障害物の自車両に対する相対位置やその移動方向・移動速度を認識する。そして、自車両の走行に対して障害物が、自車両の前方にどのように配置され、相対的にどのように移動しているかを認識する。
ステップS300では、運転者によるアクセルペダル72の操作状態を検出する。ここでの処理を、図9のフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS301で、アクセルペダル72が踏まれているか否かを判定する。アクセルペダル操作量SAが0より大きく、アクセルペダル72が踏まれていると判定されると、ステップS302へ進む。ステップS302では、ドライバ要求駆動力Fdaを推定する。コントローラ50のメモリには図4と同様のマップが記憶されており、コントローラ50はアクセルペダル操作量SAに応じたドライバ要求駆動力Fdaを推定する。
ステップS303では、アクセルペダル72の踏み込み操作中であるか否かを判定する。これは、例えばアクセルペダル操作量SAを前回値と比較することによって判断する。アクセルペダル72が踏み込み操作中であると判定されると、ステップS304へ進み、ドライバ操作フラグFlg_drに、踏み込み操作中であることを示す1を設定する。
ステップS303が否定判定されるとステップS305へ進み、アクセルペダル72の戻し操作中であるか否かを判定する。例えばアクセルペダル操作量SAを前回値と比較して、アクセルペダル72が戻し操作中であると判定されると、ステップS306へ進む。ステップS306では、ドライバ操作フラグFlg_drに、戻し操作中であることを示す2を設定する。
ステップS305が否定判定されるとステップS307へ進み、ドライバ操作フラグFlg_drに、アクセルペダル72が保持されていることを示す3を設定する。一方、ステップS301が否定判定され、アクセルペダル72が踏まれていない場合は、ステップS308へ進み、ドライバ操作フラグFlg_drに、アクセルペダル72が踏まれていないことを示す0を設定する。
このようにステップS300で運転者によるアクセルペダル72の操作状態を検出した後、ステップS400へ進む。ステップS400では、前方障害物、例えば先行車に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルRPを算出する。以下に、リスクポテンシャルRPの算出方法を説明する。
図10(a)に示すように、自車両100の前方に仮想的な弾性体300を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体300が前方車両200に当たって圧縮され、自車両100に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。ここで、障害物に対するリスクポテンシャルRPは、図10(b)に示すように仮想弾性体300が前方車両200に当たって圧縮された場合のバネ力と定義する。従ってリスクポテンシャルRPは、自車両100と前方車両200との車間距離Xを用いて以下の(式1)で表すことができる。
RP=k・(L−X) ・・・(式1)
ここで、k:仮想弾性体のバネ定数、L:仮想弾性体の長さである。これにより、自車両と前方車両との車間距離Xが短くなるほどリスクポテンシャルRPが大きくなる。また、図10(a)に示すように仮想弾性体300が前方車両200に接触していない場合は、リスクポテンシャルRP=0とする。
ステップS400では、自車両と先行車の間に2つの異なる仮想弾性体(第1の仮想弾性体と第2の仮想弾性体とする)を設け、第1および第2の仮想弾性体に対応してリスクポテンシャルRP1とRP2をそれぞれ算出する。ここで行う処理を、図11のフローチャートを用いて説明する。
ステップS401では、先行車に対する余裕時間TTC(Time To Contact)を算出する。余裕時間TTCは、先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量であり、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速Vhおよび相対車速Vr(=自車速−先行車速)が一定の場合に、何秒後に車間距離Xがゼロとなり自車両と先行車とが接触するかを示す値である。先行車に対する余裕時間TTCは、以下の(式2)で求められる。
TTC=X/Vr ・・・(式2)
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどのドライバが減速行動を開始することが知られている。
ステップS402では、ステップS401で算出した余裕時間TTCをしきい値Th1と比較する。しきい値Th1は、余裕時間TTCに基づいて自車両と先行車との接触の可能性を判断するために予め設定された値であり、例えばTh1=1secに設定する。余裕時間TTCがしきい値Th1より小さい場合(TTC<Th1)は、自車両と先行車との接触の可能性が高い、高リスク領域であると判断して、ステップS403へ進む。
ステップS403では、第1の仮想弾性体の長さを表す基準距離L1を算出する。基準距離L1は、ステップS402で用いた余裕時間TTCのしきい値Th1と相対速度Vrを用いて、以下の(式3)から算出する。
L1=Th1×Vr ・・・(式3)
ステップS404では、ステップS402で算出した基準距離L1を用いて、以下の(式4)からリスクポテンシャルRP1を算出する。
RP1=k1×(L1−X) ・・・(式4)
(式4)においてk1は予め設定した第1の仮想弾性体のばね定数である。
一方、ステップS402が否定判定されると、ステップS405へ進んでリスクポテンシャルRP1=0にする。
ステップS406では、ステップS401で算出した余裕時間TTCをしきい値Th2と比較する。しきい値Th2は、余裕時間TTCに基づいて自車両と先行車との接触の可能性を判断するために、Th2>Th1を満たすように予め設定された値であり、例えばTh2=2secに設定する。余裕時間TTCがしきい値Th2より小さい場合(TTC<Th2)は、自車両と先行車との接触の可能性が中程度の中リスク領域であると判断して、ステップS407へ進む。
ステップS407では、第2の仮想弾性体の長さを表す基準距離L2を算出する。基準距離L2は、ステップS406で用いた余裕時間TTCのしきい値Th2と相対速度Vrを用いて、以下の(式5)から算出する。
L2=Th2×Vr ・・・(式5)
ステップS408では、ステップS407で算出した基準距離L2を用いて、以下の(式6)からリスクポテンシャルRP2を算出する。
RP2=k2×(L2−X) ・・・(式6)
(式6)においてk2は予め設定した第2の仮想弾性体のばね定数である(k2<k1)。
一方、ステップS406が否定判定されると、ステップS409へ進んでリスクポテンシャルRP2=0にする。
上述したように、自車両と先行車との余裕時間TTCがしきい値Th1よりも小さく、接触の可能性が高い領域を、高リスク領域とし、リスクポテンシャルRP1を算出する。余裕時間TTCがしきい値Th1以上でしきい値Th2よりも小さく、接触の可能性が中程度の領域を、中リスク領域とし、リスクポテンシャルRP2を算出する。余裕時間TTCがしきい値Th2以上で接触の可能性が低い領域は、低リスク領域として、リスクポテンシャルRP=0とする。
このようにステップS400でリスクポテンシャルRPを算出した後、ステップS500へ進む。
ステップS500では、ステップS400で算出したリスクポテンシャルRPから、アクセルペダル72の反力制御量を算出する。ここでは、高リスク領域のリスクポテンシャルRP1および中リスク領域のリスクポテンシャルRP2に基づいて、アクセルペダル反力制御量FA1,FA2をそれぞれ算出する。ここでの処理を図12のフローチャートを用いて説明する。
ステップS501では、リスクポテンシャルRP1に基づいてアクセルペダル反力制御量FA1を算出する。ここでは、図13に示すリスクポテンシャルRPとアクセルペダル反力制御量FA1、FA2との関係に従って、アクセルペダル反力制御量FA1を算出する。図13に示すように、リスクポテンシャルRPが所定値RPmaxよりも小さい場合、リスクポテンシャルRPが大きいほど、大きなアクセルペダル反力を発生させるようにアクセルペダル反力制御量FA1を算出する。リスクポテンシャルRPが所定値RPmaxより大きい場合には、最大のアクセルペダル反力を発生させるように、アクセルペダル反力制御量FA1を最大値FAmaxに固定する。
ステップS502では、リスクポテンシャルRP2に基づいてアクセルペダル反力制御量FA2を算出する。ここでは、上述した図13の関係に従ってアクセルペダル反力制御量FA2を算出する。
このようにステップS500で運転操作反力を算出した後、ステップS600へ進む。
ステップS600では、ステップS400で算出したリスクポテンシャルRP1、RP2に基づいて、仮想的に設定した第1及び第2の弾性体からの反発力Fc1、Fc2をそれぞれ算出する。ここでの処理を図14のフローチャートを用いて説明する。
ステップS601では、リスクポテンシャルRP1に基づいて反発力Fc1を算出する。ここでは、図15に示すリスクポテンシャルRPと反発力Fcとの関係に従って、反発力Fc1を算出する。図15に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど反発力Fc1が大きくなる。リスクポテンシャルRPが所定値RPmax1を超えると、反発力Fc1を最大値Fcmaxに固定する。
ステップS602では、リスクポテンシャルRP2に基づいて反発力Fc2を算出する。ここでは、図15に示すリスクポテンシャルRPと反発力Fcとの関係に従って、反発力Fc2を算出する。
このようにステップS600において反発力Fc1、Fc2を算出した後、ステップS700へ進む。ステップS700では、ステップS500で算出した運転操作反力に対するリミット処理を行う。ここでの処理を、図16のフローチャートを用いて説明する。
ステップS701では、高リスク領域および中リスク領域のアクセルペダル反力制御量FA1,FA2について、それぞれの最大値FA1max、FA2maxを算出する。アクセルペダル反力最大値FA1max、FA2maxは、それぞれ以下の(式7)(式8)から算出する。
FA1max=FA0 ・・・(式7)
FA2max=K3・(M・g1max+Fda) ・・・(式8)
(式8)において、K3は変換定数、Mは自車両の車重、g1maxは所定の加速度、FdaはステップS300で推定したドライバ要求駆動力である。アクセルペダル反力最大値FA2maxは、アクセルペダル反力制御量FA1を所定値g1maxに対応する値でリミットするように設定される。一方、アクセルペダル反力最大値FA1maxは、所定値FA0に設定する。
ステップS702では、ステップS500で算出したアクセルペダル反力制御量FA1が、ステップS701で算出した反力最大値FA1maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS702が肯定判定されると、ステップS703へ進み、高リスク領域の反力リミット値FA1limとして反力最大値FA1maxを設定する。ステップS702が否定判定されるとステップS704へ進み、反力リミット値FA1lim=FA1とする。
ステップS705では、ステップS500で算出したアクセルペダル反力制御量FA2が、ステップS701で算出した反力最大値FA2maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS705が肯定判定されると、ステップS706へ進み、中リスク領域の反力リミット値FA2limとして反力最大値FA2maxを設定する。ステップS705が否定判定されるとステップS707へ進み、反力リミット値FA2lim=FA2とする。
このようにステップS700においてアクセルペダル反力リミット値FA1lim、FA2limを算出した後、ステップS800へ進む。ステップS800では、ステップS600で算出した反発力Fc1、Fc2に対するリミット処理を行う。ここでの処理を、図17のフローチャートを用いて説明する。
ステップS801では、高リスク領域および中リスク領域の反発力Fc1,Fc2について、それぞれの最大値Fc1max、Fc2maxを算出する。反発力最大値Fc1max、Fc2maxは、それぞれ以下の(式9)(式10)から算出する。
Fc1max=Fc0 ・・・(式9)
Fc2max=M・g1max+Fda ・・・(式10)
反発力最大値Fc1maxは、所定値Fc0に設定する。反発力最大値Fc2maxは、反発力Fc2を所定値g1maxに対応する値でリミットするように設定される。
ステップS802では、ステップS600で算出した反発力Fc1が、ステップS801で算出した反発力最大値Fc1maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS802が肯定判定されると、ステップS803へ進み、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limとして反発力最大値Fc1maxを設定する。ステップS802が否定判定されるとステップS804へ進み、反発力リミット値Fc1lim=Fc1とする。
ステップS805では、ステップS600で算出した反発力Fc2が、ステップS801で算出した反発力最大値Fc2maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS805が肯定判定されると、ステップS806へ進み、中リスク領域の反発力リミット値Fc2limとして反発力最大値Fc2maxを設定する。ステップS805が否定判定されるとステップS807へ進み、反発力リミット値Fc2lim=Fc2とする。
このようにステップS800で反発力リミット値Fc1lim、Fc2limを算出した後、ステップS900へ進む。ステップS900では、ステップS700で算出した反力リミット値FA1lim、FA2limについて、優先度を決定する。ここでの処理を図18のフローチャートを用いて説明する。
ステップS901では、高リスク領域の反力リミット値FA1limが中リスク領域の反力リミット値FA2limよりも大きいか否かを判定する。FA1lim>FA2limの場合は、ステップS902へ進み、反力優先フラグFlg_FAとして1を設定する。ステップS901が否定判定されるとステップS903へ進み、FA2lim>0であるか否かを判定する。ステップS903が肯定判定されるとステップS904へ進み、反力優先フラグFlg_FAとして2を設定する。ステップS903が否定判定されるとステップS905へ進み、反力優先フラグFlg_FA=0とする。
このようにステップS900で反力優先度を決定した後、ステップS1000へ進む。ステップS1000では、ステップS800で算出した反発力リミット値Fc1lim、Fc2limについて、優先度を決定する。ここでの処理を図19のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1001では、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limが中リスク領域の反発力リミット値Fc2limよりも大きいか否かを判定する。Fc1lim>Fc2limの場合は、ステップS1002へ進み、反発力優先フラグFlg_Fcとして1を設定する。ステップS1001が否定判定されるとステップS1003へ進み、Fc2lim>0であるか否かを判定する。ステップS1003が肯定判定されるとステップS1004へ進み、反発力優先フラグFlg_Fcとして2を設定する。ステップS1003が否定判定されるとステップS1005へ進み、反発力優先フラグFlg_Fc=0とする。
このようにステップS1000で反発力優先度を決定した後、ステップS1100へ進む。ステップS1100では、ステップS900で決定した反力優先度に従って、アクセルペダル反力を制御するための反力指令値FAを算出する。ここでの処理を図20のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1101では、ステップS900で設定した反力優先フラグFlg_FA=0であるか否かを判定する。ステップS1101が肯定判定されるとステップS1102へ進み、反力指令値FA=0に設定する。ステップS1101が否定判定されるとステップS1103へ進み、反力優先フラグFlg_FA=1であるか否かを判定する。ステップS1103が肯定判定されるとステップS1104へ進み、反力指令値FAとして、高リスク領域の反力リミット値FA1limを設定する。ステップS1103が否定判定されるとステップS1105へ進み、反力指令値FAとして、中リスク領域の反力リミット値FA2limを設定する。
このようにステップS1100で反力指令値FAを算出した後、ステップS1200へ進む。ステップS1200では、ステップS1000で決定した反発力優先度に従って、制駆動力指令値を算出する。具体的には、自車両に発生する駆動力を補正する駆動力補正量と、制動力を補正する制動力補正量をそれぞれ算出する。ここでの処理を図21のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1201では、ステップS1000で設定した反発力優先フラグFlg_Fc=0であるか否かを判定する。ステップS1201が肯定判定されると、ステップS1202へ進む。ステップS1202では、駆動力補正量ΔDa=0とし、つづくステップS1203では、制動力補正量ΔDb=0とする。ステップS1201が否定判定されるとステップS1204へ進み、反発力優先フラグFlg_Fc=1であるか否かを判定する。ステップS1204が肯定判定されるとステップS1205へ進み、制御用反発力Fcとして、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limを設定する。ステップS1204が否定判定されるとステップS1206へ進み、制御用反発力Fcとして、中リスク領域の反発力リミット値Fc2limを設定する。
ステップS1207では、ステップS300で設定したドライバ操作フラグFlg_dr=0であるか否かを判定する。Flg_dr=0でアクセルペダル72が踏まれていない場合はステップS1208へ進む。ステップS1208では、駆動力補正量ΔDa=0とし、続くステップS1209では、制動力補正量ΔDb=Fcとする。
ステップS1207が否定判定されるとステップS1210へ進み、ドライバ操作フラグFlg_dr=2であるか否かを判定する。Flg_dr=2でアクセルペダル72が戻し操作されている場合は、ステップS1211へ進む。ステップS1211では、増加していた駆動力補正量ΔDaを0まで徐々に漸減し、ステップS1212では、制動力補正量ΔDbを制御用反発力Fcまで徐々に漸増する。
ステップS1210が否定判定されるとステップS1213へ進み、ドライバ操作フラグFlg_dr=1であるか否かを判定する。Flg_dr=1でアクセルペダル72が踏み込み操作されている場合は、ステップS1214へ進み、ドライバ要求駆動力Fdaと制御用反発力Fcとの大小関係を比較する。Fda≧Fcの場合は、ステップS1215へ進む。ステップS1215では、駆動力補正量ΔDaとして−Fcをセットし、ステップS1216で制動力補正量ΔDbに0をセットする。
すなわち、Fda−Fc≧0であることから、駆動力Fdaを反発力Fcにより補正した後も正の駆動力が残る。従って、補正量の出力は駆動力制御装置73のみで行うことができる。この場合、車両の状態としては、ドライバがアクセルペダル72を踏んでいるにも関わらず期待した程の駆動力が得られない状態となる。補正後の駆動力が走行抵抗より大きい場合には、加速が鈍くなる挙動としてドライバに感じられ、補正後の駆動力が走行抵抗より小さい場合には、減速する挙動としてドライバに感じられる。
一方、ステップS1214が否定判定され、Fda<Fcの場合は、駆動力制御装置73のみでは目標とする補正量を出力できない。そこで、ステップS1217へ進んで駆動力補正量ΔDaに−Fdaをセットし、ステップS1218で制動力補正量ΔDbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。この場合、車両の減速挙動としてドライバには察知される。
ステップS1213が否定判定され、アクセルペダル72が保持されている場合は、ステップS1219へ進み、Fda≧Fcであるか否かを判定する。Fda≧Fcの場合は、ステップS1220へ進む。ステップS1220では、駆動力補正量ΔDaとして−Fcをセットし、ステップS1221で制動力補正量ΔDbに0をセットする。
一方、ステップS1219が否定判定され、Fda<Fcの場合は、ステップS1222へ進む。ステップS1222では、駆動力補正量ΔDaに−Fdaをセットし、ステップS1223で制動力補正量ΔDbとして、補正量の不足分(Fc−Fda)をセットする。
図22に、駆動力および制動力の補正方法を説明する図を示す。図22の横軸はアクセルペダル操作量SAおよびブレーキペダル操作量SBを示しており、原点0から右へ進むほどアクセルペダル操作量SAが大きく、左へ進むほどブレーキペダル操作量SBが大きいことを示している。図22の縦軸は駆動力および制動力を示し、原点0から上へ進むほど駆動力が大きく、下へ進むほど制動力が大きいことを示している。
図22において、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fda、およびブレーキペダル操作量SBに応じた要求制動力Fdbをそれぞれ一点差線で示す。また、制御用反発力Fcに基づいて補正した駆動力および制動力を実線で示す。
アクセルペダル操作量SAが大きく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが制御用反発力Fc以上の場合は、駆動力を補正量ΔDaに応じて減少方向に補正する。一方、アクセルペダル操作量SAが小さく、アクセルペダル操作量SAに応じた要求駆動力Fdaが反発力Fcよりも小さい場合は、駆動力を発生しないような補正量ΔDaを設定して駆動力を補正する。さらに、反発力Fcと要求駆動力Fdaとの差を補正量ΔDbとして設定する。これにより、アクセルペダル操作量SAに応じた緩制動を行う。
ブレーキペダル92が踏み込まれると、補正量ΔDbに基づいて制動力を増大方向に補正する。これにより、全体として車両の走行抵抗を補正量、すなわち仮想弾性体の反発力Fcに相当して増大させるように制駆動力の特性を補正している。
このようにステップS1200で制駆動力補正量を算出した後、ステップS1300へ進む。ステップS1300では、ステップS1100で算出したアクセルペダル反力指令値FAをアクセルペダル反力制御装置70へ出力する。アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。
ステップS1400では、ステップS1200で算出した駆動力補正量ΔDa、及び制動力補正量ΔDbをそれぞれ駆動力制御装置73、及び制動力制御装置93に出力する。駆動力制御装置73は、駆動力補正量ΔDaと要求駆動力Fdaとから目標駆動力を算出し、算出した目標駆動力を発生するようにエンジンコントローラを制御する。また、制動力制御装置93は、制動力補正量ΔDbと要求制動力Fdbとから目標制動力を算出し、目標制動力を発生するようにブレーキ液圧コントローラを制御する。これにより、今回の処理を終了する。
以下、図面を用いて第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。図23に、車両用運転操作補助装置1の制御の概要を示す。図23に示すように、低リスク領域(TTC≧Th2)では、リスクポテンシャルRPが小さいのでリスクポテンシャルRPに応じたアクセルペダル反力および制駆動力の制御は行わない。低リスク領域では、運転者のアクセルペダル操作に応じた加減速が実現されるので、運転者の運転意思、すなわちペダル操作を優先しているといえる。
中リスク領域(Th1≦TTC<Th2)においては、アクセルペダル操作に関わらず自車両周囲のリスクポテンシャルRPを優先して運転者に伝達する。中リスク領域ではリスクポテンシャルRPに応じて算出される反力指令値FAおよび制御用反発力Fcがそれほど大きくないので、アクセルペダル操作反力や減速度の増加によって運転者に与えるわずらわしさは小さい。そこで、運転者の運転意思に対してリスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行う。
高リスク領域においても、リスクポテンシャルRPを優先して運転者に伝達するが、運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作しているときは、運転者の運転意思、すなわちペダル操作を優先した制御を行う。すなわち、高リスク領域ではリスクポテンシャルRPに応じて算出される反力指令値FAおよび制御用反発力Fcが大きいため、アクセルペダル72から発生する大きな反力に抗してアクセルペダル72を踏み込んだにも関わらず自車両の加速がよくないと、運転者にわずらわしさを与えてしまう。例えば高リスク領域においては、先行車の回避等のためにアクセルペダル72を踏み込み操作する場合がある。そこで、運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作している場合は、運転者の意思を優先してアクセルペダル操作に応じて自車両が加速するように制御を行う。
図24(a)〜(c)に、運転者のアクセルペダル操作に応じた加減速度と反発力によって補正した後の加減速度の時間変化、高リスク領域における加減速度の時間変化、および中リスク領域における加減速度の時間変化の一例を示す。
図24(a)に実線で示すように、運転者がアクセルペダル操作を行うとドライバ要求駆動力に対応して自車両には加速度が発生する。自車両と前方障害物との接近度合が高くなると、点線で示すように、リスクポテンシャルRPに応じた反発力Fc分だけ加速度を低下するように補正される。これにより、運転者は自車両が減速するように感じ、リスクポテンシャルRPが高くなっていることを直感的に認識することができる。なお、制御用反発力Fcの大きさはアクセルペダル72に発生させる操作反力にも対応している。したがって、運転者はアクセルペダル72から発生する操作反力によってもリスクポテンシャルRPの変化を直感的に認識することができる。
しかし、アクセルペダル72を踏み込んでも期待するほどの加速が得られないため、先行車を追い越そうとする場合等、運転者に違和感を与える可能性がある。一方、反発力Fcを小さくしすぎると、加速は得られるがアクセルペダル反力が小さくなって運転者に確実にリスクポテンシャルRPを伝達することが困難になってしまう。そこで、上述したように反力優先度と反発力優先度を決定し、優先度に従ってアクセルペダル反力指令値FAと制御反発力Fcを算出することにより、図23に示したように各リスク領域においてリスクポテンシャルRPの伝達および運転者の意思のいずれかを優先した制御を実現する。
高リスク領域においては、反力最大値FA1max、反発力最大値Fc1maxを上限とする反力指令値FAおよび制御用反発力Fcが算出される。従って、図24(b)に示すようにアクセルペダル72を保持している場合は、アクセルペダル操作に応じたドライバ要求駆動力に対応する加速度は変動しないが、制御用反発力Fcおよび反力指令値FAは、リスクポテンシャルRPの増加に応じて大きくなる。制御用反発力Fcの増加に応じて加速度が低下するので、運転者に減速感を与えることによってリスクポテンシャルRPが増加していることを運転者に認識させることができる。
また、アクセルペダル72を戻し方向に操作している場合は、ドライバ要求駆動力に対応する加速度が低下するが、リスクポテンシャルRPが増加すると加速度はさらに低下する。これにより、運転者に一層大きな減速感を与え、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うことができる。さらに、リスクポテンシャルRPの増加に応じてアクセルペダル72に発生する操作反力が増加する。このように、高リスク領域においてアクセルペダル72が保持または戻し方向に操作されている場合は、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行う。
高リスク領域において、運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作すると、踏み込み操作量に応じてドライバ要求駆動力が上昇し、図24(b)に実線で示すように自車両に発生する加速度が増加する。この場合は、一点鎖線で示すように制御用反発力Fcによって補正された後の加速度も増加する。すなわち、運転者がアクセルペダル72を踏み込むと自車両が加速するので、適切な回避操作等を実現することができ、運転者の運転意思を優先した制御を行うことができる。
中リスク領域においては、反力最大値FA2max、反発力最大値Fc2maxを上限とする反力指令値FAおよび制御用反発力Fcが算出される。従って、図24(c)に示すようにアクセルペダル操作に応じてドライバ要求駆動力が上昇し、実線で示すように自車両に発生する加速度が増加しても、制御用反発力Fcによって補正された後は一点鎖線で示すように所定の減速度(g1maxに対応する値)まで低下する。同様に、アクセルペダル72の発生する操作反力もg1maxに対応する最大値FA2maxまで増加する。
このように、運転者のアクセルペダル操作に関わりなく、中リスク領域ではリスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うことができる。中リスク領域ではもともとのリスクポテンシャルRPがそれほど大きくないので、図24(c)に示すように反力指令値FAおよび制御用反発力Fcを所定値でリミットしても運転者のわずらわしさは小さい。中リスク領域においてリスクポテンシャルRPの伝達を優先して行うことにより、早い段階から運転者に確実にリスクポテンシャルRPの変化を伝達することが可能となる。
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両前方の障害物状況を検出し、検出した障害物状況に基づいて、自車両前方の障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルRPを算出する。そして、算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、運転操作を行う際に運転者によって操作される車両操作機器であるアクセルペダル72に発生させる操作反力を算出し、算出した操作反力を発生するように制御を行う。車両用運転操作補助装置1は、運転者によるアクセルペダル72の操作状態を検出し、さらに、アクセルペダル72に発生する操作反力を介して運転者にリスクポテンシャルRPを伝達する制御において、リスクポテンシャルRPの伝達と、運転者によるアクセルペダル72の操作、すなわち運転意思のいずれを優先させるかを判断するための優先度を決定する。この優先度は、リスクポテンシャルRPが高い場合には、リスクポテンシャルRPの伝達に対して、運転者によるアクセルペダル72の操作を優先させるように決定する。これにより、リスクポテンシャルRPを伝達する制御において、リスクポテンシャルRPの伝達の重要性とアクセルペダル72の操作性を考慮しながら、運転者の意思を尊重した制御を実現することができる。
(2)車両用運転操作補助装置1のコントローラ50は、リスクポテンシャルRPが第1の所定値よりも大きい高リスク領域にある場合に、アクセルペダル72が踏み込み方向に操作されていると検出されると、アクセルペダル72の操作を優先し、アクセルペダル72が保持または戻し方向に操作されていると検出されると、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うように優先度を決定する。第1の所定値は、前方障害物との接触の可能性が高いことを示す余裕時間TTCのしきい値Th1に対応する。具体的には、高リスク領域では反力優先フラグFlg_FA=1が設定され、最大値FA1maxを上限とする反力リミット値FA1limが反力指令値FAとして選択される。これにより、図24(b)に示すように、運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作しても反力指令値FAは最大値FA1max以上は変化しないので、運転者にわずらわしさを与えることがなく、運転者のペダル操作を優先した制御を行うことができる。ドライバ要求駆動力に対応する加速度がほぼ一定で、運転者がアクセルペダル72を保持または戻し方向に操作している場合は、リスクポテンシャルRPが大きくなるに従って操作反力が大きくなるので、リスクポテンシャルRPを運転者に伝達することができる。
(3)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPに加えて、優先度と、アクセルペダル72の操作状態に基づいて操作反力を算出し、算出された操作反力をアクセルペダル72に発生させる。これにより、アクセルペダル72の操作反力を用いて適切なリスクポテンシャルRPの伝達を行うことができる。
(4)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPが第1の所定値よりも小さい値として設定された第2の所定値よりも小さい低リスク領域にある場合に、運転者によるアクセルペダル72の操作を優先した制御を行うように優先度を決定する。第2の所定値は、前方障害物との接触の可能性が低いことを示す余裕時間TTCのしきい値Th2に対応する。具体的には、余裕時間TTCがしきい値Th2よりも小さい低リスク領域では、リスクポテンシャルRP1,RP2がともに0となるので、反力優先フラグFlg_FA=0が選択され、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力は発生しない。したがって、運転者のアクセルペダル操作を優先し、操作性を優先した制御とすることができる。
(5)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPが第1の所定値以下で、かつ第2の所定値以上の中リスク領域にある場合は、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うように優先度を決定する。具体的には、中リスク領域では反力優先フラグFlg_FA=2が設定され、最大値FA2maxを上限とする反力リミット値FA2limが反力指令値FAとして選択される。この場合、図24(c)に示すように、アクセルペダル72を踏み込むとアクセルペダル72から発生する操作反力が増加するので、アクセルペダル72の操作反力として運転者に早い段階からリスクポテンシャルRPの変化を知らせることができる。
(6)車両用運転操作補助装置1は、さらに、リスクポテンシャルRPと優先度に基づいて、アクセルペダル操作量SAに対して自車両に発生する駆動トルクの関係を減少方向に補正し、補正した駆動トルクを発生するように制御する。具体的には、リスクポテンシャルRPおよびアクセルペダル操作量SAに基づいて算出された高リスク領域の反発力リミット値Fc1limと中リスク領域の反発力リミット値Fc2limを比較し、Fc1lim>Fc2limの場合は、反発力優先フラグFlg_Fc=1を設定し、Fc2lim≧Fc1lim(Fc2lim>0)の場合はリスクポテンシャルRPの伝達を優先する反発力優先フラグFlg_Fc=2を設定し、Fc2lim=0の場合は運転者のアクセルペダル操作を優先する反発力優先フラグFlg_Fc=0を設定する。これにより、中リスク領域では反発力リミット値Fc2limが制御用反発力Fcとして選択され、図24(c)に示すように運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作すると加速度の低下量が大きくなり、リスクポテンシャルRPが増加していることを早い段階から運転者に確実に伝達することができる。高リスク領域では、反発力リミット値Fc1limが制御用反発力Fcとして選択され、図24(b)に示すように運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作すると自車両が加速する。したがって、例えば回避動作のために加速する場合に、運転者のアクセルペダル操作を優先した制御を行うことができる。高リスク領域においては、アクセルペダル72が保持または戻し方向に操作されている場合は、減速感として運転者にリスクポテンシャルRPの増加を確実に伝達することができる。
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図25に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置のコントローラ51の内部および周辺の構成を示すブロック図を示す。コントローラ51は、例えばCPUのソフトウェア形態により、障害物認識部50a、リスクポテンシャル算出部50b、反力算出部50c、反発力算出部50d、ドライバ操作検出部50e、優先度決定部50h、反力選択部50i、反発力選択部50j、制駆動力補正量算出部50k、およびリスクポテンシャルリミット部50lを構成する。
第2の実施の形態においては、反力制御量FA1,FA2および反発力Fc1,Fc2をリミットする代わりに、リスクポテンシャルリミット部50lにおいて、リスクポテンシャル算出部50bで算出したリスクポテンシャルRP1、RP2をリミットする。
以下に、第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の動作を、図26を用いて詳細に説明する。図26は、第2の実施の形態のコントローラ51における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS100〜S400での処理は、図8に示したフローチャートでの処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS450では、ステップS400で算出した高リスク領域のリスクポテンシャルRP1と中リスク領域のリスクポテンシャルRP2に対するリミット処理を行う。ここでの処理を図27のフローチャートを用いて説明する。
ステップS451では、高リスク領域および中リスク領域のリスクポテンシャルRP1,RP2について、それぞれの最大値RP1max、RP2maxを算出する。リスクポテンシャル最大値RP1max、RP2maxは、それぞれ以下の(式11)(式12)から算出する。
RP1max=RP0 ・・・(式11)
RP2max=K4・(M・g1max+Fda) ・・・(式12)
(式12)において、K4は変換定数、Mは自車両の車重、g1maxは所定の加速度、FdaはステップS300で推定したドライバ要求駆動力である。リスクポテンシャル最大値RP2maxは、リスクポテンシャルRP2を所定値g1maxに対応する値でリミットするように設定される。一方、リスクポテンシャル最大値RP1maxは、所定値RP0に設定する。
ステップS452では、ステップS400で算出したリスクポテンシャルRP1が、ステップS451で算出した最大値RP1maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS452が肯定判定されると、ステップS453へ進み、高リスク領域のリスクポテンシャルリミット値RP1limとして最大値RP1maxを設定する。ステップS452が否定判定されるとステップS454へ進み、リスクポテンシャルリミット値RP1lim=RP1とする。
ステップS455では、ステップS400で算出したリスクポテンシャルRP2が、ステップS451で算出した最大値RP2maxよりも大きいか否かを判定する。ステップS455が肯定判定されると、ステップS456へ進み、中リスク領域のリスクポテンシャルリミット値RP2limとして最大値RP2maxを設定する。ステップS455が否定判定されるとステップS457へ進み、リスクポテンシャルリミット値RP2lim=RP2とする。
このようにステップS450においてリスクポテンシャルリミット値RP1lim、RP2limを算出した後、ステップS500へ進む。ステップS500では、ステップS450で算出したリスクポテンシャルリミット値RP1lim、RP2limを用いて、図13に従って高リスク領域の反力制御量FA1および中リスク領域の反力制御量FA2をそれぞれ算出する。つづくステップS600では、ステップS450で算出したリスクポテンシャルリミット値RP1lim、RP2limを用いて、図15に従って高リスク領域の反発力Fc1および中リスク領域の反発力Fc2をそれぞれ算出する。
ステップS900以降の処理は、図8のフローチャートと同様であるので説明を省略する。ただし、反力リミット値FA1lim、FA2limの代わりにステップS500で算出した反力制御量FA1,FA2を使用し、反発力リミット値Fc1lim,Fc2limの代わりにステップS600で算出した反発力Fc1,Fc2を使用する。
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ51は、リスクポテンシャルRPを、優先度と車両操作機器であるアクセルペダル72の操作状態に基づいて調整し、調整したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生させる操作反力を算出する。具体的には、アクセルペダル操作量SAに基づいて高リスク領域のリスクポテンシャルRP1のリミット値RP1limと中リスク領域のリスクポテンシャルRP2のリミット値RP2limを算出し、リミット値RP1lim、RP2limに基づいて反力制御量FA1,FA2を算出する。FA1>FA2の場合は、反力優先フラグFlg_FA=1を設定し、アクセルペダル72が踏み込み操作された場合には運転者の運転意思を尊重し、アクセルペダルが保持または戻し方向に操作された場合には、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うようにする。これにより、アクセルペダル72の操作反力として運転者にリスクポテンシャルRPの高さを伝達することができる。
このように、反力制御量FA1,FA2,および反発力Fc1,Fc2の代わりにリスクポテンシャルRP1,RP2をリミット処理することによっても、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図28に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置のコントローラ52の内部および周辺の構成を示すブロック図を示す。コントローラ52は、例えばCPUのソフトウェア形態により、障害物認識部50a、リスクポテンシャル算出部50b、反力算出部50c、反発力算出部50d、反力リミット部50f、反発力リミット部50g、ドライバ操作検出部50e、優先度決定部50h、反力選択部50i、反発力選択部50j、制駆動力補正量算出部50k、および優先度重み付け算出部50mを構成する。
優先度重み付け算出部50mは、運転者のアクセルペダル操作に基づいて、リスクポテンシャル伝達を優先した制御を行うか、あるいは運転者の運転意思を優先した制御を行うかを判断するための優先度に対する重み付けを算出する。
以下に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置の動作を、図29を用いて詳細に説明する。図29は、第3の実施の形態のコントローラ52における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS100〜S600での処理は、図8に示したフローチャートでの処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS620では、リスクポテンシャルRPの伝達と運転者の意思のどちらを優先した制御を行うかを判断するための優先度に対する重み付けを算出する。第3の実施の形態においても、基本的には、図23に示したように中リスク領域ではリスクポテンシャルRPの伝達を優先し、高リスク領域ではアクセルペダル72が踏み込み操作されている場合は運転者の意思を優先する。ただし、運転者がアクセルペダル72を踏み込み操作している場合は、運転者の運転意思を優先する傾向を強くする。ここでの処理を、図30のフローチャートを用いて説明する。
ステップS621では、アクセルペダルストロークセンサ74で検出されるアクセルペダル操作量SAに基づいて、アクセルペダル操作速度dSを算出する。アクセルペダル操作速度dSは、踏み込み方向を正の値、戻し方向を負の値で表す。ステップS622では、ステップS621で算出したアクセルペダル操作速度dSが所定値dS1(>0)よりも大きいか否かを判定する。ステップS622が肯定判定され、アクセルペダル72が所定速度dS1以上の速い速度で踏み込み操作されている場合は、ステップS623へ進む。
ステップS623では、アクセルペダル操作速度dSに基づいて、優先度重み付け係数K5を算出する。図31に、アクセルペダル操作速度dSと優先度重み付け係数K5との関係を示す。アクセルペダル操作速度dSが大きくなるほど、優先度重み付け係数K5を1から徐々に小さくする。ステップS622が否定判定され、アクセルペダル72が所定速度dS1よりも遅い速度で踏み込み操作されている場合、または戻し方向に操作されている場合は、ステップS624へ進み、優先度重み付け係数K5=1とする。
ステップS700では、ステップS500で算出したアクセルペダル反力制御量FA1,FA2にリミット処理を行い、ステップS800では、ステップS600で算出した反発力Fc1,Fc2にリミット処理を行う。
ステップS910では、ステップS700で算出した反力リミット値FA1lim、FA2limについて、ステップS620で算出した優先度重み付け係数K5を用いて優先度を決定する。ここでの処理を図32のフローチャートを用いて説明する。
ステップS911では、高リスク領域の反力リミット値FA1limが中リスク領域の反力リミット値FA2limに優先度重み付け係数K5を乗算した値(K5・FA2lim)よりも大きいか否かを判定する。FA1lim>(K5・FA2lim)の場合は、ステップS912へ進み、反力優先フラグFlg_FAとして1を設定する。ステップS911が否定判定されるとステップS913へ進み、FA2lim>0であるか否かを判定する。ステップS913が肯定判定されるとステップS914へ進み、反力優先フラグFlg_FAとして2を設定する。ステップS913が否定判定されるとステップS915へ進み、反力優先フラグFlg_FA=0とする。
これにより、アクセルペダル72の踏み込み速度dSが速いほど、中リスク領域の反力リミット値FA2limが小さく補正されるので、高リスク領域の反力リミット値FA1limを選択する頻度が高くなる。
つづくステップS1010では、ステップS800で算出した反発力リミット値Fc1lim、Fc2limについて、ステップS620で算出した優先度重み付けK5を用いて優先度を決定する。ここでの処理を図33のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1011では、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limが中リスク領域の反発力リミット値Fc2limに優先度重み付け係数K5を乗算した値(K5・Fc2lim)よりも大きいか否かを判定する。Fc1lim>K5・Fc2limの場合は、ステップS1012へ進み、反発力優先フラグFlg_Fcとして1を設定する。ステップS1011が否定判定されるとステップS1013へ進み、Fc2lim>0であるか否かを判定する。ステップS1013が肯定判定されるとステップS1014へ進み、反発力優先フラグFlg_Fcとして2を設定する。ステップS1013が否定判定されるとステップS1015へ進み、反発力優先フラグFlg_Fc=0とする。
これにより、アクセルペダル72の踏み込み速度dSが速いほど、中リスク領域の反発力リミット値Fc2limが小さく補正されるので、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limを選択する頻度が高くなる。
このように反力優先度および反発力優先度を決定した後、ステップS1110へ進む。ステップS1110では、ステップS910で決定した反力優先度に従って、アクセルペダル反力を制御するための反力指令値FAを算出する。ここでの処理を図34のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1111では、ステップS910で設定した反力優先フラグFlg_FA=0であるか否かを判定する。ステップS1111が肯定判定されるとステップS1112へ進み、反力指令値FA=0に設定する。ステップS1111が否定判定されるとステップS1113へ進み、反力優先フラグFlg_FA=1であるか否かを判定する。ステップS1113が肯定判定されるとステップS1114へ進み、反力指令値FAとして、高リスク領域の反力リミット値FA1limを設定する。ステップS1113が否定判定されるとステップS1115へ進み、反力指令値FAとして、中リスク領域の反力リミット値FA2limに優先度重み付け係数K5を乗算した値(K5・FA2lim)を設定する。
これにより、反力優先フラグFlg_FA=2で中リスク領域の反力リミット値FA2limが選択された場合でも、アクセルペダル72の踏み込み速度dSが速いほど小さくなるように補正された反力リミット値FA2limが、反力指令値FAとして設定される。
つづくステップS1230では、ステップS1010で決定した反発力優先度に従って、駆動力補正量と制動力補正量をそれぞれ算出する。ここでの処理を図35のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1231では、ステップS1010で設定した反発力優先フラグFlg_Fc=0であるか否かを判定する。ステップS1231が肯定判定されると、ステップS1232へ進む。ステップS1232では、駆動力補正量ΔDa=0とし、つづくステップS1233では、制動力補正量ΔDb=0とする。ステップS1231が否定判定されるとステップS1234へ進み、反発力優先フラグFlg_Fc=1であるか否かを判定する。ステップS1234が肯定判定されるとステップS1235へ進み、制御用反発力Fcとして、高リスク領域の反発力リミット値Fc1limを設定する。ステップS1234が否定判定されるとステップS1236へ進み、制御用反発力Fcとして、中リスク領域の反発力リミット値Fc2limに優先度重み付け係数K5を乗算した値(K5・Fc2lim)を設定する。
ステップS1237以降の処理は、図21のフローチャートに示したステップS1207以降での処理と同様である。これにより、反発力優先フラグFlg_Fc=2で中リスク領域の反発力リミット値Fc2limが選択された場合でも、アクセルペダル72の踏み込み速度dSが速いほど小さくなるように補正された反発力リミット値Fc2limが、制御用反発力Fcとして設定される。
ステップS1300では、ステップS1110で算出したアクセルペダル反力指令値FAをアクセルペダル反力制御装置70へ出力する。ステップS1400では、ステップS1230で算出した駆動力補正量ΔDa、及び制動力補正量ΔDbをそれぞれ駆動力制御装置73、及び制動力制御装置93に出力する。これにより、今回の処理を終了する。
以下、第3の実施の形態の作用を、図36(a)(b)を用いて説明する。図36(a)(b)は、高リスク領域における加減速度の時間変化、および中リスク領域における加減速度の時間変化の一例を示している。
図36(a)に示すように、高リスク領域においては、アクセルペダル操作に応じてドライバ要求駆動力が上昇し、実線で示すように自車両に発生する加速度が増加する場合には、一点鎖線で示すように制御用反発力Fcによって補正された後の加減速度も増加する。すなわち、高リスク領域においては、運転者がアクセルペダル72を踏み込むと自車両が加速するので、運転者の意思を優先した制御を行うことができる。アクセルペダル72を保持している場合、および戻し方向に操作している場合は、リスクポテンシャルRPの増加に応じて制御用反発力Fcが増加するので、運転者に減速感を与えることにより、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うことができる。同時に、リスクポテンシャルRPの増加に応じてアクセルペダル操作反力も増加するので、リスクポテンシャルRPを確実に運転者に伝達することができる。
図36(b)に示すように、中リスク領域においては、アクセルペダル操作に応じてドライバ要求駆動力が上昇し、実線で示すように自車両に発生する加速度が増加しても、制御用反発力Fcによって補正された後は一点鎖線で示すように所定の減速度(g1maxに対応する値)まで低下する。また、アクセルペダル72に発生する操作反力もg1maxに対応する最大値FA2maxまで増加する。これにより、リスクポテンシャルRPの伝達を優先した制御を行うことができる。
ただし、アクセルペダル72が踏み込み方向に操作されている場合は、踏み込み速度dSに応じて反力リミッタ値FA2limおよび反発力リミッタ値Fc2limが小さく補正されるので、高リスク領域の反力リミッタ値FA1limおよび反発力リミッタ値Fc1limが選択される頻度が高くなる。また、中リスク領域の反力リミッタ値FA2limおよび反発力リミッタ値Fc2limが選択された場合でも、反力指令値FA、および制御用反発力Fcはアクセルペダル72の踏み込み速度dSに応じて小さく補正される。これにより、中リスク領域においても、運転者が自らの意思でアクセルペダル72を踏み込み操作している場合、すなわち加速しようという意図がある場合は、その意思を優先した制御を行うことができる。
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、上述した第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
図37に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置のコントローラ53の内部および周辺の構成を示すブロック図を示す。コントローラ53は、例えばCPUのソフトウェア形態により、障害物認識部50a、リスクポテンシャル算出部50b、反力算出部50c、反発力算出部50d、反力リミット部50f、反発力リミット部50g、ドライバ操作検出部50e、優先度決定部50h、反力選択部50i、反発力選択部50j、制駆動力補正量算出部50k、および加速意図検出部50nを構成する。
加速意図検出部50nは、運転者のアクセルペダル操作に基づいて、運転者が加速する意図があるか否かを判定する。
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置の動作を、図38を用いて詳細に説明する。図38は、第4の実施の形態のコントローラ53における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートを示す。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS100〜S600での処理は、図8に示したフローチャートでの処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS640では、アクセルペダル操作に基づいて、運転者の加速意図を検出する。ここでの処理を、図39のフローチャートを用いて説明する。ステップS641では、アクセルペダルストロークセンサ74で検出されるアクセルペダル操作量SAに基づいて、アクセルペダル操作速度dSを算出する。アクセルペダル操作速度dSは、踏み込み方向を正の値、戻し方向を負の値で表す。ステップS642では、ステップS641で算出したアクセルペダル操作速度dSが所定値dS1(>0)よりも大きいか否かを判定する。
ステップS642が肯定判定され、アクセルペダル72が所定速度dS1以上の速い速度で踏み込み操作されている場合は、ステップS643へ進む。ステップS643では、運転者に加速意図があることを示すフラグFlg=1に設定する。ステップS642が否定判定され、アクセルペダル72が所定速度dS1よりも遅い速度で踏み込み操作されている場合、または戻し方向に操作されている場合は、ステップS644へ進み、加速意図がないことを示すフラグFlg=0に設定する。
ステップS700では、ステップS500で算出したアクセルペダル反力制御量FA1,FA2にリミット処理を行い、ステップS800では、ステップS600で算出した反発力Fc1,Fc2にリミット処理を行う。
ステップS920では、ステップS700で算出した反力リミット値FA1lim、FA2limについて、ステップS640で検出した加速意図の有無にしたがって優先度を決定する。ここでの処理を図40のフローチャートを用いて説明する。
ステップS921では、ステップS640で設定したフラグFlg=1で運転者に加速意図があるか否かを判定する。ステップS921が肯定判定されると、ステップS922へ進み、反力優先フラグFlg_FAとして1を設定する。これにより、運転者に加速意図がある場合は、反力指令値FAとして高リスク領域の反力リミット値FA1limを選択するようにする。ステップS923以降の処理は、図18のフローチャートのステップS901以降の処理と同様である。
つづくステップS1020では、ステップS800で算出した反発力リミット値Fc1lim、Fc2limについて、ステップS640で検出した加速意図の有無に従って優先度を決定する。ここでの処理を図41のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1021では、ステップS640で設定したフラグFlg=1で運転者に加速意図があるか否かを判定する。ステップS1021が肯定判定されると、ステップS1022へ進み、反発力優先フラグFlg_Fcとして1を設定する。これにより、運転者に加速意図がある場合は、制御用反発力Fcとして高リスク領域の反発力リミット値Fc1limを選択するようにする。ステップS1023以降の処理は、図19のフローチャートのステップS1001以降の処理と同様である。
このように反力優先度および反発力優先度を決定した後は、ステップS1100以降の処理へ進み、アクセルペダル操作反力および自車両に発生する制駆動力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
コントローラ53は、車両操作機器であるアクセルペダル72の操作状態に基づいて、運転者の加速意図を検出し、加速意図ありと検出されると、アクセルペダル72の操作を優先した制御を行うように優先度を決定する。具体的には、アクセルペダル72の踏み込み速度dSが所定値dS1以上で、加速意図ありと検出されると、反力優先フラグFlg_FA=1に設定する。これにより、アクセルペダル72を踏み込み操作すると反力指令値FAは変動しないが自車両が加速することになり、運転者のアクセルペダル操作を優先した制御を行うことができる。
以上説明した第1から第4の実施の形態においては、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御と制駆動力制御とを行ったが、いずれか一方の制御のみを行うこともできる。また、制動力制御は行わず、駆動力制御のみを行うこともできる。また、自車両と前方障害物との余裕時間TTCに基づいてリスクポテンシャルRPを算出したが、これには限定されない。例えば、前方障害物の現在位置に自車両が到達するまでの時間を表す車間時間THWを用いてリスクポテンシャルRPを算出したり、余裕時間TTCと車間時間THWとを組み合わせてリスクポテンシャルRPを算出することもできる。
以上説明した第1〜第4の実施の形態においては、車両操作機器としてアクセルペダル72を用い、アクセルペダル72に発生する操作反力を介して運転者にリスクポテンシャルRPを伝達するように構成した。ただし、これには限定されず、車両操作機器として、例えばステアリングホイール(不図示)やブレーキペダル92を用いることも可能である。
以上説明した第1から第4の実施の形態においては、レーザレーダ10および車速センサ20が障害物検出手段として機能し、リスクポテンシャル算出部50bがリスクポテンシャル算出手段として機能し、アクセルペダル反力算出部50cが操作反力算出手段として機能し、アクセルペダル反力制御装置70が操作反力発生手段として機能し、アクセルペダルストロークセンサ74が操作状態検出手段として機能し、優先度決定部50hが優先度決定手段として機能することができる。さらに、優先度重み付け算出部50mおよび加速意図検出部50nが加速意図検出手段として機能し、制駆動力補正量算出部50kが駆動トルク補正手段として機能し、駆動力制御装置93が駆動力制御手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、レーザレーダ10の代わりに例えば別方式のミリ波レーダを用いたり、自車両前方領域の画像を検出するCCDカメラ等の前方カメラを用いることも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。